JP5596457B2 - 難燃性ポリエステル系樹脂組成物及びこれを用いてなる成形品 - Google Patents
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Description
しかし、ハロゲン配合樹脂は、燃焼時にダイオキシン類のような有害ガスを発生する場合があり、廃棄物焼却処理やサーマルリサイクルの際の安全性に課題があった。
ハロゲン配合樹脂の代替として、リン系化合物を配合したリン配合樹脂を挙げることができるが、安全性や環境調和性の点で十分に満足できないことに加え、成形性や耐熱性等の実用面でも問題が指摘されていた。
また、リン系化合物をポリエステル系樹脂に共重合した難燃性ポリエステルが提案されている(特許文献3参照)。
他方、リン系化合物をポリエステル系樹脂に共重合する場合には、ガラス転移温度の低下や成形体表面へのブリードの問題は生じないものの、ポリエステル系樹脂の結晶性が著しく低下するため、熱変形温度等の実用的な耐熱性の低下を生じるといった課題があった。
本発明の実施形態の一例に係る難燃性ポリエステル系樹脂組成物(以下「本樹脂組成物」と称する)は、リン化合物が共重合されてなるポリエステル系樹脂(A)と、当該ポリエステル系樹脂(A)と完全相溶するポリエステル系樹脂(B)との混合物を含有する樹脂組成物である。
リン化合物が共重合されてなるポリエステル系樹脂(A)は、ポリエステル系樹脂の主鎖又は側鎖にリン化合物が共重合されてなる樹脂である。
ポリエステル系樹脂(B)としては、ポリエステル系樹脂(A)と完全相溶する樹脂であることが重要である。
リン化合物が共重合されてなるポリエステル系樹脂(A)は、リンがポリマー全体に均一に共重合されるため、ポリマー全体の結晶性が低下して耐熱性が劣ることになってしまう。これに対し、ポリエステル系樹脂(A)にポリエステル系樹脂(B)をブレンドすることで、結晶性の低い部分と高い部分とがポリマー中に存在することになり、ポリエステル系樹脂(A)単独の場合に比べて耐熱性を顕著に高くすることができる。
また、ガラス転移温度(或いは損失正接の極大値)が単一であるということは、ポリエステル系樹脂(A)及び(B)が分子レベルで相溶し、海島構造をとらないことを意味している。
例えばポリエステル系樹脂(A)のベース樹脂がポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートであれば、ポリエステル系樹脂(B)はポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートであるのが好ましい。但し、同じ樹脂に限定するものではない。
前記ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度が50℃以上、かつ、結晶融解熱量ΔHmが40J/g以上であれば、リン化合物が共重合されてなるポリエステル系樹脂(A)を混合した際にも、ポリエステル系樹脂(B)の結晶性が維持され、十分な耐熱性、機械特性を有する樹脂組成物を提供することができる。
なお、ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度の上限値、及び結晶融解熱量ΔHmの上限値は特に限定されるものではないが、ガラス転移温度が140℃以下であり、結晶融解熱量ΔHmが90J/g以下であれば、十分な二次加工性を備えた樹脂組成物を得ることができる。
ポリエステル系樹脂(B)と、ポリエステル系樹脂(A)との混合物中に占める(B)の割合は、40〜80質量%であることが重要であり、より好ましくは45質量%以上、或いは75質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以上、或いは80質量%以下、言い換えれば、ポリエステル系樹脂(B)が50質量%以上を占める主成分である場合が特に好ましい。
このように、ポリエステル系樹脂(B)の割合が高くなれば、耐熱性を高めることができるため、耐熱性が要求される用途においては、ポリエステル系樹脂(B)の混合割合が50質量%以上であるのが好ましい。
本樹脂組成物は、フィルム、プレート、または、射出成形品等に成形することができる。この中でも特に少なくとも1方向に延伸してなる延伸フィルムに成形して用いることが耐熱性や各種機械特性の点から好ましい。
具体的な成形方法としては、リン化合物を共重合してなるポリエステル系樹脂(A)及び、ポリエステル系樹脂(B)、必要に応じてその他の樹脂や添加剤等の原料を直接混合し、押出機或いは射出成型機に投入して成形するか、または、前記原料を二軸押出機を用いて溶融混合し、ストランド形状に押出してペレットを作成した後、このペレットを押出機或いは射出成型機に投入して成形する方法を挙げることができる。いずれの方法においても、ポリエステル系樹脂の加水分解による分子量の低下を考慮する必要があり、均一に混合させるためには後者を選択するのが好ましい。そこで、以下後者の製造方法について説明する。
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(JIS K6900)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
なお、本明細書中に表示される原料及び試験片についての種々の測定値及び評価は次の方法で行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向をMD、その直交方向をTDと呼ぶ。
試験サンプル1gをフェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量%)の割合で混合した溶媒100ml中に溶解させ、ウベローデ型粘度計にて30℃で測定を行った。
島津製作所社製XRF−1500を用いて、蛍光X線法によってリン原子含有量の測定を行った。
試験サンプルを5mmφの10mg程度の鱗片状に削り出し、パーキンエルマー製DSC−7を用い、JIS−K7121に基づいて、試験片を30℃から280℃まで10℃/分の速度にて昇温測定を行った。得られたサーモグラムより結晶融解熱量(ΔHm)を算出した。
長さ200mm×幅50mm(厚みはそれぞれの試験片により異なる)の評価用サンプルを用いて、Underwriters Laboratories社の安全標準UL94薄手材料垂直燃焼試験の手順に基づき、試験回数5回にて燃焼試験を実施し、燃焼の様子(特に燃焼中における滴下物の有無)を観察すると共に燃焼時間(試験回数5回の合計燃焼時間)を測定した。
UL94垂直燃焼試験UL94VTMの判定基準に基づき、VTM−0、1、2の規格を満たすか否か判例し、VTM−2を満たさないものは規格外と評価し、VTM−0を満たすものを合格とした。
