JP2018076430A - ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
ポリエステル樹脂に二軸延伸を施すことでフィルムやシートの耐熱性は向上されるが、いくら延伸条件によって耐熱性を向上させたとしても、その効果には限界がある。
また、特許文献2においては、本発明者の検討によれば、実施例に開示されているシートはいずれも、その樹脂組成より結晶性が低く、フィルムとした場合に加熱時の収縮率が大きいため実用上問題があることが判明した。
本発明で解決しようとする課題は、透明性、耐熱性に優れたポリエステル樹脂組成物を提供することにある。また透明性、機械特性、さらには加熱時の耐収縮性にも優れたポリエステル系二軸延伸フィルムを提供することにある。
[1] 酸成分(a−1)としてテレフタル酸単位を80モル%以上含む結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、結晶性ポリエステル樹脂(A)よりもガラス転移温度が高いポリエーテルイミド樹脂(B)を1質量部以上50質量部以下、及び、酸成分(c−1)として2,6−ナフタレンジカルボン酸単位を25モル%以上含むポリエステル樹脂(C)を1質量部以上20質量部以下含む、ポリエステル樹脂組成物。
[2] 単一のガラス転移温度を有する[1]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[3] 前記結晶性ポリエステル樹脂(A)がジオール成分(a−2)としてエチレングリコールを50モル%以上含む[1]又は[2]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[4] 前記ポリエーテルイミド樹脂(B)が、nを整数として下記式(5)で表されるポリエーテルイミドである[1]〜[3]のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
[5] [1]〜[4]のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル系二軸延伸フィルム。
[6]
150℃で30分間熱処理した際の収縮率が縦方向、横方向、共に1%以下である[6]に記載のポリエステル系二軸延伸フィルム。
[7] 酸成分(a−1)としてテレフタル酸単位を80モル%以上含む結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、結晶性ポリエステル樹脂(A)よりもガラス転移温度が高いポリエーテルイミド樹脂(B)を1質量部以上50質量部以下、及び、酸成分(c−1)として2,6−ナフタレンジカルボン酸単位を25モル%以上含むポリエステル樹脂(C)を1質量部以上20質量部以下で、260℃以上350℃以下で溶融混練してなるポリエステル樹脂組成物の製造方法。
本発明の実施形態の一例に係るポリエステル樹脂組成物(以下、「本樹脂組成物」と称することがある)は、酸成分(a−1)としてテレフタル酸単位を80モル%以上含む結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、結晶性ポリエステル樹脂(A)よりもガラス転移温度が高いポリイミド樹脂(B)を1質量部以上50質量部以下、及び、酸成分(c−1)として2,6−ナフタレンジカルボン酸単位を25モル%以上含むポリエステル樹脂(C)を1質量部以上20質量部以下含む、ポリエステル樹脂組成物である。
本発明が提案するポリエステル樹脂組成物は、酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸単位を25モル%以上含むポリエステル樹脂(C)をさらに含み、ポリエステル樹脂組成物の組成比を、結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、ポリエーテルイミド樹脂(B)を1質量部以上50質量部以下、ポリエステル樹脂(C)を1質量部以上20質量部以下とすることで、従来の耐熱性及び透明性の問題を解決したものである。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂の透明性を損なわずに耐熱性が改善されているため、この樹脂組成物から得られるポリエステル系二軸延伸フィルムは透明性、機械特性、さらには加熱時の耐収縮性にも優れ、耐熱性や光学特性が必要な用途にも好適に使用できる。
また、本発明で使用する2,6−ナフタレンジカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂(C)は、その嵩高い構造を有し、特許文献2に記載の非晶性ポリエステルであるPETGよりもガラス転移温度が高いため、得られる樹脂組成物の耐熱性向上も期待できる。
