JP5033387B2 - 制振補強構造 - Google Patents

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本発明は、コンクリート躯体どうしを、制振機能を有する連結用鉄骨によって連結してなる制振補強構造に関する。
RCまたはSRC建築構造物等の柱−柱間、壁−壁間、柱−壁間、梁−梁間を、制振機能(粘性、粘弾性または履歴減衰ダンパー)を有する、つまり地震時のエネルギー吸収能力を兼ね備えた鉄骨(境界梁等)によって連結することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
これは両端部にそれぞれ鉄筋コンクリート構造の連結ブロックを一体的に有し、両連結ブロック間の梁本体部はその外表面が適宜な材料からなるジャケットで被覆されている境界梁を形成し、この境界梁を2つの連層耐震壁の間に配設し、前記連結ブロックと前記連層耐震壁とをPC鋼棒または高力ボルトで締め付けて一体的に結合することを特徴とする境界梁の構造である。
また、これ以外の構造としては、例えば、制振機能付き(ダンパー機構付き)鉄骨の端部にベースプレートを溶接し、コンクリート躯体にPC鋼棒によって固定するものもある。
特開平10−110549号公報
ところで、上記特許文献1に記載の技術では、梁本体部の端部に設けられている連結ブロックのコンクリートにひび割れを生じさせないために、十分な鉄筋を鉄骨の周囲に配筋することが必要となるため、連結ブロック(RC被覆部)の断面が鉄骨断面より大きくなる。つまり、RC被覆部分では鉄骨鉄筋コンクリート造となるため、鉄骨せいに比べて鉄筋コンクリート造部分(連結ブロック)のせいがかなり大きな断面となってしまうので、梁の下端レベルが低くなり、その下の空間を圧迫してしまう。
また、制振機能付き鉄骨の端部にベースプレートを溶接し、コンクリート躯体にPC鋼棒によって固定するものの場合、ベースプレートからPC鋼棒に力を伝達するために、鉄骨の上下のフランジにスチフナを設ける必要が生じるが、このスチフナの部分の梁の下端レベルが低くなり、空間を圧迫してしまう。
さらに、大地震後に損傷したダンパー機構を交換するためには、RC被覆部分を壊して内蔵された鉄骨に新しいダンパーを取り付けて、再度鉄筋コンクリート造のRC被覆を再構築するか又は、鉄骨を切断し再び新しい制振材を溶接して組み込むことが必要となり、騒音、振動が大きく、非常に手間のかかる作業となる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、梁下の空間の高さを極力低くすることがなく、しかも、ダンパーの交換、つまり制振機能部分の交換も容易な制振補強構造を提供することを課題としている。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、例えば図1および図2に示すように、コンクリート躯体(柱)1,1どうしを制振機能を有する連結用鉄骨5によって連結してなる制振補強構造であって、
前記連結用鉄骨5は、制振機能を有する制振機能付き鉄骨材6と、この制振機能付き鉄骨材6の両端部にそれぞれ高力ボルト12によってボルト接合された一対の端部鉄骨材7,7と、この一対の端部鉄骨部材7,7にそれぞれ取り付けられたベースプレート8,8とを備えており、
前記制振機能付き鉄骨材6と前記端部鉄骨材7とは、それぞれの端部に取り付けられたプレート9,11を互いに当接して、前記両鉄骨材6,7の上下のフランジより内側に配置された前記高力ボルト12によってボルト接合することによって、接合され、
前記連結用鉄骨5の一方のベースプレート8が一方のコンクリート躯体(柱)1に当接されるとともに、他方のベースプレート8が他方のコンクリート躯体(柱)1に当接されており、
各ベースプレート8には、各コンクリート躯体(柱)1に埋設されたアンカー(アンカーボルト)15を、前記端部鉄骨材7の上下のフランジ7b,7bの裏側近傍で、かつ前記上下のフランジ7b,7bの内側において、各ベースプレート8に形成されたねじ孔8aにねじ込んで定着することによって、上下の前記アンカー15,15と上下の前記フランジ7b,7bとはそれぞれ上下において隙間なくほぼ一直線上に配置されていることを特徴とする。
ここで、前記制振機能付き鉄骨材6としては、粘性ダンパー、粘弾性ダンパー、履歴減衰ダンパー等を組み込んだものが挙げられる。
また、コンクリート躯体としては、鉄筋コンクリート造の柱、梁、壁等が挙げられる。
