JP2022091051A - 樹脂組成物および成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境負荷を低減すると共に、透明性と耐熱性、機械強度を兼備した樹脂組成物およびその成形品を提供する。【解決手段】耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)20質量%以上99質量%以下と、バイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)1質量%以上80質量%以下とを含む樹脂組成物であって、前記耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)が、スチレン系単量体(a)を主たる単量体としてなり、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸の群から選ばれる少なくとも1種の単量体(b)を含む共重合体であり、厚み250μmの場合のヘーズが10.0%以下であることを特徴とする樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物および成形品に関する。
プラスチック成形品は、食品、飲料、医薬・医療品、化学品、化粧品、トイレタリー、工業用品に至るまで、様々な用途に使用されている。一方で、近年、プラスチックの廃棄や海洋汚染が世界的な社会問題となっている。そのため、従来廃棄されていたプラスチック製品や包装資材を新たな資源として捉え、廃棄物を出すことなく資源を循環させるサーキュラーエコノミーや、石油由来原料ではなくバイオマス由来原料を用いたプラスチックの利用による環境負荷の低減が重要な関心事となっている。
製品の端材をリサイクルし、新たな製品を生み出す観点では、ポリスチレン系樹脂を用いた分野で進んでいる。例えば、ポリスチレン系樹脂の容器などの成形においては、シートを所定の形状に成形した後、打ち抜かれて製品となる。一方、打ち抜かれた残りの部分(スケルトン)は、リサイクルして再利用するために粉砕され、バージンペレットなどに混合され、再度、溶融押出してシート化される。
また、バイオマス由来原料を用いたプラスチックとしては、ポリ乳酸やバイオポリエチレンが様々な用途で使用されており、バイオマス原料を含む製品に表示されるマークなどの効果もあり、一般消費者にもバイオマス由来原料を用いたプラスチックは浸透しており、購買決定の1つの指標となりつつある。
そうした中、ポリスチレン系樹脂をバイオマス由来原料を用いて重合し、環境を配慮した試みを実施しようとしても、好適な出発原料が少ないことや、モノマー合成プロセスが十分に確立されていないのが現状である。
例えば、特許文献1では、熱可塑性樹脂とポリトリメチレンテレフタレートからなる組成物が開示されており、熱可塑性樹脂としてポリスチレン系樹脂が例示されている。
特許文献2では、スチレン系樹脂と芳香族ポリエステルからなる摺動部品が開示されており、スチレン系樹脂として不飽和ニトリル系単量体を含む共重合体が例示されている。
特許文献3では、非晶性樹脂と結晶性樹脂を含む成形品が開示されており、非晶性樹脂として不飽和ニトリル系単量体を含むスチレン系樹脂が例示されている。
しかしながら、これらの技術文献には、スチレン系樹脂とポリトリメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂を含有した樹脂組成物が開示されているものの、これらは例えば、自動車外装・外板部品、自動車内装部品、自動車アンダーフード部品、二輪車用部品、家具用部品、OA機器分野用品、電子電器用部品、工業用部品や、歯車、カム、スライダー、レバー、クラッチ等の機構部品、ディスクドライブ、ガイド、シャーシ、トレー、側板等の内部部品等の、各種摺動部品などの工業部材への利用を想定した技術であり、透明性のないものであった。
また、ポリスチレン系樹脂を用いた成形品としては、従来から透明容器や蓋などの包装材に多用されており、近年は、コンビニエンスストアなどの業務用に使用する高出力の電子レンジの普及や、チルド弁当のような電子レンジを調理器具として用いた商品展開に合わせ、電子レンジ加熱を行ってもシート成形品が変形し難い耐熱性や機械強度が求められるようになってきているが、食品包装容器や蓋材用としての仕様には、依然として、基本的物性として強く透明性が要望されている。
特開2003-020389号公報 特開2009-256441号公報 特開2011-245725号公報
上記実情を鑑みて、本発明の課題は、環境負荷を低減すると共に、透明性と耐熱性、機械強度を兼備した樹脂組成物およびその成形品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、耐熱性ポリスチレン系樹脂と、バイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂とを特定の組成比で含むこと、及び、耐熱性ポリスチレン系樹脂を構成する単量体種を選択することにより、上記従来技術の課題を解決し得る樹脂組成物およびその成形品を得ることに成功し、以下の本発明を完成するに至った。
第1の本発明は、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)20質量%以上99質量%以下と、バイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)1質量%以上80質量%以下とを含む樹脂組成物であって、前記耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)が、スチレン系単量体(a)を主たる単量体としてなり、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸の群から選ばれる少なくとも1種の単量体(b)を含む共重合体であり、厚み250μmの場合のヘーズが10.0%以下であることを特徴とする樹脂組成物である。
第1の本発明において、前記単量体(b)が(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
第1の本発明において、前記耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)が、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸の群から選ばれる1種の単量体(c)を含む共重合体であることが好ましい。
第1の本発明において、前記耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)の組成比が、前記スチレン系単量体(a)と前記単量体(b)の合計を100質量%とした場合に、(a)が60~99質量%、(b)が1~40質量%であることが好ましい。
第1の本発明において、前記耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)の組成比が、前記スチレン系単量体(a)と前記単量体(b)と前記単量体(c)の合計を100質量%とした場合に、(a)が60~98質量%、(b)が1~20質量%、(c)が1~20質量%であることが好ましい。
第1の本発明において、前記バイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)が、バイオマス由来のジオール残基と、テレフタル酸残基とを含むことが好ましい。
第1の本発明において、前記バイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)が、ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂であることが好ましい。
第2の本発明は、第1の本発明の樹脂組成物を含む成形品である。
第3の本発明は、第1の本発明の樹脂組成物を含む層を少なくとも1層有するフィルム状物である成形品である。
第3の本発明は、延伸フィルムであることが好ましい。