本樹脂組成物は、単一のガラス転移温度を有する事が好ましい。単一のガラス転移温度を有するとは、歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分の条件にて動的粘弾性の温度分散測定(JIS K7198A法の動的粘弾性測定)を行った際、本樹脂組成物は損失正接(tanδ)の主分散のピークが1つだけ存在することを意味する。樹脂組成物のガラス転移温度が単一であれば、樹脂組成物に含まれる樹脂は相溶しており、透明性を有したポリエステル樹脂組成物となる。
相溶系とは、混合する2種類以上の樹脂が分子レベルで完全に混ざり合う系を意味する。この際、分子レベルで混ざり合っている非晶領域は単一の相と見なす事ができ、ミクロブラウン運動も単一の温度で生じる。従って、相溶系の場合、ガラス転移温度が単一であり、主分散のピークも単一となる。また、その温度は、ブレンド比率に応じて、ブレンドするそれぞれの樹脂の間の範囲に値をとる。
一方、非相溶系の場合、混合する2種類以上の樹脂が混ざり合っておらず、二相系(あるいはそれ以上)として存在する。従って、ガラス転移温度を示す主分散のピークは、ブレンドするそれぞれの樹脂と同じ位置に2つ以上存在する事になる。非相溶の場合、それぞれの樹脂の屈折率が極めて近い値になければマトリックスとドメインの界面で光が散乱し、樹脂組成物の透明性が損なわれる。また、引張や曲げ等の外力を加えた際に界面で剥離が生じ、機械物性の低下や白化を招く。さらに、延伸フィルムの製造の際、延伸時に界面剥離が生じ、破断や白化の原因となる。
本発明においては、本樹脂組成物を構成する樹脂が相溶しているため、本樹脂組成物及び該組成物を用いて得られる成形品は優れた透明性を有する。
ここで、ガラス転移温度は、JIS K7198Aに準じて、動的粘弾性の温度分散測定を用いて歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて測定される損失正接(tanδ)の主分散のピークで評価される。
本樹脂組成物の結晶融解温度は、加熱速度10℃/分で測定する事ができ、200℃以上350℃以下であり、210℃以上或いは340℃以下である事が好ましく、220℃以上或いは330℃以下である事がより好ましく、230℃以上或いは320℃以下である事が更に好ましく、240℃以上或いは310℃以下である事が特に好ましく、250℃以上或いは300℃以下である事がとりわけ好ましい。樹脂組成物の結晶融解温度がかかる範囲であれば、組成物は耐熱性と成形性のバランスに優れる。
ここで、結晶融解温度は、JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される。
本樹脂組成物の結晶融解熱量は、25J/g以上55J/g以下であるのが好ましく、26J/g以上或いは50J/g以下であるのがより好ましく、27J/g以上或いは45J/g以下であるのが更に好ましい。本樹脂組成物の結晶融解熱量が25J/g以上であれば、樹脂組成物は十分な結晶性を有している為、耐熱性に優れる樹脂組成物となる。一方、55J/g以下であれば、樹脂組成物は高すぎない結晶性有する為、成形性にも優れる樹脂組成物となる。
ここで、結晶融解熱量は、JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定される。
他の樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、及び、フッ素系樹脂等が挙げられる。
本発明に用いる結晶性ポリエステル樹脂(A)は、酸成分(a−1)としてテレフタル酸単位を80モル%以上含む樹脂であり、具体例としてポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフラノエート等が挙げられる。
前記結晶性ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度は、40℃以上300℃以下である事が好ましく、50℃以上或いは290℃以下である事がより好ましく、60℃以上或いは280℃以下である事が更に好ましく、70℃以上或いは270℃以下である事が特に好ましく、80℃以上或いは260℃以下である事がとりわけ好ましい。前記結晶性ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度がかかる範囲にあれば、耐熱性と成形性のバランスに優れる。
ここでガラス転移温度は、JIS K7198Aに準じて、動的粘弾性の温度分散測定を用いて歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて測定される損失正接(tanδ)の主分散のピークで評価するものである。
