JP5545732B2 - 樹脂組成物、及びそれを成形してなるフィルム - Google Patents
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Description
本発明に用いるポリトリメチレンテレフタレート(A)は、多価カルボン酸成分としてテレフタル酸、または、ジメチルテレフタル酸、多価アルコール成分として1,3−プロパンジオールを用いてなる重縮合物である。
本発明に用いるポリエステル系樹脂(B)は、ガラス転移温度が90℃以上、140℃以下であり、示差走査熱量測定において10℃/分の昇温速度で−40℃から250℃まで昇温した際に結晶融解ピークが存在しないことが重要である。
ガラス転移温度が90℃以上であれば、PTTのガラス転移温度を向上させる効果が高く、より低添加量で耐熱性を向上する効果が発現できる。また、ガラス転移温度が140℃以下であれば、PTTと同様の混練条件で溶融混練が可能であり、成形加工時におけるPTTの熱劣化を生じることがない。
さらに、示差走査熱量測定において10℃/分の昇温速度で−40℃から250℃まで昇温した際に結晶融解ピークが存在しないことで、無延伸シートの製膜時、及び、延伸時における球晶の成長を十分に抑制することができ、優れた延伸性を付与することができる。なお、示差走査熱量測定において10℃/分の昇温速度で−40℃から250℃まで昇温した際に結晶融解ピークが存在しないことを、以下においては「非晶性」とも言うことにする。
本発明における混合物(X)は、前記ポリトリメチレンテレフタレート(A)と、前記ポリエステル系樹脂(B)からなり、ガラス転移温度が単一となる特徴を有する混合物である。
また、前記動的粘弾性測定のほか、示差走査熱量測定などによってもガラス転移温度が単一であることを確認することができる。具体的には、JIS K7121に準じて、加熱速度10℃/分で示差走査熱量計(DSC)を用いてガラス転移温度を測定した際に、ガラス転移温度を示す変曲点が1つだけ現れるものであるということもできる。
本発明の樹脂組成物は、フィルム、プレート、または、射出成形品等に成形することができる。具体的には、前記ポリトリメチレンテレフタレート(A)、前記ポリエステル系樹脂(B)、及び、必要に応じてその他の樹脂や添加剤等の原料を直接混合し、押出機或いは射出成型機に投入して成形するか、または、前記原料を二軸押出機を用いて溶融混合し、ストランド形状に押出してペレットを作成した後、このペレットを押出機或いは射出成型機に投入して成形する方法を挙げることができる。いずれの方法においても、ポリエステル系樹脂の加水分解による分子量の低下を考慮する必要があり、均一に混合させるためには後者を選択するのが好ましい。そこで、以下後者の製造方法について説明する。
なお、本明細書中に表示される原料及び試験片についての種々の測定値及び評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向をMD、その直交方向をTDと呼ぶ。
粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティー計測制御株式会社製)を用い、歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて動的粘弾性の温度分散測定(JIS K7198A法の動的粘弾性測定)を行った。そして損失正接(tanδ)の主分散のピークを示す温度をガラス転移温度とした。
JIS K7105に基づいて、全光線透過率および拡散透過率を測定し、ヘーズを以下の式で算出した。厚み0.05mmでのヘーズが2%以下であるものを合格とした。
[ヘーズ]=[拡散透過率]/[全光線透過率]×100
ハイドロショット高速衝撃試験器(島津製作所社製「HTM−1型」)を用いて、縦方向100mm×横方向100mmの大きさに切り出したシートを試料とし、クランプで固定し、温度23℃でシート中央に直径が1/2インチの撃芯を落下速度3m/秒で落として衝撃を与え、試料が破壊するときの破壊エネルギー(kgf・mm)を測定した。破壊エネルギーが100kgf・mm以上のものを合格とした。
長さ100mm×幅100mm(厚みはそれぞれの試験片により異なる)の評価用サンプルをベーキング試験装置(大栄科学精器製作所製DKS−5S)内に静置し、120℃で30分間加熱した。加熱後のサンプルに関して、MD、TDの収縮率を測定した。収縮率は3%以下のものを合格とした。
所定の温度(ポリトリメチレンテレフタレートとその他の樹脂の混合比により延伸温度は異なる)における逐次二軸延伸時の延伸倍率が、面積倍率で5倍以上延伸可能であるものを○とし、5倍未満のものを×とした。
ポリトリメチレンテレフタレート(A)としては、以下の物性を有するものを用いた。
(A)−1:
ポリトリメチレンテレフタレート、ガラス転移温度=52℃、固有粘度=1.02dl/g、三井デュポン社製 商品名「バイオマックスPTT1002」
ポリエステル系樹脂(B)としては、以下の物性を有するものを用いた。
(B)−1:
多価カルボン酸:テレフタル酸=100モル%、多価アルコール:エチレングリコール/ジエチレングリコール/スピログリコール=75/5/20モル%、ガラス転移温度=102℃、固有粘度=0.75dl/g、三菱ガス化学社製 商品名「アルテスター20」
(B)−2:
多価カルボン酸:テレフタル酸=100モル%、多価アルコール:エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール/イソソルビド=37/51/12モル%、ガラス転移温度=108℃、固有粘度=0.72dl/g
(B)−3:
多価カルボン酸:テレフタル酸=100モル%、多価アルコール:エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール/イソソルビド=28/52/20モル%、ガラス転移温度=120℃、固有粘度=0.63dl/g
ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(A)として(A)−1、ポリエステル系樹脂(B)として(B)−1を用い、(A)−1、及び、(B)−1を混合質量比85:15の割合でドライブレンドした後、φ40mm同方向二軸押出機にて260℃で混練した後、ストランドダイから押出し、水温約20℃の冷却水槽を通した後、ペレタイザーを用いてペレット状にカットした。次いで、150℃、4時間熱風オーブンにて乾燥したペレットを、φ40mm単軸押出機にて260℃で混練した後、口金から押出し、次いで約60℃のキャスティングロールにて急冷し、厚さ312μmの非晶シートを作製した。次いで、三菱重工株式会社製逐次2軸テンターを用いて、70℃でMDに延伸倍率で2.5倍に延伸を行い、続いて70℃でTDに延伸倍率で2.5倍に延伸を行い、さらにその後、180℃で15秒熱処理を行い、厚さ50μm、面積延伸倍率6.25倍の二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムに関して、透明性、耐熱性、耐衝撃性の評価を行った結果を表1に示す。
(A)−1、及び、(B)−1を混合質量比70:30の割合でドライブレンドした後、キャスト温度を70℃とした以外は実施例1と同様の方法で厚さ450μmの非晶シートを作製した後、延伸温度80℃で、MDに3倍、TDに3倍の倍率で延伸を行った以外は実施例1と同様の方法で厚さ50μm、面積延伸倍率9倍の二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムに関して、透明性、耐熱性、耐衝撃性の評価を行った結果を表1に示す。
(A)−1、及び、(B)−1を混合質量比50:50の割合でドライブレンドした後、キャスト温度を80℃とした以外は実施例1と同様の方法で厚さ450μmの非晶シートを作製した後、延伸温度90℃で、MDに3倍、TDに3倍の倍率で延伸を行った以外は実施例1と同様の方法で厚さ50μm、面積延伸倍率9倍の二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムに関して、透明性、耐熱性、耐衝撃性の評価を行った結果を表1に示す。
(A)−1、及び、(B)−2を混合質量比70:30の割合でドライブレンドした後、キャスト温度を70℃とした以外は実施例1と同様の方法で厚さ450μmの非晶シートを作製した後、延伸温度80℃で、MDに3倍、TDに3倍の倍率で延伸を行った以外は実施例1と同様の方法で厚さ50μm、面積延伸倍率9倍の二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムに関して、透明性、耐熱性、耐衝撃性の評価を行った結果を表1に示す。
(A)−1、及び、(B)−1を混合質量比70:30の割合でドライブレンドした後、キャスト温度を70℃とした以外は実施例1と同様の方法で厚さ450μmの非晶シートを作製した後、延伸温度80℃で、MDに3倍、TDに3倍の倍率で延伸を行った以外は実施例1と同様の方法で厚さ50μm、面積延伸倍率9倍の二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムに関して、透明性、耐熱性、耐衝撃性の評価を行った結果を表1に示す。
(A)−1を単独で用い、キャスト温度を50℃とした以外は実施例1と同様の方法で厚さ450μmの非晶シートを作製したが、延伸温度、倍率によらず逐次二軸延伸を行うことができなかった。
ポリエステル系樹脂(B)の代わりに、三菱ガス化学社製ALTESTER45(多価カルボン酸:テレフタル酸=100モル%、多価アルコール:エチレングリコール/ジエチレングリコール/スピログリコール=52/5/43モル%、ガラス転移温度=118℃、固有粘度=0.72dl/g)を用い、(A)−1、及び、ALTESTER45を混合質量比70:30の割合でドライブレンドした後、キャスト温度を60℃とした以外は実施例1と同様の方法で厚さ450μmの非晶シートを作製したが、延伸温度によらず逐次二軸延伸を行うことができなかった。また、得られた非晶シートは不透明であった。
ポリエステル樹脂(B)の代わりに、イーストマンケミカル社製トライタンFX−200(多価カルボン酸:テレフタル酸=100モル%、多価アルコール:1,4−シクロヘキサンジメタノール/2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール=66/34モル%、ガラス転移温度=134℃、固有粘度=0.76dl/g)を用い、(A)−1、及び、トライタンFX−200を混合質量比70:30の割合でドライブレンドした後、キャスト温度を60℃とした以外は実施例1と同様の方法で厚さ450μmの非晶シートを作製したが、延伸温度によらず逐次二軸延伸を行うことができなかった。また、得られたシートは不透明であった。
Claims (2)
- ポリトリメチレンテレフタレート(A)と、ポリエステル系樹脂(B)からなる混合物(X)を主成分とする樹脂組成物であって、前記ポリエステル系樹脂(B)はテレフタル酸、または、ジメチルテレフタル酸を多価カルボン酸成分の主体とし、5モル%以上、40モル%以下のスピログリコール、又は/及び、イソソルビドと、25モル%以上、60モル%以下のエチレングリコールを多価アルコール成分とする共重合ポリエステル系樹脂であり、ガラス転移温度が90℃以上、140℃以下であり、示差走査熱量測定において10℃/分の昇温速度で−40℃から250℃まで昇温した際に結晶融解ピークが存在せず、前記混合物(X)100質量%中に占める前記ポリエステル系樹脂(B)の割合が10質量%以上、60質量%以下であり、前記混合物(X)のガラス転移温度が単一であり、前記ポリトリメチレンテレフタレート(A)のガラス転移温度以上、前記ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度以下の範囲にあることを特徴とする樹脂組成物。
- 請求項1に記載の樹脂組成物からなるシートを、5倍以上、20倍以下の面積倍率で延伸したことを特徴とする延伸フィルム。
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