JP7097572B2 - 金属チタンの製造方法 - Google Patents

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この発明は、溶融塩電解により、チタン原料から金属チタンを製造する方法に関するものである。特にこの発明は、比較的低温の溶融塩電解で、金属チタンを製造することのできる技術を提案するものである。
金属チタンは、大量生産に適したクロール法により製造することが一般的である。このクロール法では、はじめに、チタン鉱石に含まれる酸化チタンを塩素と反応させ、四塩化チタンを生成する。そして、この四塩化チタンを金属マグネシウムで還元し、スポンジ状の金属チタン、いわゆるスポンジチタンを得る。
ここで、比較的薄い厚みの金属チタン箔等を製造するには、上記のスポンジチタンを溶解するとともに鋳造してチタンインゴットやチタンスラブとした後、さらに鍛造や圧延その他の所要の加工を施すことが必要になる。それ故に、このような溶解及び加工を要するプロセスでは、金属チタン箔その他の所定の形状の金属チタンを効率的かつ低コストでの製造が難しい。
かかる状況の下、上述した溶解及び加工に代えて、溶融塩浴を用いて金属チタンを析出させる溶融塩電解を採用することが、製造プロセスでの消費エネルギーの削減及びコストの低減の観点から注目されている。この種の技術としては、たとえば特許文献1及び非特許文献1~4に記載されたもの等がある。
特開2005-15821号公報
友成忠雄、「金属チタンの電解製法(その2)」、電気化学および工業物理化学、電気化学会、昭和39年、第32巻、p. 566-573 B. J. Fortin, J. G. Wurm, L. Gravel, and R. J. A. Potvin, "Electrodeposition of adherent titanium coatings on induction heated cathodes in fused salts", J. Electrochem. Soc., 106(1959), p. 428-433. 竹内栄、渡辺治、「チタンの溶融塩電解精製に関する実験的考察-電解浴組成の影響について」、日本金属学会誌、日本金属学会、1964年、第28巻、p. 633-638 竹内栄、渡辺治、「チタンの溶融塩電解精製に関する実験的考察 析出チタン結晶の形状および成長について」、日本金属学会誌、日本金属学会、1964年、第28巻、p. 728-734
ところで、金属チタンを析出させる溶融塩電解では、溶融塩浴を構成する塩を十分に溶解させた状態で電気分解を行うことが必要である。
しかるに、これまでに用いられている溶融塩浴では、その塩を溶解させるためにある程度高温にしなければならなかった。上述した非特許文献2~4にも記載されているように、そのような溶融塩を用いた溶融塩電解では、電気分解時に溶融塩浴の温度を高温とせざるを得ない。
これに対し、電気分解時の温度を低くすることができれば、溶融塩電解の操業はコスト的に極めて有利となる。また、それとともに、金属チタンを電着させるカソードや、電解槽の所定の部分を構成する部材等に用いる材料の選択肢も広がるので有効である。
ただし、特許文献1に開示の発明では溶融塩浴が臭化物を主体とした組成で臭素が発生するおそれがあり、安全性の観点から改善の余地がある。なお、特許文献1の段落0023には、「ヨウ化物を主体とした電鋳用溶融塩浴はより低温で電鋳できることが予想されるが、電鋳用溶融塩浴が不安定となって実際に電鋳を行うことができなかった」との記載がある。
非特許文献1にはヨウ化物浴を使用して溶融塩浴の温度を300~375℃として純チタンを得たとの記載があるが、電極上にチタンを析出させた旨の開示がない。非特許文献1に記載の電気分解では、チタン源として添加されるTiI4は所定の温度域で揮発しやすく、カソードでのTiI4の直接還元によるチタンの電析が困難と推測されるため、カソードで析出したNa等の金属によってTiI4がチタンへと還元された可能性がある。溶融塩浴中にチタンが析出するとチタンを溶融塩浴から単離する工程が必要となりコスト的に不利である。また、非特許文献1では、チタン原料であるTiI4を浴に添加することとし、陽極としては黒鉛ルツボを用いている。この場合、黒鉛ルツボから溶融塩浴および析出チタン中へ炭素が混入する可能性が高い。
この発明の目的は、金属チタンを製造するにあたり、より安全な、比較的低温で溶融塩電解を行うことができる金属チタンの製造方法を提供することにある。