本発明によれば、環境負荷を低減すると共に、透明性と耐熱性、機械強度とを併せ持つ樹脂組成物を得ることができるため、様々な成形品やフィルム状物などに用いることで、それらは、食品用包装材料、飲料用包装材料、医薬・医療用包装材料、化学品用包装材料、化粧品用包装材料、トイレタリー用包装材料、工業用包装材料、農業資材用包装材料等に好適に利用することができる。
以下、本発明の実施形態の一例としての本発明の樹脂組成物、成形品について説明する。ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「主成分」とは、構成する成分の合計を100質量%としたとき、もっとも多い質量%を占める成分であることを示し、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意とともに、「好ましくはXより大きい」および「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
本明細書における数値範囲の上限値および下限値は、本発明が特定する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含するものとする。
また、本明細書において、「フィルム状物」とは、厚いシートから薄いフィルムまでを包括した意を有する。
「少なくとも1方向」とは、フィルム状物の製造工程において、押出機からの流れ方向を縦方向(MD)、その直交方向を横方向(TD)としたとき、縦方向と横方向のいずれかまたは両方向を意味する。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)20質量%以上99質量%以下と、バイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)1質量%以上80質量%以下とを含む樹脂組成物である。
(耐熱性ポリスチレン系樹脂(A))
本発明における耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)は、スチレン系単量体(a)を主たる単量体としてなり、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸の群から選ばれる少なくとも1種の単量体(b)を含む。なお、本明細書において、重合体が単量体を含む、とは、該単量体の残基を重合体の構成単位として含むことを意味する。
本発明に用いる耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)の共重合形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれの共重合形態であってもよい。
また、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)は、線状ポリスチレン系樹脂であってもよく、多分岐状ポリスチレン系樹脂であってもよい。本発明に用いる前記耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)は1種類であってもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
スチレン系単量体(a)としては、スチレン及びその誘導体が挙げられる。例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン等のアルキルスチレン、フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン等のハロゲン化スチレン、ニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン等が挙げられる。中でも、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)と後述するバイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)との相溶性の観点から、スチレン、α-メチルスチレンを用いることが好ましい。
また、スチレン系単量体(a)と共重合する単量体の例としては、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリルや、ブタジエン、イソプレン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等の共役ジエン系炭化水素、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィン等が挙げられる。
中でも、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)の耐熱性向上の観点、及びポリエステル系樹脂(B)のエステル結合との親和性を向上させ樹脂組成物に透明性を付与する観点から、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸の群から選ばれる少なくとも1種の単量体を含む共重合体であることが好ましく、特に(メタ)アクリル酸を用いることが好ましい。
耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)の好ましい共重合組成は、スチレン系単量体(a)を主たる単量体としてなり、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸の群から選ばれる少なくとも1種の単量体(b)を含む共重合体であり、単量体(b)が(メタ)アクリル酸であることがより好ましい。さらに、スチレン系単量体(a)を主たる単量体としてなり、(メタ)アクリル酸単量体(b)と、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸の群から選ばれる1種の単量体(c)とを含む共重合体であることが好ましい。
ここで、「(a)と異なる種類のスチレン系単量体」とは、例えば、スチレン系単量体(a)としてスチレンを用いている場合は、該スチレン以外のスチレン系単量体をいい、例えば、α-メチルスチレン、ジメチルスチレン等をいう。
また、(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5-テトラヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸エチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸フェニルアミノエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
中でも、本発明の樹脂組成物を成形する際、脱水反応に伴う外観不良や機械強度低下を抑制する観点から、(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチルを用いることが好ましい。
前記耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)の共重合組成比は、単量体(a)と単量体(b)との合計を100質量%とした場合、(a)60~99質量%、(b)1~40質量%が好ましい。
前記耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)の共重合組成比は、単量体(a)と単量体(b)と単量体(c)の合計を100質量%とした場合、(a)60~98質量%、(b)1~20質量%、(c)1~20質量%が好ましい。
スチレン系単量体(a)の共重合組成比は、前記(a)と前記(b)の合計を100質量%として、60~99質量%が好ましく、67~98質量%がより好ましく、74~97質量%がさらに好ましく、78~97質量%が最も好ましい。また、前記耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)が、単量体(c)をさらに含む共重合体である場合、単量体(a)と単量体(b)と単量体(c)の合計を100質量%として、スチレン系単量体(a)の共重合組成比は、60~98質量%が好ましく、67~96質量%がより好ましく、74~94質量%がさらに好ましく、78~92質量%が最も好ましい。
