JP5516838B2 - ZnO蒸着材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば太陽電池などに用いられる透明導電膜またはガスおよび水蒸気に対する耐性膜や、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置、タッチパネル装置の透明圧電センサーの透明電極またはガスおよび水蒸気に対する耐性膜、また表示装置を構成するアクティブマトリクス駆動装置、帯電防止導電膜コーティング、ガスセンサー、電磁遮蔽パネル、圧電デバイス、光電変換装置、発光装置、薄膜型二次電池などに用いられる膜を成膜するために用いられるZnO蒸着材の製造方法に関するものである。
近年、太陽電池などの光電変換装置などを製造する場合には、透明導電膜が不可欠である。従来の透明導電膜としては、ITO膜(錫をドープしたインジウム酸化物膜)が知られている。ITO膜は、透明性に優れ、低抵抗であるという利点を有する。
一方、太陽電池や液晶表示装置等にあっては、その低コスト化が求められている。しかし、インジウムが高価なことから、ITO膜を透明導電膜として用いると、その太陽電池も必然的にコスト高になる難点があった。また、太陽電池等は透明導電膜上にアモルファスシリコンをプラズマCVD法等により成膜して製造されるが、その際に、透明導電膜がITO膜であると、プラズマCVD時の水素プラズマにより、ITO膜が劣化するという問題点もあった。
これらの点を解消するために、安価に作製することのできるAl、B、Siなどの導電活性元素をドープした酸化亜鉛系膜を太陽電池等の透明導電膜として使用することが提案され、この酸化亜鉛系膜をスパッタリングにより形成するための酸化亜鉛系スパッタリング用ターゲットが提案されている(例えば、特許文献1)。この酸化亜鉛系スパッタリング用ターゲットによると、上記導電活性元素を亜鉛に対して所定量含有させることにより極めて低抵抗な酸化亜鉛系焼結体が得られ、この焼結体は、原料粉末が微細で高分散性を有するほど焼結密度が向上し導電性が向上すると云われている。
特開平6−2130号公報
しかし、従来の酸化亜鉛系スパッタリング用ターゲットを用いて高速成膜するために高電圧をかけながらスパッタリングを行うと、異常放電が発生しやすく、放電状態が不安定でターゲットが不均一に消耗し、得られた膜に組成ずれが生じて低抵抗の膜を得ることが困難となる不具合があった。一方、投入電力を小さくして電圧を低くすると成膜速度が遅くなり、酸化亜鉛系膜の成膜効率は大幅に低下する不具合があった。
さらに従来のターゲット材は、蒸発効率および成膜効率が低いためターゲット材交換サイクルの寿命が短く、生産性を高めるために蒸発効率および成膜効率のよいターゲット材が求められている。成膜速度が低いと膜密度の低下を招き、屈折率の低下、耐スパッタ性の低下、放電特性、絶縁性の悪化などの問題が生じる虞がある。
本発明は、従来の上記問題を解決したものであり、ITO膜に迫る高い導電率の膜を高速成膜することができ、さらに透過性および緻密性に優れた導電膜を形成することができるZnO蒸着材およびこれを用いたZnO膜を提供する。また、本発明は単位エネルギーあたりの蒸発量が多く、成膜速度をも向上し得るZnO蒸着材およびこれを用いたZnO膜を提供する。
本発明は以下の構成からなるZnO蒸着材の製造方法に関する。
〔1〕透明導電膜の成膜に用いられるZnO蒸着材であって、ZnO純度が98%以上のZnO焼結体からなり、該焼結体がY、La、Sc、Ce、Pr、Nd、PmおよびSmの群から選ばれた1種または2種以上の添加元素を含有し、上記添加元素の含有量が2〜20質量%であり、かつ該焼結体が3〜50%の気孔率を有し、平均気孔径0.1〜500μmの気孔を有する多孔質焼結体からなるZnO蒸着材を製造する方法であって、(I)純度98%以上であって平均粒径は0.1〜10μmのZnO粉末と、平均粒径が0.01〜1μmの上記添加元素の酸化物粉末と、バインダと、有機溶媒とを混合して、濃度30〜75質量%のスラリーを調製する工程と、(II)該スラリーに気体を吹込んでガス含有スラリーを得る工程と、(III)該ガス含有スラリーを噴霧乾燥して平均粒径が50〜300μmの多孔質造粒粉末を得る工程と、(IV)該多孔質造粒粉末を成形して多孔質成形体を得る工程と、(V)該多孔質成形体を所定温度で焼結してZnO多孔質焼結体を得る工程とを有することを特徴とするZnO蒸着材の製造方法。
本発明の製造方法に係るZnO蒸着材(以下、本発明のZnO蒸着材と略称する)は、ZnO純度が98%以上のZnO焼結体からなり、該焼結体がY、La、Sc、Ce、Pr、Nd、PmおよびSmの群から選ばれた1種または2種以上の添加元素を含有するので、このZnO蒸着材を用いることによって、広い温度範囲にわたって良好な導電性を有するZnO膜を得ることができる。
