JP5557434B2 - 二酸化炭素中の炭素の固定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶融塩からなる電解浴を利用した二酸化炭素中の炭素の固定方法に関し、特に電極間に電圧を印加することにより、溶融塩中へ吹き込まれた二酸化炭素を分解して陰極表面へ炭素として固定化することを特徴とする二酸化炭素中の炭素の固定方法に関する。
近年、地球温暖化防止の取り組みの一つとして、各国は温室効果ガスの削減が求められている。特に1998年京都で行なわれた地球温暖化防止会議(COP3)では、2012年までに、我が国を含む先進国全体で温室効果ガスを1990年比で5%(我が国は6%)削減する数値目標などが盛り込まれた「京都議定書」が採択され、その活動が活発化している。
この京都議定書において、温室効果ガスとは、二酸化炭素(CO)、メタンガス(CH)、亜酸化窒素(NO)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF)の6種類とされているが、このうち、温室効果ガス全体の9割近くを占め、産業活動全体と密接な関わりを持つのがエネルギーの燃焼に伴って発生する二酸化炭素である。
したがって、温室効果ガス削減対策を効果的に推進するためには、省エネルギー技術、代替エネルギーの適用拡大により二酸化炭素の排出削減を進めると共に、大気中に排出された二酸化炭素については、植物や微生物等を用いた二酸化炭素の吸収・固定化技術、および光触媒や化学物質又は化学反応を利用した二酸化炭素の分解・回収技術の開発等を進めることが重要である。
このような背景の下、化学物質又は化学反応を利用した二酸化炭素を分離・固定化する技術としては、水酸化ナトリウムや水などを用いて分離回収する吸収法、ゼオライト等の固体状の吸着剤を用いて分離回収する吸着法、及び二酸化炭素のみを通す膜を用いて二酸化炭素を分離回収する膜分離法等が知られている。
また、近年では、特開2002−239373号公報(特許文献1)及び特開2004−73978号公報(特許文献2)に記載されているように、正極と負極を備えた固体電解質において電圧を印加し、負極において二酸化炭素を炭酸塩として分離固定化する技術が報告されている。
しかしながら、上記のような吸収法及び吸着法は大掛かりな装置が必要であり、その中でも膜分離法は分離膜が高価であるために設備費が高く、また分離後の処理や膜交換等のランニングコストも高く、さらに二酸化炭素の除去率が低いという問題があった。また、特許文献1及び2に記載されているような二酸化炭素の固定化技術は、使用する薬品類も多く設備が複雑であるなど設備の操作及び維持管理が極めて煩雑であり、結果としてランニングコストも高くなるといった問題があった。
一方、近年では、特開平6−88291号公報(特許文献3)及び特願2007−292692号明細書(特許文献4)に記載されているように、溶融塩を用いた電気化学的なプロセスの利用により、簡便な製法及び装置で電極上に炭素等を生成する技術が着目されている。しかしながら、これらの技術は、電解浴として使用する溶融塩の中に目的とする生成物のイオンを予め塩として添加しておくものであり、大気中に存在する二酸化炭素ガス(気体)を上記電気化学的なプロセスを用いて固定化するものではなかった。
特開2002−239373号公報 特開2004−73978号公報 特開平6−88291号公報 特願2007−292692号明細書 Electrochemical Formation of Thin Carbon Film from Molten Chloride System, Yasuhiko Ito,Takashi Shimada,and Hiroyuki Kawamura, Molten Salts,Vo92-16,574(1992) 「溶融塩化物系での放電電解によるNi微粒子の形成」、河村博行、森谷公一、伊藤靖彦、粉体及び粉末冶金、45(12)、1142、(1998)
本発明は、このような問題点に鑑みて発明されたものであり、非特許文献1に記載の薄膜炭素生成技術を参考に溶融塩を用いた電気化学的なプロセスを利用して、二酸化炭素(正確には、二酸化炭素から二酸化炭素中の炭素)を効率良くかつ簡単、安価に固定化できる二酸化炭素中の炭素の固定方法を提供することを目的とする。
そこで、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、陰極および陽極が配置された溶融塩中に予め炭酸イオン(CO 2−)を含ませておき、これに二酸化炭素を吹き込むと共に、陰極と陽極との間に炭酸イオンが還元される電圧を印加することにより、前記陰極表面に二酸化炭素を分解して炭素として生成(固定化)する二酸化炭素中の炭素の固定方法を完成するに至った(図1参照)。
すなわち、本発明によれば、生物学的な炭素の固定方法よりもはるかに早い反応速度で二酸化炭素中の炭素を固定化することができ、しかも二酸化炭素と反応等させるための特殊な物質や化学薬品等を準備する必要がなくなる。
二酸化炭素中の炭素の固定化原理
本発明において、電解浴中へ吹き込まれた二酸化炭素を分解して炭素として固定化する反応は、以下の通りである。

