JP5516732B2 - 電極材料およびそれを含む電極、電池、ならびに電極材料前駆体の製造方法およびそれを用いた電極材料の製造方法 - Google Patents

電極材料およびそれを含む電極、電池、ならびに電極材料前駆体の製造方法およびそれを用いた電極材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電極材料等、ならびに電極材料前駆体の製造方法および電極材料の製造方法に関する。より詳しくは、リチウムイオン電池等の二次電池の電極材料として好適に用いることができる電極材料等、ならびに電極材料前駆体の製造方法および電極材料の製造方法に関する。
近年、環境問題への関心の高まりを背景に、石油や石炭等の化石燃料から電力へのエネルギー資源の転換が進んでおり、これに伴って電池の需要が年々高まっている。特に、繰り返し充放電を行うことができる二次電池は、携帯電話やノートパソコン等の電子機器において広く利用されているだけでなく、自動車や航空機等の分野や定置型電源等の中大型分野への展開も期待されており、研究開発が活発に行われている。
これらの電池は、主に正極、負極等の電極、電解質及びセパレーターの各要素から構成されている。そして、より高い性能を発揮する電池の実現を目指して、これらの各構成要素について研究が行われている。これらの中でも、電極は、電池の性能に大きな影響を与えるものであることから、その材料について様々な研究がなされている。例えば、電気化学的に酸化還元反応を示すポリマー活物質の粉末と導電補助剤の粉末との混合粉末を熱プレスにより所定の厚さに一体成型した電極(例えば、特許文献1参照。)や、リチウム、マンガン及び酸素を主体とする複合酸化物であるマンガン酸化物の表面に、π電子共役系構造を有する導電性高分子を被覆した正極活物質(例えば、特許文献2参照。)、及び、電極材料に加える物質(「コア粒子」)の表面に導電性物質(「被覆材」)を被せて、電池特性を改良した電極添加剤(例えば、特許文献3参照。)等が提案されている。
また、これまで小型の民生用途において電極活物質として用いられてきたコバルト酸リチウムに代わり、近年は、資源的制約を受けにくく安全性が高いオリビン型リン酸鉄リチウムが注目を集めている。ただし、リン酸鉄リチウムは、導電性が低いことが課題として挙げられていた。そこで、導電性向上のためにリン酸鉄リチウムの表面にカーボンを被覆したコア・シェル構造を有し、電極材料として利用可能なリン酸鉄リチウム/カーボンナノコンポジットの製造方法が報告されている(例えば、非特許文献1及び特許文献4参照。)。また、活物質表面をカーボン材料で被覆するのではなく、リン酸塩にチッ素を導入することにより、リン酸塩表面の酸素配列が変化し、電導に関与するキャリアーが発生して活物質の抵抗率を下げる手法が報告されている(例えば、特許文献5参照。)。
特開2001−118570号公報(第1−2頁) 特開2002−358959号公報(第1−2頁) 特表2007−522619号公報(第1−2頁) 特開2010−40357号公報(第1−2頁) 特開2005−353320号公報(第1−3頁)
Yonggang Wang、Yarong Wang、Eiji Hosono、Kaixue Wang、Haoshen Zhou、「アンゲバンテ ヘミー インターナショナル エディション(Angew.Chem.Int.Ed.)」(独国)、2008年、第47巻、p.7461−7465
上記のように、電極の材料として様々な構成のものが提案されているが、これらの電極材料は、いずれも性能面で更なる改良の余地を残している。その中で、リチウムイオン電池用の正極は、一般的には、リチウムを含む活物質、カーボン等の導電助剤及びポリフッ化ビニリデン等のバインダーを、溶剤であるN−メチルピロリドン(NMP)と共に混練し、スラリー化して、得られたスラリーを集電体に塗工して乾燥させることで形成される。しかしながら、NMPは人体への毒性が懸念されている物質であるため、スラリーを塗工した後の乾燥工程において、通常NMPは回収され、再利用される。このことから、スラリーを調製するための溶剤としてNMPを用いることには、安全性の問題、更には回収に伴うコストの問題があった。
上述したような問題を解決するために、水系スラリーを用いることが提案されている。水系スラリーを用いて形成されるリチウムイオン電池用の正極としては、正極活物質と、バインダー成分と、分散媒としての水とを含有する正極ペーストから形成される正極が検討されている。しかしながら、通常、正極活物質の水分散は充分でないため、集電体上に正極ペーストを均一に塗工することは困難であり、改良の余地があった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、水分散性に優れた活物質を得ることができるとともに、水系スラリーとした場合でも電池性能に優れた電極を形成することができる電極材料を提供することを目的とする。
一方、電極材料を効率的に製造することも重要である。電極材料の製造において、高濃度の反応原料を用いることが効率的な製造の点からは好ましい。しかしながら、反応原料の濃度を高めて製造すると、得られる電極材料の性能が低下するおそれがあり、電極材料の性能と製造効率とを両立させることは容易ではない。今後は電池需要の増大に伴って、電池の高性能化に加え、低コスト化の要求も高まることが予想される。したがって、高い性能を発揮する電極材料を効率的に製造できる製造方法を開発することは電池分野における大きな課題である。
通常、電極材料の製造は、前駆体を製造した後、更に前駆体に他の原料を反応させることにより行われ、製造される電極材料の特性は用いられる前駆体にも影響されることになる。このため、優れた性能を発揮する電極材料を効率的に製造するための一つの方策として、その原料となる前駆体の製造方法について更に検討する工夫の余地があった。
本発明はまた、上記現状に鑑みてなされたものであり、高濃度の反応原料を用いた場合であっても、得られる電極材料の性能を充分に高いものとすることが可能な電極材料前駆体の製造方法を提供することをも目的としている。
また、上記のように提案されている電極材料を用いて作成した電池は、充分な性能を発揮するものとはいえず、更に高性能な電池を可能とする電極材料の開発が求められている。このような電極の材料として用いられる電極活物質には、粒子径が小さく、かつ、粒子径の大きさが均一であることが要求される。しかしながら、電極活物質の原料となる活物質原料として粒子径の小さいものを用いると、電極活物質の製造工程において、溶液中で活物質原料が凝集、成長しやすくなる。このため、電極活物質の製造工程において生成する電極材料前駆体の粒子径が大きくなったり、粒子の大きさが不均一なものとなったりしやすくなる。粒子径が小さく、粒子径の大きさが均一な電極活物質を製造するためには、その前駆体を粒子径が小さく、均一なものとする必要があるが、そのような電極材料前駆体を製造することは容易ではない。このため、このような電極材料前駆体製造に関する課題を解決することができる製造方法を開発する工夫の余地があった。
本発明はまた、上記現状に鑑みてなされたものであり、粒子径が小さく、均一であって、高い性能を発揮する電極の材料として好適に用いることができる電極材料前駆体を提供することをも目的としている。
更に、例えば、電極材料としてリチウム含有電極材料を製造する場合には、通常、前駆体を製造した後、更に前駆体にリチウム塩を含む他の原料を反応させて製造される。ここで、優れた性能を発揮するリチウム含有電極材料を製造するための一つの方策として、前駆体と他の原料とを反応させる工程について更に検討する工夫の余地があった。
本発明はまた、上記現状に鑑みてなされたものであり、高い性能を発揮するリチウム含有電極材料の製造方法を提供することをも目的としている。
本発明者は上述した電極材料に関する問題点について種々検討し、その一つの着眼点として、電極材料に含まれる活物質自身の水系溶媒への分散性に着目した。そして、活物質を導電性炭素材料により被覆された構造とし、活物質の窒素原子含有量を活物質の総量100質量%に対して0.3質量%以上とすることにより、活物質の水分散性が著しく向上することを見出した。そしてこの結果、水系スラリーにより電極を形成した場合においても電池性能に優れた電極を形成することが可能であることを見出した。このように、活物質の窒素原子含有量を特定以上とすることによって上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
本発明者はまた、優れた性能を発揮する電極材料を製造することが可能な電極材料前駆体を反応原料の濃度を高めて製造する方法について種々検討を行った。電極材料前駆体の製造方法としては、活物質原料を含む溶液中で前駆体微粒子を生成させるとともに、該微粒子にモノマーの重合によって生成する重合体による被覆構造を形成させて電極材料前駆体を製造する方法を用いることとした。そして、この製造方法において、活物質原料とともに酸化重合性モノマーと酸化剤とを必須原料として電極材料前駆体を合成する工程における反応溶液のpHに着目した。そこで、該工程における反応溶液のpHを特定の範囲に制御して前駆体を製造するようにすると、前駆体合成時の反応原料濃度を高くしても、電極材料としての性能の低下を充分に抑制して高い性能を発揮する電極材料の製造を可能とする電極材料前駆体を製造することができることが分かった。これにより、電極材料の性能と電極材料製造の効率とを両立することが可能となることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
本発明者はまた、粒子径が小さく、かつ均一な電極材料前駆体を製造することができる方法について種々検討を行った。電極材料前駆体の製造方法としては、活物質原料を含む溶液中で前駆体微粒子を生成させるとともに、該微粒子にモノマーの重合によって生成する重合体による被覆構造を形成させて電極材料前駆体を製造する方法を用いることとした。そして、この製造方法において、重合体による被覆構造を形成させるためのモノマーとして酸化重合性モノマーを用い、反応溶液中に酸化剤を供給しながら前駆体を合成すると、反応溶液中で生成した前駆体微粒子が他の前駆体微粒子と接触する前に重合体による被覆構造が形成される。このため、活物質原料として粒子径の小さいものを用いた場合でも、前駆体微粒子同士が凝集、成長して粒子径が大きくなることが抑制される。これによって、粒子径が小さく、均一な電極材料前駆体が得られることを見出した。更に、本発明者は、前駆体を合成する際に、酸化剤とともに、活物質原料及び/又は酸化重合性モノマーを供給しながら反応させるようにすると、反応原料を高濃度にした場合でも、電極材料としての性能の低下を充分に抑制して電極材料の前駆体を製造することができることをも見出した。これにより、電池性能に優れた電池を可能とする電極材料の前駆体を効率的に製造できることも見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
本発明者は更に、高い性能を発揮することのできるリチウム含有電極材料の製造方法について種々検討を行った。そして、一つの着眼点として、リチウム含有電極材料を製造する全工程のうちの前駆体とリチウム塩を含む他の原料とを反応させる工程に着目した。そこで、この工程において、前駆体と他の原料とが反応する際に、できるだけ均一に混ざり合った状態で反応が進行するようにすると、より均質なリチウム含有電極材料が得られることが分かった。そのようなリチウム含有電極材料は従来よりも高い性能を発揮することができることが分かった。
ここで、前駆体微粒子が重合体による被覆構造を有する電極材料前駆体とリチウム塩を含む他の原料とを溶媒の存在下で混合して混合物を調製すると、通常粉末状である前駆体及び他の原料を溶媒の存在によりペースト状で混合して混合物を調製することになる。そのため、単に粉末どうしを乾式混合するよりも均一に混ぜ合わせることができるようになる。そして、そのようなペースト状で混合した混合物を熱処理すると、活物質微粒子が均質なものとなり、そのような活物質微粒子が炭素成分によって被覆された構造を有するリチウム含有電極材料が得られることが分かった。そのようなリチウム含有電極材料が高い性能を発揮することを見出した。
本発明者はまた、高い性能を発揮することのできるリチウム含有電極材料を製造するためのその他の方法として、次のような方法を見出した。活物質原料、酸化重合性モノマー、酸化剤を必須原料として、必須原料の濃度を全ての前駆体原料を含む溶液100質量%に対して3〜60質量%とした溶液中で前駆体微粒子を生成させる。それとともに、該前駆体微粒子に酸化重合性モノマーの重合によって生成する重合体による被覆構造を形成させる。それによって製造される電極材料前駆体と融点が400℃以下であるリチウム塩とを必須成分として混合物を調製する。そして、該混合物を熱処理する。このような方法によって、高い性能を発揮するリチウム含有電極材料が得られることを見出した。このようにすると、熱処理工程において、前駆体微粒子とリチウム塩とが反応して活物質微粒子が生成する。この際、この活物質微粒子の生成反応が起こる温度までにリチウム塩が溶融し液状化する。これにより、前駆体及び他の原料をペースト状で混合して混合物を調製することになる。そのため、均一な混合物を調製することができ、上述の方法と同様に、活物質微粒子が均質なものとなり、高い性能を発揮するリチウム含有電極材料を得ることができる。
これらのようにすることで、電池性能に優れた電池を可能とするリチウム含有電極材料を製造できることを見出して、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、活物質を含む電極材料であって、上記活物質は、導電性炭素材料により被覆された構造を有し、活物質の総量100質量%に対する窒素原子含有量が0.3質量%以上である電極材料である。
また、活物質原料を含む溶液中で前駆体微粒子を生成させるとともに、上記微粒子にモノマーの重合によって生成する重合体による被覆構造を形成させて電極材料前駆体を製造する方法であって、上記製造方法は、活物質原料とともに酸化重合性モノマーと酸化剤とを必須原料とし、溶液のpHを0.3以上、3.0以下とする工程を含む電極材料前駆体の製造方法も、本発明の一つである。
