JP6444058B2 - ハロゲン化リチウムを用いた溶融塩電解によるジスプロシウムの回収方法 - Google Patents

ハロゲン化リチウムを用いた溶融塩電解によるジスプロシウムの回収方法 Download PDF

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Description

本発明は、ハロゲン化リチウムを用いた溶融塩電解によるジスプロシウムの回収方法に関する。
近年、ハイブリット自動車向け高出力モーター等に使用する磁石としてNd、Fe、Bの化合物であるネオジム磁石(NdFe14B)が用いられている。ネオジム磁石には、高温での保磁力を保持させるためにジスプロシウム(Dy)が添加されている。ネオジム磁石に含まれているジスプロシウムは一部の限られた国でしか採掘されないため、ネオジム磁石の生産国ではジスプロシウムの安定かつ定常的な入手が困難になっている。そのため、ジスプロシウムを有効利用するためのリサイクル技術の確立が求められている。
ネオジム磁石をリサイクルする方法として、例えば、特許文献1には、希土類元素の酸化物を含む原料を溶融硫酸塩中に添加し、電気分解を行って希土類元素を溶解させた後、電気化学的に還元処理を行うことにより、希土類元素を回収する方法が記載されている。
特開2012−162764号公報
しかし、特許文献1に記載の方法では、ネオジム磁石等のスクラップに含まれる希土類元素を一度酸化物にする工程を要するために手間が掛かり、ネオジム磁石等そのものを添加した同一系内から一度にジスプロシウムを回収できる方法ではなかった。また、希土類元素の回収率についても十分とはいえず、さらなる回収率の向上が求められていた。
そこで本発明は、簡易なプロセスで、ジスプロシウムを含む原料を添加した同一系内から、ジスプロシウムを高純度かつ高収率で回収することが可能な、ジスプロシウムの回収方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、ハロゲン化リチウムにハロゲン化ジスプロシウムを添加してなる混合塩を溶融した溶融塩を用い、当該溶融塩に金属ジスプロシウムを含む原料を添加して電解挙動を調べたところ、同一溶融塩中で、原料中に含まれる金属ジスプロシウムのハロゲン化と電析とが行われることにより、原料中に含まれる金属ジスプロシウムを回収できることを見出した。
図1に本発明に係るジスプロシウムの回収方法の原理を模式的に示す。ハロゲン化ジスプロシウムの添加量は、後述するようにハロゲン化リチウムの量に対して微量であるため、本図面上、省略する。
ハロゲン化リチウム(LiM;ここで、Mはハロゲン元素を意味する。)を電気分解することによりアノードでハロゲン単体(M)が発生する(反応(1))。このMは原料中の金属ジスプロシウム(Dy)と反応してハロゲン化ジスプロシウム(DyM)を生成する(反応(2))。このDyMが浴中で電離し、ジスプロシウムイオン(Dy3+)となる(反応(3))。カソードでDy3+の電気化学的還元反応を起こさせ、金属Dyを回収をすることができる(反応(4))。
本発明は上記知見に基づいてなされたものである。すなわち、
本発明は、ハロゲン化リチウムにハロゲン化ジスプロシウムを添加してなる混合塩を溶融し、溶融塩を作製する溶融塩作製工程と、溶融塩に金属ジスプロシウムを含む原料を添加する添加工程と、添加工程の後に、金属ジスプロシウムを含む原料が添加された溶融塩を、該溶融塩に接して、または該溶融塩中に、カソード及びアノードが保持されている溶融塩電解装置を用いて電気分解し、カソードに金属ジスプロシウムを電析させる、電解工程とを有する、ジスプロシウムの回収方法である。
本発明において、「ハロゲン化リチウムにハロゲン化ジスプロシウムを添加してなる混合塩を溶融し、溶融塩を作製する」とは、固体状のハロゲン化リチウムとハロゲン化ジスプロシウムとを混合した後、加熱することで混合塩を溶融状態とする形態の他、ハロゲン化リチウムを加熱して溶融状態とした後に溶融したハロゲン化リチウムにハロゲン化ジスプロシウムを添加する形態をも含む概念である。
