JP2596976B2 - ネオジム又はネオジム合金の製造方法 - Google Patents

ネオジム又はネオジム合金の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はネオジム又はネオジム合金の製造方法に係
り、特に最近高性能磁石として注目されているNd−Fe−
B系磁石用原料として適した高純度のネオジム又はネオ
ジム−鉄合金を安価に製造する方法を提供するものであ
る。
〔従来の技術〕
最近、比較的安価な高性能永久磁石としてNd−Fe−B
系あるいはNd−Fe−Co−B系永久磁石が提案された(日
本特許出願公開昭和59−46008号及び同昭和59−64739号
公報)。これらの永久磁石の製造に用いられるNdはカル
シウム熱還元法又は溶融塩電解法によって製造できるこ
とが知られている(例えば、日本特許出願公開昭和62−
63642号公報)。カルシウム熱還元法は高純度のNdを得
ることができるが製造コストが高いという問題がある。
本発明は溶融塩電解法によるNdの製造に向けられてい
る。
溶融塩電解法は塩化物電解浴を用いる方法とフッ化物
電解浴を用いる方法に大別される。フッ化電解浴を用い
る溶融塩電解法は、例えば、Nd−Fe合金を得る方法とし
て、鉄を陰極、炭素を陽極とし、電極形状は丸棒状又は
同心円状とし、適当な溶融塩電解浴中でNd2O3を電解還
元して金属ネオジムを鉄陰極上に析出させて鉄と合金化
する方法が消耗電極法として知られており(E.モーリス
他著「U.S.Bur.Min.,Rep.Invest」No.7146,1968年)、
また原料となるネオジム化合物として、そのフッ化物の
利用可能性も記述されている(E.モーリス他著「U.S.Bu
r.Min.,Rep.Invest」No.6957,1967年)。
その他、日本特許出願公開昭和61−159593号、同昭和
61−87888号、及び同昭和61−127884号公報等にもNdの
溶融塩電解法が教示されている。
しかしながら、概して言えば、Ndの溶融塩電解法はよ
うやく研究開発の端緒についたにすぎず、これまでの研
究は学術レベルでの検討にとどまって、工業的生産レベ
ルでのNdの電解法についての検討は未だ行なわれていな
いようであり、本発明者はそのような報告を知らない。
そこで、本発明者は、Nd−Fe−B系あるいはNd−Fe−
Co−B系永久磁石の原料として大量の需要が予測される
Ndを工業的に製造し、供給することを目的として、Ndの
工業的規模における溶融塩電解法による製造について鋭
意研究し、本発明を完成したものである。
〔発明が解決しようとする課題〕
従って、本発明の目的は、Nd−Fe−B系あるいはNd−
Fe−Co−B系永久磁石の原料としてのNdの需要に応える
べく、工業的規模で高純度のNd又はNd合金を安価に製造
できるNd又はNd合金の溶融塩電解法を提供することであ
る。
上記目的は、本発明により、溶融塩電解浴で、陽極と
して板状の炭素電極、陰極として板状の金属又は炭素電
極を用い、これらの板状電極を電解浴中に互に対向させ
て配置し、かつ電解浴上を、電解中に炭素電極から発生
して電解浴表面に浮遊するパウダー状炭素を酸化消耗す
るのに十分な濃度の酸素ガスを含む雰囲気で覆い、そし
て電解を行なって陰極上にネオジム又はネオジム合金を
析出させ、該ネオジム又はネオジム合金を陰極下に滴下
させて電解浴底に集収することからなるネオジム又はネ
オジム合金の製造方法によって達成される。
本発明の方法の第1の特徴は電解浴上の雰囲気が酸素
ガスを含有することである。前出のE.モーリス他に教示
された如き従来の消耗電極法によるNdの溶融塩電解法で
は、ネオジムが活性なために大気中の酸素と反応し易い
のでネオジムの反応を防ぎ、かつ使用するC,Mo,W等の電
極の酸化を防止するために、不活性ガス等の保護ガス雰
囲気中で電解を行なう必要があるとの考えから、保護ガ
ス雰囲気中で電解が行われている。従って、電解に当た
っては保護ガスを密閉しておく必要があり、そのために
設備費が高くつき、また原料の供給及び装置の修理等が
難しく、製造コストが高くなるという欠点があった。
また、電極に炭素を用いるので、これが主にフッ素を
主体とした電解反応ガスと反応して炭素電極が消耗する
が、不活性ガス等の保護ガス雰囲気であるため、炭素電
極の一部がパウダー状に変化して電解浴表面を覆い、両
極間に電流短絡路を形成してパウダー状炭素を介する放
電が起こり、電流効率を低下させたり、陽極電流密度を
変化させるという不都合があった。さらに、電解浴表面
のパウダー状炭素の一部が電解浴中に混入して浮遊し、
電導度が変化して電解浴条件を不安定にし、電解操業の
正常な運転維持を困難にしたり、或いは混入した炭素が
製造された合金中に混入してその品位を低下させるとい
う欠点があった。
特に、製造された合金中に炭素が混入することは、製
品の品質上非常に問題である。上記方法では数千ppmの
炭素濃度を有するため、磁石用原料、特に、最近注目さ
れるようになってきたNd磁石用Nd及びNd−Fe合金はその
許容炭素濃度が400ppm以下であることを勘案すると、そ
のままでは磁石用原料として使用し得ないことになる。
〔課題を解決するための手段および作用〕
そこで、本発明では、電解浴に溶融温度が低く、かつ
