JP7100781B1 - チタン箔の製造方法 - Google Patents

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Abstract

この発明のチタン箔の製造方法は、チタンイオンを含み塩化物が溶融してなる溶融塩浴を用いて、陽極及び陰極を含む電極で電気分解を行い、陰極の電解面に金属チタンを析出させる電析工程を含み、電析工程で、溶融塩浴中の金属イオンのモル濃度の合計に対するチタンイオンのモル濃度の割合を7%以上に維持し、溶融塩浴の温度を510℃以下に維持し、電極への通電に際し、通電の連続停止時間を1.0秒未満、電流密度を0.10A/cm2以上かつ1.0A/cm2以下とし、陰極の前記電解面への金属チタンの電析時間を120分以下とするというものである。

Description

この発明は、溶融塩浴を用いて陽極及び陰極を含む電極で電気分解を行い、陰極に金属チタンを析出させて、チタン箔を製造する方法に関するものである。
金属チタンは、大量生産に適したクロール法により製造することが一般的である。金属チタンの製造では、コークス等の炭素源存在下でチタン鉱石に含まれる酸化チタンを塩素と反応させ、四塩化チタンを生成する。その後、四塩化チタンを金属マグネシウムで還元し、スポンジ状の金属チタン、いわゆるスポンジチタンを得る。
ここで、上記のスポンジチタンを主原料として比較的薄い厚みの箔状の金属チタンを製造するには、スポンジチタンを溶解するとともに鋳造してチタンインゴットやチタンスラブとした後、さらに鍛造や圧延その他の所要の加工を施すことが一般的である。このような溶解及び加工を要するプロセスでは、箔状等の所定の形状の金属チタンを効率的かつ低コストで製造できるとは言い難い。
かかる状況の下、上述した溶解及び加工に代えて、溶融塩浴を用いて金属チタンを析出させる溶融塩電解を採用することが、製造プロセスでの消費エネルギーの削減及びコストの低減の観点から検討されている。
溶融塩電解に関する技術としては、たとえば特許文献1~3に記載されたものがある。
特許文献1には、「溶融塩電解法により高純度チタンを製造する方法において、浴組成としてはナトリウムイオンが10wt%以下である塩化物浴で電解することを特徴とする高純度チタンの製造方法」で、「融点が400℃以下の低い電解浴を用いて電解を行なう場合、電解温度が550~900℃の範囲で行なうこと」が記載されている。
この特許文献1では、「LiCl-KCl等の融点が低い浴(400℃以下)を用いる場合、通常400~500℃で電解が行なわれる。しかし、この温度での電析Tiの形状は、海綿状あるいは粉末状になってしまう。この状態では、酸素が多く、またロスも多くなり収率が悪化してしまう。」とし、「第2表に示すごとく浴温を550~900℃好ましくは600~750℃にすることによって、電析Tiの形状を粗大な結晶、具体的には六角板状、樹枝状にすることにより酸素の低減及び収率の向上等が計られる」ことが教示されている。
特許文献2には、「溶融塩電解法により原料チタンを電解精製する際に、陽極である原料チタンを充填した容器と陰極である電解容器との間に電圧を印加することを特徴とするチタンの製造方法」が開示されている。具体的には、「溶融塩電解工程としては、まずはじめに、容器本体1a内に原料チタンTおよびチタン棒3を装入しない状態から、予めモル比で1:1の割合に混合したNaCl-KClの混合塩化物を容器本体1a内に投入する。次いで、減圧下で650℃まで加熱して混合塩化物をよく脱水してから、炉内をアルゴン雰囲気に置換した後、740℃まで昇温保持して混合塩化物を溶融して電解浴4とする。次いで、原料チタンTおよびチタン棒3を電解浴4中に浸漬するとともに、蓋体1bを閉じる。続いて、図示せぬ供給管から、原料チタンTの底部に液体のTiCl4を適宜流量で吹き込んで電解浴中にチタンイオンを生成させた後、電解用回路11および不純物溶出防止用回路21の双方に、直流電流にて電圧をそれぞれ印加する。電解用回路11の電圧は100~1000mV、また、不純物溶出防止用回路21の電圧は500mV以下、好ましくは10~150mV、より好ましくは30~100mVとする。」などと記載されている。
特許文献3では、「溶融塩浴で、陽極及び陰極を用いて電気分解を行い、金属チタンを製造する方法であって、前記陽極として、金属チタンを含有する陽極を使用し、金属チタンを陰極上に析出させるチタン析出工程を含み、前記チタン析出工程で、溶融塩浴の温度を250℃以上かつ600℃以下とするとともに、当該チタン析出工程の開始時から30分経過するまでの間の前記陰極の平均電流密度を0.01A/cm2~0.09A/cm2の範囲内に維持する、金属チタンの製造方法」が提案されている。特許文献3の実施例の項目では、「陽極及び陰極に、所定の間隔で通電及び停止を繰り返すパルス電流を流し、それにより電気分解を行って、陽極を溶解させ、陰極上に金属チタンを箔状に析出させた。」と記載されている(表1参照)。
特開平3-291391号公報 特開2000-87280号公報 国際公開2020/044841号
特許文献3に記載された方法では、陰極上に金属チタンが薄く電析し、また、陰極から金属チタンを比較的容易に剥離させることができる。それ故に、この方法によれば、厚みの薄いチタン箔を得ることができると考えられる。
