JP5540281B2 - 非水電解質二次電池用正極の製造方法及びそれを用いた非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
本発明における電極活物質は、最終的には上記のごとく、一般式Li2−xMPO4Fで表される化合物である。Mは遷移金属FeかMnであり、FeかMn単独の遷移金属であってもよいが、FeとMnの混合物であってもよい。Xは0≦X≦2の範囲から任意に選ばれるが、通常はX=2の組成体が合成され、これが、初期状態の組成となり、電池内では充電から行うこととなる。
本発明電極では、上記電極活物質を用いる。この場合、上記活物質は通常粉末状で用いればよく、その平均粒径は1〜20μm程度とすればよい。平均粒径は例えばレーザー回折式粒度分布測定装置で測定される値である。また、電極中における上記活物質の含有量は、用いる活物質の種類、結着材(バインダー)、導電材の使用量等に応じて適宜設定すればよい。また、本発明電極においては、電極活物質として所定の電極特性が得られる限りは、上記電極活物質単独又は他の従来から知られている電極活物質との混合物であってもよい。
本発明の非水電解質二次電池は、本発明電極(2)を電極として用いる以外は、公知の非水電解質二次電池における構成要素を採用することができる。本発明の電極は、通常正極として使用することが可能である。この場合、負極としては、電極活物質として公知の負極活物質を使用することが可能であるが、リチウム、ナトリウムから選ばれる少なくとも1種か、もしくはその混合物、もしくはその含有物を用いることが好ましい。
本発明においては、電極活物質(Li2−xMPO4F)における遷移金属Mの2価/3価間の酸化還元反応、及び3価/4価間の酸化還元反応を利用して非水電解質二次電池の充放電が行われる。従来のオリビン型LiMPO4等のような電極活物質では、M3価/2価の酸化還元反応しか利用できなかったが、本発明においては、フッ素の導入により、M2価/3価のみならず3価/4価の酸化還元反応を利用することができ、その分充放電容量が上昇する。さらには、4価でも安定に存在する遷移金属Mの導入量によって、容量を自由に設計できる利点も発揮される。例えば、MとしてVやTiなどの4価でも安定に存在する遷移金属の配合割合を変化させれば、3.5Vと2.5V間の容量比を自由に設計できる。本発明においては非水系二次電池の放電の際に、4価でも安定に存在する遷移金属Mの、4価/3価の還元反応及び3価/2価の還元反応を利用することが好ましい。
[大気中Na2MnPO4F合成法]
本発明の電極活物質の1つであるフッ素化正極Li2MnPO4Fを合成するため、イオン交換の元となるNa2MnPO4Fを下記の方法で合成する。
出発原料としてNa源に炭酸水素ナトリウム(NaHCO3、ナカライテスク株式会社製 99.5〜100.3 %)、NaおよびF源にフッ化ナトリウム(NaF、和光純薬工業株式会社製 99.0 %)、Mn源にシュウ酸マンガン二水和物(MnC2O4・2H2O、関東化学株式会社製 95.0 %)、P源にリン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4、和光純薬工業株式会社製 99.0 %)を使用した。まず、Mn源を秤量し、規格瓶に保存した。また、反応容器と粉砕メディアはジルコニア製のものを用いた。その後、それらをアルゴングローブボックス中に導入し、残りの出発原料を秤量して反応容器に入れた。その後、予め秤量しておいたMN源も反応容器の中に入れ、パラフィルムでシールして雰囲気制御用で固定し容器内をアルゴン雰囲気に保った。Mn源は水和物であり、グローブボックス中に導入すると内部の露点が上がってしまうため、この作業は迅速に行った。その後、遊星型ボールミルを用いて回転速度は200rpm、6時間混合粉砕した。
その後反応容器から取り出し、アルミナるつぼに入れて電気炉を用いて、大気中にて300℃、2時間仮焼成を行った。仮焼成後、いったん電気炉から取り出し、ドラフト中においてメノウ乳鉢でらいかい後、再度同電気炉を用いて大気中にて525℃、6時間本焼成を行った。なお、全ての焼成過程の昇降温速度は200℃/hで行った。固相合成試料のX線回折図を図3に示す。これより、出発物質の残存もなく、強度やピーク位置もICSDカードNO.59301と一致したため、生成物は単相のNa2MnPO4F(結晶群:P21/C)と同定された。