陽極 : 2O2− → O+4e ・・・(a)
陰極 : CO 2−+4e → C+3O2− ・・・(b)
バルク: CO(外部供給)+O2− → CO 2− ・・・(c)

全体の反応は、(a)式+(b)式+(c)式より

CO → C+O ・・・(d)
電解浴
本発明においては、電解浴中に炭酸イオン(CO 2−)及び酸化物イオン(O2−)を安定的に存在させるため、以下の2つの電解浴のいずれかを用いる。
(1)主たる溶融塩として、アルカリ金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属ハロゲン化物若しくはこれらの混合物などのO2−とCO 2−を含まない塩を用い、これに炭酸イオン(CO 2−)源としてLiCO等の炭酸塩を添加したものを電解浴として使用する。
さらに、電解初期、電解浴に酸化物イオン(O2−)源を添加しておけば、二酸化炭素の吹込みによる炭酸イオン(CO 2−)の生成がスムーズになるので好ましい。
(2)主たる溶融塩として、炭酸イオン(CO 2−)を含む炭酸塩を用いる。この場合も、前項同様、酸化物イオン(O2−)源を添加しておけば、二酸化炭素の吹込みによる炭酸イオン(CO 2−)の生成がスムーズになるので好ましい。
ここで、酸化物イオン源としては、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物などがあり、CO 2−を供給する溶融塩としては、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ土類金属炭酸塩などがある。また、アルカリ金属酸化物としては、LiO、NaO、KO等の酸化物を使用することができ、アルカリ土類金属酸化物としては、MgO、CaO、BaO等の酸化物を使用することができる。また、アルカリ金属炭酸塩としては、LiCO、NaCO、KCO等の炭酸塩を使用することができ、アルカリ土類金属炭酸塩としては、MgCO、CaCO、BaCO、等の炭酸塩を使用することができる。
逆に、O2−とCO 2−を含まない塩としては、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物などを使用することができる。アルカリ金属ハロゲン化物としては、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、CsCl、LiBr、NaBr、KBr、RbBr、CsBr、LiI、NaI、KI、RbI、CsI等の化合物を使用することができ、アルカリ土類金属ハロゲン化物としては、MgF、CaF、SrF、BaF、MgCl、CaCl、SrCl、BaCl、MgBr、CaBr、SrBr、BaBr、MgI、CaI、SrI、BaI等の化合物を使用することができる。
上記化合物は、単独で使用することもできるし2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、これらの化合物の組み合わせ、及び組み合わせる化合物の数、混合比等も限定されることはなく、好ましい作動温度域に応じて適宜選択することができる。
一方、(1)及び(2)のいずれの電解浴を用いる場合においても、酸化物イオン(O2−)は電解反応の進行に伴い生成されるので、予め調整されるO2−の濃度は特に限定されるものではない。一方、炭酸イオン(CO 2−)については、陰極での炭素の析出反応をスムーズに行わせるため、飽和もしくは飽和に近い状態に調整しておくのが好ましい。
溶融塩からなる電解浴は、生成される炭素の高温での酸化・消耗を防ぐなどの理由により、必要があれば不活性ガスによるパージ若しくは気流中に保持することが好ましく、炭酸ガス雰囲気に保つのがより好ましい。さらに電解浴(溶融塩)は、生成される炭素の緻密性を一層高めたり生成速度を高めたりする目的で攪拌、及び/又は電解浴若しくは電極自体を振動させながら電解することもできる。
処理温度
処理温度(溶融塩からなる電解浴の浴温)については、特に制限はない。一般に電解浴の浴温が高いほど物質供給及び反応促進の面で有利になるが、一方で、900℃を超える高温域では炭酸塩自体の熱分解が顕著になることや、高温では使用できる電解槽の材料が限られ取扱いが難しくなることから、実際の処理温度としては250℃〜800℃程度の処理温度であることが好ましく、特に350℃〜700℃程度の処理温度であることがより好ましい。
陰 極
陰極上での電極反応は、以下に示される(b)式の通りである。Cの還元反応を進行させることにより、陰極上に炭素を析出させる。