また、本発明のZnO蒸着材は、ZnO多孔質焼結体が3〜50%の気孔率を有するので、蒸着材内部の比表面積が大きく、蒸着材の蒸発速度を高くすることができる。具体的には、従来のZnO蒸着材に比較して1.1〜2倍程度の蒸発速度を得ることが可能となる。
さらに、本発明のZnO蒸着材は、ZnO多孔質焼結体が平均気孔径0.1〜500μmの気孔を有することによって蒸発速度を高くすることができる。また、ZnO多孔質焼結体が1〜500μmの平均結晶粒径を有する粒子の焼結体であることによって、蒸着材内部の比表面積が増大して蒸着材の蒸発速度を高くすることができ、成膜されたZnO膜は優れた膜特性を有する。
さらに、本発明のZnO蒸着材は、ZnO多孔質焼結体が、多結晶体でもまたは単結晶体であっても良く、第一添加元素とAlの2元素を特定の割合で所定量含むことによってITO膜に迫る高い導電性を有するZnO膜を得ることができる。
また、本発明の製造方法は以下の態様を含む。
〔2〕上記[1]に記載する製造方法において、上記(II)(III)の工程に代え、(II-2)原料粉末またはスラリーに発泡剤を混入して発泡剤含有スラリーを得る工程と、(III-2)該発泡剤含有スラリーを噴霧乾燥しつつ発泡させて平均粒径が50〜300μmの多孔質造粒粉末を得る工程を有するZnO蒸着材の製造方法。
〔3〕上記[1]に記載する製造方法において、上記(II)〜(V)の工程に代え、(II-3)原料粉末またはスラリーに焼成時に揮発分解する添加剤を混入して添加剤含有スラリーを得る工程と、(III-3)該添加剤含有スラリーを噴霧乾燥して平均粒径が50〜300μmの造粒粉末を得る工程と、(IV-3)該造粒粉末を成形して成形体を得る工程と、(V-3)上記添加剤を揮発分解させつつ焼結してZnO多孔質焼結体を得る工程を有するZnO蒸着材の製造方法。
本発明の製造方法は、上記(I)〜(V)の製造工程によって、蒸発量が多く、成膜性および緻密性に優れたZnO蒸着材を比較的容易に製造することができる。特に、(II)該スラリーに気体を吹込んでガス含有スラリーを得る工程、または(II-2)原料粉末またはスラリーに発泡剤を混入して発泡剤含有スラリーを得る工程、または(II-2)原料粉末またはスラリーに発泡剤を混入して発泡剤含有スラリーを得る工程によって、所定の気孔率、および平均気孔径を有する気孔、平均結晶粒径を有するZnO蒸着材を比較的容易に製造することができる。
なお、本発明の製造方法に類似する方法として、平均粒径が10〜500μm、かつ粒度分布が平均粒径の±10%の範囲内に含まれる粉末を用いることによって、粒子間に微細な粒子が実質的に入り込まないので、気孔率3〜50%の多孔質成形体を容易に得ることができる。
さらに、本発明のZnO蒸着材は以下のZnO膜の形成に用いることができる。
上記[1]〜上記[3]の何れかに記載する方法によって製造されたZnO蒸着材をターゲット材として、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、またはプラズマ蒸着法によってZnO膜を形成する方法。
本発明のZnO蒸着材は、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、またはプラズマ蒸着法などの真空成膜法に広く用いることができる。また、本発明のZnO蒸着材を用いることによって、例えば電子ビーム蒸着法において従来と同程度の成膜速度で成膜する際に、フィラメント交換頻度を少なくすることができ、また成膜速度を上げて、製造時間を短縮することができる。
本発明のZnO蒸着材は、ZnO純度が98%以上のZnO焼結体からなり、該焼結体がY、La、Sc、Ce、Pr、Nd、PmおよびSmの群から選ばれた1種または2種以上の添加元素を含有するので、このZnO蒸着材を用いることによって、広い温度範囲にわたって良好な導電性を有するZnO膜を得ることができる。
さらに、本発明のZnO蒸着材はZnO焼結体が多結晶または単結晶のいずれでも、上記添加元素を含むことによって、広い温度範囲にわたって良好な導電性を有するZnO膜を得ることができる。また優れた耐湿性、ガスおよび水蒸気遮断性を有する膜を得ることができる。
さらに、本発明のZnO蒸着材は、所定範囲の気孔率を有し、また好ましくは気孔が特定範囲の平均気孔径を有し、粒子が特定範囲の平均結晶粒径を有するので、蒸着材内部の比表面積が増大して蒸発速度を高くすることができ、成膜効率が良くZnO膜を形成することができる。また、本発明のZnO蒸着材によって形成したZnO膜は緻密であり、高い導電率を有し、膜の耐久性に優れる。
以下、本発明を実施例と共に具体的に説明する。
〔ZnO蒸着材〕