スチレン系単量体(a)の共重合組成比が60質量%以上であると、後述するバイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)との相溶性の点で好ましい。
また、スチレン系単量体(a)の共重合組成比が99質量%以下や、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)が前記単量体(c)をさらに含む共重合体の場合98質量%以下であると、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)の耐熱性を向上させやすい。
単量体(b)の共重合組成比は、単量体(a)と単量体(b)の合計を100質量%とした場合に、1~40質量%が好ましく、2~33質量%がより好ましく、3~26質量%がさらに好ましく、3~22質量%が最も好ましい。
また、前記耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)が、前記単量体(c)をさらに含む共重合体である場合、前記(a)と前記(b)と前記(c)の合計を100質量%として、単量体(b)の共重合組成比は、1~20質量%が好ましく、2~17質量%がより好ましく、3~15質量%が更に好ましい。
単量体(b)を1質量%以上含有すると、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)の耐熱性を向上させやすい。また、単量体(b)の含有量が40質量%以下や、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)が単量体(c)をさらに含む共重合体である場合は単量体(b)の含有量が20質量%以下であると、樹脂組成物中のゲル化物の増加が抑制され、外観が良好となる。また、成形品(例えば、フィルム状物)の機械強度の低下が起き難い。
耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)が単量体(c)をさらに含む共重合体である場合、単量体(c)の含有量は、1~20質量%であることが好ましく、2~15質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることが更に好ましい。
単量体(c)の含有量が20質量%以下であると、樹脂組成物の吸水が抑制され、成形時において発泡等が生じ難い。
耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸の脱水反応によるゲル化反応を抑制するために、本発明の樹脂組成物中に、炭素数14以上の脂肪族第1級アルコールを含有することが好ましい。中でも、凝固点が-10℃以下のイソ型の脂肪族第1級アルコールが特に好ましい。
前記脂肪族第1級アルコールの含有量は、本発明の樹脂組成物中において、該樹脂組成物全体を100質量%として、0.02~1.0質量%であることが好ましい。
前記炭素数14以上の脂肪族第1級アルコールとしては、n-ミリスリルアルコール、n-パルミチルアルコール、n-ステアリルアルコール等が挙げられる。更に、凝固点が-10℃以下のイソ型の脂肪族第1級アルコールとしては、炭素数14のイソテトラデカノール、炭素数16のイソヘキサデカノール、炭素数18のイソオクタデカノール、及び炭素数20のイソエイコサノールが挙げられ、中でも、炭素数18のイソオクタデカノールが好ましい。
具体的には、例えば、7-メチル-2-(3-メチルブチル)-1-オクタノール、5-メチル-2-(1-メチルブチル)-1-オクタノール、5-メチル-2-(3-メチルブチル)-1-オクタノール、2-ヘキシル-1-デカノール、5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-1-オクタノール、8-メチル-2-(4-メチルヘキシル)-1-デカノール、2-ヘプチル-1-ウンデカノール、2-ヘプチル-4-メチル-1-デカノール、2-(1,5-ジメチルヘキシル)-(5,9-ジメチル)-1-デカノールが例示できる。
耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)のガラス転移温度は、102~140℃が好ましく、103~135℃がより好ましい。またはビカット軟化点温度は101~140℃が好ましく、102~135℃がより好ましい。ガラス転移温度及び/又はビカット軟化点温度が高いほど、本発明の樹脂組成物の耐熱性が高まり好ましい。
また、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)の測定温度200℃、測定荷重5kgfにおけるメルトフローレート(MFR)が0.1g/10min以上であることが好ましい。好ましくは0.3g/10min以上、より好ましくは0.5g/10min以上である。耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)のMFRの上限は、特に限定はないが、一般に30g/10min以下である。
耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)のMFRが0.1g/10min以上である場合、後述するバイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)との混合において、相溶性が向上し、良好な透明性や機械強度を有する成形品やフィルム状物が得られるため好ましい。
(バイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B))
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(B)は、バイオマス由来の残基を含み、かつ、主鎖にエステル結合を有する樹脂であれば、特にその種類を限定するものではない。
バイオマス由来の残基を含むとは、例えばジカルボン酸とジオールが反応してなるポリエステル系樹脂において、ジカルボン酸及び/又はジオールがバイオマス由来であり、ポリエステル系樹脂の分子鎖中にその基が含まれることを云う。環境負荷低減の観点から、バイオベース度10%以上のものが好ましく、15%以上のものがより好ましい。バイオマスとしては、特に制限はなく、植物由来、動物由来の何れでもよく、例えば、トウモロコシ、サトウキビ、木材、植物油などが挙げられる。
なお、本発明におけるバイオベース度は、ISO 16620-2:2015に準拠した、バイオマス由来の残基に含まれる放射性炭素C14の量を加速器質量分析により測定し、全炭素中のC14の割合を算出するバイオベース炭素含有率にて定義された値である。
バイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)としては、バイオマス由来のジカルボン酸残基、及び/または、バイオマス由来のジオール残基から誘導されるポリエステル系樹脂などが挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンフラノエート、ポリトレメチレンフラノエート等を挙げることができる。
また、ポリ乳酸、ポリ-ε-カプロラクタム等のカルボン酸残基とアルコール残基とを1分子中に持つバイオマス由来のモノマーを重合したポリエステル樹脂、およびこれらの共重合体等を挙げることができる。これらのポリエステル系樹脂(B)は、1種を単独で使用してもよく、または2種以上のポリエステル系樹脂(B)を混合して使用していてもよい。
また、ポリエステル系樹脂(B)が2種類以上で構成される場合、その合計がポリエステル系樹脂(B)の質量となり、本発明の樹脂組成物中におけるポリエステル系樹脂(B)の質量比率が算出される。