比重がNd又はNd合金の比重より小さいネオジム塩(例え
ば、フッ化ネオジムにフッ化リチウムを加えた浴)を用
いて、Nd又はNd合金を電解浴の下方に集め、その上部を
電解浴で被うことによって、得られるNd又はNd合金を電
解浴との雰囲気から遮断した。このようにした上で、電
解浴上の雰囲気に酸素ガスを含有させることによって、
炭素電極から発生するパウダー状炭素を雰囲気中の酸素
ガスで積極的に酸化反応させて炭素化合物(CO,CO2)と
して雰囲気中に除去し、かつ析出するNd又はNd合金を雰
囲気中の酸素ガスで消耗することを、防止することがで
きた。パウダー状炭素は電解浴よりも軽いため電解浴表
面に浮遊するので、電解浴上の雰囲気中の酸素ガスで容
易に酸化消耗され、また電解浴中に懸濁したパウダー状
炭素は電解浴よりも軽いため電解浴の対流により電解浴
表面に浮上したときに酸素と接触して容易に酸化消耗さ
れる。
こうして、本発明によれば、特に、電解浴上の雰囲気
中に酸素ガスを含有させることによって、著しく炭素含
有量の低減したNd又はNd合金(特にNd−Fe合金)が得ら
れ、これは永久磁石原料としてそのまま用いることがで
きる高純度のNd又はNd−Fe合金である。
電解浴上の雰囲気中の酸素ガス濃度は炭素電極から発
生して電解浴表面に浮遊するパウダー状炭素を酸化消耗
するのに十分な濃度であればよいが、一般的には、10〜
40体積%、好ましくは15〜30体積%の範囲内である。酸
素濃度が15体積%以下になるとパウダー状炭素が増加し
だし、10体積%未満になると急激に増加し、正常な運転
が困難になると共に、析出金属中の炭素濃度を急激に増
加させることになるからである。また、酸素濃度が30体
積%以上になると、黒鉛電極の浴面より上部に露出して
いる部分の酸化消耗が増加し、40体積%を超えると消耗
が急激になり、トラブルを発生することになる。
このため、本発明での制御範囲内に大気中の酸素濃度
が含まれるため、最も簡単な方法として大気中での電解
も可能となる。更に空気に酸素を富化した雰囲気、不活
性ガスに必要量の酸素を添加した雰囲気が利用できる。
Nd−Fe−B系又はNd−Fe−Co−B系の永久磁石材料と
しては、炭素含有率が400ppm以下であることが必要であ
るが、本発明の方法で得られるNd又はNd−Fe合金はこの
要件はもちろん、200ppm以下、さらには100ppm以下の炭
素含有率とすることも容易である。
本発明の方法の第2の特徴は、電極形成及び電極配置
にある。前記の如く、公知のNd又はNd−Fe合金の溶融塩
電解法では丸棒状の消耗電極が用いられている。しか
し、丸棒状の消耗電極を用いると、電解反応は主として
陰極と陽極間の最短距離で進行するため、電解反応が進
行し、電極が消耗するに従い、下記のような問題が起き
ることになる。
1)電流密度が電極の消耗につれて変化するため、最適
電流密度に維持することが困難である。また電流密度が
変化するため、電解電流、電解電圧が変化し、電解電
流、電解電圧等を最適値に維持することが困難である。
2)電流効率も極間の変化とともに変化するので、最適
電流効率を維持するのが困難である。
3)溶融塩電解に置ける析出金属量はファラデーの法則
により電流量で決まるのであるが、溶融塩電解の場合、
ある陽極電流密度以上に電流を流すと、陽極効果が発生
し、正常な電気分解を維持できなくなる現象があり、従
ってこの陽極効果が発生する臨海電流密度以下で運転し
なければならない。しかし、丸棒状電極では局部的に高
電流密度となり、また電流密度が電極の消耗につれて変
化するので、生産量に直接関係する電流量を低レベルで
運転せざるを得ない。以上のような問題があり、常に最
適値での一定した運転の継続が困難である問題があっ
た。
本発明は、上記の問題を解決するために種々実験を行
った結果、電極の形状を従来の丸棒を基本とした形よ
り、電解反応面積が実質的に変化しない板状を基本とし
た形に変更することで解決したものである。つまり、丸
棒状電極を使用すると電解反応が主に電極間の最短距離
区間で進行するため、最短区間のみ臨界陽極電流密度に
達してしまうと、陽極効果が発生し、また臨界陽極密度
以下で運転しても電極の消耗につれて極間距離は拡大
し、電極表面積は刻々減少していく。しかし、電極の消
耗は丸棒電極表面で一様に進行するのではなく、両極間
の距離が短いほど消耗が早く、従って、単位時間に減少
する電極表面積の割合も電極の太さによって異なり、一
定していないし、極間距離を正確に把握することも困難
である。このように電極消耗に従って電流密度が変化す
ることが第1の問題であり、次の電極の消耗による単位
時間当りの極間距離の変化量が時間により変化すること
が第2の問題である。
このように丸棒電極を用いた場合は電解の進行に伴い
電極の状態を正確に把握することが困難となり、運転条
件が複雑に変化するので、最適電解条件に維持すること
も困難となる。
従って、電極が消耗しても電解反応面積が変化しない
形状にすると第1の問題は解決でき、次に電極の消耗に
より極間距離が変化するのであるが、この極間距離の変
化量が単位時間当り一定である形状にすると、この変化
量に従い一定割合で電極を移動することにより、簡単に
一定の極間距離に維持できる。
以上のような考えに基づいて、前述した問題を解決す
