JP3638142B2 - 柱と梁の接合装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄骨を用いた建築や土木のラーメン構造の柱と梁の接合装置であり、詳しくは耐震性能を向上させるべく梁端に塑性ヒンジを誘発させるための柱と梁の接合装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多層建築物の構造骨組において、地震時の耐震性能を持たせるため、柱と梁を剛接合したラーメン構造とすることは一般的である。
【0003】
近年、耐震安全性を向上させるための研究が進み、大地震時にも建物が倒壊して人命が損なわれないようにするためには、鉄骨部材が弾性範囲を越えて塑性域に達しても倒壊することなく、むしろ地震エネルギーを塑性域に生じる塑性歪エネルギーで吸収させて耐震性能を向上させる考え方が設計手法として定着した(図1参照)。
【0004】
この発生する塑性化領域は、地震時に大きな曲げモーメントが発生する柱と梁の接合部近傍である。実際の設計では、梁よりも柱の方に曲げ強さに余裕を持たせ、梁端に塑性化領域が発生するように部材を選ぶ(図2参照)。
【0005】
柱・梁接合部において、柱に近い梁端が梁部材の中で最も大きい曲げモーメントが発生する(図3参照)。曲げモーメントはその大きさが大きくなるに従って通常用いられるH形断面の梁では、梁フランジが塑性化し、さらに曲げモーメントが大きくなると、塑性化領域はウェブに達し、梁全断面が塑性化する。
【0006】
この場合、梁が持つ塑性化した部分の曲げモーメントは一定の値で抵抗しながら曲げ変形が進むので、この状態を塑性ヒンジと呼ぶ。
【0007】
この塑性ヒンジが、各階で各梁の両端に発生し、かつ、柱脚にも発生したときが、この骨組に水平力が加わったときの終局強さである(図1参照)。構造設計では、このように塑性ヒンジができることが、終局耐力の大きい設計を可能にするだけではなく、塑性ヒンジの曲げ抵抗力と水平方向への変形メカニズムが明快であるため、信頼性の高い終局耐力の評価が得られるとして、今日の耐震設計の基本的な考え方になっている。
【0008】
ところが、現実的に次の3つの問題点が存在する。▲1▼ 一般に梁端部は柱に溶接され、しかも作用する曲げモーメントは大きく、梁に加わるせん断力も同時に作用するので、溶接部が起点となって破断することがある。▲2▼ 溶接部が破断しなくても、端部に近い中間部で圧縮力が加わる梁フランジが局部的に面外に膨れ上がり(クリッピングという)、梁のウェブもせん断力によってしわが生じるなど、いわゆる局部座屈して、塑性ヒンジができる前に曲げ耐力を失うことがある。▲3▼ 塑性ヒンジが発生しても、他の梁端すべてに塑性ヒンジが発生するまで、最初に発生した塑性ヒンジが破断したりして曲げ耐力を失うことがある。即ち、図1に示す機構状態(運動可能な不安定構造)に達する前に一部が破断する。
【0009】
以上の3つの問題を解決するためには、
▲1▼に対しては、溶接部の断面を大きくするなど、溶接部の耐力に余裕を持たせる。例えば、図6(a) に示すように、サイドプレート51を設ける。
▲2▼の局部座屈を防ぐためには、フランジのウェブからの突出長さbとフランジの板厚tf の比(フランジの幅厚比という)b/tf を小さくする。また、ウェブの座屈を防ぐため、ウェブの内法高さdとウェブの板厚tw の比(ウェブの幅厚比という)d/tw を小さくすること、すなわち板厚を厚くすることが必要であることが、既往の研究から知られている(表1、表2、表3参照)。なお、表2のDsは構造特性係数(建築物の振動減衰性・各階の靱性に応じて必要保有水平耐力を低減するための係数)であり、梁端の局部座屈が生じにくくするなど塑性変形能力が十分であれば、Dsの値を0.25まで低減でき、またその条件として表1に柱・梁の種別FA(b/tf =7.5、d/tw =51)が示されている。
▲3▼の対策としては、幅厚比を小さくする対策として(社)日本建築学会制定の規準、建設省告示第1791号についての同省通達昭56住指発第96号の別記2の規定に基づいて作定された建設省監修の(社)日本建築センター発行の構造規定に定める塑性が予想される領域での幅厚比の値を満足させると共に(表1)、塑性ヒンジ発生の位置を特定し、骨組全体の終局強さを計算しやすいように、柱面から梁せいの1/2程度離れた部分に塑性ヒンジが発生するように、梁端部の断面設計や接合部設計の条件とすることが行われている。
