JP6349693B2 - ポリアミド系樹脂組成物及びポリアミド系樹脂延伸フィルム - Google Patents

ポリアミド系樹脂組成物及びポリアミド系樹脂延伸フィルム Download PDF

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Description

本発明は、ポリアミド系樹脂組成物及びポリアミド系樹脂延伸フィルムに関する。
ポリ−ε−カプロラクタム(以下、「PA6」という)、ポリヘキサメチレンアジパミド(以下、「PA66」という)等の脂肪族ポリアミド樹脂からなるフィルムは、引張強度、引裂強度、衝撃強度、耐熱性などに優れていることから、電気・電子用部材や包装材料を始め、あらゆる用途に幅広く使用されている。
これらのポリアミド系樹脂フィルムは、フィルムの機械物性や耐熱性を向上させる目的で一軸方向又は二軸方向に延伸を行うことがあるが、ポリアミド樹脂は一般的に結晶化速度(球晶の成長速度)が速いことから延伸過程で配向による結晶化が進行してしまい、高倍率の延伸が困難となるという欠点があった。また、球晶と非晶部との界面で光が散乱し、フィルムの透明性が低下するという課題があった。
一方、脂肪族ポリアミド樹脂は汎用樹脂に比べると融点が高く耐熱性に優れるものの、軟化温度の指標となるガラス転移温度Tgは決して高くなく、また融点についても、半田リフロー工程など更なる耐熱性が求められる用途を想定した場合には十分ではない。加えて、脂肪族ポリアミド樹脂は吸水性も高いことから、高度な寸法安定性が求められる用途についてはその使用が妨げられていた。
これらの課題に対して、特許文献1(特開平2−300237号公報)には、結晶性熱可塑性ポリアミド樹脂(A)と、該結晶性熱可塑性ポリアミド樹脂(A)より高いガラス転移温度を有する非晶性熱可塑性ポリアミド樹脂(B)との混合物とからなり、少なくとも一軸方向に配向したポリアミド系フィルムについて開示されており、これら二種類のポリアミド樹脂をブレンドすることにより、結晶化を遅らせて延伸性を付与できるばかりか、ガラス転移温度ひいては耐熱性も向上することができる旨の記載がある。
また、特許文献2(特開平6−263895号公報)には、結晶性脂肪族ポリアミド(A)と非晶性ポリアミド(B)の配合組成物(C)からなる二軸延伸ポリアミドフィルムにおいて、前記非晶性ポリアミド(B)が特定の脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン、テレフタル酸、イソフタル酸およびその他の共重合成分から構成されることを特徴とする二軸延伸ポリアミドフィルムについて開示されており、非晶性ポリアミド(B)として脂環族構造を有する特定の非晶性ポリアミド樹脂を選択することにより、フィルムの延伸性及び操業性が向上する旨の記載がある。
一方、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンを重合してなる半芳香族ポリアミド樹脂が、脂肪族ポリアミド樹脂に比べて優れた耐熱性、低吸水性を有するとして、高度な耐熱性や寸法安定性が求められる用途への使用を検討されている。中でもテレフタル酸と1,9−ノナンジアミン及び/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンからなる半芳香族ポリアミド樹脂であるポリノナメチレンテレフタルアミド(以下、「PA9T」という)は、低吸水性、機械特性、耐熱性に優れることから特に注目が高まっている。
しかしながら、この半芳香族ポリアミド樹脂についても脂肪族ポリアミド樹脂と同様に、結晶化速度が速いことから高倍率の延伸が困難であり、かつ透明性が悪いという課題があった。
これに対し、特許文献3(特表2012−515243号公報)には、半芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミドと脂肪族ポリアミドの混合物のいずれかから選ばれる半結晶性ポリアミドを含むポリマー組成物で作製された光学的に透明なポリマーフィルムもしくは押出製品について開示されており、前記ポリマー組成物はさらに非晶質のポリアミド樹脂を含んでもよく、これにより加工性、透明性が向上する旨の記載がある。
特開平2−300237号公報 特開平6−263895号公報 特表2012−515243号公報
しかし、特許文献1で実質的に開示されている結晶性熱可塑性ポリアミド樹脂は、芳香族を含まない脂肪族ポリアミド樹脂のみであり、延伸フィルムの低吸水性や、半田リフロー工程などで求められる更なる耐熱性に関しては十分とはいえない上、透明性についても考慮されていない。
また、特許文献2についても結晶性脂肪族ポリアミドを使用しているため、延伸フィルムの低吸水性や、半田リフロー工程などで求められる更なる耐熱性に関しては十分とはいえない上、透明性についても考慮されていない。
他方、特許文献3に記載のポリマー組成物は半芳香族ポリアミドに非晶質のポリアミドを含んでもよい旨の記載があるが、いかなる非晶性ポリアミド樹脂が、半芳香族ポリアミド樹脂を用いたポリアミド系樹脂延伸フィルムの透明性、耐熱性、低吸水性、延伸成形性の向上や最適化に資するのかについては、何ら記載も示唆もされていない。
すなわち従来の技術によっては、半芳香族ポリアミド樹脂を用いたポリアミド系樹脂延伸フィルムに関し、透明性、耐熱性、低吸水性、延伸成形性の向上や最適化を達成できていなかった。
本発明者らは、鋭意努力を重ねた結果、特定の半芳香族ポリアミド樹脂と特定の非晶性ポリアミド樹脂を特定の含有比率でブレンドすることにより、ポリアミド系樹脂延伸フィルムに成形したときに、特に耐熱性(寸法安定性)と低吸水性に優れ、かつ、透明性、延伸成形性のバランスにも優れるポリアミド系樹脂組成物を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1] 下記半芳香族ポリアミド樹脂(A)90〜55質量%、及び、下記非晶性ポリアミド樹脂(B)10〜45質量%からなる混合物(X)を主成分とし、
前記非晶性ポリアミド樹脂(B)のガラス転移温度Tg(B)が前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度Tg(A)よりも30〜120℃高く、
