JP4802323B2 - 溶融塩中における酸素発生装置および酸素発生方法 - Google Patents

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本発明は、sp3結合を有する炭素系材料を備える電極(例えば、いわゆるダイヤモンド電極)をアノードとして用い、酸化物イオンの存在する溶融塩中においてアノードの消耗および溶解を伴わずに、アノード上で安定に酸素(好ましくは酸素のみ)を発生させる方法、およびアノードの消耗および溶解を伴わずに、アノード上で安定に酸素(好ましくは酸素のみ)を発生させ得る酸素発生装置に関するものである。
溶融塩は、熱的および化学的に安定した物質であり、電気化学窓が広い、電気伝導性が良い、比較的他の物質を溶解し易いなど、電気化学プロセスの電解質として非常に優れた性質を有している。よって、水溶液系では製造することが困難な金属の製造が可能となるために、溶融塩を用いて金属酸化物から純金属を得るプロセスが提案されている。このとき、従来の技術では溶融塩中で生成する酸化物イオンを除去するために炭素電極を用い、以下の反応式に基づいて電解を行なっている。以下のプロセスでは、炭素電極の消耗に伴って二酸化炭素が発生する。
2-+1/2C→1/2CO2+2e-
上記プロセスの一例としては、アルミニウム(Al)の電解製造が挙げられる。Alの電解製造で現在、主に用いられている方法は、A123を溶融した氷晶石(3NaF−AlF3)中に溶解させ、アノードに炭素電極を用いて電気分解を行なう、「ホール・エルー法」である(例えば、非特許文献1参照)。当該方法は、以下の反応によってAlが製造される。
アノード:O2-+1/2C→1/2CO2+2e-
カソード:Al3++3e-→Al
全反応 :2/3Al3++O2-+1/2C→2/3Al+1/2CO2
また溶融塩は上記金属の製造プロセスのほか、高いFP除染係数(「FP」とは「核分裂生成物」のことをいう)が得られる等の理由により、原子力発電の使用済酸化物燃料の再処理プロセスに利用することが知られている。例えば特許文献1には、上記電解還元プロセスに用いる電解還元装置、および電解還元方法が開示されている。当該電解還元装置は、還元対象である酸化物を保持する陰極と、陽極と、酸化物および陽極が浸される溶融塩と、当該溶融塩を収容する容器と、陰極および陽極に電流を通電して酸化物を還元する直流電源とを備えている。当該電解還元装置における上記陽極は、炭素製の本体と白金製のリードとを有するもの(いわゆる「炭素電極」)である。
上記を始めとする従来の技術では、電解中に炭素電極が消耗されるため、定期的に電極の取替えが必要であり、さらに電極面積が変化するため定電流電解を行なえば電解電圧が変化する等の問題点を有している。また炭素電極の消耗に伴って発生するCO2は地球温暖化の原因となる温室効果ガスであるとされ、その削減が必要とされている。
そこで、上記のごとく電解プロセスにおいて消耗してしまう炭素電極の替わりに、溶融塩中で安定的にO2-(酸化物イオン)をO2へ陽極酸化することができ、電解プロセスにおいて消耗することがない、または消耗が少ない電極(便宜上「不溶性酸素発生電極」という)が望まれている。しかし、当該不溶性酸素発生電極は、いまだ見出されていない。
ところで、従来、酸素発生電極は水の電気分解を小さな過電圧下で行なうために開発されてきた。水の電気分解等の水溶液系では、白金、ルテニウム酸化物、またはイリジウム酸化物などを電極として用いることによって、酸素発生時の過電圧が抑制され、低い電力で酸素発生を行なうことができるようになった。一方、溶融塩系においては、酸化物イオンを含む溶融塩中で白金電極を使用することによって、酸素を発生させることができるということが知られている(非特許文献2参照)。しかし上記白金電極であっても、酸化による電極の顕著な消耗が観察され、また貴金属であるため非常に高価である等の問題点がある。一方、ルテニウム酸化物、またはイリジウム酸化物からなる電極では、溶融塩を用いる系(溶融塩系)において、酸素を発生させることができずに溶解してしまう。よって上記した水溶液系の酸素発生電極は、溶融塩系において溶解することなく、安定的に酸素を発生させることができる電極とはいえない。
公知のダイヤモンド電極は、近年水溶液系での研究が多くなされてきている。しかしダイヤモンド電極は、高い化学的安定性を有しているものの、水溶液系では高い酸素発生過電圧が必要、すなわち酸素発生させるためには高い電圧が必要であり、酸素発生電極として期待されているものではなく、塩素発生など他の応用が期待されている(非特許文献3参照)。一方で、溶融塩は水溶液と異なり高温であるため、酸素に対するダイヤモンド電極の耐久性や、塩化物イオンとの反応が懸念され、これまで溶融塩中での検討がなされていなかった。また、水溶液系の結果から酸素発生用電極として不適当なものと類推されていた。
したがって、溶融塩中で溶解することなく、安定に酸素発生させ得る電極は得られておらず、かかる不溶性酸素発生電極の開発が求められている。
特開2003−166094号公報(平成15年(2003)6月13日公開) 電気化学協会編、「電気化学便覧」、第4版、丸善、1985年1月、p261 Y. Kanzaki and M. Takahashi, Electroanalytical Chemistry and Interfacial Electrochem., 58, 339 (1975) S. Ferro, A. De Battisti, I. Duo, Ch. Comninellis, W. Haenni, and A. Perret, J. Electrochem. Soc., 147 (7) 2614-2619 (2000)