本発明のZnO蒸着材は、透明導電膜の成膜に用いられるZnO蒸着材であって、ZnO純度が98%以上のZnO焼結体からなり、該焼結体がY、La、Sc、Ce、Pr、Nd、PmおよびSmの群から選ばれた1種または2種以上の添加元素を含有し、上記添加元素の含有量が2〜20質量%であり、かつ該焼結体が3〜50%の気孔率を有し、平均気孔径0.1〜500μmの気孔を有する多孔質焼結体であることを特徴とする。
ZnO蒸着材およびこの蒸着材を用いて成膜されたZnO膜中の添加物種およびその含有量における導電性への影響を詳細に調査したところ、ZnO焼結体中にY、La、Sc、Ce、Pr、Nd、PmおよびSmの群から選ばれた1種または2種以上の添加元素を含有するものは、これらの元素の種類および含有量が導電性に大きく影響していることが確認された。本発明に係るZnO蒸着材は、上記知見に基づき、ZnOを主成分とし、上記添加元素を含有することによって、導電に寄与する過電子を大量に発現させ維持させて高い導電率を有するZnO膜を成膜できるようにしたZnO蒸着材である。
本発明のZnO蒸着材は、ZnO純度が98%以上、好ましくは98.4%以上、さらに好ましくは99%以上のZnO焼結体からなる。ZnOの純度が98%未満では不純物の影響で導電性が低下する。ZnO焼結体は単結晶でもよく、多結晶でもよい。
上記ZnO焼結体はY、La、Sc、Ce、Pr、Nd、PmおよびSmの群から選ばれた1種または2種以上の添加元素を含有する。この添加元素にはLa、Ce、Ndを主成分とする混合物であるミッシュメタル(Mmと表示される場合がある)が含まれる。
ZnO焼結体に含まれる上記添加元素の濃度が増加するほど概して導電性は良好となるが、更に増加すると逆に導電性が劣化することから、導電性の高いZnO膜を得るには最適な濃度範囲が存在する。該添加元素の含有量は2〜20質量%が適当であり、3〜6質量%が好ましい。上記添加元素の含有量が2質量%未満では導電性が向上しない。また添加元素の含有量が20質量%を上回ると導電性の低下および透過率の劣化などの不具合が生じる。
上記添加元素は微量であるので、ZnOマトリックスの粒界や粒内に粒状の析出物として存在するのではなく、ZnO焼結体中に均一に分散している。また、上記添加元素はZnO蒸着材中に酸化物として存在する。例えば、YはY23の形態で存在し、LaはLa23の形態で存在する。また、ScはSc23の形態で存在し、CeはCeO2またはCe23の形態で存在すると考えられる。PrはPr611の形態で存在すると考えられ、NdはNd23の形態で存在すると考えられる。さらに、PmはPm23の形態で存在すると考えられ、SmはSm23の形態で存在すると考えられる。
本発明のZnO蒸着材は、3価または4価以上の希土類元素を添加するので、2価であるZnに対して過剰のキャリア電子を発生させることができる。また、希土類元素はZnO蒸着材に添加した場合、蒸着時の組成ずれを起こし難い材料であり、形成したZnO膜において所望の組成比率を維持することができる。
一般に、導電性の機構としては、キャリア電子の強制投入以外に酸素欠損によるものがある。通常、蒸着法では酸素ガスを導入するが、一般的には膜組成において酸素が不足状態となる。透明導電膜形成において酸素欠損を生成させ抵抗を下げる手法が採られるが、希土類元素を添加する場合、蒸発性能に優れるので制御しやすい利点がある。本発明はこの利点を利用し、AlやGa以外の添加元素を用い、ITO並みの導電性を得ることができるようにしたものである。
本発明のZnO蒸着材は、3〜50%の気孔率を有するZnO多孔質焼結体からなる。焼結体の気孔率は3〜50%が適当であり、5〜30%が好ましく、10〜30%がより好ましく、20〜30%がさらに好ましい。気孔率が3%未満では電子ビーム蒸着法や、イオンプレーティング法などでの成膜時に、蒸着材の蒸発速度が上がらず、その結果、成膜時速度が低下し、結果的に製造コストが増大するので好ましくない。また、気孔率が50%を上回ると多孔質焼結体の強度が低下し十分な機械強度を得ることが難しくなる。なお、気孔率が10%以上であれば蒸発速度を向上することができ、更に気孔率が20%以上であれば、従来のZnO蒸着材に対して約2倍の蒸発速度を有する蒸着材を得ることができる。
さらに本発明のZnO多孔質焼結体の気孔は平均気孔径が0.1〜500μmであることが好ましい。気孔の平均気孔径が上記範囲内であることによって、蒸発速度をより一層高めることができる。ここで、気孔径が0.1μm未満であると気孔を有するメリットがなく、気孔径が500μmを上回ると焼結体の強度が低下するため、EB(電子ビーム)照射による破損、即ちスプラッシュの原因となるので好ましくない。
なお、気孔径(気孔の内径)とは、例えばSEM等の観察手段によって蒸着材断面部分を観察した際に存在する気孔においてその内部寸法のうち最大のものを意味する。この気孔の評価方法としては、置換法による気孔率の測定、顕微鏡法による気孔率の測定、ガス吸着による表面積および細孔分布の測定、水銀圧入法による表面積および細孔分布の測定、ガス透過法による表面積測定、またはX線小角散乱法による細孔分布の測定等を採用することができる。
