JP7301673B2 - 金属チタンの製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、溶融塩浴で陽極及び陰極を含む電極を用いた電気分解により、陰極の表面上に金属チタンを析出させて、金属チタンを製造する方法に関する技術を提案するものである。
金属チタンは、大量生産に適したクロール法により製造することが一般的である。金属チタンの製造では、コークス等の炭素源存在下でチタン鉱石に含まれる酸化チタンを塩素と反応させ、四塩化チタンを生成する。その後、四塩化チタンを金属マグネシウムで還元し、スポンジ状の金属チタン、いわゆるスポンジチタンを得る。
ここで、上記スポンジチタンを主原料として比較的薄い厚みの箔状等のシート状の金属チタンを製造するには、上記のスポンジチタンを溶解するとともに鋳造してチタンインゴットやチタンスラブとした後、さらに鍛造や圧延その他の所要の加工を施すことが一般的である。このような溶解及び加工を要するプロセスでは、箔状その他のシート状等の所定の形状の金属チタンを効率的かつ低コストで製造できるとは言い難い。
かかる状況の下、上述した溶解及び加工に代えて、溶融塩浴を用いて金属チタンを析出させる溶融塩電解を採用することが、製造プロセスでの消費エネルギーの削減及びコストの低減の観点から検討されている。
この種の技術として、特許文献1には、「定電流パルスを用いる溶融塩電解析出法によりチタン箔またはチタン板を製造する方法であって、ガラス状炭素、黒鉛、MoおよびNiから選択される一種以上からなるカソード電極表面にチタン電析膜を形成した後、前記チタン電析膜に外力を与える工程、および、前記カソード電極の少なくとも一部を除去する工程の一方または両方を行うことにより、前記チタン電析膜を前記カソード電極から分離する、チタン箔またはチタン板の製造方法」が記載されている。
国際公開第2018/159774号
電気分解によりチタンを電極に析出させる場合、水素よりもイオン化傾向が大きいチタンは、電気分解の電解浴として水溶液を使用すると電極への析出が進まない。それ故に、電解浴には溶融塩浴を使用する。
ところで、板材である金属チタンの製造を目的とし、溶融塩浴で陽極及び陰極に通電して電気分解を行う溶融塩電解では、陰極上に金属チタンを析出させた後、該金属チタンを陰極の表面から剥離させることを要する。特に、このような溶融塩電解による金属チタンの製造を工業的に利用しようとすれば、シート状の金属チタンが析出する陰極の表面の面積の増大等に伴って、陰極からの剥離性悪化の問題が顕在化する。
特許文献1に記載された溶融塩電解の条件では、ある程度大きなシート状の金属チタンを陰極の表面上に析出させると、その後に陰極の表面から当該金属チタンを剥離することが困難であった。したがって、特許文献1に記載の技術は、シート状の金属チタンを工業的に製造するとの観点から更なる改善の余地があるといえる。
この発明の目的は、比較的大きなシート状の金属チタンであっても、陰極の表面上に析出させた後に当該表面からの剥離を可能にする金属チタンの製造方法を提供することにある。
発明者は鋭意検討の結果、表面が主としてモリブデンである陰極を使用し、該表面に金属チタンを析出させる際の条件のうち、特に、溶融塩浴の温度、電極への通電に用いるパルス電流の通電停止期間、及び、陰極の全期間の平均電流密度を調整することにより、析出後の金属チタンの剥離性が向上することを見出した。
この発明の金属チタンの製造方法は、溶融塩浴で陽極及び陰極を含む電極を用いた電気分解により、前記陰極の表面上に金属チタンを析出させて、金属チタンを製造する方法であって、前記陽極として、金属チタンを含有する陽極を使用するとともに、前記陰極として、少なくとも前記表面がモリブデンを90質量%以上含有する陰極を使用し、溶融塩浴の温度を515℃以下とし、1.0秒以上の通電停止期間を周期的に設けたパルス電流により電極に通電し、陰極の全期間の平均電流密度を0.01A/cm2~0.10A/cm2とする析出工程を含むものである。