CO 2− +4e →C+3O2− ・・・(b)
陰極材料としては、本発明の処理温度において導電性を有するものであれば、金属に限らず全ての種類の材料の使用が可能である。また、電解浴である溶融塩中に浸漬させるのみで反応したり又は成分が溶出したりするような材料であっても、電極上に炭素の生成が開始されて以降はそのような反応が進行せず、かつ該材料の特徴が損なわれることがないものであれば、陰極材料として使用することができる。また、非特許文献2の中に記載されているようなプラズマ誘起電解法を利用し、陰極を溶融塩中に浸漬せずに電解浴上近傍に設置して放電陰極として使用することもできる。
陽 極
陽極としては、上記CO 2−の還元反応((b)式)により生じるO2−を酸化できる電極材料が用いられる。例えば、一般に不溶性陽極として市販される電極材料を用いると、(a)式で示されるような陽極反応が進行し、陽極上では酸素が発生する。

2O2− → O+4e ・・・(a)
このような不溶性陽極としては、Ti等の金属からなる基体表面がRuO2、IrO、RhO2、Ta25で被覆された不溶性電極、NiFe3−X(X=0.1〜2.0)で表されるニッケルフェライト、若しくは式:NiCo1−XO(X=0.1〜0.5)又は式:NiCo3−X4(X=0.3〜1.5)で表されるニッケルコバルト酸化物からなる導電性セラミックス電極、あるいは導電性ダイヤモンド電極などを使用することができる。
電解条件
電解時の電極電位については、炭酸イオン(CO 2−)が還元される電位領域にあるように電極電位若しくは電解電流を制御すればよい。例えば、浴温が500℃程度の溶融LiCl−KClを電解浴に用いる場合、CO 2−の還元反応が起こる約1.2V(Li/Li基準)よりも卑な電位であり、かつLi金属が析出しない約0Vよりも貴な電位で電解を行うことが好ましい。
特に、電極上に平滑で密着性良く炭素を形成させるためには、CO 2−の還元反応が起こる最も貴な電位から卑な方向に0.8V以内の電位領域、より好ましくは0.6V以内の電位領域内の陰極電位になるように調整するのが良い。電解時の電流値は、供給される二酸化炭素の単位時間当たりの供給量にあわせて適宜調節すれば良く、電解浴中のCO 2−濃度が減少しないように、陰極で単位時間当たりに消費されるCO 2−よりも、二酸化炭素とO2−が反応して生成するCO 2−の方が大きくなるように設定するのが好ましい。
なお、本発明では陰極と陽極との間で酸化・還元反応を逆転させる必要がなく、また安定した品質を有する炭素を析出させるために有利であることから、陰極と陽極との間に印加される電圧は直流電圧であることが好ましい。
吹き込み条件
二酸化酸素と酸化物イオン(O2−)による炭酸イオン(CO 2−)の生成反応は気液反応として進行するため、二酸化炭素ガスの気泡サイズ(気泡径)が小さければ小さいほど単位体積当たりの比表面積が拡大して反応性は向上する。したがって、二酸化炭素の気泡径は、溶融塩の温度、酸化物イオン(O2−)濃度、二酸化炭素の気泡数等に依存し、好ましい二酸化炭素の気泡径は、炭酸塩生成部の規模や電解電流の大きさなどに応じて適宜決めることができる。
二酸化炭素の気泡径は厳密ではないが、100nm〜10mm程度が好ましく、1μm〜1mm程度がより好ましい。なお、ここでいうところの気泡径とは二酸化炭素を溶融塩に供給時(又は供給直後)の気泡径であり、これは酸化物イオン(O2−)との反応が進行するにつれて縮小する。また、単位体積当たりに含まれる二酸化炭素の気泡数も、溶融塩の温度、酸化物イオン(O2−)濃度、二酸化炭素の気泡径等によって決定すればよい。
微細化された二酸化炭素ガスを発生させる方法は特に限定されない。例えば、ミクロンオーダーの気泡を発生させたい場合は、パイレックス(登録商標)、石英製、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素あるいはアルミナ製などの多孔質部材の中を通過させることによりこの目的が達成される。また、サブミクロン以下のオーダーの微細な気泡を発生させたい場合は、超音波印加等によりさらに二酸化炭素の気泡を微細化すればよい。