活物質原料を含む溶液中で前駆体微粒子を生成させるとともに、上記微粒子にモノマーの重合によって生成する重合体による被覆構造を形成させて電極材料前駆体を製造する方法であって、上記製造方法は、活物質原料とともに酸化重合性モノマーと酸化剤とを必須原料とし、反応溶液中に酸化剤を供給しながら前駆体を合成する工程を含む電極材料前駆体の製造方法もまた、本発明の一つである。
活物質微粒子が炭素成分による被覆構造を有するリチウム含有電極材料の製造方法であって、上記製造方法は、前駆体微粒子が重合体による被覆構造を有する電極材料前駆体とリチウム塩とを必須成分とし、溶媒の存在下で上記必須成分を含む混合物を調製した後、上記混合物を熱処理する工程を含むリチウム含有電極材料の製造方法もまた、本発明の一つである。
本発明はまた、活物質微粒子が炭素成分による被覆構造を有するリチウム含有電極材料の製造方法であって、上記製造方法は、活物質原料とともに酸化重合性モノマーと酸化剤とを必須原料とし、必須原料の濃度を全ての前駆体原料を含む溶液100質量%に対して3〜60質量%とした溶液中で前駆体微粒子を生成させるとともに、上記微粒子に酸化重合性モノマーの重合によって生成する重合体による被覆構造を形成させて電極材料前駆体を製造する工程と、上記電極材料前駆体と融点が400℃以下であるリチウム塩とを必須成分とする混合物を調製した後、上記混合物を熱処理する工程を含むリチウム含有電極材料の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
本発明の電極材料は、活物質(電極活物質)を含むものであるが、活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムなどの三元系、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウムなどのオリビン構造を有する活物質などが挙げられる。好ましくは、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウムであり、より好ましくはリン酸鉄リチウムである。また、窒素を含まないものであることが好ましい。これらの活物質の1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。活物質を2種以上併用する場合、複数種の活物質を含む全ての活物質全体の総量100質量%に対する窒素原子含有量が0.3質量%以上であればよい。
また、活物質を含む限り、その他の成分を含んでいてもよい。
上記活物質は、導電性炭素材料により被覆された構造を有するものである。導電性炭素材料により被覆された構造とは、活物質微粒子(活物質コア)をコア部、導電性炭素材料をシェル部、とした被覆構造を表している。活物質微粒子(活物質コア)は、例えば、後述する前駆体微粒子(前駆体コア)と、後述するリチウム源となる化合物とが反応して生成する金属酸化物である。
ここで、上記被覆構造(コア・シェル構造)には、コア部がシェル部によって完全に覆われている形態(完全な被覆構造)だけでなく、コア部がシェル部によって覆われていない部分とコア部がシェル部によって覆われている部分とが含まれる形態(部分的な被覆構造)も含まれる。
上記活物質は、活物質の総量100質量%に対する窒素原子含有量が0.3質量%以上であるものである。活物質の窒素原子含有量がこのような範囲であると、活物質の水系溶媒への分散性が著しく向上するために、溶媒として水系溶媒を用いてスラリーを調製する場合であっても、電池性能に優れた電極を形成することが可能である。活物質の窒素原子含有量としては、活物質の総量100質量%に対して、0.35質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、0.4質量%以上であり、更に好ましくは、0.45質量%以上である。
また、例えば、後述するように、活物質原料、窒素原子を有する酸化重合性モノマー、酸化剤を溶液中で反応させて、活物質前駆体コアのまわりに該酸化重合性モノマーの重合によって生成する窒素含有重合体による被覆構造を形成させた活物質前駆体を製造し、該活物質前駆体とリチウム塩とを含む混合物を熱処理して活物質を製造するような場合には、活物質の含有する窒素原子は大部分が酸化重合性モノマーの有する窒素原子に由来することとなるため、活物質が窒素原子を多く含有するということは、窒素含有重合体を多く含む活物質前駆体が用いられていることを意味する。ここで、活物質前駆体が窒素含有重合体を多く含むように製造されると、活物質中の電池性能を発揮するための有効成分が相対的に減ってしまうことになるため、上述のように活物質を製造する場合には、活物質の窒素原子含有量が高すぎると、その活物質の電池性能の低下に繋がることがある。したがって、活物質の窒素原子含有量は、活物質の総量100質量%に対して、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、5質量%以下であり、更に好ましくは、3質量%以下である。
なお、活物質の窒素原子含有量は、後述する実施例において記載される装置及び測定条件により測定することが可能である。
上記活物質は、水に対する接触角が30°以下であることが好ましい。活物質がこのような範囲の水に対する接触角を有していると、良好な水分散性を示すこととなり、本発明の効果を充分に発揮することが可能となる。活物質の水に対する接触角としてより好ましくは、20°以下であり、更に好ましくは、10°以下である。さらに、液滴が活物質に吸収されてしまい接触角を示さない状態が最も好ましい。
本発明の電極材料が2種以上の活物質を含む場合、そのうちの少なくとも1種が水に対する接触角が30°以下であることが好ましい。より好ましくは、電極材料に含まれる全ての種類の活物質が水に対する接触角が20°以下であることである。
なお、活物質の水に対する接触角は、後述する実施例において記載されている装置及び測定条件により求めることができる。
上記窒素原子含有量が活物質の総量100質量%に対して0.3質量%以上である活物質の製造方法は、窒素原子の含有量が0.3質量%以上となる限り特に制限されないが、例えば、上述したような、活物質原料、窒素原子を有する酸化重合性モノマー、酸化剤を溶液中で反応させて得られる活物質前駆体コアのまわりに、該酸化重合性モノマーの重合によって生成する窒素含有重合体による被覆構造を形成させた活物質前駆体(電極材料前駆体)を製造し、該活物質前駆体とリチウム塩とを含む混合物を熱処理(焼成)して活物質(電極活物質)を製造する方法(すなわち、後述する本発明の電極材料前駆体の製造方法及び本発明のリチウム含有電極材料の製造方法によって活物質(電極活物質)を製造する方法において、酸化重合性モノマーとして窒素原子を有する酸化重合性モノマーを用いる方法)、通常活物質前駆体若しくは活物質を得るために用いられる方法により得られた活物質前駆体若しくは活物質、又は、後述する本発明の電極材料前駆体の製造方法によって得られる活物質前駆体若しくは後述する本発明のリチウム含有電極材料の製造方法によって得られる活物質(電極活物質)の表面で窒素原子を有するモノマーを重合又は重縮合することによって生成する窒素含有重合体による被覆構造を形成させた活物質を製造し、熱処理して導電性炭素材料により被覆された構造を有する活物質を製造する方法、通常活物質前駆体若しくは活物質を得るために用いられる方法により得られた活物質前駆体若しくは活物質、又は、後述する本発明の電極材料前駆体の製造方法によって得られる活物質前駆体若しくは後述する本発明のリチウム含有電極材料の製造方法によって得られる活物質(電極活物質)を、窒素原子を有するポリマー溶液に浸漬、乾燥することにより活物質前駆体又は活物質をポリマーコーティングし、その後熱処理により導電性炭素材料により被覆された構造を有する活物質を製造する方法等が挙げられる。
また、これらの方法を組み合わせて行うことも可能である。なお、後述するように、上記熱処理を窒素雰囲気下で行うことも活物質の窒素原子含有量を高くすることに寄与するものである。
上述した活物質の製造方法においては、活物質に含まれる窒素原子は、活物質を被覆する導電性炭素材料に含まれるものとなるが、本発明においては、活物質に含まれる窒素原子は、活物質を被覆する導電性炭素材料に含まれることが好ましい。活物質がそのような構造であると、活物質の水分散性がより優れたものとなる。そして更には、活物質の水分散性への寄与の観点から、上記窒素原子は導電性炭素材料の表面に存在することがより好ましい。なお、窒素原子が導電性炭素材料の表面に存在するかは、XPS(X線光電子分光)を用いて分析することができる。XPSでの分析により、試料の極表面(数nm)の元素分析が可能であるため、活物質に含まれる窒素原子が活物質を被覆する導電性炭素材料に含まれることが確認できる。
上記窒素原子を有するモノマーとしては、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニル化合物;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド誘導体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリンなどの重合性不飽和基含有アミド化合物;等の窒素原子含有ラジカル重合性モノマーや、アニリン、ピロール、ビニルカルバゾールなどの窒素原子含有酸化重合性モノマー、ε−カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタム、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルペンタジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミンなどの窒素原子含有重縮合性モノマーが挙げられる。
上記窒素原子を有するポリマーとしては、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリ(N置換マレイミド)、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドン等のビニルピロリドン構造を有する化合物;ポリアクリルアミド、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)等のN置換ポリアクリルアミド;ポリエチレンイミン誘導体;ポリアクリロニトリル;等及びそれらの共重合体が挙げられる。
上記活物質は、導電性炭素材料により被覆された構造を有し、活物質の総量100質量%に対する窒素原子含有量が0.3質量%以上である限り、その他の構造については特に制限されないが、本発明の電極材料として好適に用いることのできる活物質の好ましい構造について説明する。
上述したように、上記活物質は、導電性炭素材料により被覆された構造を有するものであるが、導電性炭素材料により被覆された構造を有する活物質は、活物質前駆体微粒子(活物質前駆体コア、前駆体コア)が導電性炭素材料前駆体(重合体)による被覆構造を有する活物質前駆体(単に前駆体ともいう。)と、更に必要な他の材料を混合し、熱処理(焼成)する、又は、通常活物質若しくは活物質前駆体を得るために用いられる方法により得られた活物質若しくは活物質前駆体に対し、導電性炭素材料前駆体(重合体)による被覆構造を形成し、熱処理(焼成)する、ことで製造することができる。
焼成工程においては、活物質微粒子(活物質コア)が生成するとともに、該微粒子の周囲の重合体が炭化し、活物質コアがカーボン被覆(シェル)されたコア・シェル構造を有するものとなる。このように導電性物質であるカーボンで被覆された構造を有する活物質は、電池の電極材料として優れた性能を発揮するものとなり、高い電池性能を発揮する電池の材料として好適に用いることができる。
以降、本発明の電極材料を製造する方法として好ましい方法について説明するが、そのような電極材料の製造方法もまた、本発明である。すなわち、本発明はまた、電極材料前駆体及びリチウム含有電極材料の製造方法に関する発明でもある。また、以降において説明する本発明の電極材料前駆体及びリチウム含有電極材料の製造方法を2つ以上組み合わせた製造方法は、本発明の電極材料前駆体及びリチウム含有電極材料の製造方法の好適な実施形態である。
電極材料前駆体の製造方法としては、活物質原料を含む溶液中で前駆体微粒子を生成させるとともに、該微粒子にモノマーの重合によって生成する重合体による被覆構造を形成する方法を採用することが好ましい。このような方法により、前駆体微粒子が重合体による被覆構造を有し、かつ、粒子径が小さく均一な電極材料前駆体を製造することができる。
本発明の電極材料前駆体の製造方法は、活物質原料とともに酸化重合性モノマーと酸化剤とを必須原料とし、反応溶液中に酸化剤を供給しながら前駆体を合成する工程を含むものであることが好ましい。上記製造方法がこのような工程を含むと、反応溶液中で生成した前駆体微粒子が他の前駆体微粒子と接触する前に重合体による被覆構造が形成されるため、前駆体微粒子同士が凝集、成長して粒子径が大きくなることが抑制され、粒子径が小さく、均一な電極材料前駆体を製造することができる。この合成工程において、反応溶液中に酸化剤を供給する方法としては、前駆体を合成する反応を行いながら供給することになる限り特に制限されず、連続的であってもよく、断続的であってもよいが、反応溶液中に複数回に分けて酸化剤を供給する方法が好ましく、酸化剤に溶媒を加えて溶液とし、反応溶液中に少量ずつ滴下して加える方法がより好ましい。
酸化剤を滴下により反応溶液中に供給する場合、供給は1〜360分かけて行うことが好ましい。より好ましくは、5〜180分である。
このような、活物質原料とともに酸化重合性モノマーと酸化剤とを必須原料とし、反応溶液中に酸化剤を供給しながら前駆体を合成する工程を含む電極材料前駆体の製造方法は、本発明の電極材料の前駆体を製造する方法として好適な方法であり、また、本発明の一つでもある。
上記酸化剤としては、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、鉄(III)アセチルアセトナート、臭化鉄(III)、クエン酸鉄(III)、フッ化鉄(III)等の三価の鉄の塩、塩化マンガン(III)、硫酸マンガン(III)、酢酸マンガン(III)、フッ化マンガン(III)、リン酸マンガン(III)等の三価のマンガンの塩等のような酸化作用を有し、かつ、活物質微粒子の原料となるもの;ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸塩、ペルオキソホウ酸ナトリウム、ペルオキソホウ酸カリウム、ペルオキソホウ酸アンモニウム等のペルオキソホウ酸塩、過酸化水素等のような酸化剤としてのみ作用するもの等の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、酸化作用を有し、かつ、活物質微粒子の原料となるものとしては、三価の鉄の塩、三価のマンガンの塩が好ましく、更に好ましくは塩化鉄(III)、塩化マンガン(III)である。酸化剤としてのみ作用するものとしては、ペルオキソ二硫酸塩が好ましく、更に好ましくはペルオキソ二硫酸アンモニウムである。