前記析出工程では、パルス電流の通電停止期間を6.0秒以上とすることが好ましい。
前記析出工程では、陰極の通電期間の平均電流密度を0.05A/cm2~0.15A/cm2とすることが好ましい。
前記陰極としては、前記表面が円筒状又は帯状である陰極を用いることが好ましい。
前記析出工程では、前記陰極の前記表面のうち、溶融塩浴中に浸漬させた表面領域の面積を、30000mm2以上とすることが好ましい。
溶融塩浴は、MgCl2、NaCl、KCl、CaCl2及びLiClからなる群から選択される二種以上を含むことが好ましい。
この発明の金属チタンの製造方法によれば、比較的大きなシート状の金属チタンであっても、陰極の表面上に析出させた後に当該表面から剥離することができる。
この発明の一の実施形態に係る金属チタンの製造方法に用いることのできる電解装置を模式的に示す断面図である。 他の電解装置を模式的に示す断面図である。陽極33aおよび陰極33bのみ斜視図にて示し、陽極33aおよび陰極33bの間に溶融塩が入り込んでいることを示してある。 さらに他の電解装置を模式的に示す断面図である。 さらに他の電解装置を模式的に示す断面図である。
以下に、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
この発明の一の実施形態に係る金属チタンの製造方法は、溶融塩浴で、陽極及び陰極を含む電極を用いた電気分解を行い、陰極の表面上に金属チタンを析出させるというものである。ここでは、溶融塩浴の温度を515℃以下とした状態で、1.0秒以上の通電停止期間を周期的に設けたパルス電流により電極に通電し、陰極の全期間の平均電流密度を0.01A/cm2~0.10A/cm2とする析出工程を行う。
(溶融塩浴)
電解槽内の溶融塩浴を構成する溶融塩は、ハロゲン化物を一種以上混ぜ合わせたものとすることができる。代表的なハロゲン化物としては、たとえば、MgCl2やNaCl、KCl、CaCl2、LiCl等の塩化物を挙げることができる。
溶融塩浴は、MgCl2、NaCl、KCl、CaCl2、LiClからなる群から選択される二種以上を含むことが好ましい。これらのうちの二種以上を含むことにより、ある程度低温としても溶融塩浴の溶融状態を良好に維持できるので、析出工程での溶融塩浴の先述した低い温度範囲を実現しやすくなる。
溶融塩浴における、MgCl2、NaCl、KCl、CaCl2及びLiClからなる群から選択される少なくとも二種の含有量は合計で、好ましくは80mol%以上、より好ましくは90mol%以上とすることができる。但し、上記のような塩化物等のハロゲン化物は、操業温度等を考慮して、その具体的な塩の種類や含有量を適宜決定することができる。なお、上述したモル基準の含有量は、ICP発光分析により測定する。
なお、溶融塩浴がハロゲン化チタン等といったチタン原料を事前に含むものとして、析出工程前に予め、溶融塩浴にチタン原料を存在させることも可能である。溶融塩浴にチタン原料を予め混合する場合、チタン原料としては、より詳細には、TiCl2等のようなハロゲン化チタン、及び/又は、チタンスクラップやスポンジチタンのような不純物を含む低純度チタン等を挙げることができる。このうち、不純物を含む低純度チタンは、たとえば、不純物としてFeやOを比較的多く含む場合がある。チタンスクラップやスポンジチタンをチタン原料として使用する場合は、これらとTiCl4を接触させて低級の塩化チタンを生成させ、溶融塩浴を構成することができる。この実施形態では、チタン原料が溶融塩浴に溶解してから陰極に金属チタンが析出するので、チタン原料が不純物を比較的多く含んでいても、当該不純物は析出せず金属チタンへの不純物混入が抑制され得る。
