JP5890886B1 - リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】表面に炭素が均一かつ効率的に被覆されてなり、電池特性のさらなる向上を図ることのできるリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を提供する。【解決手段】下記式(A):LiFeaMnbMcPO4・・・(A)(式中、MはMg、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b及びcは、0<a<0.5、0.5<b<1、及び0≦c≦0.2を満たし、かつ2a+2b+(Mの価数)?c=2を満たす数を示す。)で表されるリン酸マンガン鉄リチウム化合物に炭素が担持されてなり、リチウム化合物、リン酸化合物、鉄化合物、マンガン化合物、並びにポリビニルピロリドンを含む炭素源混合物、或いはポリビニルピロリドン及びグルコースを含む炭素源混合物を水熱反応に付して得られるリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質。【選択図】図1

Description

本発明は、ポリビニルピロリドンを含む炭素源を用いて得られるリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質及びその製造方法に関する。
携帯電子機器、ハイブリッド自動車、電気自動車等に用いられる二次電池の開発が行われており、特にリチウムイオン二次電池は広く知られている。こうしたなか、Li(Fe,Mn)PO4等のリチウム含有オリビン型リン酸金属塩は、資源的な制約に大きく左右されることがなく、しかも高い安全性を発揮することができるため、高出力で大容量のリチウム二次電池を得るのには最適な正極材料となる。しかしながら、これらの化合物は、結晶構造に由来して導電性を十分に高めるのが困難な性質を有しており、またリチウムイオンの拡散性にも改善の余地があるため、従来より種々の開発がなされている。
例えば、特許文献1では、一次結晶粒子を超微粒子化して、オリビン型正極活物質内のリチウムイオン拡散距離の短縮化を図ることにより、得られる電池の性能向上を試みている。また、特許文献2では、正極活物質の粒子表面に伝導性炭質材料を均一に堆積させ、かかる粒子表面で規則的な電場分布を得ることにより、電池の高出力化を図っている。
特開2010−251302号公報 特開2001−15111号公報
これらの正極活物質は、表面においてかかる正極活物質を構成する化合物が露出するのを抑制しつつ、炭素を効率的に被覆させることができれば、電池特性のさらなる向上を図ることができるものの、こうした被覆状態を的確に判断するのは困難であり、依然として改善の余地が残されている。
したがって、本発明の課題は、表面に炭素が均一かつ効率的に被覆されてなり、電池特性のさらなる向上を図ることのできるリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を提供することにある。
そこで本発明者らにより、特定の測定条件下でカールフィッシャー水分計を用いれば、炭素による活物質表面の被覆の程度を的確に推し量ることが可能であると判明し、さらに種々検討したところ、原料化合物とともにポリビニルピロリドン等を含む炭素源を用いて水熱反応に付することにより、表面に均一かつ効率的に炭素が被覆されてなる正極活物質が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記式(A):
LiFeaMnbcPO4・・・(A)
(式中、MはMg、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b及びcは、0<a<0.5、0.5<b<1、及び0≦c≦0.2を満たし、かつ2a+2b+(Mの価数)×c=2を満たす数を示す。)
で表されるリン酸マンガン鉄リチウム化合物に炭素が担持されてなり、リチウム化合物、リン酸化合物、鉄化合物、マンガン化合物、並びにポリビニルピロリドンを含む炭素源、或いはポリビニルピロリドン及びグルコースを含む炭素源を水熱反応に付して得られるリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を提供するものである。
また、本発明は、リチウム化合物、及び水を混合して得られるスラリー水にリン酸化合物を滴下してリン酸三リチウム水溶液を得る工程(I)、
工程(I)で得られたリン酸三リチウム水溶液に、鉄化合物、マンガン化合物、並びにポリビニルピロリドンを含む炭素源、或いはポリビニルピロリドン及びグルコースを含む炭素源を添加して水分散液を得る工程(II)、及び
工程(II)で得られた水分散液を水熱反応に付する工程(III)
を備える上記リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の製造方法を提供するものである。