「溶融塩にジスプロシウムを含む原料を添加する」とは、溶融状態にあるハロゲン化リチウム及びハロゲン化ジスプロシウムからなる混合塩に、金属ジスプロシウムを含む原料を添加する形態の他、固体状のハロゲン化リチウム及びハロゲン化ジスプロシウムからなる混合塩と金属ジスプロシウムを含む原料とを混合した後、加熱することで混合塩を溶融する形態をも含む概念である。
また、「カソードに金属ジスプロシウムを電析させる」形態としては、溶融塩中の分極を利用して、溶融塩中のジスプロシウムイオンを電気化学的に還元し、金属ジスプロシウムとしてカソードに析出させる形態を例示できる。ここで、カソードで還元されるジスプロシウムイオンには、(1)原料中の金属ジスプロシウムが、電解によりアノードで発生するハロゲンと反応してハロゲン化ジスプロシウムとなり、当該ハロゲン化ジスプロシウムが電離することにより生じるジスプロシウムイオン、及び、(2)溶融塩作製工程において添加されるハロゲン化ジスプロシウムが電離することにより生じるジスプロシウムイオン、のいずれもが含まれる。
本発明において、ハロゲン化ジスプロシウムは、塩化ジスプロシウム又はフッ化ジスプロシウムであることが好ましい。
本発明において、ハロゲン化リチウムは、塩化リチウムであることが好ましい。
本発明において、電解工程においては、Ag/AgCl参照電極に対するカソード電位を、−3.0V以上−2.0V以下に定電位分極することが好ましい。
本発明において、電解工程において用いられるカソードが炭素電極であることが好ましい。電析したジスプロシウムと電極との反応を抑制できるためである。カソードとして金属電極を用いた場合、電析したジスプロシウムと金属電極とは合金化してしまう虞がある。
本発明において、添加工程で添加する原料は、ネオジム、鉄、及び、ホウ素を含有することが好ましい。そのような原料としては、例えば、ネオジム磁石スクラップが挙げられる。ここで「ネオジム磁石スクラップ」とは、廃棄の対象となったネオジム磁石そのものの他、ネオジム磁石の処理工程若しくは再生工程で生じる工程くず、又は、ネオジム磁石の製造工程で生じる工程くずを含む概念である。
本発明によれば、簡易なプロセスで、ジスプロシウムを含む原料を添加した同一系内から、ジスプロシウムを高純度かつ高収率で回収することが可能となる。
本発明に係るジスプロシウムの回収方法の原理を模式的に説明する図である。 本発明に係るジスプロシウムの回収方法の一実施形態を説明するフローチャートである。 本発明において使用可能な溶融塩電解装置の一例を模式的に説明する図である。 本発明における電解工程で使用可能な参照電極の一例を模式的に説明する図である。 (A)DyCl含有(1mol%)LiCl溶融塩及びDyCl非含有(0mol%)LiCl溶融塩中(1023K)で測定したAg/AgCl参照電極に対するアノード及びカソード分極曲線を示す図である。(B)DyF含有(1mol%)LiCl溶融塩及びDyF非含有(0mol%)LiCl溶融塩中(1023K)で測定したAg/AgCl参照電極に対するカソード及びアノード分極曲線を示す図である。 (A)実施例1において、カソードとして用いた黒鉛棒電極の電解工程後の全体写真を示す図である。(B)実施例1において、電解工程で電析された電着物のSEM画像及び組成を示す図である。(C)実施例1において、電解工程で電析された電着物のXRDの結果を示す図である。 実施例1〜3及び比較例1〜3について、電解工程後のカソードに電析した電着物の乾燥重量を、電解工程中のカソード電位に対してプロットしたグラフ、及び、カソードから取り除かれた電着物の外観写真を示す図である。
本発明の上記した作用および利得は、以下に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明がこれらの形態に限定されるものではない。