前記結晶性ポリエステル樹脂(A)の結晶融解温度は、200℃以上350℃以下であり、210℃以上或いは340℃以下である事が好ましく、220℃以上或いは330℃以下である事がより好ましく、230℃以上或いは320℃以下である事が更に好ましく、240℃以上或いは310℃以下である事が特に好ましく、250℃以上或いは300℃以下である事がとりわけ好ましい。結晶性ポリエステル樹脂Aの結晶融解温度がかかる範囲であれば、結晶性ポリエステル樹脂Aは耐熱性と成形性のバランスに優れる。
ここで、結晶融解温度は、JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定するものである。
前記結晶性ポリエステル樹脂(A)の結晶融解熱量は25J/g以上55J/g以下である事が好ましく、26J/g以上或いは50J/g以下である事がより好ましく、27J/g以上或いは45J/g以下である事が更に好ましい。ポリエステル樹脂(A)の結晶融解熱量がかかる範囲であれば、結晶性ポリエステル樹脂(A)は十分な結晶性を有している為、耐熱性に優れ、かつ結晶性が高過ぎない為、成形性にも優れる。
ここで、結晶融解熱量は、JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定するものである。
本発明に用いるポリエーテルイミド樹脂(B)は、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)よりもガラス転移温度が高い事が重要である。
ポリエーテルイミド樹脂(B)のガラス転移温度は、160℃以上300℃以下であるのが好ましく、170℃以上或いは290℃以下であるのがより好ましく、180℃以上或いは280℃以下であるのが更に好ましく、190℃以上或いは270℃以下である事が特に好ましく、200℃以上260℃以下である事がとりわけ好ましい。ポリエーテルイミド樹脂(B)のガラス転移温度が160℃以上であることにより、本ポリエステル樹脂組成物のガラス転移温度を向上する事ができる。一方、ポリイミド樹脂(B)のガラス転移温度が300℃以上であることにより、成形性に優れたポリエーテルイミド樹脂(B)となる。
ガラス転移温度の差が60℃以上であることにより、本ポリエステル樹脂組成物の耐熱性を十分に向上させることができる。
本樹脂組成物は、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)とポリエーテルイミド樹脂(B)との相溶性を高め、優れた透明性を得るために、さらに酸成分(c−1)として2,6−ナフタレンジカルボン酸単位を25モル%以上含むポリエステル樹脂(C)を含むことが重要である。後述するように、前記ポリエステル樹脂(C)の存在により、結晶性ポリエステル樹脂(A)及びポリエーテルイミド樹脂(B)とエステル交換反応及びエステル−イミド交換反応を生じやすくさせ、結晶性ポリエステル樹脂(A)とポリエーテルイミド樹脂(B)間の界面張力が大幅に低下しやすくなるからである。
酸成分(c−1)に含まれる2,6−ナフタレンジカルボン酸の割合が25モル%以上であれば、結晶性ポリエステル樹脂(A)やポリイミド樹脂(B)との相溶性が向上するだけでなく、ポリエステル樹脂(C)のガラス転移温度が向上し、ひいては本樹脂組成物、及び、本樹脂組成物から得られるポリエステル二軸延伸フィルムの耐熱性が向上する。
前記ポリエステル樹脂(C)のガラス転移温度は、40℃以上350℃以下である事が好ましく、50℃以上或いは340℃以下であるのがより好ましく、60℃以上330℃以下であるのが更に好ましく、70℃以上或いは320℃以下であるのが特に好ましく、80℃以上或いは310℃以下であるのがとりわけ好ましい。前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度がかかる範囲にあれば、耐熱性と成形性のバランスに優れる本樹脂組成物が得られる。
ここで、ガラス転移温度とは、JIS K7198Aに準じて、動的粘弾性の温度分散測定を用いて歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて測定される損失正接(tanδ)の主分散のピークで評価するものである。
前記ポリエステル樹脂(C)は、結晶性であっても非晶性であってもどちらでもよい。結晶性の場合、前記ポリエステル樹脂(C)の結晶融解温度は、200℃以上350℃以下であり、210℃以上或いは340℃以下であるのが好ましく、220℃以上或いは330℃以下であるのがより好ましく、230℃以上或いは320℃以下であるのが更に好ましく、240℃以上或いは310℃以下であるのが特に好ましく、250℃以上或いは300℃以下であるのがとりわけ好ましい。ポリエステル樹脂(C)の結晶融解温度がかかる範囲であれば、耐熱性と成形性のバランスに優れる本樹脂組成物が得られる。
ここで結晶融解温度とは、JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定するものである。