上記のごとく、溶融塩中に存在する酸化物イオンを電気化学的に除去する方法としては、従来、アノードに炭素電極を用い、二酸化炭素発生を伴うプロセスを用いて行なってきた。このため、炭素電極の消耗および二酸化炭素の発生が起こり、電解中に電極の交換が必要である、電解電圧が変化する、カソード側に炭素不純物が混入する、などといった技術的な問題、および室温効果ガスである二酸化炭素の発生という環境的な問題があった。また白金電極を用いた場合であっても、二酸化炭素の発生は抑えることができるものの、電極の消耗の問題は、依然未解決のままである。
よって本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、溶融塩中における酸化物の電解還元プロセスにおいて、二酸化炭素を発生することがなく、または発生がほとんどなく、安定的にO2-(酸化物イオン)をO2へ陽極酸化することができ、かつ、電解プロセスにおいて消耗することがない、または消耗が少ない電極(「不溶性酸素発生電極」)を備える酸素発生装置、および酸化物または酸化物イオンの存在する溶融塩中においてアノードの消耗および溶解を伴わずに、アノード上で安定に酸素(好ましくは酸素のみ)を発生させる方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題に鑑み、溶融塩中で使用し得る不溶性酸素発生電極の検索を行なった。本発明者らは、従来公知の塩素発生用寸法安定性電極(「塩素発生用DSE」ともいう)および酸素発生用寸法安定性電極(「酸素発生用DSE」ともいう)、タンタル(Ta)電極並びにタングステン(W)電極をそれぞれアノードとして用いて酸化物イオンの電解酸化を行なった。しかし、アノードからの酸素発生は見られず、電極の消耗が観察された。一方、白金電極をアノードとして用いた場合では、リチウム金属析出電位に対して4.2Vの電圧をかけた場合に酸素の発生が観察されたが、電極自体の消耗が見られた。以上の結果より酸化物イオンを含む溶融塩中では、これまで安定と考えられてきた酸化物が安定に存在できず溶解するという特異な現象を、本発明者らは見出した。
そこで本発明者らは、結晶構造が安定であり、酸素分子を構造に含まず酸素分子と結合しにくいsp3炭素系材料を備える電極(「sp3炭素系電極」という)に着目して検討を行なった。つまり本発明者らは、酸化物イオンを含む溶融塩中で、当該sp3炭素系電極であるダイヤモンド電極をアノード(陽極)として用い、溶融塩と接触するカソード(陰極)に対し正の電位に保つ(その結果、実質的な電流が溶融塩中をアノードからカソードに流れる)ことにより酸化物イオンの電解酸化を行なった。その結果、当該電解プロセスにおいて、二酸化炭素を発生させることがなく安定に酸素発生を行なうことができること、およびアノード(陽極)は消耗しないことを、初めて見出した。
また、溶融塩系において上記ダイヤモンド電極を陽極に用いた場合の酸素発生電位は、ダイヤモンド電極を用いた水の電気分解の結果からの予想に反して、低いものであった。これは、水溶液系ではダイヤモンド電極表面において、水酸化物イオンが酸化されて酸素発生しているのに対して、溶融塩系ではダイヤモンド電極表面において酸化物イオンが酸化されて酸素が発生するという、酸素発生機構そのものが異なるためである。なお、溶融塩は水溶液と異なり高温であるため、酸素に対するダイヤモンド電極の耐久性や、水酸化物イオンとの反応が懸念され、これまで溶融塩中での検討がなされていなかった。また、これまでの水溶液系の結果から、ダイヤモンド電極は酸素発生用電極として不適当なものと類推されていた。このため水溶液系において高い酸素発生電位を必要とすることが知られているダイヤモンド電極等を、溶融塩系における不溶性酸素発生として用いることを、当業者は通常考えない。
本発明は、発明者らが独自に見出した上記新規知見に基づいて完成されたものである。
すなわち本発明にかかる酸素発生装置は、陰極と、陽極と、溶融塩と、前記溶融塩を収容するための反応容器と、前記陰極および前記陽極に電流を流すための直流電源とを備え、前記反応容器内で溶融塩に含まれる酸化物イオンを酸化して酸素を発生させる酸素発生装置であって、前記陽極は、sp3結合を有する炭素系材料を備えるsp3炭素系電極であることを特徴としている。
上記のごとく、sp3炭素系材料を備える炭素系電極を溶融塩中で陽極(アノード)として用いて、溶融塩に含まれる酸化物イオンの電解酸化を行なえば、二酸化炭素等の炭素酸化物が発生することがない、またはほとんどない。よって、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を発生させることがない、またはほとんどなく、環境に対する悪影響が少ない電解プロセスを実施し、酸素を発生させることができるという効果を奏する。また二酸化炭素がない、またはほとんどないため、従来の炭素電極のごとく、電極自体の消耗がない、またはほとんどない。それゆえ、電極を電解中に交換する必要がなく、連続して電解プロセスを行なうことができ、より効率的に酸化物イオンの酸化処理を行なうことができるという効果を奏する。さらに、本発明にかかる酸素発生装置を用いて、金属酸化物の電解還元プロセスを実施した場合、当該電解還元プロセスにおいて二酸化炭素等の炭素酸化物が発生しない、またはほとんどない。よって電解還元で得られた金属に炭素不純物が混入することがない、またはほとんどない。したがって、当該酸素発生装置は、金属酸化物から純金属を製造するプロセス(精錬)や、原子力発電の使用済酸化物燃料再処理プロセスに好適に利用可能である。