る電極形状としては電解反応面積、つまり陰極陽極の互
に向き合った部分の面積が一定でかつ電解反応面積が大
きい板状を基本とした形状の電極を採用することによ
り、問題を解決した。
溶融塩電解の場合は、前述したように陽極効果の発生
を抑制して電解することが重要であるから、陽極表面の
電解反応面積を一定して陽極電流密度を適正に管理する
ことが極めて重要である。従って、陽極のみを板状電極
としてもそれなりの効果が発揮され、本発明の目的を達
成することができる。この場合の電極配置例を第1A及び
第1B図に示す。
なお、第1A,1B,2A,2B,3A,3B,4,5A及び5B図において、
1は電解槽、2は電解浴、3は陽極、4は陰極、5はNd
又はNd合金の液滴、6は析出したNd又はNd合金、7は電
源を示す。
しかしながら、陰極に丸棒を使用し、陽極に板状電極
を使用すると極間距離が陽極表面各部で一定でないた
め、陽極全面が最適電流密度になっていないと考えられ
る。従って、陰極、陽極の双方共に板状電極を使用する
のが最も効果的である。この場合の電極配置例を第2A及
び2B図に示す。この場合は陽極全面にわたり同じ電流密
度と考えて差支えない。
次に、本発明者は電解炉を大きくしないで、つまり陽
極の実質的反応面積を大きくすることにより多量の電流
を流し、安定して電気分解を続けることができる方法を
種々検討した。この結果、電極の浴中電極表面積を同じ
くして丸棒状電極を配置した第5A及び5B図と板状電極を
用いた第2A及び2B図の実線部分を比較すると、明らかに
第2A及び2B図の方が電極を大きくする余地があることが
判る。そこで第2A及び3B図の破線の大きさまで電極を大
きくすると浴中電極表面積を大幅に増加でき、多量の電
流を流すことができた。従って、本発明を採用すると従
来法の第5Aおよび5B図の配置に比較して約5倍の生産量
の増加を図ることができるのである。
次に、本発明者は、陽極の形状と大きさを改良し多量
の電流を流すことは、第2A及び第2B図の破線の位置まで
拡大することで限度であるので、他の方法により多量の
電流を流すことはできないが、種々検討した結果、板状
の陰陽極を一対にして電流を流すのではなく、電気分解
に行う電流量は陰極電流密度よりも陽極電流密度によっ
て決まるのであるから、陰極の両側に2個の板状陽極を
配置することにより、同じ大きさの電解炉で陽極反応面
積を2倍にし、生産量を約2倍にする方法を発明したも
のである。
この方法は、陰極電流密度の制限が少なく、陽極電流
密度の制限が大きいネオジム及びネオジム−鉄合金を含
むネオジム合金の溶融塩電解において有効であり、同一
面積の陰極陽極を使用した場合、陰極の電流密度は陽極
の2倍となり、電流は整流器より出た電流を1/2ずつ2
個の陽極に分流し、中央の陰極で合流して整流器に入る
ように配線すればよい。配線の一例を示せば第4図のと
おりである。
本発明は、前述のとおり、陰極を中央に配置し、これ
に板状陽極を対向させて配置すればよく、陰極の形状は
陰極電流密度が大きくてよいので特に問題はないが、陰
極の形状も板状にすることにより一段の効果を得ること
ができる。電極配置例は第3A及び3B図のとおりである。
次に、溶融塩電解においては、これまで述べてきたご
とく極間距離を適正値に保つことは極めて重要である。
しかしながら、これまでの公知文献においても最適極間
距離について開示したものは見当らない。そこで、本発
明者は適正な極間距離を見出すべく実験を重ねた結果、
極間距離が電流効率に大きく寄与し、この距離を10〜15
mmに維持することにより、高電流効率を維持できること
を見出したものである。
電流効率に及ぼす極間距離の影響を調べるため、陽極
に黒鉛、陰極に鉄の板状電極を使用し、電解浴としてLi
F−NdF3浴を使用して電解実験を行った結果を第6図に
示す。
第6図の結果より、この極間距離は10〜50mmとするの
が望ましく、20〜40mmとするのがより好ましいことが判
明した。極間距離が10mmよりも近づきすぎると陽極に発
生するF-等の陰イオン(酸化物Nd2O2が分解される場合
にはO2-)と陰極に生成するネオジム金属とが反応し、
ネオジム化合物に戻ってしまい、50mmより遠すぎると炉
内の電解浴の拡散効果等によりネオジム金属の析出が妨
げられるからである。
極間距離の調節は電解の進行につれて電極の一方又は
双方を移動させることにより行うが、丸棒電極では極間
距離が正確に把握しにくく、極間距離の調節も正確にで
きない難点がある。これに対して、陰極陽極共板状電極
を使用する場合は電極表面が平面的に変化するのみなの
で、どちらか一方、或いは双方の電極を一定の速度で移
動させることにより、容易に最適極間距離を保つことが
可能である。
前述の如く、本発明の方法は酸素を含む雰囲気中で溶
融塩電解を行うことを最大の特徴とするものであり、そ
のために用いる電解浴としては、LiF等の析出金属より
も比重の軽い溶融塩にネオジム金属源を加えたものを用
いることが好ましい。LiFを用いると、電解浴の融点を
下げることができ、また製造される析出金属より比重が
軽いので、電解浴より下方に目的とする金属を析出さ
せ、酸素を含む雰囲気から遮断することができる。また
電解浴は遊離したカーボンより比重が思いので遊離カー
