JP5454580B2 - 造粒体の製造方法およびガラス製品の製造方法 - Google Patents
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Description
この問題を解決するために、ガラス原料の混合物からなる微細粒子(造粒体)を高温の気相雰囲気中で加熱し溶かして溶融ガラス粒子とし、次いで溶融ガラス粒子を集積して液体相(ガラス融液)を形成する気中溶融法と呼ばれる技術を用いるガラス製品の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
また、気中溶融法において用いられる造粒体は、スプレードライ造粒法(噴霧乾燥法)などを用いて製造できることが知られている(例えば、特許文献1)。
また、粒子の製造方法としては、スラリーを液滴として加熱雰囲気中に供給し、一次粒子の集合体を得、この集合体を溶融するとともに球形化し、固化させて二次粒子を得る方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、本発明は、組成の均一な高品質なガラスからなるガラス製品の製造方法を提供することを目的としている。
また、本発明者は、さらに研究を重ね、原料スラリー中に含まれるホウ酸の含有量を原料スラリーの固形分に対して5〜30質量%の範囲にするとともに、原料スラリーのpHを6.6以上として、ホウ酸が液状媒体中に充分に溶解している状態の原料スラリーを調製することにより、気中加熱装置に気流搬送しても微粉が生成されにくく、気中溶融法によるガラス製造に用いる場合に充分な強度を有する造粒体が得られることを見出し、本発明を想到した。
すなわち、本発明は、上記の目的を達成するために以下の構成を採用した。
本発明の製造方法を用いて製造するガラス原料造粒体(以下、造粒体と略記する場合がある)は、ホウ素成分を含む組成のガラス(ホウケイ酸ガラス)からなるガラス製品を製造することを目的とする、ホウケイ酸ガラス製造用のガラス原料造粒体である。
本発明においてガラスとは酸化物系ガラスをいい、酸化物系ガラス中の各成分は酸化物で表示し、各成分の質量割合は酸化物換算で表す。ホウケイ酸ガラスは、酸化ケイ素を主成分とし、かつホウ素成分を含有する酸化物系ガラスである。ホウケイ酸ガラス中のホウ素成分は酸化ホウ素(三酸化二ホウ素(B2O3)等のホウ素酸化物の総称)であり、以下B2O3で表し、ガラス中の酸化ホウ素の質量割合はB2O3換算で表す。ガラス中の主な成分は、同様に、SiO2、Al2O3、MgO、CaO、SrO、BaO、Na2O等の酸化物で表し、その質量割合は酸化物換算で表す。本発明におけるホウケイ酸ガラスは、上記酸化物換算で1質量%以上の酸化ホウ素を含む、酸化ケイ素を主成分とする酸化物系ガラスをいう。
ガラス原料は、酸化物基準の質量百分率表示で酸化ホウ素含有量が1〜30質量%のホウケイ酸ガラスとなるように調整されたものであることが好ましく、酸化ホウ素含有量が2〜20質量%のホウケイ酸ガラスとなるように調整されたものであることがより好ましい。本実施形態においてはガラス原料としてホウ酸を含有するものを使用し、酸化ホウ素含有量が上記範囲のホウケイ酸ガラスを製造する。
ガラス原料造粒体の製造に用いられる後述する原料スラリーの液状媒体として水を使用する場合は、原料スラリーのホウ酸源(原料スラリー中のホウ酸量が原料スラリーの固形分に対して5〜30質量)として酸化ホウ素を用いることもできる。すなわち、原料スラリー中の酸化ホウ素が水に溶解してホウ酸に変化している場合には、原料スラリー中のホウ酸として酸化ホウ素由来のホウ酸を含むことができる。
本発明におけるガラス原料造粒体は、一般的なシーメンス炉型のガラス溶融炉を利用したガラス溶融法や気中溶融法でガラス製品を製造するための原料として使用される。気中溶融法では、ガラス原料造粒体を高温の気相雰囲気中で溶解させて溶融ガラス粒子とし、その気相雰囲気中で生成した溶融ガラス粒子を炉底に集積してガラス融液とする。ガラス溶融炉の底に貯留されたガラス融液はガラス溶融炉から溶融ガラスとして取り出され、その後は通常のガラス製品の製造の場合と同様に、溶融ガラスを成形すると共に固化してガラス製品とする。
ガラス原料粒子の場合は、湿式によるレーザー回析散乱法を用いて測定された粒径分布曲線における50%径(D50またはメジアン径ともいう。粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる径)とした。ガラス原料造粒体の場合は、乾式によるレーザー回折散乱法を用いて測定された粒径分布曲線における50%径とした。
いわゆるガラスバッチやガラスカレットを原料とする一般のガラス溶融炉を利用したガラス溶融法では、本発明の製造方法で得たガラス原料造粒体を、ガラスバッチのかわりにガラス溶融炉に投入すればよい。本発明のガラス造粒体のように、微粉が生じにくく強度の強いガラス原料造粒体は、通常のガラス溶融法に利用する場合でも効果が認められる。
本発明のガラス原料造粒体の製造方法は、原料スラリーを調製する工程と、スプレードライ造粒法により原料スラリーからガラス原料造粒体を製造する工程とを備えている。