前記ポリエステル樹脂(C)が結晶性の場合、前記ポリエステル樹脂(C)の結晶融解熱量は、15J/g以上55J/g以下であるのが好ましく、20J/g以上或いは50J/g以下であるのがより好ましく、25J/g以上或いは45J/g以下であるのが更に好ましい。結晶融解熱量がかかる範囲であれば、ポリエステル樹脂(C)は十分な結晶性を有している為、耐熱性に優れ、かつ結晶性が高過ぎない為、成形性にも優れる。
ここで結晶融解熱量とは、JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定するものである。
以下、本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法(以下、「本樹脂組成物の製造方法」と称する)について説明するが、以下の説明は、本樹脂組成物を製造する方法の一例であり、本樹脂組成物はかかる製造方法により製造される本樹脂組成物に限定されるものではない。
なお、本樹脂組成物を構成する結晶性ポリエステル樹脂(A)、ポリエーテルイミド樹脂(B)及びポリエステル樹脂(C)は、それぞれがエステル交換反応またはエステル−イミド交換反応を生じているが、その全てが反応するわけではなく、一部のみが交換反応を生じている。交換反応によって生成した僅かな共重合体が相容化剤として機能し、相溶化していると考えられる。従って、交換反応を生じたとしても、それぞれの樹脂の結晶性や各種機械特性は維持され、本発明の効果を損ねることはない。
結晶性ポリエステル樹脂(A)とポリエーテルイミド樹脂(B)のみであってもエステル−イミド交換反応によってある程度の相溶系を示すものの、その程度は十分でなく、結晶性ポリエステル樹脂(A)、ポリエーテルイミド樹脂(B)両方共と相溶性の高いポリエステル樹脂(C)を追加で含む事により、更なる相溶性の向上が見られる。
更に、結晶性ポリエステル樹脂(A)、ポリエーテルイミド樹脂(B)、及び、ポリエステル樹脂(C)を均一に混合する為に、同方向二軸押出機を用いて溶融混練するのが好ましい。
混練温度は、用いる全ての樹脂のガラス転移温度以上であり、かつ結晶性樹脂に対しては、その樹脂の結晶融解温度以上である事が必要である。使用する樹脂のガラス転移温度や結晶融解温度に対して、なるべく混練温度が高い方が、樹脂の一部のエステル交換反応が生じやすく、相溶性が向上しやすいものの、必要以上に混練温度が高くなると樹脂の分解が起こる為好ましくない。この事から、混練温度は260℃以上350℃以下であり、270℃以上340℃以下が好ましく、280℃以上330℃以下がより好ましく、290℃以上320℃以下が特に好ましい。混練温度がかかる範囲であれば、樹脂の分解を生じる事なく、相溶性や成形性を向上させる事ができる。
以下に、本樹脂組成物からなるポリエステル系二軸延伸フィルム(以下「本フィルム」と称することがある)について記載する。上記の本樹脂組成物を、一般の成形法、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形、プレス成形等によって成形して二軸延伸フィルムを作製する事ができる。それぞれの成形方法において、装置および加工条件は特に限定されない。
本フィルムは例えば、以下の方法により製造する事が好ましい。
本フィルムの引張弾性率の値は、縦方向(MD)、横方向(TD)、共に1.0GPa以上、8.0GPa以下である事が好ましく、1.5GPa以上、7.5GPa以下である事がより好ましく、2.0GPa以上、7.0GPa以下である事が更に好ましく、2.5GPa以上、6.5GPa以下である事が特に好ましく、3.0GPa以上、6.0GPa以下である事がとりわけ好ましい。本発明の二軸延伸フィルムの引張弾性率の値がかかる範囲にあれば、フィルムとして使用するのに十分なコシと柔軟性を有する。
本フィルムの引張破断伸度の値は、縦方向(MD)、横方向(TD)、共に50%以上である事が好ましく、70%以上ある事がより好ましく、80%以上である事が更に好ましく、90%以上である事が特に好ましく、100%以上である事がとりわけ好ましい。本発明の二軸延伸フィルムの引張破断伸度の値がかかる範囲にあれば、フィルムとして使用するのに十分な靱性を有する。
本フィルムについて150℃で30分間熱処理した際の加熱収縮率は、縦方向(MD)、横方向(TD)、共に1%以下である事が好ましい。本発明の二軸延伸フィルムの加熱収縮率がかかる範囲にあれば、フィルムとして使用するのに十分な耐熱性を有する。
本フィルムのヘーズの値は、厚み50μmにおいて5%以下である事が好ましく、4%以下ある事がより好ましく、3%以下である事が更に好ましく、2%以下である事が特に好ましく、1%以下である事がとりわけ好ましい。本発明の二軸延伸フィルムのヘーズの値がかかる範囲にあれば、フィルムとして使用するのに十分な透明性を有する。なお、本発明におけるヘーズの値は、以下の式で計算する事ができる。