発明者は鋭意検討の結果、電気分解に用いる溶融塩を、アルカリ金属のヨウ化物を主体とするものとすることにより、ある程度低温で電気分解を行って金属チタンをカソードに析出させることができるとの知見を得た。さらに、アルカリ金属のヨウ化物を主体とした溶融塩浴組成とすることで、アノードでハロゲンガスが発生する場合でも比較的安全なヨウ素を優先的に発生させることができる。
また、チタンを含有するアノードを使用し、これをチタン原料とする場合には、浴のチタン源となる多量のTiI2などを別途作製し浴へ継続的に添加しない場合でも、またTiI2などを添加する手順を経ない場合でも、カソードでのチタン電析が可能となる。
この知見の下、この発明の金属チタンの製造方法は、チタン原料から金属チタンを製造する方法であって、前記チタン原料としてチタンを含有するアノードを使用し、アルカリ金属のヨウ化物を50mol%以上含み250℃で溶融状態である溶融塩による溶融塩浴で、該溶融塩浴の温度を250℃~400℃として電気分解を行い、金属チタンをカソードに析出させる電解工程を含むものである。
ここで、電解工程では、前記溶融塩が、前記アルカリ金属のヨウ化物を85mоl%以上含むことが好ましい。
電解工程では、前記溶融塩が、前記アルカリ金属のヨウ化物として、ヨウ化リチウムを含むものとすることができる。
この場合、電解工程で、前記溶融塩中の前記ヨウ化リチウムの含有量を、40mоl%以上とすることが好適である。
なお、上記の電解工程では、前記電気分解時に、前記溶融塩にハロゲン化チタンが含まれることがある。
ところで、電解工程では、前記電気分解時の前記溶融塩浴の温度に対する耐性を有する絶縁体部材を備えた装置を使用することが好ましい。
具体的には、前記絶縁体部材は、耐熱ガラス、フッ素樹脂およびポリイミドからなる群から選択される一種以上を含有する絶縁体部材とすることができる。
この発明の金属チタンの製造方法によれば、アルカリ金属のヨウ化物を主体とする溶融塩を用いることにより、より安全に、比較的低温で溶融塩電解を行うことができる。また、チタン原料としてチタンを含有するアノードを使用することで、浴のチタン源となる多量のTiI2などを別途作製し浴へ継続的に添加しない場合でも、またTiI2などを添加する手順を経ない場合でも、カソードでのチタン電析が可能である。
実施例1で得られたカソード上の電析物に対して行ったX線回折の結果を示すグラフである。 実施例2で得られたカソード上の電析物に対して行ったX線回折の結果を示すグラフである。 実施例3で得られたカソード上の電析物に対して行ったX線回折の結果を示すグラフである。
以下に、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
この発明の一の実施形態に係る金属チタンの製造方法は、チタン原料から金属チタンを製造する方法であって、アルカリ金属のヨウ化物を50mol%以上含み250℃で溶融状態である溶融塩を溶融塩浴とし、250℃~400℃の温度の前記溶融塩浴で電気分解を行って、金属チタンをカソードに析出させる電解工程を含むものである。電解工程の電気分解は一般に、電解槽内を溶融塩で満たして溶融塩浴とし、この溶融塩浴に、電源に接続したアノード及びカソードを浸漬させ、これらのアノード及びカソード間に電圧を印加することにより行う。
(溶融塩)
上記の電解工程では特に、電解槽内の溶融塩浴を構成する溶融塩が、アルカリ金属のヨウ化物50mol%以上含むものとして、アルカリ金属のヨウ化物主体のこの溶融塩の溶融塩浴で電気分解を行うことが肝要である。
このことによれば、電気分解時の溶融塩の温度を比較的低温としても、金属チタンを良好にカソードに析出させることができる。さらに溶融塩が、アルカリ金属の臭化物及び/又は塩化物を含むものとした場合は、より低い温度で溶融塩を溶融状態とすることができる点で好ましい。また、溶融塩がアルカリ金属のヨウ化物を主体とすることから、アノードで優先的に発生するのは比較的安全なヨウ素となり、毒性の高い臭素ガスの発生量を抑制することができる。
溶融塩中のアルカリ金属のヨウ化物の含有量は、50mol%以上とし、さらに85mоl%以上とすることが好ましい。電気分解時の溶融塩の温度を十分低下させることができ、また、有害なガスの発生をさらに抑制することができる。この観点より、溶融塩中のアルカリ金属のヨウ化物の含有量は、90mоl%以上とすることがより一層好適である。