電解浴である溶融塩中に吹き込まれる二酸化炭素の温度は特に限定されないが、電解浴の温度変動を抑制するためには二酸化炭素を溶融塩の温度近くまで予備的に加熱しておくことが好ましい場合もある。なお、二酸化炭素の加熱は、二酸化炭素の流路に別途ヒーターなど設けて加熱してもよく、若しくは二酸化炭素の流路を電解浴中に設置することにより電解浴の溶融塩の熱を利用して加熱してもよい。
二酸化酸素と酸化物イオン(O2−)による炭酸イオン(CO 2−)の生成反応を促進させる目的で、溶融塩を撹拌することが好ましい。このような攪拌の手段としては、二酸化炭素あるいは不活性ガスによるバブリングを利用してもよいし、あるいはプロペラ等の駆動部を有する攪拌機(アジテーター)を使用してもよい。
回収、後処理
陰極で析出した析出物を回収した際の付着塩の洗浄には、溶融塩電解など他の溶融塩を取り扱う場合の一般的な洗浄方法を利用することができる。例えば、温水を使用すれば、付着塩を容易に除去することができる。また、析出物中に酸化を抑制すべき金属成分などを含む場合には、洗浄中の酸化を防ぐため、脱酸素処理をした洗浄水を使用し、かつ洗浄時の雰囲気は不活性ガスや水素などにより非酸化雰囲気又は還元雰囲気に保持することが好ましい。
以上の検討結果をまとめると、本発明の特徴は以下のように整理される。
すなわち、本発明によれば、溶融塩を用いた電気化学プロセスによる二酸化炭素中の炭素の固定方法であって、(a)炭酸イオン(CO 2−)を含む溶融塩からなる電解浴を準備するステップと、(b)前記電解浴中に陰極および陽極を配置するステップと、そして(c)前記電解浴の中へ二酸化炭素を吹き込むと共に、前記陰極と陽極との間に炭酸イオンが還元される電圧を印加して通電するステップとからなり、前記通電により、二酸化炭素を分解して陰極表面へ炭素として固定化することを特徴とする二酸化炭素中の炭素の固定方法が提供される。
さらに、本発明によれば、非特許文献2の中に記載されているようなプラズマ誘起電解法を用いることで、陰極に析出される炭素粒子の微粒子化を図ることができる。また、電解浴である溶融塩の中に他の金属イオンを添加することにより、例えば炭素と白金を共析させたり、若しくは窒化炭素等の化合物を析出させることもでき、簡単に陰極に析出される炭素に高い付加価値を与えることもできる。
以上のように、本発明によれば、陰極および陽極が配置された溶融塩中に予め)炭酸イオン(CO 2−)を含ませておき、これに二酸化炭素を吹き込むと共に、陰極と陽極との間に炭酸イオンが還元される電圧を印加して通電することにより、前記陰極表面に二酸化炭素を分解して炭素として生成(固定化)する二酸化炭素中の炭素の固定方法を提供することができる。また、本発明による二酸化炭素中の炭素の固定方法では、生物学的な炭素の固定方法よりもはるかに早い反応速度で二酸化炭素中の炭素を固定化することができ、しかも二酸化炭素吸着用の特殊な化学物質や反応等に用いる水素ガスを準備する必要がない利点がある。
以下、図面を参照しながら本発明の1実施態様について説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
図1は、本発明による二酸化炭素中の炭素の固定方法の原理説明図である。
図2は、本発明で使用される二酸化炭素中の炭素固定装置1の概略構成図である。
炭素固定装置1は、溶融塩20を貯留するための電解ポット2と電解ポット2に貯留された溶融塩20に直流電圧を印加するための陰極3及び不溶性(酸素発生)陽極4そして直流電源5を含む電解システム6とから構成される。また、電解ポット2は、二酸化炭素を吹き込むためのランス7と不活性ガスを吹き込むことにより内部溶融塩20を撹拌するためのバブリングノズル8を含み、さらに陰極3と陽極4との間には、撹拌及び流動化される溶融塩20の流れを整えるための整流板9が設けられている。