なお、酸化剤が三価の鉄の塩を含む化合物であることは、本発明の好適な実施形態の一つである。三価の鉄の塩の中でも、塩化鉄(III)、硝酸鉄(III)がより好ましい。また、三価の鉄の塩以外では、塩化マンガン(III)、ペルオキソ二硫酸アンモニウムが好ましい。
上記合成工程において供給される酸化剤の量は、合成工程に供される酸化重合性モノマー100質量%に対して、10〜1000質量%であることが好ましい。酸化剤の量が10質量%より少ないと、酸化重合性モノマーが充分に重合反応をせず、前駆体微粒子上に充分な被覆構造を形成することができないおそれがある。また、酸化剤の量が1000質量%より多いと、酸化重合性モノマーの重合が過剰に進行し、合成工程においてゲル化が起こり反応を進行させることができないおそれがある。より好ましくは、酸化重合性モノマー100質量%に対して、50〜800質量%であり、更に好ましくは、100〜500質量%である。
なお、本発明の電極材料前駆体の製造方法によって製造されるのは、前駆体微粒子に酸化重合性モノマーが重合してできたポリマーが被覆した構造を有する微粒子である。以下においては、このような被覆構造を有する微粒子を、本発明の電極材料前駆体の製造方法によって製造される前駆体(電極材料前駆体)、又は、単に前駆体(電極材料前駆体)という。また、ポリマーによって被覆される前駆体微粒子を活物質前駆体コア、前駆体コアともいう。
例えば、後述するように、酸化剤として塩化鉄(III)、活物質原料としてリン酸二水素アンモニウムを用いて前駆体微粒子を合成し、これにポリマーによる被覆構造を形成させた場合、前駆体微粒子(前駆体コア)はリン酸鉄(FePO)となり、リン酸鉄にポリマーが被覆した構造の微粒子が、本発明の電極材料前駆体の製造方法によって製造される前駆体(電極材料前駆体)である。
上記酸化剤を溶液にして反応溶液に供給する場合、酸化剤溶液の濃度は、1〜60質量%であることが好ましい。より好ましくは、5〜50質量%である。
酸化剤を溶解させる溶媒としては、水、メタノール、エタノール等の水溶性アルコール、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒が好ましい。より好ましくは、水である。
上記合成工程において用いられる活物質原料には、リン、マンガン、コバルト、ニッケル、チタン、ケイ素、バナジウム等の活物質を構成する非金属元素を含有する非金属化合物及び/又は金属元素を含有する金属化合物が含まれる。このような非金属化合物及び/又は金属化合物としては、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸カリウム、第二リン酸カルシウム、第一リン酸カルシウム、リン酸カルシウム、亜リン酸カルシウム等のリンを含む化合物;酢酸コバルト(II)、臭化コバルト(II)、炭酸コバルト(II)、塩化コバルト(II)、フッ化コバルト(II)、水酸化コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、シュウ酸コバルト(II)、リン酸コバルト(II)等のコバルトを含む化合物;塩化マンガン(II)、硫酸マンガン(II)、酢酸マンガン(II)、フッ化マンガン(II)、リン酸マンガン(II)等のマンガンを含む化合物;酢酸ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、炭酸ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)、フッ化ニッケル(II)、水酸化ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、ステアリン酸ニッケル(II)等のニッケルを含む化合物;塩化チタン(IV)、塩化チタン(III)、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、硫酸チタン(IV)等のチタンを含む化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラクロロシラン等のケイ素を含む化合物;塩化バナジウム(III)、水酸化バナジウム等のバナジウムを含む化合物等の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸アンモニウム等のリンを含む化合物;塩化マンガン(II)、硫酸マンガン(II)、酢酸マンガン(II)等のマンガンを含む化合物を用いることが好ましい。より好ましくは、リンを含む化合物である。
すなわち、活物質原料がリンを含む化合物であることは、本発明の好適な実施形態の一つである。
上記電極材料前駆体の製造方法においては、必須原料、すなわち、活物質原料、酸化重合性モノマー及び酸化剤の使用量が、前駆体の製造に用いられる全ての前駆体原料を含む溶液100質量%に対して、3〜60質量%であることが好ましい。このような濃度であると、酸化重合性モノマーが前駆体微粒子の表面で効果的に重合し、充分な被覆構造を形成することができる。
すなわち、必須原料の濃度を全ての前駆体原料を含む溶液100質量%に対して3〜60質量%とすることは、本発明の好適な実施形態の一つである。
上記必須原料の濃度としてより好ましくは、前駆体の製造に用いられる全ての前駆体原料を含む溶液100質量%に対して、5〜45質量%であり、更に好ましくは、7〜40質量%である。
なお、ここでいう前駆体の製造に用いられる全ての前駆体原料には、前駆体合成のために用いられる全ての原料が含まれ、後述するように前駆体原料を反応溶液中に供給しながら反応を行う場合には、供給される原料の全ての量が含まれる。すなわち、前駆体の製造に用いられる全ての前駆体原料を含む溶液の総量は、活物質原料、酸化重合性モノマー、酸化剤、溶媒、及び、その他の添加剤(ある場合のみ)の必要量の合計である。
また、必須原料の濃度とは、活物質原料、酸化重合性モノマー及び酸化剤の必要量の合計の、上記溶液に対する質量分率をいう。必須原料が水和物を含む場合には、水和水も含めて合計量を算出することとする。
上記合成工程において用いられる酸化重合性モノマーとしては、重合して前駆体微粒子上に被膜を形成することができるものであれば特に制限されず、アニリン、ピロール、チオフェン、フェノール、ビニルカルバゾール、イソチアナフテン、フラン及びそれらの誘導体からなる化合物等の1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、アニリン、チオフェン、ピロールが好ましい。より好ましくは、アニリン、ピロールであり、最も好ましくは、アニリンである。
すなわち、酸化重合性モノマーがアニリンであることは、本発明の好適な実施形態の一つである。
上記酸化重合性モノマーは、合成工程に供される上記非金属化合物と金属化合物との合計100質量%に対して、5〜200質量%であることが好ましい。酸化重合性モノマーの量が5質量%より少ないと、前駆体微粒子上に充分な被覆構造を形成することができないおそれがある。また、酸化重合性モノマーの量が200質量%より多いと、未反応の酸化重合性モノマーが増加し、電極材料前駆体の合成反応を阻害する可能性がある。酸化重合性モノマーの量は、より好ましくは、上記非金属化合物と金属化合物との合計100質量%に対して、10〜150質量%であり、更に好ましくは、20〜100質量%である。
なお、「非金属化合物と金属化合物との合計100質量%に対して」との記載は、活物質原料が常に非金属化合物と金属化合物の両方を含むことを意味するものではなく、両方を含む場合には、その合計に対して酸化重合性モノマーの含有量が上記のようであることが好ましいことを意味し、活物質原料が非金属化合物と金属化合物のいずれか一方のみ含む場合には、活物質原料が含む非金属化合物又は金属化合物の100質量%に対して酸化重合性モノマーの含有量が上記のようであることが好ましいことを意味する。
上記合成工程においては、活物質原料、酸化重合性モノマーは、反応溶液中に予め全量が加えられていてもよく、反応溶液中に供給しながら反応を行ってもよいが、活物質原料及び/又は酸化重合性モノマーを反応溶液中に供給しながら反応を行うことが好ましい。このようにすると、原料の仕込みを高濃度にした場合にも、優れた性能を発揮する電極材料前駆体を製造することができる。通常、原料の仕込みを高濃度にして製造した電極材料前駆体を用いると、得られる電池の性能が充分に高いものとならない場合がある。これは、電極材料前駆体を合成する工程において、反応溶液中で原料の濃度が高まると、原料同士が接触しやすく、凝集が起こりやすくなる結果、得られる電極材料前駆体の粒子が大きくなることが原因の一つであると考えられる。しかし、酸化剤に加え、活物質原料及び/又は酸化重合性モノマーも反応溶液中に供給しながら反応を行うようにすると、供給された原料が順次反応しつつ、新たな原料が反応溶液中に供給されることになるため、反応溶液の量に対して反応に用いられる原料の量を多くし、原料の仕込みを高濃度にした場合でも、反応溶液中に高濃度の反応原料が存在する状態ができることを避けることができ、優れた性能を発揮する電極材料前駆体を効率よく大量に製造することができる。
このように、本発明の電極材料前駆体の製造方法が、反応溶液中に酸化剤を供給しつつ、かつ活物質原料及び/又は酸化重合性モノマーを供給しながら前駆体を合成する工程を含むこともまた、本発明の好適な実施形態の一つである。
上記反応溶液中に酸化剤を供給しつつ、かつ活物質原料及び/又は酸化重合性モノマーを供給しながら前駆体を合成する工程としては、(1)活物質原料を含む溶液中に酸化剤を供給しつつ、かつ酸化重合性モノマーを供給しながら前駆体を合成する工程、(2)酸化重合性モノマーを含む溶液中に酸化剤を供給しつつ、かつ活物質原料を供給しながら前駆体を合成する工程、及び、(3)溶媒を含む溶液中に酸化剤を供給しつつ、かつ活物質原料及び酸化重合性モノマーを供給しながら前駆体を合成する工程、の3つがあり、これらいずれの合成工程を含む電極材料前駆体の製造方法も、本発明の好適な実施形態であるが、これらの中でも、(3)の工程を含む製造方法がより好ましい。
上記(1)の工程により前駆体を合成する場合、先に酸化剤の反応溶液中への供給を開始し、その後に酸化重合性モノマーの供給を開始する形態が好ましい。このようにすることで、活物質原料の反応を酸化重合性モノマーの重合反応よりも先に進めることができ、活物質原料の反応によって生成した前駆体コアが酸化重合性モノマーの重合反応によって生成した重合体によって被覆されたコア・シェル構造を有する微粒子をより確実に製造することができる。
なお、上記コア・シェル構造には、コア部がシェル部によって完全に覆われている形態(完全な被覆構造)だけでなく、コア部がシェル部によって覆われていない部分とコア部がシェル部によって覆われている部分とが含まれる形態(部分的な被覆構造)も含まれるが、本発明の電極材料前駆体の製造方法によれば、充分な被覆構造を形成することができ、電極としての優れた特性を発揮する電極活物質の原料となる電極材料前駆体を製造することができる。
上記活物質原料及び/又は酸化重合性モノマーを反応溶液に供給して前駆体を製造する場合、活物質原料及び/又は酸化重合性モノマーを反応溶液に供給する方法は特に制限されず、連続的であってもよく、断続的であってもよいが、反応溶液中に複数回に分けて活物質原料及び/又は酸化重合性モノマーを供給する方法が好ましく、反応溶液中に少量ずつ滴下して加える方法がより好ましい。
活物質原料及び/又は酸化重合性モノマーを滴下により反応溶液中に供給する場合、供給は1〜360分かけて行うことが好ましい。より好ましくは、5〜180分である。
上記活物質原料及び/又は酸化重合性モノマーを滴下により反応溶液に供給する場合、必要に応じてこれらを溶媒に溶解して供給することができる。その場合、活物質原料溶液や酸化重合性モノマー溶液の濃度は、1〜60質量%であることが好ましい。より好ましくは、5〜50質量%である。
活物質原料や酸化重合性モノマーを溶解させる溶媒としては、水、メタノール、エタノール等の水溶性アルコール、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒が好ましい。より好ましくは、水、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド及びこれらの混合物である。特に好ましくは、水である。
上記反応溶液が含む溶媒としては、水、メタノール、エタノール等の水溶性アルコール、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、水、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましく、水がより好ましい。特に、前駆体合成に使用される原料の仕込みが高濃度化する場合には、酸化重合性モノマーを充分に溶解させるため、水とN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒等、メタノール、エタノール等の水溶性アルコール等の溶媒とを混合したものを用いることが好ましい。
反応溶液に供給される材料の供給開始前の反応溶液中には、反応溶液に供給される材料の供給開始前に反応溶液中に含まれる活物質原料と酸化重合性モノマーの合計100質量%に対して、溶媒が10〜500質量%含まれていることが好ましい。
上記合成工程においては、反応溶液のpHを0.3〜3.0とすることが好ましい。反応溶液のpHがこのような範囲にあると、得られる電極材料を用いた電池が高い電池性能を維持することができる。pHが3.0より高いと、前駆体微粒子以外に各種水酸化物等の沈殿が生じる可能性が高くなると考えられ、得られる電極材料を用いた電池の性能が充分に高いものとはならないおそれがある。また、pHが0.3より低いと、溶液中で前駆体微粒子が生成しにくくなると考えられ、前駆体の収率が低下するおそれがある。反応溶液のpHは、より好ましくは、0.4〜2.5であり、更に好ましくは、0.5〜2.0である。