一方、溶融塩中のアルカリ金属のヨウ化物の含有量は、たとえば97mоl%以下、さらに95mоl%以下とすることができる。以上のようなアルカリ金属のヨウ化物含有量とすることで、アルカリ金属の臭化物および塩化物量を適切に確保でき、より低温での電気分解にてカソードにチタンを析出させうる。
溶融塩浴を構成する溶融塩の大部分を占めるアルカリ金属のヨウ化物としては、たとえば、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化セシウム(CsI)およびヨウ化カリウム(KI)、からなる群から選択される少なくとも一種とすることができる。
なかでも、ヨウ化リチウムを含む溶融塩とした場合は、後述するように、たとえば、カソード上に金属チタンを析出させるチタン析出過程前の、チタンを含有するアノードを溶解させるアノード溶解過程の際に、カソード上にリチウムを優先的に析出させることができる。それにより、アノード溶解過程で、チタンを含有するアノードを良好に溶解させることができる。
このようなアノードの溶解を促進させるため、溶融塩中のヨウ化リチウムの含有量は、40mоl%以上とすることが好ましく、特に43mоl%以上とすることがより一層好ましい。なお、ヨウ化リチウムの含有量は、たとえば90mоl%以下としてもよい。
溶融塩浴を構成する溶融塩中のアルカリ金属の臭化物としては、臭化カリウム(KBr)等とすることができる。特に臭化カリウムは、比較的低温で溶解する溶融塩とするとの観点から好適である。
溶融塩浴を構成する溶融塩中のアルカリ金属の塩化物としては、塩化セシウム(CsCl)等とすることができる。このうち、少なくとも塩化セシウムを含ませることにより、溶融塩を溶融状態とするための温度を良好に低下させるという利点がある。
アルカリ金属の臭化物及び塩化物は、操業温度等を考慮して、その具体的な塩の種類や含有量を適宜決定することができる。
なお、上述したモル基準の含有量は、ICP発光分析により測定可能である。溶融塩浴を作製する際は、各成分の混合比からモル基準の含有量を求めることができる。
かかる溶融塩は、上述したようなアルカリ金属のヨウ化物を主体とするとともに、アルカリ金属の臭化物およびアルカリ金属の塩化物を含むことにより、アルカリ金属のヨウ化物の含有量が50mоl%未満である場合と比較して、溶融塩が良好に溶融する温度を70~200℃程度低下させることができると考えられる。よって、250℃にて溶融状態である溶融塩による溶融塩浴を実現可能である。
なお、溶融塩浴の溶融状態を良好に維持する観点から、溶融塩浴が溶融状態となる温度より50℃以上高い温度であって、かつ400℃以下の温度条件で電解工程を行うことが好ましい。この温度条件であれば溶融塩浴の溶融状態を維持するために高度な温度制御を要求されることがなく、かつ低コストで金属チタンを析出させることができる。
(電解工程)
電解工程では、たとえば、電解槽内を上記の溶融塩で満たして溶融塩浴とし、この溶融塩浴に、所定のアノード及びカソードを浸漬させる。そして、電気分解を行うには、溶融塩浴を構成する溶融塩を所定の温度に維持した状態で、それらのアノード及びカソードに接続した電源を用いて、アノード及びカソード間に電圧を印加する。
ここにおいて、この実施形態では、先に述べたように、所定の溶融塩を用いて溶融塩浴を構成することにより、電気分解時の溶融塩の温度(つまり溶融塩浴の温度)を低く設定しても、電気分解を良好に行うことができてカソードに金属チタンを析出できる。
具体的には、溶融塩の適切な成分を選択することにより、電気分解時の溶融塩浴の温度を、250℃~400℃とすることができる。電気分解時の溶融塩浴の温度は、350℃以下、さらに300℃以下と低くできる場合もある。
電気分解時の溶融塩浴の温度をこのように低くすることができれば、金属の再酸化の反応や電極と析出金属の合金化等といったような、意図しない副反応の発生を抑制することができる。これにより、溶融塩電解を極めて容易に操業することができるようになる。
また、溶融塩浴の低い温度での電気分解が可能になると、金属チタンを電着させるカソードの材質や、電解槽の所定の部分を構成する部材等に用いる材質の選択肢が広がるという利点もある。したがって、この実施形態では、電解工程で、前記電気分解時の前記溶融塩浴の温度に対する耐性を有する絶縁体部材を備えた装置を使用することができる。上述したような低温の電気分解では、耐熱ガラス及び/又は樹脂材料も使用可能になる。石英等の高温に耐えうる材料を使用できる場合もある。たとえば、電解工程で用いる装置の一部を、ホウケイ酸ガラス等の耐熱ガラス(パイレックス(登録商標)等)や、フッ素樹脂を含有する樹脂製部材、ポリイミドを含有する樹脂製部材で構成することができる。これにより、当該装置の製造時の設計における自由度を大きく高めることができる。