気孔の形状は、丸みを帯びたものが好ましく、気孔の表面に更に細かい気孔が形成されているほうが蒸発速度向上のためには好ましい。なお、気孔の評価方法として、表面積測定において、5〜40m2/gであることが好ましく、細孔分布の測定において、1〜100μmの範囲に少なくとも一つの細孔分布のピークを有することが好ましい。また、気孔以外の部分(骨格部分)はほぼ焼結している状態が好ましく、例えば、多孔質焼結体の骨格部分の密度は98%以上であることが好ましい。
更に、本発明のZnO多孔質焼結体の粒子は平均結晶粒径1〜500μmであって、焼結体内に0.1〜500μm程度の丸みを帯びた気孔を有するものが好ましい。このZnO多孔質焼結体は、平均結晶粒径が上記範囲の微細な結晶構造を有し、かつその結晶粒界に欠陥が生じるのを低減できるため、成膜されたZnO膜は、ZnOの膜密度、膜厚分布、屈折率、耐スパッタ性、放電特性(放電電圧、放電応答性等)、絶縁性等の膜特性が優れたものとなる。ここで、平均結晶粒径が1μm未満であると成膜速度を低下させる不具合があり、その平均結晶粒径が500μmを越えると添加元素の蒸着率が不均一になる不具合がある。この平均結晶粒径は5〜40μmの範囲にあることが好ましく、10〜30μmの範囲にあることが更に好ましい。
本発明のZnO蒸着材は、好ましくは円板状または球状のペレットに成形される。この蒸着材が球状である場合には、その直径は5〜30mmが適当であり、5〜15mmが好ましい。この直径が5mm未満では小さすぎてスプラッシュの発生原因となり、直径が30mmを越えると実際の製造工程において取り扱いが困難となるからである。この蒸着材が円板状である場合には、その直径は5〜50mm、好ましくは5〜10mmであって、厚さが1〜30mm、好ましくは2〜5mmが良い。この直径が5mm未満または厚さが1mm未満では小さすぎてスプラッシュの発生原因となり、直径が50mmを越えるかまたは厚さが30mmを越えるとハース(蒸着材溜)への充填率が低下することに起因する蒸着における膜の不均一および成膜速度の低下をもたらす不具合がある。
以下、本発明に係るZnO蒸着材の製造方法を説明する。
〔製造方法〕
本発明に係るZnO蒸着材は、純度98%以上のZnO粉末と、上記添加元素の酸化物粉末と、バインダと、有機溶媒とを混合して、濃度30〜75質量%のスラリーを調製する工程と、該スラリーに気体を吹込んでガス含有スラリーを得る工程と、該ガス含有スラリーを噴霧乾燥して平均粒径が50〜300μmの多孔質造粒粉末を得る工程と、該多孔質造粒粉末を成形して多孔質成形体を得る工程と、該多孔質成形体を所定温度で焼結してZnO多孔質焼結体を得る工程とによって製造することができる。
ZnO粉末は純度98%以上であることが好ましく、98.4%以上が更に好ましく、99%以上がより好ましい。ZnO粉末の純度が98%以上であれば、不純物の影響による導電率の低下を抑えることができる。また、ZnO粉末の平均粒径は0.1〜10μmの範囲内にあることが好ましい。ZnO粉末の平均粒径が0.1μm未満では、粉末が細かすぎて凝集するため、粉末のハンドリングが悪くなり、高濃度スラリーを調製し難い傾向があり、10μmを越えると、微細構造の制御が難しく、緻密なペレットが得られ難い傾向がある。さらに、ZnO粉末の平均粒径を上記範囲に調整すると、焼結助剤を用いなくても所望の焼結体が得られる利点もある。
上記添加元素の酸化物粉末は、該粉末の偏在防止とZnOマトリックスとの反応性および該添加元素化合物の純度を考慮した場合、1次粒子径がナノスケールの酸化粒子を添加することが好ましい。該添加物元素の酸化物粉末は平均粒径が0.01〜1μmの範囲内のものが好ましく、0.05〜0.5μmの範囲のものが特に好ましい。この平均粒径であれば該添加物元素の酸化物粉末を均一に分散するのに都合が良い。
ZnO焼結体中の添加元素の含有量が2〜20質量%、好ましくは3〜6質量%になる量の酸化物粉末を用い、該添加元素の酸化物粉末をZnO粉末に混合して原料粉末を調製する。
バインダとしてはポリエチレングリコールやポリビニルブチラール等を用いることができ、バインダは0.2〜2.5質量%添加することが好ましい。有機溶媒としてはエタノールやプロパノール等を用いることができる。
上記原料粉末と、バインダと、有機溶媒とを混合して、濃度30〜75質量%、好ましくは40〜65質量%のスラリーを調製する。スラリー濃度が75質量%を越えると上記スラリーが非水系であるため安定した造粒が難しく、30質量%未満では均一な組織を有する緻密なZnO焼結体が得られ難い。スラリー濃度を上記範囲に調整すると、スラリーの粘度が200〜1000cpsとなり、スプレードライヤによる粉末の造粒を安定して行うことができ、更には成形体の密度が高くなって緻密な焼結体を得ることができる。