ジカルボン酸残基としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フランジカルボン酸、2-クロロテレフタル酸、2,5-ジクロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、4,4-スチルベンジカルボン酸、4,4-ビフェニルジカルボン酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4-ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-Naスルホイソフタル酸、エチレン-ビス-p-安息香酸等の芳香族ジカルボン酸残基、ダイマー酸、水添ダイマー酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸残基、またはそれらのエステル誘導体から誘導される残基が挙げられる。これらのジカルボン酸残基は、1種を単独で、または2種以上を含有していてもよい。なかでも、セバシン酸、コハク酸、グルタン酸、フランジカルボン酸、テレフタル酸残基を含むことが好ましく、テレフタル酸残基を含むことがより好ましい。
また、ジオール残基としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、イソソルビド等が挙げられる。これらのジオール残基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、エチレングリコール残基、1,3-プロパンジオール残基、イソソルビド残基を含むことが好ましく、1,3-プロパンジオール残基を含むことがより好ましい。
また、ポリエステル系樹脂(B)としては、共重合ポリエステル系樹脂であってもよい。すなわち、上記ポリエステル系樹脂(B)の重合成分であるジカルボン酸残基、およびジオール残基の少なくとも一方が、2種以上の残基からなる混合物であってもよい。
なお、ポリエステル系樹脂(B)を構成する全ジカルボン酸残基100モル%に対して、最も多いモル%を占めるジカルボン酸残基を第1ジカルボン酸残基とする。以下、モル%の多い順に第2ジカルボン酸残基、第3ジカルボン酸残基、・・・とする。(以下、これらを纏めて、第2以下ジカルボン酸残基と称す。)
また、ポリエステル系樹脂(B)を構成する全ジオール残基も同様に、全ジオール残基100モル%に対して、最も多いモル%を占めるジオール残基を第1ジオール残基とする。以下、モル%の多い順に第2ジオール残基、第3ジオール残基、・・・とする。(以下、これらを纏めて、第2以下ジオール残基と称す。)
本発明において、ポリエステル系樹脂(B)は、第1ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基を含むことが好ましい。また、第2以下ジカルボン酸残基を有する場合、第2以下ジカルボン酸残基としては、例えば、イソフタル酸、フランジカルボン酸、2-クロロテレフタル酸、2,5-ジクロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、4,4-スチルベンジカルボン酸、4,4-ビフェニルジカルボン酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4-ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-Naスルホイソフタル酸、エチレン-ビス-p-安息香酸等の芳香族ジカルボン酸残基、ダイマー酸、水添ダイマー酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸残基、またはそれらのエステル誘導体から誘導される残基が挙げられる。
第2以下ジカルボン酸残基の合計含有量は、全ジカルボン酸残基100モル%に対して、0モル%以上40モル%以下であることが好ましく、0モル%以上35モル%以下であることがより好ましい。第2以下ジカルボン酸残基の合計含有率が上記数値以下であれば、ポリエステル系樹脂(B)の耐熱性を阻害しにくい傾向がある。
また、本発明において、ポリエステル系樹脂(B)は、第1ジオール残基としてエチレングリコール残基、1,3-プロパンジオール残基、イソソルビド残基を含むことが好ましく、第1ジオール残基として1,3-プロパンジオール残基を含むことがより好ましい。
また、ポリエステル系樹脂(B)が、第2以下ジオール残基を有する場合、例えば、エチレングリコール(他が第1ジオール残基の場合)、1,3-プロパンジオール(他が第1ジオール残基の場合)、イソソルビド(他が第1ジオール残基の場合)、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールなどが挙げられる。
第2以下ジオール残基の合計含有率は、全ジオール残基100モル%に対して、0モル%以上45モル%以下であることが好ましく、0モル%以上40モル%以下であることがより好ましい。第2以下ジオール残基の合計含有率が上記数値以下であれば、ポリエステル系樹脂(B)の耐熱性や耐薬品性を阻害しにくい傾向がある。
中でも、ポリエステル系樹脂(B)は、第1ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基を含み、第1ジオール残基として1,3-プロパンジオール残基を含むポリトリメチレンテレフタレート系樹脂が好ましい。
また、ポリエステル系樹脂(B)を構成するジカルボン酸残基、及び/または、ジオール残基が、バイオマス由来の残基を含むことが重要である。バイオマス由来の残基としては、第1ジカルボン酸残基として好適に用いられるテレフタル酸残基、及び/または、第1ジオール残基として好適に用いられるエチレングリコール残基、1,3-プロパンジオール残基、イソソルビド残基が好ましい。第1ジオール残基がバイオマス由来であることがより好ましく、ポリエステル系樹脂(B)の耐熱性や耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)との相溶性の点で、バイオマス由来の残基が1,3-プロパンジオール残基であることが好ましい。
ポリエステル系樹脂(B)がバイオマス由来の残基を含むことにより、樹脂組成物の透明性や耐熱性、剛性といった諸物性を維持するとともに、石油由来原料の資源利用を削減することができる。
ポリエステル系樹脂(B)の重量平均分子量Mwは、40,000以上400,000以下が好ましく、50,000以上300,000以下がより好ましく、60,000以上200,000以下がさらに好ましい。また、前記ポリエステル系樹脂(B)の数平均分子量Mnは、5,000以上200,000以下が好ましく、10,000以上150,000以下がより好ましく、20,000以上100,000以下がさらに好ましい。また、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn値)は、成形加工性の観点から、1.0以上が好ましく、機械的物性の観点から、5.5以下が好ましく、より好ましくは1.3~4.5、更に好ましくは1.6~4.0である。なお、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、JIS K7252-1:2016に準拠し、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定による、ポリスチレン換算分子量から得られる。
ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度や融点は、構成する残基の組成や比率に応じて決定され得るものであるが、ポリエステル系樹脂(B)が結晶性樹脂である場合、そのガラス転移温度は30℃以上140℃以下であることが好ましく、融点は、180℃以上270℃以下が好ましく、200℃以上260℃以下であることがより好ましい。ポリエステル系樹脂(B)が結晶性樹脂である場合、ガラス転移温度が30℃以上であれば、結晶化速度を適度に抑制できるため、成形時の急激な結晶化進行による成形品の透明性低下を抑制することができるため好ましい。また、ガラス転移温度が140℃以下であれば、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)と近いガラス転移温度を有するため、得られる樹脂組成物の耐熱性を維持することができるため好ましい。また、融点が180℃以上であれば、樹脂組成物に耐熱性を付与することができるため好ましい。また、融点が270℃以下であれば、前記耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)との溶融成形が容易となるため好ましい。
