JP2024024345A - 電極交換装置、溶融塩電解装置及び、チタン系電析物の製造方法 - Google Patents

電極交換装置、溶融塩電解装置及び、チタン系電析物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Ti、Al及びOを含有する粗チタン系材料の電解精製で、電極板の交換を良好に行うことができる電極交換装置及び溶融塩電解装置並びにチタン系電析物の製造方法の提供。【解決手段】電極交換装置1は、電解槽51の内部の溶融塩浴Bmにて、陽極61aの粗チタン系材料を溶解させて陰極61bに精製チタン系材料を析出させる電解精製で、電極61の交換に用いるものであって、粗チタン系材料が、Ti、Al及びOを含有しかつ導電性を有し、電極が、陽極又は陰極のいずれかとして機能する電極板62を交互に配置した部分を含み、電解槽51の開口部51cに気密に接続可能な開口部2aを有し、内部に電極板を格納する電極格納容器2と、電極板を保持し、電極板を、電極格納容器と電解槽との開口部での接続状態にてそれらの内部間で移動させることが可能な電極保持機構3と、電極格納容器の開口部の開放及び気密な閉鎖を行う容器開閉機構4とを備える。【選択図】図1

Description

この発明は、溶融塩浴中で陽極の粗チタン系材料を溶解させて陰極に精製チタン系材料を析出させる電解精製において、電極の交換に用いる電極交換装置、溶融塩電解装置及び、チタン系電析物の製造方法に関するものである。
金属チタンやチタン合金は一般に、大量生産に適したクロール法を基盤とした方法により製造される。しかしながら、この方法は、チタン鉱石に対する塩化、還元が必要である他、スポンジチタン塊の破砕や、塩化マグネシウムの電気分解も必要になって、多数の工程を行うので、金属チタンやチタン合金を効率的かつ低コストに製造できるとは言い難い。
これに対し、溶融塩電解を用いた電解精製によれば、チタンやチタン合金を容易に製造できる可能性がある。
この種の技術として、特許文献1には、「下記の工程を含むことを特徴とする、チタン鉱からのチタン生産物の抽出方法:チタン鉱と還元剤を含む化学ブレンドであって、前記チタン鉱対前記還元剤の比が、0.9~2.4の前記チタン鉱中の酸化チタン成分:前記還元剤中の還元用金属の質量比に相当する前記化学ブレンドを混合する工程;前記化学ブレンドを加熱して抽出反応を開始する工程であって、前記化学ブレンドを、1℃~50℃/分の上昇速度で加熱する工程;前記化学ブレンドを、5分と30分の間の時間、1500~1800℃の反応温度に維持する工程;前記化学ブレンドを、1670℃よりも低い温度に冷却する工程;および、チタン生産物を、残留スラグから分離する工程」で、「チタン生産物を、陽極、陰極および電解質を有する反応容器に入れる工程;前記反応容器を600℃~900℃の温度に加熱して溶融混合物を生成させ、前記陽極と陰極の間に電気的差動を適用してチタンイオンを前記陰極に付着させる工程;および、前記電気的差動を終了し、前記溶融混合物を冷却して精錬チタン生産物を生成させる工程;を含み、前記精錬チタン生産物の表面積が少なくとも0.1m2/gであること」が記載されている。
特開2015-507696号公報
溶融塩電解を用いた電解精製では、電解槽内の溶融塩浴にて、Ti、Al及びOを含有して導電性を有する粗チタン系材料を陽極として使用し、陽極と陰極との間に電圧を印加する。これにより、陽極の粗チタン系材料が溶解するとともに、陰極に、粗チタン系材料に比して純度の高い精製チタン系材料が析出し、チタン系電析物を製造することができる。
ここで、チタン系電析物を工業的に量産するには、電極として、陽極又は陰極のいずれかとしてそれぞれ機能する電極板を交互に並べて配置することが好ましい。電極をそのような板状のものとすれば、陽極に対向して精製チタン系材料が析出する陰極の電析面を、広く確保することができる。
またここで、上記の電解精製では、溶融塩電解を継続するに従い、陽極は、そこに含まれる粗チタン系材料のTi含有量が低下し、相対的にAlやO含有量が増加して電気抵抗が高くなること等の理由から、さらに継続して使用することが困難になる。
加えて、溶融塩電解を継続して行うと、陰極では、そこに析出する精製チタン系材料が次第に成長する。特に、溶融塩浴中の電気抵抗の影響を小さくして生産性を高めることを目的として、陽極及び陰極を極間距離が短くなるように配置したときは、陰極上で成長する精製チタン系材料と陽極との接触による短絡が比較的短期間のうちに発生し、溶融塩電解を継続できなくなるおそれがある。このため、溶融塩電解の継続期間はそれほど長くすることができない。
したがって、チタン系電析物を量産するに当たっては、溶融塩電解をある程度の期間にわたって継続した後に、陽極や陰極として機能させた電極板を交換し、この交換を繰り返してチタン系電析物を製造し続けることが望まれる。なお、交換に際しては、溶融塩浴中から引き上げた高温の電極板及び析出物の酸化、なかでも、そのうちの陰極の電極板上に析出した精製チタン系材料の酸化によるO含有量の増大を抑制するため、これらの大気との接触を極力避けることが必要になる。
上述したようなTi、Al及びOを含有する粗チタン系材料の電解精製で、電極板の交換を可能にする装置は、これまでに提案されていないと考えられる。
この発明の目的は、Ti、Al及びOを含有する粗チタン系材料の電解精製で、電極板の交換を良好に行うことができる電極交換装置、溶融塩電解装置及び、チタン系電析物の製造方法を提供することにある。
この発明の電極交換装置は、電解槽の内部の溶融塩浴にて、陽極の粗チタン系材料を溶解させて陰極に精製チタン系材料を析出させる電解精製で、前記陽極及び前記陰極を含む電極の交換に用いるものであって、前記粗チタン系材料が、Ti、Al及びOを含有するとともに導電性を有し、前記電極が、前記陽極又は前記陰極のいずれかとしてそれぞれ機能する電極板を交互に並べて配置した部分を含み、当該電極交換装置が、前記電解槽の開口部に気密に接続可能な開口部を有し、内部に前記電極板を格納する電極格納容器と、前記電極板を保持し、該電極板を、前記電極格納容器と前記電解槽との開口部での接続状態にて、それらの内部間で移動させることが可能な電極保持機構と、前記電極格納容器の前記開口部の開放及び気密な閉鎖を行う容器開閉機構とを備えるものである。