但し、特許文献3に記載の方法では、電極への通電に際し、たとえばパルス電流等の間欠的な電流を流すことがある。この場合は、パルス電流における通電の停止時間の故に、陰極上への金属チタンの電析にある程度時間を要するので、チタン箔の製造の能率は改善の余地がある。
この発明の目的は、陰極上に電析した金属チタンの、陰極からの剥離容易性を大きく低下させることなしに、単位時間当たりの金属チタンの電析量を増加させることができるチタン箔の製造方法を提供することにある。
陰極上への金属チタンの電析は、溶融塩浴中のチタンイオンの高濃度化、溶融塩浴の温度の上昇、電極への通電時の電流密度の増大により促進すると考えられる。一方、これらのことは、陰極からの金属チタンの剥離容易性の低下を招く懸念がある。
発明者は鋭意検討の結果、上記の各条件の適切な組合せを新たに見出した。これにより、電極への通電の停止時間を十分短くした場合や通電を停止しない場合であっても、金属チタンの剥離容易性の低下を抑制することができる。またここでは、電極への通電の停止時間が短く又は通電を停止しないので、単位時間当たりの金属チタンの電析量の増加を実現することができる。
この発明のチタン箔の製造方法は、チタンイオンを含み塩化物が溶融してなる溶融塩浴を用いて、陽極及び陰極を含む電極で電気分解を行い、陰極の電解面に金属チタンを析出させる電析工程を含み、電析工程で、溶融塩浴中の金属イオンのモル濃度の合計に対するチタンイオンのモル濃度の割合を7%以上に維持し、溶融塩浴の温度を510℃以下に維持し、電極への通電に際し、通電の連続停止時間を1.0秒未満、電流密度を0.10A/cm2以上かつ1.0A/cm2以下とし、陰極の前記電解面への金属チタンの電析時間を120分以下とするというものである。
上記のチタン箔の製造方法では、陽極がTiを含み、電析工程で前記陽極が消耗することが好ましい。
また、上記のチタン箔の製造方法では、前記塩化物が、二塩化チタン及び/又は三塩化チタンを含むことが好ましい。
電析工程では、溶融塩浴中の金属イオンのモル濃度の合計に対するチタンイオンのモル濃度の割合を、10%以上に維持することが好ましい。
また、電析工程では、溶融塩浴の温度を500℃以下に維持することが好ましい。
そしてまた、電析工程では、電流密度を0.20A/cm2以上かつ0.50A/cm2以下とすることが好ましい。
この発明のチタン箔の製造方法によれば、陰極上に電析した金属チタンの、陰極からの剥離容易性を低下させることなしに、単位時間当たりの金属チタンの電析量を増加させることができる。
この発明の一の実施形態に係るチタン箔の製造方法に用いることのできる電解装置を模式的に示す断面図である。 他の電解装置について、電極以外の部分を断面図として模式的に示す部分断面斜視図である。 さらに他の電解装置を模式的に示す断面図である。 さらに他の電解装置を模式的に示す断面図である。 実施例1の陰極上に電析した金属チタンの写真である。 比較例2の陰極上に電析した金属チタンの写真である。 剥離強度試験を示す断面図である。
以下に、この発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、各実施形態を説明するための図1~4及び図7はその構成を模式図で概略的に示したものである。よって、図1~4及び図7に示す各構成の配置やサイズ等は正確ではないことがある。
この発明の一の実施形態に係るチタン箔の製造方法は、チタンイオンを含み塩化物が溶融してなる溶融塩浴を用いて、陽極及び陰極を含む電極で電気分解を行い、陰極の電解面に金属チタンを析出させる電析工程を含む。そして、電析工程では、溶融塩浴中の金属イオンのモル濃度の合計に対するチタンイオンのモル濃度の割合を7%以上に維持するとともに、溶融塩浴の温度を510℃以下に維持する。また、電析工程では、電極への通電に際し、通電の連続停止時間を1.0秒未満とし、電流密度を0.10A/cm2以上かつ1.0A/cm2以下とする。電析工程での陰極の電解面への金属チタンの電析時間は、120分以下とする。なお、各実施形態の説明では、溶融塩浴中の金属イオンのモル濃度の合計に対するチタンイオンのモル濃度の割合を、単に「チタンイオンの割合」ともいう。
この種の溶融塩電解では、溶融塩浴中のチタンイオンの高濃度化、溶融塩浴の温度の上昇、及び、電極への通電時の電流密度の増大により、陰極上への金属チタンの電析が促進し、単位時間当たりの金属チタンの電析量が増加する傾向がある。但し、それらの全てを行うと、陰極上に電析した金属チタンを陰極から剥離することが困難になる。特に、電極から電析した金属チタンを引き剥がす等の物理的な剥離が困難となる。
これに対し、この実施形態では、電析工程にて、溶融塩浴中のチタンイオンの割合を7%以上と高濃度化し、電流密度を0.10A/cm2以上かつ1.0A/cm2以下とある程度高くする。他方、溶融塩浴の温度は510℃以下の比較的低温とする。このことによれば、単位時間当たりの金属チタンの電析量を増加させつつ、陰極から金属チタンを容易に剥離させることができる。特に、電極から電析した金属チタンを引き剥がす等の物理的な剥離を容易に実施できる。