このような、溶液のpHを0.3以上、3.0以下とする工程を含む電極材料前駆体の製造方法は、本発明の電極材料の前駆体を製造する方法として好適な方法であり、また、本発明の一つでもある。
このように、溶液のpHを0.3〜3.0とする工程を含む電極材料前駆体の製造方法もまた、本発明の好適な実施形態の一つである。
反応溶液のpHは、活物質原料の種類や組成を変更することや、酸性物質又は塩基性物質を反応溶液に添加することにより調整できる。
上記電極材料前駆体の製造方法においては、合成工程のいずれかの時点において、溶液のpHが、上記範囲であれば好ましいが、より好ましくは、酸化剤の供給が終了した時点で溶液のpHが、上記範囲であることであり、更に好ましくは、酸化剤の供給が終了した時、及び、合成工程において反応溶液中に供給される必須原料の全ての供給が終了した時点で溶液のpHが、上記範囲であることである。最も好ましくは、反応溶液中で前駆体を合成する反応が開始されてから合成工程の終了までの間、溶液のpHが、上記範囲であることである。
また、必須原料が全て混合された時点での溶液のpHを0.3以上、3.0以下とすることもまた、本発明の好適な実施形態の一つである。
上記酸性物質としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸;酢酸、安息香酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スルホン酸等の有機酸類;ゼオライト類、混合酸化物類等の無機酸類等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記塩基性物質としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン等の有機アミン、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、フェニレンジアミン、トルイレンジアミン、ピリジン等の芳香族アミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属類、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等の水酸化アルカリ土類金属類、炭酸アンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩類等の1種又は2種以上を用いることができる。さらに好ましくはアンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン等の有機アミン及びアニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、フェニレンジアミン、トルイレンジアミン、ピリジンなどの芳香族アミンであり、最も好ましくはアンモニア、アニリンである。
上記合成工程における反応温度は、5〜100℃であることが好ましい。反応温度が5℃より低いと、反応が充分に進行しないおそれがあり、100℃より高いと、酸化重合性モノマーが急激に重合し、前駆体微粒子上に充分な被覆構造を形成することができないおそれがある。より好ましくは、15〜80℃である。
また、反応時間は、10分〜10時間が好ましい。より好ましくは、30分〜6時間である。なお、ここでいう反応時間とは、反応溶液中で前駆体を合成する反応が開始した時点から合成反応の終了までを意味し、酸化剤等を供給するのに要する時間も反応時間に含まれる。
上記合成工程において得られたスラリー状態の前駆体は、溶液中から分離して回収されることになる。前駆体を溶液中から分離、回収する方法としては、遠心分離、ろ過、デカンテーション等を用いることができるが、遠心分離によって行うことが好ましい。回収された前駆体は、更に合成工程において用いた溶媒を加えて再度分散し、これを遠心分離して前駆体の沈殿を回収する洗浄操作を複数回行って前駆体の純度を高めることが好ましい。また、分離の際には、分離回収の効率を上げるため、凝集剤を用いても良い。凝集剤は、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、エマルション系のいずれの凝集剤も用いることができる。
上記回収された前駆体は、乾燥して粉末にした後、それ以後の工程に用いることが好ましい。前駆体の乾燥は、温度50〜200℃、圧力0.001MPa〜常圧の条件で0.5〜24時間行うことが好ましい。このような乾燥により充分に前駆体を乾燥させ、粉末にすることができる。
上記乾燥後の前駆体粉末は、その前駆体の粉末(微粒子)の平均一次粒径が5〜1000nmであることが好ましい。前駆体の微粒子の平均一次粒径がこのような範囲にあると、その前駆体を用いて製造された電極活物質が粒子径の小さいものとなり、優れた性能を発揮するものとなる。前駆体の微粒子の平均一次粒径は、より好ましくは、10〜800nmであり、更に好ましくは、20〜500nmである。
前駆体の微粒子の平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した100個の粒子の一次粒径の平均により表す。
なお、前駆体の微粒子とは、前駆体コアだけでなく、シェル部も含んだ前駆体全体の微粒子を意味する。
上記乾燥後の前駆体粉末は、前駆体微粒子(前駆体コア)が酸化重合性モノマーから得られた重合体によって被覆されたコア・シェル構造を有するものであり、優れた性能を発揮する電極材料の原料として好適に用いることができるものである。
次に、本発明の電極材料前駆体の製造方法によって得られた前駆体を用いて、電極活物質を製造する工程(本発明のリチウム含有電極材料の製造方法)について述べる。
本発明の電極材料前駆体の製造方法によって製造された前駆体の乾燥後の粉末に、更に必要な他の材料を混合し、熱処理(焼成)することで電極活物質を製造することができる。焼成工程において、電極活物質微粒子(電極活物質コア)が生成するとともに、該微粒子の周囲の酸化重合性モノマーから得られた重合体が炭化し、電極活物質コアが導電性炭素材料であるカーボンによって被覆(シェル)されたコア・シェル構造を有するものとなる。このように導電性物質であるカーボンで被覆された構造を有する電極活物質は、電池の電極材料として優れた性能を発揮するものとなり、高い電池性能を発揮する電池の材料として好適に用いることができる。
なお、このような被覆構造を有する電極活物質を本発明のリチウム含有電極材料の製造方法によって製造される電極活物質(電極材料)、又は、単に電極活物質(電極材料)という。また、カーボンによって被覆される電極活物質微粒子を活物質微粒子や電極活物質コアともいう。電極活物質微粒子(活物質微粒子、電極活物質コア)は、前駆体微粒子(前駆体コア)と、後述するリチウム源となる化合物とが反応して生成する金属酸化物である。
上記前駆体と混合する材料は、リチウム源となる化合物を含むことになる。これにより、リチウムイオンを可逆的に脱挿入できるリチウム含有の金属酸化物を電極活物質コアとして有する電極活物質を得ることができる。
上記酸化剤として塩化鉄(III)等の鉄系化合物を用いる場合には、リチウム塩として融点が400℃以下の化合物を用いることが好ましい。このようなリチウム塩を用いると、活物質微粒子が均質なものとなると考えられ、これによって、得られる電極活物質が高い性能を発揮するものとなる。これは、酸化剤として塩化鉄(III)等の鉄系化合物を用いる場合、前駆体と鉄系化合物等を含む材料とを焼成する過程において、Fe(III)からFe(II)への還元が行われることになるが、この還元が行われる温度までに溶融し、液状化するリチウム化合物を用いることでFe(III)の還元が行われる際にリチウム塩が容易にFeやその他の活物質原料が含む金属成分の近傍に移動することができ、電極活物質を生成する反応が効率的に行われるためであると考えられる。より好ましくは、融点が400℃以下のリチウム塩の中でも、Feの還元反応に寄与できる炭化水素を分子構造内に持つという観点から、有機酸リチウムが好ましい。
このような、本発明の電極材料前駆体の製造方法によって得られた前駆体と、融点が400℃以下のリチウム塩、その中でも特に400℃以下の有機酸リチウムとを用いて、電極活物質を製造する方法もまた、本発明の好適な実施形態の一つである。
上記リチウム源となるリチウム塩としては、酢酸リチウム、ギ酸リチウム、シュウ酸リチウム、リン酸リチウム、サリチル酸リチウム、ステアリン酸リチウム、クエン酸リチウム等の有機酸リチウム塩;炭酸リチウム、臭化リチウム、塩化リチウム、フッ化リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム等の無機リチウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中で、融点が400℃以下の有機酸リチウムである酢酸リチウム、シュウ酸リチウムが好ましい。また炭酸リチウム等の非有機酸リチウム塩と、酢酸等の有機酸とを混合し、リチウム有機酸塩として用いる方法も好適な手法である。
上記リチウム塩の使用量は、前駆体コア成分の当量に対し、0.5〜1.5当量であることが好ましい。0.5当量より少ないと、前駆体コア成分を充分に電極活物質にすることができず、1.5当量より多いと、リチウムが電極活物質に対して過剰になりすぎ、電極活物質の構造が変化する可能性がある。リチウム塩の使用量は、前駆体コア成分の当量に対し、より好ましくは0.7〜1.2当量であり、更に好ましくは0.9〜1.1当量である。
上記他の材料は、更に炭化水素成分を含むことが好ましい。炭化水素成分を含むと、焼成して得られる電極活物質微粒子の結晶成長を抑制することができ、これにより、より粒子径が小さく均一な活物質微粒子を製造することが可能となって、より性能の優れた電極材料を製造することができる。また、炭化水素成分も焼成時に炭化して電極活物質微粒子上に被覆構造を形成するため、炭化水素成分を用いることで、上記合成工程で用いる酸化重合性モノマーの使用量を減らすことができる。
更に、例えば、酸化剤として塩化鉄(III)を用いて、電極活物質コアとしてリン酸鉄リチウムを有する電極活物質を製造する場合のように、電極活物質を合成する過程で酸化剤由来の金属成分が還元される場合には、焼成工程において、前駆体微粒子上に炭化水素の被覆構造を形成する重合体が金属成分を還元する還元剤として作用し、焼成工程における電極活物質の生成が促進されることになるが、更に炭化水素成分を含むことで焼成工程における電極活物質の生成をより促進させることができる。
このように、本発明の電極材料前駆体の製造方法によって得られた前駆体と炭化水素成分とを混合して電極活物質を製造する方法もまた、本発明の好適な実施形態の一つである。
上記炭化水素成分としては、スクロース、グルコース、フルクトース、トレハロース、ラクトース、マルトース、ガラクトース、マンノース、アガロース等の糖;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル等の水溶性ポリマー及びそれらの誘導体;でんぷん、セルロース、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース及びそれらの誘導体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂等のポリオレフィン;フェノール樹脂等の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、スクロース、グルコース、フルクトース、マルトース等の糖及びポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーが好ましい。より好ましくは、スクロースである。
上記炭化水素成分の使用量としては、前駆体コア成分100質量%に対して、1〜50質量%とすることが好ましい。炭化水素成分の使用量が1質量%より少ないと、電極活物質微粒子の結晶成長を抑制する効果を充分に得ることができず、50質量%より多いと、電極として作用する成分の割合が少なくなり、電極材料としての性能が低下するおそれがある。より好ましくは、前駆体コア成分100質量%に対して、3〜40質量%であり、更に好ましくは、5〜30質量%である。
上記乾燥後の前駆体の粉末と、リチウム塩等を含む他の材料とを混合する方法は特に制限されず、粉末のまま混合してもよいが、溶媒の存在下で混合することが好ましい。溶媒の存在下で混合して混合物をペースト状にし、得られた混合物を焼成して電極活物質を製造することとすると、粉末のまま乾式混合した混合物を用いた場合に比べ、均一に混ぜ合わせることができるようになり、その結果、得られる活物質微粒子が均質なものとなるために、そのような活物質微粒子を有する電極活物質が電極材料として高い性能を発揮するものとなる。
このような、本発明の電極材料前駆体の製造方法によって得られた前駆体とリチウム塩を含む他の材料とを溶媒の存在下で混合して電極活物質を製造する方法もまた、本発明の好適な実施形態の一つである。
前駆体とリチウム塩を含む他の材料とを混合する工程は、これらの材料どうしの接触割合を高めるために、前駆体粉末を粉砕した後、混合する工程であることが好ましい。
上記溶媒としては、水、メタノール、エタノール等の水溶性アルコール、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒等の1種又は2種以上が好ましい。より好ましくは、水である。特にリチウム塩として酢酸リチウムを用いる場合には、溶媒は水であることが最も好ましい。
このように、溶媒として水及び/又は水系溶媒を用いて、電極活物質を製造する方法もまた、本発明の好適な実施形態の一つである。
上記溶媒の使用量としては、前駆体の粉末とリチウム塩、及び、炭化水素成分を用いる場合には、炭化水素成分も加えた合計100質量%に対して、5〜100質量%とすることが好ましい。溶媒の使用量が5質量%より少ないと、混合物をペースト状にすることができず、100質量%より多いと、混合物から溶媒が蒸発する際に混合状態が不均一になるおそれがある。より好ましくは、前駆体の粉末とリチウム塩、及び、炭化水素成分を用いる場合には、炭化水素成分も加えた合計100質量%に対して、10〜80質量%であり、更に好ましくは、15〜70質量%である。
上記焼成温度は、200〜1000℃であることが好ましい。より好ましくは、400〜800℃である。