また、本発明にかかる酸素発生装置において、上記sp3炭素系電極は、不純物がドープされているsp3炭素系材料を、備える電極であることが好ましい。かかる構成によれば、既述の作用および効果に加え、以下に示す作用および効果を奏する。すなわちsp3炭素系材料にホウ素(B)等の不純物がドープされており、導電性を有していないsp3炭素系材料に導電性を付与することができるという効果を奏する。
また本発明にかかる酸素発生装置は、上記sp3炭素系材料が、ダイヤモンドであることが好ましい。ダイヤモンドは、熱および化学的安定性に特に優れているために、本願発明の酸素発生装置には好適である。
一方、本発明にかかる酸素発生方法は、陰極および陽極が挿入されており、かつ酸化物イオンを含む溶融塩に対して、前記陰極および陽極に電流を流す工程を含み、前記陽極として、sp3炭素系材料を備えるsp3炭素系電極を用いることを特徴としている。
sp3炭素系電極を陽極(アノード)として用いて、溶融塩に含まれる酸化物イオンの電解酸化を行なえば、二酸化炭素等の炭素酸化物が発生することがない、またはほとんどない。よって、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を発生させることがない、またはほとんどなく、環境に対する悪影響が少ない電解還元プロセスを実施し、酸素を発生させることができるという効果を奏する。また二酸化炭素の発生がない、またはほとんどないため、従来の炭素電極のごとく、電極自体の消耗がない、またはほとんどない。それゆえ、電極を電解中に交換する必要がなく、連続して電解プロセスを行なうことができ、より効率的に酸化物イオンの酸化処理を行なうことができるという効果を奏する。なお本発明にかかる酸素発生方法において、上記酸化物イオンは金属酸化物を溶融塩中溶解して得られたものであってもよい。かかる態様によれば、金属酸化物から純金属を製造するプロセス(精錬)や、原子力発電の使用済酸化物燃料の再処理プロセスに、本発明にかかる酸素発生方法を利用することができる。
また本発明にかかる方法において、上記sp3炭素系電極は、不純物がドープされているsp3炭素系材料を、備える電極であることが好ましい。かかる構成によれば、既述の作用および効果に加え、以下に示す作用および効果を奏する。すなわちsp3炭素系材料にホウ素(B)等の不純物がドープされており、導電性を有していないsp3炭素系材料に導電性を付与することができるという効果を奏する。
上記構成によれば、既述の作用および効果に加え、以下に示す作用および効果を奏する。すなわちsp3炭素系材料にホウ素(B)等の不純物がドープされており、導電性を有していないsp3炭素系材料に導電性を付与することができるという効果を奏する。
また本発明にかかる方法は、上記sp3炭素系材料が、ダイヤモンドであることが好ましい。ダイヤモンドは、熱および化学的安定性に特に優れているために、本発明にかかる酸素発生方法には好適である。
また本発明にかかる酸素発生方法は、上記溶融塩に、酸化物イオン供給源を添加する工程をさらに含む方法であってもよい。当該酸化物イオン供給源としては、例えば酸化リチウムあるいは酸化カルシウム等の酸化物が利用可能である。当該酸化物イオン供給源を添加することによって溶融塩中の酸化物イオンが増加し、陽極と陰極との間で十分な電流が流れるようになるため、酸素発生処理の高速化を実現することができる。たとえば、溶融塩として塩化物溶融塩を用い、酸化物イオン供給源を添加しない場合には、陽極から腐食性のある塩素ガスが発生する可能性があるが、酸化物イオン供給源を添加することによって、陽極からの塩素ガスの発生を回避することができる。
本発明にかかる酸素発生装置および酸素発生方法によれば、二酸化炭素を発生させることなく、またはほとんど発生させることなく、溶融塩中において酸化物イオンを電解酸化することが可能となる。またこの時、電極の溶解等の消耗(劣化)がない、またはほとんどないため、電極の交換が不要となり、連続的な酸素発生が可能となる。さらに本発明によれば、酸素発生過電圧を低くすることができる。
したがって本発明にかかる酸素発生装置および酸素発生方法を用いて酸化物イオンの電解酸化を行なえば、従来の炭素電極を用いる方法に比して、より経済的負荷および環境的負荷を小さくすることができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りである。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。
(1.本発明にかかる酸素発生装置)
本発明にかかる酸素発生装置は、陰極と、陽極と、溶融塩と、前記溶融塩を収容するための反応容器と、前記陰極および前記陽極に電流を流すための直流電源とを備え、前記反応容器内で溶融塩に含まれる酸化物イオンを酸化して酸素を発生させる酸素発生装置であって、前記陽極は、sp3結合を有する炭素系材料を備えるsp3炭素系電極であることを特徴とするものである。
ここで「溶融塩」とは「イオン液体」ともいい、常温において固体である塩を加熱融解して液体状態にした物質のことをいう。本発明における溶融塩としては特に限定されるものではなく、酸化物イオンが安定に存在させることができる溶融塩、つまり塩化リチウム−塩化カリウム共晶塩(LiCl−KCl共晶塩)を始めとするアルカリ金属ハロゲン化物系、塩化カルシウム(CaCl2)を始めとするアルカリ土類金属ハロゲン化物系、硫酸塩や硝酸塩を始めとするオキシ酸系、有機塩化物と分子性の塩を混合することにより常温で液体となる常温溶融塩、分子性溶融塩等、幅広く利用が可能である。