本発明のリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質によれば、特定の測定条件下でのカールフィッシャー水分計の使用によっても確認できるとおり、表面にポリビニルピロリドンを含む炭素源に由来する炭素が均一かつ効率的に被覆されてなるため、電池特性を飛躍的に向上させることのできる正極材料として極めて有用である。
カールフィッシャー水分計を用いた測定方法により得られる、炭素による活物質表面の被覆の程度を推し量るためのプロファイルを示す模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質は、下記式(A):
LiFeaMnbcPO4・・・(A)
(式中、MはMg、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b及びcは、0<a<0.5、0.5<b<1、及び0≦c≦0.2を満たし、かつ2a+2b+(Mの価数)×c=2を満たす数を示す。)
で表されるリン酸マンガン鉄リチウム化合物に炭素が担持されてなる。
上記式(A)で表されるリン酸マンガン鉄リチウム化合物は、少なくとも遷移金属であるマンガン(Mn)及び鉄(Fe)を含む。式(A)中、Mは、Mg、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示し、好ましくはMg、又はZrである。aは、0<a<0.5であって、好ましくは0.1≦a≦0.3である。bは、0.5<b<1であって、好ましくは0.7≦b≦0.9である。cは、0≦c≦0.2を満たし、好ましくは0≦c≦0.1である。そして、これらa、b及びcは、2a+2b+(Mの価数)×c=2を満たす数である。上記式(A)で表されるリン酸マンガン鉄リチウム化合物としては、具体的には、例えばLiMn0.8Fe0.2PO4、LiMn0.75Fe0.15Mg0.1PO4、LiMn0.75Fe0.19Zr0.03PO4等が挙げられ、なかでもLiMn0.8Fe0.2PO4が好ましい。
リン酸マンガン鉄リチウム化合物に担持されてなる炭素の量は、リチウム二次電池用正極活物質中に、好ましくは1〜15質量%であり、より好ましくは1.5〜10質量%であり、さらに好ましくは2〜7質量%である。リン酸マンガン鉄リチウム化合物に担持された炭素の量は、炭素・硫黄分析装置を用いた測定により、求めることができる。
本発明のリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質は、リチウム化合物、リン酸化合物、鉄化合物、マンガン化合物、並びにポリビニルピロリドンを含む炭素源、或いはポリビニルピロリドン及びグルコースを含む炭素源(以下、「ポリビニルピロリドン等を含む炭素源」ともいう)を水熱反応に付して得られる。このように、本発明のリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質は、ポリビニルピロリドン等を含む炭素源をも用いて水熱反応に付して得られるものであることから、ポリビニルピロリドン等を含む炭素源を炭化してなる炭素がリン酸マンガン鉄リチウム化合物に堅固に担持されてなるものである。かかるポリビニルピロリドンは水等の溶剤への溶解性が高く、適度な粘性を示すことから、リン酸マンガン鉄リチウム化合物の原料化合物とともに良好な分散性を示すことができると考えられる。そのため、これらをともに水熱反応に付することで、炭素源に含まれるポリビニルピロリドンが炭化されながら、リン酸マンガン鉄リチウム化合物表面を均一に被覆することが可能となり、得られる電池における性能を有効に高めることができる有用な正極活物質を得ることができると推察される。
すなわち、本発明のリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の製造方法は、リチウム化合物、及び水を混合して得られるスラリー水にリン酸化合物を滴下してリン酸三リチウム水溶液を得る工程(I)、
工程(I)で得られたリン酸三リチウム水溶液に、鉄化合物、マンガン化合物、並びにポリビニルピロリドンを含む炭素源、或いはポリビニルピロリドン及びグルコースを含む炭素源を添加して水分散液を得る工程(II)、及び
工程(II)で得られた水分散液を水熱反応に付する工程(III)
を備える。
工程(I)は、リチウム化合物、及び水を混合して得られるスラリー水にリン酸化合物を滴下してリン酸三リチウム水溶液を得る工程である。
用い得るリチウム化合物としては、リチウム酸化物又はリチウム水酸化物が挙げられる。具体的には、例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、酸化リチウム、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、水酸化リチウムが好ましく、具体的には、例えば、LiOH・H2O等の水和物を用いることができる。