また、焼成時間は、0.5〜24時間であることが好ましい。より好ましくは、1〜18時間である。
また、焼成工程は、異なる温度で多段階に分けて行ってもよく、200〜500℃で0.5〜12時間焼成し、その後、500〜800℃で0.5〜12時間焼成を行うことが好ましい。
上記焼成は、水素や一酸化炭素等の還元性雰囲気下、又は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
上記焼成工程によって得られた焼成体を乾式で粉砕し、所望の大きさの粒子粉末に篩い分けることにより、粒子径の揃った電極活物質の微粒子を得ることができる。
電極活物質の平均一次粒径は5〜1000nmであることが好ましい。電極活物質の微粒子の平均一次粒径が5〜1000nmの電極活物質を電極材料として用いることにより、電池の出力特性等の電気特性を優れたものとすることが可能となる。平均一次粒径は、より好ましくは、10〜800nmであり、更に好ましくは、20〜500nmである。
電極活物質の微粒子の平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した100個の粒子の一次粒径の平均により表す。
なお、電極活物質の微粒子とは、電極活物質コアだけでなく、シェル部も含んだ電極活物質全体の微粒子を意味する。
また電極活物質コアの結晶子径は好ましくは5〜1000nmであり、より好ましくは10〜800nmであり、更に好ましくは20〜500nmである。
電極活物質コアの結晶子径はX線回折により測定することができる。
上記電極活物質(電極材料)は、オリビン構造を有する化合物を含むものであることが好ましい。オリビン構造を有する化合物とは、下記式(1);
LiMPO (1)
(Mは、1種或いは2種以上の遷移金属を表す)で表される構造を有する化合物である。このような電極活物質は、構造内の酸素原子がリンと結合することで(PO3−ポリアニオンを形成しており、酸素が結晶構造中に固定化されるために原理的に燃焼反応が起こらず安全性に優れたものとなることから、中大型電源への用途に用いられる電極材料として特に好ましいものである。この電極材料は、各種電池の電極として好適に用いることができ、電解質を溶解する溶媒として非水溶媒を用いた電池にも好適に用いることができる。
このような上記式(1)で表されるオリビン構造を有する化合物を含むリチウム含有電極材料、及び、当該リチウム含有電極材料を用いた非水電解質電池もまた、本発明の一つである。
上記式(1)において、Mは、Fe、Mn、Co、Niから選ばれる1又は2種以上の金属であることが好ましい。より好ましくはFe及び/又はMnである。
また、オリビン構造を有する化合物の導電性を上げたり、高速充放電性能やサイクル特性等の電池特性を上げたりするために少量の金属種を含有しても良い。金属種としてはCu、Ce、Cr、Mo、Nb、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y及び希土類元素等が挙げられる。少量とはM100質量%に対し、10質量%以下を意味する。
本発明の電極材料前駆体の製造方法は、上述のように、高濃度の反応原料を用いた場合であっても、得られる電極材料(電極活物質)の性能を充分に高いものとすることが可能な電極材料前駆体を製造することができる方法であり、また、活物質原料を溶媒に溶解した状態で用いるため、反応溶液中での活物質原料が凝集、成長して粒子径が大きくなることが抑制され、粒子径が小さく、均一な電極材料前駆体を製造することができる方法であって、このようにして得られた電極材料前駆体は、優れた特性を発揮する電極材料の材料として好適に用いることができるものである。
そして、本発明のリチウム含有電極材料の製造方法は、電極材料前駆体と、リチウム塩を含むその他の材料とを反応させる際に、より均一に混ざった状態で反応させることができ、これにより、従来よりも均質なリチウム含有電極材料を製造することができる方法であって、このようにして得られた電極活物質は、優れた特性を発揮するリチウム含有電極材料として好適に用いることができるものである。
このように、本発明の電極材料前駆体の製造方法によって得られた電極材料前駆体もまた、本発明の一つである。
更に、このような本発明の電極材料前駆体の製造方法によって得られた電極材料前駆体を用いて得られる電極材料もまた、本発明の一つである。
また、本発明のリチウム含有電極材料の製造方法によって得られたリチウム含有電極材料も、本発明の一つである。
このような(リチウム含有)電極材料は、各種電池の電極として好適に用いることができ、電解質を溶解する溶媒として非水溶媒を用いた電池にも好適に用いることができる。
このような本発明の(リチウム含有)電極材料を用いた非水電解質電池もまた、本発明の一つである。
本発明の電極材料を製造する方法としては、上述した本発明の電極材料前駆体の製造方法及び本発明のリチウム含有電極材料の製造方法を採用することが好ましく、本発明の電極材料は、上述した本発明の電極材料前駆体の製造方法及び本発明のリチウム含有電極材料の製造方法によって製造される電極材料と同様の構造を有することが好ましい。
本発明の電極材料を製造する方法として、上述した本発明の電極材料前駆体の製造方法及び本発明のリチウム含有電極材料の製造方法によってリチウム含有電極材料を製造する方法を採用する場合、前駆体と混合する材料には炭化水素成分が含まれていることが好ましく、上述したように、炭化水素成分も焼成時に活物質微粒子上に被覆構造を形成することとなるため、炭化水素成分として、構造中に窒素原子を有するものを用いると、活物質の窒素原子含有量を高くすることに寄与することができる。すなわち、上記炭化水素成分として、構造中に窒素原子を有するものを用いることもまた、本発明の好適な実施形態の一つである。
上記構造中に窒素原子を有する炭化水素成分としては、上述した窒素原子を有するポリマーと同様のものを用いることができる。
上記前駆体と混合する材料として、炭化水素成分とともにアンモニウム塩を含むものを用いることも、本発明の好適な実施形態の一つである。すなわち、焼成時に、炭化水素成分が炭化して活物質微粒子上に被覆構造を形成すると同時に、当該被覆構造中にアンモニウム塩を取り込むことにより、活物質の窒素原子含有量を高くすることができる。
上記前駆体との混合に用いることができるアンモニウム塩の種類としては、特に制限されないが、例えば、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩;酢酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の有機酸アンモニウム塩等が挙げられる。また、これらの有機酸と、第1級〜第4級アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、イミダゾリニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン等の窒素含有カチオンとの塩化合物を挙げることが出来、これらの1種又は2種以上を用いることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
上記アンモニウム塩の使用量としては、炭化水素成分の使用量100質量%に対して、0.1〜100質量%とすることが好ましい。このような範囲でアンモニウム塩を使用すると、活物質微粒子の結晶成長を妨げることなく、活物質の窒素原子含有量を高くすることに寄与することができる。より好ましくは、炭化水素成分の使用量100質量%に対して、0.5〜50質量%であり、更に好ましくは、1〜30質量%である。
本発明の電極材料を製造する方法として、上述した本発明の電極材料前駆体の製造方法及び本発明のリチウム含有電極材料の製造方法によってリチウム含有電極材料を製造する方法を採用する場合、酸化重合性モノマーとしては、上述したものが用いられるが、構造中に窒素原子を有するものであることが好ましい。そのような酸化重合性モノマーを重合させて得られる重合体(導電性炭素材料前駆体)としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリビニルカルバゾール等が挙げられる。より好ましくは、ポリアニリン、ポリピロールであり、最も好ましくは、ポリアニリンである。また、これらの酸化重合性モノマーを重合させて得られる重合体の窒素原子含有率は10重量%以上であることが好ましい。10重量%未満であると活物質中に含有される窒素原子含有量が少なくなり、水分散性の向上に寄与しにくい。より好ましくは12重量%以上である。
このように、導電性炭素材料前駆体が構造中に窒素原子を有することもまた、本発明の好適な実施形態の一つである。
なお、上述した本発明の電極材料前駆体の製造方法及び本発明のリチウム含有電極材料の製造方法によってリチウム含有電極材料を製造する方法を採用し、酸化重合性モノマーとして、フェノール等の構造中に窒素原子を有さないものを用いる場合には、上述したように、得られた活物質前駆体若しくは活物質(電極活物質)の表面で窒素原子を有するモノマーを重合又は重縮合することによって、生成する窒素含有重合体による被覆構造を形成させた活物質を製造し、熱処理して導電性炭素材料により被覆された構造を有する活物質を製造したり、得られた活物質前駆体若しくは活物質(電極活物質)を、窒素原子を有するポリマー溶液に浸漬、乾燥することにより、活物質前駆体又は活物質をポリマーコーティングし、その後熱処理により導電性炭素材料により被覆された構造を有する活物質を製造したりすることによって、活物質が導電性炭素材料により被覆された構造を有し、活物質の総量100質量%に対する窒素原子含有量が0.3質量%以上である電極材料を製造することができる。
上述した本発明の電極材料を製造する方法は、いずれも熱処理工程を行うこととなるが、当該熱処理工程は、水素や一酸化炭素等の還元性雰囲気下、又は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。これらの中でも、窒素雰囲気下で行われることが特に好ましい。上記熱処理工程が窒素雰囲気下で行われることにより、活物質の窒素原子含有量を高くすることが可能である。
すなわち、導電性炭素材料により被覆された構造が、導電性炭素材料前駆体を窒素雰囲気下で焼成することにより形成されることもまた、本発明の好適な実施形態の一つである。
本発明の電極材料を用いて電極を製造する方法としては、特に制限されず、通常行われる製造方法により製造することが可能である。一般的な電極の製造方法としては、電極材料、導電助剤、バインダー、分散剤等の、製造される電極を構成する成分を溶媒中に加え、混練してスラリー化し、その後、得られたスラリーを集電体に塗工し、乾燥して溶媒を除くことによって、膜状の電極を形成する方法が挙げられる。このように本発明の電極材料を用いて形成された電極は各種電池の電極として好適に用いることができるものであり、このような、本発明の電極材料を含む電極もまた、本発明の一つである。更に、本発明の電極を用いた電池もまた、本発明の一つである。
本発明の電極は、本発明の電極材料を含む限り、通常、電極に含まれるその他の成分を含んでいてもよい。通常電極に含まれるその他の成分としては、導電助剤、バインダー、分散剤、増粘剤等が挙げられる。
上記導電助剤は、電池を高出力化するために適宜用いられ、主に導電性カーボンが用いられる。
上記導電性カーボンとしては、カーボンブラック、ファイバー状カーボン、黒鉛等が挙げられる。導電助剤としては、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記バインダーとしては、通常バインダーとして用いられるものを用いることができるが、エマルションを用いることが好ましい。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロエチレン等のフッ素含有重合体及びその(メタ)アクリル変性物のエマルション、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)及びその水素添加物(HNBR)等のニトリル系エマルション、(メタ)アクリル系エマルション等が挙げられる。バインダーとしては、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダなどのポリカルボン酸系化合物;ポリビニルピロリドンなどのビニルピロリドン構造を有する化合物;ポリアルキレンオキサイド;等の水溶性ポリマーが挙げられる。増粘剤としては、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記電極は、分散剤を用いることが好ましい。活物質として窒素原子含有量が活物質の総量100質量%に対して0.3質量%以上である活物質を用いた場合には、その活物質は水に対する分散性が高いために、分散剤の使用量を低減させても水系溶媒に分散させることができるが、その場合であっても分散剤を更に用いることによって、更に活物質の水分散性を高めることができる。
上記分散剤としては、通常分散剤として用いられるものを用いることができ、特に制限されないが、アニオン性、ノニオン性若しくはカチオン性の界面活性剤、又は、高分子分散剤等の種々の分散剤を用いることができる。分散剤により、活物質及び導電助剤の微粒子化を促進し分散性を向上させることで、より安定し、高性能な電極とすることが可能となる。
分散剤としては、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記電極を構成する成分をスラリー化する際に用いられる溶媒としては、水系溶媒であることが好ましい。溶媒として水系溶媒を用いることにより、溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)を用いた場合に比べて、より安全であり、また、NMPを用いた場合には使用後NMPを回収しなければならず、回収コストが必要となることから、水系溶媒を用いた場合の方が、コストパフォーマンスに優れることとなる。
上記水系溶媒とは、水を含む溶媒であり、水を含む限りその他の成分を含んでいてもよい。
