JP4577924B2 - 酸化亜鉛を含有するスパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明導電膜等の薄膜形成用材料として用いられる酸化亜鉛系スパッタリングターゲットに関し、特に色むら発生の防止が図られたスパッタリングターゲットの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、液晶表示装置等のデバイスの透明導電膜材料としてはITO(酸化インジウム−酸化錫)が広く用いられている。ITO透明導電膜は、通常ITO焼結体ターゲットを用いてスパッタ法によって作製されている。このITO膜は、低抵抗で透明性に優れた材料であるが、原材料である酸化インジウムならびに酸化錫が比較的高価であることから、コスト的に必ずしも満足できるものではないという問題を有していた。
【0003】
そこで、酸化インジウム、酸化錫に変わる材料として酸化亜鉛を含有する材料が注目さ
れ種々の開発が行われている。
【0004】
一般的に、酸化亜鉛を含有する透明導電膜は、ITO透明導電膜と同様にスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により成膜される。この時使用されるスパッタリングターゲットは酸化亜鉛を含有する焼結体を加工することにより得ることができる。
【0005】
しかし、酸化亜鉛を含有する成型体を焼成した場合、得られた焼成体の周辺部と中央部、あるいは表面と内部に色合いの相違が形成されるという色むらの問題が発生する場合がある。このような色むらが発生すると、色合いが違う部分の導電率に差異が生じるため、材質の均一性が要求されるスパッタリングターゲットとしては好ましくない。したがって、色むらの発生したターゲットにおいては、焼結後の工程においてターゲット表面の色むら部分をすべて削り取る必要がある。このため、研磨によって削り取られた材料が無駄になるとともに、このような研磨のための付加的な工程が必要になるという問題がある。さらに、あらかじめこのような色むら発生に備えて焼結体を、予想される色むら分だけ厚くする必要があることから、初期原料投入量も多くなり、このため上述した製造工程の煩雑化とともに製造コストが高くなるという問題がある。
【0006】
このような酸化亜鉛を含有するスパッタリングターゲットの製造技術としては、従来、特開平6−234565号、特開平9−111444号、特開平11−60339号などが知られているが、上述した問題点を解消するものではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、大型サイズの焼結体を作製した場合でも相対密度95%以上の高密度の酸化亜鉛含有スパッタリングターゲットが得られ、しかも得られた焼結体は、従来問題となっていた色むらの発生が抑制され、材質の均一化の点においてもすぐれた酸化亜鉛含有スパッタリングターゲットを製造するための、コストの低減化が図られた方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明に係るスパッタリングターゲットの製造方法は、酸化亜鉛を含有する原料粉末混合物を成形し、焼結することによって酸化亜鉛を含有するスパッタリングターゲットを製造するに際し、前記原料粉末に色むら防止剤を添加することを特徴とするものである。
【0009】
上記色むら防止剤は、具体的には、希土類元素を含む化合物からなり、好ましくは、複数の酸化物形態をとり得る化合物からなる。さらに、別の観点から、上記色むら防止剤は、好ましくは六方晶系に属する酸化ランタン型結晶構造を有する化合物からなる。
【0010】
本発明において使用し得る最も好ましい色ムラ防止剤は、酸化セリウムである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に係るスパッタリングターゲットの製造方法は、酸化亜鉛を含有する原料粉末混合物を成形し、焼結することによって酸化亜鉛を含有するスパッタリングターゲットを製造するに際し、上記原料粉末に色むら防止剤を添加することを特徴としている。以下、本発明の製造方法を詳細に説明する。
【0012】