図2に示すように、本発明に係るジスプロシウムの回収方法S10は、ハロゲン化リチウムにハロゲン化ジスプロシウムを添加してなる混合塩を溶融し、溶融塩を作製する溶融塩作製工程(工程S1)と、溶融塩に金属ジスプロシウムを含む原料を添加する添加工程(工程S2)と、添加工程の後に、溶融塩を電気分解し、カソードに金属ジスプロシウムを電析させる、電解工程(工程S3)とを有している。
1.溶融塩作製工程(工程S1)
工程S1は、ハロゲン化リチウムにハロゲン化ジスプロシウムを添加してなる混合塩を溶融し、溶融塩を作製する工程である。工程S1は、固体状のハロゲン化リチウムとハロゲン化ジスプロシウムとを混合した後、加熱することで混合塩を溶融状態とする形態の他、ハロゲン化リチウムを加熱して溶融状態とした後に溶融したハロゲン化リチウムにハロゲン化ジスプロシウムを添加する形態であってもよい。工程S1において、固体状態又は溶融状態にあるハロゲン化ジスプロシウムが、溶融状態にあるハロゲン化リチウム中に溶解し、ハロゲン化リチウムとハロゲン化ジスプロシウムとからなる「溶融塩」となる。
ハロゲン化リチウムに対するハロゲン化ジスプロシウムの添加量は特に限定されるものではないが、工程S1により作製される溶融塩中のハロゲン化ジスプロシウムの含有量が好ましくは1mol%以上5mol%以下、より好ましくは2mol%以上4mol%以下となるように、ハロゲン化ジスプロシウムを添加することが好ましい。ここで、溶融塩中のハロゲン化ジスプロシウムイオンの含有量がAmol%であるとは、溶融塩中の全陽イオン中のジスプロシウムイオンのモル比がA%であることを意味する。
工程S1において、ハロゲン化リチウムとしては、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム等が挙げられ、中でも、安全性及びコストの観点から塩化リチウムであることが好ましい。
工程S1における溶融塩の温度は、ハロゲン化リチウムが溶融状態を維持できる程度の温度であればよく、使用するハロゲン化リチウムによって適宜調整すればよい。例えば、ハロゲン化リチウムとして塩化ナトリウムを用いる場合は、1023K程度に保持しておくことで、塩化リチウムを溶融状態に保つことができる。
2.添加工程(工程S2)
工程S2は、工程S1で作製した溶融塩に金属ジスプロシウムを含む原料を添加する工程である。工程S2は溶融塩に原料を添加する形態の他、固体状のハロゲン化リチウム及びハロゲン化ジスプロシウムからなる混合塩と原料とを混合した後、加熱することでハロゲン化リチウムを溶融させる形態(即ち、工程S1及び工程S2を同時に行う形態)であってもよい。
「金属ジスプロシウムを含む原料」としては、特に限定されるものではないが、ジスプロシウム以外に、ネオジム、鉄、及び、ホウ素を含有することが好ましい。金属ジスプロシウムを含む原料がネオジム磁石スクラップである場合に、本発明に係るジスプロシウムの回収方法を好ましく採用することができる。ここで「ネオジム磁石スクラップ」としては、ネオジム磁石そのものを添加してもよく、ネオジム磁石の処理工程若しくは再生工程で生じる工程くず、又は、ネオジム磁石の製造工程で生じる工程くずを添加してもよい。工程S2において、原料として、例えば、ジスプロシウム、ネオジム、鉄、及び、ホウ素からなるネオジム磁石スクラップを添加した場合、これらの元素は、通常、溶融塩中に溶解することなく固体のまま存在し、溶融塩浴下部に沈殿する(図1参照)。そのため、原料が固形である場合には、原料の表面積を増大させてジスプロシウムのハロゲン化反応(図1の(2)参照)及びハロゲン化ジスプロシウムの電離(図1の(3)参照)を促進する観点から、原料を分割して添加することが好ましく、粉砕して添加することがより好ましい。