前記電極保持機構は、前記電極板ごとに設けられ、上下方向に延びて各電極板を吊下げ保持する保持ロッドと、前記保持ロッドの上方側で前記電極格納容器の外部に位置し、前記保持ロッドのそれぞれを取り付けた昇降プレートとを有することが好ましい。
この場合、当該電極交換装置は、電源と前記電極板とを電気的に接続する電気接続機構を備え、前記電気接続機構は、前記電極格納容器の外部に位置して前記電源に接続される導体と、前記保持ロッドと並行して上下方向に延びて、前記電極板を前記導体につなぐ導線とを有することが好ましい。
当該電極交換装置は、前記電極保持機構で保持される前記電極板の上方側を覆って配置され、前記電極保持機構による前記電極板の移動とともに移動し、前記電解槽の内部の前記溶融塩浴に対して前記電極格納容器の内部を遮蔽する遮蔽板を備えることが好ましい。
前記電極格納容器は、一定の容積の格納スペースを有する場合がある。
また、前記電極格納容器は、前記電極保持機構による前記電極格納容器の内部と前記電解槽の内部との間での前記電極板の移動に追従して伸縮するベロー壁部、及び、前記ベロー壁部の伸縮に伴って、容積の変化を生じる格納スペースを有する場合がある。
前記電極格納容器は、前記陽極又は前記陰極のいずれか一方の極性を与える前記電極板及び、他方の極性を与える前記電極板をともに格納する格納スペースを有する場合がある。
また、前記電極格納容器は、前記陽極又は前記陰極のいずれか一方の極性を与える前記電極板と、他方の極性を与える前記電極板とのそれぞれを分けて格納する複数個の分割格納容器を有する場合がある。
前記電極格納容器は、その内部に不活性ガスを供給することができる通気口を有することが好ましい。
この発明の溶融塩電解装置は、上記のいずれかの電極交換装置と、前記電解槽と、前記電極とを備えるものであって、前記電解槽が、該電解槽の開口部の開放及び気密な閉鎖を行う槽開閉機構を有するものである。
前記電解槽は、内部に前記電極を配置した状態で当該電極よりも底部側に位置し、前記溶融塩浴の温度を調節する温度調節機構を有することが好ましい。
この発明のチタン系電析物の製造方法は、上記の溶融塩電解装置を用いて、溶融塩浴にて、前記陽極の前記粗チタン系材料を溶解させ、前記陰極に前記精製チタン系材料を析出させる電解精製を行う電解工程を含むものである。
この発明の電極交換装置によれば、Ti、Al及びOを含有する粗チタン系材料の電解精製で、電極板の交換を良好に行うことができる。
この発明の一の実施形態の電極交換装置を、電解槽及び電極とともに示す、溶融塩浴の深さ方向に沿う断面図である。 図1の電極交換装置で、電極を電解槽の内部から電極格納容器の内部に移動させた状態を示す、図1と同様の断面図である。 図1のIII-III線に沿う断面図である。 他の実施形態の電極交換装置を、電解槽及び電極とともに示す、溶融塩浴の深さ方向に沿う断面図である。 図4の電極交換装置で、電極を電解槽の内部から電極格納容器の内部に移動させた状態を示す、図4と同様の断面図である。 さらに他の実施形態の電極交換装置の電極格納容器及び容器開閉機構を、電解槽及び電極とともに示す平面図である。 図6の電極交換装置を用いて電極を交換する手順の一例を示す平面図である。 図7に続く手順を示す平面図である。 図8に続く手順を示す平面図である。 図9に続く手順を示す平面図である。
以下に図面を参照しながら、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
(電極交換装置)
図1に例示する電極交換装置1は、電解槽51での溶融塩電解による電解精製において、陽極61a及び陰極61bを含む電極61の交換に用いられるものである。
この電解精製は、粗チタン系材料から、その粗チタン系材料よりも純度の高い精製チタン系材料を得ることを目的として行う。粗チタン系材料は、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)及びO(酸素)を含有するとともに導電性を有するものであって、陽極61aの一部または全部として陽極61aの構成に含ませる。図1に示すように、陽極61a及び陰極61bのそれぞれを、その少なくとも一部で溶融塩浴Bmに浸漬させた状態で、陽極61a及び陰極61bの間に電圧を印加すると、陽極61aの粗チタン系材料が溶解して、陰極61bに精製チタン系材料が析出し、不純物であるAlやOの少なくとも一部が除去される。これにより、精製チタン系材料として金属チタン又はチタン合金等のチタン系電析物を製造することができる。電解精製を含むチタン系電析物の製造方法の詳細については後述する。
電解精製に用いる電解槽51は、たとえば、楕円または角筒等の筒状の周壁部51aの下方側を底部51bで密閉した鉄鋼製や煉瓦製等の容器状のものであり、その内部は溶融塩を貯留させて溶融塩浴Bmとする。この電解槽51には、周壁部51aの上方側の開口部51cを開放し又は気密に閉鎖するゲートバルブ等の槽開閉機構52が設けられている。例えば、煉瓦製の電解槽51の内面は、鋼やNi等でライニングを施すことがある。
また、電解精製の間、電解槽51の内部の溶融塩浴Bmに浸漬させて配置する電極61は、陽極61a又は陰極61bのいずれかとしてそれぞれ機能する電極板62を交互に並べて配置した部分を含むものとする。
このように板状をなす電極板62を、それらの主要な表面がそれぞれ互いに対向するように配置することにより、電解槽51の内部の所定の容積当たりに多くの枚数の電極板62を配置でき、さらには広い当該表面で極間距離がある程度短い距離に維持されながら、溶融塩電解を効率的に行うことができる。たとえば図示は省略するが、円筒状の陽極の内側に、複数個の円柱状の陰極を周方向に並べて配置した場合や、一個の円筒状もしくは円柱状の陰極を陽極と同心円状に配置した場合は、次のような問題点があり、非効率である。すなわち、前者では、当該陰極上に析出する精製チタン系材料は、それらの対向する表面上の所定の極間距離の短い箇所の陰極上に集中して析出し、後者は、初期の極間距離が長く、電解浴の電気抵抗が大きくなり消費電力が大きくなり、精製チタン系材料が成長すると、極間距離は短くなるが、表面積が増えるので電流量が増え、消費電力が大きくなり、総じて非効率である。電極板62は、前記主要な表面の正面視で長方形もしくは正方形の矩形状又は、多角形状を有することが好ましい。また、電極板62は、図示の平板状のものに限らず、その少なくとも一部に屈曲部及び/又は湾曲部が存在する板状のものとすることができる他、その少なくとも一部で厚みが変化するものとしてもよい。なお、板状とは、厚みに対して主要な表面の寸法(縦横の長さ等)が長い形状を意味し、これには直方体状や円盤状等が含まれる。また、電流の集中を避けるため、直方体状等の周縁ないし四隅に角部がある形状の電極板62の場合に角部を丸くすること等によって角部を無くす面取り等の加工や、その周縁と中央で厚みを変化させる加工等を施したものも、板状に含まれる。