その理由は定かではないが、次のように推測することができる。溶融塩浴中のチタンイオンの割合を上記のように多くしたことにより、そのチタンイオンが電極への通電で陰極上に金属チタンとして析出しても、陰極の近傍のチタンイオンが欠乏しにくくなる。これにより、陰極の近傍での電流の偏りが抑制され、当該電流の偏りに起因するデンドライト状金属チタンの析出が抑制されて、金属チタンが陰極上に箔状に析出すると考えられる。また、デンドライトの形成に伴う電力集中が起こらないので、陰極表面の温度の上昇が抑えられる。さらには、溶融塩浴の温度も適切に低く維持されているので、陰極表面の温度上昇が適切に抑制される。これらの結果、陰極と、そこに析出した金属チタンとの間での金属の相互拡散が抑制される。したがって、通電の連続停止時間が1.0秒未満というように、電極への通電の停止時間を十分短くした場合や通電を停止せずに定電流とした場合であっても、陰極から電析した金属チタンを容易に剥離できるようになると推測される。但し、この発明は、上述したような理論に限定されるものではない。
また、この実施形態では、通電の連続停止時間を1.0秒未満とすることから、単位時間当たりの金属チタンの電析量が増加し、それにより、チタン箔の製造能率を向上させることができる。加えて、このようにして製造されたチタン箔は、デンドライトの形成が抑制されたことにより、平滑性に優れたものになる。
(溶融塩浴)
電解槽内の溶融塩浴を構成する溶融塩は、塩化物を溶融させたものとする。好ましくは、溶融塩浴は、化合物としては塩化物のみが溶融してなるものとする。具体的な塩化物としては、たとえば、MgCl2やNaCl、KCl、CaCl2、LiCl、BaCl2、CsCl等を挙げることができる。
溶融塩浴は、MgCl2、NaCl、KCl、CaCl2、LiCl、BaCl2及びCsClからなる群から選択される一種以上、さらには二種以上の塩化物を含むことが好ましい。なお、溶融塩浴は、MgCl2、NaCl、KCl、CaCl2及びLiClからなる群から選択される一種以上、さらには二種以上、さらには三種以上の塩化物を含むことが好ましい。また、溶融塩浴は、MgCl2、NaCl、KCl及びCaCl2からなる群から選択される一種以上、さらには二種以上、さらには三種以上の塩化物を含むことが好ましい。このような好ましい塩化物の具体例として、NaCl-KCl-MgCl2、LiCl-KCl-MgCl2、NaCl-KCl-CaCl2、LiCl-KCl-CaCl2、NaCl-LiCl-KCl-MgCl2、NaCl-KCl-LiCl-CaCl2等が例示される。以上のような塩化物を含むことにより、ある程度低温としても溶融塩浴の溶融状態を良好に維持できるので、電析工程での溶融塩浴の先述した低い温度範囲を実現しやすくなる。
溶融塩浴中の金属イオンのモル濃度の合計に対する、マグネシウムイオンのモル濃度、ナトリウムイオンのモル濃度、カリウムイオンのモル濃度、カルシウムイオンのモル濃度、リチウムイオンのモル濃度、バリウムイオンのモル濃度及びセシウムイオンのモル濃度の合計の占める割合は、好ましくは80%以上、さらには90%以上とすることができる。但し、操業温度等を考慮し、その具体的な塩化物の種類や含有量は適宜決定することができる。なお、各金属イオンのモル濃度は、ICP発光分析及び原子吸光分析により算出する。
溶融塩浴は、フッ化物イオンを含まないことが望ましい。電析工程で陰極上に析出した金属チタンを陰極から剥離させて得られるチタン箔の表面には、溶融塩浴の成分が残留することが多く、これを除去するべく電析工程後にチタン箔の水洗等の洗浄を行うことがある。このとき、チタン箔の表面に残留した溶融塩浴の成分にフッ化物が含まれると、水との接触により有害なフッ化水素ないしフッ化水素酸が発生する。また、溶融塩浴がフッ化リチウムを溶解してなるものである場合、フッ化リチウムは水に対して難溶性を示すことから、水洗でのチタン箔からの除去に多量の水が必要になる。このような作業者及び環境への負荷を低減するため、フッ化物イオンを含まない溶融塩浴を用いることが好適である。
また、溶融塩浴にはチタンイオンが含まれる。溶融塩浴にチタンイオンを含ませるには、電析工程の前に予め溶融塩浴にチタン原料を溶解させておくこと、及び/又は、後述するように、電析工程の前もしくは電析工程の間に、Tiを含有する陽極を溶解させることが可能である。
溶融塩浴にチタン原料を予め溶解させる場合、チタン原料としては、より詳細には、塩化チタン、及び/又は、チタンスクラップやスポンジチタンのような不純物を含む低純度チタン等を挙げることができる。このうち、不純物を含む低純度チタンは、たとえば、不純物としてFeやOを比較的多く含む場合がある。チタンスクラップやスポンジチタンをチタン原料として使用する場合は、これらとTiCl4を接触させて二塩化チタン(TiCl2)及び/又は三塩化チタン(TiCl3)等の低級の塩化チタンを生成させ、それを溶解させてチタンイオンを含む溶融塩浴を構成することができる。ここでは、チタン原料が溶融塩浴に溶解してから陰極に金属チタンが析出するので、チタン原料が不純物を比較的多く含んでいても、金属チタンへの不純物混入が抑制され得る。
(電解装置)