また「炭素系材料」とは、炭素を主成分とする材料のことを意味する。また「sp3炭素系材料」とは、sp3結合のみを有する炭素系材料のみならず、および炭素系材料に含まれるsp3結合の割合が60%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは99%以上である材料をも含む意味である。上記好ましい範囲を下回ると、当該炭素系材料を陽極として用いた場合に、従来の炭素電極と同様に、電解中に二酸化炭素が発生し、電極が消耗するために好ましくない。したがって、当該二酸化炭素の発生と電極の消耗を完全に回避するためには、sp3結合のみを有する炭素系材料が最も好ましいといえる。炭素系材料におけるsp3結合の割合を調べる方法としては、例えば既述したラマンスペクトル法による測定でsp3結合に関するピークが観測できる。
sp3炭素系材料としては、特に限定されるものではなく、例えばダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン等が挙げられるが、特に化学的、機械的安定性が高いとの理由からダイヤモンドが最も好ましい。
本発明にかかる酸素発生装置を構成するsp3炭素系電極は、上記「sp3炭素系材料」を備える電極であればその構成や製造方法等は特に限定されるものではないが、例えば基板上に「sp3炭素系材料」が蒸着されているものであることが好ましい。sp3炭素系材料は導電性を有していないために、上記の通り構成されていることが好ましいといえる。「基板」としては特に限定されるものではないが、sp3炭素系材料との密着性がよいとの理由からニオブ(Nb)、ケイ素(Si)または炭素(C)材料が好ましい。なお、「sp3炭素系材料」を基板へ蒸着する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば化学気相成長法(CVD法)、またはホットフィラメント化学気相成長法(HFCVD法)が適用可能である。
またsp3炭素系材料を用いて電極を構成する場合には、導電性を付与するための不純物がドープされていることが好ましい。sp3炭素系材料は導電性を有していないからである。上記不純物としてはsp3炭素系材料へ導電性を付与することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えばホウ素、リン、窒素、砒素、ガリウム等が利用可能であり、取り扱いが容易で電極への適用が容易との理由からホウ素が特に好ましい。
本発明にかかる酸素発生装置を構成するsp3炭素系電極として、公知のいわゆるダイヤモンド電極(「導電性ダイヤモンド電極」ともいう)」を好ましく用いることができる。かかるダイヤモンド電極は、既述の通り、水溶液系における酸素発生電極や塩素発生電極として研究が進められているものである。かかるダイヤモンド電極は、例えば、ニオブ等の基板上に、ホウ素がドープされたダイヤモンド(「ボロンドープダイヤモンド」ともいう)をCVD法によって蒸着することにより製造することができる。ダイヤモンド電極の製造方法については、例えば、「H. Notsu, I. Yagi, T. Tatsuma, D. A. Tryk and A. Fujishima, Electrochem. Solid-State Lett. 2 (1999) 522.」に記載されている。またダイヤモンド電極は、Adamant社(商品名:Diamond Electrode)、Condias社(商品名:DIACHEM electrode)から購入することが可能である。よって本発明においては、ダイヤモンド電極の市販品を利用してもよい。
また本発明にかかる酸素発生装置を構成するsp3炭素系電極として、ダイヤモンドライクカーボンを用いた電極(以下「ダイヤモンドライクカーボン電極」という)を用いてもよい。かかるダイヤモンドライクカーボン電極は、プラズマ気相蒸着法により製造することができる。ダイヤモンドライクカーボン電極の製造方法については、例えば、「M. Weiler, S. Sattel, T. Giessen, K. Jung, H. Ehrhardt, V.S. Veerasamy and J. Robertson Phys. Rev. B 53 (1996), 1594」に記載されている。
以上説示したように、本発明にかかる酸素発生装置は、溶融塩系の電解プロセスにおいてsp3炭素系電極であるダイヤモンド電極を酸素発生電極として使用するという、当業者では通常想到しない発明者の独自思想によって、初めて見出されたものである。
なお本発明にかかる酸素発生装置の上記以外の構成については、「2.本発明にかかる酸素発生方法」の項において説明する。
(2.本発明にかかる酸素発生方法)
次に本発明にかかる酸素発生方法について説明する。なお本発明はこれに限定されるものではない。また本発明にかかる酸素発生方法と酸素発生装置とにおいて共通する用語は、特記しない限り、「1.本発明にかかる酸素発生装置」の項における説明を全て援用することができる。