本発明の電極材料は、上述の構成よりなり、電極材料に含まれる活物質の水分散性が高いために、活物質の分散した水系スラリーを調製することが可能となることから、水系スラリーにより電極を形成した場合においても電池性能に優れた電極を形成することが可能となっているものである。また、本発明の電極材料前駆体の製造方法は、上述の構成よりなり、反応溶液のpHを特定の範囲に制御することで、反応原料を高濃度にした場合でも、電極材料としての性能の低下を充分に抑制して電極材料の前駆体を製造することができる。また、(活物質原料は溶媒に溶解した状態で用いられるため)反応溶液中での活物質原料が凝集、成長して粒子径が大きくなることが抑制され、粒子径が小さく、均一な電極材料前駆体を製造することができる製造方法である。あるいは、酸化剤に加え、活物質原料及び/又は酸化重合性モノマーを反応溶液中に供給しながら反応を行うようにすることで、反応原料を高濃度にした場合でも、電極材料としての性能の低下を充分に抑制して電極材料の前駆体を製造することができる。これらのことから、優れた電池性能を発揮する電池に用いられる電極材料の前駆体の製造方法として好適に用いることができるものである。更には、本発明のリチウム含有電極材料の製造方法は、上述の構成よりなり、電極材料前駆体と、リチウム塩を含むその他の材料とを反応させる際に、より均一に混ざった状態で反応させることができ、これにより、従来よりも均質なリチウム含有電極材料を製造することができることから、優れた電池性能を発揮する電池に用いられるリチウム含有電極材料の製造方法として好適に用いることができるものである。
本発明の電極材料前駆体の製造方法を用いて前駆体を合成し、得られた前駆体から本発明のリチウム含有電極材料の製造方法を用いてリチウム含有電極材料(電極活物質)を合成するフローの一例として、酸化剤及び酸化重合性モノマーを滴下して加えながら合成した電極材料前駆体を用い、溶媒の存在下に電極材料前駆体、リチウム塩及び炭化水素成分を湿式混合し、焼成してコア・シェル構造を有するリチウム含有電極材料(電極活物質)を合成する場合のフローを示した図である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
実施例における各種測定、評価は、以下のようにして行った。
[活物質の窒素原子含有量]
活物質に含まれる窒素原子の含有量は、下記装置を用いて下記測定条件により測定した。
装置:窒素酸素同時分析装置 TC400(製品名、LECO社製)
測定条件
キャリアガス;He
検出方法;熱伝導度法
サンプル量;20〜30mg
カプセル;Ni製
[水分散性]
電極材料0.5gにイオン交換水20gを加え、20秒間手で浸透し、活物質を部位中に分散させた。所定時間後、目視により分散性を判断した。
評価基準
○:5分間静置後、粒子の沈降が確認されなかった。
△:5分間静置後、粒子の沈降が確認された。
×:1分間静置後、粒子の沈降が確認された。
[接触角]
活物質の水に対する接触角は、下記装置及び測定条件により測定し、下記評価基準により評価した。
装置:接触角計DCA−VZ(商品名、協和界面科学社製)
測定条件:電極材料2gをステンレス板ではさみ、プレス機で10tの圧力を加え、1分間保持する。得られたサンプル上に、2μlの液滴を滴下し、滴下直後に測定する。それぞれ5回ずつ測定を行い、それらの平均値を接触角とする。
評価基準:
○・・・液滴がサンプルにしみこみ測定不可。
△・・・0°<接触角≦30°
×・・・30°<接触角
[充放電試験]
充放電測定装置ACD−001(アスカ電子社製)を用いて、容量を測定し、コインセル電池による電池評価を行った。
正極:正極活物質とSBR及びCMCを用いて水系スラリーを作成し、アルミ箔の上にアプリケータを用いて電極材料を塗工した。100℃×10分、続いて200℃×60分で乾燥し、更に200℃×30分の熱プレスを行い、厚さ約100μmの膜を作製した。得られた膜を正極として用いた。
負極:Li箔
電解液:1mol/L LiPF EC/EMC=1/1(キシダ化学株式会社製)
充放電レート:0.2C
(調製例1)
2lのセパラブルフラスコに水637.5mlを仕込み、攪拌しながら50℃まで加温した。次に、温度を50℃に保持したまま、攪拌を維持した状態で、上記セパラブルフラスコ内へ、塩化鉄(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製)510.16gを283.4mlの水に溶解した水溶液の添加を開始すると同時に、リン酸水素二アンモニウム(関東化学株式会社製)249.23gを414.0mlの水に溶解した水溶液の添加と、アニリン(キシダ化学株式会社製、純度99.5%以上)84.95gの添加を開始した。塩化鉄(III)水溶液の添加開始から終了までの時間は31分であり、リン酸水素二アンモニウム水溶液の添加開始から終了までの時間は30分であり、アニリンの添加開始から終了までの時間は47分であった。アニリンの添加終了後、50℃で2時間、攪拌を継続した。
上記攪拌終了後の液を遠心分離することにより、上澄みを除去し、得られた沈殿物(ペースト)に水を加えて再分散し、再度遠心分離を行うことによる洗浄操作を2回行った。洗浄操作後に得られた沈殿物を、減圧下、50℃で15時間乾燥することによって、平均粒子径が100nm以下でありFePO(コア)がポリアニリン(シェル)で被覆された電極材料前駆体(1)を得た。
(実施例1)
調製例1で得られた電極材料前駆体(1)を乳鉢に入れ、電極材料前駆体(1)に含まれる100質量部のFePOに対して46質量部のCHCOOLi、49質量部のスクロース及び適量の水を加えて混合し、均一化した。次に、混合物を減圧下、50℃で乾燥させた後、焼成炉に入れた。焼成炉内に窒素を流通させながら、室温から400℃まで40分で昇温した。温度が400℃に到達してから3時間保持して、水や揮発性の有機物を除去した。続いて、400℃から700℃まで30分で昇温した。更に、温度が700℃に到達してから5時間保持した後、室温まで冷却して、活物質コアがLiFePOであり炭素で被覆されたコア・シェル構造を有する電極材料(1)を得た。電極材料(1)の窒素原子含有量は0.62質量%であった。また、得られた電極材料(1)について、その水分散性、接触角、電池性能を評価した。その結果を表1に示す。
(実施例2〜4)
実施例1において電極材料前駆体(1)に加えるスクロースの量を、電極材料前駆体(1)に含まれる100質量部のFePOに対して25質量部、16質量部、10質量部とした以外は実施例1と同様にして電極材料(2)〜(4)を得た。電極材料(2)の窒素原子含有量は0.60質量%であり、電極材料(3)の窒素原子含有量は0.58質量%であり、電極材料(4)の窒素原子含有量は0.49質量%であった。また、電極材料(1)と同様に、電極材料(2)〜(4)の性能を評価した。その結果を表1に示す。
(比較例1)
特開2010−40357号公報に従って、活物質コアがLiFePOであり炭素で被覆されたコア・シェル構造を有する比較電極材料(1)を得た。電極材料(比較1)の窒素原子含有量は0.24質量%であった。また、電極材料(1)と同様に、電極材料(比較1)の性能を評価した。その結果を表1に示す。
(比較例2)
市販のリン酸鉄リチウム(天津STL ENERGY TECHNOLOGY社製リン酸鉄リチウム SLFP−PD60)を用いて評価を行った。窒素原子含有量は0.17質量%であった。また、その性能を電極材料(1)と同様に評価した。その結果を表1に示す。
Figure 0005516732
実施例1〜4及び比較例1〜2の結果から次のことがわかった。
活物質を、導電性炭素材料により被覆された構造を有するものとし、活物質に含まれる窒素原子の含有量を、活物質の総量100質量%に対して0.3質量%以上とすることにより、そのような活物質を含む電極材料が、水分散性に優れたものとなり、かつ、電池性能に優れた電極を形成することが可能であることが実証された。
なお、上記実施例においては、活物質としてリン酸鉄リチウムが炭素で被覆されコア・シェル構造を取っているものが用いられているが、活物質を導電性炭素材料により被覆された構造とし、活物質に含まれる窒素原子の含有量を特定の範囲とすることによって、そのような活物質を含む電極材料が、水分散性に優れたものとなり、かつ、電池性能に優れた電極を形成することが可能となる機構は、導電性炭素材料により被覆された構造を有し、窒素原子を特定量含有する活物質を用いた場合には全て同様である。従って、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
下記実施例における電極材料前駆体の平均一次粒径、電極活物質コアの結晶子径の測定は、以下のようにして行った。
[電極材料前駆体の平均一次粒径]
透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した100個の粒子の一次粒径の平均により表した。
[電極活物質コアの結晶子径]
X線回折装置(X’pert Pro MPDシステム、スペクトリス株式会社製)を用いたX線回折により測定した。
(調製例2)
3lのセパラブルフラスコにリン酸二水素アンモニウム(関東化学株式会社製)18.34g、アニリン(キシダ化学株式会社製、純度99.5%以上)7.14gと水1400mlを仕込み、室温にて攪拌混合した。次に、攪拌を維持した状態で、上記セパラブルフラスコ内に、塩化鉄(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製)43.10gを700mlの水に溶解した水溶液を30分かけて添加し、更に、室温で5時間、攪拌を継続した。このときの、全ての前駆体原料を含む溶液100質量%に対する必須原料の濃度は、3.2質量%であった。攪拌終了後、反応液のpHは1.47であった。
上記攪拌終了後の液を遠心分離することにより、上澄みを除去し、得られた沈殿物(ペースト)に水を加えて再分散し、再度遠心分離を行うことによる洗浄操作を2回行った。洗浄操作後に得られた沈殿物を、減圧下、50℃で15時間乾燥することによって、平均粒子径が100nm以下でありFePO(コア)がポリアニリン(シェル)で被覆された電極材料前駆体(2)を得た。
(実施例5)
調製例2で得られた電極材料前駆体(2)を乳鉢に入れ、電極材料前駆体(2)に含まれるFePOと等モルのCHCOOLi、100質量部のFePOに対して36質量部のスクロース及び適量の水を加えて混合し、均一化した。次に、混合物を減圧下、50℃で乾燥させた後、焼成炉に入れた。焼成炉内に窒素を流通させながら、室温から400℃まで40分で昇温した。温度が400℃に到達してから3時間保持して、水や揮発性の有機物を除去した。続いて、400℃から700℃まで30分で昇温した。更に、温度が700℃に到達してから5時間保持した後、室温まで冷却して、活物質コアがLiFePOであり炭素で被覆されたコア・シェル構造を有する電極材料(5)を得た。電極材料(5)の窒素原子含有量は0.31質量%であった。また、X線回折により測定した電極材料(5)のコア(LiFePO)の結晶子径は56nmであった。
(調製例3)
3lのセパラブルフラスコにリン酸水素二アンモニウム(関東化学株式会社製)5.26g、リン酸三アンモニウム3水和物(キシダ化学株式会社製)24.29g、アニリン(キシダ化学株式会社製、純度99.5%以上)7.14gと水1400mlを仕込み、室温にて攪拌混合した。次に、攪拌を維持した状態で、上記セパラブルフラスコ内に、塩化鉄(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製)43.10gを700mlの水に溶解した水溶液を30分かけて添加し、更に、室温で5時間、攪拌を継続した。このときの、全ての前駆体原料を含む溶液100質量%に対する必須原料の濃度は、3.7質量%であった。攪拌終了後、反応液のpHは3.31であった。
上記攪拌終了後の液を遠心分離することにより、上澄みを除去し、得られた沈殿物(ペースト)に水を加えて再分散し、再度遠心分離を行うことによる洗浄操作を2回行った。洗浄操作後に得られた沈殿物を、減圧下、50℃で15時間乾燥することによって、平均粒子径が100nm以下でありFePO4(コア)がポリアニリン(シェル)で被覆された電極材料前駆体(3)を得た。
(実施例6)
調製例3で得られた電極材料前駆体(3)を乳鉢に入れ、電極材料前駆体(3)に含まれるFePOと等モルのCHCOOLi、100質量部のFePOに対して36質量部のスクロース及び適量の水を加えて混合し、均一化した。次に、混合物を減圧下、50℃で乾燥させた後、焼成炉に入れた。焼成炉内に窒素を流通させながら、室温から400℃まで40分で昇温した。温度が400℃に到達してから3時間保持して、水や揮発性の有機物を除去した。続いて、400℃から700℃まで30分で昇温した。更に、温度が700℃に到達してから5時間保持した後、室温まで冷却して、活物質コアがLiFePOであり炭素で被覆されたコア・シェル構造を有する電極材料(6)を得た。電極材料(6)の窒素原子含有量は0.33質量%であった。また、X線回折により測定した電極材料(6)のコア(LiFePO)の結晶子径は587nmであった。
(調製例4)
500mlのセパラブルフラスコにリン酸水素二アンモニウム(関東化学株式会社製)30.10g、アニリン(キシダ化学株式会社製、純度99.5%以上)15.30g、N,N−ジメチルホルムアミド(関東化学株式会社製、純度99.5%以上)21mlと水200mlを仕込み、室温にて攪拌混合した。次に、攪拌を維持した状態で、上記セパラブルフラスコ内に、塩化鉄(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製)61.61gを100mlの水に溶解した水溶液を30分かけて添加し、更に、室温で5時間、攪拌を継続した。このときの、全ての前駆体原料を含む溶液100質量%に対する必須原料の濃度は、25.0質量%であった。攪拌終了後、反応液のpHは1.53であった。
上記攪拌終了後の液を遠心分離することにより、上澄みを除去し、得られた沈殿物(ペースト)に水を加えて再分散し、再度遠心分離を行うことによる洗浄操作を2回行った。洗浄操作後に得られた沈殿物を、減圧下、50℃で15時間乾燥することによって、平均粒子径が100nm以下でありFePO(コア)がポリアニリン(シェル)で被覆された電極材料前駆体(4)を得た。
(実施例7)