また、ポリエステル系樹脂(B)が非晶性樹脂である場合、前記ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度60℃以上160℃以下であることが好ましい。ポリエステル系樹脂(B)が非晶性樹脂である場合、ガラス転移温度が60℃以上であれば、得られる樹脂組成物のガラス転移温度の低下を抑制し耐熱性を維持できるため好ましい。また、ガラス転移温度が160℃以下であれば、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)との溶融成形が容易となり、さらに、耐熱性を向上できるため好ましい。
ガラス転移温度、および融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、樹脂約10mgを加熱速度10℃/分で0℃~280℃まで昇温し、280℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で0℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で280℃まで再昇温したときに測定されたサーモグラムプロファイルにおいて、ガラス転移温度は、再昇温時のベースラインシフト部の中間温度(℃)であり、融点は、再昇温時の結晶融解ピーク温度(Tm)(℃)である。また、前述または後述する樹脂のガラス転移温度や融点についても同様に測定したときの値である。
ポリエステル系樹脂(B)の還元粘度は、機械物性の観点から、0.50dL/g以上であることが好ましく、成形加工性の観点から1.70dL/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.60~1.60dL/gであり、更に好ましくは0.70~1.50dL/gである。なお、還元粘度は、JIS K7367-1:2002に準拠し、0.5g/dLのクロロホルム溶液を用いて、温度30℃の条件下、ウベローデ型粘度管を用いて測定することができる。
ポリエステル系樹脂(B)の還元粘度が上記範囲であると、メルトフローレート(MFR)0.1~30g/10minの耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)との溶融混練において、相溶性が向上し、良好な透明性や機械強度を有する成形品やフィルム状物が得られるため好ましい。
(樹脂組成物の組成)
本発明の樹脂組成物は、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)と、バイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)との相溶性を向上させた点が重要となる。相溶性を向上させることにより、樹脂組成物に透明性や耐熱性を付与することができる。
スチレン単独重合体は高い透明性を示す非晶性樹脂であるが、無極性であるため、エステル結合を有するポリエステル系樹脂との溶融混合において、相溶せず、混合樹脂組成物中に大きなドメイン径を有する海島構造を形成し、透明性が著しく低下する。
本発明では、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)が、前記(a)とは異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、(メア)アクリル酸エステル、無水マレイン酸の群から選ばれる少なくとも1種の単量体(b)を含む共重合体とすることにより、エステル結合との親和性を向上させることが可能となり、得られる樹脂組成物に透明性を付与することができる。
また、スチレン単独重合体や耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)は、非晶性樹脂であるため、油などの浸透によりクラックが生じたり、ガラス転移温度を超えた温度で、変形が生じたりする。しかしながら、本発明の樹脂組成物は、バイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)を含むため、耐熱性や耐油性を付与することができる。また、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)との相溶性や、透明性、耐熱性、耐油性をさらに高めるために、バイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)は、バイオマス由来のジオール残基と、テレフタル酸残基とを含むことが好ましく、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)が熱分解しにくい温度で溶融加工できる観点から、バイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)が、ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂であることがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物は、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)20質量%以上99質量%以下と、バイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)1質量%以上80質量%以下とを含む樹脂組成物である。耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)とバイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)の合計を100質量%とする場合に、両者の含有比(A):(B)は、(20~99):(1~80)質量%が好ましく、(30~95):(5~70)質量%がより好ましい。耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)が20質量%以上で、ポリエステル系樹脂(B)が80質量%以下であると剛性の維持の点で好ましく、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)が99質量%以下で、ポリエステル系樹脂(B)1質量%以上であると、耐熱性の向上の点で好ましい。
本発明の樹脂組成物は、バイオマス由来のポリエステル系樹脂(B)を含有することにより、バイオベース度1~80%になり、石油由来原料のポリエステル系樹脂を用いる場合に比べ環境負荷を低減でき好ましく、樹脂組成物のバイオベース度は3~80%がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)を用い、さらにポリエステル系樹脂(B)を含有し、両者の相溶性も良いことから、良好な耐熱性が得られる。耐熱性としては、各種用途において求められる耐熱性を満たせばよく、特に限定されないが、例えばガラス転移温度としては102~140℃が好ましく、103~135℃がより好ましい。ビカット軟化点温度としては101~140℃が好ましく、102~135℃がより好ましく、一般にガラス転移温度が向上すればビカット軟化点温度も向上する。
本発明の樹脂組成物の透明性は、厚み250μmの場合にヘーズ10.0%以下である。8.0%以下が好ましく、5.0%以下がより好ましく、値が低いほど透明性が良好であり、包装材に用いた場合に内容物の視認性が高まったり見栄えが良くなったりして商品価値が高まる点から好ましい。
(その他の成分)