この発明では、種々の電解装置を用いることができる。その一例として図1に示す電解装置1は、内部を溶融塩浴Bfとする密閉容器状の電解槽2と、電解装置1内で溶融塩浴Bfに浸漬させて配置した陽極3a及び陰極3bを含む電極3と、陽極3a及び陰極3bに接続されて、それらの陽極3a及び陰極3bに通電する電源4とを備えるものである。図示は省略するが、通常、電解槽2はその一部が開口可能となっており、開口を使用して電極3を電解槽2内に配置等することができる。他方、前記開口は密閉することも可能であり、電極3への通電中は外部環境から電解槽2内への大気の混入を抑制できる。陽極溶解工程及び/又は電析工程では、電解槽2内を減圧雰囲気又は、アルゴンガス等による不活性ガス雰囲気に維持することがある。
ここで、電解槽2内の溶融塩浴Bfに浸漬させる陽極3a及び陰極3bのうち、陽極3aは、Tiを含むことが好ましい。陽極3aの形状は、シート状、円筒状、円柱状、板状、塊状、粉状、粒状、繊維状又はブリケット状等の様々な形状とすることができる。陽極3aとしては、具体的には、スポンジチタン、チタンスクラップ、チタン棒材及び/又はチタン板材等を用いることができる。また、陽極3aとしては、具体的には、スポンジチタン及び/又はチタンスクラップ等を用いることができる。スポンジチタンを陽極3aとして使用する場合は、塊状のスポンジチタンをNi製等の籠内に設置し、その籠に通電すればよい。NiはTiよりもイオン化傾向が小さいため、Niは溶出せずにスポンジチタンのみを陽極3aとして溶出させることができる。この場合、上記の籠も陽極3aの一部に含まれ、陽極3aはTi及びNiを含む。籠及びその内容物(スポンジチタン等)を含む陽極3aは、陽極溶解工程や電析工程でTiを含む当該内容物のみが消耗し、籠は消耗しないことが多い。また、上記のとおり陽極3aとしては、ブリケット状のものを使用できる。ブリケット状とする場合は、上記Ni製等の籠を使用することなく陽極を構成できる。
またここで、陰極3bの材質は、Tiが電析するものであれば特に問わない。なお、陰極3bは、少なくとも、金属チタンを電析させる電解面が、Mo、W、TaもしくはNb又はそれらのいずれかの合金を含むものとすることがある。なかでも、陰極3bとしては、少なくとも電解面が、Moを90質量%以上、さらに99.9質量%以上含有するものを使用することが好ましい。Moは600℃以下ではTiに溶出しにくいことから、Moを90質量%以上含有する陰極3bの電解面はそこに析出した金属チタンと密着せず、当該金属チタンが容易に剥離可能になるとともに、金属チタンへのMo等の不純物の混入が抑制される。
陰極3bが材質の異なる複数の層を有する場合、陰極の表面に対するコーティング等により、それらの層のうちの少なくとも表層に90質量%以上のMoを含む電解面を形成することができる。陰極3bの少なくとも電解面は、Mo以外の不純物が10質量%未満で含まれることがあり、当該不純物としてはTi等が挙げられる。陰極3bを繰り返し使用する場合、陰極3bにはTiがある程度含まれることがある。なお、陰極3bの電解面のみならず全体を、90質量%以上のMoで構成してもよい。
陽極(先述した籠を含む場合はその内容物)及び陰極はそれぞれ、たとえば、ほぼ棒状、帯状、板状もしくは、円柱その他の柱状又は、塊状等のものとすることができる。特に図2に例示するように、陰極33bは、金属チタンが電析する電解面の少なくとも一部が曲面形状であることが好適である。但し、陽極及び陰極はそれぞれ板状のものを使用してもよい。陰極については、板状のものが好適に使用できる場合がある。図2に示す電解装置31は、陽極33a及び陰極33bの形状を変更したことを除いて、図1に示す電解装置1とほぼ同様の構成を有するものであり、円筒状の表面を有する円柱状の陰極33bと、陰極33bの周囲を取り囲んで配置した円筒状の陽極33aを備える。このように陽極33aの表面および陰極33bの表面をともに曲面形状とすると、陰極33bを可動に構成しても電極間距離を一定としやすいことから、陰極33bの表面(電解面)の広い面積でより均一に金属チタンを析出させることができる。この観点から、陽極33aの表面および陰極33bの対向する表面は、互いに相似な形状を有することが好ましい。
図3に他の電解装置11を示す。図3の電解装置11は、密閉された電解槽12内に、いわゆる陰極ドラムとしての円筒状もしくは円柱状の陰極13bを、その円筒状の表面の一部が溶融塩浴Bfに浸漬するように配置したものである。また、この電解装置11では、溶融塩浴Bf中に、円筒状の陰極13bの表面に倣って湾曲する板状の陽極13aを、陰極13bの表面と対向させて配置している。
図3の電解装置11では、円筒状もしくは円柱状の陰極13bを中心軸周りに回転させつつ、図示しない電源からそれらの電極13へ通電すると、溶融塩浴Bfに浸漬する陰極13bの表面の周方向の一部のうち、主として陽極13aと対向する部分が金属チタンを析出させる電解面になり、当該電解面に箔状の金属チタンTsが析出する。陰極13bの表面の、溶融塩浴Bfに浸漬する部分は、陰極13bの回転に伴って変化し、それに応じて電解面は、陰極13bの周方向に沿って移動する。ここでは、金属チタンTsを、電解装置11がさらに備える巻取りロール15で巻き取ることにより、長尺の金属チタンTsとしてのチタン箔を、陰極13bの表面から剥離しつつ連続的に製造することができる。