[ヘーズ]=([拡散透過率]/[全光線透過率])×100
Diamond DSC(パーキンエルマージャパン社製)を用いて、JIS K7121(2012年)に準じて、加熱速度10℃/分で示差走査熱量計(DSC)測定を用い、昇温過程における結晶融解温度Tmを測定した。
キャストフィルムについて測定した際、Tmの値が200℃以上のものを合格(○)、200℃未満のものを不合格(×)とした。
Diamond DSC(パーキンエルマージャパン社製)を用いて、JIS K7121(2012年)に準じて、加熱速度10℃/分で示差走査熱量計(DSC)測定を用い、昇温過程における結晶融解熱量ΔHmを測定した。
キャストフィルムについて測定した際、ΔHmの値が25J/g以上、55J/g以下のものを合格(○)、25J/g未満、または、55J/gを超えるものを不合格(×)とした。
粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティー計測制御株式会社製)を用い、JIS K7244(1999年)に準じて、歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分で動的粘弾性の温度分散測定を用い、損失正接(tanδ)の主分散のピーク温度を測定した。
キャストフィルムについて測定した際、主分散のピークが単一であり、かつその温度が40℃以上であるものを合格、ピークが2つ以上あるか、単一であってもその温度が40℃未満のものを不合格とした。
JIS K7127(1999年)に準じて、長さ400mm、幅10mm、厚み0.05mmの試験片を作製し、卓上型精密万能試験機「オートグラフ AGS−Xシリーズ」(島津製作所社製)を用いて測定した。
二軸延伸フィルムについて測定した際、試験片の縦方向(MD)及び横方向(TD)について、温度23℃、試験速度5mm/minの条件で測定した。引張弾性率が1.0〜8.0GPaの範囲内にあるものを合格とした。
JIS K7127(1999年)に準じて、長さ120mm、幅10mm、厚み0.05mmの試験片を作製し、卓上型精密万能試験機「オートグラフ AGS−Xシリーズ」(島津製作所社製)を用いて測定した。
二軸延伸フィルムについて測定した際、試験片の縦方向(MD)及び横方向(TD)について、温度23℃ 、試験速度200mm/分の条件で測定した。引張破断強度が5〜50MPaの範囲内、引張破断伸度が50%以上であるものを合格とした。
熱処理オーブンベーキング試験装置(株式会社大栄科学製作所製)を用いて二軸延伸フィルムを150℃で30分間加熱し、加熱後の収縮率を縦方向(MD)と横方向(TD)について測定した。
二軸延伸フィルムについて測定した際、MDとTDの収縮率がそれぞれ1%以下のものを合格(○)、1%を超えるものを不合格(×)とした。
ヘーズメーターNDH−5000(日本電色工業社製)を用いて、JIS K7136(2000年)に基づいて、全光線透過率および拡散透過率を測定し、ヘーズを以下の式で算出した。
二軸延伸フィルムについて測定した際、厚み50μmでのヘーズが5%以下であるものを合格(○)、5%を超えるものを不合格(×)とした。
[ヘーズ]=([拡散透過率]/[全光線透過率])×100
(A)−1:ノバペックス GG900D
(三菱化学社製、酸成分:テレフタル酸=100モル%、ジオール成分:エチレングリコール/ジエチレングリコール=97.5/2.5モル%、Tm=252℃、ΔHm=36J/g、Tg=90℃)
(三菱化学社製、酸成分:テレフタル酸/イソフタル酸=98.5/1.5モル%、ジオール成分:エチレングリコール/ジエチレングリコール=97.9/2.1モル%、Tm=248℃、ΔHm=35J/g、Tg=90℃)
(B)−1:Ultem 1010
(サビックイノベーティブプラスチックス社製、ポリエーテルイミド:式(14)の構造を有するポリエーテルイミド、MFR(337℃、6.6kg)=17.8g/10min、Tg=232℃)
(サビックイノベーティブプラスチックス社製、式(14)の構造のポリエーテルイミド:、MFR(337℃、6.6kg)=9g/10min、Tg=232℃)
(C)−1:TEONEX TN8065S
(帝人化成社製、酸成分:2,6−ナフタレンジカルボン酸=100モル%、ジオール成分:エチレングリコール=100モル%、Tm=253℃、ΔHm=34J/g、Tg=136℃)
(三菱ガス化学社製、酸成分:テレフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸=51.8/48.2モル%、ジオール成分:エチレングリコール/ジエチレングリコール/スピログリコール=51.2/2.9/45.9モル%、非晶性、Tg=134℃)