陰極材料は、溶融塩20の処理温度において導電性を有するものであれば、金属に限らず全ての種類の材料の使用が可能である。また、電解浴である溶融塩20中に浸漬させるのみで反応したり又は成分が溶出したりするような材料であっても、陰極3表面に炭素の生成が開始されて以降はそのような反応が進行せず、かつ該材料の特徴が損なわれることがないものであれば、陰極材料として使用することができる。
また、不溶性陽極4としては、Ti等の金属からなる基体表面がRuO2、IrO、RhO2、Ta25で被覆された不溶性電極、NiFe3−X(X=0.1〜2.0)で表されるニッケルフェライト、若しくは式:NiCo1−XO(X=0.1〜0.5)又は式:NiCo3−X4(X=0.3〜1.5)で表されるニッケルコバルト酸化物からなる導電性セラミックス電極、あるいは導電性ダイヤモンド電極などを使用することができる。
ランス7は、吹き込まれた後の二酸化炭素の溶融塩20中の浮上流路を長く採るため、電解ポット2の底部であって陰極3の下部に、電解ポット2の中心より偏心して取り付けられる。また、ランス7の先端には、二酸化炭素ガスを通過させて気泡化するためのパイレックス又は高純度アルミナ等の多孔質材料からなるヘッダー10が取り付けられている。
バブリングノズル8は、溶融塩20の撹拌効果を最大限に発揮するように、電解ポット2の底部であって陰極3の下部に、電解ポット2の中心より偏心して取り付けられる。
整流板9は、溶融塩20がその周りを鉛直方向にループを描くように循環できるように、電解浴浴面近傍と底面近傍には適当な開口部が設けられる。
さらに、電解ポット2の上面には、溶融塩20から発生する酸素ガス、不活性ガス及び一部未反応の二酸化炭素ガス等を外部へリークさせることなく回収するためのカバー11及び排出ダクト12が設けられる。
次に、図2を参照して、炭素固定装置1を使用した場合の本発明による二酸化炭素中の炭素の固定化反応について説明する。
溶融塩として、アルカリ金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属ハロゲン化物若しくはこれらの混合物を用い、これに炭酸イオン(CO 2−)源としてLiCO等を添加することにより、電解ポット2の中に炭酸イオン(CO 2−)を含む溶融塩20を準備する。溶融塩20は、バブリングノズル8を介して不活性ガスを吹き込むことにより撹拌及び流動化され、整流板9に沿ってそして整流板9の周りを鉛直方向にループを描くように循環する。
外部からランス7を介して吹き込まれた二酸化炭素は、ランス7の先端に取り付けられた多孔質ヘッダー10の効果により溶融塩20中で微細な気泡となり、浴中の酸化物イオン(O2−)と気液反応を起こして炭酸イオン(CO 2−)となる(下記式(c)参照)。また、二酸化炭素の吹き込みと共に、直流電源5により、陰極3と陽極4との間に炭酸イオン(CO 2−)が還元される直流電圧を印加して通電する。
二酸化炭素から生じた炭酸イオンは、不活性ガスによるバブリング効果(ガスリフト)により生じた溶融塩20の循環流に乗って陰極3へ運ばれ、電解反応により還元され、炭素(C)と酸化物イオン(O2−)を生成する(下記式(b)参照)。炭素は、陰極表面に析出し固定化される一方、酸化物イオン(O2−)は不活性ガスによるバブリング効果により生じた溶融塩20の循環流に乗って不溶性陽極4へ運ばれる。
陽極4の表面上では、酸化物イオン(O2−)が酸化されて酸素ガスを発生する(下記式(a)参照)。したがって、陽極4では、ランス7を介して吹き込まれる二酸化炭素に含まれる酸素原子相当量を陽極4から酸素ガス(O)として発生させ、残りの酸化物イオン(O2−)は、陽極4での酸化反応に関与することなく不活性ガスによるバブリング効果により生じた溶融塩20の循環流に乗ってランス7の二酸化炭素吹き出し口に運ばれ、再び炭酸イオン(CO 2−)を生成する。
以上をまとめると、炭素固定装置1の溶融塩20からなる電解浴中では、以下のような二酸化炭素中の炭素固定化反応が生じている。