調製例4で得られた電極材料前駆体(4)を乳鉢に入れ、電極材料前駆体(4)に含まれるFePOと等モルのCHCOOLi、100質量部のFePOに対して36質量部のスクロース及び適量の水を加えて混合し、均一化した。次に、混合物を減圧下、50℃で乾燥させた後、焼成炉に入れた。焼成炉内に窒素を流通させながら、室温から400℃まで40分で昇温した。温度が400℃に到達してから3時間保持して、水や揮発性の有機物を除去した。続いて、400℃から700℃まで30分で昇温した。更に、温度が700℃に到達してから5時間保持した後、室温まで冷却して、活物質コアがLiFePOであり炭素で被覆されたコア・シェル構造を有する電極材料(7)を得た。電極材料(7)の窒素原子含有量は0.52質量%であった。また、X線回折により測定した電極材料(7)のコア(LiFePO)の結晶子径は69nmであった。
(調製例5)
500mlのセパラブルフラスコにリン酸三アンモニウム3水和物(キシダ化学株式会社製)46.29g、アニリン(キシダ化学株式会社製、純度99.5%以上)15.30g、N,N−ジメチルホルムアミド(関東化学株式会社製、純度99.5%以上)21mlと水200mlを仕込み、室温にて攪拌混合した。次に、攪拌を維持した状態で、上記セパラブルフラスコ内に、塩化鉄(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製)61.61gを100mlの水に溶解した水溶液を30分かけて添加し、更に、室温で5時間、攪拌を継続した。このときの、全ての前駆体原料を含む溶液100質量%に対する必須原料の濃度は、27.7質量%であった。攪拌終了後、反応液のpHは3.12であった。
上記攪拌終了後の液を遠心分離することにより、上澄みを除去し、得られた沈殿物(ペースト)に水を加えて再分散し、再度遠心分離を行うことによる洗浄操作を2回行った。洗浄操作後に得られた沈殿物を、減圧下、50℃で15時間乾燥することによって、平均粒子径が100nm以下でありFePO(コア)がポリアニリン(シェル)で被覆された電極材料前駆体(5)を得た。
(実施例8)
調製例5で得られた電極材料前駆体(5)を乳鉢に入れ、電極材料前駆体(5)に含まれるFePOと等モルのCHCOOLi、100質量部のFePOに対して36質量部のスクロース及び適量の水を加えて混合し、均一化した。次に、混合物を減圧下、50℃で乾燥させた後、焼成炉に入れた。焼成炉内に窒素を流通させながら、室温から400℃まで40分で昇温した。温度が400℃に到達してから3時間保持して、水や揮発性の有機物を除去した。続いて、400℃から700℃まで30分で昇温した。更に、温度が700℃に到達してから5時間保持した後、室温まで冷却して、活物質コアがLiFePOであり炭素で被覆されたコア・シェル構造を有する電極材料(8)を得た。電極材料(8)の窒素原子含有量は0.60質量%であった。また、X線回折により測定した電極材料(8)のコア(LiFePO)の結晶子径は355nmであった。
(正極膜の作成)
バインダーとしてのPVdF、導電助剤、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリジノン及び上記で得られた電極材料(5)を混合することにより、正極組成物(5)を得た。得られた正極組成物をアルミ箔の上に塗工し、正極膜(5)を作成した。
また、電極材料(5)の代わりに、それぞれ電極材料(6)〜(8)を用いた以外は、上記と同様にして正極組成物(6)〜(8)を調製し、正極膜(6)〜(8)を作製した。
(充放電試験)
作製した正極膜(5)〜(8)について、充放電測定装置ACD−001(アスカ電子社製)を用いて、コインセル(CR2032)の電池評価を行った。結果を表2に示す。
正極:作成した正極膜
負極:Li箔
電解液:1mol%/L LiPF EC/EMC=1/1(キシダ化学社製)
セパレーター:多孔質ポリプロピレン膜
充放電条件:0.2C
カットオフ電圧:2.0−4.0V
評価温度:30℃
Figure 0005516732
表2の結果から、電極材料(5)及び(7)を用いて作製した正極膜はいずれも、電極材料(6)及び(8)を用いて作製した正極膜と比較して、電池の正極としてより優れた性能を発揮することが確認され、必須原料が全て混合された時点での溶液のpHを0.3以上、3.0以下にすることにより、本発明の電極材料前駆体の製造方法によって得られた前駆体は、優れた性能を発揮する電極の材料としてより好適に用いることができることが確認された。
(調製例6)
500mlのセパラブルフラスコにリン酸水素二アンモニウム(関東化学株式会社製)48.16g、N,N−ジメチルホルムアミド(関東化学株式会社製、純度99.5%以上)40mlと水160mlを仕込み、40℃にて攪拌混合した。次に、温度を40℃に保持したまま、攪拌を維持した状態で、上記セパラブルフラスコ内へ、塩化鉄(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製)98.58gを80mlの水に溶解した水溶液の添加を開始した。塩化鉄(III)水溶液の全体積の1/2が添加された時点から、塩化鉄(III)水溶液の添加は続けたままで、アニリン(キシダ化学株式会社製、純度99.5%以上)16.41gの添加を開始した。塩化鉄(III)水溶液の添加開始から終了までの時間は60分であり、アニリンの添加開始から終了までの時間は20分であった。塩化鉄(III)水溶液の添加が終了した後、40℃で5時間、攪拌を継続した。このときの、全ての前駆体原料を含む溶液100質量%に対する必須原料の濃度は、36.8質量%であった。
上記攪拌終了後の液を遠心分離することにより、上澄みを除去し、得られた沈殿物(ペースト)に水を加えて再分散し、再度遠心分離を行うことによる洗浄操作を2回行った。洗浄操作後に得られた沈殿物を、減圧下、50℃で15時間乾燥することによって、平均粒径が100nm以下でありFePO(コア)がポリアニリン(シェル)で被覆された電極材料前駆体(6)を得た。
(調製例7)
500mlのセパラブルフラスコにアニリン(キシダ化学株式会社製、純度99.5%以上)24.62gと水60mlを仕込み、50℃にて攪拌混合した。次に、温度を50℃に保持したまま、攪拌を維持した状態で、上記セパラブルフラスコ内へ、塩化鉄(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製)147.87gを80mlの水に溶解した水溶液の添加を開始すると同時に、リン酸水素二アンモニウム(関東化学株式会社製)36.12g及びリン酸三アンモニウム3水和物(キシダ化学株式会社製)55.56gを120mlの水に溶解した水溶液の添加を開始した。塩化鉄(III)水溶液の添加開始から終了までの時間は60分であり、リン酸塩水溶液の添加開始から終了までの時間は40分であった。塩化鉄(III)水溶液の添加終了後、50℃で3時間、攪拌を継続した。このときの、全ての前駆体原料を含む溶液100質量%に対する必須原料の濃度は、50.4質量%であった。
上記攪拌終了後の液を遠心分離することにより、上澄みを除去し、得られた沈殿物(ペースト)に水を加えて再分散し、再度遠心分離を行うことによる洗浄操作を2回行った。洗浄操作後に得られた沈殿物を、減圧下、50℃で15時間乾燥することによって、平均粒径が100nm以下でありFePO(コア)がポリアニリン(シェル)で被覆された電極材料前駆体(7)を得た。
(調製例8)
500mlのセパラブルフラスコに水60mlを仕込み、攪拌しながら50℃まで加温した。次に、温度を50℃に保持したまま、攪拌を維持した状態で、上記セパラブルフラスコ内へ、塩化鉄(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製)147.87gを80mlの水に溶解した水溶液の添加を開始すると同時に、リン酸水素二アンモニウム(関東化学株式会社製)36.12g及びリン酸三アンモニウム3水和物(キシダ化学株式会社製)55.56gを120mlの水に溶解した水溶液の添加と、アニリン(キシダ化学株式会社製、純度99.5%以上)30.78gの添加を開始した。塩化鉄(III)水溶液、リン酸塩水溶液及びアニリンの添加開始から終了までの時間は、いずれも60分であった。塩化鉄(III)水溶液の添加終了後、50℃で2時間、攪拌を継続した。このときの、全ての前駆体原料を含む溶液100質量%に対する必須原料の濃度は、50.9質量%であった。
上記攪拌終了後の液を遠心分離することにより、上澄みを除去し、得られた沈殿物(ペースト)に水を加えて再分散し、再度遠心分離を行うことによる洗浄操作を2回行った。洗浄操作後に得られた沈殿物を、減圧下、50℃で15時間乾燥することによって、平均粒径が100nm以下でありFePO(コア)がポリアニリン(シェル)で被覆された電極材料前駆体(8)を得た。
(実施例9〜11)
調製例6〜8で得られた電極材料前駆体(6)〜(8)を、それぞれ乳鉢に入れ、各電極材料前駆体に含まれるFePOと等モルのCHCOOLi、100質量部のFePOに対して36質量部のスクロース及び適量の水を加えて混合し、均一化した。次に、混合物を減圧下、50℃で乾燥させた後、焼成炉に入れた。焼成炉内に窒素を流通させながら、室温から400℃まで40分で昇温した。温度が400℃に到達してから3時間保持して、水や揮発性の有機物を除去した。続いて、400℃から700℃まで30分で昇温した。更に、温度が700℃に到達してから5時間保持した後、室温まで冷却して、活物質コアであるLiFePOが炭素で被覆された構造を有する電極材料(9)〜(11)を得た。電極材料(9)の窒素原子含有量は0.58質量%であり、電極材料(10)の窒素原子含有量は0.78質量%であり、電極材料(11)の窒素原子含有量は0.75質量%であった。また、X線回折により測定した電極材料(9)のコア(LiFePO)の結晶子径は58nmであり、電極材料(10)のコア(LiFePO)の結晶子径は67nmであり、電極材料(11)のコア(LiFePO)の結晶子径は63nmであった。
(調製例9)
500mlのセパラブルフラスコにリン酸水素二アンモニウム(関東化学株式会社製)48.16g、アニリン(キシダ化学株式会社製、純度99.5%以上)16.41g、N,N−ジメチルホルムアミド(関東化学株式会社製、純度99.5%以上)40mlと水160mlを仕込み、40℃にて攪拌混合した。次に、温度を40℃に保持したまま、攪拌を維持した状態で、上記セパラブルフラスコに、塩化鉄(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製)98.58gを80mlの水に溶解した水溶液を60分かけて添加し、更に、40℃で5時間、攪拌を継続した。このときの、全ての前駆体原料を含む溶液100質量%に対する必須原料の濃度は、36.8質量%であった。
上記攪拌終了後の液を遠心分離することにより、上澄みを除去し、得られた沈殿物(ペースト)に水を加えて再分散し、再度遠心分離を行うことによる洗浄操作を2回行った。洗浄操作後に得られた沈殿物を、減圧下、50℃で15時間乾燥することによって、平均粒径が100nm以下でありFePO4(コア)がポリアニリン(シェル)で被覆された電極材料前駆体(9)を得た。
(調製例10)
500mlのセパラブルフラスコにリン酸水素二アンモニウム(関東化学株式会社製)36.12g、リン酸三アンモニウム3水和物(キシダ化学株式会社製)55.56g、アニリン(キシダ化学株式会社製、純度99.5%以上)24.62gと水180mlを仕込み、40℃にて攪拌混合した。次に、温度を40℃に保持したまま、攪拌を維持した状態で、上記セパラブルフラスコに、塩化鉄(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製)147.87gを80mlの水に溶解した水溶液を60分かけて添加し、更に、50℃で3時間、攪拌を継続した。このときの、全ての前駆体原料を含む溶液100質量%に対する必須原料の濃度は、50.4質量%であった。
上記攪拌終了後の液を遠心分離することにより、上澄みを除去し、得られた沈殿物(ペースト)に水を加えて再分散し、再度遠心分離を行うことによる洗浄操作を2回行った。洗浄操作後に得られた沈殿物を、減圧下、50℃で15時間乾燥することによって、平均粒径が100nm以下でありFePO(コア)がポリアニリン(シェル)で被覆された電極材料前駆体(10)を得た。
(実施例12〜13)
調製例9〜10で得られた電極材料前駆体(9)〜(10)を、それぞれ乳鉢に入れ、各電極材料前駆体に含まれるFePOと等モルのCHCOOLi、100質量部のFePOに対して36質量部のスクロース及び適量の水を加えて混合し、均一化した。次に、混合物を減圧下、50℃で乾燥させた後、焼成炉に入れた。焼成炉内に窒素を流通させながら、室温から400℃まで40分で昇温した。温度が400℃に到達してから3時間保持して、水や揮発性の有機物を除去した。続いて、400℃から700℃まで30分で昇温した。更に、温度が700℃に到達してから5時間保持した後、室温まで冷却して、活物質コアであるLiFePOが炭素で被覆された構造を有する電極材料(12)〜(13)を得た。電極材料(12)の窒素原子含有量は0.57質量%であり、電極材料(13)の窒素原子含有量は0.74質量%であった。また、X線回折により測定した電極材料(12)のコア(LiFePO)の結晶子径は55nmであり、電極材料(13)のコア(LiFePO)の結晶子径は63nmであった。
(比較調製例1)
500mlのセパラブルフラスコに塩化鉄(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製)147.87gと水140mlを仕込み、50℃にて攪拌混合した。次に、温度を50℃に保持したまま、攪拌を維持した状態で、上記セパラブルフラスコ内へ、リン酸水素二アンモニウム(関東化学株式会社製)36.12gおよびリン酸三アンモニウム3水和物(キシダ化学株式会社製)55.56gを120mlの水に溶解した水溶液の添加を開始すると同時に、アニリン(キシダ化学株式会社製、純度99.5%以上)30.78gの添加を開始した。リン酸塩水溶液およびアニリンの添加を開始してから、フラスコ内の溶液が徐々に増粘していき、添加が終了した時点では完全に溶液がゲル化して、攪拌の継続が困難な状態となった。リン酸塩水溶液およびアニリンの添加開始から終了までの時間は、いずれも60分であった。
(正極膜の作成)
バインダーとしてのPVdF、導電助剤、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリジノン及び上記で得られた電極材料(9)を混合することにより、正極組成物(9)を得た。得られた正極組成物(9)をアルミ箔の上に塗工し、正極膜(9)を作成した。