ところで、チタン原料として、チタンを含有するアノードを用いる場合は、はじめに、このアノードを溶解させるアノード溶解過程と、その後に、カソード上に金属チタンを析出させるチタン析出過程とを含むことができる。この場合、溶融塩にハロゲン化チタン等のチタン原料を添加しなくても、金属チタンの析出が可能である。
但し、アノード溶解過程及びチタン析出過程を経る場合であっても、溶融塩浴に、さらなるチタン原料としてのハロゲン化チタンを添加してもよい。溶融塩浴に添加したハロゲン化チタンは、電気分解により還元されて、カソード上に金属チタンとして析出する。具体的には、TiCl2やTiI2、及び/又は、チタンスクラップやスポンジチタンのような不純物を含む低純度の金属チタン等を添加することができる。このうち、低純度の金属チタンは、たとえば、不純物としてFeやOを比較的多く含む場合がある。低温の溶融塩浴への溶解の観点から、上記TiCl2やTiI2は、TiCl4やTiI4より有利である。TiCl4やTiI4は沸点が低いため溶融塩浴から蒸発してしまう恐れがあり、製造コストや操業安全性の観点から使用を回避してよい。チタンスクラップやスポンジチタンをチタン原料として使用する場合はこれらとTiCl4を接触させてより低級の塩化チタンを生成させればよい。この実施形態では、溶融塩浴に添加するチタン原料中の不純物は、金属状態のチタンが存在する限り塩化されないため低減可能である。
アノード溶解過程では、上記のようなアノードを用いることにより、電気分解を開始するとアノードが溶解し、溶融塩浴中にチタンが供給される。溶融塩浴中のチタンの形態はTiCl2やTiI2等のハロゲン化チタンであると考えられる。溶融塩にヨウ化リチウムが含まれる場合、カソード上には金属リチウムが析出し、アノードではチタンの溶解が進行する。
アノード溶解過程を経ることにより、別途ハロゲン化チタン等の準備とその添加の必要がない。
アノード溶解過程の後、必要に応じて、カソードを交換し、チタン析出過程を行う。アノード溶解過程ではカソードにチタン以外の金属が析出しうるので、この状態のカソードでチタン析出を行うとチタン純度が低下する。よって、アノード溶解過程にて溶融塩浴にチタンを供給した後、カソードを交換することが好ましい。
チタン析出過程では、アノード及びカソード間への電圧の印加により、溶融塩浴中のハロゲン化チタンが電気分解されて、カソード上に金属チタンが析出すると考えられる。上記のアノード溶解過程でカソード上には例えば金属リチウムが電着されていることがあるので、アノード溶解過程後かつチタン析出過程前に、カソードを交換しておくことで、より高純度の金属チタンを製造することができる。
カソードは金属モリブデン製や金属シリコンのものに限らず、黒鉛やグラッシーカーボン等の炭素電極、ステンレス鋼電極、炭素鋼電極等も採用可能である。金属チタンが電着する表面が金属モリブデン製又は金属シリコン製のカソードを使用することが可能である。
なお、電気分解で金属チタンをカソード上に析出させるに際しては、定常電流とすることもできるが、ON/OFF制御のパルス電流としてもよい。このON/OFF制御のパルス電流とは、金属チタンを析出させるための電流の供給と、電流供給の停止とを交互に繰り返すことを意味する。ON/OFF制御のパルス電流とすることにより、電流供給停止時に濃度拡散によりチタンイオンの濃度の不均一が解消もしくは緩和される。その結果として、金属チタンを得ることができると考えられる。
電気分解は、水分、N2及びO2をできる限り含まない雰囲気下で行うことが好ましい。電気分解時の雰囲気は、たとえばアルゴン雰囲気等とすることができる。
電解工程の後はカソード上に析出した電着物を、カソードから分離させて回収する。金属チタンの大きさは溶融塩浴温度や通電量により適宜調整可能である。
次に、この発明の金属チタンの製造方法を試験的に実施し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、それに限定されることを意図するものではない。
Ar雰囲気の反応容器内のNiるつぼ内に、LiI-CsI-KI-KBr-CsClからなる混合塩を用意した。この混合塩の組成は、LiI:46.04mоl%、CsI:31.12mоl%、KI:16.75mоl%、KBr:5.14mоl%、CsCl:0.95mоl%とした。当該混合塩中のアルカリ金属のヨウ化物は93.91mоl%である。この溶融塩浴は250℃にて良好な溶融状態であった。