本発明にかかる酸素発生方法は、陰極および陽極が挿入されており、かつ酸化物イオンを含む溶融塩に対して、前記陰極および陽極に電流を流す工程を含む、酸素発生方法において、前記陽極として、sp3結合を有する炭素系材料を備えるsp3炭素系電極を用いることを特徴としている。前記陽極は、「不純物がドープされたsp3炭素系材料を、基板上に蒸着してなる電極」であってもよい。また上記sp3炭素系材料は、ダイヤモンドであることが好ましい。
一方、本発明にかかる酸素発生方法に用いる陰極は、特に限定されるものではなく、アルミニウム、銅、ニッケル、白金等の材料からなる電極を適宜使用すればよい。
ここで本発明にかかる方法において使用する溶融塩に含まれている「酸化物イオン」とは、上記溶融塩の中へ外部から添加された酸化物が、添加後に溶融塩中に溶解し、酸化物イオンとして存在しているものである。酸化物としては特に限定されるものではなく、種々の酸化物を目的に応じて採用すればよい。例えば、本発明にかかる酸素発生方法を利用して、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ケイ素等の精錬を行なう場合には、それぞれの酸化物(金属酸化物)を採用すれば、それぞれの酸化物を酸素と金属に分解することができる。また本発明にかかる酸素発生方法を利用して、原子力発電における使用済酸化物燃料の再処理を行なうことができる。また本発明にかかる酸素方法に適用可能な酸化物は、上記した金属酸化物に限られず、例えば水(H2O)、硫黄酸化物(SO)、窒素酸化物(NO)であってもよい。さらに、上記金属酸化物を、本発明にかかる酸素発生方法における陰極として用いてもよい。かかる構成とすることで、溶融塩中に溶解しない金属酸化物も電解還元することができるという効果が得られる。さらに、特許文献1に記載されているように、還元対象である金属酸化物を保持しうるように構成された陰極を用いてもよい。かかる構成とすることで溶融塩中に溶解せず導電性のない酸化物の電解還元も可能となる。
本発明にかかる酸素発生方法において「陰極および陽極に電流を流す工程」は、従来公知の直流電源を用いて通電することにより実施すればよい。この時に陰極−陽極間にかける電圧については酸素発生を行なうことができる電圧であれば特に限定されるものではない。また上記「酸素発生を行なうことができる電圧」は、対極反応によって異なるために、適宜検討の上、採用すればよい。なお、過電圧や電力消費の観点から、上記「陰極−陽極間にかける電圧」は陰極においてリチウム金属を析出する場合は2.9V程度が好ましい。
また、本発明にかかる酸素発生方法における溶融塩の温度は、溶融塩の種類や組成等によって異なるために限定されるものではない。例えば溶融塩に塩化リチウムと塩化カリウムの共晶組成を使用する場合は400℃〜500℃の範囲が好ましい。
また本発明にかかる酸素発生方法は、上記溶融塩に、酸化物イオン供給源を添加する工程をさらに含む方法であってもよい。酸化物イオン供給源を溶融塩に添加することによって、溶融塩中の酸化物イオンが増加し、陽極と陰極との間で十分な電流が流れるようになるため、酸素発生処理の高速化を実現することができる。たとえば、溶融塩として塩化物系溶融塩を用い、酸化物イオン供給源を添加しない場合には、陽極から腐食性のある塩素ガスが発生する可能性があるが、酸化物イオン供給源を添加することによって、陽極からの塩素ガスの発生を回避することができる。ここでの酸化物イオン供給源としては、例えば酸化リチウムあるいは酸化カルシウム、酸化ナトリウム等が利用可能である。酸化物イオン供給源の好適な添加量については、酸化物イオン供給源の種類、溶融塩の組成等により異なるために限定されるものではなく、適宜検討の上、決定すればよい。溶融塩中への酸化物イオンの溶解度およびその安定性の観点から好ましい溶融塩(酸化物イオン供給源を含む)の組成としては、例えば、LiCl−KCl−Li2O(LiCl:58.2mol%、KCl:41.3mol%、Li20:0.5mol%)が挙げられる。なお当該工程は、陰極および陽極に電流を流す前に行なってもよいし、また電流を流している間に並行して行なってもよい。また溶融塩を調製する際、または酸化物イオンを溶融塩に添加する際に、当該工程を同時に行なってもよい。
本発明にかかる酸素発生方法における「陰極および陽極が挿入されており、かつ酸化物イオンを含む溶融塩」は、陰極および陽極が挿入されている溶融塩へ酸化物イオンを添加して調製してもよいし、酸化物イオンが添加されている溶融塩に対して陰極および陽極を挿入して調製してもよい。
以下、本発明にかかる酸素発生方法の一例を、図1に示す本発明にかかる酸素発生装置(一例)を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
<酸素発生装置>
まず、酸素発生装置20の構成について説明する。図1は、本発明にかかる酸素発生方法の実施に用いることができる酸素発生装置20の模式図である。酸素発生装置20は、陰極1と、陽極2と、溶融塩3と、溶融塩3を収容するための反応容器4と、陰極1および陽極2に電流を流すための直流電源5と、導電線6と、金属回収槽7とを備えている。陽極2は、既述のダイヤモンド電極等のsp3炭素系材料を備える電極(sp3炭素系電極)である。反応容器4には溶融塩3が収容されており、溶融塩3には陰極1および陽極2が挿入されている。陰極1および陽極2と、直流電源5の陰極および陽極とは、それぞれ導電線6を介して電気的に接続されており、直流電流5から供給される電流が溶融塩3中を陽極2から陰極1へと流れるようになっている。また金属回収槽7は、溶融塩3中において陰極1と反応容器4の底面との間に備えられ、金属酸化物を電解還元することによって陰極1付近で生成した金属8を回収することができるようになっている。すなわち酸素発生装置20を用いることによって、反応容器4内で溶融塩3に含まれる酸化物(例えば金属酸化物)を酸素ガスと金属に分離することができる。なお、図示していないが、溶融塩3の調製および溶融状態を保持するためのヒーターが、反応容器4内を加熱し得るように備えられている。