溶融塩に対する原料の添加量は特に限定されるものではないが、溶融塩(1mol)に対して、原料中に含まれる金属ジスプロシウムが好ましくは0.0001mol以上0.05mol以下、より好ましくは0.002mol以上0.001mol以下となるように、原料を溶融塩中に添加することが好ましい。
工程S2における温度は、溶融塩が溶融状態を維持できる程度の温度であればよく、工程S1と同一の温度とすることができる。
3.電解工程(工程S3)
工程S3は、工程S2の後に、溶融塩を電気分解(溶融塩電解)し、カソードに金属ジスプロシウムを電析させる工程である。ジスプロシウムイオンの電気化学的還元電位は水の還元電位よりも低いため、水溶液中においては還元されないが、溶融塩浴中においては還元され、金属ジスプロシウムとして電析させることができる。
溶融塩を電気分解した場合、下記式(1)〜(4)の反応が生じる。なお、ここでは分かりやすさのため、ハロゲン化リチウムとして塩化リチウム(LiCl)を用い、ハロゲン化ジスプロシウムとして塩化ジスプロシウム(DyCl)を用いた場合を例として説明するが、塩素を他のハロゲン元素についても同様とする。
まず、アノードでは上記式(1)に示すように、主としてLiClに由来する塩化物イオン(Cl)の電気化学的酸化反応が起こり、塩素(Cl)が発生する。このClは上記式(2)に示すように、原料中に含まれる金属ジスプロシウム(Dy)と反応して塩化ジスプロシウム(DyCl)を生成する。このDyClが上記式(3)に示すように、溶融塩浴中で電離し、ジスプロシウムイオン(Dy3+)となる。カソードでは、上記式(4)に示すようにDy3+の電気化学的還元反応が起こり、金属Dyが電析する。
式(4)において、溶融塩の電気分解を開始した直後においては、還元されるジスプロシウムイオンは工程S1で添加した塩化ジスプロシウムが電離して生じたものである。その後、電解が進行するにつれて、原料中に含まれていた金属ジスプロシウムが塩化されて塩化物となり(式(1))、該塩化物が電離することにより(式(2))、原料に由来するジスプロシウムイオンが溶融塩中に供給される。従って、工程S3でカソードに電析する金属ジスプロシウムは、工程S3の初期においてはハロゲン化ジスプロシウムに由来するジスプロシウムイオンが還元されたものであり、工程S3の途中からは、原料中の金属ジスプロシウムに由来するジスプロシウムイオンが還元されたもの、及び、工程S1で添加されるハロゲン化ジスプロシウムに由来するジスプロシウムイオンが還元されたもの、のいずれもが含まれることとなる。
工程S3においては、公知の溶融塩電解装置を用いることができる。図3は、本発明において使用できる溶融塩電解装置の一例を模式的に説明する図である。図3に示す溶融塩電解装置100においては、溶融塩1及び金属ジスプロシウムを含む原料2を入れたアルミナるつぼ等のセル容器3が、炉(加熱装置)4に囲まれた石英管等の耐熱容器5に保持されており、該溶融塩1に接して、あるいは該溶融塩1中に、作用電極(カソード)6、対向電極(アノード)7、参照電極8、及び熱電対温度計9が保持されている。耐熱容器5中には、不活性ガス流入口10及び不活性ガス流出口11を通ってArガス等の不活性ガスが流通し、耐熱容器5内は不活性ガス雰囲気で満たされている。作用電極6、対向電極7、及び参照電極8はポテンシオスタット(不図示)に接続され、電位の制御が可能とされている。
工程S3において、作用電極6としては、黒鉛棒、黒鉛シート等の炭素電極を用いることが好ましい。これにより、電析したジスプロシウムと作用電極6との反応を抑制できる。作用電極6として金属電極を用いた場合には、ジスプロシウムと金属電極との相互拡散により合金化してしまう虞がある。なお、対向電極7としては、例えば管状黒鉛等を好ましく用いることができる。
参照電極8としては、溶融塩電解に使用可能な公知の参照電極を使用できる。図4は、本発明における溶融塩電解で使用可能な参照電極の一例を模式的に説明する図である。図4に示す参照電極においては、NaCl−KCl混合溶融塩中にAgClを含有させた溶融塩浴をセラミック製のさや管に収め、該溶融塩浴に銀ロッドを浸漬することにより、Ag/AgCl参照電極を構成している。