溶融塩浴にTiCl2等を予め混合する場合、溶融塩浴中のTiCl2の含有量は、3mоl%~12mоl%の範囲内、特に5mоl%~10mоl%の範囲内に維持することが好ましい。このような範囲内とすることにより、陽極の十分な溶解を待たずに析出工程を開始可能であり、良好に金属チタンを析出させることができる。
但し、後述の陽極溶解工程が行われる場合は、金属チタンを含有する陽極の溶解に起因して、陰極に析出させる金属チタンの原料になるチタン原料が、溶融塩浴に供給されると推測される。これにより、その後の析出工程で、金属チタンを陰極に析出させることができる。この場合、溶融塩浴にTiCl2等を予め混合することは必ずしも必要ではない。
(電解装置)
この発明では、種々の電解装置を用いることができる。その一例として図1に示す電解装置1は、内部を溶融塩浴Bfとする密閉容器状の電解槽2と、電解装置1内で溶融塩浴Bfに浸漬させて配置した陽極3a及び陰極3bを含む電極3と、陽極3a及び陰極3bに接続されて、それらの陽極3a及び陰極3bに通電する電源4とを備えるものである。陽極3a及び陰極3bはそれぞれ、たとえば、ほぼ棒状、動かしながら使用する長尺の板である帯状、板状もしくは、円柱その他の柱状又は、塊状等のものとすることができる。なお、陽極3aと陰極3bの電極間距離を特定範囲内に設定したい場合は、陽極3aと陰極3bの対向部位に対する垂直断面での形状を相似形とすることが好ましい。例えば、筒状、棒状、または柱状の陰極3bを使用し、その外側に陽極3aを配置する場合、陽極3aも筒状としてよい。また、軸位置を固定して回転可能とした棒状または柱状の陰極3bを使用し、対向部位に断面弧状の板状陽極を使用してよい。この場合でも、陽極3aと陰極3bの対向部分はほぼ同じ電極間距離を維持できる。
ここで、電解装置1内の溶融塩浴Bfに浸漬させる陽極3a及び陰極3bのうち、陽極3aは、金属チタンを含有するものとする。陽極3aとしては、たとえば、スポンジチタン、チタンスクラップ、チタン棒及び/又はチタン板等を用いることができる。スポンジチタンを陽極3aとして使用する場合は、塊状のスポンジチタンをNi製の籠内に設置し、Ni製の籠に通電すればよい。NiはTiよりもイオン化傾向が小さいため、Niは溶出せずにスポンジチタンのみを陽極3aとして溶出させることができる。
またここで、陰極3bとしては、少なくとも、金属チタンを電着させる表面が、モリブデンを90質量%以上含有するものを使用する。モリブデンは600℃以下ではTiに溶出しにくいことから、陰極3bの当該表面に析出した金属チタンと密着せず、当該金属チタンが容易に剥離可能になるとともに、金属チタンへのMo等の不純物の混入が抑制される。
陰極3bは、少なくともその表面が、90質量%以上のモリブデンからなるものであれば、このような効果を得ることができる。陰極3bが複数の層を有する場合、陰極の表面に対するコーティング等により、それらの層のうちの少なくとも表層に90質量%以上のモリブデンを含む層を形成することができる。陰極3bの少なくとも当該表面に、10質量%未満であればモリブデン以外の不純物が含まれていてもよい。なお、陰極3bの表面のみならず全体を、90質量%以上のモリブデンで構成してもよい。
陰極3bの少なくとも表面のモリブデン含有量は、好ましくは99.9質量%以上とする。陰極3bの少なくとも表面は、モリブデンの他、チタン等の不純物を含むことがある。陰極3bを繰り返し使用する場合、陰極3bにはある程度チタンが含まれてしまうことがある。
陰極の形状としては、たとえば図2に示す陰極33bのように、金属チタンが電着するその表面の少なくとも一部が、曲面形状であることが好適である。図2に示す電解装置31は、陽極33a及び陰極33bの形状を変更したことを除いて、図1に示す電解装置1とほぼ同様の構成を有するものであり、円筒状の表面を有する円柱状の陰極33bと、陰極33bの周囲を取り囲んで配置した円筒状の陽極33aを備える。