本発明の方法においては、原料としての酸化亜鉛と酸化インジウムの粉末を混合するに先立って、まず、酸化亜鉛粉末のみを仮焼することが好ましい。このように酸化亜鉛粉末をあらかじめ仮焼することによって、粉末粒子を粒成長させて粉体としての活性を低下させることができる。この場合の仮焼温度は、400〜800℃程度が好ましく、さらに好ましくは400〜600℃である。仮焼温度が高くなりすぎると粒子の凝結が進み、その後の解砕がし難くなるので好ましくない。仮焼時間は、2時間以上が好ましい。
【0013】
次いで、得られた酸化亜鉛仮焼粉末を酸化インジウムなどと目的の組織となるように混合する。この場合の混合は、ボールミル等を用いた常法に従って実施され得る。
【0014】
本発明においては、酸化亜鉛を含有する原料粉末混合物に、さらに色むら防止剤を添加する。本発明における色むら防止剤は、複数の酸化物形態をとり得る化合物から選ばれる。具体的には、複数の酸化物形態をとり得る希土類酸化物から好ましく選ばれる。このような複数の酸化物形態をとり得る希土類化合物としては、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化テルビウムなどの複数の酸化物形態を有する希土類酸化物が好ましく用いられ得る。
【0015】
また、結晶構造に関していえば、六方晶系に属する酸化ランタン型結晶構造を有する化合物が好ましい。この中でも特に好ましい化合物は、酸化セリウムである。
【0016】
酸化亜鉛含有スパッタリングターゲットにおいて、前述したような色むらが発生するメカニズムは必ずしも明らかではないが、本発明者の知見によれば、色むら発生の原因の一つとして、構成原料としての酸化亜鉛自体の酸素の不定比性が比較的顕著なことが考えられる。すなわち、酸化亜鉛の酸素の不定比性が顕著なことに起因して、焼成時において成形体の表面近傍の酸素の出入りが激しくなり、これによって色むらが発生すると考えられる。本発明者は、上述した酸化セリウムのような複数の酸化形態を有する希土類化合物を添加することによって、予想外なことに、問題となっていた色むらの発生を効果的に抑制することができることを発見した。このような複数の酸化形態を有する希土類化合物は、その化学的構造に起因して酸素を吸収したり放出したりしやすいため、焼成時における形成体自体における総合的な酸素の出入りが緩和されて形成体自体の酸素の不定比性が見かけ上消失し、これによって色むらの発生が抑制されるものと推測される。
【0017】
本発明においては、上記の酸化亜鉛を含有する原料粉末の合計重量に対して、色むら防止剤を、好ましくは0.01重量%〜5.0重量%、さらに好ましくは、0.1〜1.0重量%添加し、均一微細に混合して原料粉末混合物を調製する。ここで、色むら防止剤の添加量が0.01重量%未満では、目的とする色むらの発生を効果的に抑制することができず、一方、5.0重量%を超えて添加すると、逆に成膜したときの薄膜の抵抗値が増加する傾向が見られるので好ましくない。
【0018】
原料粉末混合物の配合割合の好ましい具体例としては、酸化亜鉛0.1重量%〜40重量%、色むら防止剤0.01重量%〜5.0重量%、および残部として酸化インジウムを含んでなるもの、あるいは、酸化亜鉛70.0重量%〜99.9重量%、色むら防止剤0.01重量%〜5.0重量%、および残部としてその他添加物を含んでなるものが好ましい。
【0019】
上記のような小原料粉末混合物に、必要に応じて、成形助剤を添加した後、プレス成形または鋳込み成形などにより粉末混合物を成形し、乾燥、脱脂、ならびに焼結する。
【0020】
酸化亜鉛を含有する粉末と酸化セリウム粉末を混合する方法は均一微細に混合できればよく、乾式・湿式混合または共沈法などが適用可能である。
【0021】
本発明においては、成形助剤を必要に応じて添加することができるが、この場合の成形助剤としては、所定の形状に形成でき、焼成時に成形助剤成分が揮発し、不純物として残留しない物質が使用され得る。例えば、ポリビニルアルコールなどが好ましい成分として挙げられる。
【0022】
成形密度は原料粉の加重平均密度に対して、好ましくは50%以上の充填率に成型できるならばどのような成型方法でもよく、好ましくは55%以上である。