用い得るリン酸化合物としては、リン酸、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、リン酸が好ましく、例えば70〜90質量%濃度の水溶液として用いるのが好ましい。
リチウム化合物と水とを混合して得られるスラリー水は、水100質量部に対し、20〜50質量部のリチウム化合物を含有するのが好ましく、25〜45質量部のリチウム化合物を含有するのがより好ましい。次いで、得られたスラリー水にリン酸化合物を滴下するときの撹拌速度は、好ましくは200〜700rpmであり、より好ましくは250〜600rpmである。また、スラリー水の撹拌時間は、好ましくは1〜24時間であり、より好ましくは5〜15時間であり、スラリー水の温度は、好ましくは20〜90℃であり、より好ましくは20〜70℃である。また、リン酸化合物を混合した後のリン酸三リチウム水溶液に対し、窒素をパージするのが好ましく、溶存酸素濃度を0.5mg/L以下にするのが好ましい。
工程(II)は、工程(I)で得られたリン酸三リチウム水溶液に、鉄化合物、マンガン化合物、並びにポリビニルピロリドンを含む炭素源、或いはポリビニルピロリドン及びグルコースを含む炭素源を添加して水分散液を得る工程である。
用い得る鉄化合物としては、酢酸鉄、硝酸鉄、硫酸鉄、及びこれらの水和物等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、硫酸鉄及びその水和物が好ましい。
用い得るマンガン化合物としては、酢酸マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、及びこれらの水和物等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、硫酸マンガン及びその水和物が好ましい。
これらマンガン化合物及び鉄化合物の使用モル比(マンガン化合物:鉄化合物)は、好ましくは99:1〜51:49であり、より好ましくは95:5〜70:30であり、さらに好ましくは90:10〜75:25である。
さらに、必要に応じて、マンガン化合物及び鉄化合物以外の金属(M)化合物を用いてもよい。金属(M)化合物におけるMは、Mg、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdであり、上記式(A)中のMと同義である。かかる金属(M)化合物として、ハロゲン化物、硫酸塩、有機酸塩、及びこれらの水和物等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、MがMg、又はZrである金属(M)化合物を用いるのが好ましい。
これら金属(M)化合物を用いる場合、鉄化合物、マンガン化合物、及び金属(M)化合物の合計添加量は、リチウム化合物1モルに対し、好ましくは0.99〜1.01モルであり、より好ましくは0.995〜1.005モルである。
用いる炭素源としては、ポリビニルピロリドンを単独で含むものであってもよく、さらにグルコースを併用し、ポリビニルピロリドン及びグルコースの双方を含むものであってもよく、ポリビニルピロリドンとグルコースとを含む炭素源を用いるのがより好ましい。具体的には、かかる炭素源中におけるポリビニルピロリドンとグルコースの質量比(ポリビニルピロリドン:グルコース)は、堅固に炭素を担持させつつ効率的にリン酸マンガン鉄リチウム化合物の表面を被覆させる観点から、炭素換算量で好ましくは100:0〜10:90であり、より好ましくは85:15〜15:85であり、さらに好ましくは75:25〜25:75である。
また、炭素源の添加量は、堅固に炭素を担持させつつ効率的にリン酸マンガン鉄リチウム化合物の表面を被覆させる観点から、鉄化合物及びマンガン化合物の合計量、或いはマンガン化合物及び鉄化合物以外の金属(M)化合物を用いる場合には、これら鉄化合物、マンガン化合物、及び金属(M)化合物の合計量100質量部に対し、好ましくは0.5〜15質量部であり、より好ましくは1〜10質量部であり、さらに好ましくは2〜7質量部である。
これら鉄化合物、マンガン化合物、及びポリビニルピロリドン等を含む炭素源、或いはマンガン化合物及び鉄化合物以外の金属(M)化合物の添加順序は、特に制限されない。また、これらの化合物を添加するとともに、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。かかる酸化防止剤としては、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、ハイドロサルファイトナトリウム(Na224)、アンモニア水等を使用することができる。酸化防止剤の添加量は、過剰に添加されることでリン酸マンガン鉄リチウム化合物の生成が抑制されるのを防止する観点から、マンガン化合物、鉄化合物、及び金属(M)化合物合計1モルに対し、好ましくは0.01〜1モルであり、より好ましくは0.03〜0.5モルである。