【0010】
【表1】
Figure 0003638142
【0011】
【表2】
Figure 0003638142
【0012】
【表3】
Figure 0003638142
【0013】
現在この条件を満たす設計手法の代表的なものとしては、図5(a) 、図6(a) に示すものがある。図5(a) では、溶接ブラケットタイプの梁ブラケット2Aのフランジ2fの両側部に切欠きによるヒンジ発生用欠損部50を設けている。図6(a) では、現場溶接タイプの梁2のフランジ2fの両側面に所定の長さのサイドプレート51を設けている。この図6(a) は、柱1と梁フランジ2fの接合点では補強されているので、作用曲げモーメントに対して余裕のある耐力を有するため、塑性ヒンジは補強材のサイドプレート51の先端位置に発生するように設計されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
前述のような従来の対策は、前述したように、▲1▼ 溶接部の耐力に余裕を持たせる、▲2▼ 局部座屈を防ぐために幅厚比を小さくして板厚を厚くする、▲3▼ 塑性ヒンジ発生位置を特定して骨組全体の終局耐力を計算しやすくする、という理由によるものであるが、次のような問題点がある。
【0015】
(1) 塑性ヒンジの発生が予想される補強端部は、表1に示すような幅厚比を確保しなければならない。そのためには塑性ヒンジの発生を期待しない他の部分も幅厚比を満足する同一断面とせざるを得ないので、梁フランジの断面積を大きくする必要がある。
【0016】
(2) また、ウェブを補強しない設計としている例が多いが、ウェブも表1の幅厚比を守らなければならない。これは、市販品としてJISH形鋼(表3)に依存せざるを得ない実状があるからである。以上のように梁フランジや梁ウェブの断面積の大きいH形鋼を使用することにより不経済となる。
【0017】
(3) また、図6(a) 等の補強法は、図5(a) を除き、何れも梁断面の外側から補強するので、仕上材との納まりが悪い。なお、図5(a) はヒンジ発生部の梁フランジ両側面を切り取る作業が必要である。
【0018】
(4) 地震時に梁に加わる曲げモーメントは梁端が最大となり(図3参照)、塑性ヒンジは図2の領域に生ずるとして建設省通達昭56住指発第96号に記されている。従って、そのために所定の幅圧比(表1)を確保するか、確保できない場合は耐震性能が低下せざるを得ない。
【0019】
本発明は、前述のような問題点を解消すべくなされたもので、ラーメン構造骨組の耐震性能を向上させるべく梁端に塑性ヒンジを誘発させるための柱と梁の接合構造において、所定の幅厚比を満足しない断面積の小さい梁材を使用しても、塑性領域において局部座屈の発生しない幅厚比を容易に得ることができ、また塑性ヒンジ発生の位置を容易に特定することができ、骨組全体の終局強さの計算が容易となり、設計時の骨組解析の精度を高めることができ、さらに仕上材との納まりが良く、梁自体に加工を施す必要がない、柱と梁の接合装置を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1は、柱(角形鋼管やH形鋼など)と梁(H形鋼など)を剛接合した構造骨組における柱と梁の接合装置であり、梁端部の塑性領域に梁長手方向に延在する補強板(短冊形の鋼板など)が梁フランジと梁ウェブの隅角部を跨ぐように設けられると共に、補強板の上下の両側部がそれぞれ梁フランジ内面と梁ウェブ表面に固定(溶接など)され、かつ、補強板の柱側端面が柱の側面に固定(溶接など)され、この補強板には塑性ヒンジ発生誘発穴が形成されていることを特徴とする柱と梁の接合装置である。
本発明の請求項2は、柱(角形鋼管やH形鋼など)と梁(H形鋼など)を剛接合した構造骨組における柱と梁の接合装置であり、梁端部における梁フランジの両側面にサイドプレートが取付けられており、梁端部の塑性領域に梁長手方向に延在する補強板(短冊形の鋼板など)が、柱の側面と補強板の柱側端面との間に空間が形成されるように、かつ、梁フランジと梁ウェブの隅角部を跨ぐように設けられると共に、補強板の上下の両側部がそれぞれ梁フランジ内面と梁ウェブ表面に固定(溶接など)され、この補強板には塑性ヒンジ発生誘発穴が形成されていることを特徴とする柱と梁の接合装置である。
補強板は、塑性領域のみに設けてもよいし、弾性領域にまで延在させてもよい。
【0021】