上記原料粉末とバインダと有機溶媒との湿式混合、特に原料粉末と分散媒である有機溶媒との湿式混合は、湿式ボールミルまたは撹拌ミルを用いると良い。湿式ボールミルにおいてZrO2製ボールを用いる場合には、直径5〜10mmの多数のZrO2 製ボールを用いて8〜24時間、好ましくは20〜24時間湿式混合すると良い。ZrO2製ボールの直径が5mm未満では混合が不十分となる場合があり、直径が10mmを越えると不純物が増大する場合があるので好ましくない。なお、混合時間が最長24時間と長くても粉砕による不純物の発生が少ない。一方、湿式ボールミルにおいて、鉄芯入りの樹脂製ボールを用いる場合には、直径10〜15mmのボールを用いることが好ましい。
撹拌ミルでは、直径1〜3mmのZrO2製ボールを用いて0.5〜1時間湿式混合すると良い。なお、ZrO2製ボールの直径が1mm未満では混合が不十分になり易く、3mmを越えると不純物が増えるので好ましくない。また、混合時間が1時間を越えると原料の混合のみならず粉砕による不純物の発生の原因となるので好ましくない。なお、1時間もあれば十分に混合できる。更に、粉末と添加剤の混合/造粒は、一般的な転動造粒法で行ってもよい。この場合、工程後のボール等との分離作業が必要なく、工程が簡略化される利点がある。
本発明の製造方法は、多孔質焼結体を得るための第一の手段として、上記スラリーに気体を吹込んで混入することによってガス含有スラリーを調製する。この気体の吹き込みおよび混入は、機械式ポンプ、ガス圧による吹き込み等により行われることが好ましい。気体としては空気、不溶性ガス、非水溶性ガス等を用いることができる。
このガス含有スラリーを噴霧乾燥させる。この噴霧乾燥はスプレードライヤを用いると良く、150〜250℃で3時間乾燥すると良い。スラリーには気体が吹き込まれているので、このスラリーを噴霧乾燥して得られた造粒粉末は多孔質となる。この噴霧乾燥によって平均粒径50〜300μmの多孔質造粒粉末を得ることができる。
本発明の製造方法は、多孔質焼結体を得るための第二の手段として、発泡剤を混合したスラリーを調製する。発泡剤は有機発泡剤または無機発泡剤を用いることができる。有機発泡剤としてはアゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等が用いられ、無機発泡剤としては炭酸塩等が用いられる。発泡剤は、ZnO粉末、第一添加元素O2粉末、Al23粉末と共に混合しても良く、スラリー調製時に添加しても良い。
この発泡剤含有スラリーを噴霧乾燥させる。この噴霧乾燥はスプレードライヤを用いると良く、150〜250℃で3時間乾燥すると良い。スラリーに含有された発泡剤はこの噴霧乾燥段階において発泡分解し、得られた造粒粉末を多孔質化させる。この噴霧乾燥によって平均粒径が50〜300μmの多孔質造粒粉末を得ることができる。
本発明の製造方法は、多孔質焼結体を得るための第三の手段として、焼結時に揮発・分解する添加剤を混合したスラリーを調製する。この添加剤として、溶媒に溶解するものとしてはブチラール、アルコール系溶媒に可溶な系として、セルロース系、ポリビニル系、ポリエステル系、ポリエチレン系等がある。また、アルコール系溶媒に溶解しないものとしては平均粒径が数μm〜500μm程度のスターチ系、ポリスチレン系を用いることができる。スラリーに20質量%程度のブチラールを混入するか、または、スラリーに20質量%程度のスターチを混入することが好ましい。
スラリーが上記添加剤を含有することによって、この添加剤が焼結時に揮発・分解して気孔が形成されるため、多孔質焼結体を得ることができる。なお、添加剤の種類ないし量を調整して気孔の径および形状を制御することができる。例えば、ブチラール系の添加剤を用いることによって、0.1μm〜10μmオーダーの気孔径を有する気孔を形成することができる。また、スターチを用いた場合には、スターチの粒径と同程度の気孔径および形状を有する気孔を形成することができる。このようにスターチは気孔の気孔径および形状を制御するのが一層容易である。
具体的には、例えば、従来の相対密度98%程度以上のZnO蒸着材の蒸発速度に対して、本発明のZnO蒸着材は、ブチラール系の添加剤を使用した蒸着材では1.3倍程度の蒸着速度を得ることが可能であり、更に、平均粒径0.1〜500μmのスターチを使用した蒸着材では、2.5倍程度の蒸発速度を得ることができる。従って、これらのように高い成膜速度を得ることが可能となる。
本発明の製造方法に類似する手段として、所定範囲の粒度分布を有するZnO粉末を用いたスラリーを調製する方法がある。具体的には、平均粒径が10〜500μmであって、かつ粒度分布が平均粒径の±10%の範囲内に含まれるZnO粉末を用いる。ZnO粉末の粒度分布が平均粒径の±10%の範囲から外れると気孔率が低下する。この粒度分布の更に好ましい範囲は平均粒径の±5%の範囲内である。なお、添加元素の酸化物粉末の好ましい粒径はZnO粉末よりも格段に小さく、ZnO粉末に比べて使用量も少ないので粒度分布の制限から外しても良い。