なお、水分散液に用いる水の使用量は、鉄化合物やマンガン化合物及び金属(M)化合物の溶解性、撹拌の容易性、及び合成の効率等の観点から、水分散液中に含有されるリン酸イオン1モルに対し、好ましくは10〜30モルであり、より好ましくは12.5〜25モルである。
工程(III)は、工程(II)で得られた水分散液を水熱反応に付する工程である。かかる工程を経ることによって、上記リン酸マンガン鉄リチウム化合物に、ポリビニルピロリドン等を含む炭素源を炭化してなる炭素を有効に担持させることができる。水熱反応は、100℃以上であればよく、130〜250℃が好ましく、さらに140〜230℃が好ましい。水熱反応は耐圧容器中で行うのが好ましく、130〜200℃で反応を行う場合この時の圧力は0.3〜1.5MPaとなり、140〜180℃で反応を行う場合の圧力は0.4〜1.0MPaとなる。水熱反応時間は10分〜3時間が好ましく、さらに10分〜1時間が好ましい。
その後、洗浄、ろ過、乾燥することによりリン酸鉄マンガンリチウム化合物を一次粒子として単離できる。なお、洗浄する際における水の使用量は、リン酸鉄マンガンリチウム化合物1質量部に対し、好ましくは5〜100質量部であり、より好ましくは5〜50質量部である。また、乾燥手段は、凍結乾燥、真空乾燥が用いられるが、凍結乾燥が好ましい。
本発明のリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の製造方法は、工程(III)を経た後、さらに還元雰囲気下又は不活性雰囲気下で焼成する工程(IV)を備えるのが好ましい。これにより、ポリビニルピロリドン等を含む炭素源を炭化させ、リン酸マンガン鉄リチウム化合物にかかる炭素を堅固に担持させてなるリチウム二次電池用正極活物質を得ることができる。焼成条件は、還元雰囲気又は不活性雰囲気中で、好ましくは400℃以上、より好ましくは400〜800℃で好ましくは10分〜3時間、より好ましくは0.5〜1.5時間とするのがよい。
リチウム二次電池用正極活物質は、本発明者らにより、特定の測定条件下でカールフィッシャー水分計を用いれば、炭素による活物質表面の被覆の程度を的確に推し量ることが可能であると判明した。かかる方法により、本発明のリチウム二次電池用正極活物質の表面に効率的に炭素が被覆されてなることが確認できる。
カールフィッシャー水分計を用いた測定方法は、具体的には、正極活物質0.5gを測定試料として用い、気温20℃、相対湿度50%の大気下に2時間暴露して吸湿させ、窒素流量250mL/分、温度250℃の条件で、測定開始から20分経過時までの水分量を測定する。次いで、これらの測定結果を元に、例えば図1に示すような、縦軸を水分量、横軸を測定時間とするプロファイルを作製する。かかるプロファイルに基づいて読みだされる、測定開始から水分量の最大ピークαが出現するまでの時間Tが、炭素による活物質表面の被覆の程度を推し量る指標となる。かかる時間Tの値が小さいほど、表面におけるリン酸マンガン鉄リチウム化合物の露出が効果的に低減され、ポリビニルピロリドン等を含む炭素源を炭化してなる炭素が効率的に被覆されつつ、リン酸マンガン鉄リチウム化合物に堅固に担持されたものであることを意味する。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質を含むリチウム二次電池用正極を適用できるリチウム二次電池としては、正極と負極と電解液とセパレータを必須構成とするものであれば特に限定されない。
ここで、負極については、リチウムイオンを充電時には吸蔵し、かつ放電時には放出することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。たとえば、リチウム金属、グラファイト又は非晶質炭素等の炭素材料等である。そしてリチウムを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された電極、特に炭素材料を用いることが好ましい。
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウムイオン二次電池の電解液の用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF6、LiBF4、LiClO4及びLiAsF6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF32及びLiN(SO3CF32、LiN(SO2252及びLiN(SO2CF3)(SO249)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
LiOH・H2O 12.72gと水 90mLを混合してスラリー水を得た。次いで、得られたスラリー水を、25℃の温度に保持しながら2〜3分間撹拌しつつ85%のリン酸水溶液 11.53gを35mL/分で滴下し、続いて12時間、速度400rpmで撹拌することによりリン酸三リチウム水溶液を得た。かかる水溶液は、リン1モルに対し、2.97モルのリチウムを含有していた。なお、得られた水溶液は、窒素パージし、溶存酸素濃度を0.5mg/Lとした。