また反応容器4は、使用する溶融塩3を収納することができるものであれば特に限定されるものではなく、その形状、大きさ、材料等については、目的に応じて適宜選択の上、採用すればよい。また溶融塩系の電解装置における反応容器として従来公知のものを適宜選択の上、採用すればよい。なお溶融塩3は、一般に数百℃以上となるため、少なくともその高温条件下において耐え得るものであることが好ましい。よって、反応容器4は、例えばステンレス製、アルミナ製、パイレックス(登録商標)ガラス製、石英製であることが好ましいといえる。
また本発明の酸素発生装置20を構成する直流電源5は、陽極2および陰極1に電流を流すためのものであれば、特に限定されるものではなく、従来公知のものを適宜利用することができる。
<反応プロセス>
次に、酸素発生装置20を用いて、金属酸化物(「MOx」とする)の還元を行なった場合の反応プロセスについて説明する。溶融塩3としては塩化リチウムと塩化カリウムが共晶組成に混合された溶融塩を用いており、溶融塩3中には塩素イオン(図示せず)とリチウムイオン(図1中「Li+」で示す)とカリウムイオン(図示せず)が存在している。この溶融塩3に金属酸化物(図1中「MOx」で示す)およびリチウム(図1中「Li」で示す)を添加する。この時、直流電源5から電流を供給すると、陽極2(アノード)、陰極1(カソード)、および溶融塩3中で以下の反応が起こる。
陰極1(カソード):Li++e-→Li
溶融塩3 :2xLi+MOx→M+2xLi++xO2-
陽極2(アノード):O2-→1/2O2+2e-
全反応 :MOx→M+x/2O2
上記反応式において表されるように、陽極2では金属酸化物(MOx)がリチウム金属と化学反応することにより供給された酸化物イオン(図1中「O2-」で示す)が電子(図1中「e-」で示す)を放出して、酸素分子(図1中「O2」)となって溶融塩外へ出る。この時、酸化物イオン(O2-)は陽極2への移動し、陽極2は酸化物イオン(O2-)から電子(e-)を受け取り、電子(e-)は導電線6→直流電源5→導電線6を経由して陰極1へと移動する。
また陰極1では、溶融塩中に存在するリチウムイオン(Li+)が陰極から電子(e-)を受け取り、陰極表面でリチウム(Li)として析出する。かかる電子(e-)の移動に伴って、溶融塩中において陽極2−陰極1間で電流が流れることになる。
また溶融塩中では、添加された金属酸化物とリチウムが、酸化物イオン(「O2-」)、リチウムイオン(Li+)および金属8(図1中「M」で示す)となる。
上記の陰極1、陽極2および溶融塩3における反応をトータルすると、上記反応式の全反応で示すごとく、金属酸化物(MOx)が還元されて、金属8(M)と酸素分子(O2)となる。ここで還元されて生成した金属8(M)は沈殿して、金属回収槽7内に堆積し、電解還元終了後に金属8(M)として回収されることになる。
一方、陽極に従来の炭素電極を用いれば、陽極2(アノード)での反応が、
1/2C+O2-→1/2CO2+2e-
となり、陽極で二酸化炭素が発生し、炭素電極自身も上記反応により消耗する。
これに対して、陽極にsp3炭素系電極を用いた場合、陽極2(アノード)から二酸化炭素が発生することなく、酸素を発生させることができる。また酸素発生を実施している間に電極が消耗することはない。
<本発明にかかる酸素発生方法の一例>
次に、本発明にかかる酸素発生方法の一例を説明する。まず酸素発生装置20における反応容器4を、適当な組成の溶融塩3で満たす。溶融塩3の調製は、塩を反応容器内4に投入し、反応容器4に付属され反応容器内を加熱するためのヒーター(図示せず)の熱により溶解してもよいし、反応容器4外で調製した溶融塩3を反応容器4内へ投入してもよい。この時、溶融塩3が凝固しないように前記ヒーターで加熱する。
次に還元の対象物である金属酸化物(MOx)と、リチウム(Li)または酸化リチウム(Li2O)とを溶融塩3へ添加する。次に直流電源5をONにして陰極1および陽極2へ電流を流す。上記<反応プロセス>の項において示した反応が起こり、陽極2で酸素が、陰極1表面にリチウムが析出し、さらに金属8(M)が生成して沈殿する。沈殿した金属8(M)は金属回収槽7内に堆積する。電解還元終了後に金属回収槽7を反応容器4外へ引き上げ、金属8(M)を回収する。
本発明にかかる酸素発生方法は、上記工程のほか、電解還元によって生成した金属を回収する工程(回収工程)をさらに含むものであってもよい。当該回収工程は、精製した金属を回収することができる工程であれば特に限定されるものではないが、例えば、図1の酸素発生装置20において、金属8が堆積している金属回収槽7を反応容器4外に引き上げ、金属回収槽7内に堆積した金属8を回収することが挙げられる。また回収の際に回収する金属を水洗する等の洗浄工程をさらに含んでいてもよい。ひいては、溶融塩中において酸素発生電解還元を行なうための公知の工程を含んでいてもよい。
ここで、本発明にかかる酸素発生方法の本質は、溶融塩系の電解プロセスにおいて、陽極(アノード)としてダイヤモンド電極を始めとする、「sp3炭素系電極」を採用したことにあり、本発明にかかる酸素発生方法は、公知の電解プロセス(例えば、特許文献1に記載されている電解還元方法)において、陽極(アノード)を上記ダイヤモンド電極等に変更した方法であってもよい。