図4に示すさらに他の電解装置21は、一対の回転ロール26a、26b間に、陰極ストリップとしての帯状の陰極23bを環状に巻き掛けて配置したものである。またここでは、溶融塩浴Bf中に平板等の板状の陽極23aを、陰極23bの溶融塩浴Bf中の部分に対向させて配置している。陰極23bは、環状に巻き掛けたその外側を向く表面の一部が溶融塩浴Bfに浸漬するように、密閉された電解槽22内に位置する。この電解装置21では、溶融塩浴Bfに浸漬する陰極23bの表面のうち、主に陽極23aと対抗する部分が、電解面になる。
図4の電解装置21によると、たとえば、駆動側の回転ロール26aを回転させることより、帯状の陰極23b及びその電解面が回転ロール26a、26bの周囲で、図4に矢印で示すように移動するとともに、従動側の回転ロール26bがそれに追従して回転する。このとき、図示しない電源から電極23に通電することにより、陰極23bの外側の電解面上に金属チタンTsが箔状に析出する。金属チタンTsは、陰極23bの表面から剥離されながら巻取りロール25で巻き取られ、それにより、長尺の金属チタンTsのチタン箔を連続的に製造することができる。
なお、陽極と陰極との間の電極間距離は特に限定されないが、それらの対向する表面のいずれにおいても0.5cm以上かつ10.0cm以下であることが好ましい。なお、陽極と陰極との間の電極間距離は、1.0cm以上かつ8.0cm以下とすることが好ましく、また1.0cm以上かつ5.0cm以下とすることが好ましい。電極間距離を0.5cm以上とすることにより、電極間の短絡の発生を抑制することができる。また、電極間距離を10.0cm以下とすることにより、電圧の意図しない上昇が抑えられて、消費電力を節約することができる。この電極間距離は、陽極の表面と陰極の表面との間の最短距離を意味する。なお、陽極が、先述したようなNi製等の籠及び、そのなかに配置されたスポンジチタン等を有する場合、上記の電極間距離は、籠の端部から陰極の表面までの最短距離とする。
以下の説明では、図1に示す電解装置1を例として述べるが、図2~4の電解装置11、21、31を用いた場合でも実質的に同様にして実施することができる。
(陽極溶解工程)
必要に応じて、電析工程の前に、Tiを含有する陽極3aを消耗させ、溶融塩浴Bfにチタンイオンを供給する陽極溶解工程を行うことができる。但し、陽極溶解工程は省略してもよい。
陽極溶解工程では、一般的な溶融塩電解と実質的に同様にして、溶融塩浴Bfを所定の温度に維持した状態で、溶融塩浴Bfに浸漬させた陽極3a及び陰極3b間に、適切な大きさの電流を流す。
これにより、Tiを含有する陽極3aは溶融塩浴Bfに溶け出し、溶融塩浴Bfに、チタンイオンが存在するようになる。つまり、ここでは、陽極3aは、いわゆる消耗電極のように、チタンイオンを溶融塩浴Bfへ供給するべく機能する。
陽極溶解工程での溶融塩浴Bfの温度は、溶融状態であることを前提として250℃~800℃とすることができ、また陰極3bの電流密度は、0.01A/cm2~2.00A/cm2とすることができる。これにより、陽極3aの溶解が良好に行われる。
ここで、陰極3bの電流密度は、式:電流密度(A/cm2)=電流値(A)÷電解面積(cm2)により算出することができる。ここで、電解面積については、たとえば円筒状の表面を有する陰極3bの場合、式:電解面積(cm2)=陰極浸漬表面積=陰極直径(cm)×π×陰極高さ(cm)に基づいて算出する。また、電流値は、電流密度を求める所定の時間に流す電流の平均値である。例えば、定電流を流すのであれば、その電流の値が上記電流値となる。時間の経過により電流の値を変更するのであれば、例えば、通電中の等しい時間間隔にて電流の測定値を取得し、「電流の測定値の合計÷測定回数」で上記電流値を求めることができる。後述する電析工程についても、陰極3bの電流密度は同様にして算出することができる。
なお、陽極溶解工程では、溶融塩浴Bfへのチタンイオンの供給が終了した後、電析工程に先立って、陰極3bを交換することができる。陽極溶解工程では陰極3bにTi以外の金属が析出する場合があるので、この状態の陰極3bを使用して電析工程を行うと、電析工程で得られる金属チタンの純度が低下することが懸念される。また、電析工程で陰極3b上に電析する金属チタンが合金化し、剥離性が低下するおそれもある。それ故に、陽極溶解工程にて溶融塩浴Bfにチタンイオンを供給した後は、陰極3bを交換することが好ましい。
(電析工程)
電析工程では、電源4から陽極3a及び陰極3bを含む電極3に通電することにより、電極3で電気分解が行われ、溶融塩浴Bf中のチタンイオンが陰極3b上に金属チタンとして析出する。