次に、得られたリン酸三リチウムを含有する水溶液全量に対し、MnSO4・5H2O 19.29g、FeSO4・7H2O 4.17g(マンガン化合物:鉄化合物(モル比)=80:20)、ポリビニルピロリドン 0.32gとグルコース 0.56g(マンガン化合物及び鉄化合物の合計量100質量部に対して約3.8質量部、ポリビニルピロリドン:グルコース=50:50(炭素換算量))を含む炭素源を添加して、混合液を得た。
次いで、得られた混合液をオートクレーブに投入し、170℃で1時間水熱反応を行った。オートクレーブ内の圧力は、0.8MPaであった。生成した結晶をろ過し、次いで結晶1質量部に対し、12質量部の水により洗浄した。洗浄した結晶を−50℃で12時間凍結乾燥してリン酸マンガン鉄リチウム(LiFe0.2Mn0.8PO4)を得た。
得られたリン酸マンガン鉄リチウムは、粉末X線回折測定により単一相であることを確認した。
そして、得られたリン酸マンガン鉄リチウムをアルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)、700℃で1時間焼成して、表面に炭素が担持され、かつ均一に被覆されてなるリチウム二次電池用正極活物質(炭素量=2.0質量%)を得た。
[実施例2]
炭素源として、ポリビニルピロリドン 0.16g、及びグルコース 0.84g(マンガン化合物及び鉄化合物の合計量100質量部に対して約4.3質量部、ポリビニルピロリドン:グルコース=25:75(炭素換算量))を用いた以外、実施例1と同様にして、表面に炭素が均一に被覆されてなるリチウム二次電池用正極活物質(炭素量=2.0質量%)を得た。
[実施例3]
炭素源として、ポリビニルピロリドン 0.48g、及びグルコース 0.28g(マンガン化合物及び鉄化合物の合計量100質量部に対して約3.2質量部、ポリビニルピロリドン:グルコース=75:25(炭素換算量))を用いた以外、実施例1と同様にして、表面に炭素が均一に被覆されてなるリチウム二次電池用正極活物質(炭素量=2.0質量%)を得た。
[実施例4]
炭素源として、ポリビニルピロリドン 0.64g(マンガン化合物及び鉄化合物の合計量100質量部に対して約2.7質量部)を用いた以外、実施例1と同様にして、表面に炭素が均一に被覆されてなるリチウム二次電池用正極活物質(炭素量=2.0質量%)を得た。
[実施例5]
炭素源として、ポリビニルピロリドン 0.06g、及びグルコース 1.01g(マンガン化合物及び鉄化合物の合計量100質量部に対して約4.6質量部、ポリビニルピロリドン:グルコース=10:90(炭素換算量))を用いた以外、実施例1と同様にして、表面に炭素が均一に被覆されてなるリチウム二次電池用正極活物質(炭素量=2.0質量%)を得た。
[比較例1]
炭素源として、グルコース単独で 0.56g(マンガン化合物及び鉄化合物の合計量100質量部に対して約2.4質量部)を用いた以外、実施例1と同様にして、表面に炭素が均一に被覆されてなるリチウム二次電池用正極活物質(炭素量=2.0質量%)を得た。
[比較例2]
LiOH・H2O 12.72gと水 90mLを混合してスラリー水を得た。次いで、得られたスラリー水を、25℃の温度に保持しながら2〜3分間撹拌しつつ85%のリン酸水溶液 11.53gを35mL/分で滴下し、続いて12時間、速度400rpmで撹拌することによりリン酸三リチウム水溶液を得た。かかる水溶液は、リン1モルに対し、2.97モルのリチウムを含有していた。
次に、得られたリン酸三リチウムを含有する水溶液全量に対し、MnSO4・5H2O 19.29g、FeSO4・7H2O 4.17gを添加して、混合液を得た。
次いで、得られた混合液をオートクレーブに投入し、170℃で1時間水熱反応を行った。オートクレーブ内の圧力は、0.8MPaであった。生成した結晶をろ過し、次いで結晶1質量部に対し、12質量部の水により洗浄した。洗浄した結晶を−50℃で12時間凍結乾燥してリン酸マンガン鉄リチウム(LiFe0.2Mn0.8PO4)を得た。
得られたリン酸マンガン鉄リチウムは、粉末X線回折測定により単一相であることを確認した。
そして、炭素源としてグルコース単独で 0.56gを用い、これを得られたリン酸マンガン鉄リチウム3gに添加し、80℃で3時間温風乾燥に付して複合混合物を得た後、アルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)、700℃で1時間焼成して、表面に炭素が均一に被覆されてなるリチウム二次電池用正極活物質(炭素量=7.5質量%)を得た。
[試験例1:正極活物質の表面における炭素の被覆状態の評価]