ボンを積極的に電解浴上部に押し上げ、酸化消耗させる
ことができる。
溶融塩としては、LiFにネオジム金属源としてNdF3,Nd
2O3を加えたもの、すなわち、LiF−NdF3系、又はこれに
安価なNd2O3を混合させたLiF−NdF3−Nd2O3系を用いる
が、これにBaF2,CaF2等を適宜加えてもよい。また、NdF
3に代えてNdCl3を使用してもよい。なお、LiFはNdF3
の融点を低下させ(例えば、80mol%配合では、1420℃
→720℃)、電気伝導度を向上させるのにも有効であ
る。
LiF−NdF3系の場合、96〜65mol%、より好ましくは95
〜75mol%のLiFと4〜35mol%、より好ましくは5〜25m
ol%のNdF3とからなる組成が好ましい。第7図から第10
図にLiF−NdF3系における組成と電解温度を変えた場合
の臨界陽極電流密度と電流効率の変化を示す。第7図か
ら第10図はネオジム−鉄合金の製造についてのデータで
あるがネオジム金属の製造の場合についてもほぼ同様の
データを得ている。これらの図より上記の範囲内の組成
が臨界陽極電流密度、電流効率ともに優れていることが
わかる。LiF−NdF3−Nd2O3系の場合、上記の好ましい組
成のLiF−NdF3系にNd2O3を数wt%添加混合した組成が好
ましい。
電解浴供給原料としては、上記組成比において消費さ
れる成分をその消費量に応じて供給又は補給すればよい
が、LiF−NdF3系、LiF−NdF3−Nd2O3系ではNdF3が主原
料であり、Nd2O3やLiFは消耗量に応じて時々補給する程
度でよい。Nd2O3を使用する場合は、LiF−Nd2F3浴中の
溶解度以内となるようにNd2O3を3wt%以下とすべきであ
る。
析出金属を覆っている電解浴深さは、効率的に金属を
電解析出させるためには適正な深さに維持することが大
切である。また、本発明では、析出金属よりも軽いLiF
を主体にした電解浴により析出金属と雰囲気中の酸素と
を遮断する効果をもたせるものであるが、電解浴深さが
少ないとこの遮断効果が少なく、また電気分解を行うと
発生する陽極ガスにより浴面が上下運動を起こすので、
この浴面の上下運動をも考慮した充分な電解浴深さを維
持することが必要である。本発明者による実験では、こ
の適正な電解浴深さは最低限5cm必要であり、好ましく
は10cm以上に維持することが望ましいことが判明した。
これよりも電解浴深さが少ないと遮断効果も上がらず、
電解領域も狭くなるので、析出する金属の収率が大幅に
低下することになる。しかしながら、本発明の方法で
は、前記の如く、板状電極を縦に平行配置するので、電
極の実行面積を確保するために、電解浴の深さは必然的
に10mmを超えるので、実際上、本発明では浴の深さが問
題となることはない。
電極は、金属ネオジムを製造する場合は陰極、陽極と
もに炭素電極を使用し、ネオジム合金、例えばネオジム
−鉄合金を製造する場合は陽極に炭素電極を用い、陰極
に鉄を用いる。金属ネオジムを製造する場合は陽極のみ
が消耗電極となり、ネオジム合金を製造する場合には両
極ともに消耗電極とする。またネオジムと他の金属の合
金を製造する場合は、その金属を陰極とすればよい。
炭素電極としては黒鉛電極が一般的であり、耐酸化性
の点でも好ましいが、黒鉛化率の低いものでも使用でき
る。鉄電極としては、電解鉄のように高純度のものが好
ましいが、本発明の方法によれば炭素含有率の比較的低
い軟鋼を用いても高純度のNd−Fe合金が得られる利点が
ある。
Nd−Fe合金を製造する場合を例にとると、次の反応が
陰極で生じてNd−Fe合金が製造される。
Fe+Nd+3+3e-→Nd−Fe合金↓ 一方、陽極では、酸化物電解の場合とフッ化物電解の
場合では異なるが、いずれにしても次の反応により炭素
が消耗する。
酸化物電解の場合は C+2O2-→CO2+4e- C+O2-→CO+2e- フッ化物電解の場合は nC+mF-→CnFm+me- (式中、CnFmはCF4,C2F6,C3F8などである。) 雰囲気ガス中に水分がある場合は上記フッ素が再度水
分と反応し、HFとなることもある。
F2+H2O→2HF+1/2O2 一方、Nd金属の場合を例にとると、陰極では次の反応
が生じてNd金属が製造され、陽極では上記フッ化物電解
のときの陽極での反応と同じ反応が生じて炭素を消耗す
る。
Nd+3+3e-→Nd↓ なお、浴上の雰囲気中に露出した部分の電極の酸化消
耗を抑制するには、黒鉛化率の高い黒鉛電極を用いるほ
か、電極表面に金属質或いはセラミック質の被覆剤をコ
ーティングしたり、スリーブで被覆する等の公知の酸化
防止策が有効である。また、ネオジム−鉄合金製造で
は、陽極の黒鉛は消耗電極であるので、浴上部の酸化消
耗速度よりも浴中の電解反応による消耗速度が大きくな
るような条件を選定することにより、そのまま使用する
こともできる。Nd金属製造の場合は陰極の黒鉛はNdが析
出し、生成金属中の炭素濃度が高くなるので、これを防
止するためにネオジムと合金をつくらない金属(Ta,P
t)で反応面をコーティングして炭素濃度の増大を防止
することができる。
本発明の方法の第3の特徴は、高い陽極電流密度及び
電流効率での電解操作が可能であることである。本発明
の方法によれば、少なくとも0.5A/cm2、好ましくは0.7A