そして、陽極61a又は陰極61bのいずれかの極性を与える電極板62を、図示のように交互に並べて配置すると、陰極61bの、陽極61aと対向する各表面(電析面)上に精製チタン系材料63が析出する(図2参照)。このため、そのような電極板62の交互配置は、一度の電解精製である程度多量の精製チタン系材料63を得ることができて量産に適している。電極板62は、たとえば10枚~100枚、場合によってはそれ以上の枚数を並べて配置することがある。
各電極板62は、後述するように、所定の電解精製が終了した後、次の電解精製を行う際に、陽極61aと陰極61bの極性を反転させることがある。極性を反転させるとき、図1で陽極61aとしている複数枚の電極板62はともに陰極61bとなり、それらの間に位置して陰極61bとしている複数枚の電極板62はともに陽極61aとなる。溶融塩浴Bmを隔てて一つおきに配置された複数枚の電極板62はそれぞれ、電解精製の都度、陽極61a又は陰極61bのいずれかの極性が与えられる。なお、後述するように複数段の電解工程を行う場合、抽出工程で得られた粗チタン系材料を陽極61aとして使用する一段目の電解工程が終了したときに、陽極61aには粗チタン系材料の残渣が残るので、二段目の電解工程は、当該残渣を含む陽極61aを他の電極板62に交換してから、前記極性を反転させて実施することが好ましい。
上述したような電極61の交換に用いる電極交換装置1は、電解槽51の開口部51cに気密に接続可能な開口部2aを下方側に有し、内部に電極板62を格納する電極格納容器2と、電極板62を保持し、該電極板62を、電極格納容器2と電解槽51との開口部51c、2aでの接続状態にて、それらの内部間で移動させることが可能な電極保持機構3と、電極格納容器2の開口部2aの開放及び気密な閉鎖を行う容器開閉機構4と備えるものである。電極交換装置1の主な部分は、ステンレス鋼等の鉄鋼製とすることが好ましい。
この電極交換装置1を用いる場合、はじめに、電極格納容器2の開口部2aを電解槽51の開口部51cに気密に接続し、容器開閉機構4で電極格納容器2の開口部2aを開放させるとともに、槽開閉機構52で電解槽51の開口部51cを開放させる。その状態で、電極保持機構3で保持させている電極板62を、電極格納容器2の内部から電解槽51の内部に移動させて、図1に示すように、当該電極板62を溶融塩浴Bm中に浸漬させる。
そして、溶融塩電解による電解精製を行う。電解精製では、溶融塩浴Bm中にて、各陽極61aに含まれる粗チタン系材料が溶解し、各陰極61b上に精製チタン系材料63が析出する。
電解精製が終了すると、電極保持機構3で電解槽51の内部の電極板62を、溶融塩浴Bmから引き上げて電極格納容器2の内部に移動させる。その際に、電極保持機構3で引き上げた電極板62から、その周囲に付着し又は内部の隙間に入り込んだ溶融塩が流れ落ちて除去され得る。次に、図2に示すように、容器開閉機構4によって、電極格納容器2の開口部2aを気密に閉鎖する。このとき、電解槽51の内部の溶融塩浴Bmの、大気との接触を避けるため、槽開閉機構52で、電解槽51の開口部51cも気密に閉鎖する。溶融塩浴Bmが塩化マグネシウムを含む場合、溶融塩浴Bm中への大気中の水分の混入が、槽開閉機構52による電解槽51の開口部51cの閉鎖で抑制される。
次いで、図示は省略するが、電極格納容器2の開口部2aと電解槽51の開口部51cとの接続を解除し、電極格納容器2を電極保持機構3とともに、電解槽51の上方側から別の場所に移す。
その後、たとえば後述の通気口7から電極格納容器2の内部への低温の不活性ガスの供給又は、図示しない水冷式等の冷却ジャケットの作動等によって、電極格納容器2の内部の電極板62上の精製チタン系材料63が酸化しにくい程度まで温度が低下した後、電極格納容器2の内部から電極板62を取り出すことができる。さらに、電極板62を水などで洗浄して、電極板62に付着している溶融塩を除去することができる。電極板62は、溶融塩浴Bmに浸漬させていたことによる高温状態から200℃程度にまで温度が低下した後であれば、大気と接触してもそれほど酸化されない。
あるいは、別の場所に移した電極格納容器2を、図示しない減圧分離装置に接続し、電極格納容器2の内部を高温かつ減圧雰囲気とし、電極板62に付着している溶融塩を蒸留によって分離させてもよい。この場合、電極板62は温度が低下した後に、電極格納容器2の内部から取り出すことができ、上記の洗浄を行うことを要しない。
次の電解精製を行う場合、上記と同じ電極格納容器2の内部に新たな電極板62を電極保持機構3で保持させて配置し、又は、内部に既に新たな電極板62が配置された別の電極格納容器2を用意する。別の電極格納容器2を用意しておくほうが、電極板62をより一層迅速に交換することが可能になって生産性が向上する。そして、当該電極格納容器2の開口部2aを電解槽51の開口部51cに気密に接続し、容器開閉機構4及び槽開閉機構52で各開口部2a、51cを開放してから、図1に示すように、電極板62を溶融塩浴Bm中に浸漬させる。その後は、上述したところと同様であり、再度の説明は省略する。