カールフィッシャー水分計(MKC−610、京都電子工業(株)製)を用いて測定及び評価を行った。具体的には、実施例1〜5及び比較例1〜2で得られた正極活物質0.5gを測定試料とし、気温20℃、相対湿度50%の大気下に2時間暴露して吸湿させ、窒素流量250mL/分、温度250℃の条件で、測定開始から20分経過時までの水分量を測定した。次いで、これら各々の測定結果を元に、図1に示すようなプロファイルを作製し、測定開始から水分量の最大ピークαが出現するまでの時間Tを読みだし、比較例2を100とする相対値を求めた。
結果を表1に示す。
Figure 0005890886
[試験例2:充放電特性の評価]
実施例1〜5及び比較例1〜2で得られた正極活物質を用い、リチウムイオン二次電池の正極を作製した。具体的には、得られた正極活物質、ケッチェンブラック、ポリフッ化ビニリデンを重量比75:15:10の配合割合で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて充分混練し、正極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、正極とした。
次いで、上記の正極を用いてコイン型リチウムイオン二次電池を構築した。負極には、φ15mmに打ち抜いたリチウム箔を用いた。電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した混合溶媒に、LiPF6を1mol/lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、ポリプロピレンなどの高分子多孔フィルムなど、公知のものを用いた。これらの電池部品を露点が−50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型リチウム二次電池(CR−2032)を製造した。
製造したリチウム二次電池を用い、放電容量測定装置(HJ−1001SD8、北斗電工製)にて0.1C放電容量(17mAh/g)と3C放電容量(510mAh/g)を測定し、0.1C放電容量に対する3C放電容量の割合({3C放電容量/0.1C放電容量}×100)(%)を求めた。
結果を表2に示す。
Figure 0005890886
上記結果によれば、実施例のリチウム二次電池用正極活物質は、比較例のリチウム二次電池用正極活物質に比して、時間Tの値が小さいことから、リン酸マンガン鉄リチウムの表面に効率的にポリビニルピロリドンを含む炭素源を炭化してなる炭素が被覆されなることがわかる上、得られるリチウム二次電池のレート特性も0.1C放電容量に対する3C放電容量の割合が高く、非常に良好であることがわかる。

Claims (4)

  1. 下記式(A):
    LiFe a Mn b c PO 4 ・・・(A)
    (式中、MはMg、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b及びcは、0<a<0.5、0.5<b<1、及び0≦c≦0.2を満たし、かつ2a+2b+(Mの価数)×c=2を満たす数を示す。)
    で表されるリン酸マンガン鉄リチウム化合物に炭素が担持してなるリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の製造方法であって、
    リチウム化合物、及び水を混合して得られるスラリー水にリン酸化合物を滴下してリン酸三リチウム水溶液を得る工程(I)、
    工程(I)で得られたリン酸三リチウム水溶液に、鉄化合物、マンガン化合物、並びにポリビニルピロリドンを含む炭素源、或いはポリビニルピロリドン及びグルコースを含む炭素源を添加して水分散液を得る工程(II)、及び
    工程(II)で得られた水分散液を水熱反応に付する工程(III)
    を備えるリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の製造方法。
  2. 工程(III)を経た後、さらに還元雰囲気下又は不活性雰囲気下で焼成する工程(IV)を備える請求項に記載のリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の製造方法。
  3. 炭素源中におけるポリビニルピロリドンとグルコースの質量比(ポリビニルピロリドン:グルコース)が、炭素換算量で100:0〜10:90である請求項1又は2に記載のリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の製造方法
  4. リン酸マンガン鉄リチウム化合物に担持てなる炭素の量が、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質中に0.5〜5質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の製造方法
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