粒度分布を制御したZnO粉末を用いたスラリーを噴霧乾燥させる。この噴霧乾燥はスプレードライヤを用いると良く、150〜250℃で3時間乾燥すると良い。噴霧乾燥されるスラリーには、平均粒径が10〜500μmであって粒度分布が平均粒径の±10%の範囲内に含まれるZnO粉末が用いられており、これより微細なZnO粉末を実質的に含まないので、ZnO粒子相互の間隙の間が微細なZnO粒子によって充填されることがなく、ZnO粒子相互の間隙は気孔のまま残り、造粒粉末は多孔質化になる。この噴霧乾燥によって平均粒径50〜300μmの多孔質造粒粉末を得ることができる。
次に、上記スラリーを噴霧乾燥して平均粒径50〜300μmの造粒粉末を得た後、この造粒粉末を加圧成形する。ここで、造粒粉末の平均粒径が50μm未満では成形性が劣り、300μmより大きいと成形体密度が低下して強度不足になりやすい。
加圧成形装置は、一軸プレス装置、冷間静水圧成形装置〔CIP(Cold Isostatic Press)成形装置〕またはその他の装置を用いても良い。成形圧力は100〜2000kgf/cm2(9.8〜196MPa)が適当であり、100〜1000kgf/cm2(9.8〜98MPa)が好ましい。上記範囲の圧力で成形することにより、成形体の密度を高め、焼結後の変形を防止し、後加工を不要にすることができる。
次に、上記成形体を焼結する。焼結する前に成形体を350〜620℃の温度で脱脂処理することが好ましい。この脱脂処理によって成形体の焼結後の色斑を防止することができる。この脱脂処理は時間をかけて十分に行うことが好ましい。
焼結は大気、不活性ガス、真空または還元ガス雰囲気中で1000℃以上、好ましくは1200〜1400℃の温度で1〜10時間、好ましくは2〜5時間行う。焼結は大気圧下で行うが、ホットプレス(HP)焼結や熱間静水圧プレス(HIP、Hot Isostatic Press)焼結のように加圧焼結を行う場合には、不活性ガス、真空または還元ガス雰囲気中で1000℃以上の温度で1〜5時間行うことが好ましい。
得られた多孔質焼結体からなるZnO蒸着材をターゲット材として、真空成膜法により基板表面にZnO膜を形成する。本発明のZnO蒸着材を用いて成膜するのに適する真空成膜法としては、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法およびプラズマ蒸着法が挙げられる。これらの成膜方法により成膜される本発明のZnO膜は、上記添加元素を含有するZnO蒸着材を使用しているため、高い導電率と可視光透過率を有するZnO膜が得られる。
また、本発明の製造方法は、スラリーに気体を混入させる第一の態様、発泡剤を含むスラリーを調製する第二の態様、焼成時に揮発分解する添加剤を含むスラリーを調製する第三の態様、所定範囲の粒度分布を有するZnO粉末を用いたスラリーを調製する第四の態様の何れにおいても、気孔率、気孔径および気孔形状を容易に制御することができるため、より最適な気孔を有する蒸着材を製造することが可能となり、これによって、製造条件等によって要求される気孔状態が多々ある場合においても、それらに対応して最適な蒸着材を提供することができる。
さらに、本発明のZnO蒸着材は、気孔率5〜30%おおび気孔径が0.1〜500μmの多孔質焼結体を主体とするので、このZnO蒸着材料を用いて、電子ビーム蒸着法またはイオンプレーティング法によりZnO透明導電膜を成膜した際には、蒸発速度を向上することが可能である。つまり、同じ電子ビームエネルギーで成膜した場合には、成膜速度を高くして作業時間を短縮して所定時間における製造数を増大することができ、また、同程度の成膜速度で成膜した場合には、電子ビームエネルギーを低減して、電子銃のフィラメント等の交換時期を遅くして、メンテナンス回数を低減して生産性を向上し、結果的に製造コストを低減することができる。
以下、本発明の実施例を比較例と共に示す。各実施例および比較例において、市販のZnO粉末、酸化Ce粉末、酸化Y粉末、酸化La粉末、酸化Pr粉末、酸化Nd粉末、酸化Pm粉末、酸化Sm粉末を使用した。何れの粉末も純度99%以上であり、平均粒径は0.3μmである。
スラリーの調製にはボールミル(直径5〜20mmのナイロンコートスチールボール使用)を用い、24時間湿式混合した。さらに、何れの場合にも、成形装置として一軸成形プレス装置を用い、100kgf/cm2(9.8MPa)の圧力で成形し、この成形体を電気炉に入れ、大気中1300℃で3時間焼成し、板状(縦5mm×横5mm×厚さ2mm)の焼結体(ZnO蒸着材)を形成した。実施例および比較例において、気孔率は置換法によって測定した。平均気孔径および結晶粒径の測定はSEM(走査電子顕微鏡)により行った。蒸発速度はハースの斜め上方向に設置した水晶子膜厚モニタによって測定した。