また、電極材料(9)の代わりに、それぞれ電極材料(10)〜(13)を用いた以外は、上記と同様にして正極組成物(10)〜(13)を調製し、正極膜(10)〜(13)を作製した。
(充放電試験)
作製した正極膜(9)〜(13)について、上述した正極膜(5)について行った充放電試験と同様の試験を行い、電池評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 0005516732
以上の結果より、反応溶液中に酸化剤を供給するのではなく、反応の初期から反応溶液中に酸化剤を共存させた状態で活物質原料及び酸化重合性モノマーを供給すると、ゲル化して反応を継続することができなかった。表3の結果から、反応溶液中に酸化剤を供給しながら前駆体を合成した電極材料(9)〜(13)を用いて作製した正極膜は、いずれも電池の正極としてより優れた性能を発揮することが確認され、これにより、本発明の電極材料前駆体の製造方法によって得られた前駆体は、優れた性能を発揮する電極の材料としてより好適に用いることができることが確認された。
(調製例11)
3lのセパラブルフラスコにリン酸二水素アンモニウム(関東化学株式会社製)18.34g、アニリン(キシダ化学株式会社製、純度99.5%以上)7.14gと水1400mlを仕込み、40℃にて攪拌混合した。次に、温度を40℃に保持したまま、攪拌を維持した状態で、上記セパラブルフラスコ内に、塩化鉄(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製)43.10gを700mlの水に溶解した水溶液を30分かけて添加し、更に、40℃で5時間、攪拌を継続した。このときの、全ての前駆体原料を含む溶液100質量%に対する必須原料の濃度は、3.2質量%であった。
上記攪拌終了後の液を遠心分離することにより、上澄みを除去し、得られた沈殿物(ペースト)に水を加えて再分散し、再度遠心分離を行うことによる洗浄操作を2回行った。洗浄操作後に得られた沈殿物を、減圧下、50℃で15時間乾燥することによって、平均一次粒径が100nm以下でありFePO(コア)がポリアニリン(シェル)で被覆された電極材料前駆体(11)を得た。
(実施例14)
上記調製例11で得られた電極材料前駆体(11)を乳鉢に入れ、電極材料前駆体(11)に含まれるFePOと等モルのCHCOOLi、100質量部のFePOに対して36質量部のスクロース及び適量の水を加えて混合し、均一化して、ペースト状の混合物を得た。このペースト状の混合物に含まれる水分量は、前駆体(11)とCHCOOLiとの合計の27.5質量%であった。
続いて、混合物を減圧下、50℃で乾燥させた後、焼成炉に入れた。焼成炉内に窒素を流通させながら、室温から400℃まで40分で昇温した。温度が400℃に到達してから3時間保持して、水や揮発性の有機物を除去した。続いて、400℃から700℃まで30分で昇温した。更に、温度が700℃に到達してから5時間保持した後、室温まで冷却して、活物質コアがLiFePOであり炭素で被覆されたコア・シェル構造を有する電極材料(14)を得た。電極材料(14)の窒素原子含有量は0.34質量%であった。また、X線回折によって測定した電極材料(14)のコア(LiFePO)の結晶子径は47nmであった。
(実施例15)
上記調製例11で得られた電極材料前駆体(11)を乳鉢に入れ、電極材料前駆体(11)に含まれるFePOと等モルのCHCOOLi、100質量部のFePOに対して36質量部のスクロースを加えて混合し、均一化して、粉末状の混合物を得た。
続いて、混合物を減圧下、50℃で乾燥させた後、焼成炉に入れた。焼成炉内に窒素を流通させながら、室温から400℃まで40分で昇温した。温度が400℃に到達してから3時間保持して、水や揮発性の有機物を除去した。続いて、400℃から700℃まで30分で昇温した。更に、温度が700℃に到達してから5時間保持した後、室温まで冷却して、活物質コアがLiFePOであり炭素で被覆されたコア・シェル構造を有する電極材料(15)を得た。電極材料(15)の窒素原子含有量は0.33質量%であった。また、X線回折によって測定した電極材料(15)のコア(LiFePO)の結晶子径は133nmであった。
(調製例12)
500mlのセパラブルフラスコにリン酸水素二アンモニウム(関東化学株式会社製)30.10g、アニリン(キシダ化学株式会社製、純度99.5%以上)10.20g、N,N−ジメチルホルムアミド(関東化学株式会社製、純度99.5%以上)21mlと水200mlを仕込み、60℃にて攪拌混合した。次に、温度を60℃に保持したまま、攪拌を維持した状態で、上記セパラブルフラスコ内に、塩化鉄(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製)61.61gを100mlの水に溶解した水溶液を30分かけて添加し、更に、60℃で5時間、攪拌を継続した。このときの、全ての前駆体原料を含む溶液100質量%に対する必須原料の濃度は、24.1質量%であった。
上記攪拌終了後の液を遠心分離することにより、上澄みを除去し、得られた沈殿物(ペースト)に水を加えて再分散し、再度遠心分離を行うことによる洗浄操作を2回行った。洗浄操作後に得られた沈殿物を、減圧下、50℃で15時間乾燥することによって、平均一次粒径が100nm以下でありFePO(コア)がポリアニリン(シェル)で被覆された電極材料前駆体(12)を得た。
(実施例16)
上記調製例12で得られた電極材料前駆体(12)を乳鉢に入れ、電極材料前駆体(12)に含まれるFePOと等モルのCHCOOLi(融点:286℃)、100質量部のFePOに対して36質量部のスクロース及び適量の水を加えて混合し、均一化した。
次に、混合物を減圧下、50℃で乾燥させた後、焼成炉に入れた。焼成炉内に窒素を流通させながら、室温から400℃まで40分で昇温した。温度が400℃に到達してから3時間保持して、水や揮発性の有機物を除去した。続いて、400℃から700℃まで30分で昇温した。更に、温度が700℃に到達してから5時間保持した後、室温まで冷却して、活物質コアがLiFePOであり炭素で被覆されたコア・シェル構造を有する電極材料(16)を得た。電極材料(16)の窒素原子含有量は0.54質量%であった。また、X線回折によって測定した電極材料(16)のコア(LiFePO)の結晶子径は61nmであった。
(実施例17)
上記調製例12で得られた電極材料前駆体(12)を乳鉢に入れ、電極材料前駆体(12)に含まれるFePOと等モルのCHCOOH、FePOに対して1/2モル量のLiCO、100質量部のFePOに対して36質量部のスクロース及び適量の水を加えて混合し、均一化した。
次に、混合物を減圧下、50℃で乾燥させた後、焼成炉に入れた。焼成炉内に窒素を流通させながら、室温から400℃まで40分で昇温した。温度が400℃に到達してから3時間保持して、水や揮発性の有機物を除去した。続いて、400℃から700℃まで30分で昇温した。更に、温度が700℃に到達してから5時間保持した後、室温まで冷却して、活物質コアがLiFePOであり炭素で被覆されたコア・シェル構造を有する電極材料(17)を得た。電極材料(17)の窒素原子含有量は0.53質量%であった。また、X線回折によって測定した電極材料(17)のコア(LiFePO)の結晶子径は70nmであった。
(実施例18)
実施例16における電極材料前駆体(12)に含まれるFePOと等モルのCHCOOLiの代わりに、電極材料前駆体(12)に含まれるFePOに対して1/2モル量のLiCO(融点:723℃)を用いた以外は、実施例16と同様にして、活物質コアがLiFePOであり炭素で被覆されたコア・シェル構造を有する電極材料(18)を得た。電極材料(18)の窒素原子含有量は0.53質量%であった。また、X線回折によって測定した電極材料(18)のコア(LiFePO)の結晶子径は96nmであった。
(正極膜の作製)
N−メチル−2−ピロリジノン 40gに、PVdF(アルケマ社製 Kynar HSV−900)0.6gを加えて均一溶液にした後、ケッチェンブラック EC−300J(ライオン社製)を1.0g、上記で得られた電極材料(14)を18.0gの順番で加えて分散し、正極組成物(14)を得た。得られた正極組成物をアルミ箔の上にアプリケータを用いて塗工した。100℃で10分、続いて200℃で60分乾燥し、更に200℃で30分熱プレスを行い、約40μmの正極膜(14)を作製した。
また、電極材料(14)の代わりに、それぞれ電極材料(15)〜(18)を用いた以外は、上記と同様にして、正極組成物(15)〜(18)を調製し、正極膜(15)〜(18)を作製した。
(充放電試験)
作製した正極膜(14)〜(18)について、充放電測定装置ACD−001(アスカ電子社製)を用いて、コインセル(CR2032)の電池評価を行った。結果を表4に示す。
正極:作成した正極膜
負極:Li箔
電解液:1mol%/L LiPF6 EC/EMC=1/1(キシダ化学社製)
セパレーター:多孔質ポリプロピレン膜 セルガード2500(セルガード社製)
充放電条件:0.2C
カットオフ電圧:2.5−4.0V
評価温度:30℃
Figure 0005516732
実施例14〜18の結果から次のことがわかった。
電極材料(14)を用いて作製した正極膜は、電極材料(15)を用いて作製した正極膜と比較して、電池の正極としてより優れた性能を発揮することが確認された。このことから、電極材料前駆体とリチウム塩を含む他の原料とを混合して混合物を調製する際に、単に粉末どうしを乾式混合するよりも、溶媒の存在下にペースト状で混合することによって、得られるリチウム含有電極材料がより高い性能を発揮することができるようになることが実証された。
また、電極材料(16)及び(17)を用いて作製した正極膜はいずれも、電極材料(18)を用いて作製した正極膜と比較して、電池の正極としてより優れた性能を発揮することが確認された。このことから、前駆体コアがリン酸鉄(III)等の三価の鉄化合物である場合に、リチウム塩として融点が400℃以下であるリチウム塩を用いることによって、得られるリチウム含有電極材料がより高い性能を発揮することができるようになることが実証された。
これらの結果から、本発明のリチウム含有電極材料の製造方法によって得られたリチウム含有電極材料は、優れた性能を発揮する電極の材料としてより好適に用いることができることが確認された。

Claims (9)

  1. 活物質を含むリチウムイオン電池用電極材料であって、
    該活物質は、
    LiMPO
    (Mは、Fe、Co、Mn、Niから選ばれる1種又は2種以上の金属を表す。)で表される化合物を含み、導電性炭素材料により被覆された構造を有し、活物質の総量100質量%に対する窒素原子含有量が0.3質量%以上であることを特徴とするリチウムイオン電池用電極材料。
  2. 前記導電性炭素材料により被覆された構造は、導電性炭素材料前駆体を窒素雰囲気下で焼成することにより形成されることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用電極材料。
  3. 前記導電性炭素材料前駆体は、構造中に窒素原子を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用電極材料。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載のリチウムイオン電池用電極材料を含むことを特徴とするリチウムイオン電池用電極。
  5. 請求項に記載のリチウムイオン電池用電極を用いることを特徴とするリチウムイオン電池。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載のリチウムイオン電池用電極材料を製造する方法であって、
    該製造方法は、活物質原料を含む溶液中で前駆体微粒子を生成させるとともに、該微粒子にモノマーの重合によって生成する重合体による被覆構造を形成させて電極材料前駆体を製造する工程を含み、
    該製造工程は、活物質原料とともに酸化重合性モノマーと酸化剤とを必須原料とし、溶液のpHを0.3以上、3.0以下とする工程を含むことを特徴とするリチウムイオン電池用電極材料の製造方法。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載のリチウムイオン電池用電極材料を製造する方法であって、
    該製造方法は、活物質原料を含む溶液中で前駆体微粒子を生成させるとともに、該微粒子にモノマーの重合によって生成する重合体による被覆構造を形成させて電極材料前駆体を製造する工程を含み、
    該製造工程は、活物質原料とともに酸化重合性モノマーと酸化剤とを必須原料とし、反応溶液中に酸化剤を供給しつつ、かつ活物質原料及び/又は酸化重合性モノマーを供給しながら前駆体を合成する工程を含むことを特徴とするリチウムイオン電池用電極材料の製造方法。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載のリチウムイオン電池用電極材料を製造する方法であって、
    該製造方法は、活物質微粒子が炭素成分による被覆構造を有するリチウム含有電極材料を製造する方法であり、
    該製造方法は、前駆体微粒子が重合体による被覆構造を有する電極材料前駆体とリチウム塩とを必須成分とし、溶媒の存在下で該必須成分を含む混合物を調製した後、該混合物を熱処理する工程を含むことを特徴とするリチウムイオン電池用電極材料の製造方法。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載のリチウムイオン電池用電極材料を製造する方法であって、
    該製造方法は、活物質微粒子が炭素成分による被覆構造を有するリチウム含有電極材料を製造する方法であり、
    該製造方法は、活物質原料とともに酸化重合性モノマーと酸化剤とを必須原料とし、必須原料の濃度を全ての前駆体原料を含む溶液100質量%に対して3〜60質量%とした溶液中で前駆体微粒子を生成させるとともに、該微粒子に酸化重合性モノマーの重合によって生成する重合体による被覆構造を形成させて電極材料前駆体を製造する工程と、該電極材料前駆体と融点が400℃以下であるリチウム塩とを必須成分とする混合物を調製した後、該混合物を熱処理する工程を含むことを特徴とするリチウムイオン電池用電極材料の製造方法。
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