得られた粉末試料に導電性を付与するため、カーボンコートを施した。合成した試料と導電剤であるアセチレンブラック(AB、電気化学工業株式会社製 50%プレス品)をグローブボックス中において合成試料と導電剤を70:25の質量比で秤量し、ジルコニア製粉砕メディアと共にジルコニア製反応容器に入れてパラフィルムでシールの上、雰囲気制御用止め具で封止固定し容器内をアルゴン雰囲気に保った。その後、遊星型ボールミルを用いて回転速度200rpm、24時間カーボンコートを行った。さらに、得られたカーボンコート試料をアルミナるつぼに入れ、筒型電気炉を用いて、アルゴン中にて450〜900℃の温度範囲の中の様々な温度で1時間カルボサーマル処理を行った。なお、昇降温速度は200℃/h、アルゴンガスの流量は200ml/minで行った。様々な熱処理温度で行ったカルボサーマル処理後のNa2MnPO4F/炭素混合試料のX線回折図を図4に示す。900℃処理試料からは若干ではあるが、副生成物が存在し、それは導電性のMn2Pに帰属された。アルゴン雰囲気中で炭素と高温で熱処理したため、Na2MnPO4Fが還元され生成したと考えられる。Mn2Pの生成に対しては、LiFePO4の導電性向上に効果のあるとされている導電性Fe2Pと類似の効果が期待できるものである。また、700℃以下処理試料からはX線ではMn2Pは検出されなかったが、700℃付近のカルボサーマル処理品ではNa2MnPO4F粒子表面にX線にかからない程度の薄膜上のMn2Pが形成されているものと推察される。
正極活物質として、450〜900℃の温度範囲の中の様々な温度で1時間カルボサーマル処理したNa2MnPO4F/炭素混合試料を粉砕して粉末とし、結着剤(ポリテトラフルオロエチレン)と共に最終的に重量比70:25:5重量比で混合の上、ロール成形し、正極合剤ペレット5(厚さ0.5mm、直径15mm)とした。次にステンレス製の封口板上に金属リチウムの負極3を加圧配置したものをポリプロピレン製ガスケット1の凹部に挿入し、負極3の上にポリプロピレン製で微孔性のセパレータ4、正極合剤ペレット6をこの順序に配置し、電解液5として、エチルメチルスルフォン溶媒にLiPF6を溶解させた1規定溶液を適量注入して含浸させた後に、ステンレス製の正極ケース7を被せてかしめることにより、厚さ2mm、直径23mmのコイン型リチウム電池を作製した。このコイン型リチウム電池の室温における初回放電容量(充放電電流密度0.1mA/cm2)のカルボサーマル処理温度依存性を図5に示す。この結果、カルボサーマル処理温度はMN2P が余り粒成長しない700℃以下、特に500℃付近が特に好適であることがわかる。
そこで図5よりベストデータが得られた500℃でカルボサーマル処理したNa2MnPO4F/炭素混合試料を正極a とし、その初回および二サイクル目の擬似開放電位充電(放電)曲線を測定した結果を図6に示す。擬似開放電位充電(放電)曲線は、電流密度を0.1mA/cm2とし、1放電当たり0.025Li分の電気量になる時間充電(放電)した後、1充電(放電)に要した時間と同じ時間の休止を繰り返す間欠充電(放電)により求めた。図6より、少なくともNa2MnPO4Fは、1.5電子以上の反応を可逆的に起こせることが判明した。1電子以上の反応はリン酸オリビン系のみならず、このA2MPO4F(A=Li、Na;M=Mn、Fe、CO、Ni)系においても初めての報告である。実際に初回充放電にてNaがLiに電気化学的に置換できることを原子吸光によって確認した(表1)。
Na2MnPO4Fは、電気化学的な置換法以外にも、Li溶融塩とのイオン交換反応によってLi2MnPO4Fを合成することができる。Na2MnPO4FとLi溶融塩として硝酸リチウム(LiNO3、和光純薬工業株式会社製)を使用した。LiNO3は吸湿性があるため、アルゴングローブボックス中で作業を行った。Li溶融塩はイオン交換過程において融液となるため、その際に交換物が浸るように過剰に用いる必要がある。そのため1:20(mol比)になるように秤量し、メノウ乳鉢で混合した。その後、アルミナるつぼに入れ電気炉を用いて乾燥空気フロー下にて300℃、10時間熱処理を行った。なお、全ての焼成過程の昇降温速度は200℃/h、乾燥空気の流量は200ml/minで行った。