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的に影響を及ぼさない範囲で、耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)、ポリエステル系樹脂(B)以外の他の樹脂を含有してもよい。
他の樹脂としては、前記(A)とは異なるポリスチレン系樹脂(例えばポリスチレン単独重合体)、前記(B)とは異なるポリエステル系樹脂(例えば、石油由来の残基からなるポリエステル系樹脂)、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンビニルアルコール系共重合体、エチレン酢酸ビニル系共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、 ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
また、樹脂組成物には、熱可塑性エラストマーが含有されていてもよく、含有し得る熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマーや、アクリル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、アイオノマー、および、これらのブレンドやアロイ、変性物、動的架橋物、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体、コアシェル型多層構造ゴム等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
また、本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤を適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および成形品(例えば、フィルム状物)の諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳等のトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂や、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤等の添加剤が挙げられる。フィルム状物の延伸加工時の白化を抑制するために、結晶核剤の添加も可能である。
また、これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
<成形品>
本発明の樹脂組成物の用途としては特に限定されるものではないが、耐熱性、透明性、機械強度に優れる観点より、様々な成形品に加工して用いることができる。
そのため、本発明の第2の形態としては、本発明の樹脂組成物を主成分としてなる成形品である。
成型品としては、例えば、本発明の樹脂組成物を射出成形してなる成形品や、後述のフィルム状物に押出成形してなる成形品、フィルム状物を熱板圧空真空成形法(直接加熱方式)又は圧空成形法、真空圧空成形法(間接加熱方式)で二次成形してなる成形品などが挙げられる。フィルム状物からなる二次成形品としては、例えば、生鮮、乾物、菓子などの食品を収納する箱型容器本体、蓋付容器、コップ、盆、皿等の蓋なし容器、蓋などといった容器等の食品包装材等が挙げられ、本発明の樹脂組成物を含む成型品は、これらの用途において好適に用いることができる。
(フィルム状物、その製造方法)
フィルム状物としては、特に制限はなく、本発明の樹脂組成物を含む層を少なくとも1層有すればよい。また、厚みに制限はなく、フィルム状物とは、厚いシートから薄いフィルムまでを意味する。
そのため、本発明のフィルム状物は、単層フィルムであってもよく、その他の層を有する積層フィルムであってもよい。積層フィルムとしては、複数の押出機を用いて、共押出を行うことにより、積層フィルムを製造することもできる。また、本発明のフィルム状物を、ラミネートなどの後加工により積層フィルムすることもできる。
また、フィルム状物は、少なくとも1方向に延伸してもよく、延伸配向により強度を付加できる。
また、本発明のフィルム状物は、前記樹脂組成物を用いて従来公知の製造方法により製造することができる。また、本発明のフィルム状物の形態は特に限定されず、平面状、チューブ状のいずれであってもよいが、原反フィルムの幅方向に製品として数丁取りが可能であるなどの生産性や印刷の容易さの観点から、平面状の形態であることが好ましい。
前記平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、押出機を用いて前記樹脂組成物を溶融し、Tダイ等の口金から平面状に溶融樹脂を押出し、冷却ロールで冷却固化してフィルムを得た後、コア等に巻き取る方法が挙げられる。また、冷却固化して得られたフィルムを少なくとも1方向に延伸をし、その後、アニール、冷却、必要に応じてコロナ放電処理等を経る工程により、平面状の延伸フィルムを製造する方法が挙げられる。
本発明のフィルム状物が、少なくとも1方向に延伸された延伸フィルムである場合、延伸方法としては、例えば、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、長間隔延伸法等により、少なくとも1方向に延伸する方法が挙げられる。また、延伸は、これらの延伸方法の組み合わせで行うこともでき、縦方向のみ延伸してもよく、横方向のみ延伸してもよく、縦方向に延伸した後、横方向に延伸してもよく、横方向に延伸した後、縦方向に延伸してもよい。また、同じ方向に2回以上延伸してもよい。さらには、縦方向に延伸した後、横方向に延伸し、さらに縦方向に延伸してもよい。また、同時二軸延伸機により縦方向、横方向に同時に延伸されてもよい。また、チューブラー成形により内圧によってチューブ状の未延伸フィルムを放射状に延伸してもよい。
延伸温度は、フィルムを構成する樹脂の軟化温度によって変える必要があるが、100℃以上180℃以下であることが好ましく、110℃以上170℃以下であることがより好ましく、120℃以上160℃以下であることがさらに好ましい。
また、延伸倍率は、フィルムの構成成分、延伸方法、延伸温度、求められる熱収縮率等によって変える必要があるが、少なくとも1方向の延伸倍率が1.2倍以上5倍以下であることが好ましく、1.3倍以上4倍以下であることがより好ましく、1.4倍以上3倍以下であることがさらに好ましい。
延伸後は、必要に応じて、諸物性の調整を目的として、50℃以上120℃以下の温度で熱処理や弛緩処理を行うことができる。また、延伸や、熱処理や弛緩処理を行った後、分子配向が緩和しない時間内に速やかに冷却することにより、フィルムに配向を付与することができる。さらに、冷却したフィルムは、耳等をトリミングし、巻取り機等を用いてフィルムをコアに巻き付け、フィルムロール状物にすることができる。
本発明のフィルム状物が、単層フィルムである場合においても、積層フィルムである場合においても、表面層を形成する層には、フィルムの滑り性の付与やブロッキング防止のために、アンチブロッキング剤を添加することが好ましい。
前記アンチブロッキング剤としては、例えば、シリカ、タルク、炭酸カルシウム等の無機粒子、無機酸化物、炭酸塩、または、架橋アクリル系、架橋ポリエステル系、架橋ポリスチレン系、シリコーン系等の有機粒子、耐衝撃性ポリスチレン樹脂等が挙げられる。また、多段階で重合せしめた多層構造を形成した有機粒子も用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでも、シリカや耐衝撃性ポリスチレン樹脂が好ましい。