本発明によれば、連結用鉄骨の一方のベースプレートが一方のコンクリート躯体に当接されるとともに、他方のベースプレートが他方のコンクリート躯体に当接されおり、各ベースプレートに、各コンクリート躯体に埋設されたアンカーを、端部鉄骨材の上下のフランジの裏側近傍で、かつ上下のフランジの内側において、各ベースプレートに形成されたねじ孔にねじ込んで定着することによって、上下のアンカーと上下のフランジとはそれぞれ上下において隙間なくほぼ一直線上に配置されているので、連結用鉄骨のせいをその長手方向においてほぼ等しくすることができ、従来のPC鋼棒によるアンカーと異なり、ベースプレートにスチフナを設ける必要がなく、梁せいが大きくなることがない。したがって、連結用鉄骨の下の空間を圧迫することがない。
また、制振機能部分の交換の際は、制振機能付き鉄骨材を、高力ボルトを外すことによって、一対の端部鉄骨材から取り外して、新たな制振機能付き鉄骨材を再び高力ボルトによって端部鉄骨材に接合すればよいので、交換作業が容易となる。その際、コンクリート打設作業、鉄の加工作業などは必要なく、過大な騒音、振動を発生することなく交換することができる。
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1および図2は本発明に係る制振補強構造の一例を示すもので、図1はその側断面図、図2は平面図である。
これらの図において、符号1,1は柱を示す。この柱1は鉄筋コンクリート造であり、コンクリート躯体を構成している。柱1,1の間は共用廊下2とされており、この共用廊下2を挟んで、左右側にはそれぞれ住戸3,3が設けられている。なお、図1では、左側の柱1と梁との接合部分にプレキャスト梁20を設置した状態を示しているが、右側の柱1と梁との接合部分では、プレキャスト梁20を省略して図示している。
前記柱1,1間には、制振機能を有する連結用鉄骨5が設けられており、この連結用鉄骨5によって柱1,1どうしが連結されている。
連結用鉄骨5は、制振機能を有する制振機能付き鉄骨材6と、この制振機能付き鉄骨材6の両端部に接合された端部鉄骨材7,7と、この端部鉄骨材7,7にそれぞれ取り付けられたベースプレート8,8とを備えている。
制振機能付き鉄骨材6は、低降伏点鋼を有する断面H形の鋼材であり、その両端部にはベースプレート9が溶接によって取り付けられている。制振機能付き鉄骨材6のウエブ6aが、低降伏点鋼によって形成されており、このウエブ6aには、座屈耐力を向上させる補強リブ10が溶接によって固定されている。なお、上下のフランジは普通鋼材で形成されている。
端部鉄骨材7,7は、連結用鉄骨5の両端部を構成するものであり、前記低降伏点鋼より降伏耐力の高い通常の鋼材によって形成されている。この端部鉄骨材7の一方の端部(制振機能付き鉄骨材6側の端部)には、前記ベースプレート9と同形状のベースプレート11が溶接によって取り付けられており、このベースプレート11はベースプレート9に当接されている。そして、ベースプレート11,9は複数の高力ボルト12とナット13とによってボルト接合されており、これによって、制振機能付き鉄骨材6の両端部にそれぞれ端部鉄骨材7が強固に接合されている。
端部鉄骨材7は、断面H形の鋼材であるが、その上下のフランジ7b,7bは図2に示すように、平面視において台形状に形成されており、柱1側に近づくほど幅広に形成されている。また、端部鉄骨材7は、そのウエブ7aが、制振機能付き鉄骨材6のウエブ6aと同一直線上に位置するようにして、制振機能付き鉄骨材6に接合されている。さらに、図1に示すように、端部鉄骨材7と制振機能付き鉄骨材6のせい(梁せい)は等しくなっている。
端部鉄骨材7の他方の端部(柱1側の端部)には、ベースプレート8が溶接によって取り付けられており、このベースプレート8は柱1の外面に当接されている。このベースプレート8の、柱1の外面と当接する当接面には、ねじ孔8aが上下のフランジ7b,7bの裏側近傍において該フランジ7bの幅方向に所定間隔で複数形成されている。
また、鉄筋コンクリート製の柱1には異形鉄筋で形成されたアンカーボルト(アンカー)15が複数、前記ねじ孔8aと同軸にかつ水平に埋設されており、このアンカーボルト15の先端部は、柱1の外面から突出してねじ孔8aにねじ込まれている。アンカーボルト15の先端部には、摩擦圧接または転造によって雄ねじが形成されており、この雄ねじをねじ孔8aにねじ込むことによって、ベースプレート8にアンカーボルト15の先端部が定着されている。また、アンカーボルト15の基端部には、定着板16がその中央部に形成されたねじ孔にアンカーボルト基端部の雄ねじを螺合することによって取り付けられており、アンカーボルト15の引き抜き強度を高めている。
上記のような制振補強構造を施工する場合、例えば、工場等において前記連結用鉄骨5を製造しておくとともに、この連結用鉄骨5の、ベースプレート8の下側のねじ孔8aにアンカーボルト15をねじ込んでおき、この下側のアンカーボルト15を備えた連結用鉄骨5を現場に搬入する。