前記混合物(X)のガラス転移温度Tg(X)が単一であり、前記混合物(X)の昇温過程における結晶化温度Tc(X)が前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の昇温過程における結晶化温度Tc(A)よりも10〜50℃高く、前記混合物(X)の結晶融解エンタルピーΔHm(X)が25J/g以上、60J/g以下であり、
厚さ20μmにおけるヘーズが5%以下であることを特徴とするポリアミド系樹脂延伸フィルム。
(A):テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分(a−1)と、1,9−ノナンジアミン及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミンを主成分とするジアミン成分(a−2)から構成される半芳香族ポリアミド樹脂。
(B):テレフタル酸及び/またはイソフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分(b−1)と、ビス−(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンを主成分とするジアミン成分(b−2)と、ω−ラウロラクタムを主成分とするラクタム成分(b−3)から構成される非晶性ポリアミド樹脂。
[2] 200℃で30分間加熱した後の縦方向と横方向の収縮率の平均値が1%以下である[1]に記載のポリアミド系樹脂延伸フィルム。
[3] 260℃で5分間加熱した後の縦方向と横方向の収縮率の平均値が3%以下である[1]又は[2]に記載のポリアミド系樹脂延伸フィルム。
[4] 95℃の熱水に5分間含浸した後の縦方向と横方向の収縮率の平均値が1%以下である[1]〜[3]のいずれかに記載のポリアミド系樹脂延伸フィルム。
[5] []〜[]のいずれかに記載のポリアミド系樹脂延伸フィルムを用いてなる
電気・電子部材用フィルム。
[6] []〜[]のいずれかに記載のポリアミド系樹脂延伸フィルムを用いてなる包装材。

本発明のポリアミド系樹脂組成物及びこれを延伸成形してなるポリアミド系樹脂延伸フィルムは、特に耐熱性(寸法安定性)と低吸水性に優れ、かつ、透明性、延伸成形性のバランスにも優れるため、電気・電子部品や日用品、食品、又は、医薬品等の包装材料として広く使用することができ、かつ、安定して生産することができる。
[半芳香族ポリアミド樹脂(A)]
本発明に用いる半芳香族ポリアミド樹脂(A)は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分(a−1)と、1,9−ノナンジアミン及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミンを主成分とするジアミン成分(a−2)から構成されるポリアミド樹脂である。
前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)を構成するジカルボン酸成分(a−1)は、テレフタル酸を主成分とすることが重要である。すなわち、ジカルボン酸成分(a−1)のうち50モル%を超える成分がテレフタル酸であることが重要であり、60モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましく、とりわけジカルボン酸成分(a−1)の全て(100モル%)がテレフタル酸であることが好ましい。
ジカルボン酸成分(a−1)が、テレフタル酸を主成分とすることにより、本発明のポリアミド系樹脂組成物及びポリアミド系樹脂延伸フィルムが耐熱性(寸法安定性)や低吸水性に優れる。
なお、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸や、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸から誘導されるジカルボン酸成分等を例示することができる。
前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)を構成するジアミン成分(a−2)は、1,9−ノナンジアミン及び/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンを主成分とすることが重要である。すなわち、ジアミン成分(a−2)のうち50モル%を超える成分が1,9−ノナンジアミン及び/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンであることが重要であり、60モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましく、とりわけジアミン成分(a−2)の全て(100モル%)が1,9−ノナンジアミン及び/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンであることが好ましい。
ジアミン成分(a−2)が、1,9−ノナンジアミン及び/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンを主成分とすることにより、本発明のポリアミド系樹脂組成物及びポリアミド系樹脂延伸フィルムが耐熱性(寸法安定性)や低吸水性、延伸成形性に優れる。
なお、1,9−ノナンジアミン及び/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン以外のジアミン成分としては、その他の脂肪族ジアミン成分やキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン成分を例示することができる。
前記ジアミン成分(a−2)は、1,9−ノナンジアミンのみを主成分としても良く、2−メチル−1,8−オクタンジアミンのみを主成分としても良く、1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンを併せて主成分としても良い。いずれの場合も、前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度Tg(A)は殆ど変化することがなく、融点も半田耐熱性の基準となる260℃を下回ることがない。