陽極の表面および陰極の表面をともに曲面形状とすると陰極を可動としつつ電極間距離を一定としやすいことから、陰極の表面の広い面積でより均一に金属チタンを析出させることができる。この観点から、陽極の表面および陰極の表面は、互いに相似な曲面形状を有することが好ましい。
なお、図1の電解装置1では、金属チタンが析出する陰極3bの表面の全体が、溶融塩浴Bfに浸漬されている。したがって、この場合は、陰極3bの表面の面積全体が、溶融塩浴Bf中に浸漬させた表面領域の面積(陰極浸漬表面積)になる。
図3に他の電解装置11を示す。図3の電解装置11は、密閉された電解槽12内に、いわゆる陰極ドラムとしての円筒状もしくは円柱状の陰極13bを、その円筒状の表面の一部が溶融塩浴Bfに浸漬するように配置したものである。また、この電解装置11では、溶融塩浴Bf中に、円筒状の陰極13bの表面に沿って湾曲する板状の陽極13aを、陰極13bの表面と対向させて配置している。
図3の電解装置11では、円筒状もしくは円柱状の陰極13bを中心軸周りに回転させつつ、図示しない電源からそれらの電極13へ通電することにより、陰極13bの表面にシート状の金属チタンTsが析出する。そして、当該金属チタンTsを、電解装置11がさらに備える巻取りロール15で巻き取ることにより、長尺の金属チタンTsを、陰極13bの表面から剥離しつつ連続的に製造することができる。
図4に示すさらに他の電解装置21は、一対の回転ロール26a、26b間に、陰極ストリップとしての帯状の陰極23bを環状に巻き掛けて配置したものである。すなわち、陰極23bの表面は帯状である。陰極23bは、環状に巻き掛けたその外側を向く表面の少なくとも一部が溶融塩浴Bfに浸漬するように、密閉された電解槽22内に位置する。またここでは、溶融塩浴Bf中に平板等の板状の陽極23aを、陰極23bの溶融塩浴Bf中の当該部分に対向させて配置している。
図4の電解装置21では、たとえば、駆動側の回転ロール26aを回転させることより、帯状の陰極23bが回転ロール26a、26bの周囲で、図4に矢印で示すように移動するとともに、従動側の回転ロール26bがそれに追従して回転する。このとき、図示しない電源から電極23に通電することにより、陰極23bの外側の表面上に金属チタンTsがシート状に析出する。金属チタンTsは、陰極23bの表面から剥離されながら巻取りロール25で巻き取られ、それにより、長尺の金属チタンTsを連続的に製造することができる。
図3及び図4に示すいずれの例でも、陰極13b、23bの表面の、溶融塩浴Bfの浴面よりも下方側に位置する部分の面積が、溶融塩浴Bf中に浸漬させた表面領域の面積(陰極浸漬表面積)に相当する。
以下の説明では、図1に示す電解装置1を例として述べるが、図2~4の電解装置11、21、31を用いた場合でも実質的に同様にして実施することができる。
(陽極溶解工程)
先述したように、溶融塩浴Bfに予め塩化チタン等のチタン原料を混合させない場合、析出工程の前に、金属チタンを含有する陽極3aを消耗させ、溶融塩浴Bfにチタン原料を供給する陽極溶解工程を行うことができる。なお、溶融塩浴Bfにチタン原料を予め別途混合した場合は、陽極溶解工程を省略することもできるが、さらに陽極溶解工程を行ってもよい。
陽極溶解工程では、一般的な溶融塩電解と実質的に同様にして、溶融塩浴Bfを所定の温度に維持した状態で、溶融塩浴Bfに浸漬させた陽極3a及び陰極3b間に、適切な大きさの電流を流す。
これにより、金属チタンを含有する陽極3aは溶融塩浴Bfに溶け出し、溶融塩浴Bfに、陰極3bに析出する金属チタンの原料が供給される。つまり、ここでは、陽極3aは、いわゆる消耗電極のように、チタン原料を溶融塩浴Bfへ供給するべく機能する。
陽極溶解工程での溶融塩浴Bfの温度は、溶融状態であることを条件に250℃~800℃とすることができ、また陰極3bの平均電流密度は、0.01A/cm2~2.00A/cm2とすることができる。これにより、陽極3aの溶解が良好に行われる。