このようにして電極交換装置1を使用すれば、陽極61a又は陰極61bとして交互に並べて配置したそれぞれの電極板62は、大気との接触を抑制しながら交換することができる。特に、陽極61a中の粗チタン系材料は、電解精製の溶融塩電解が継続されるに伴って、そこに含まれるTiが消費されて相対的にO含有量が増大し、長期間の継続使用が困難であるところ、電極交換装置1を使用した交換により、新たな粗チタン系材料を電解精製に供することが容易になる。その結果、陰極61b上で析出する精製チタン系材料63としてのチタン系電析物を工業的に量産することが可能になる。また、陰極61b上での精製チタン系材料63が陽極61aに接触して短絡が発生する前に、電極交換装置1により、当該陰極61bの電極板62を電解槽51の内部から取り出すことができる。
一例として、図示の電極交換装置1では、電極格納容器2は、たとえば、溶融塩浴Bmの深さ方向に直交する断面にて電解槽51の周壁部51aとほぼ同じで対応する断面形状を有する楕円または角筒等の筒状の周壁部2bと、周壁部2bの上方側を密閉する頂部2cと、周壁部2bの下方側の開口部2aとを含んで構成されたものとしている。容器開閉機構4は、たとえばゲートバルブ等であって、電極格納容器2の周壁部2bの下方側に設けられており、開口部2aを開放し又は閉鎖するべく稼働される。
電極保持機構3は、この例では、電極板62ごとに設けられて上下方向に延びて各電極板62を吊下げ保持するステンレス鋼製又は耐熱鋼製等の保持ロッド3a、並びに、保持ロッド3aの上方側で電極格納容器2の外部に位置し、保持ロッド3aのそれぞれがその上端部で取り付けられた昇降プレート3bを有するものである。保持ロッド3aは下端部で電極板62に連結される。かかる保持ロッド3aは、電極板62の安定した保持を実現するため、電極板62の一枚につき、たとえば図3に示すように、電極板62の上面で幅方向(図3の上下方向)の外側の位置にそれぞれ一本ずつの計二本取り付けることがある。電極板62の一枚につき、一本又は三本以上の保持ロッド3aを設けてもよい。また、各保持ロッド3aは、電極格納容器2の頂部2cを貫通して延びている。図1~3に示す実施形態では、電極保持機構3で電極板62を移動させると、頂部2cに対して保持ロッド3aが摺動して変位するので、頂部2cの保持ロッド3aが通る箇所には、摺動部用のOリング等のシール部材を設けることが好ましい。昇降プレート3bは、電極格納容器2の頂部2cの上方側に設けられており、図示しない駆動源により上下方向に昇降変位するように駆動される。
電極交換装置1には、電源と電極板62とを電気的に接続する電気接続機構5を設けることができる。具体的には、電気接続機構5は、電極格納容器2の外部で、たとえば昇降プレート3bの上方側に位置して電源に接続される板状その他の形状の銅製やアルミニウム製等の導体5a、5b(いわゆるブスバー等)、並びに、上述した保持ロッド3aと並行して上下方向に延びて、電極板62を導体5a、5bにつなぐ銅製、ニッケル製、炭素鋼製、鉄製等の導線5c、5dで構成することがある。導体5a、5b及び導線5c、5dはそれぞれ、電源のプラス極に接続されるものとマイナス極に接続されるものの二種類が設けられている。溶融塩浴Bmの深さ方向に直交する方向に並べて配置した電極板62のうち、陽極61a又は陰極61bのいずれか一方(図1~3では陽極61a)の極性が与えられる一つおきの電極板62は、導体5a及び導線5cが接続され、また、他方(図1~3では陰極61b)の極性が与えられる一つおきの電極板62は、導体5b及び導線5dが接続される。
導線5c、5dは、たとえば図3に示すように、電極板62の上面に幅方向で二本の保持ロッド3aの間の位置等で接続され、一枚の電極板62につき二本とすることがある。一枚の電極板62につき、一本又は三本以上の導線5c、5dを接続してもよい。図1及び2に示すところでは、導線5c、5dはそれぞれ、電極格納容器2の内部にて同図の紙面の手前の保持ロッド3aよりも紙面の奥側ないし裏側で上下方向に延びて、電極格納容器2の頂部2cを貫通して導体5a又は5bに接続されている。
電極交換装置1で電極板を交換する際には、電極板62を、導体5a、5b及び導線5c、5dとともに交換することができる。
保持ロッド3aや導線5c、5dが、溶融塩浴Bmの熱によって極めて高温になることを避けるため、電極板62は、その上方側の部分が溶融塩浴Bmの浴面上に露出するように溶融塩浴Bm中に配置することが好ましい。
なお、図1~図10において、保持ロッド3aや導線5c、5dは、電極板62の上面において幅方向中心線からずれた位置に記載されているが、両者は幅方向中心線上に配置されていてもよい。保持ロッド3aや導線5c、5dは、受ける荷重と電流・電圧の均一性確保の観点から、対称位置である電極板62の幅方向中心線上の位置に設けることが好ましい。
その他、電極交換装置1には、電解槽51の内部の溶融塩浴Bmに対して電極格納容器2の内部を遮蔽する一枚以上、好ましくは二枚または三枚等の複数枚の遮蔽板6を設けることができる。遮蔽板6を設けることにより、溶融塩浴Bmの熱が、それよりも上方側の導線5c、5dや、頂部2cと保持ロッド3aとの間のシール部材等に伝わることを抑制できる他、溶融塩浴Bmからの蒸発物の上昇を遮ることができる。遮蔽板6は、電極保持機構3で保持される電極板62の上方側を覆って溶融塩浴Bmの浴面とほぼ平行に配置され、たとえば保持ロッド3aの途中に取り付けることができる。そのようにすると、遮蔽板6は、図1及び2に示すように、電極保持機構3の保持ロッド3aによる電極板62の移動とともに上下方向に移動する。なお、遮蔽板6は、導線5c、5dとの間で絶縁された状態で設けられ得る。
また、電極格納容器2には、たとえば周壁部2b等に通気口7を設けることが好適である。電極格納容器2の外部に配置され得るアルゴンガス等の不活性ガスの供給源を、通気口7に接続することにより、当該通気口7を介して電極格納容器2の内部に、不活性ガスを供給することができる。通気口7から電極格納容器2の内部に不活性ガスを供給し、電極格納容器2の内部を外部に対して若干高い圧力とした場合、電極格納容器2の内部への外部の大気の浸入が抑制される。この場合、図1に示す状態では、溶融塩浴Bmからの蒸発物が電極格納容器2の内部に入り込むことも抑えることができる。また、電解精製の間、温度がある程度低い不活性ガスを通気口7から供給しておけば、溶融塩浴Bmに近接して高温に晒され得る電極格納容器2の内部の温度上昇が抑制され、当該熱による上述の導線5c、5dやシール部材等の溶融ないし劣化を防ぐことができる。