(三菱ガス化学社製、酸成分:テレフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸=53.5/46.5モル%、ジオール成分:エチレングリコール/ジエチレングリコール/スピログリコール=67.8/3.4/28.8モル%、非晶性、Tg=126℃)
(三菱ガス化学社製、酸成分:テレフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸=74.8/25.2モル%、ジオール成分:エチレングリコール/ジエチレングリコール/スピログリコール=79.6/5.4/15モル%、非晶性、Tg=110℃)
(三菱ガス化学社製、酸成分:テレフタル酸=100モル%、ジオール成分:エチレングリコール/ジエチレングリコール/スピログリコール=51.5/5.4/43.1モル%、非晶性、Tg=120℃)
(A)−1と(B)−1、(C)−1を混合質量比が100:25:5となるように300℃に設定したΦ25mm二軸押出機にて溶融混練し、Tダイ内からフィルムとして押出し、20℃のキャストロールに密着急冷し、厚み450μmのキャストフィルムを得た。このキャストフィルムについて、結晶融解温度(Tm)、結晶融解熱量(ΔHm)、ガラス転移温度(Tg)の評価を行った。
続いて、得られたキャストフィルムを立て遠心機に通し、110度で縦方向(MD)に3倍延伸を行った。続いて、得られた縦延伸フィルムを横延伸機(テンター)に通し、予熱温度100℃、延伸温度120℃、熱固定温度230℃で横方向(TD)に3倍延伸を行った。得られた二軸延伸フィルムについて、引張弾性率、引張破断伸度、加熱収縮率、ヘーズの測定を行った。結果を表1に示す。
(C)−1の代わりに(C)−2を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(C)−1の代わりに(C)−3を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(C)−1の代わりに(C)−4を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(A)−1の代わりに(A)−2を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(A)−1と(B)−1、(C)−1を混合質量比100:10:5となるように使用し、縦延伸の温度を98℃、横延伸の予熱温度を90℃、延伸温度を108℃とした以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(A)−1と(B)−1、(C)−1を混合質量比100:40:5となるように使用し、縦延伸の温度を122℃、横延伸の予熱温度を110℃、延伸温度を132℃とした以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(B)−1の代わりに(B)−2を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(A)−1と(B)−1、(C)−1を混合質量比100:25:1となるように使用した以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(A)−1と(B)−1、(C)−1を混合質量比100:25:10となるように使用した以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(A)−1を単体で使用した以外は実施例1と同様にサンプルの作製及び評価を行った。結果を表2に示す。
(A)−1と(B)−1を混合質量比100:25となるように使用した以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表2に示す。
(A)−1と(B)−1、(C)−1を混合質量比100:65:5となるように使用し、縦延伸の温度を134℃、横延伸の予熱温度を120℃、延伸温度を144℃とした以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表2に示す。
(A)−1と(B)−1、(C)−1を混合質量比100:25:25となるように使用した以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表2に示す。
(C)−1の代わりに(C)−5を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表2に示す。
実施例6及び7はポリエーテルイミド樹脂(B)の配合割合を変えている。実施例1と同様に、結晶性と、ポリエーテルイミド樹脂(B)添加に伴うTg向上効果のバランスに優れ、該フィルムは透明性と機械特性、耐熱性に優れる事が分かる。