前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度Tg(A)は、JIS K7244−10(2005年)の動的粘弾性測定により、後述する方法で測定することができ、100℃以上、200℃以下が好ましく、110℃以上、180℃以下が更に好ましく、120℃以上、160℃以下が特に好ましい。
Tg(A)が100℃以上であれば、耐熱性ひいては寸法安定性に優れる。また、Tg(A)が200℃以下であれば、成形性、特に延伸成形性に優れる。
前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の昇温過程における結晶化温度Tc(A)は、JIS K7121(2012年)に準じて後述する方法で測定することができ、110℃以上、210℃以下が好ましく、120℃以上、180℃以下が更に好ましく、130℃以上、150℃以下が特に好ましい。
Tc(A)が110℃以上であれば、前記混合物(X)から得られる未結晶化フィルムの延伸過程において、延伸過程で予熱をかけた際にすぐさま結晶化することがなく、十分な延伸加工性を確保することができる。また、Tc(A)が210℃以下であれば、延伸後にフィルムを熱処理して結晶化させる際に、速やかに結晶化が進行し、生産性を確保することができる。
前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の融点(結晶融解温度)Tm(A)は、JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定することができ、260℃以上、350℃以下が好ましく、280℃以上、340℃以下であることが更に好ましく、300℃以上、330℃以下であることが特に好ましい。
Tm(A)が260℃以上であれば、耐熱性が十分である。また、Tm(A)が350℃以下であれば、成形性(流動性)が十分であると共に、成形時に分解が生じることがなく、安全性も確保できる。
[非晶性ポリアミド樹脂(B)]
本発明に用いる非晶性ポリアミド樹脂(B)は、テレフタル酸及び/またはイソフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分(b−1)と、ビス−(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンを主成分とするジアミン成分(b−2)と、ω−ラウロラクタムを主成分とするラクタム成分(b−3)から構成されるポリアミド樹脂である。
前記非晶性ポリアミド樹脂(B)を構成するジカルボン酸成分(b−1)は、テレフタル酸及び/またはイソフタル酸を主成分とすることが重要である。すなわち、ジカルボン酸成分(b−1)のうち50モル%を超える成分がテレフタル酸及び/またはイソフタル酸であることが重要であり、60モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましく、とりわけジカルボン酸成分(b−1)の全て(100モル%)がテレフタル酸及び/またはイソフタル酸であることが好ましい。
ジカルボン酸成分(b−1)が、テレフタル酸及び/またはイソフタル酸を主成分とすることにより、本発明のポリアミド系樹脂組成物及びポリアミド系樹脂延伸フィルムが耐熱性(寸法安定性)や低吸水性に優れる。
なお、テレフタル酸及び/またはイソフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、ヒドロキシカルボン酸から誘導されるジカルボン酸成分等を例示することができる。
前記ジカルボン酸成分(b−1)は、テレフタル酸のみを主成分としても良く、イソフタル酸のみを主成分としても良く、テレフタル酸とイソフタル酸を併せて主成分としても良い。テレフタル酸の割合が高くなるほど非晶性ポリアミド樹脂(B)のガラス転移温度が向上する傾向にある。一方、イソフタル酸の割合が高くなるほど前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)との相溶性が高くなり、透明性や延伸成形性が向上する傾向にある。
前記非晶性ポリアミド樹脂(B)を構成するジアミン成分(b−2)は、ビス−(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンを主成分とすることが重要である。すなわち、ジアミン成分(b−2)のうち50モル%を超える成分がビス−(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンであることが重要であり、60モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましく、とりわけジアミン成分(b−2)の全て(100モル%)がビス−(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンであることが好ましい。
ジアミン成分(b−2)が、ビス−(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンを主成分とすることにより、本発明のポリアミド系樹脂組成物及びポリアミド系樹脂延伸フィルムが耐熱性や低吸水性に優れる。
なお、ビス−(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン以外のジアミン成分としては、ビス(アミノヘキシル)メタンやイソホロンジアミンを始めとする脂環族ジアミン成分や脂肪族ジアミン成分、キシリレンジアミンを始めとする芳香族ジアミン成分を例示することができる。
前記非晶性ポリアミド樹脂(B)を構成するラクタム成分(b−3)は、ω−ラウロラクタムを主成分とすることが重要である。すなわち、ラクタム成分(b−3)のうち50モル%を超える成分がω−ラウロラクタムであることが重要であり、60モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましく、とりわけラクタム成分(b−3)の全て(100モル%)がω−ラウロラクタムであることが好ましい。