ところで、図1及び2に示す電極交換装置1の電極格納容器2は、電極保持機構3で電極板62を移動させる際に容積が変化せず、一定の容積の格納スペース2dを有するものとしている。
一方、図4及び5に示す電極交換装置1では、電極格納容器12の周壁部12bの一部に、上下方向に伸縮する蛇腹状のベロー壁部12eが設けられている。ここでは、電極保持機構3の保持ロッド3aは、電極格納容器12の頂部12cに固定して取り付けられている。そして、電極保持機構3によって電極板62を、電極格納容器12の内部と電解槽51の内部との間で移動させると、図4及び5に示すように、電極格納容器12の格納スペース12dは、電極保持機構3による電極板62の移動に追従するベロー壁部12eの伸縮に伴って変形し、容積の変化ないし増減を生じる。
図4及び5に示すところでは、電極保持機構3の保持ロッド3a及び昇降プレート3bが、電極格納容器12の頂部12cに対して摺動せずに頂部12cとともに移動する。なお、図1及び2の電極交換装置1では、頂部2cに設けた先述のシール部材の熱劣化を抑制するため、保持ロッド3aの下方側の高温になった部分が十分に冷えるまで待った後に、保持ロッド3aの当該部分をシール部材の内側で摺動させる。これに対し、図4及び5の電極交換装置1では、保持ロッド3aが頂部12cに対して摺動しないので、そのような保持ロッド3aの冷却の待ち時間が不要になる。これにより、図4及び5の電極交換装置1では、電極保持機構3による電極板62の移動が、図1及び2に示すものに比して短時間で行われることがあり、チタン系電析物の生産性を向上できる可能性が高い。なお、図4及び5の電極交換装置1は、電極格納容器12を除いて、図1及び2に示すものとほぼ同様の構成を有する。
上述した電極交換装置1は、電極格納容器2、12が、陽極61a又は陰極61bのいずれか一方の極性を与える電極板62及び、他方の極性を与える電極板62の全てをともに格納する格納スペース2d、12dを有するものである。これに対し、図6に平面図で示す電極交換装置21は、電極格納容器22が、同図に線の長さの異なる破線でそれぞれ示すように、陽極61a又は陰極61bのいずれか一方の極性を与える電極板62を格納する分割格納容器22aと、それとは別に、他方の極性を与える電極板62を格納する分割格納容器22bとを含む複数個の分割格納容器22a、22bを含んで構成されている。
各分割格納容器22a、22bは、溶融塩浴Bmの深さ方向に直交する方向(図6では左右方向)に並べて配置された電極板62のうち、陽極61a又は陰極61bのいずれか一方の極性を与える一つおきの電極板62及び、他方の極性を与える一つおきの電極板62のそれぞれを格納するため、平面視で櫛歯状の形状を有する。それらの分割格納容器22a、22bは、電解槽51の上方側に、図6に示すように、櫛歯状の歯が互いに噛み合った姿勢で配置されている。
各分割格納容器22a、22bの下方側の開口部近傍には、各分割格納容器22a、22bと対応する櫛歯状の平面形状の容器開閉機構24a、24bがそれぞれ配置されている。図6ではいずれも開口部を開放する位置にある各容器開閉機構24a、24bにより、分割格納容器22a、22bのそれぞれの下方側の開口部の開放及び気密な閉鎖が行われる。
なお、図6には示していないが、電解槽51の、容器開閉機構24a、24bの直下の位置には、たとえば、容器開閉機構24a、24bとそれぞれほぼ対応する櫛歯状の平面形状の二個の槽開閉機構が配置されている。二個の槽開閉機構は、それらが互いに噛み合ったときに、電解槽51の開口部が隙間のないように覆蓋されて、気密に閉鎖されるように設けられる。但し、槽開閉機構は、上記の二個の櫛歯状のものに限らず、たとえば、電解槽51の開口部の全体を覆う一個の平面形状が矩形のもの等としてもよい。電極保持機構による電極板62の昇降動作は、平面形状が矩形の一個の槽開閉機構よりも、櫛歯状の二個の槽開閉機構のほうが容易に行うことができる場合がある。
電解精製の終了後、たとえば、一方の分割格納容器22aを用いて、一方の一つおきの電極板62を交換する場合、ここでは図示しない電極保持機構により、当該電極板62を電解槽51の内部から一方の分割格納容器22aの内部に移動させる。次いで、図7に示すように、一方の分割格納容器22aに対応する容器開閉機構24aにより、一方の分割格納容器22aの開口部を気密に閉鎖する。このとき、図示は省略するが、電解槽51の槽開閉機構も稼働させ、電解槽51の開口部も気密に閉鎖する。
その後、一方の分割格納容器22aの開口部と電解槽51の開口部との接続を解除し、一方の分割格納容器22aを、電解槽51の上方側から別の場所に移動させる。そこで、一方の分割格納容器22aの内部に格納されていた電極板62を取り出す。次の電解精製を行う場合は、内部に新たな電極板62が配置された一方の分割格納容器22aを、電解槽51の上方側に配置し、それらの開口部どうしを接続した後に容器開閉機構24a及び槽開閉機構で開口部を開放させ、電極保持機構により新たな電極板62を電解槽51の内部に移動させる。
他方の分割格納容器22bを用いる場合も、一方の分割格納容器22aについて上述したところとほぼ同様にして、他方の一つおきの電極板62の交換を行うことができる。
(溶融塩電解装置)
溶融塩電解装置は、上述したような電極交換装置1、21、電解槽51及び電極61を備えるものである。電解槽51には、これも上述したように、電解槽51の開口部51cの開放及び気密な閉鎖を行う槽開閉機構52が設けられる。
なお、電解槽51の内部には、内部に電極61を配置した状態で電極61よりも底部51b側に位置し、溶融塩浴Bmを加熱し又は冷却する熱交換器等の温度調節機構53を設けてもよい。必要に応じて、たとえば、温度調節機構53の配管での気体もしくは液体の熱媒体の流動又は、温度調節機構53の透明の配管を介した赤外線加熱等により、溶融塩浴Bmの温度を調節することができる。電解槽51の外部に、図示しないヒーターを設けることもできる。
(チタン系電析物の製造方法)
チタン系電析物を製造するには、上述した溶融塩電解装置を用いて電解精製を行う電解工程に先立って予め、粗チタン系材料を準備しておく。粗チタン系材料は、抽出工程により得ることができる。