実施例8では、ポリエーテルイミド樹脂(B)として高粘度のポリエーテルイミドを使用している。実施例1と比較すると結晶性ポリエステル樹脂(A)との粘度差が大きい為、ポリエーテルイミド樹脂(B)の分散径が大きくなり、透明性が若干低下しているものの、該フィルムは透明性と機械特性、耐熱性に優れる事が分かる。
実施例10では、ポリエステル樹脂(C)の配合割合を10質量部としている。実施例1と比較して非晶成分の割合が大きくなった事で結晶性が低下し、耐熱性が若干低下しているものの、該フィルムは透明性と機械特性、耐熱性に優れる事が分かる。
比較例2では、結晶性ポリエステル樹脂(A)とポリエーテルイミド樹脂(B)の混合物に対して、ポリエステル樹脂(C)を添加していない。その為、相溶性が悪く、ガラス転移温度のピークが2つ検出されている上、透明性も悪い。
比較例3では、結晶性ポリエステル樹脂(A)とポリエーテルイミド樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)を、それぞれ100:65:5の質量割合で配合している。非晶成分であるポリエーテルイミド樹脂(B)の配合割合が多い為、ガラス転移温度は向上するものの、ΔHmの値が低い事からも分かるように結晶性が低下し、耐熱性が悪い。
比較例4では、結晶性ポリエステル樹脂(A)とポリエーテルイミド樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)を、それぞれ100:25:25の質量割合で配合している。非晶成分であるポリエステル樹脂(C)の配合割合が多い為、ΔHmの値が低い事からも分かるように結晶性が低下し、耐熱性が悪い。
比較例5では、ポリエステル樹脂(C)として、酸成分に2,6−ナフタレンジカルボン酸を含まない(C)−5を使用している。(C)−5は、好適に使用できる(C)−2と比較してジオール成分の組成は類似しているものの、酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸を含まない為、結晶性ポリエステル樹脂(A)とポリイミド樹脂(B)の混合物に対しての相容化剤としての効果が低く、結果として、得られた樹脂組成物のガラス転移温度のピークが2つになる上、透明性が悪い。
Claims (7)
- 酸成分(a−1)としてテレフタル酸単位を80モル%以上含む結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、結晶性ポリエステル樹脂(A)よりもガラス転移温度が高いポリエーテルイミド樹脂(B)を1質量部以上50質量部以下、及び、酸成分(c−1)として2,6−ナフタレンジカルボン酸単位を25モル%以上含むポリエステル樹脂(C)を1質量部以上20質量部以下含む、ポリエステル樹脂組成物。
- 単一のガラス転移温度を有する請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
- 前記結晶性ポリエステル樹脂(A)がジオール成分(a−2)としてエチレングリコールを50モル%以上含む請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル系二軸延伸フィルム。
- 150℃で30分間熱処理した際の収縮率が縦方向、横方向、共に1%以下である請求項5に記載のポリエステル系二軸延伸フィルム。
- 酸成分(a−1)としてテレフタル酸単位を80モル%以上含む結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、結晶性ポリエステル樹脂(A)よりもガラス転移温度が高いポリエーテルイミド樹脂(B)を1質量部以上50質量部以下、及び、酸成分(c−1)として2,6−ナフタレンジカルボン酸単位を25モル%以上含むポリエステル樹脂(C)を1質量部以上20質量部以下で、260℃以上350℃以下で溶融混練してなるポリエステル樹脂組成物の製造方法。
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JP2016218901A JP2018076430A (ja) | 2016-11-09 | 2016-11-09 | ポリエステル樹脂組成物 |
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CN112714931A (zh) * | 2018-09-21 | 2021-04-27 | 三菱化学株式会社 | 折叠式显示器 |
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2016
- 2016-11-09 JP JP2016218901A patent/JP2018076430A/ja active Pending
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