ここで、陰極3bの平均電流密度は、式:平均電流密度(A/cm2)=平均電流(A)÷電解面積(cm2)により算出することができる。ここで、電解面積については、たとえば円筒状の表面を有する陰極3bの場合、式:電解面積(cm2)=陰極浸漬表面積=陰極直径(cm)×π×陰極高さ(cm)で算出する。また、平均電流は、平均電流密度を求める所定の時間に流す電流の平均値である。例えば、定電流を流すのであればその電流値が平均電流の値となる。時間の経過により電流値を変更するのであれば、例えば、通電中の等しい時間間隔にて電流値を測定し、「測定した電流値の合計÷測定回数」で平均電流を求めることができる。後述する析出工程についても、陰極3bの平均電流密度は同様にして算出することができる。
なお、陽極溶解工程では、溶融塩浴Bfへのチタン原料の供給が終了した後、析出工程に先立って、陰極3bを交換することができる。陽極溶解工程では陰極3bにTi以外の金属が析出する場合があるので、この状態の陰極3bを使用して析出工程を行うと、析出工程で得られる金属チタンの純度が低下することが懸念される。また、析出するTiが合金化し剥離性が低下するおそれもある。それ故に、陽極溶解工程にて溶融塩浴Bfにチタン原料を供給した後、陰極3bを交換することが好ましい。
(析出工程)
上記の陽極溶解工程の後、必要に応じて陰極3bを交換し、析出工程を行うことができる。なお、陽極溶解工程を省略した場合は、電解槽2内を溶融塩浴Bfとした後に直ちに、析出工程を行うことができる。
析出工程では、電源4から陽極3a及び陰極3bへの通電により、陰極3b上に、溶融塩浴Bf中のチタンが金属チタンとして析出する。上記の陽極溶解工程で陰極3b上には金属チタンではない金属が電着されていることがあるので、陽極溶解工程後かつ析出工程前に陰極3bを交換しておくことで、より高純度の金属チタンを製造することができる。
析出工程では、溶融塩浴Bfの温度を515℃以下とする。溶融塩浴Bfの温度が515℃を超える場合、比較的大面積のシート状の金属チタンを陰極3bに析出させることができても、その後の金属チタンの剥離が困難になる。金属チタンの剥離性向上の観点から、溶融塩浴Bfの温度は495℃以下にすることが好ましい。
なお、溶融塩浴Bfは、たとえば350℃以上、典型的には400℃以上の温度にすることができる場合がある。溶融塩浴の構成成分を適宜追加ないし選択することにより、共晶温度が低くなって、このような低温の溶融塩浴Bfを実現することができる。低温の溶融塩浴Bfであっても、当該溶融塩浴Bf中にTiが含まれていれば、陰極3bの表面に金属チタンを電析させることが可能である。
また析出工程では、電極3に流す電流を、電流値をゼロ(すなわち通電しない)にする通電停止期間が周期的に設けられて通電期間と通電停止期間が交互に繰り返されるパルス電流とする。パルス電流は、金属チタンを析出させるための電流の供給と、電流供給の停止とを交互に繰り返すON/OFF制御により実現することができる。ON/OFF制御のパルス電流とすることにより、通電中は陰極近傍のチタン濃度が低くなるが、通電停止時に拡散により陰極近傍にチタンが供給される。すなわち、電流供給停止時に拡散によりTiの濃度の不均一が解消もしくは緩和されると考えられる。その結果として、陰極表面において平滑性に優れ、かつより高純度の金属チタンを得ることができると考えられる。
パルス電流の通電停止期間は1.0秒以上とし、好ましくは6.0秒以上とする。パルス電流の通電停止期間を1.0秒以上とすることにより、局所的に上昇した陰極3bの表面の温度が通電停止期間で低下し、結果として、陰極3bの表面からの金属チタンの剥離性が向上する。
パルス電流の通電停止期間は、好ましくは15秒以下、より好ましくは10秒以下とする。通電停止期間をある程度短くすることにより、生産性が向上する。
なお、パルス電流の通電停止期間に対する通電期間の比(通電時間/通電停止時間)は、たとえば0.1~2.0とすることがある。