アルミナるつぼに純水を加え、LiNO3を溶かしながら300mlポリ容器に移した。LiNO3を除去するために、遠心分離機を用いて3000rpmで10分間遠心分離を行い、上澄み液を捨てた。この水洗行程を3回繰り返し、ポリ容器にアルミホイルで蓋をして乾燥機にて80℃、一晩乾燥させることでLi2MnPO4Fを得た。ナトリウム塩をリチウム塩に改質することで、炭素負極に対してリチウムイオン電池を組むことが可能となる。
さらに、リチウムハロゲン化物を用いることで室温でもイオン交換を行う事ができる。Li源として臭化リチウム(無水)(LiBr、Acros organics株式会社製 99.0 %)およびヨウ化リチウム(無水) (LiI、和光純薬工業株式会社製 98.0%)を使用した。
室温でのイオン交換では、アルゴングローブボックス(株式会社高杉製作所製)中にて100mlポリ容器に脱水アセトニトリル(和光純薬工業株式会社製 99.0 %)を入れ、1.2 mol/dm3の濃度になるようにハロゲン化リチウムを秤量し加えた。なお、ハロゲン化リチウムは溶解熱を伴うのでゆっくりと溶解させた。その溶液にNa2MnPO4Fを加え、Na2MnPO4Fとハロゲン化リチウムが最終的に1:10(mol比)となるように調整した。蓋をしてボールミル回転架台(株式会社アサヒ理化製作所製)を用いて24時間拡販を行った。その後、吸引濾過を行いながら脱水アセトニトリルで洗浄し、濾紙ごとシャーレに移して乾燥機にて80℃、1晩乾燥させた。
還流装置を用いたイオン交換では、アルゴングローブボックス中にて200 mlの三つ口フラスコに脱水アセトニトリルを入れ、1.2 mol/dm3の濃度になるようにハロゲン化リチウムを秤量し加えた。その溶液にNa2MnPO4Fを加え、Na2MnPO4Fとハロゲン化リチウムが最終的に1:10(mol比)となるように調整した。還流装置を用いて撹拌しながら、アルゴンフロー下にて80 ℃、6時間イオン交換を行った。なお、昇温速度は4 ℃/min、降温は自然放冷で行った。その後、吸引濾過を行いながら脱水アセトニトリルで洗浄し、濾紙ごとシャーレに移して乾燥機にて80 ℃、1晩乾燥させることでLi2MnPO4Fを得た。ナトリウム塩をリチウム塩に改質することで、炭素負極に対してリチウムイオン電池を組むことが可能となる。
正極aがNa電池用正極として動作することを確認するために、金属負極と共にNaセルを作成した。NaはLi以上に湿度に敏感なため、露点−80℃以下に管理されたグローブボックス中で組み立てた。電解液には1mol/dm3NaClO4/プロピレンカーボネート(PC)(富山薬品工業株式会社製)、セパレータにはポリプロピレン微多孔膜(セルガード株式会社製 セルガード3501)を使用した。まず、石油中に保存されているキューブ状ナトリウム(シグマアルドリッチ株式会社製、Sodium99.95%、Cube)を取り出し、使用する電解液の溶媒に従ってプロピレンカーボネート(PC、富山薬品工業株式会社製)を用いて数回洗浄した。洗浄したNa金属をシャーレへ移動し、表面の皮膜をカッターで切断した後、ビーカーの底で押しつぶして薄い箔状に延ばした。この箔状のNaを直径15mmのコルクボーラーでくり抜き、負極パーツ上に圧着した後、ガスケットを取り付けた。正極パーツと負極パーツにポリスポイトを用いて電解液を約1ml滴下し、負極パーツの上にセパレーターを乗せ、最後に正極パーツを被せて手動コインカシメ機を用いて作製した。
正極aのNa電池でのCC−V充放電曲線を図7に示す。Liセルと同様に放電平坦部もはっきりと見られ、その平均電圧が3.7Vであった。これはLi電池に比べ0.3V低い値であるが、Li(−3.045V vs. SHE)とNa(−2.714V vs. SHE)の標準電極電位の差と一致することから、妥当な値である。その初期放電容量はLi電池と同等の容量を示し、Li電池よりNa電池の方が過電圧は小さかった。これはNaの正極への挿入脱離反応の律速過程が電解液中の陽イオンの脱溶媒和過程にあるため、Liより溶媒和エネルギーの小さなNaの方が、より高速な電極界面反応が進行したものと思われる。
[大気中Na2FePO4F合成法]