抽出工程では、酸化チタン(TiO2)等のチタン酸化物を含むチタン鉱石等のチタン原料と、アルミニウム(Al)を含む還元剤と、分離剤とが含まれる混合物を加熱する。このときの反応は複雑だが総じて、たとえば、3TiO2+4Al→3Ti+2Al23の反応が起きると考えられる。ここで、Tiは相当量のAlとOが固溶しており、これが粗チタン系材料に相当する。加熱温度は1500℃~1800℃とする場合がある。混合物は加熱により溶融状態になった後、密度差で粗チタン系材料(液体または固体)とスラグとが分離するので、粗チタン系材料(上記反応式のTi)を抽出することができる。
抽出工程で用いるチタン原料は、チタン酸化物を含むものであればよく、たとえば、必要に応じてリーチング等のアップグレート処理その他の処理が施されたチタン鉱石を挙げることができる。チタン原料として用いるチタン鉱石中のTiO2の含有量は、たとえば50質量%以上、典型的には80質量%以上、特に90質量%以上とすることがある。分離剤は、加熱後においてスラグを生じさせるために使用される。分離剤として具体的には、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム、フッ化カリウム、フッ化マグネシウム、塩化カルシウム、酸化カルシウム及びフッ化ナトリウムから選択される一種以上とすることが好ましい。なかでもフッ化カルシウム(CaF2)は、混合物からの粗チタン系材料の優れた分離性をもたらすとともに、当該分離以外に及ぼす影響が少ないことから特に好適である。還元剤は、実質的にアルミニウム(Al)を単独で含むものとすることができる他、さらにCaやNa等を含むものであってもよい。たとえば、混合物は、TiO2:Al:CaF2がモル比で3:4~7:2~6になるように調整して作製する場合がある。
抽出工程で得られる粗チタン系材料は、Ti、Al及びOが含まれ、たとえば、Ti含有量が50質量%~80質量%、Al含有量が5質量%~30質量%、O含有量が8質量%~30質量%となる場合がある。典型的には、粗チタン系材料のTi含有量は60質量%以上、Al含有量は20質量%以下、O含有量は20質量%以下となることがある。但し、粗チタン系材料中、TiにおいてAlおよびOは、上記の含有量よりも少なく、不可避的不純物に相当し得る程度の含有量で含まれる場合もある。
このような粗チタン系材料は導電性を有するものであり、次に述べる電解工程で陽極61aに含ませて電解精製に供することができる。室温で測定される粗チタン系材料の比抵抗は、たとえば1×10-8Ω・m~1×10-4Ω・m、典型的には1×10-7Ω・m~5×10-5Ω・mである。
電解工程では、先述した溶融塩電解装置を用いて、溶融塩浴Bmにて、陽極61aの粗チタン系材料を溶解させ、陰極61bに精製チタン系材料63を析出させる電解精製を行う。
ここで、溶融塩浴Bmは、主として金属塩化物を含む塩化物浴とすることがあり、たとえば、アルカリ金属塩化物及び/又はアルカリ土類金属塩化物を、たとえば70mol%以上、さらに80mol%以上、さらに90mol%以上含有することがある。このような塩化物浴は、フッ化物浴や臭化物浴、ヨウ化物浴に比して、低腐食性、低環境負荷及び低コストであることから好ましい。なかでも、塩化マグネシウム(MgCl2)を含む塩化物浴を用いたときは、O含有量のみならずAl含有量をも十分に低減された精製チタン系材料63を得ることができる。塩化物浴中のMgCl2含有量は、30mоl%以上、さらに50mol%以上、さらに80mol%以上、さらに85mol%以上、特に90mol%以上であることが好ましい。塩化物浴には、塩化リチウム(LiCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化ルビジウム(RbCl)、塩化セシウム(CsCl)、塩化ベリリウム(BeCl2)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化ストロンチウム(SrCl2)及び、塩化バリウム(BaCl2)から選択される一種以上の金属塩化物を、たとえば70mol%以下、さらに50mol%以下、さらに20mol%以下、さらに10mol%以下、さらに5mol%以下で含むものとしてもよい。
また、溶融塩浴Bm中には、必要に応じて、四塩化チタンよりもTiの価数が低い低級塩化チタン、具体的には二塩化チタン(TiCl2)や三塩化チタン(TiCl3)等を含ませることもできる。溶融塩浴Bm中のチタンイオンの含有量は、好ましくは3mol%以上、より好ましくは5mol%以上、さらに好ましくは6mol%以上、さらには10mol%以上としてもよく、20mоl%以下とすることが好ましい。溶融塩浴Bm中の金属塩化物や金属イオンの含有量は、ICP発光分析や原子吸光分析により測定することができる。チタンイオンの含有量は、溶融塩浴Bm中の金属イオンの合計含有量に対する百分率として求められる。
陽極61aとしては、たとえば上述した抽出工程で得られる粗チタン系材料が含まれるものを用いる。一例として、陽極61aは、外形が板状であって、Ni製、Ni基合金製、ハステロイ製又は、Niで被覆した鋼製等の多数の貫通孔を有する籠状容器を有し、この場合、その籠状容器内に粒状もしくは粉状等の粗チタン系材料を配置することができる。陽極61aが籠状容器を有する場合、導線5c、5dは籠状容器に接続することができる。但し、陽極61aの形態はこれに限らず、たとえば、粗チタン系材料から溶解及び鋳造等により作製した板状のものとしてもよい。陰極61bは、少なくともその表面がTi製の板状のものを使用可能であり、たとえば全体がTiからなるチタン板とすることができる。詳細については後述するが、複数段の電解工程を行う場合、一段目の電解工程で精製チタン系材料63が析出したチタン板等の陰極61bを、二段目の電解工程で陽極61aとする場合がある。この場合、精製チタン系材料63を含むチタン板等の陰極61bの外観が、板状であればよい。なお、陽極61aと陰極61bとの間に複極を配置することも考えられるが、複極は無くてもよい。