ラクタム成分(b−3)が、ω−ラウロラクタムを主成分とすることにより、本発明のポリアミド系樹脂組成物及びポリアミド系樹脂延伸フィルムが耐熱性や延伸成形性に優れる。
なお、ω−ラウロラクタム以外のラクタム成分としては、炭素数3以上のラクタム成分を例示することができる。
前記非晶性ポリアミド樹脂(B)の結晶融解エンタルピーΔHm(B)は、通常5J/g未満であり、3J/g未満であることがさらに好ましく、1J/g未満であることが特に好ましい。ΔHm(B)が5J/g未満であることによって、後述する混合物(X)、ひいては本発明のポリアミド系樹脂組成物の結晶化度を低く維持することが可能となる。すなわち、球晶の成長を抑制してポリアミド系樹脂組成物及びポリアミド系樹脂延伸フィルムの延伸成形性、透明性を向上することができる。
なお、結晶融解エンタルピーΔHm(B)はJIS K7121(2012年)に準じて、後述する方法で測定する。
前記非晶性ポリアミド樹脂(B)のガラス転移温度Tg(B)は、JIS K7244−10(2005年)の動的粘弾性測定により、後述する方法で測定することができ、前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度Tg(A)よりも30〜120℃高いことが好ましく、35〜110℃高いことがより好ましく、40〜100℃高いことがさらに好ましい。
Tg(B)をTg(A)よりも30℃以上高くすることにより、後述する混合物(X)のガラス転移温度Tg(X)がTg(A)と比べて十分に向上し、ひいては本発明のポリアミド系樹脂延伸フィルムの耐熱性が著しく向上する。一方で、Tg(B)とTg(A)の差が120℃以下であれば、半芳香族ポリアミド樹脂(A)の成形温度において非晶性ポリアミド樹脂(B)が十分に流動する。また、非晶性ポリアミド樹脂(B)の溶融粘度が高すぎることがなく、半芳香族ポリアミド樹脂(A)にナノスケールで分散する。
Tg(B)とTg(A)の差をかかる範囲にすることにより、延伸成形性を維持したまま十分な耐熱性向上効果が発揮される。
前記非晶性ポリアミド樹脂(B)のガラス転移温度Tg(B)は、130℃以上、250℃以下が好ましく、140℃以上、230℃以下が更に好ましく、150℃以上、210℃以下が特に好ましい。
Tg(B)が130℃以上であれば、前記混合物(X)及びそれからなるフィルムに十分な耐熱性を付与することができる。また、Tg(B)が250℃以下であれば、成形温度域における流動性に優れ、十分な成形加工性を確保することができる。
[混合物(X)]
本発明における混合物(X)は、前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)と前記非晶性ポリアミド樹脂(B)とからなる。
前記混合物(X)に含まれる半芳香族ポリアミド樹脂(A)と非晶性ポリアミド樹脂(B)の質量比は、半芳香族ポリアミド樹脂(A):非晶性ポリアミド樹脂(B)=90:10〜55:45の範囲であることが重要である。より好ましくは85:15〜55:45の範囲であり、特に好ましくは80:20〜60:40の範囲である。
前記混合物(X)に含まれる半芳香族ポリアミド樹脂(A)と非晶性ポリアミド樹脂(B)の質量比をかかる範囲にすることにより、半芳香族ポリアミド樹脂(A)の結晶性を低くし過ぎることなく、優れた低吸水性を維持したまま耐熱性、延伸性及び透明性を向上することができる。
前記混合物(X)はガラス転移温度Tg(X)が単一であることが重要である。本発明において、混合物(X)のガラス転移温度Tg(X)が単一であるとは、混合物(X)について歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて動的粘弾性の温度分散測定(JIS K7244−10(2005年)の動的粘弾性測定)により測定される損失正接(tanδ)の主分散のピークが1つ存在する、言い換えれば損失正接(tanδ)の極大値が1つ存在するという意味である。
一般的にポリマーブレンド組成物のガラス転移温度が単一であるということは、混合する樹脂が分子レベルで相溶した状態にあることを意味し、相溶している系と認めることができる。逆に、ブレンド後も損失正接(tanδ)の主分散のピークが二つ存在する場合、非相溶系といえる。
一般的に非相溶系の場合、それぞれの樹脂の屈折率が極めて近い値になければマトリックスとドメインの界面で光が散乱し、混合物の透明性が損なわれる。また、引張や曲げ等の外力を加えた際に界面で剥離が生じ、機械物性の低下や白化を招く他、延伸時にも界面剥離が生じ、破断や白化の原因となる。
前記混合物(X)を構成する半芳香族ポリアミド樹脂(A)と非晶性ポリアミド樹脂(B)が完全相溶系であることにより、本発明のポリアミド系樹脂組成物及びポリアミド系樹脂延伸フィルムにおいて優れた透明性、延伸成形性を実現できる。
前述の方法で測定する前記混合物(X)のガラス転移温度Tg(X)は110℃以上、220℃以下であることが好ましく、120℃以上、200℃以下であることが更に好ましく、130℃以上、180℃以下であることが特に好ましい。
Tg(X)が110℃以上であれば、耐熱性ひいては寸法安定性に優れる。また、Tg(X)が220℃以下であれば、成形性、特に延伸成形性に優れる。
前記混合物(X)の昇温過程における結晶化温度Tc(X)は、JIS K7121(2012年)に準じて後述する方法で測定することができ、前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の昇温過程における結晶化温度Tc(A)よりも10〜50℃高いことが好ましく、15〜45℃高いことがさらに好ましく、20〜40℃高いことが特に好ましい。
昇温過程において、Tc(X)がTc(A)に比べてどれだけ高いかということは、非晶性ポリアミド樹脂(B)をブレンドすることで結晶化がどれだけ抑えられたかということを表しており、ひいては延伸成形性の尺度となる。