現場では、鉄筋コンクリート製の柱1を施工するための柱用の型枠をセットするとともに、プレキャスト梁20を設置して、その端部の下端筋21aを前記型枠内に挿入する。プレキャスト梁20は鉄筋コンクリート製のものであり、内部に上端筋、下端筋、肋筋を備えており、上端筋、下端筋の端部がコンクリート端部から突出している。
一方、前記下側のアンカーボルト15を備えた連結用鉄骨5を、対向する柱用の型枠間に架設するとともに、下側のアンカーボルト15を型枠内に挿入し、さらにベースプレート8を型枠に形成された開口部にセットする。
次に、柱用の型枠内において柱主筋21dにフープ筋21bを組み付けた後、ベースプレート8の上側のねじ孔8aにアンカーボルト15をねじ込む。
次に、上端筋21cを接合内に伸ばしてきて、X方向(図1で紙面と直交する方向)の上端筋21cは仕口内で圧接または機械式定着、Y方向(図1で左右方向)の上端筋端末には定着板を取り付ける。
次に、床用の型枠内にスラブ筋を配筋した後、この型枠と柱用の型枠にコンクリートを打設し、所定時間養生後に、型枠を脱型することによって制振補強構造の施工を終了する。型枠を脱型することによって、連結用鉄骨5の一方のベースプレート8が一方の柱(コンクリート躯体)1に当接されるとともに、他方のベースプレート8が他方の柱(コンクリート躯体)1に当接された状態となり、かつ、各ベースプレート8には、柱1に埋設されたアンカーボルト15が定着された構造となる。
上記のような制振補強構造は、一方の端部鉄骨材7、制振機能付き鉄骨材6、他方の端部鉄骨材7が連続しており、かつ、制振機能付き鉄骨材6が端部鉄骨材7,7に高力ボルト12によって接合されているため、比較的高い剛性を有し、水平力を支持すると共に、面内曲げを拘束する。このため、制振補強構造が地震時に大きな水平力を受けると、制振機能付き鉄骨材6が鉄骨構造物などの骨組より先に降伏して履歴エネルギーを吸収し、主架構の塑性化や疲労損傷を軽減して健全な状態に維持することができる。
以上のように本実施の形態によれば、連結用鉄骨5の一方のベースプレート8が一方の柱1に当接されるとともに、他方のベースプレート8が他方の柱1に当接されおり、各ベースプレート8に、各柱1に埋設されたアンカーボルト15が定着されているので、連結用鉄骨5のせいをその長手方向においてほぼ等しくすることができ、従来と異なり、ベースプレートにスチフナを設ける必要がなく、端部のせいが大きくなることがない。したがって、連結用鉄骨5の下の空間を圧迫することがない。
また、制振機能部分つまり制振機能付き鉄骨材6の交換の際は、制振機能付き鉄骨材6を、高力ボルト12を外すことによって、一対の端部鉄骨材7,7から取り外して、新たな制振機能付き鉄骨材6を再び高力ボルトに12よって端部鉄骨材7,7に接合すればよいので、交換作業が容易となる。その際、コンクリート打設作業、鉄の加工作業などは必要なく、過大な騒音、振動を発生することなく交換することができる。
さらに、制振機能付き鉄骨材6と端部鉄骨材7との接合に、ベースプレート9,11を用いて高力ボルト12で接合することによって、交換部分の鉄骨量を最小限にできる。
本発明に係る制振補強構造の一例を示すもので、その側断面図である。 同、平面図である。
符号の説明
1 柱(コンクリート躯体)
5 連結用鉄骨材
6 制振機能付き鉄骨材
7 端部鉄骨材
8 ベース部レート
12 高力ボルト
15 アンカーボルト(アンカー)

Claims (1)

  1. コンクリート躯体どうしを、制振機能を有する連結用鉄骨によって連結してなる制振補強構造であって、
    前記連結用鉄骨は、制振機能を有する制振機能付き鉄骨材と、この制振機能付き鉄骨材の両端部にそれぞれ高力ボルトによってボルト接合された一対の端部鉄骨材と、この一対の端部鉄骨部材にそれぞれ取り付けられたベースプレートとを備えており、
    前記制振機能付き鉄骨材と前記端部鉄骨材とは、それぞれの端部に取り付けられたプレートを互いに当接して、前記両鉄骨材の上下のフランジより内側に配置された前記高力ボルトによってボルト接合することによって、接合され、
    前記連結用鉄骨の一方のベースプレートが一方のコンクリート躯体に当接されるとともに、他方のベースプレートが他方のコンクリート躯体に当接されており、
    各ベースプレートに、各コンクリート躯体に埋設されたアンカーを、前記端部鉄骨材の上下のフランジの裏側近傍で、かつ前記上下のフランジの内側において、各ベースプレートに形成されたねじ孔にねじ込んで定着することによって、上下の前記アンカーと上下の前記フランジとはそれぞれ上下において隙間なくほぼ一直線上に配置されていることを特徴とする制振補強構造。
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