このZnO蒸着材を用い、電子ビーム蒸着法によってガラス基板上に膜厚が200nmのZnO膜を形成した。成膜条件は、到達真空度1.0×10-4Pa、酸素ガス分圧1.0×10-2Pa、基板温度200℃である。成膜時の蒸発速度はハースの斜め上方向に設置した水晶子膜厚モニタによって測定した。形成したZnO膜の比抵抗および可視光透過率を測定した。比抵抗は測定器として三菱化学株式会社における商品名ロレスタ(HP型、MCP−T410、プローブは直列1.5mmピッチ)を用い、雰囲気が25℃の所謂常温において定電流印加による4端子4探針法により測定した。透過率は測定器として株式会社日立製作所の分光光度計U−4000を用い、可視光波長域(380〜780nm)について、成膜後の基板を測定光に対して垂直に設置して測定した。これらの結果を表1、表2に示した。
〔実施例1〕
ZnO粉末93.8g、CeO2粉末6.2gからなる原料粉末100gに、バインダとしてポリビニルブチラールを1質量%添加し、さらに分散媒としてメタノール変性アルコールを加えて、濃度30質量%のスラリーとした。次いで、このスラリーをボールミルに入れ、空気を吹き込んで湿式混合し、ガス含有スラリーとした。このスラリーを真空乾燥機にて80℃で分散媒を気化させ、引き続き乾式解砕して、平均粒径200μmの多孔質造粒粉末を得た。この造粒粉末を加圧成形し、この成形体を焼成して多孔質焼結体ペレット(ZnO蒸着材)を製造した。このZnO蒸着材を用い、ZnO膜を形成した。
〔実施例2〕
CeO2粉末に代えてSc23粉末5.0gを用い、スラリーへの空気吹き込みに代えて発泡剤を添加した以外は実施例1と同様にして多孔質焼結体ペレット(ZnO蒸着材)を製造した。このZnO蒸着材を用い、ZnO膜を形成した。
〔実施例3〕
CeO2粉末に代えてY23粉末5.0gを用い、スラリーへの空気吹き込みに代えて発泡剤を添加した以外は実施例1と同様にして多孔質焼結体ペレット(ZnO蒸着材)を製造した。このZnO蒸着材を用い、ZnO膜を形成した。
〔実施例4〕
CeO2粉末に代えてLa23粉末5.8gを用い、スラリーへの空気吹き込みに代えて焼成時に揮発分解する添加剤を加えた以外は実施例1と同様にして多孔質焼結体ペレット(ZnO蒸着材)を製造した。このZnO蒸着材を用い、ZnO膜を形成した。
〔実施例5〕
CeO2粉末に代えてPr611粉末5.0gを用い、スラリーへの空気吹き込みに代えて焼成時に揮発分解する添加剤としてスターチを用いた焼成時に揮発分解する添加剤を加えた以外は実施例1と同様にして多孔質焼結体ペレット(ZnO蒸着材)を製造した。このZnO蒸着材を用い、ZnO膜を形成した。
〔実施例6〕
CeO2粉末に代えてNd23粉末5.0gを用い、スラリーへの空気吹き込みに代えて焼成時に揮発分解する添加剤を用いた以外は実施例1と同様にして多孔質焼結体ペレット(ZnO蒸着材)を製造した。このZnO蒸着材を用い、ZnO膜を形成した。
〔実施例7〕
CeO2粉末に代えてPm23粉末5.0gを用い、スラリーへの空気吹き込みに代えて発泡剤を添加した以外は実施例1と同様にして多孔質焼結体ペレット(ZnO蒸着材)を製造した。このZnO蒸着材を用い、ZnO膜を形成した。
〔実施例8〕
CeO2粉末に代えてSm23粉末5.0gを用い、スラリーへの空気吹き込みに代え、ZnO粉末を篩い分けし、平均粒径60μmおよび粒度分布が55〜65μmの範囲内に含まれるZnO粉末とした。このZnO粉末と酸化Sm粉末の混合原料粉末に、バインダとしてポリビニルブチラールを1質量%添加し、有機溶媒としてメタノール変性アルコールを30質量%添加し、それらを混合してZnO粉末の濃度が30質量%のスラリーを調整した。次いでこのスラリーを噴霧乾燥させて平均粒径200μmの多孔質造粒粉末を得た。この造粒粉末を加圧成形し、この成形体を焼成して多孔質焼結体ペレット(ZnO蒸着材)を製造した。このZnO蒸着材を用い、ZnO膜を形成した。
〔比較例1〕
実施例1と同様の原料粉末を用い、スラリーへの空気導入、発泡剤の添加、焼成時に揮発分解する添加剤の使用の何れも行わない以外は実施例1と同様にしてスラリーを調製し、このスラリーを噴霧乾燥させて平均粒径200μmの造粒粉末を得た。この造粒粉末を加圧成形し、この成形体を焼成して焼結体ペレット(ZnO蒸着材)を製造した。このZnO蒸着材を用い、ZnO膜を形成した。
〔比較例2〕
ZnO粉末100gを用い、添加元素の酸化物粉末を加えない以外は実施例1と同様にしてスラリーを調製し、このスラリーを噴霧乾燥させて平均粒径200μmの造粒粉末を得た。この造粒粉末を加圧成形し、この成形体を焼成して焼結体ペレット(ZnO蒸着材)を製造した。このZnO蒸着材を用い、ZnO膜を形成した。
〔蒸着試験〕