即ち、図3に示す塑性領域において、梁フランジや梁ウェブあるいはその何れかが表3のようなJISロールH形鋼を用いるとき、例えばSM490級の鉄骨梁においてフランジの幅厚比が7.5、ウェブの幅厚比が51を越える場合、図4に示すように、梁フランジと梁フランジに跨がって補強板(以降FW板という)を溶接で取付ければ、梁フランジの幅厚比はb0 /tf 、梁ウェブの幅厚比はd0 /tw となり、幅厚比を小さくすることができ、表1の梁の種類は容易にFA(優秀ランク)とすることができる。即ち、所定の幅厚比を満足しない断面積の小さいJISロールH形鋼を用いても、局部座屈が発生しない梁フランジの幅厚比7.5、ウェブ幅厚比51を満足させることができ、梁材の重量を減らすことができる。また、このFW板により梁端の断面性能が大きくなるので、塑性ヒンジの発生を誘発させるために、図4に示すように、円形やその他の形状の塑性ヒンジ発生誘発穴を明け、断面欠損部を形成する。この穴は、1箇所でもよいが、急激な不連続性を避けるため複数の穴を明けてもよい。その間隔、配置等は任意に選定することができる。このFW板に設けた塑性ヒンジ発生誘発穴により塑性ヒンジの位置を特定することができる。
【0022】
本発明の請求項1は、柱から突出する梁ブラケットに補強板(FW板)が設けられ、補強板の柱側端面が柱の側面に固定(溶接など)されてい。これは、図5に示す溶接ブラケットタイプに適用した場合であり、図4(c) 、図5(b) に示すように、柱の側面にFW板を溶接で取付ける。
【0023】
本発明の請求項2は、柱に溶接で取付けられる梁の端部に補強板(FW板)が設けられ、柱の側面と補強板の柱側端面との間に空間が形成されてい。これは、図6に示す現場溶接タイプに適用した場合であり、図4(d) 、図6(b) に示すように、FW板を柱の側面から離して配置し、FW板の柱側端部を斜めにカットし、ウェブ接合用のガセットプレートの高力ボルト接合作業および梁フランジの溶接作業がし易いようにする。
【0024】
また、本発明の請求項2は、梁端部における梁フランジの両側面にサイドプレートが取付けられてい。即ち、図6(b) に示すように、サイドプレートを梁フランジの両側面に梁フランジ幅を拡大するように溶接で取付ける。
【0025】
既往の例では、例えば図6(a) では、サイドブレートを梁フランジ両側面に溶接して断面性能を大きくしたため、梁フランジの幅厚比が大きくなり、塑性ヒンジ発生予想位置の柱側で梁フランジが面外に局部座屈する例も見られる。従って、本発明では、サイドブレートが効果的な補強材となるように、図6(b) に示すように、FW板を取付けて幅厚比を小さくしているが、ヒンジ発生予想位置を越えて安全を確保するために、弾性領域(図3参照)までFW板を延長している。この場合でも、FW板を取付けて幅厚比を小さくできるため、弾性座屈しない程度のスレンダーな梁材を用いて全重量を減らすことができる。
【0026】
図5(b) の溶接ブラケットタイプの場合は、FW板自体が断面補強材となるので、また柱にFW板の端面が固定されるので、接合部の耐力を確保し易い。図6(b) の現場溶接タイプの場合は、柱にFW板が固定されていないので、FW板は梁フランジと梁ウェブを拘束できる程度の局部座屈止めとして用いられる。
【0027】
図3は地震時に梁に加わる曲げモーメントの分布から見た梁に対する弾塑性領域を示したものである。建設省通達昭56住指発第96号別記2(3)ロによれば塑性化が想定される領域は図2に示す斜線部分である。この部分が表1のFAを満足することが望ましいとしている。本発明では、FW板を用いて補剛・補強した結果、塑性領域での幅厚比を満足させることができ、かつ、図7に示す断面性能を付加することができる。即ち、所定の幅厚比を満足しない断面積の小さい梁材を使用しても、塑性領域において局部座屈の発生しない幅厚比を容易に得ることができ、耐震性能に対する信頼性を高めることができると共に梁材の重量を低減することができ、さらにFW板自体が梁断面の補強材となり必要な部分の補強に用いることができ、その長さは梁に生じる塑性領域と弾性領域から判断できるので、梁自体の所要材料を減らすことができる。また、FW板に塑性ヒンジ発生誘発穴を形成するため、塑性ヒンジ発生の位置を容易に特定することができ、骨組全体の終局強さの計算が容易となり、設計時の骨組解析の精度を高めることができる。さらに、FW板は梁の断面内に配置されるため、仕上材との納まりが良く、また、梁自体に加工を施す必要がない。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。図4は、本発明の柱と梁の接合装置をH形鋼に直接用いた場合(a) とサイドプレート工法に用いた場合(b) の実施形態と、溶接ブラケット工法と現場溶接工法に用いる補強板の実施形態を(c) と(d) に側面を示したものである。図5は、角形鋼管柱と溶接ブラケットタイプのH形鋼梁の接合装置の実施形態を従来例と共に示したものである。図6は、角形鋼管柱と現場溶接タイプのH形鋼梁の接合装置の実施形態を従来例と共に示したものである。