ここでは、溶融塩浴Bf中の金属イオンのモル濃度の合計(Mm)に対するチタンイオンのモル濃度(Mt)の割合(Mt/Mmの百分率)が7%以上に維持されるように、電気分解を行う。溶融塩浴Bf中のチタンイオンの割合が7%を下回ると、陰極3bの周囲でチタンイオンが欠乏し、それに起因して陰極3bの周囲で電流分布が偏り、陰極3b上の金属チタンにデンドライトが形成され得る。デンドライトの形成は、それ自体が、陰極3b上の金属チタンから得られるチタン箔の平滑性を損なわせるので望ましくない他、陰極3bからの金属チタンの剥離を困難にする。この観点から、溶融塩浴Bf中のチタンイオンの割合は、10%以上に維持することが好ましい。上記Mt/Mmの百分率の上限側については特段に限定がなく、溶融塩浴を維持できる範囲内でチタンイオンの割合を適宜変更することができる。
溶融塩浴Bf中のチタンイオンを含む各金属イオンのモル濃度は、溶融塩浴から採取した溶融塩のサンプルを固化させた後、そのサンプルの成分を、ICP発光分析及び原子吸光分析で分析することにより算出する。仮に溶融塩浴中にMgCl2、NaCl、KCl、CaCl2、LiCl、TiCl2及びTiCl3が含まれていた場合、金属イオンのモル濃度の合計(Mm)は、マグネシウムイオンのモル濃度、ナトリウムイオンのモル濃度、カリウムイオンのモル濃度、カルシウムイオンのモル濃度、リチウムイオンのモル濃度及び、チタンイオンのモル濃度(Mt)を足し合わせて求める。チタンイオンのモル濃度(Mt)を、当該金属イオンのモル濃度の合計(Mm)で除して百分率で表すことにより、チタンイオンの割合を算出することができる。
電析工程の間は、陰極3b上に金属チタンが電析するに伴い、溶融塩浴Bf中のチタンイオンが消費される。これに対し、溶融塩浴Bf中のチタンイオンを、上述したような高濃度に維持するため、電析工程では、Tiを含む陽極3aを用いることが好ましい。この場合、電気分解が進行すると、陽極3aが消耗し、それに含まれるTiがチタンイオンになって溶融塩浴Bf中に供給される。このことから、溶融塩浴Bf中のチタンイオンを所定の割合に維持しやすくなる。
また、電析工程での溶融塩浴Bfの温度は、510℃以下に維持することとし、好ましくは500℃以下に維持することとし、さらに好ましくは480℃以下に維持する。溶融塩浴Bfの温度が高すぎると、陰極3b上に電析した金属チタンの結晶粒が粗大化しやすく、デンドライトの成長が進行するおそれがある。なお、溶融塩浴Bfを構成する溶融塩の溶融状態を維持できて当該溶融塩浴Bfを用いた電気分解が可能であれば、溶融塩浴Bfの温度は十分に低くすることができる。
そしてまた、電極3へ通電するに際し、電流密度は、0.10A/cm2以上かつ1.0A/cm2以下とし、さらには0.10A/cm2以上かつ0.50A/cm2以下とすることが好ましく、さらには0.20A/cm2以上かつ0.50A/cm2以下とすることが好ましい。このように比較的高い電流密度とすることにより、陰極3b上に金属チタンが短時間のうちに電析する。また、上述したような高い電流密度としても、この実施形態では、陰極3bから金属チタンを容易に剥離させることが可能である。電流密度が0.10A/cm2を下回るときは、陰極3b上への単位時間当たりの金属チタンの電析量が少なくなり、チタン箔の製造の能率が低下する。電流密度を1.0A/cm2よりも大きくすると、金属チタンが陰極3b上から容易に剥離することができなくなるおそれがある。なお、電析工程の電気分解の間に電流が変化する場合は、上記の電流密度は、電気分解の開始から終了までの間の平均値を意味する。
この実施形態の電析工程では、電極3への通電の連続停止時間(すなわち、連続して電流が流れない時間)を1.0秒未満として、電極3への通電の連続停止時間を十分に短くするか、又は通電を停止せずに常に電流を流し続ける。実施形態によっては、電極3への通電を停止せずに常に電流を流し続けるようにすることがある。電極3への通電の連続停止時間を1.0秒未満とすれば、陰極3b上への単位時間当たりの金属チタンの電析量を良好に増加させることができる。仮に通電の連続停止時間を設ける場合であっても、たとえば、陰極の電解面に金属チタンが電析する電析時間のうち、連続停止時間の合計が占める割合を20%以下とする等といったように、通電時間に対して連続停止時間を極めて短くすることが好ましい。なお、ここでいう通電の停止とは、陰極上に金属チタンを電析させる電気分解が行われる順方向の電流を停止することを意味する。したがって、その通電の停止時間の少なくとも一部に逆方向の電流が流れていたとしても、その間は順方向の電流が流れていないので、通電の停止に該当する。
特に好ましくは、電極3への通電を停止せず、また電流値ないし電流密度をあまり大きく変化させない定電流とする。この場合も、電流密度は先述した範囲内とすることが好適である。
上述した各条件に加えて、さらに、陰極の電解面への金属チタンの電析時間を120分以下とする。これにより、チタン箔の製造能率を向上させることができる他、陰極3b上の金属チタンへのデンドライトの形成が抑制されて、チタン箔の平滑性を高めることができる。先述した図3の電解装置11や図4の電解装置21では、陰極13b、23bの電解面が移動する。この場合、陰極13b、23bの電解面となっている所定の表面位置での金属チタンの電析時間が120分以下であればよく、電解面が移動して他の表面位置で金属チタンの電析が開始した後の時間は、当該所定の表面位置での電析時間に含まれない。陰極の電解面への金属チタンの電析時間は、好ましくは80分以下とし、より好ましくは60分以下とする。