/cm2以上あるいは1.0A/cm2以上の高い陽極電流密度で安
定的に電解操作を行なうことが可能である。また、本発
明の方法によれば、70%以上、より好ましくは80%以
上、さらには85%以上の高い電流効率で電解操作を行な
うことが可能である。このような高い陽極電流密度及び
電流効率で操作することができる理由は、主として、前
記の電極の形状及び配置の改良、酸素含有雰囲気による
浮遊又は懸濁したパウダー状炭素の除去にあるが、その
ほか、浴組成、浴温の最適化なども関係している。な
お、本明細書において、陽極電流密度は陽極の平均電流
を陽極面積で割った値であり、陽極面積は陽極のうち陰
極と対向している部分の面積である。また、電流効率は
生成した金属量を供給される電流量からファラデーの式
で求められる理論電解量で割った値である。
電解浴温度は、Nd金属を製造する場合には、Nd金属の
融点よりも低い温度でも高い温度でも、或いは溶融塩の
融点とNd金属の融点との間の温度でも可能である。例え
ば、電解浴温度がNdの融点より低い温度にして電解する
と、Ndは黒鉛表面で針状に析出するが、溶融塩よりも重
いため、電極下方の溶融塩中に析出する。また、針状に
析出し、陽極まで結晶が伸びた場合、陽極とショート
し、一般的に大電流が流れるので、結晶が溶解して電極
下方に析出することになるため、上記の如くNdの融点よ
りも高温でも、溶融塩の融点とNdの融点との間の温度で
も可能である。
Nd−Fe合金を製造する場合は、Nd−Fe合金の融点はNd
−Feの状態図より、Nd75mol%で640℃と、LiF−NdF3
状態図の共晶点720℃より低いので電解浴温度を電解浴
の融点より高くすることにより、析出したNd−Fe合金が
陰極で析出後液状となり、溶融塩よりも重いため電極下
方の溶融塩中に析出する。また電解温度を制御すること
により、Nd−Feの組成比を制御することも可能である。
従って電解浴温度は、電解浴の融点よりも高ければ可
能であり、720℃より若干高い750℃以上であれば良く、
750℃〜1100℃の範囲が適当である。しかし、電解浴温
度を高くすると、電極の酸化消耗が増加し、浴槽材料の
損傷も促進される。また、第7図〜第10図に示した電解
浴温度と臨界陽極電流密度及び電流効率及び浴組成の関
係より、浴温度が低くなっても高くなりすぎても、電流
効率が悪化するとともに陽極臨界電流密度が大きく変化
するので、上記の関係を総合的に判断した825℃〜1000
℃位の温度で保持することが経済的である。
また、電解浴の温度は、電極間の電流による発熱だけ
によって制御することも可能であり、実際、従来の溶融
塩電解法では多くこの内熱法が採用されているが、本発
明の方法では電解浴の外部から加熱手段で加熱して浴温
を制御する外熱式によることが好ましい。本発明の方法
では電流効率が高くかつ電気伝導度が高いので、浴温を
一定に保つために十分な発熱を電極間電流だけで供給し
ようとすると電極間距離を大きくせざるを得ず、そのた
め最適電解条件での運転ができなくなるおそれがあるか
らである。また、電極の取換え、修理などのために電極
を浴から取り出す際にも、外熱式であれば浴は溶融状態
に保つことができ、運転再開が容易であり、生産調整も
容易になるので好ましい。
また、電解槽は、使用する浴組成及び浴条件で耐食性
のあるものであればよいが、オーステナイト系ステンレ
ス鋼(日本工業標準(JIS)規格のSUS−304,SUS−316,S
US−310Sなど)からなることが、安価でかつ溶融塩に耐
久性が高い点で好ましい。
電解槽の耐食性に関連して、Nd金属あるいはNd−Feな
どのNd合金は鉄その他の金属と合金をつくりやすいの
で、Nd又はNd合金を受ける容器(受器)は合金をつくり
にくいタンタル、タングステン、モリブデン等で作成す
る必要があり、本発明者の研究によるとタンタルが最も
よい。これらタンタル等の金属は高価であるので、受器
のNd又はNd合金と接触する部分だけをタンタル等で内張
りしてもよい。しかし、受器の表面を内張りするだけに
しても、電極の寸法、特に幅が大きくなると必要な受器
の寸法が大きくなり、タンタル等の使用量は多くならざ
るを得ない。そこで、Nd−Fe等のNd合金を製造する場合
には、板状陰極の底辺に傾斜を設け、その先端を突出さ
せることによって、Nd合金の液滴を一旦その突出端に集
め、その1点から生成合金を滴下させるようにすれば、
必要な受器の寸法は小さくできる。陰極の下端の形状
は、液滴が下端で分散滴下したり或いは残存せずに、1
点に液滴が集まるテーパー形状であればよく、単純な直
線状のテーパー或いは僅かに膨らみを有するテーパーと
し、好ましくは10〜30゜のテーパーを付けるとよい。ま
たテーパーの先端、すなわち液滴が落下する点の位置は
電極の中心であっても、端であっても、或いはその中間
の位置であってもよく、要はメタル受け器の位置及びそ
の後の回収方法にとって望ましい位置であれば、それに
合せて適宜変化させることができる。
受器は電解槽底部に集められたNd又はNd合金は、受器
又は電解槽から電解槽の壁を通して設けられたメタル取
出口から直接回収するようにしてもよいが、電解浴上方
から電解浴中又は受器内へパイプを導入して真空で吸い
上げる方が簡単でよい。