【0029】
図4において、H形鋼梁2の梁端部における塑性領域に梁長手方向に延在する短冊状の鋼板(フラットバー)からなる補強板(FW板)3が梁フランジ2fと梁ウェブ2wの隅角部4を跨ぐように例えば45°の傾斜角度で設けると共に、FW板3の上下の両側部をそれぞれ梁フランジ内面と梁ウェブ表面に溶接5で取付け、上下左右の合計4箇所にFW板3を配設する。さらに、これらFW板3に塑性ヒンジ発生誘発穴6を形成する。図4(a) はH形鋼梁2にFW板3を取付けただけの場合、図4(b) はH形鋼梁2の梁フランジ2fにサイドプレート7を取付けた上でFW板3を取付けた場合である。
【0030】
塑性領域は図2に斜線で示す柱1の側面からL/10または2d以上の部分であり、図4(c) の溶接ブラケット工法に用いるFW板3の場合、塑性領域の長さとほぼ同じ長さとされている。図4(d) の現場溶接工法に用いるFW板3の場合、図2の弾性領域にまで延在するような長さとした例である。塑性ヒンジ発生誘発穴6は、従来と同様に柱1の側面から梁せいの1/2程度離れた位置に塑性ヒンジが発生するように形成されている。図示例では、大きい円形の穴6の両側に小さい円形の穴6を明け、急激な不連続性を避けている。この穴6は1箇所でもよく、また穴6の形状、個数、配置間隔等は適宜設定することができる。
【0031】
図4(a) 、(b) に示すように、FW板3を設けたことにより、梁フランジ2fの幅厚比b/tf がb0 /tf 、梁ウェブ2wの幅厚比d/tw がd0 /tw となり、梁フランジ・ウェブ共に幅厚比を小さくすることができ、表1に示すSM490級の鉄骨梁においてフランジの幅厚比が7.5、ウェブの幅厚比が51を越えるものを用いても、表1の梁の種類を容易にFA(優秀ランク)とすることができ、塑性状態でも局部座屈しないため、耐震性能を向上させることができる。
【0032】
図5の溶接ブラケットタイブにおいて、角形鋼管柱1には梁ブラケット2Aが工場で取付けられており、この梁ブラケット2Aに中間部の梁2Bが継手板10と高力ボルト11により接合される。角形鋼管柱1には上下一対のダイヤフラム1aが取付けられ、このダイヤフラム1aに梁フランジ2fが突き合わせ溶接により固定される。ウェブ2wは角形鋼管柱1の側面に隅肉溶接により固定される。図5(b) に示すように、FW板3の上下の両側部をそれぞれ梁フランジ内面と梁ウェブ表面に溶接で固定し、FW板3の柱側端面を角形鋼管柱1の側面に隅肉溶接で固定する。このFW板3は工場で梁ブラケット2Aおよび角形鋼管柱1に取付けておくことができる。このFW板3の長さは、図2に示す塑性領域の長さとされている。
【0033】
図6の現場溶接タイプにおいては、現場において角形鋼管柱1の側面に梁2が接合される。角形鋼管柱1の側面に隅肉溶接で取付けられたガセットプレート20に梁ウェブ2wが高力ボルト接合され、上下のダイヤフラム1aに上下の梁フランジ2fが開先溶接により固定される。図6(b) に示すように、工場においてFW板3の上下の両側部をそれぞれ梁フランジ内面と梁ウェブ表面に溶接で固定しておく。FW板3はその柱側端部が角形鋼管柱1の側面から離れるように取付け、さらにその柱側端部を斜めにカットして傾斜端面21を形成し、ガセットプレート20の高力ボルト接合作業および梁フランジ2fの溶接作業がし易いようにスペースを形成する。なお、上フランジでは、開先溶接の裏当て材のスペースが形成され、下フランジでは、現場溶接作業用のスペースが形成される。FW板3の長さは、図3に示す塑性領域から弾性領域にまで延在する長さとされている。
【0034】