Tc(X)をTc(A)よりも10℃以上高くすることで、結晶化が十分に抑えられ、著しい延伸成形性向上効果が発現する。一方で、Tc(X)とTc(A)の差が50℃以下であれば、延伸後の熱処理によって結晶化を促進させる際に結晶化が遅くなる結果として生産性が低下するおそれが小さい。
Tc(X)とTc(A)の差をかかる範囲にすることによって、生産性を維持したまま延伸成形性を向上することができる。
前記混合物(X)の昇温過程における結晶化温度Tc(X)は120℃以上、220℃以下であることが好ましく、130℃以上、200℃以下であることが好ましく、140℃以上、170℃以下であることが特に好ましい。
Tc(X)が120℃以上であれば、前記混合物(X)から得られる未結晶化フィルムの延伸過程において、延伸過程で予熱をかけた際にすぐさま結晶化することがなく、十分な延伸加工性を確保することができる。また、Tc(X)が210℃以下であれば、延伸後にフィルムを熱処理して結晶化させる際に、速やかに結晶化が進行し、生産性を確保することができる。
前記混合物(X)の融点(結晶融解温度)Tm(X)は、JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定することができ、260℃以上、350℃以下が好ましく、280℃以上、340℃以下であることが更に好ましく、300℃以上、330℃以下であることが特に好ましい。
Tm(X)が260℃以上であれば、耐熱性が十分である。また、Tm(X)が350℃以下であれば、成形性(流動性)が十分であると共に、成形時に分解が生じることがなく、安全性も確保できる。
前記混合物(X)の結晶融解エンタルピーΔHm(X)は、JIS K7121(2012年)に準じて後述する方法で測定することができ、25J/g以上、60J/g以下であることが好ましく、30J/g以上、55J/g以下であることがより好ましく、35J/g以上、50J/g以下であることがさらに好ましい。
結晶融解エンタルピーΔHm(X)が25J/g以上であれば、本発明のポリアミド系樹脂組成物及びポリアミド系樹脂延伸フィルムが耐熱性に優れる上、低吸水性、耐薬品性にも優れる。一方、60J/g以下であれば、本発明のポリアミド系樹脂組成物が延伸成形性に優れる。
[ポリアミド系樹脂組成物]
本発明のポリアミド系樹脂組成物は、前記混合物(X)を主成分とすることが重要である。すなわち、ポリアミド系樹脂組成物のうち50質量%を超える成分が前記混合物(X)であることが重要であり、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、とりわけ100質量%が前記混合物(X)であることが好ましい。
また、本発明のポリアミド系樹脂組成物には、本発明の効果が阻害されない範囲内で、その他の各種熱可塑性樹脂をさらに添加することができる。また、各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機粒子、無機粒子、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、難燃剤等を添加しても構わない。
[ポリアミド系樹脂延伸フィルム]
本発明のもう一つの態様は、本発明のポリアミド系樹脂組成物を延伸成形してなるフィルムである。すなわち、本発明のポリアミド系樹脂組成物を用いており、かつ、延伸成形がなされていれば、他の製造工程等については特に限定されない。
以下、本発明のポリアミド系樹脂延伸フィルムの製造方法の具体例について説明する。
本発明のポリアミド系樹脂延伸フィルムの製造方法としては、一般的なTダイキャスト法、プレス法、カレンダー法等によって前駆体としての未延伸フィルムを作製した後、ロール延伸法、テンター延伸法等により延伸成形する方法や、インフレーション法、チューブラー法等により、溶融押出と延伸成形を一体的に行う方法を挙げることができ、特に限定されるものではない。
中でも、延伸倍率を制御し均一な厚みのフィルムを得ることができるため、Tダイキャスト法とロール延伸法、テンター延伸法を組み合わせて製造する方法を採用することが好ましい。
Tダイキャスト法によって本発明のポリアミド系樹脂延伸フィルムの前駆体としての未延伸フィルムを作製する方法としては、前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)、前記非晶性ポリアミド樹脂(B)、及び、必要に応じてその他の樹脂や添加剤等の原料を直接混合し、押出機に投入して溶融し、Tダイからキャストロール上に押し出して冷却しながら成形する方法や、前記原料を二軸押出機を用いて溶融混合し、ストランド形状に押出してペレットを作製した後、このペレットを押出機に投入して溶融し、Tダイからキャストロール上に押し出して冷却しながら成形する方法を挙げることができる。
いずれの方法においても、半芳香族ポリアミド樹脂(A)及び非晶性ポリアミド樹脂(B)の加水分解による分子量の低下を考慮する必要があり、均一に混合させるためには後者を選択するのが好ましい。そこで、以下後者の製造方法について説明する。
前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)、前記非晶性ポリアミド樹脂(B)、及び、必要に応じてその他の樹脂や添加剤を十分に乾燥して水分を除去した後、二軸押出機を用いて溶融混合し、ストランド形状に押出してペレットを作製する。この際、各原料の組成比や配合割合によって粘度が変化すること等を考慮して、溶融押出温度を適宜選択することが好ましい。具体的には、成形温度は混合物(X)の融点Tm(X)よりも10〜40℃高いことが好ましく、15〜35℃高いことがより好ましく、20〜30℃高いことがさらに好ましい。
上記方法にて作製したペレットを、十分に乾燥させて水分を除去した後、押出機に投入して溶融し、Tダイからキャストロール上に押し出して冷却しながら無延伸フィルムを成形する。この際、溶融押出温度は280℃以上、350℃以下であることが好ましく、290℃以上、340℃以下であることが更に好ましく、300℃以上、330℃以下であることが特に好ましい。また、キャストロールの温度は0℃以上、100℃以下であることが好ましく、10℃以上、80℃以下であることが更に好ましく、20℃以上、60℃以下であることが特に好ましい。