好ましい態様について説明すれば以下のとおりであ
る。
第11A図、第11B図は本発明の方法を実施するための電
解装置を示し、第11A図は縦断面模式図、第11B図は平面
模式図である。電解浴12に浸漬された陽極13及び陰極14
はそれぞれ板状電極であり、陰極14を中央にして陽極13
がその両側に対向して配置される。陰極14が鉄製の場
合、Nd−Fe合金の滴下を一箇所にするために、陰極14の
底辺15は例えばテーパー状で中央に突出部を有する形状
にされる。電解浴12の上方は大気16に解放され、浴槽の
内壁面17はオーステナイト系ステンレス製である。浴槽
の周囲は外熱炉18になっており、発熱体19を有する。20
は絶縁板である。そして、電解浴12の温度は熱電対21で
検出され、外熱炉制御装置(図示なし)で発熱体19を制
御して調整される。板状電極13,14は上方から懸吊さ
れ、極間距離調整機22、電極昇降機23を介して電極取付
台24で支持されている。極間距離調整機22及び電極昇降
機23はウォームギア式になっており、その回転によって
電極13,14を左右、上下に移動することができるように
なっている。また、電解槽内にはNd又はNd合金を回収す
るための受器25があり、内側表面はタンタルで内張りさ
れている。なお、この装置では、電解浴上方を大気に解
放したが、電解浴上方を囲繞し、特定の酸素濃度の雰囲
気を利用するようにしてもよい。
このような電解装置で、NdF3を原料として使用し所定
の浴組成、浴温、電流電圧条件等で電解を行ない、Nd又
はNd合金を陰極14から受器25中へ滴下させて回収する。
電解中、電極が消耗して電極間距離が変化するので、極
間距離調整機22を用い、電解条件を考慮して電極を移動
させ、極間距離を一定に保つことによって、電解条件を
一定に維持することができる。
以下、例にもとづいて説明する。
これらの例では、第12図に示したような電解槽で電解
実験を行なった。同図中、鉄製の下部槽32に溶融塩31が
収容され、陽極33及び陰極34が対向して配置されてい
る。極間距離は30mmに保ち、電解浴深さは20cmにした。
電解槽32上方は蓋体35で覆い、気体入口36から雰囲気ガ
スを導入し(必要に応じて気体出口37から排気して)、
所定の雰囲気38を維持した。但し、大気中での実験で
は、蓋体35を取り外して行なった。図中、39は原料投入
口、40は受器本体、41は容器の内張り(タンタル製)で
ある。これらの電解ではNdは針状結晶となり、Nd合金は
陰極と反応して液滴となり、比重差や針状結晶に流れる
電流により受器40内に堆積した(図中、42がNd又はNd合
金の液滴、43がNd又はNd合金である)。
例1(従来例) 比較のために、溶融塩としてLiF80mol%(34.1wt%)
−NdF320mol%(65.9wt%)を用い、かつ電解浴上方を
アルゴンガスで充満し、陽極として丸棒状の黒鉛電極
(黒鉛化率98%)、陰極として丸棒状の電解鉄電極(炭
素含有率0.02%)を用いて電解を行ない、Nd−Fe合金を
製造した。その他の電解条件及びその変化ならびに得ら
れたNd−Fe合金生成物の分析結果を表1に示す。
例2(比較例) 従来例ではないが、比較のために、両極を板状電極と
した以外は例1と全く同じ条件で電解を行なった。結果
を同じく表1に示す。
電極を板状としたことによって、臨界電流値が向上
し、またNd−Fe合金中の炭素含有量もわずかに低減して
いるのが見られる。しかしながら、電解浴の電流電圧の
推移はなお不安定であり、浴表面にはパウダー状炭素が
充満し、Nd−Fe合金中の炭素含有率(1500ppm)はその
まま永久磁石用原料(400ppm以下)として用いるのに適
当ではないことが認められる。
〔実 施 例〕
例3〜7(本発明例) 雰囲気中の酸素ガス濃度の効果を調べるために、例2
と同じ条件で、但し、雰囲気ガスを窒素と酸素との混合
物とし、酸素濃度をいろいろに変えて、電解を行なっ
た。
結果を表1に示す。
表1から明らかなように、雰囲気中の酸素ガス濃度が
増加すると共に浴表面のパウダー状炭素が顕著に減少
し、酸素濃度20%,40%,50%の場合には浴表面からパウ
ダー状炭素が完全に消失した。また、これと対応して、
得られたNd−Fe合金中の炭素含有量も雰囲気中の酸素ガ
ス濃度の増加とともに減少し、従来方法では2000ppmで
あったものが、雰囲気中の酸素濃度が20%,40%,50%の
場合には40ppmと著しく減少し、永久磁石用原料(400pp
m以下)としてそのまま使用できるものが得られてい
る。
また、雰囲気中の酸素ガス濃度が20%の場合を例にと
ると、従来例と比べて、臨界電流値(7倍)、電流効率
(2.7倍)などが著しく増大すると共に、電解中の電流
電圧の推移、臨界電流値などが極めて安定化し、Nd−Fe
合金の回収量は21倍にも増大していることが認められ
る。
雰囲気中の酸素ガス濃度が低いと上記の如き効果は小
さく、一方、酸素ガス濃度が30%を越えて高くなってゆ
くと、炭素電極の消耗が激しくなり、陽極の脱落が早く
なるのが認められる。
例8〜10(本発明例) 雰囲気を酸素ガス濃度20%とし、電極の形状及び配置
を変えて電解実験を行なった。例8では両極を丸棒状と
し、例9では両極を1対の板状とし、例10では中央に板