成形密度が低い場合、焼結密度が十分に高くならないため、焼結体の色むら発生量が多くなる傾向が見られ、さらに焼結体にソリが発生しやすくなる等の不備が生じるので好ましくない。
【0023】
成形体が、水分を含む場合は、水分を除去し、充分乾燥させることが望ましい。その乾燥時間、乾燥温度は、成形体の大きさに依存する。たとえば、成形サイズ380×1000×12mmの場合においては、温度80℃において15時間乾燥すれば十分である。
【0024】
成形体の脱脂は、たとえば200℃〜600℃の温度範囲において、1〜10時間行うのが好ましい。
【0025】
成形体の焼結において、昇温速度は速ければ速いほど、色むらの割合が少なくなり、焼結体の密度も高くなる傾向が見られる。この点に鑑みて、昇温速度は、好ましくは、200℃/時間以上である。
【0026】
焼結温度は、特に限定されるものではないが、目的に応じて所定の温度が適宜選択され得るが、通常、1200〜1600℃の範囲である。
【0027】
得られた焼結体に、必要に応じて、平面研削による面出し加工等の機械加工を行いスパッタリングターゲットが得られる。
【0028】
酸化亜鉛を含有する透明導電膜において、酸化亜鉛を0.1重量%〜40重量%、残部が酸化インジュウムよりなるもの、および、酸化亜鉛を99.99重量%〜70.0重量%、残部がその他の添加元素よりなるものは酸化亜鉛を含有する透明導電膜の代表的な組成である。
【0029】
また、本発明における色むら防止剤は、上述したように、酸化亜鉛の酸素の不定比性を緩和したり、酸化亜鉛と空気中の水分などとの望ましくない反応を抑制する効果があると考えられるので、本発明における酸化亜鉛含有スパッタリングターゲットは、色むらの発生を効果的に防止することができるという効果の他に、スパッタリング中におけるスパッタリングターゲット自体の化学的変化が少ない、また成膜される薄膜の安定性が向上するなどの付加的な効果が期待できる点においても工業上有利である。
【0030】
【実施例】
実施例1
BET表面積が3〜7m/gの酸化インジウム(In)粉末と、BET表面積が0.2〜4m/gの酸化亜鉛(ZnO)粉末とBET表面積が2〜5m/gの酸化セリウム(CeO)粉末を酸化インジウムと酸化亜鉛と酸化セリウムをボールミルにて24時間混合し、均一微細な混合粉を得た。
【0031】
この混合粉にポリビニルアルコール水溶液を添加し造粒し、プレス成形にてサイズ380×600×12mm、成形密度4.2g/cmの成形体を得て、この成形体を80℃にて15時間乾燥した後、200℃〜600℃にて6時間脱脂した後、成形体をジルコニア系セッター上に置き、1350℃、1550℃にて8時間焼結した。この時の昇温速度は350℃/時間であり、降温速度は50℃〜100℃であった。1350℃で焼成した物の色むらの厚みは0.3mm以下、焼結体のソリは0.5mm、焼結密度6.9g/cmであり、1550℃のものは、各々、0.4mm以下、0.6mm、7.0g/cmであった。
【0032】
比較例1
BET表面積が3〜7m/gの酸化インジウム(In)粉末と、BET表面積が0.2〜4m/gの酸化亜鉛(ZnO)粉末をボールミルにて24時間混合し、均一微細な混合粉を得た。
【0033】
この混合粉にポリビニルアルコール水溶液を添加し造粒し、プレス成形にて、サイズ380×600×12mm、成形密度3.4g/cmの成形体を得て、この成形体を80℃にて15時間乾燥した後、200℃〜600℃にて6時間脱脂した後、成形体をジルコニア系セッター上に置き、1350℃、1550℃にて8時間焼結した。この時の昇温速度は350℃/時間であり、降温速度は50℃〜100℃であった。1350℃で焼成した物の色むらの厚みは0.4〜1.0mm、焼結体のソリは0.5mm、焼結密度6.9g/cmであり、1550℃のものは0.4〜0.9mm、0.6mm、7.0g/cmであった。
【0034】
色むら防止剤を添加しない場合は、色むらの発生がいきおい多くなることがわかる。
【0035】
実施例2