水溶液中での電解反応では定電流法による電析が一般的であるが、溶融塩電解において定電流法を採用することは必ずしも容易でないため、本発明における溶融塩電解では定
電位法を採用することが好ましい。図5は、塩化リチウム(LiCl)に塩化ジスプロシウム(1mol%DyCl)を添加した溶融塩(図5(A))、及び、LiClにフッ化ジスプロシウム(1mol%DyF)を添加した溶融塩(図5(B))に対して測定したニッケル作用電極のAg/AgCl参照電極に対するカソード及びアノード分極曲線である。図5(A)及び(B)には、併せてDyCl及びDyFを添加しなかった場合(図5中、0mol%DyCl、0mol%DyF)、すなわち、溶融LiClに対して測定したニッケル作用電極のAg/AgCl参照電極に対するカソード及びアノード分極曲線を示した。なお、いずれも溶融塩温度は1023Kとし、掃引速度は1.7×10−3V・s−1とした。
図5より、DyClを添加した場合、及び、DyFを添加した場合のいずれにおいても、カソード電流密度は−2.3V付近から電位低下とともに急激に上昇した。これは、ジスプロシウムイオンの還元反応に伴うものと考えられる。一方、アノード電流密度は0.7V付近から電位上昇に伴い増加した。これは、Clイオンの酸化によるCl発生によるものと考えられる。
カソード分極曲線を測定することによって、工程S3において、ジスプロシウムイオンを還元するのに適切なカソード電位を決定できる。電析所要時間の短縮と電力効率向上とを両立させる観点から、カソード電位を負に掃引したときにカソード電流密度の絶対値が下に凸の増加から直線的な増加に転じる電位以上の電位がカソード電位として好ましい。また、カソード電位が−3.0Vを下回ると電離イオン種のLiイオンの還元反応が起こるので、Dyの電析電位は−3.0V以上に設定するのが好ましい。よって、図5のカソード分極曲線からは、工程S3において、Ag/AgCl参照電極に対するカソード電位を、−3.0V以上−2.0V以下の範囲内(例えば−2.5V等。)で定電位分極することが好ましく、−3.0V以上−2.5V以下(例えば−2.8V等。)以下の範囲内で定電位分極することがより好ましい。
工程S1においてハロゲン化ジスプロシウムを添加せずに、工程S3において溶融塩を電解した場合、カソード電位が電離イオン種のLiイオンが電気化学的に還元される電位よりも高い(貴な)電位である場合、上記式(1)〜(4)の反応はほとんど進行せず、還元電流はほとんど流れない。一方、カソード電位がLiイオンが電気化学的に還元される電位よりも低い(卑な)電位であり、かつ、上記のように−3.0V以上である場合には、工程S3の初期においてはカソードにはリチウムが電析し、その後、原料中の金属ジスプロシウムが塩化されて生じる塩化ジスプロシウムが電離し、ジスプロシウムイオンが供給された後には、カソードにジスプロシウムが電析することとなる。
本発明によれば、工程S1においてハロゲン化ジスプロシウムを添加しておくことにより、工程S3において、Liイオンが電気化学的に還元される電位よりも高い(貴な)電位である場合であっても、上記式(1)〜(4)の反応を進行させ、ジスプロシウムイオンを電析させることが可能となる。また、電析層にリチウムが混入して純度が下がることを防止することが可能となる。
なお、工程S3では、工程S1及びS2に引き続き、溶融塩の溶融状態を保持する必要があるため、系内を工程S1及びS2と同様の温度に保持しておくとよい。