なお、たとえば図1に示すところでは、陽極61aは、溶融塩浴Bmの深さ方向に直交する方向で両端に位置する陽極61aを除き、当該断面で長方形状のものを二個重ね合わせて配置している。これは、その陽極61aを挟んで両側に位置する各陰極61bの電析面ごとに、陽極61aの長方形状の籠状容器を一個ずつ設けることを意図したものである。但し、二個の籠状容器を重ねて設けることは必ずしも必要ではなく、陰極61bの間に一個の籠状容器の陽極61aを配置してもよい。
電解工程では、電源から電極61の陽極61a及び陰極61bに通電し、電極61間に電圧を印加する。これにより、陽極61aに含まれる粗チタン系材料からチタンイオンが溶融塩浴Bm中に溶出し、チタンイオンが陰極61b上にチタン原子として析出し精製チタン系材料63となる。陰極61b上に析出した精製チタン系材料63は、チタン系電析物に相当し得る。
電解工程の条件として、たとえば、溶融塩浴Bmの温度は450℃~900℃、陰極61bでの電流密度は0.01A/cm2~3A/cm2とすることがある。電流密度は、式:電流密度(A/cm2)=電流(A)÷電析面積(cm2)により算出することができる。電極61には、電流を連続的に流すことができる他、電流値をゼロにする通電停止期間が設けられて通電期間と通電停止期間とが交互に繰り返されるパルス電流を流してもよい。電極61間の最大電圧は、たとえば0.2V~3.5Vになることがある。電解工程の間、電解槽51の内部は、アルゴン等の不活性雰囲気に維持することが好適である。
電解工程で上述したような電解精製を行っていると、陽極61a中の粗チタン系材料中のTi含有量が次第に減少すること等に起因して、陰極61b上での単位時間当たりの精製チタン系材料63の析出量が少なくなる。また、陽極61aの電気抵抗が高くなる。さらに、これらに伴って陰極61b上に精製チタン系材料63が望ましい形態で析出しなくなることがある。このように陽極61aを継続して使用することが困難になる。そのような場合、先述した電極交換装置1、21を用いて、陽極61a及び/又は陰極61bとしていた電極板62を交換することが望ましい。
電極交換装置1、21より陰極61bの電極板62を電解槽51から取り出したとき、その電極板62上に電着している精製チタン系材料63は、切削工具等を用いて電極板62上から物理的に剥がすこと等により回収することができる。
電解工程は、それにより得られた精製チタン系材料63をさらに精製するため、複数段行うことができる。複数段の電解工程を行う場合は、前段の電解工程で陰極61b上に析出した精製チタン系材料63を、後段の電解工程で粗チタン系材料として使用する。すなわち、後段の電解工程では、前段の電解工程で陰極61b上に析出した精製チタン系材料63を粗チタン系材料とし、当該粗チタン系材料を含む陽極61aを使用する。これにより、後段の電解工程では、その粗チタン系材料から不純物がさらに除去された精製チタン系材料63が、陰極61b上に析出する。複数段の電解工程を行うと、不純物がほぼ含まれない金属チタンとしての電析物を製造することも可能である。
複数段の電解工程は、同じ電解槽51及び溶融塩浴Bmを使用して連続的に行うことも可能である。この場合、前段の電解工程の陽極61aと陰極61bの極性を反転させ、精製チタン系材料63が析出した陰極61bを、後段の電解工程で陽極61aとして引き続き使用することができる。この場合、前段の電解工程で陽極61aを配置していた場所には新たに陰極61bを配置する。
先述した電極交換装置21を用いて複数段の電解工程を行う場合、はじめに、図6に示す状態で一段目の電解工程を行い、陰極61bの電極板62上に精製チタン系材料63を得る。次いで、容器開閉機構24a及び槽開閉機構でそれぞれ分割格納容器22aの開口部及び電解槽51の開口部を閉鎖し、電極保持機構を用いて、図7に示すように、陽極61aとしていた電極板62を分割格納容器22aの内部に格納する。当該電極板62は分割格納容器22aとともに別の場所に移動され、分割格納容器22aから取り出される。
その後、二段目の電解工程を行うため、二段目で陰極61bとする新たな電極板62を、分割格納容器22aの内部から、図8に示すように、電解槽51の内部に配置する。新たな電極板62は、図8では板状のものを二枚重ねて示しているが、籠状容器を含まない一枚のチタン板等とすることもできる。一枚の新たな電極板62の厚みは、特に限定されないが、たとえば一段目で陰極61bとした電極板62とほぼ同じ大きさとすることができる。二段目の電解工程における極間距離は、一段目の電解工程における極間距離に対して長くなり又は短くなるように若干変化してもかまわない。なお、図8~10では、見易さのため、図6及び7に破線で示す分割格納容器22a及び22bの図示を省略している。
二段目の電解工程では、図8に示すように、陽極61a及び陰極61bの極性を反転させ、各電極板62間に電圧を印加する。そうすると、一段目で陰極61bとしていて二段目で陽極61aとする電極板62上に析出していた精製チタン系材料63が、粗チタン系材料となって溶融塩浴Bm中に溶解し、図9に示すように、二段目で陰極61bとする電極板62上にさらに純度の高い精製チタン系材料63が析出する。
二段目の電解工程が終了した後は、容器開閉機構24a及び槽開閉機構でそれぞれ分割格納容器22aの開口部及び電解槽51の開口部を閉鎖し、電極保持機構により、図10に示すように、二段目で陰極61bとしていた電極板62を分割格納容器22aの内部に格納して回収することができる。
あるいは、二段目の電解工程が終了した後に、二段目で陰極61bとしていたチタン板等の電極板62を回収せずにそのまま、極性を反転させて三段目の電解工程を行ってもよい。この場合、極性の反転により、二段目で陰極61b又は陽極61aとしていたチタン板等の電極板62がそれぞれ、三段目では陽極61a又は陰極61bとなり、当該陽極61a上の精製チタン系材料63を粗チタン系材料として、当該陰極61b上にさらに精製された精製チタン系材料63が析出する。三段目の電解工程の後は、分割格納容器22b及び容器開閉機構24bを用いて、三段目で陰極61bとしていた電極板62上に得られた精製チタン系材料63を回収することができる他、当該精製チタン系材料63を回収せずに、さらに、極性を反転させて四段目以降の電解工程を行ってもよい。
上述したように、精製チタン系材料63を溶融塩浴Bmから取り出さずに、複数段の電解工程を行うことにより、酸素含有量が極度に少ない高純度チタン系電析物を製造することができる。