次に、前記の未延伸フィルムをロール延伸法やテンター延伸法により延伸成形する。延伸成形は一軸延伸成形、二軸延伸成形のいずれでも良いが、本発明のポリアミド系樹脂延伸フィルムをより耐熱性(寸法安定性)に優れたものとする観点から、二軸延伸成形を行うことが好ましい。
また、延伸方法はロール延伸法でもテンター延伸法でも良く、両者を組み合わせて二軸延伸成形を行っても良い。
より具体的には、前記の未延伸フィルムを、フィルムの流れ方向(縦方向)、及びこれと直角な方向(横方向)で、縦横二軸方向に延伸する。二軸延伸の方法としては、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のいずれを用いてもよい。
一般に、逐次二軸延伸は設備が簡便で、生産性が高いという利点があるが、結晶性樹脂の場合、縦方向に延伸した際に配向結晶化が進んでしまい、その後の横方向への延伸が困難となる場合があるため、結晶化速度が速い樹脂にはあまり向かないという欠点がある。一方、同時二軸延伸は縦横方向に均一に延伸されたフィルムが得られるが、設備が大型化しコストがかかるという欠点がある。従って、樹脂の特性を鑑みてどちらかを選択する必要があるが、本発明のポリアミド系樹脂延伸フィルムは、どちらの延伸法を用いても問題なく延伸が可能である。
二軸延伸成形を行う場合、延伸倍率としては、縦方向に1.5倍〜4.0倍、横方向に1.5倍〜4.0倍それぞれ延伸することが好ましい。延伸倍率が1.5倍以上であれば、延伸によるフィルムの強度や耐熱性の向上効果が十分に発揮される。また、延伸倍率が4.0倍以下であれば、破断やネッキングといった不具合が生じにくくなり、生産性が低下するおそれが小さい。延伸倍率が係る範囲であれば、生産性を維持したまま耐熱性、透明性に優れたポリアミド系樹脂延伸フィルムを得ることができる。
また、二軸延伸成形を行う場合の延伸温度としては、縦方向については、120℃以上、250℃以下が好ましく、125℃以上、230℃以下が更に好ましく、130℃以上、200℃以下が特に好ましい。一方横方向については、125℃以上、260℃以下が好ましく、130℃以上、240℃以下が更に好ましく、140℃以上、210℃以下が特に好ましい。
上記温度範囲の中でも、前記混合物(X)のガラス転移温度Tg(X)より5℃〜100℃高い温度で延伸を行うことが好ましく、10℃〜80℃高い温度が更に好ましく、15℃〜50℃高い温度が特に好ましい。係る温度範囲であれば、破断等の問題がなく延伸が行える上、結晶化を抑制して横延伸の妨げとなることがない。
なお、逐次二軸延伸の場合、縦方向に配向したフィルムは、未延伸フィルムに比べてガラス転移温度が高くなるため、横延伸を行う際は縦延伸時の延伸温度よりも高い温度で行うことが一般的である。
上記方法により延伸された本発明のポリアミド系樹脂延伸フィルムは、引き続いて熱固定を施すことが好ましい。熱固定をすることにより、常温における寸法安定性を付与することができる。この場合の熱固定温度は、好ましくは、混合物(X)の融点Tm(X)より10〜40℃低い温度、さらに好ましくは、Tm(X)より10〜30℃低い温度である。熱固定温度が上記範囲内にあれば、熱固定が十分に行われ、延伸時の応力が緩和され、十分な寸法安定性を持ったフィルムが得られる。
本発明のポリアミド系樹脂延伸フィルムは透明性に優れたフィルムであり、厚さ20μmにおけるヘーズは5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが特に好ましい。ヘーズが5%以下であれば、透明な包装材料用のフィルムとして好適に使用できる。
なお、ヘーズはJIS K7136(2000年)に準じて、後述する方法で測定する。
本発明のポリアミド系樹脂延伸フィルムは耐熱性(寸法安定性)に優れたフィルムであり、熱処理オーブンを用いて設定温度200℃で30分間加熱した後の縦方向と横方向の収縮率の平均値が1%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがさらに好ましく、0.6%以下であることが特に好ましい。
200℃で30分間加熱後の縦方向と横方向の収縮率の平均値が1%以下であれば、本発明のポリアミド系樹脂延伸フィルムが長時間の高温に晒された場合であっても優れた寸法安定性を発揮するものであるといえる。
さらに、本発明のポリアミド系樹脂延伸フィルムは、熱処理オーブンを用いて設定温度260℃で5分間加熱した後の縦方向と横方向の収縮率の平均値が3%以下であることが好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
260℃で5分間加熱後の縦方向と横方向の収縮率の平均値が3%以下であれば、本発明のポリアミド系樹脂延伸フィルムを電気・電子部材用フィルムとして使用した場合に半田耐熱性を発現し、優れた寸法安定性を有するものであると言える。
加えて、本発明のポリアミド系樹脂延伸フィルムは95℃の熱水に5分間含浸した後の縦方向と横方向の収縮率の平均値が1%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがさらに好ましく、0.6%以下であることが特に好ましい。
95℃の熱水に5分間含浸した後の縦方向と横方向の収縮率の平均値が1%以下であれば、本発明のポリアミド系樹脂延伸フィルムが優れた寸法安定性を有するとともに、優れた低吸水性を有し熱水の影響を受けにくいものであると言える。
なお、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(JIS K6900(1994年))、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、実施例中に示す結果は以下の方法で評価を行った。
(1)ガラス転移温度Tg
粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティー計測制御株式会社製)を用い、歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて動的粘弾性の温度分散測定(JIS K7244−10(2005年)の動的粘弾性測定)を行った。そして損失正接(tanδ)の主分散のピークを示す温度をガラス転移温度Tgとした。