平均粒径が0.24〜0.30μmの酸化亜鉛2種品(三井金属(株)製)の酸化亜鉛粉末とアルミナ粉末(AKP−20:住友化学(株)製)とBET表面積が2〜5m/gの酸化セリウム(CeO)粉末をそれぞれ96.5wt%、3.0wt%、0.5wt%になるようにボールミルにて24時間混合し、均一微細な混合粉を得た。この混合粉にポリビニルアルコール水溶液を添加し造粒し、プレス成形にてサイズ380×600×12mm、成形密度3.4g/cmの成形体を得、この成形体を80℃にて15時間乾燥した後、200℃〜600℃にて6時間脱脂した後、成形体をジルコニア系セッター上に置き、1350℃および1500℃にて8時間焼結した。この時の昇温速度は250℃/時間であり、降温速度は50℃〜100℃であった。1350℃、1500℃共に色むらの厚みは0.3mm以下、焼結体のソリは0.5mm焼結体の密度5.6g/cmであり、良好に焼結できた。
【0036】
比較例2
平均粒径が0.24〜0.30μmの酸化亜鉛2種品(三井金属(株)製)の酸化亜鉛粉末とアルミナ粉末(AKP−20:住友化学(株)製)をそれぞれ97wt%、3.0wt%になるように配合し、ボールミルにて24時間混合し、均一微細な混合粉を用いたこと以外は実施例2と同じ方法で焼結体を作成した。この結果、色むらの厚みはともに0.5〜1.0mm、焼結体のソリは0.5mm焼結体の密度5.6g/cmであった。
【0037】
色むら防止剤を添加しない場合は、色むらの発生がいきおい多くなることがわかる。
【0038】
実施例3
BET表面積が3〜7m/gの酸化インジウム(In)粉末と、BET表面積が0.2〜4m/gの酸化亜鉛(ZnO)粉末とBET表面積が2〜10m/gの酸化プラセオジム(Pr11)粉末を酸化インジウムと酸化亜鉛と酸化セリウムボールミルにて24時間混合し、均一微細な混合粉を得た。
【0039】
この混合粉にポリビニルアルコール水溶液を添加し造粒し、プレス成形にてサイズ380×600×12mm、成形密度4.2g/cmの成形体を得て、この成形体を80℃にて15時間乾燥した後、200℃〜600℃にて6時間脱脂した後、成形体をジルコニア系セッター上に置き、1350℃、1550℃にて8時間焼結した。この時の昇温速度は350℃/時間であり、降温速度は50℃〜100℃であった。1350℃で焼成した物の色むらの厚みは0.4mm以下、焼結体のソリは0.4mm、焼結密度6.8g/cmであり、1550℃のものは、各々、0.4mm以下、0.5mm、6.9g/cmであった。

Claims (9)

  1. 酸化亜鉛を含有する原料粉末混合物を成形し、1350〜1600℃の温度で焼結することによって酸化亜鉛を含有する相対密度95%以上のスパッタリングターゲットを製造するに際し、前記原料粉末に複数の酸化物形態をとり得る希土類元素を含む希土類酸化物からなる色むら防止剤を添加することを特徴とする、スパッタリングターゲットの製造方法。
  2. 前記色ムラ防止剤が、六方晶系に属する酸化ランタン型結晶構造を有する化合物からなる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記色ムラ防止剤が、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化テルビウムから選ばれたものである、請求項1に記載の方法。
  4. 前記色むら防止剤が、酸化セリウムである、請求項3に記載の方法。
  5. 前記原料粉末混合物が、酸化亜鉛0.1重量%〜40重量%、色むら防止剤0.01重量%〜5.0重量%、および残部として酸化インジウムを含んでなる、請求項1に記載の方法。
  6. 前記色むら防止剤が、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化テルビウムから選ばれたものである、請求項5に記載の方法。
  7. 前記色むら防止剤が、酸化セリウムである、請求項6に記載の方法。
  8. 前記原料粉末混合物が、酸化亜鉛70.0重量%〜99.9重量%、色むら防止剤0.01重量%〜5.0重量%、および残部として酸化インジウムおよび酸化アルミニウムから選ばれた添加物を含んでなる、請求項1に記載の方法。
  9. 前記色むら防止剤が、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化テルビウムから選ばれたものである、請求項8に記載の方法。
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