前記アンチブロッキング剤はフィルム表面を荒らすことにより、滑り性や耐ブロッキング性を発現させるため、適切な添加量、および、種類を選択しなければ、透明性や、フィルムの光沢を阻害してしまう。そのため、アンチブロッキング剤の添加量は、表面層を形成する層を構成する樹脂組成物全体の質量を100質量%とした場合、0.01質量%以上3質量%以下とすることが好ましく、0.015質量%以上2.5質量%以下がより好ましく、0.02質量%以上2質量%以下がさらに好ましい。前記アンチブロッキング剤の添加量が少なすぎる場合、フィルム表面へアンチブロッキング剤が析出しづらく、フィルム表面に凹凸を形成しづらいため、充分な滑り性や耐ブロッキング性を発現しづらい傾向がある。また、逆に多すぎる場合、フィルム表面の過剰な凹凸が生じやすく、表面荒れによる透明性の阻害や、過剰な滑り性の付与によるフィルムロールの巻きづれ等が生じやすい傾向がある。
前記アンチブロッキング剤の形状は、特に限定されるものではないが、凝集抑制、均一分散の観点、透過する光の乱反射抑制、およびフィルム表面に形成される凹凸の観点から球状のものが好ましく用いられる。前記アンチブロッキング剤の粒径は、0.5μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上8μm以下がより好ましく、1μm以上6μm以下がさらに好ましい。前記アンチブロッキング剤の粒径が小さすぎる場合、表面へ析出しづらく、また、表面に析出したアンチブロッキング剤においても、滑り性や耐ブロッキング性を発現するに充分な凹凸を付与しづらい傾向がある。一方、前記アンチブロッキング剤の粒径が大きすぎる場合、本発明のフィルム状物に印刷を施し、意匠性を高める場合において、インキ抜け等が生じやすく、印刷図柄の外観を損ねる傾向がある。前記アンチブロッキング剤の粒径分布は、特に制限されるものではないが、前記粒径の大小による弊害の関係より、粒径分布が狭いものの方が好ましい。粒径分布が広くなりすぎると、前述した好ましく用いられる粒径の範囲より逸脱するものが含まれる可能性がある。
また、本発明のフィルム状物は、必要に応じて、スリット、コロナ処理、印刷、粘着剤の塗布、コーティング、蒸着等の表面処理や表面加工、さらには、各種溶剤やヒートシールによる製袋加工やミシン目加工を施すことができる。
特に、表面に防曇剤、帯電防止剤、例えばシリコーンオイル等の離型剤などの塗布層を有することが好ましい。塗布量は、特に制限されるものではないが、上記のフィルム性能を発揮させるためには、少なくとも片面に5~100mg/mの範囲で塗布することが好ましい。又、離型剤としては、シリコーンオイルが好ましく、高温成形時にフィルム表面を侵しにくいことから、ポリジメチルシロキサンがより好ましい。
本発明のフィルム状物である成形品を食品包装材として使用する場合は、一方の面に離型剤を含む塗布層を配し、他方の面に防曇剤を含む塗布層を配し、防曇剤層面を食品内容物側に向けて用いるとよい。防曇剤の塗布量は特に制限されるものではないが、防曇性能の点から、少なくとも片面に10~100mg/mの範囲で塗布することが好ましい。防曇剤としては公知の界面活性剤が使用可能で、特にショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの多価アルコール脂肪酸エステルが好ましく、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体などの多価アルコール脂肪酸エステルと水溶性ポリマーや、メチルセルロース、シクロデキストリンなどの多糖類等との2種以上の混合物が特に好ましい。
本発明のフィルム状物の総厚さは特に限定されないが、5μm以上400μm以下であることが好ましく、10μm以上350μm以下であることがより好ましく、15μm以上300μm以下であることがさらに好ましい。
<諸物性>
(引張弾性率)
本発明の樹脂組成物、成形品(例えば、フィルム状物)は、剛性の観点から、雰囲気温度23℃における引張弾性率が1850MPa以上であることが好ましく、2500MPa以上であることがより好ましく、3000MPa以上であることがさらに好ましい。また、引張弾性率の上限は特に制限されないが、上限値は6000MPa以下であるのが好ましい。引張弾性率が前記数値以上であれば、成形品やフィルム状物の剛性が高く、特にフィルム状物の厚さを薄くしていった場合にも、外力に対する変形が小さく、フィルム状物に十分な強度を付与できる。
引張弾性率は、JIS K7161-1:2014に準拠して測定できる。
(透明性)
本発明のフィルム状物の透明性は、JIS K7361-1:1997に準拠して測定された全光線透過率、JIS K7136:2000に準拠して測定されたヘーズ値によって評価される。なおヘーズ値は、全光線透過率に対する拡散透過率の比として定義される。
本発明のフィルム状物は、全光線透過率が87.5%以上であることが好ましく、88.0%以上であることがより好ましく、88.5%以上であることがさらに好ましい。特に、フィルム状物の厚みが250μmの場合に上記の全光線透過率であれば透明性が高く、包装した内容物の視認性が良好となり好ましい。
また、本発明のフィルム状物は、ヘーズ値が10.0%以下であることが好ましく、9.0%以下であることがより好ましく、8.0%以下がさらに好ましい。特に、フィルム状物の厚みが250μmの場合に上記のヘーズ値であれば、光散乱が少なく、包装した内容物の視認性が良好となり好ましい。
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
なお、本発明は、以下の実施例、比較例、参考例によって何ら限定されるものではない。
また、以下の実施例、比較例、参考例では、樹脂組成物をフィルム状物に成形し、評価した。このとき、フィルム状物の押出機からの流れ方向を(MD)と表記し、MDの直交方向を(TD)と表記する場合がある。実施例、比較例、参考例に示す測定値、および、評価は次のように行った。
(1)フィルム状物の厚さ測定
JIS K7130:1999に準拠して、スタンドタイプ定圧厚さ測定器にて測定した。
(2)全光線透過率、拡散透過率、ヘーズ
JIS K7361-1:1997に準拠して、全光線透過率、また、JIS K7136:2000に準拠して、拡散透過率、ヘーズ値を測定した。なお、全光線透過率、拡散透過率、および、ヘーズは、フィルム厚み250μmに換算した値である。
(3)バイオベース度
ISO 16620-2:2015に準拠して算出されたバイオマス由来の残基を含むポリエステル(B)のバイオベース度を基に、樹脂組成物のバイオベース度を、全組成物中に含まれるバイオマス由来の成分量を全組成物100質量%に対する割合として算出した。
(4)引張弾性率
JIS K7161-1:2014に準拠して、得られたフィルム状物の引張弾性率を測定した。測定条件は、引張速度5mm/分、雰囲気温度23℃とし、3回の測定値の平均を算出した。
(5)熱的性質
示差走査熱量計(DSC)を用いて、得られたフィルム状物の熱的性質を測定した。測定は、得られたフィルム状物約10mgを加熱速度10℃/分で0℃から280℃まで昇温し、280℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で0℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で280℃まで再昇温したときに測定されたサーモグラムプロファイルにおいて、ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)を算出した。また、結晶融解ピークより結晶融解エンタルピー(ΔHm)を算出した。
各実施例、比較例、参考例で使用した原材料の略号、組成、物性は、下記の通りである。
〔耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)〕
・A-1;スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体、共重合組成=スチレン単量体84質量%:メタクリル酸単量体11質量%:メタクリル酸メチル単量体5質量%、ガラス転移温度126℃、MFR(測定温度200℃、測定荷重5kgf)0.7g/10分
〔スチレン単独重合体〕
・X-1;スチレン単独重合体、ガラス転移温度101℃、MFR(測定温度200℃、測定荷重5kgf)3.3g/10分
〔バイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)〕