上記の混合塩を400℃に保持した溶融塩で溶融塩浴とし、金属チタン製のアノード及び黒鉛製のカソードを用いて電気分解を行い、アノードの金属チタンを溶解させ、溶融塩浴にチタンを供給した。この際にアノードには、電流密度3.3mAcm-2、5.3mAcm-2又は6.7mAcm-2の定電流を供給し、合計通電量は8054Cであった。
その後、カソードを金属モリブデン製のカソードに交換して、溶融塩浴を所定の温度に保持し、定常電流又はパルス電流による電気分解を行ったところ、金属モリブデン製カソード上に電着物が得られた。
実施例1では、溶融塩浴の温度を400℃、電流密度を-2.5mAcm-2、通電量を-342Ccm-2とした。実施例2では、溶融塩浴の温度を300℃、電流密度-0.5mAcm-2のパルス電流をON時間1秒、OFF時間1秒として流し、通電量を-22Ccm-2とした。実施例3では、溶融塩浴の温度を250℃、電流密度-0.25mAcm-2のパルス電流をON時間1秒、OFF時間1秒として流し、通電量を-34Ccm-2とした。
実施例1は比較的大きいサイズの金属チタンが得られたため、カソードから金属チタンを取り、該金属チタンを後述のX線回折に供した。一方、実施例2および実施例3は金属チタンをカソードに付着させたままX線回折に供した。いずれの実施例もX線回折前に析出した金属チタンに対して塩酸リーチングを実施し、金属チタンに付着していた溶融塩浴成分を除いた。
このX線回折は、PANalytical社製のX’pert PROを用いて、実施例1では集中法によって、実施例2および実施例3では入射角0.5度の平行法によって測定した。X線にはCu-Kα線を用い、管電圧45kV、管電流40mAの条件で行った。
カソード上に得られた電析物に対して行ったX線回折の結果を、図1~3に示す。図1~3はそれぞれ実施例1~3に対応する。なお、実施例1では、塩酸リーチングにより、カソードに析出した金属チタンがカソードから分離した。これに対し、実施例2及び3では、塩酸リーチングによってはカソードから金属チタンが分離しなかったことから、カソードに金属チタンが付着した状態で、X線回折を行った。これに起因して、実施例2及び3では、カソードの材質であるMoの回折ピークが確認されている。
図1~3に示すところから、実施例1~3のいずれにおいても、金属チタンが得られたことを確認した。アノード溶解過程とチタン析出過程で異なるカソードを使用したため、溶融塩浴成分由来のLi、Cs、Kの含有が抑制され、金属チタンを析出させることができた。
これに対し、特開2017-137551号公報に記載した実施例では、溶融塩浴に用いた溶融塩が、アルカリ金属のヨウ化物を主体とした溶融塩ではなかったことに起因して、電気分解時の溶融塩浴の温度を比較的高く設定せざるを得なかった。

Claims (7)

  1. チタン原料から金属チタンを製造する方法であって、
    前記チタン原料としてチタンを含有するアノードを使用し、アルカリ金属のヨウ化物を50mol%以上含み250℃で溶融状態である溶融塩による溶融塩浴で、該溶融塩浴の温度を250℃~400℃として電気分解を行い、金属チタンをカソードに析出させる電解工程を含む、金属チタンの製造方法。
  2. 電解工程で、前記溶融塩が、前記アルカリ金属のヨウ化物を85mоl%以上含む、請求項1に記載の金属チタンの製造方法。
  3. 電解工程で、前記溶融塩が、前記アルカリ金属のヨウ化物として、ヨウ化リチウムを含む、請求項1又は2に記載の金属チタンの製造方法。
  4. 電解工程で、前記溶融塩中の前記ヨウ化リチウムの含有量を、40mоl%以上とする、請求項3に記載の金属チタンの製造方法。
  5. 電解工程で、前記電気分解時に、前記溶融塩にハロゲン化チタンが含まれる、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属チタンの製造方法。
  6. 電解工程で、前記電気分解時の前記溶融塩浴の温度に対する耐性を有する絶縁体部材を備えた装置を使用する、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属チタンの製造方法。
  7. 前記絶縁体部材を、耐熱ガラス、フッ素樹脂およびポリイミドからなる群から選択される一種以上を含有する絶縁体部材とする、請求項6に記載の金属チタンの製造方法。
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