本発明の電極活物質の1つであるフッ素化正極Li2FePO4Fを合成するため、イオン交換の元となるNa2FePO4Fを下記の方法で合成する。
出発原料としてNa源に炭酸水素ナトリウム(NaHCO3、ナカライテスク株式会社製 99.5〜100.3%)、NaおよびF源にフッ化ナトリウム(NaF、和光純薬工業株式会社製 99.0%)、Fe源にシュウ酸マンガン二水和物(FeC2O4・2H2O、関東化学株式会社製 98.5%)、P源にリン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4、和光純薬工業株式会社製 99.0%)を使用した。まず、Fe源を秤量し、規格瓶に保存した。また、反応容器と粉砕メディアは実施例1と同様のものを用いた。その後、それらをアルゴングローブボックス中に導入し、残りの出発原料を秤量して反応容器に入れた。その後、予め秤量しておいたFe源も反応容器の中に入れ、パラフィルムでシールして雰囲気制御用で固定し容器内をアルゴン雰囲気に保った。Fe源は水和物であり、グローブボックス中に導入すると内部の露点が上がってしまうため、この作業は迅速に行った。その後、遊星型ボールミルを用いて回転速度は200 rpm、6時間混合粉砕した。
その後反応容器から取り出し、アルミナるつぼに入れて電気炉を用いて、アルゴン中にて300℃、2時間仮焼成を行った。仮焼成後、いったん電気炉から取り出し、ドラフト中においてメノウ乳鉢でらいかいした後、再度同電気炉を用いてアルゴン中にて525℃、6時間本焼成を行った。なお、全ての焼成過程の昇降温速度は200℃/h、アルゴンガスの流量は200ml/minで行った。固相合成試料のX線回折図を図8に示す。図8の回折強度やピーク位置は非特許文献4の結果とよく一致したため、生成物はNa2FePO4F(結晶群:PbCN)と同定された。
得られたNa2FePO4Fを実施例1と同様にカーボンコート、カルボサーマル処理したのち、リチウム金属負極と組み合わせ、コイン型リチウム電池を作製した。その初回および二サイクル目の充放電曲線を測定した結果を図9に示す。実施例1の正極aより可逆容量が小さいものの充放電過電圧の小さな良好な可逆サイクルを示した。
2 負極ケース
3 負極
4 セパレータ
5 電解液
6 正極合剤ペレット
7 正極ケース
Claims (7)
- Na 2 MPO 4 F(式中、MはFeもしくはMnかその混合物)の出発原料を不活性雰囲気中で混合粉砕し、大気中の固相焼成により二次電池用電極活物質Na2MPO4F(式中、MはFeもしくはMnかその混合物)を製造する方法。
- 請求項1において、少なくともNa源およびF源にフッ化ナトリウム(NaF)、M源にシュウ酸塩を用いて不活性雰囲気中で混合粉砕し、大気中で焼成して、二次電池用電極活物質Na 2 MPO 4 F(式中、MはFeもしくはMnかその混合物)を製造する方法。
- 請求項1または2の方法によって得られたNa2MPO4Fをリチウム金属負極と組み合わせてハイブリッドイオンセルを組み、電気化学的方法でイオン交換する工程を含むことを特徴とするLi2MPO4F(式中、MはFeもしくはMnかその混合物)からなる非水電解質二次電池用電極活物質を製造する方法。
- 請求項1または2の方法によって得られたNa2MPO4Fを不活性ガス雰囲気下、リチウム溶融塩に浸漬させ、化学的にイオン交換する工程を含むことを特徴とするLi2MPO4F(式中、MはFeもしくはMnかその混合物)からなる非水電解質二次電池用電極活物質を製造する方法。
- 請求項1または2の方法によって得られたNa2MPO4Fを室温不活性ガス雰囲気下、アセトニトリル溶液中に溶解させたハロゲン化リチウムと化学的にイオン交換する工程を含むことを特徴とするLi2MPO4F(式中、MはFeもしくはMnかその混合物)からなる非水電解質二次電池用電極活物質を製造する方法。
- 請求項1から5のいずれかの方法によって得られたNa2MPO4FまたはLi2MPO4Fにカーボンコート後、不活性ガス雰囲気下で500〜700℃の熱処理温度にてカルボサーマル処理することで導電性を付与することを特徴とする電極作製方法。
- Na 2 MnPO 4 Fからなる正極と、炭素負極とを含むことを特徴とする二次電池。
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