状陰極を配置し、その両側に板状陽極を並行に配置し
た。
結果を表1に示す。
電解形状を丸棒状(例8)から板状(例9)にするこ
とによって、臨界電流値(4.7倍)と電流効率(1.3倍)
が向上し、その結果Nd−Fe合金回収量も相乗的に増大
(7.2倍)していることが認められる。さらに、板状陽
極を板状陰極の両側に対向して配置することによって、
臨界電流値が倍増するとともに電流効率も板状陽極1枚
の場合と比べてわずかに向上しており、その結果Nd−Fe
合金の回収量が2倍以上も増大しているのが認められ
る。また、電極形状を板状にしたことによってNd−Fe合
金中の炭素含有率も減少しているのが認められる。さら
に、例8〜10から、酸素ガス濃度を適当にすれば電極形
状にかかわらず、電解中の電流電圧の推移が安定化する
ことも認められる。
なお、例10を従来例(例1)と比べると、臨界電流値
14倍、電流効率2.8倍、Nd−Fe合金回収量45倍、Nd−Fe
合金の炭素含有率50分の1にそれぞれ改良されている。
例11及び12(本発明例) 電解浴組成をLiF80mol%(33.4wt%)−NdF320mol%
(6.6wt%)−Nd2O32wt%とした以外、例1及び例10と
同様の条件で電解を行なった。
結果を表2に示す。浴組成はLiF−NdF3系でもLiF−Nd
F3−Nd2O3系でも、本発明の効果に差がないことが示さ
れている。
例13及び14(本発明例) 陰極を黒鉛電極とした以外例1及び例10と同様の条件
で電解を行なった。
結果を表2に示す。Ndを製造する場合にも、Nd−Fe合
金を製造する場合と同様の効果が認められる。
例15及び16(本発明例) 電解浴の上方を大気に解放して、陰極を黒鉛電極(例
15)又は鉄電極(例16)として例10と同様の条件で電解
を行なった。
結果を表2に示す。大気中でも本発明の効果が認めら
れる。
例17(本発明例) 陰極を丸棒状電極(5φ×10H)とした以外、例10と
同様の条件で電解を行なった。
結果を表2に示す。陽極のみを板状電極にした場合に
も一定の効果があることが認められる。
例18及び19(本発明例) 例10と同様の条件で、但し板状電極の横幅が70mmの場
合(例18)と140mmの場合(例19)について、比較実験
を行なった。
結果を表2に示す。表2より、電極の有効面積を大き
くすることによって電流量及びNd−Fe合金の生産量が比
例して増大することが認められる。従って、本発明によ
れば、従来例の丸棒状の電極と比べて、同じ電解槽中に
より大きい有効面積を有する電極を使用できる点でも、
改良が図られることが認められる。
第13図は例18,例19の電気分解時の電流−電圧曲線で
あるが、この図から電流値が同じであれば例19の方が例
18よりも電圧が低いことが認められる。
例20(本発明例) 溶融塩を保持する浴槽材料を各種材料について腐蝕試
験を行った。
第14図は溶融塩での各種材料(普通鋼、JIS規格のSUS
−304,SUS−316,SUS−310S,SUS−430)の腐蝕試験を用
いた装置を示し、第15図はその結果を図にしたものであ
る。
第14図のように溶融塩52に各種材料53を入れて溶融塩
中と溶融塩と大気の界面と溶融塩上部にまたがる部分の
腐蝕量の合計を経日ごとに調査しその結果を第15図に示
した。
実験条件は大気中でSUS−304で作成した浴槽54を用い
て通電せずに浴温880℃で保持したものである。
溶融塩52はLiF80M%−NdF320M%のLiF−NdF3系とLiF8
0M%−NdF320M%にNd2O3を2wt%添加したLiF−NdF3−Nd
2O3系の2種類を用いたが同じ傾向の結果を示した。
第15図において普通鋼とフェライト系ステンレス鋼
(SUS−430)はオーステナイト系ステンレス鋼(SUS−3
04,SUS−316,SUS−310S)に比較して腐蝕量が多く、オ
ーステナイト系ステンレス鋼がすぐれていることが判
る。
またオーステナイト系ステンレス鋼の中ではSUS−310
S(組成:Cr25wt%,Ni20wt%)が最もすぐれていること
が判る。
例21及び22(本発明例) 例18の結果をもとに第16図に示す電解槽をつくりNd−
Feを製造する連続運転実験を行った。
第16図において溶融塩62を入れる電解浴槽63を前述し
た実験結果よりSUS−310S(例21)で作成し、比較のた
め普通鋼(例22)でも作成した。第16図においてメタル
受け容器64はNdは他の金属と合金をつくりやすいために
SUS−310Sでつくったメタル受け容器64の内側をTa65で
内張りした。
鉄製陰極66と黒鉛製陽極67を配置し、通電すると、電
気分解されたNdは陰極66と反応しNd−Fe合金液滴68とな
ってメタル受け容器64の中に収容されてNd−Fe合金69と
なって析出する。なお電気分解は大気中70で行った。
2種類の電解浴、つまり、LiF80mol%−NdF320mol%
のLiF−NdF3系と、LiF80mol%−NdF320mol%に2wt%のN
d2O3を添加したLiF−NdF3−Nd2O3系を、ともに880℃の
電解温度で操作した結果、電解浴組成による大きな変化
はなかった。
この結果を表3に示した。連続使用日数とは、運転日
数が経過するに従い電解槽に使用した材料が薄くなるの
で電解浴が流出する危険がある程度薄くなった日数をも