以上に述べたように各種条件を調整したことにより、電析工程で陰極3b上に電析した金属チタンは、その陰極3bから容易に剥離することができる。ここでいう剥離とは、リーチング等を利用せず、金属チタンを陰極3bから物理的に引き剥がすことを意味する。
なお、たとえば、陰極3bの表面の電解面を78cm2以上として、比較的大きな寸法の箔状の金属チタンを析出させた場合であっても、該金属チタンが陰極3bの表面から良好に剥離され得る。さらに、陰極3bの表面の電解面を500cm2以上としても良好な剥離性を確保できる場合がある。
陰極3bから剥離して得られるチタン箔の表裏面の面積は、それぞれ78cm2以上、さらには500cm2以上になることがある。チタン箔の平均厚みは、好ましくは10μm~1000μm、より好ましくは50μm~500μmである。チタン箔の平均厚みを算出するには、光学顕微鏡にて箔の一辺に沿って厚み方向の断面を100倍で観察し、10点で厚みを求め、その平均値をチタン箔の平均厚みとする。なお、電析時間を長くするほど陰極3b上の金属チタンは厚くなる傾向にある。
またここでは、チタン箔を、上述したように電気分解により陰極3b上に金属チタンを析出させて製造することから、このチタン箔に含まれ得る酸素及び鉄の含有量は、陽極3a等のチタン原料に含まれ得るものよりも少なくすることができる。たとえば、この実施形態に従って製造したチタン箔では、酸素の含有量は400質量ppm以下まで低減することができる。酸素の含有量は、不活性ガス融解法により測定することができる。
次に、この発明のチタン箔の製造方法を試験的に実施し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、それに限定されることを意図するものではない。
図2に示す電解装置を用いて陽極及び陰極に電流を流し、溶融塩浴中にて電気分解を行った。電解装置の浴部分の寸法形状は、500mmΦ×800mm深さとした。溶融塩浴は、チタン原料として低級塩化チタン(二塩化チタンおよび三塩化チタン)を使用し、溶融塩浴中の金属イオンのモル濃度の合計に対するチタンイオンのモル濃度の割合を6~10%で表1に示す値にて維持することとし、残部をNaCl、KCl及びMgCl2とした。陽極は、JIS2種チタン板(厚さ6mm)を使用した。陰極は、その最表層を厚さ0.2mmのモリブデン板を内径(直径)96mmの円筒形にしたものとした。実施例5については、陰極の最表面の材質をモリブデンからタンタルに変更した。電解装置の電解槽内にて、円筒状の陽極の内側に陰極を配置した。ここでは、陽極及び陰極の高さ方向を溶融塩浴の深さ方向とほぼ平行とし、陽極の中心軸と陰極の中心軸は同じ位置とした。これにより、陽極および陰極の全周に渡り電極間距離は一定になった。
表1に示すように各条件を変更して、実施例1~6及び比較例1~4について電析工程を行い、陰極の表面上に比較的大きな箔状の金属チタンを析出させた。電析工程の間、実施例1~6並びに比較例1、2及び4では、電極に通電を停止せずに定電流を流した。一方、比較例3ではパルス電流を流し、このパルス電流のON時の電流密度を0.18A/cm2、ONの時間を1.5秒、OFF時の電流密度をゼロ(通電なし)、OFFの時間を1.5秒、平均電流密度を0.09A/cm2とした。なお、比較例3の「電析時間」は電析開始から終了までのトータルであるため、OFFの時間が含まれている。また、電析工程の間、溶融塩浴の温度は表1に示す値を維持した。
電析工程の後、金属チタンが電析した陰極を溶融塩浴から引き揚げた。陰極上に電析した金属チタンは、実施例1では図5に示す外観であり、比較例2では図6に示す外観であった。
その後、陰極上の金属チタンを水洗し、その表面に付着していた溶融塩を除去した。そして、後述の剥離強度試験を実施した。そのときの剥離容易性を表1に示す。
Figure 0007100781000001
剥離容易性は、剥離強度試験により、「〇」、「△」又は「×」のいずれであるかを判定した。「〇」は剥離強度が0.2N/mm以下であったことを意味し、「△」は剥離強度が0.2N/mm超1.0N/mm以下であったことを意味し、「×」は剥離強度が1.0N/mm超であったことを意味する。〇評価及び△評価は合格であり、〇評価はより優れていることを意味する。×評価は不合格である。
剥離強度試験は、図7に示すようにして行った。はじめに、陰極及び陰極に電着した金属チタンから70mm×10mmの試料103を、カッター等により切断して採取する。次に、90°剥離試験機のステージ111上に試料103を載置し、試料103の一端部にて陰極102から金属チタン101を10mm剥がし、その剥がした部分の金属チタン101をチャックで挟む。次に、ステージ111上の試料103の一端部の陰極102及び、その一端部とは反対側に位置する試料103の他端部をそれぞれ固定治具112で固定する。そして、図7に矢印で示すように、チャックを鉛直方向の上方側に20mm/secで上昇させ、ステージ111を水平方向に20mm/secで移動させる。このときに測定される荷重から、式:剥離強度=平均荷重(N)/金属チタン箔の幅(mm)を用いて剥離強度を求める。ここで、平均荷重とは、ステージ111を水平方向に5mmから25mmまで20mm変位する間の、チャックに鉛直方向に作用する荷重の平均値を意味する。また、金属チタンの幅とは、ステージ111上でステージ111の移動方向と直交する方向(図7の紙面奥行方向)に沿う金属チタン101の幅を意味する。なお、金属チタン101を剥離する方向と陰極102の表面とのなす角度は、陰極の表面から測って90°とした。剥離試験機としては、株式会社イマダ製デジタルフォースゲージZTS-200N(測定可能荷重:200N)および90度剥離試験用スライドテーブルP90-200Nを用いた。