実施例1〜5のZnO蒸着材、比較例1〜3のZnO蒸着材を用い、蒸着試験を行った。電子ビーム蒸着装置のハース(直径50mm、深さ25mm)にサンプルの蒸着材を仕込み、到達真空度2.66×10-4Pa(2.0×10-6Torr)、O2分圧1.33×10-2Pa(1.0×10-4Torr)の雰囲気に調整し、加速電圧10kV、ビームスキャンエリア約40mmφの電子ビームを照射してZnO蒸着材を加熱し、ZnO膜を形成した。なお、蒸発速度はハースの斜め上方向に設置した水晶子膜厚モニタにより測定した。この結果を表2に示す。
表1、表2に示すように、実施例1〜5の蒸発速度は比較例1より大きい。また、比較例2〜3の蒸発速度は実施例5と同程度であるが、比抵抗が大きく導電性が低い。
〔耐湿性試験〕
実施例1〜5、比較例1、2の試料について、耐湿試験を行った。耐湿性試験は、湿度60%、温度90℃の雰囲気で2000時間まで測定した。各時間における膜の比抵抗を測定した。この結果を表3に示した。
表3に示すようにCe,Sc,Y,La,Pr,Nd,Pm,Smを含んだZnO蒸着材を用いて成膜されたZnO膜の耐湿性は無添加のZnO膜に比べ、比抵抗の劣化率が数倍低い。これはCe,Sc,Y,La,Pr,Nd,Pm,Smを含んだZnO膜が数倍安定であることを示している。
〔実施例6〜8〕
Ce含有量0.2質量%、Nd含有量0.1質量%、気孔率10〜29%になるように調整した以外は実施例1と同様にして多孔質焼結体ペレット(ZnO蒸着材)を製造した。
〔実施例9〜11〕
Ce含有量14.9質量%、Pm含有量10質量%、気孔率10〜31%になるように調整した以外は実施例1と同様にして多孔質焼結体ペレット(ZnO蒸着材)を製造した。
〔比較例4〕
気孔率が2%になるように調整した以外は実施例6〜8と同様にして多孔質焼結体ペレット(ZnO蒸着材)を製造した。
〔比較例5〕
気孔率が2%になるように調整した以外は実施例9〜11と同様にして多孔質焼結体ペレット(ZnO蒸着材)を製造した。
〔比較例6〜9〕
Ce含有量20質量%、Sm含有量15質量%、気孔率8〜30%になるように調整した以外は実施例1と同様にして多孔質焼結体ペレット(ZnO蒸着材)を製造した。
実施例6〜11、比較例4〜9の試料について、蒸着試験を行った。この結果を表4に示した。表4に示すように、実施例6〜11のZnO蒸着材の蒸発速度は表1と同様に比較例より速く、また比抵抗も優れる。一方、気孔率が小さい比較例4、5、9の蒸発速度は14.8〜14.9であり、大幅に低い。また、Ce含有量およびSm含有量が多い比較例6〜9はZnO膜の比抵抗が格段に大きく、透過率は大幅に低い。
Figure 0005516838
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Claims (3)

  1. 透明導電膜の成膜に用いられるZnO蒸着材であって、ZnO純度が98%以上のZnO焼結体からなり、該焼結体がY、La、Sc、Ce、Pr、Nd、PmおよびSmの群から選ばれた1種または2種以上の添加元素を含有し、上記添加元素の含有量が2〜20質量%であり、かつ該焼結体が3〜50%の気孔率を有し、平均気孔径0.1〜500μmの気孔を有する多孔質焼結体からなるZnO蒸着材を製造する方法であって、(I)純度98%以上であって平均粒径は0.1〜10μmのZnO粉末と、平均粒径が0.01〜1μmの上記添加元素の酸化物粉末と、バインダと、有機溶媒とを混合して、濃度30〜75質量%のスラリーを調製する工程と、(II)該スラリーに気体を吹込んでガス含有スラリーを得る工程と、(III)該ガス含有スラリーを噴霧乾燥して平均粒径が50〜300μmの多孔質造粒粉末を得る工程と、(IV)該多孔質造粒粉末を成形して多孔質成形体を得る工程と、(V)該多孔質成形体を所定温度で焼結してZnO多孔質焼結体を得る工程とを有することを特徴とするZnO蒸着材の製造方法。
  2. 請求項1に記載する製造方法において、上記(II)(III)の工程に代え、(II-2)原料粉末またはスラリーに発泡剤を混入して発泡剤含有スラリーを得る工程と、(III-2)該発泡剤含有スラリーを噴霧乾燥しつつ発泡させて平均粒径が50〜300μmの多孔質造粒粉末を得る工程を有するZnO蒸着材の製造方法。
  3. 請求項1に記載する製造方法において、上記(II)〜(V)の工程に代え、(II-3)原料粉末またはスラリーに焼成時に揮発分解する添加剤を混入して添加剤含有スラリーを得る工程と、(III-3)該添加剤含有スラリーを噴霧乾燥して平均粒径が50〜300μmの造粒粉末を得る工程と、(IV-3)該造粒粉末を成形して成形体を得る工程と、(V-3)上記添加剤を揮発分解させつつ焼結してZnO多孔質焼結体を得る工程を有するZnO蒸着材の製造方法。
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