陽極 : 2O2− → O+4e ・・・(a)
陰極 : CO 2−+4e → C+3O2− ・・・(b)
バルク: CO(外部供給)+O2− → CO 2− ・・・(c)

全体の反応は、(a)式+(b)式+(c)式より

CO → C+O ・・・(d)
また、陽極4で生成された酸素ガスは気相中へと排出され、そして排出ダクト12を介して回収等することができる。この時、陽極4では、陽極表面に凹凸加工等による流路を設けることにより溶融塩20に接触可能な陽極表面積の割合を増加させ、また陽極表面に沿ってスムーズな溶融塩20の流れを形成させることで、発生する酸素ガスを陽極表面で滞留させることなく速やかに脱離させ、気相中へ排出することができる。
本発明による二酸化炭素中の炭素の固定方法の原理説明図である。 本発明で使用される二酸化炭素中の炭素固定装置1の概略構成図である。
符号の説明
1・・・ 二酸化炭素中の炭素固定装置
2・・・ 電解ポット
3・・・ 陰極
4・・・ 不溶性陽極
5・・・ 直流電源
6・・・ 電解システム
7・・・ ランス
8・・・ バブリングノズル
9・・・ 整流板
10・・・ ヘッダー
11・・・ カバー
12・・・ 排出ダクト

Claims (12)

  1. 溶融塩を用いた電気化学プロセスによる二酸化炭素中の炭素の固定方法(但し、炭素繊維構造物又は炭素繊維強化炭素材への炭素コーティング方法および炭素/炭素複合材の製造方法を除く。)であって、
    (a)炭酸イオン(CO 2−)を含む溶融塩からなる電解浴を準備するステップと、
    (b)前記電解浴中に陰極および陽極を配置するステップと、そして
    (c)前記電解浴の中へ二酸化炭素を吹き込むと共に、前記陰極と陽極との間に炭酸イオンが還元される電圧を印加して通電するステップと
    からなり、
    前記溶融塩は、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、CsCl、LiBr、NaBr、KBr、RbBr、CsBr、LiI、NaI、KI、RbIおよびCsIよりなる群から選ばれた少なくとも一つのハロゲン化物又は前記ハロゲン化物とアルカリ土類金属ハロゲン化物の混合物であり、そして
    前記陽極は、生成されたガスを排出するために前記陽極表面に溝状の流路を有しており、そしてTi金属からなる基体の表面がRuO、IrO、RhO又はTaで被覆された不溶性電極、式:NiFe3−X(X=0.1〜2.0)で表されるニッケルフェライトからなる導電性セラミックス電極、若しくは式:NiCo1−XO(X=0.1〜0.5)又は式:NiCo3−X(X=0.3〜1.5)で表されるニッケルコバルト酸化物からなる導電性セラミックス電極であり、
    前記通電により、二酸化炭素を分解して陰極表面へ炭素として固定化することを特徴とする二酸化炭素中の炭素の固定方法。
  2. 前記アルカリ土類金属ハロゲン化物は、MgF、CaF、SrF、BaF、MgCl、CaCl、SrCl、BaCl、MgBr、CaBr、SrBr、BaBr、MgI、CaI、SrIおよびBaIよりなる群から選ばれた少なくとも一つのハロゲン化物である請求項1に記載の二酸化炭素中の炭素の固定方法。
  3. 前記電解浴は、さらに酸化物イオン(O2−)を含んでいる請求項1に記載の二酸化炭素中の炭素の固定方法。
  4. 前記酸化物イオン(O2−)は、アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物若しくはこれらの混合物を溶融塩中に添加することにより供給されることを特徴とする請求項3に記載の二酸化炭素中の炭素の固定方法。
  5. 前記アルカリ金属酸化物は、LiO、NaO又はKOである請求項4に記載の二酸化炭素中の炭素の固定方法。
  6. 前記アルカリ土類金属酸化物は、MgO、CaOまたはBaOである請求項4に記載の二酸化炭素中の炭素の固定方法。
  7. 前記炭酸イオン(CO 2−)は、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩若しくはこれらの混合塩を溶融塩中に添加することにより供給されることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素中の炭素の固定方法。
  8. 前記アルカリ金属炭酸塩は、LiCO、NaCO又はKCOである請求項7に記載の二酸化炭素中の炭素の固定方法。
  9. 前記アルカリ土類金属炭酸塩は、MgCO、CaCOまたはBaCOである請求項7に記載の二酸化炭素中の炭素の固定方法。
  10. 電解初期、前記炭酸イオン(CO 2−)は溶融塩中で飽和濃度に調整されていることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素中の炭素の固定方法。
  11. 前記陰極と陽極との間に印加される電圧は、直流電圧であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一項に記載の二酸化炭素中の炭素の固定方法。
  12. 前記二酸化炭素は、多孔質材料を通過させることにより気泡化させて電解浴中へ吹き込むことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか一項に記載の二酸化炭素中の炭素の固定方法。
JP2008222001A 2008-08-29 2008-08-29 二酸化炭素中の炭素の固定方法 Active JP5557434B2 (ja)

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