混合物(X)について、ガラス転移温度が単一のものを完全相溶系として合格(○)、損失正接(tanδ)の主分散のピークが二つ以上検出されたものを非相溶系として不合格(×)とした。
(2)ヘーズ(曇価)
JIS K7136(2000年)に基づいて、作製したフィルムの全光線透過率および拡散透過率を測定し、ヘーズを以下の式で算出した。
厚さ20μmでのヘーズが5%以下であるものを合格(○)、5%を超えるものを不合格(×)とした。
[ヘーズ]=([拡散透過率]/[全光線透過率])×100
(3)結晶化温度Tc
JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、加熱速度10℃/分で昇温過程における結晶化温度を測定した。具体的には、半芳香族ポリアミド樹脂(A)及び混合物(X)を融点より20℃高い温度で1分間保持し、その後冷水で急冷して得られた非晶状態のサンプルについて上記方法にて結晶化温度を測定した。
混合物(X)の結晶化温度Tc(X)と、半芳香族ポリアミド樹脂(A)の結晶化温度Tc(A)の差Tc(X)−Tc(A)を取り、その値が10℃以上、50℃以下であるものを合格(○)、10℃未満あるいは50℃を超えるものを不合格(×)とした。
(4)結晶融解エンタルピーΔHm
JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、加熱速度10℃/分で昇温過程における結晶融解エンタルピーΔHmを測定した。
混合物(X)について、ΔHmの値が25J/g以上、60J/g以下のものを合格(○)、25J/g未満あるいは60J/gを超えるものを不合格(×)とした。
(5)加熱収縮率
作製した延伸フィルムを、熱処理オーブンベーキング試験装置(株式会社大栄科学製作所製)を用いて設定温度200℃で30分間加熱し、加熱後の収縮率を縦方向と横方向について測定した。
MDとTDの収縮率の平均値が1%以下のものを合格(○)、1%を超えるものを不合格(×)とした。
(6)半田耐熱性
作製した延伸フィルムを、熱処理オーブン熱処理オーブンベーキング試験装置(株式会社大栄科学製作所製)を用いて設定温度260℃で5分間加熱し、加熱後の収縮率を縦方向と横方向について測定した。縦方向と横方向の収縮率の平均値が3%以下のものを合格(○)、3%を超えるものを不合格(×)とした。
(7)熱水収縮率
作製した延伸フィルムを95℃の熱水に5分間含浸し、その後の収縮率を縦方向と横方向について測定した。縦方向と横方向の収縮率の平均値が1%以下のものを合格(○)、1%を超えるものを不合格(×)とした。
<半芳香族ポリアミド樹脂(A)>
(A)−1:PA9T((株)クラレ製、商品名ジェネスタ N1000A、テレフタル酸/1,9−ノナンジアミン/2−メチル−1,8−オクタンジアミン=50/40/10モル%、結晶融解温度:304℃、ガラス転移温度:130℃)
(A)−2:PA9T((株)クラレ製、商品名ジェネスタ TS−296、テレフタル酸/1,9−ノナンジアミン/2−メチル−1,8−オクタンジアミン=50/25/25モル%、結晶融解温度:267℃、ガラス転移温度:128℃)
(A)−3:ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(PA6T)(ダイセルエボニック(株)製、商品名ベスタミド HT plus M1000、テレフタル酸/イソフタル酸/ヘキサメチレンジアミン=35/15/50モル%、結晶融解温度:312℃、ガラス転移温度:134℃)
<非晶性ポリアミド樹脂(B)>
(B)−1:非晶性ポリアミド樹脂(EMS(株)製、商品名グリルアミド TR−55:イソフタル酸/ビス−(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/ω−ラウロラクタム=33/33/34モル%、ガラス転移温度:176℃)
(B)−2:非晶性ポリアミド樹脂(アルケマ(株)製、商品名リルサンクリア G170:テレフタル酸/イソフタル酸/ビス−(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/ω−ラウロラクタム=22/12/33/33モル%、ガラス転移温度:182℃)
(B)−3:非晶性ポリアミド樹脂(アルケマ(株)製、商品名リルサンクリア G830、1,10−テトラデカン二酸/ビス−(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン=50/50モル%、ガラス転移温度:142℃)
(B)−4:非晶性ポリアミド樹脂(三井・デュポン(株)製、商品名シーラー PA3426、テレフタル酸/イソフタル酸/ヘキサメチレンジアミン=13/37/50モル%、ガラス転移温度:142℃)
(実施例1)
(A)−1、及び、(B)−1を混合質量比80:20の割合でドライブレンドし、Φ25mm同方向二軸押出機を用いて320℃で溶融混練した後、Tダイより押出し、次いで30℃のキャスティングロールにて急冷し、厚み180μmの未延伸フィルムを作製した。その後、得られた未延伸フィルムを逐次二軸延伸によって150℃で縦方向と横方向にそれぞれ3倍延伸し、280℃で熱固定を行った。得られた二軸延伸フィルムについて各種評価を行った。結果を表1に示す。
なお、全ての実施例、比較例について、混合物(X)の融点Tm(X)より20℃高い温度で溶融混練を行い、混合物(X)のガラス転移温度Tg(X)より10℃高い温度で延伸を行い、混合物(X)の融点Tm(X)より20℃低い温度で熱固定を行った。
(実施例2)
(A)−1、及び、(B)−1の混合質量比を60:40とした以外は実施例1と同様の方法で延伸フィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
(B)−1を(B)−2に変更した以外は実施例1と同様の方法で延伸フィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