・B-1;ポリトリメチレンテレフタレート、ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基100モル%、ジオール残基としてバイオマス由来の1,3-プロパンジオール残基100モル%、バイオベース度37%、還元粘度1.378dL/g、重量平均分子量Mw112,000、数平均分子量Mn63,300、Mw/Mn=1.76、ガラス転移温度49℃、融点227℃
〔石油由来の残基からなるポリエステル系樹脂〕
・Y-1;ポリブチレンテレフタレート、ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基100モル%、ジオール残基として1,4-ブタンジオール残基100モル%、バイオベース度0%、ガラス転移温度35℃、融点224℃
<実施例1~5、比較例1~3、参考例1~5>
表1、2に示す配合割合にて混合し、250℃に設定した溶融混練機にて混練し樹脂組成物を得た。溶融混練機内は窒素雰囲気とした。また溶融混練機の混練ブレードの回転数は60rpm、混練時間は5分とした。
次に、鉄板、ポリイミドフィルム(ユーピレックス(登録商標))、内部がくり抜かれた金枠の順に重ね、溶融混練を行った樹脂組成物を金枠中央のポリイミドフィルム上に移した。その後、もう1枚のポリイミドフィルム(ユーピレックス(登録商標))にて上部を覆い、もう1枚の鉄板をさらに重ねた後、電熱プレス機にて、熱プレスを行った。電熱プレス機の設定温度は、上面、下面ともに250℃とし、油圧の保持圧を一定にした状態にて、3分間保持した。3分後、油圧を開放し、2枚の鉄板で樹脂組成物を挟んだまま、すぐに水槽に投げ込み、急冷を行った。その後、鉄板やポリイミドフィルム、金枠を外すことで、樹脂組成物からなるフィルム状物を得た。得られたフィルム状物について評価した結果を表1、2に示す。
Figure 2022091051000001
Figure 2022091051000002
表1より、実施例1~5の樹脂組成物からなるフィルム状物は、樹脂組成物の相溶性が良く、全光線透過率90.0%以上、ヘーズ5.0%以下であり、優れた透明性を示すとともに、明確な融点が見られ、高い耐熱性を有するフィルム状物が得られた。また、得られたフィルム状物はバイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)を使用していることから、フィルム状物としてもバイオマス由来の成分量(バイオベース度)が得られ、環境負荷の低減に役立つ。
一方、比較例1の耐熱性ポリスチレン系樹脂からなるフィルム状物は、実施例と比較して同等程度のヘーズ値となっているが、非晶性樹脂であるため、ガラス転移温度を超えた温度での耐熱性は不十分となり、バイオベース度はゼロである。比較例2のバイオマス由来の残基を含むポリエステルからなるフィルム状物は、引張弾性率が低く、成形品に求められる剛性が不十分となっている。比較例3は、石油由来の残基からなるポリエステル系樹脂を用いているため、バイオベース度が0.0%であることは当然ながら、ヘーズ値も著しく悪化していることが分かる。
表2の参考例2~5は、スチレン系単独重合体とバイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)を含む樹脂組成物からなる、バイオベース度を有するフィルム状物である。スチレン系単独重合体のみからなる参考例1に比べ、顕著にヘーズ値が高く、白色のフィルム状物となる。これは、用いたスチレン系樹脂が、(メタ)アクリル酸単量体などの単量体(b)を共重合していないため、ポリエステル系樹脂との相溶性が低いことに起因する。また、ポリエステル系樹脂(B)の混合によりフィルム状物に結晶成分が含まれ、参考例1に比べ、ガラス転移温度を超えた温度領域で耐熱性を有する。
上記の実施例、比較例、参考例から、本発明が規定する耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)とバイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)とを特定含有比で含むことにより、高い透明性や耐熱性と高いバイオベース度を示し、性能と環境配慮を両立した優れた樹脂組成物が得られることがわかる。
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う樹脂組成物および成形品もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
本発明の樹脂組成物は、環境負荷が低減され、優れた透明性と耐熱性、機械強度を有する樹脂組成物であるため、本発明の樹脂組成物を用いることで、様々な成形品(例えば、フィルム状物)を得ることができ、それらは、食品用包装材料、飲料用包装材料、医薬・医療用包装材料、化学品用包装材料、化粧品用包装材料、トイレタリー用包装材料、工業用包装材料、農業資材用包装材料等に好適に利用することができる。

Claims (10)

  1. 耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)20質量%以上99質量%以下と、バイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)1質量%以上80質量%以下とを含む樹脂組成物であって、前記耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)が、スチレン系単量体(a)を主たる単量体としてなり、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸の群から選ばれる少なくとも1種の単量体(b)を含む共重合体であり、厚み250μmの場合のヘーズが10.0%以下であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記単量体(b)が(メタ)アクリル酸である請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)が、前記(a)と異なる種類のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸の群から選ばれる1種の単量体(c)を含む共重合体である請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)の組成比が、前記スチレン系単量体(a)と前記単量体(b)の合計を100質量%とした場合に、(a)が60~99質量%、(b)が1~40質量%であることを請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  5. 前記耐熱性ポリスチレン系樹脂(A)の組成比が、前記スチレン系単量体(a)と前記単量体(b)と前記単量体(c)の合計を100質量%とした場合に、(a)が60~98質量%、(b)が1~20質量%、(c)が1~20質量%である請求項3に記載の樹脂組成物。
  6. 前記バイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)が、バイオマス由来のジオール残基と、テレフタル酸残基とを含む請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記バイオマス由来の残基を含むポリエステル系樹脂(B)が、ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂である請求項6に記載の樹脂組成物。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む成形品。
  9. 請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む層を少なくとも1層有するフィルム状物である成形品。
  10. 延伸フィルムである請求項9に記載の成形品。
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