図7は、本発明(図5(b) 、図6(b) )のFW板を用いることによる断面性能を従来例(図5(a) 、図6(a) )の断面性能と比較したものである。図5(a) の従来例(ブラケットタイプ)の場合、塑性ヒンジを得るために断面性能の大きい梁材が必要となるのに対して、図5(b) の本発明(ブラケットタイプ)の場合、FW板を用いることで断面性能の小さい梁材でよく、梁材の断面積が小さくても、塑性領域において従来の図5(a) と同等の断面性能が得られる。図6(a) の従来例(現場溶接タイプ)の場合、梁全長にわたりMp を満足する断面性能とする必要があるのに対して、図6(b) の本発明(現場溶接タイプ)の場合、FW板を用いることで断面性能の小さい梁材でよく、梁材の断面積が小さくても、塑性領域において従来の図6(a) と同等の断面性能が得られる。
【0035】
なお、以上は角形鋼管柱とH形鋼梁の接合部に適用した場合について説明したが、これに限らず、その他の柱と梁の接合部にも本発明を適用することができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果を奏することができる。
(1) 梁端の塑性領域に梁フランジと梁ウェブに跨がって短冊形のFW板を固定するため、フランジ・ウェブ共に幅厚比を小さくすることができ、所定の幅厚比を満足しない断面積の小さい梁材を使用しても、塑性領域において局部座屈の発生しない幅厚比を容易に得ることができ、耐震性能に対する信頼性を高めることができると共に梁材の重量を低減することができる。
(2) FW板自体が梁断面の補強材となり必要な部分の補強に用いることができ、その長さは梁に生じる塑性領域と弾性領域から判断できるので、梁自体の所要材料を減らすことができる。
(3) FW板に塑性ヒンジ発生誘発穴を形成するため、塑性ヒンジ発生の位置を容易に特定することができ、骨組全体の終局強さの計算が容易となり、設計時の骨組解析の精度を高めることができる。
(4) FW板は梁の断面内に配置されるため、仕上材との納まりが良く、また、梁自体に加工を施す必要がない。
(5) FW板は幅厚比制限のなかった時代に建設された建物の耐震補強に用いると、現場作業がしやすく、補強効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】多層建築物のラーメン構造骨組が地震力により機構状態に達した例を示す概略正面図である。
【図2】図1の柱と梁の接合部における梁端の塑性化が想定される領域を示す概略正面図である。
【図3】図2における曲げモーメントの分布と弾・塑性領域を示す図である。
【図4】本発明の柱と梁の接合装置の1例を示したものであり、(a) はH形鋼に直接用いる場合の梁の断面図、(b) はサイドプレート工法に用いる場合の梁の断面図、、(c) はブラケット工法に用いる補強板の1例を示す側面図、(d) は現場溶接工法に用いる補強板の1例を示す側面図である。
【図5】本発明の角形鋼管柱と溶接ブラケットタイプのH形鋼梁の接合装置の実施形態を従来例と共に示す正面図および平面図である。
【図6】本発明の角形鋼管柱と現場溶接タイプのH形鋼梁の接合装置の実施形態を従来例と共に示す正面図および平面図である。
【図7】本発明に係るFW板を用いることによる断面性能を従来例と本発明で比較した図である。
【符号の説明】
1…柱(角形鋼管柱)
1a…ダイヤフラム
2…梁(H形鋼梁)
2f…梁フランジ
2w…梁ウェブ
3…補強板(FW板)
4…隅角部
5…溶接
6…塑性ヒンジ発生誘発穴
7…サイドプレート
10…継手板
11…高力ボルト
20…ガセットプレート
21…傾斜端面

Claims (2)

  1. 柱と梁を剛接合した構造骨組における柱と梁の接合装置であり、梁端部の塑性領域に梁長手方向に延在する補強板が梁フランジと梁ウェブの隅角部を跨ぐように設けられると共に、補強板の上下の両側部がそれぞれ梁フランジ内面と梁ウェブ表面に固定され、かつ、補強板の柱側端面が柱の側面に固定され、この補強板には塑性ヒンジ発生誘発穴が形成されていることを特徴とする柱と梁の接合装置。
  2. 柱と梁を剛接合した構造骨組における柱と梁の接合装置であり、梁端部における梁フランジの両側面にサイドプレートが取付けられており、梁端部の塑性領域に梁長手方向に延在する補強板が、柱の側面と補強板の柱側端面との間に空間が形成されるように、かつ、梁フランジと梁ウェブの隅角部を跨ぐように設けられると共に、補強板の上下の両側部がそれぞれ梁フランジ内面と梁ウェブ表面に固定され、この補強板には塑性ヒンジ発生誘発穴が形成されていることを特徴とする柱と梁の接合装置。
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