って表わした。なお、使用した材料の厚さは両方とも5m
/mとした。
表3よりオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS−3
10Sを使用することにより連続使用可能な日数が大幅に
増加したことが判る。
〔発明の効果〕
本発明の方法によれば、得られるネオジム又はネオジ
ム合金、特にネオジム−鉄合金の炭素含有率が低く、か
つ生産性が高いので、Nd−Fe−B系やNd−Fe−Co−B系
の永久磁石用原料の工業的な製造方法として最適であ
る。
【図面の簡単な説明】
第1A及び1B図、第2A及び第2B図、及び第3A及び3B図は本
発明による電極配置を説明する図であり、第1A,2A及び3
A図は平面図、第1B,2B及び3B図は断面図であり、 第4図は本発明の第3A及び3B図に対応する実施態様にお
ける電力配線図であり、 第5A及び第5B図は従来の電極配置を説明するためのそれ
ぞれ平面図及び断面図であり、 第6図は極間距離と電流効率の関係を示す図であり、 第7図はLiF−NdF3浴における電解温度と臨界陽極電流
密度の関係を示す図、 第8図はLiF−NdF3浴における電解温度と電流効率の関
係を示す図であり、 第9図はLiF−NdF3浴における浴組成及び電解温度と臨
界陽極電流密度の関係を示す図であり、 第10図はLiF−NdF3浴における浴組成と電流効率の関係
を示す図であり、 第11A図及び第11B図は本発明の方法を実施する電解装置
の模式縦断面図及び平面図であり、 第12図は例において実験に用いた電解装置の模式断面図
であり、 第13図は実施例18と実施例19における電圧と電流の関係
を示す図であり、 第14図は例において種々の鉄合金の腐蝕性を試験する方
法を示す断面図、 第15図は第14図による腐食試験の結果を示すグラフであ
り、そして 第16図は電解槽の耐久試験に用いた電解装置の模式断面
図である。 1……電解槽、2……電解浴 3……陽極、4……陰極 5……液滴(Nd又はNd合金) 6……Nd又はNd合金、7……電源 12……電解浴、13……陽極 14……陰極、15……陰極の底辺 16……大気、17……電解槽内壁 18……外熱炉、19……発熱体 20……絶縁体、21……熱電対 22……極間距離調整機、23……電極昇降機 24……電極取付台 25……Nd又はNd合金受器 26……受器内張り、27……液滴 31……電解浴、32……電解槽 33……陽極、34……陰極 35……蓋体、36……気体入口 37……気体出口、38……雰囲気 39……原料供給器、40……受器本体 41……受器内張り 42……Nd又はNd合金液滴 43……Nd又はNd合金、52……溶融塩 43……被試験体、54……槽 62……電解浴、63……電解槽 64……受器本体、65……受器内張り 66……陰極、67……陽極 68……Nd合金液滴、69……Nd合金 70……大気

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】溶融塩電解浴で、陽極として板状の炭素電
    極、陰極として板状の金属又は炭素電極を用い、これら
    の板状電極を電解浴中に互いに対向させて配置し、かつ
    電解浴上を電解中に炭素電極から発生して電解浴表面に
    浮遊するパウダー状炭素を酸化消耗するのに十分な濃度
    の酸化ガスを含む雰囲気で覆い、そして電解を行なって
    陰極上にネオジム又はネオジム合金を析出させ、該ネオ
    ジム又はネオジム合金を陰極下に滴下させて電解浴底に
    収集することからなるネオジム又はネオジム合金の製造
    方法。
  2. 【請求項2】溶融塩電解浴で、陽極として板状の炭素電
    極、陰極として板状の金属又は炭素電極を用い、これら
    の板状電極を電解浴中に互いに対向させて配置し、かつ
    電解浴上を電解中に炭素電極から発生して電解浴表面に
    浮遊するパウダー状炭素を酸化消耗するのに十分な濃度
    の酸化ガスを含む雰囲気で覆い、そして0.5A/cm2以上の
    陽極電流密度で電解を行って陽極上にネオジム又はネオ
    ジム合金を析出させ、該ネオジム又はネオジム合金を陰
    極下に滴下させて電解浴底に収集することからなるネオ
    ジム又はネオジム合金の製造方法。
  3. 【請求項3】溶融塩電解浴で、陽極として板状の炭素電
    極、陰極として板状の金属又は炭素電極を用い、これら
    の板状電極を電解浴中に互いに対向させて配置し、電解
    浴の浴温を電解浴外部に設けた加熱手段で750〜1100℃
    の範囲に制御し、かつ電解浴上を電解中に炭素電極から
    発生して電解浴表面に浮遊するパウダー状炭素を酸化消
    耗するのに十分な濃度の酸化ガスを含む雰囲気で覆い、
    そして0.5A/cm2以上の陽極電流密度で電解を行って陰極
    上にネオジム又はネ電解を行なって陰極上にネオジム又
    はネオジム合金を析出させ、該ネオジム又はネオジム合
    金を陰極下に滴下させて電解浴底に収集することからな
    るネオジム又はネオジム合金の製造方法。
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