工程S3における電解時間は、上記式(1)〜(4)の反応を進行させ、原料中に含まれるジスプロシウムを回収できる時間であることが好ましい。電解時間は、ハロゲン化ジスプロシウムの添加量、原料中に含まれる金属ジスプロシウムの量、カソード電位等により、適宜設定することが可能であるが、例えば、LiClに塩化ジスプロシウム(1mol%DyCl)を添加した溶融塩に0.5gの金属ジスプロシウムを添加し、カソードを−2.5Vに定電位分極した場合には、電解時間は2.5ks〜7.2ks(但し1ks=1000秒)であることが好ましい。
以下、実施例により、本発明に係るジスプロシウムの回収方法について、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の具体的形態に限定されるものではない。
<実施例1>
ハロゲン化リチウムとしてLiClを、ハロゲン化ジスプロシウムとしてDyFを、金属ジスプロシウムを含む原料として、Fe、B、Dy及びNd粉末を混合した混合粉末を用いて、工程S1〜S3を行った。工程S1〜S3には、図3に示したような装置100を用いた。
セル容器3にLiCl−2mol%DyF混合塩を入れ、Ar雰囲気下でこれを昇温し、溶融塩(浴温度1023K)を作製した。作製した溶融塩に、それぞれ0.5gのDy、Fe、B、及びNd粉末を混合した混合粉末を添加した。次に、作用電極6(カソード)及び対向電極7(アノード)を黒鉛棒とし、参照電極8をAg/AgCl参照電極(0.1)として、カソード電位を−2.5Vの還元電位に定電位分極し、カソード上に電着物を電析させた。電解時間は3.6ksとした。
図6にカソードとして用いた黒鉛棒電極の工程S3後の全体写真(図6(A))、電着物質のSEM画像(図6(B))およびXRD分析の結果(図6(C))を示す。図6(A)に示すように、黒鉛棒には粉末状の電着物が観察され、図6(B)に示すように、電着物は細かい粒子で構成されていた。電着物に対して電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)によるポイント分析を行った結果、電着物は約96at.%のジスプロシウムと約4at.%のネオジムとにより構成されることが分かった。また、図6(C)に示すように、XRDの結果よりDyのピークが観察された。
以上より、Dy、Fe、B、及びNからなる原料を添加した上記溶融塩から、Dyが高純度で電析、回収されることが分かった。
図7に、工程S3後のカソードに電析した電着物の乾燥重量を、工程S3中のカソード電位に対してプロットしたグラフ、及び、カソードから取り除かれた電着物の外観写真を示す。
<実施例2、3>
工程S3におけるカソード電位を−2.2V、−2.8Vとした以外は、実施例1と同様にして工程S1〜S3を行った例を、それぞれ実施例2、3とした。図7に、工程S3後のカソードに電析した電着物の乾燥重量を、工程S3中のカソード電位に対してプロットしたグラフ、及び、カソードから取り除かれた電着物の外観写真を示す。
<比較例1>
工程S1においてフッ化ジスプロシウムを添加しなかった以外は実施例1と同様にして、工程S1〜S3を行った例を、比較例1とした。図7に、工程S3後のカソードに電析した電着物の乾燥重量を、工程S3中のカソード電位に対してプロットしたグラフを示す。
<比較例2>
工程S1においてフッ化ジスプロシウムを添加しなかった以外は実施例3と同様にして、工程S1〜S3を行った例を、比較例2とした。図7に、工程S3後のカソードに電析した電着物の乾燥重量を、工程S3中のカソード電位に対してプロットしたグラフを示す。
<比較例3>
工程S2を行わなかった(すなわち、金属ジスプロシウムを含む原料を添加しなかった
)以外は実施例と同様にして、工程S1及びS3を行った例を、比較例3とした。図7
に、工程S3後のカソードに電析した電着物の乾燥重量を、工程S3中のカソード電位に
対してプロットしたグラフを示す。
図7に表れているように、比較例1と実施例1との比較、及び、実施例3と比較例3との比較より、塩化ジスプロシウムを添加することにより電着量が増加することが分かった。また、カソード電位が低くなる(卑である)ほど電着量は増加し、塩化ジスプロシウムを添加することによる電着量の増加は、カソード電位が低くなるほど顕著となることが分かった。