(A)−1を(A)−2に変更した以外は実施例1と同様の方法で延伸フィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
(A)−1と(B)−1の混合質量比を95:5とした以外は実施例1と同様の方法で延伸フィルムの作製を行おうとしたが、延伸時に破断して延伸フィルムを作製できなかった。延伸フィルム以外の評価は実施した。結果を表1に示す。
(比較例2)
(A)−1と(B)−1の混合質量比を40:60とした以外は実施例1と同様の方法で延伸フィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
(B)−1を(B)−3に変更した以外は実施例1と同様の方法で延伸フィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
(B)−1を(B)−4に変更した以外は実施例1と同様の方法で延伸フィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例5)
(A)−1を(A)−3に変更し、溶融混練温度を330℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で延伸フィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0006349693
表1の結果から明らかなように、実施例に記載の本発明のポリアミド系樹脂延伸フィルムは、半芳香族ポリアミド樹脂(A)と非晶性ポリアミド樹脂(B)が相溶性を発現し、特に耐熱性(寸法安定性)と低吸水性に優れる上、透明性、延伸成形性にも優れる。
これに対し、比較例に記載の延伸フィルムはいずれも実施例に対してその特性が劣っていた。
比較例1では、非晶性ポリアミド樹脂(B)の含有割合が少なすぎて、樹脂組成物の結晶性が高くなり、延伸フィルムの作製ができなかった。
比較例2では、非晶性ポリアミド樹脂(B)の含有割合が多すぎて、耐熱性(寸法安定性)も低吸水性も十分ではなかった。
一方、比較例3及び比較例4では、本発明で特定する非晶性ポリアミド樹脂(B)以外の非晶性ポリアミド樹脂を用いたところ、寸法安定性も低吸水性も十分ではなかった。
これについては、どちらの非晶性ポリアミド樹脂もω−ラウロラクタムをラクタム成分として含んでいないことから、理由は明らかでないものの、本発明で特定する半芳香族ポリアミド樹脂(A)と、ω−ラウロラクラムをラクタム成分として含む特定の非晶性ポリアミド樹脂(B)のブレンドによって、本発明のポリアミド系樹脂延伸フィルムが従来では達成し得なかった耐熱性(寸法安定性)と低吸水性に顕著に優れるものとなっていることが推認される。
比較例5では、本発明で特定する半芳香族ポリアミド樹脂(A)以外の半芳香族ポリアミド樹脂を用いたところ、非晶性ポリアミド樹脂(B)と相溶せず、透明性が十分ではなかった。
本発明のポリアミド系樹脂組成物は、単独では成形加工の難しい半芳香族ポリアミド樹脂の成形性を改良し、延伸成形性に優れており、また、透明性、耐熱性、寸法安定性、低吸水性などに優れているため、各種成形用材料として有用である。
また前記樹脂組成物から得られる本発明のポリアミド系樹脂延伸フィルムは、透明性や耐熱性に優れ、高温下においても極めて高度な寸法安定性を有するため、特に、各種電気・電子部材用フィルム、各種包装材、各種光学用途部材用フィルム等に好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. 下記半芳香族ポリアミド樹脂(A)90〜55質量%、及び、下記非晶性ポリアミド樹脂(B)10〜45質量%からなる混合物(X)を主成分とし、
    前記非晶性ポリアミド樹脂(B)のガラス転移温度Tg(B)が前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度Tg(A)よりも30〜120℃高く、
    前記混合物(X)のガラス転移温度Tg(X)が単一であり、前記混合物(X)の昇温過程における結晶化温度Tc(X)が前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の昇温過程における結晶化温度Tc(A)よりも10〜50℃高く、前記混合物(X)の結晶融解エンタルピーΔHm(X)が25J/g以上、60J/g以下であり、
    厚さ20μmにおけるヘーズが5%以下であることを特徴とするポリアミド系樹脂延伸フィルム。
    (A):テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分(a−1)と、1,9−ノナンジアミン及び/又は2−メチル−1,8−オクタンジアミンを主成分とするジアミン成分(a−2)から構成される半芳香族ポリアミド樹脂。
    (B):テレフタル酸及び/またはイソフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分(b−1)と、ビス−(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンを主成分とするジアミン成分(b−2)と、ω−ラウロラクタムを主成分とするラクタム成分(b−3)から構成される非晶性ポリアミド樹脂。
  2. 200℃で30分間加熱した後の縦方向と横方向の収縮率の平均値が1%以下である請求項1に記載のポリアミド系樹脂延伸フィルム。
  3. 260℃で5分間加熱した後の縦方向と横方向の収縮率の平均値が3%以下である請求項1又は2に記載のポリアミド系樹脂延伸フィルム。
  4. 95℃の熱水に5分間含浸した後の縦方向と横方向の収縮率の平均値が1%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド系樹脂延伸フィルム。
  5. 請求項のいずれか1項に記載のポリアミド系樹脂延伸フィルムを用いてなる電気・電子部材用フィルム。
  6. 請求項のいずれか1項に記載のポリアミド系樹脂延伸フィルムを用いてなる包装材。
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