(チタン系電析物)
一段又は複数段の電解工程により得られる精製チタン系材料63としてのチタン系電析物は、Ti以外の不純物の合計の含有量が、例えば40000質量ppm以下、好ましくは5000質量ppm以下、より好ましくは2000質量ppm以下、さらに好ましくは1000質量ppm以下、特に好ましくは200質量ppm以下である。
チタン系電析物は金属チタンである場合、一段目又は二段目の電解工程で得られるものは、一例として、Al含有量が5質量ppm~20000質量ppm、O含有量が50質量ppm~20000質量ppmであり、残部がTi及び不可避的不純物からなる場合がある。複数段の電解工程で得られるものは、Al含有量が5質量ppm~1000質量ppm、O含有量が50質量ppm~1000質量ppmであり、残部がTi及び不可避的不純物からなる場合がある。純度が4N5以上、さらに5N以上、さらに5N5以上の金属チタン製のチタン系電析物が製造できることもある。
チタン系電析物中の不可避的不純物は、鉱石由来のものや、塩化物浴由来のもの、還元剤由来のもの、分離剤由来のもの、電解槽を構成する容器由来のもの、大気と接触した際に生じるもの等がある。具体的には、チタン系電析物は不可避的不純物として、N(窒素)含有量が0.03質量%以下であり、C(炭素)含有量が0.01質量%以下であり、Fe含有量が0.050質量%以下であり、Mg含有量が0.02質量%以下であり、Ni含有量が0.03質量%以下であり、Cr含有量が0.03質量%以下であり、Si含有量が0.001質量%以下であり、Mn含有量が0.05質量%以下であり、Sn含有量が0.01質量%以下である場合がある。
1、21 電極交換装置
2、12、22 電極格納容器
22a 分割格納容器
22b 分割格納容器
2a、12a 開口部
2b、12b 周壁部
2c、12c 頂部
2d、12d 格納スペース
12e ベロー壁部
3 電極保持機構
3a 保持ロッド
3b 昇降プレート
4、24a、24b 容器開閉機構
5 電気接続機構
5a 導体
5b 導体
5c 導線
5d 導線
6 遮蔽板
7 通気口
51 電解槽
51a 周壁部
51b 底部
51c 開口部
52 槽開閉機構
53 温度調節機構
61 電極
61a 陽極
61b 陰極
62 電極板
63 精製チタン系材料
Bm 溶融塩浴

Claims (12)

  1. 電解槽の内部の溶融塩浴にて、陽極の粗チタン系材料を溶解させて陰極に精製チタン系材料を析出させる電解精製で、前記陽極及び前記陰極を含む電極の交換に用いる電極交換装置であって、
    前記粗チタン系材料が、Ti、Al及びOを含有するとともに導電性を有し、前記電極が、前記陽極又は前記陰極のいずれかとしてそれぞれ機能する電極板を交互に並べて配置した部分を含み、
    当該電極交換装置が、前記電解槽の開口部に気密に接続可能な開口部を有し、内部に前記電極板を格納する電極格納容器と、前記電極板を保持し、該電極板を、前記電極格納容器と前記電解槽との開口部での接続状態にて、それらの内部間で移動させることが可能な電極保持機構と、前記電極格納容器の前記開口部の開放及び気密な閉鎖を行う容器開閉機構とを備える電極交換装置。
  2. 前記電極保持機構が、前記電極板ごとに設けられ、上下方向に延びて各電極板を吊下げ保持する保持ロッドと、前記保持ロッドの上方側で前記電極格納容器の外部に位置し、前記保持ロッドのそれぞれを取り付けた昇降プレートとを有する請求項1に記載の電極交換装置。
  3. 当該電極交換装置が、電源と前記電極板とを電気的に接続する電気接続機構を備え、
    前記電気接続機構が、前記電極格納容器の外部に位置して前記電源に接続される導体と、前記保持ロッドと並行して上下方向に延びて、前記電極板を前記導体につなぐ導線とを有する請求項2に記載の電極交換装置。
  4. 当該電極交換装置が、前記電極保持機構で保持される前記電極板の上方側を覆って配置され、前記電極保持機構による前記電極板の移動とともに移動し、前記電解槽の内部の前記溶融塩浴に対して前記電極格納容器の内部を遮蔽する遮蔽板を備える請求項1に記載の電極交換装置。
  5. 前記電極格納容器が、一定の容積の格納スペースを有する請求項1に記載の電極交換装置。
  6. 前記電極格納容器が、前記電極保持機構による前記電極格納容器の内部と前記電解槽の内部との間での前記電極板の移動に追従して伸縮するベロー壁部、及び、前記ベロー壁部の伸縮に伴って容積の変化を生じる格納スペースを有する請求項1に記載の電極交換装置。
  7. 前記電極格納容器が、前記陽極又は前記陰極のいずれか一方の極性を与える前記電極板及び、他方の極性を与える前記電極板をともに格納する格納スペースを有する請求項1に記載の電極交換装置。
  8. 前記電極格納容器が、前記陽極又は前記陰極のいずれか一方の極性を与える前記電極板と、他方の極性を与える前記電極板とのそれぞれを分けて格納する複数個の分割格納容器を有する請求項1に記載の電極交換装置。
  9. 前記電極格納容器が、その内部に不活性ガスを供給することができる通気口を有する請求項1に記載の電極交換装置。
  10. 請求項1~9のいずれか一項に記載の電極交換装置と、前記電解槽と、前記電極とを備える溶融塩電解装置であって、
    前記電解槽が、該電解槽の開口部の開放及び気密な閉鎖を行う槽開閉機構を有する溶融塩電解装置。
  11. 前記電解槽が、内部に前記電極を配置した状態で当該電極よりも底部側に位置し、前記溶融塩浴の温度を調節する温度調節機構を有する請求項10に記載の溶融塩電解装置。
  12. チタン系電析物を製造する方法であって、
    請求項10に記載の溶融塩電解装置を用いて、溶融塩浴にて、前記陽極の前記粗チタン系材料を溶解させ、前記陰極に前記精製チタン系材料を析出させる電解精製を行う電解工程を含む、チタン系電析物の製造方法。
JP2022127118A 2022-08-09 2022-08-09 電極交換装置、溶融塩電解装置及び、チタン系電析物の製造方法 Pending JP2024024345A (ja)

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