JIS K7105に基づいて、全光線透過率および拡散透過率を測定し、ヘーズを以下の式で算出した。厚み0.1mmでのヘーズが5%以下であるものを合格とした。
[ヘーズ]=[拡散透過率]/[全光線透過率]×100
長さ5mm×幅5mm×厚み0.1mmの評価用サンプルを用いて、JIS K7196に基づき、TMAによる軟化温度の測定を行った。雰囲気温度23℃、相対湿度50%、圧子への圧力0.5N、昇温速度5℃/分にてTMA曲線を測定し、圧子が侵入を始めるよりも低温側に認められる直線部分を高温側に延長し、侵入速度が最大となる部分の接線の低温側への延長との交点を針侵入温度とし、この値から軟化温度を算出した。TMA軟化温度は100℃以上を合格とした。
(A)−1:バイロンGH230B(リン化合物共重合ポリエチレンテレフタレート、リン含有率30,000ppm、ジオール成分中に占めるリン化合物を含有するモノマー量37モル%、固有粘度=0.71dl/g、Tg:74℃、ΔHm:4.3J/g、二価金属は非含有)
(A)−2:バイロンGH215B(リン化合物共重合ポリエチレンテレフタレート、リン含有率15,000ppm、ジオール成分中に占めるリン化合物を含有するモノマー量19モル%、固有粘度=0.68dl/g、Tg:74℃、ΔHm:13.1J/g、二価金属は非含有)
(B)−1:三菱化学社製ノバペックスBK2180(ポリエチレンテレフタレート、固有粘度=0.83dl/g、Tg:76℃、ΔHm:46J/g)
(A)−1及び(B)−1を混合質量比20:80の割合で混合し、φ40mm同方向二軸押出機にて、Tダイ口金より270℃で押出した後、約75℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。
次に、MDに90℃の温度で3.0倍のロール延伸、TDに90℃の温度で3.0倍のテンター延伸を行い、さらに、テンターの熱処理ゾーンにて180℃の温度で熱処理して厚み0.05mmの延伸フィルム(サンプル)を作製した。
得られた延伸フィルムに関して、結晶融解熱量、難燃性、透明性、耐熱性の評価を行った結果を表1に示す。
(A)−1及び(B)−1を混合質量比40:60の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法で厚み0.05mmの延伸フィルム(サンプル)の作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(A)−1及び(B)−1を混合質量比60:40の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法で厚み0.05mmの延伸フィルム(サンプル)の作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(A)−1及び(B)−1を混合質量比10:90の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法で厚み0.05mmの延伸フィルム(サンプル)の作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(A)−1を単独で用い、実施例1と同様の方法で厚み0.05mmの延伸フィルム(サンプル)の作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(A)−2を単独で用い、実施例1と同様の方法で厚み0.05mmの延伸フィルム(サンプル)の作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
リン化合物を共重合してなるポリエステル系樹脂(A)の代わりに、リン系難燃剤として大八化学工業社PX−200(縮合リン酸エステル)を用い、(B)−1及びPX−200を混合質量比90:10の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法で厚み0.05mmの延伸フィルム(サンプル)の作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
また、ポリエステル系樹脂(A)及び(B)が完全相溶するため、非相溶のように海島構造とならず、リンが海若しくは島に偏在することがないため、高い難燃性を得ることができることも分かった。
Claims (8)
- リン化合物が共重合されてなり、結晶融解熱量(ΔHm)が1〜20J/gであるポリエステル系樹脂(A)と、結晶融解熱量(ΔHm)が40J/g以上であり、且つ当該ポリエステル系樹脂(A)と完全相溶するポリエステル系樹脂(B)との混合物を含有し、
該混合物中に占めるポリエステル系樹脂(B)の割合が40質量%以上80質量%以下であり、該混合物の結晶融解熱量ΔHmが20J/g以上40J/g以下であって、かつ該混合物中に占めるリン原子の含有量が5,000ppm以上20,000ppm以下であることを特徴とする難燃性ポリエステル系樹脂組成物(MgSO 4 ・5MgO・8H 2 O及びガラス繊維を同時に含むものを除く)。 - ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)は50℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性ポリエステル系樹脂組成物。
- ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は60〜85℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の難燃性ポリエステル系樹脂組成物。
- 難燃性ポリエステル系樹脂組成物のUL94に基づく難燃性が、VTM−0又はV−0規格を満足することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の難燃性ポリエステル系樹脂組成物。
- ポリエステル系樹脂(A)とポリエステル系樹脂(B)からなる混合物中に占める(B)の割合が、50質量%以上、80質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の難燃性ポリエステル系樹脂組成物。
- リン化合物を含有するポリエステル系樹脂(A)のジオール成分中に占めるリン化合物を含有するモノマー量が15モル%以上、40モル%以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の難燃性ポリエステル系樹脂組成物。
- 請求項1〜6の何れかに記載の難燃性ポリエステル系樹脂組成物を成形してなるフィルムであって、少なくとも1方向に延伸されていることを特徴とする延伸フィルム。
- 請求項1〜6の何れかに記載の難燃性ポリエステル系樹脂組成物を用いて成る成形体。
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