また、実施例2、3の電着物に対しても、EPMAによるポイント分析を行った結果、電着物はいずれも96at.%以上のDyと約4at.%以下のNdとにより構成されていた。一方、塩化ジスプロシウムを添加しなかった比較例1及び2に対してEPMAによるポイント分析を行った結果、電着物は、いずれも89at.%以上のDyと約11at.%以下のNdとにより構成されていた。
実施例1〜3と比較例1及び2との電着量及び組成の比較より、本発明によれば、電析されるジスプロシウムを高純度かつ高収率で回収可能であることが確認された。
また、原料を添加しなかった比較例3の電着量は実施例3の電着量の約52%であり、その組成は、いずれも91at.%以上のDyと約9at.%以下のNdとにより構成されていた。比較例3の電着物は、主として添加した塩化ジスプロシウムが電離して生じたジスプロシウムイオンが電析したものである。実施例3と比較例3との比較より、実施例3では、添加した塩化ジスプロシウムに由来するジスプロシウムイオンに加えて、原料(混合粉末)中に含まれていた金属ジスプロシウムに由来するジスプロシウムイオンが電析されることにより、比較例3よりも電着量が増加し、比較例3の約2倍の電着量となっていることが分かる。
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う、ジスプロシウムの回収方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
本発明は、ハイブリット自動車向け高出力モーター等に使用されるネオジム磁石等のスクラップから、簡易なプロセスでジスプロシウムを高純度かつ高収率で回収し、再利用する方法として好適に利用可能である。
1 溶融塩
2 原料
3 セル容器
4 炉(加熱装置)
5 耐熱容器
6 作用電極(カソード)
7 対向電極(アノード)
8 参照電極
9 熱電対温度計
10 不活性ガス流入口
11 不活性ガス流出口
100 溶融塩電解装置

Claims (6)

  1. ハロゲン化リチウムにハロゲン化ジスプロシウムを添加してなる混合塩を溶融し、溶融塩を作製する溶融塩作製工程と、
    前記溶融塩に金属ジスプロシウムを含む原料を添加する添加工程と、
    前記添加工程の後に、前記金属ジスプロシウムを含む原料が添加された溶融塩を、該溶融塩に接して、または該溶融塩中に、カソード及びアノードが保持されている溶融塩電解装置を用いて電気分解し、原料中の金属ジスプロシウムを電解によりアノードで発生するハロゲンと反応させてハロゲン化ジスプロシウムとし、当該ハロゲン化ジスプロシウムを電離させることにより生じるジスプロシウムイオンを還元させカソードに金属ジスプロシウムを電析させる、電解工程と
    を有する、ジスプロシウムの回収方法。
  2. 前記ハロゲン化ジスプロシウムが塩化ジスプロシウム又はフッ化ジスプロシウムである、請求項1に記載のジスプロシウムの回収方法。
  3. 前記ハロゲン化リチウムが塩化リチウムである、請求項1又は2に記載のジスプロシウムの回収方法。
  4. 前記電解工程において、Ag/AgCl参照電極に対するカソード電位を、−3.0V以上−2.0V以下に定電位分極する、請求項1〜3のいずれかに記載のジスプロシウムの回収方法。
  5. 前記電解工程において用いられる前記カソードが炭素電極である、請求項1〜4のいずれかに記載のジスプロシウムの回収方法。
  6. 前記原料が、ジスプロシウム以外に、ネオジム、鉄、及び、ホウ素を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載のジスプロシウムの回収方法。
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