(3.本発明の応用例)
本発明は既述したごとく、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ケイ素等の精錬や、原子力発電における使用済酸化物燃料(酸化プルトニウム、酸化ウラン、および核分裂生成物の酸化物、またそれらの混合物)の再処理プロセスに利用可能である。また本発明は、金属酸化物のみならずガスを還元する場合においても利用が可能である。
本発明はこの他、カソード窒化、アンモニアの電解合成など金属酸化物の電解還元以外でも酸化物イオンが生成する反応において利用可能である
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
<実験条件および実験装置>
溶融塩には、共晶組成に混合したLiCl−KCl(58.5mol%:41.5mol%)を数日間473Kで真空乾燥させた後、723Kのアルゴン雰囲気中で溶融させたものを用いた。
電気化学測定は、三電極方式で行ない、参照極には(α+β)共存相のAl−Li電極を使用した。なお、全ての電位は、電気化学的にニッケル線上に析出させたリチウム金属と浴中のリチウムイオンの示す電位(Li+/Li)を用いて較正している。
図2に、実施例において使用した実験装置の概略図を示す。当該実験装置は、アルゴン雰囲気下の密閉系であり、反応容器内に上記溶融塩(図2中「G」で示す)が入っている。当該溶融塩には、陽極(アノード)であるダイヤモンド電極(入手先:Condias社(商品名:DIACHEM electrode、図2中「A」で示す)と、上記較正用電極(入手先:ニラコ製、図2中「B」で示す)と、上記参照電極(入手先:ニラコ製、図2中「C」で示す)と、陰極(カソード)であるアルミニウム板(入手先:ニラコ社製、図2中「D」で示す)と、陰極(カソード)であるグラッシーカーボンガラス状炭素電極(入手先:東海カーボン社製、図2中「E」で示す)と、クロメル・アルメル熱電対(入手先:ニラコ社製、図2中「F」で示す)とが挿入されている。なお陰極(カソード)であるグラッシーカーボンガラス状炭素電極は、参照極である(α+β)共存相のAl−Li電極を作製するために挿入されている。アルゴンガスは「Gas inlet」から実験装置内へ導入され、「Gas outlet」から実験装置外へと出る。実験装置外へ出たアルゴンガスを含む気体は、回収され、ガスクロマトグラフィー等で組成分析が行われる。なお、付属のヒーター(図2中「H」で示す)によって溶融塩は723Kに保たれている。
<サイクリックボルタンメトリー>
陽極(アノード)としてダイヤモンド電極を用いて、酸化物(Li2O)添加前後において、サイクリックボルタンメトリーを行なった。なお、比較として、陽極(アノード)に白金電極を用いた場合についても同様にサイクリックボルタンメトリーを行なった。
なお、サイクリックボルタンメトリーは、スキャンレート0.1Vs-1で、浸漬電位より貴な方向に走査し、白金電極を用いた場合、酸化物添加前は4.2V、酸化物添加後は4.6Vで折り返し、浸漬電位まで卑な方向に走査して行なった。また、ダイヤモンド電極を用いた場合は3.7Vで折り返し、浸漬電位まで卑な方向に走査して行なった。
その結果を図3に示した。図3(a)は比較として行なった白金電極を陽極(アノード)に用いた場合の結果を示し、図3(b)はダイヤモンド電極を陽極(アノード)に用いた場合の結果を示している。なお、図3中、実線で示すチャートは酸化物(Li2O)添加後の結果を示し、破線で示すチャートは酸化物(Li2O)添加前の結果を示す。図3の横軸は陽極(アノード)の較正用電極(Li+/Li)に対する電位(V)を示し、縦軸は陽極(アノード)の電流密度(mA cm-2)を示している。
図3(b)によれば、酸化物(Li2O)添加前にダイヤモンド電極を陽極(アノード)としてサイクリックボルタンメトリーを行なった場合に、塩素の発生に起因すると考えられるアノード電流が、3.7Vにおいて見られた。一方、酸化物(Li2O)添加後には2.7Vより貴な電位領域において、酸化物(Li2O)添加前には見られなかったアノード電流の増加が見られた。この電位領域において発生しているガスの分析を、酸素計、ガスクロマトグラフィー、およびIRを用いて行なったところ、酸素ガスのみが発生しているということが確認された。
また、図3(a)によれば、酸化物(Li2O)添加前には、白金電極の溶解に起因するアノード電流の増加が3.4V付近で見られた。一方、酸化物(Li2O)添加後は、3.8Vより低い電位領域においては酸素発生が見られなかったが、4.2Vにおいて酸素ガスの発生が見られたが、同時に白金電極の溶解も顕著に観測された。
<定常分極測定>
酸素発生の定常状態の電流密度と酸素発生を行なうのに最適な電位を測定するために、陽極(アノード)にダイヤモンド電極を用い、酸化物(Li2O)を0.5mol%添加して、定常分極測定を行なった。定常分極測定は、各電位において定電位電解を行ない、その際の電流密度をプロットした。また発生ガスの分析を、酸素計(Panametrics Japan社製、商品名OX-2)、ガスクロマトグラフィー(島津社製、モデル名GC−8A)、およびIR(島津社製、モデル名BIO−RAD:FTS165)を用いて行なった。酸素計による酸素の測定は、系内の雰囲気と酸素計の計測部とを接続し、常に酸素濃度をモニターできるようにした。またガスクロマトグラフィーによる分析は、電解後の雰囲気を採取し所定の方法で測定した。またIRは、電解後の雰囲気を採取し、所定の方法で測定した。