また表1中、デンドライト個数密度は、単位面積当たりのデンドライトの個数を測定したものである。具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用し、拡大倍率50倍の5視野のそれぞれについて陰極上の金属チタンの表面に存在するデンドライトの個数を計測し、それらの5視野におけるデンドライト個数の平均値を1cm2あたりの個数に換算して求めた(小数点第1位は四捨五入とした)。「〇」は、デンドライト個数密度が1個/cm2未満であり、「△」は、デンドライト個数密度が1個/cm2以上2個/cm2未満であり、「×」は、デンドライト個数密度が2個/cm2以上であったことを意味する。〇評価及び△評価は合格であり、〇評価はより優れていることを意味する。×評価は不合格である。
また表1中、金属チタンの電析量評価は、陰極上に電析した金属チタンの厚みを電析時間60分当たりに換算した結果から評価した。「〇」は、電析時間60分当たりの金属チタンの厚みが80μm以上であったことを意味し、「△」は、電析時間60分当たりの金属チタンの厚みが60μm以上80μm未満であったことを意味し、「×」は、電析時間60分当たりの金属チタンの厚みが60μm未満であったことを意味する。〇評価及び△評価は合格であり、〇評価はより優れていることを意味する。×評価は不合格である。
表1より、実施例1~6では、陰極からの金属チタンの剥離が容易であり、また単位電析時間当たり金属チタンが十分厚く電析したことが解かる。一方、比較例1~4には、陰極からの金属チタンの剥離が容易ではなかったものや、単位電析時間当たりに電析した金属チタンの厚みが薄かったものがあった。また、実施例1~6は概して、陰極上へのデンドライトの形成が抑制されていたといえる。
よって、この発明によれば、陰極上に電析した金属チタンの剥離容易性を大きく低下させることなしに、単位時間当たりの金属チタンの電析量を増加できることが解かった。
1、11、21、31 電解装置
2、12、22、32 電解槽
3、13、23、33 電極
3a、13a、23a、33a 陽極
3b、13b、23b、33b 陰極
4、34 電源
15、25 巻取りロール
26a、26b 回転ロール
101 金属チタン
102 陰極
103 試料
111 ステージ
112 固定治具
Bf 溶融塩浴
Ts 金属チタン

Claims (9)

  1. チタン箔を製造する方法であって、
    チタンイオンを含み塩化物が溶融してなる溶融塩浴を用いて、陽極及び陰極を含む電極で電気分解を行い、陰極の電解面に金属チタンを析出させる電析工程を含み、
    電析工程で、溶融塩浴中の金属イオンのモル濃度の合計に対するチタンイオンのモル濃度の割合を7%以上に維持し、溶融塩浴の温度を510℃以下に維持し、電極への通電に際し、通電の連続停止時間を1.0秒未満、電流密度を0.10A/cm2以上かつ1.0A/cm2以下とし、陰極の前記電解面への金属チタンの電析時間を120分以下とする、チタン箔の製造方法。
  2. 陽極がTiを含み、
    電析工程で前記陽極が消耗する、請求項1に記載のチタン箔の製造方法。
  3. 前記塩化物が、二塩化チタン及び/又は三塩化チタンを含む、請求項1又は2に記載のチタン箔の製造方法。
  4. 電析工程で、溶融塩浴中の金属イオンのモル濃度の合計に対するチタンイオンのモル濃度の割合を、10%以上に維持する、請求項1~3のいずれか一項に記載のチタン箔の製造方法。
  5. 電析工程で、溶融塩浴の温度を500℃以下に維持する、請求項1~4のいずれか一項に記載のチタン箔の製造方法。
  6. 電析工程で、電流密度を0.20A/cm2以上かつ0.50A/cm2以下とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のチタン箔の製造方法。
  7. 前記溶融塩浴が、フッ化物イオンを含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載のチタン箔の製造方法。
  8. 前記陽極の表面および陰極の対向する表面が、互いに相似な形状を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のチタン箔の製造方法。
  9. 前記陽極と前記陰極との間の電極間距離を、0.5cm以上かつ10.0cm以下とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のチタン箔の製造方法。
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