また析出工程では、通電期間及び通電停止期間を含む全期間における陰極3bの平均電流密度を0.01A/cm2~0.10A/cm2とする。このように陰極3bの全期間の平均電流密度を高くしすぎないことにより、陰極3bの表面での局所的な温度上昇が抑制されて、結果的に陰極3b表面からの金属チタンの剥離性が向上する。なお、金属チタンの良好な剥離性の観点から、陰極3bの全期間の平均電流密度は0.01~0.05A/cm2とすることが好ましく、0.01~0.04A/cm2とすることがより好ましい。この全期間の平均電流密度は、陰極3b上への金属チタンの析出が始まる析出開始時から、当該析出を終了させる析出終了時までの平均電流を用いて、先述した式より算出することができる。
なお、パルス電流の通電期間における平均電流密度は0.05~0.15A/cm2とすることが好ましい。電流密度が大きいほど陰極3bへの金属チタン析出量が増加するため、通電期間にのみ着目した場合は比較的大きな電流密度とすることが好ましい。
このようにして行う析出工程では、たとえば、陰極3bの表面のうち、溶融塩浴Bf中に浸漬させた表面領域の面積を30000mm2以上として、比較的大きな寸法のシート状の金属チタンを析出させた場合であっても、該金属チタンが陰極3bの表面から良好に剥離され得る。さらに、陰極3bの表面の、溶融塩浴Bf中に浸漬させた表面領域の面積は、50000mm2以上としても良好な剥離性を確保できる場合がある。
陰極3bの表面から剥離して製造される金属チタンは、好ましくはシート状、より好ましくは箔状である。シート状の金属チタンの表裏面の面積は、それぞれ30000mm2~85000mm2、さらには50000mm2~85000mm2になることがある。当該金属チタンの平均厚みは、好ましくは50μm~200μm、より好ましくは80μm~150μmである。金属チタンの平均厚さを算出するには、光学顕微鏡にてシートの一辺に沿って厚み方向の断面を100倍で観察し、10点で厚みを求め、その平均値を金属チタンの平均厚みとする。なお、電解時間を長くするほど製造される金属チタンは厚くなる傾向にある。
またここでは、金属チタンを、上述したように電気分解により陰極3bの表面に析出させて製造することから、これにより製造された金属チタンに含まれ得る酸素及び鉄の含有量を、陽極3a等のチタン原料に含まれ得るものよりも少なくすることができる。たとえば、この実施形態に従って製造した金属チタンでは、酸素の含有量は400質量ppm以下まで低減することができる。酸素の含有量は、不活性ガス融解法により測定することができる。
次に、この発明の金属チタンの製造方法を試験的に実施し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、それに限定されることを意図するものではない。
図2に示す電解装置を用いて陽極及び陰極にパルス電流を供給して、溶融塩浴中にて電気分解を行った。電解装置の浴部分の寸法形状は、500mmΦ×800mm深さとした。溶融塩浴の組成は、NaCl、KCl及びMgCl2を少なくとも92mol%含むものとした。溶融塩浴中にはチタン原料としてTiCl2を6~7mоl%添加した。陽極は、JIS2種チタン板(厚さ6mm)を使用し、その内径(直径)が160mmの円筒状陽極とした。陰極は厚さ0.2mmのモリブデン板を内径(直径)96mmの円筒形にしたモリブデン製陰極とした。電解装置の電解槽内にて、円筒状の陽極の内側に円筒状の陰極を位置させるとともに、陽極及び陰極の高さ方向が溶融塩浴の深さ方向とほぼ平行になるように、陽極及び陰極を配置した。なお、陽極および陰極の全周に渡り電極間距離は一定とした。すなわち、陽極の中心軸と陰極の中心軸は同じ位置にある。
表1に示すように各条件を変更して、比較例1~4、参考例1及び2ならびに実施例1及び2について析出工程を行い、陰極の表面上に比較的大きなシート状の金属チタンを析出させた。