結果を、図4に示す。図4の横軸は陽極(アノード)の較正用電極(Li+/Li)に対する電位(V)を示し、縦軸は陽極(アノード)の電流密度(mA cm-2)を示している。図4によれば、2.6Vにおいて酸素発生に起因するアノード電流の立ち上がりが見られ、2.8Vでアノード電流がほぼ定常状態となった。なお、3.6Vより高い電位においては塩素発生に起因するアノード電流の増加が見られた。
この結果より、次に行なう定電位電解を2.8Vで行なうことに決定した。
<定電位電解>
酸化物イオンとしてLi2Oを用い、添加量は0.5mol%を添加し、溶解させた。
この溶融塩中において、ダイヤモンド電極を陽極(アノード)とし、陰極(カソード)にはアルミニウムを用いて、アルゴン雰囲気下でアノードをカソードに対して、2.8Vの正の電位に保つようにして、約60分間、定電位電解を行なった。この時に発生する酸素ガスを酸素計(Panametrics Japan社製、商品名OX-2)にて測定した。
結果を図5に示す。図5は陽極(アノード)の電流密度(mA cm-2)および酸素濃度(ppm)の経時変化を示している。図5によれば、電解時間とともに酸素濃度が増加している様子が見られた。また、陰極(カソード)ではアルミニウムとリチウムの合金化反応が進行することにより、Al−Li合金が生成していた。
図6に発生ガスについてIRを行なった結果を示す。図6における各チャートは、上から、定電位電解前の実験装置内のガス、定電位電解後の実験装置内のガス、および空気について、それぞれIRを行なった結果を示す。図6によれば、定電位電解前および後の実験装置内のガスには、いずれもCO2、COのピークが観察されず、定電位電解中に二酸化炭素等が発生していないことがわかった。また定電位電解前後における、ダイヤモンド電極の重量を比較したところ、全く変化がなかった。
以上の結果から、ダイヤモンド電極は、溶融塩において利用可能な不溶性酸素発生電極であるということが分かった。したがって、当該ダイヤモンド電極を始めとするsp3炭素系材料を備える電極を、陽極として備える電解還元装置、およびダイヤモンド電極を始めとするsp3炭素系材料を備える電極を陽極として用いて溶融塩中で電解還元を行なう方法によれば、本願発明の課題を十分解決することができるといえる。
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以上のように、本発明によれば、溶融塩中での酸化物の電解酸化プロセスにおいて、従来法に比べて、より経済的負荷および環境的負荷を小さくすることが可能となる。
本発明は金属酸化物から純金属を製造するプロセス(精錬)や、原子力発電の使用済酸化物燃料の再処理プロセスに好適に利用可能である。したがって、金属の製造および加工を行なう産業、発電等を行なうエネルギー産業、および廃棄物処理を行なう産業等において利用が可能である。
本発明の酸素発生装置の一例を示す模式図である。 実施例において使用した実験装置の模式図である。 実施例においてサイクリックボルタンメトリーを行なった結果を示す図であり、(a)は比較として陽極(アノード)に白金電極を用いた場合の結果を示し、(b)は陽極(アノード)にダイヤモンド電極を用いた場合の結果を示す。 実施例において定常分極測定を行なった結果を示す図であり、陽極(アノード)の較正用電極(Li+/Li)に対する電位(V)と、陽極(アノード)の電流密度(mA cm-2)との関係を示すチャートである。 実施例において定電位電解を60分間行なった時の、陽極(アノード)の電流密度(mA cm-2)および酸素濃度(ppm)の経時変化を示すチャートである。 実施例おいて、電解前および電解後において発生した気体、並びに実験装置外の空気をIRにより分析した結果を示すチャートである。
符号の説明
1 陰極
2 陽極
3 溶融塩
4 反応容器
5 直流電源
7 金属回収槽
20 酸素発生装置

Claims (7)

  1. 陰極と、陽極と、溶融塩と、前記溶融塩を収容するための反応容器と、前記陰極および前記陽極に電流を流すための直流電源とを備え、前記反応容器内で溶融塩に含まれる酸化物イオンを酸化して酸素を発生させる酸素発生装置であって、
    前記陽極は、sp3結合を有する炭素系材料を備えるsp3炭素系電極であることを特徴とする、酸素発生装置。
  2. 上記sp3炭素系電極は、不純物がドープされているsp3炭素系材料を備える電極である、請求項1に記載の酸素発生装置。
  3. 上記sp3炭素系材料が、ダイヤモンドである、請求項1または請求項2に記載の酸素発生装置。
  4. 陰極および陽極が挿入されており、かつ酸化物イオンを含む溶融塩に対して、前記陰極および陽極に電流を流す工程を含む、酸素発生方法において、
    前記陽極として、sp3結合を有する炭素系材料を備えるsp3炭素系電極を用いることを特徴とする、酸素発生方法。
  5. 上記sp3炭素系電極は、不純物がドープされているsp3炭素系材料を備える電極である、請求項4に記載の酸素発生方法。
  6. 上記sp3炭素系材料が、ダイヤモンドである、請求項4または5に記載の酸素発生方法。
  7. 上記溶融塩に、酸化物イオン供給源を添加する工程をさらに含む、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の酸素発生方法。
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