その後、陰極を溶融塩浴から引き揚げて水洗し、その表面に付着していた溶融塩を除去した。そして、陰極の表面上の乾燥させた金属チタンにカッターで切込みを入れ、切込みを入れた箇所を把持して金属チタンの剥離を試み、陰極の表面からの金属チタンの剥離性を評価した。その結果も表1に示す。
なお参考例1及び実施例2で得られた各金属チタン中の酸素含有量を不活性ガス融解法により測定したところ、当該酸素含有量は、参考例1では100質量ppmであり、実施例では310質量ppmであった。
Figure 0007301673000001
表1中、剥離性の「低」は、陰極の表面から金属チタンが剥離不可能であったか、剥離途中で金属チタンが破れたことを意味する。剥離性の「高1」は、金属チタンを陰極の表面から剥離可能であったが、ペンチ等の把持用道具を使用しなければ剥離できなかったことを意味する。剥離性の「高2」は、ペンチ等の把持用道具を使用せず、手で陰極の表面から金属チタンを容易に剥離できたことを意味する。
表1より、参考例1及び2ならびに実施例1及び2はいずれも、陰極の表面から金属チタンを剥離することができ、剥離性が良好であったことが解かる。一方、比較例1は、溶融塩浴の温度が高かったことにより、金属チタンの剥離が困難になったと推測される。比較例2及び比較例4は、平均電流密度が高かったことに起因して、金属チタンの剥離性が低下したと考えられる。比較例3は、パルス電流の通電停止期間が短かったことから、剥離性を向上できなかったと考えられる。

以上より、この発明によれば、比較的大きなシート状の金属チタンであっても、陰極の表面上に析出させた後に当該表面から剥離できることが解かった。
1、11、21、31 電解装置
2、12、22、32 電解槽
3、13、23、33 電極
3a、13a、23a、33a 陽極
3b、13b、23b、33b 陰極
4、34 電源
15、25 巻取りロール
26a、26b 回転ロール
Bf 溶融塩浴
Ts 金属チタン

Claims (7)

  1. 溶融塩浴で陽極及び陰極を含む電極を用いた電気分解により、前記陰極の表面上に金属チタンを析出させて、金属チタンを製造する方法であって、
    前記陽極として、金属チタンを含有する陽極を使用するとともに、前記陰極として、少なくとも前記表面がモリブデンを90質量%以上含有する陰極を使用し、
    溶融塩浴の温度を495℃以下とし、1.0秒以上の通電停止期間を周期的に設けたパルス電流により電極に通電し、陰極の全期間の平均電流密度を0.01A/cm2~0.10A/cm2とする析出工程を含む、金属チタンの製造方法。
  2. 前記析出工程で、パルス電流の通電停止期間を6.0秒以上とする、請求項1に記載の金属チタンの製造方法。
  3. 前記析出工程で、陰極の通電期間の平均電流密度を0.05A/cm2~0.15A/cm2とする、請求項1又は2に記載の金属チタンの製造方法。
  4. 前記陰極として、前記表面が円筒状又は帯状である陰極を用いる、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属チタンの製造方法。
  5. 前記析出工程で、前記陰極の前記表面のうち、溶融塩浴中に浸漬させた表面領域の面積を、30000mm2以上とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属チタンの製造方法。
  6. 溶融塩浴が、MgCl2、NaCl、KCl、CaCl2及びLiClからなる群から選択される二種以上を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属チタンの製造方法。
  7. 前記析出工程で前記陰極の表面に析出した金属チタンを、前記陰極の表面から剥離し、シート状又は箔状の金属チタンを製造する、請求項1~6のいずれか一項に記載の金属チタンの製造方法。
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