液状媒体としては水を用いることが好ましい。液状媒体としては、水以外に、メタノール、エタノール等のアルコールを使用することができ、また、水とこのようなアルコールとの混合媒体を使用することもできる。水以外の液状媒体としては、ホウ酸の溶解度が水よりも高い液状媒体が好ましい。以下の説明では、ホウ酸可溶性液状媒体として水を使用する場合について主として説明するが、液状媒体は、水に限定されるものではない。
液状媒体とホウ酸を含むガラス原料とを混合した後、しばらくの間攪拌等の混合操作を続けることが好ましい。この混合操作を続けている間にホウ酸が液状媒体に溶解すると考えられる。また、通常、この混合操作を続けている間にスラリーのpHが上昇する。さらに、混合手段としてガラス原料粒子を破砕する作用を有する混合手段、例えばボールミル等の粉砕手段、を用いることにより、ホウ酸の溶解速度を高めるとともに、ガラス原料をより微細な粒子にすることができる。
混合操作を続ける時間は、pHが6.6以上の原料スラリーが得られる限り、特に限定されないが、30分以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。混合操作を1時間以上続けることにより、十分な量のホウ酸が液状媒体に溶解すると考えられる。また、液状媒体とホウ酸を含むガラス原料とを混合した直後のスラリーのpHが6.6未満の場合は、pHが6.6以上となるまで混合操作を続けて原料スラリーを得ることが好ましい。混合操作を続ける時間の上限は特に限定されないが、あまりに長時間の場合は経済的でないので、混合操作を続ける時間は24時間以下が適当であり、12時間以下が好ましい。
なお、pH7以上の原料スラリー中では、ホウ酸が中和されていることも考えられるが、中和塩が溶解している限り本発明の作用効果の発揮に支障はない。また、本発明における原料スラリー中のホウ酸量の算出においては、例え、ホウ酸が中和されて中和塩として存在していても中和塩が溶解している限り、ホウ酸とみなして計算する。
pH調整剤としては、原料スラリーのpHを7以上にすることができるものであれば如何なるものを用いてもよく、特に限定されないが、造粒体を用いて得られるガラスの種類などに応じて、決定することが好ましい。また、pH調整剤の量は、ガラス原料やガラス母組成の種類、ガラス原料の量、ホウ酸の量、液状媒体の種類や量、pH調整剤の種類などに応じて、適宜決定される。
液状媒体とホウ酸を含むガラス原料とを混合した直後のスラリーのpHは、通常、5.5〜6.5である。しかし、液状媒体とホウ酸を含むガラス原料とを混合する混合操作を続けている間にスラリーのpHが上昇する。これは、ホウ酸以外のガラス原料がホウ酸と反応してホウ酸を中和するためであると考えられる。ホウケイ酸ガラスの原料の一部として、通常、アルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が使用され、無アルカリのホウケイ酸ガラスであっても通常アルカリ土類金属化合物が原料として使用される。これら金属化合物のうち水酸化物や炭酸塩などの塩基性化合物は、スラリーの混合操作を続けている間にホウ酸と徐々に反応してホウ酸を中和し、これによりスラリーのpHが上昇すると考えられる。このpHの上昇に伴い、ホウ酸の水性媒体に対する溶解量も上昇すると考えられる。したがって、pH調整剤を使用しない場合であっても、液状媒体とホウ酸を含むガラス原料とを混合する混合操作をスラリーのpHが6.6以上となるまで続けることにより、pHが6.6以上の原料スラリーが得られる。なお、pH調整剤を使用しない場合、得られる原料スラリーのpHは通常9以下である。
スラリーのpHが6.6以上となるまでの時間は、ホウ酸量、ホウ酸以外のガラス原料の種類や組成(例えば、上記塩基性化合物の種類や量)、混合操作条件等により変化する。また、pH調整剤を使用することなく、pHが7以上の原料スラリーを得ることもできる。スラリーのpHが6.6以上となるまでの時間があまりに長くなる場合は、pH調整剤を使用することが好ましい。また、混合操作を短時間で行う必要がある場合にも、pH調整剤を使用することが好ましい。
pH調整剤を使用しない場合、原料スラリーのpHが6.6以上となる限り、液状媒体とホウ酸を含むガラス原料とを混合して攪拌を続ける時間は30分以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。pHを6.6以上とするためのスラリーの混合操作時間は、ホウ酸の量、ガラス原料の種類、各ガラス原料の粒子サイズにより影響を受けるが、pHを6.6以上の所定の値の原料スラリーを調整するための混合操作を続ける時間は2時間以上が好ましく、4時間以上が好ましい。1時間以上、好ましくは2時間以上混合攪拌を続けることにより、十分な量のホウ酸が液状媒体に溶解すると考えられる。混合操作を続ける時間は、ガラス原料造粒体の生産性を考慮すると12時間以下が好ましい。
あるいは、原料スラリーの材料である、ガラス原料からホウ酸を除いた原料と、液体媒体とを、ボールミルの容器に入れ、所定時間混ぜ合わしてガラス原料中の不溶解性のガラス原料を液状媒体中に分散させ、原料スラリーのpHを増加させた後に、ホウ酸を投入して、所定時間混ぜ合わせて、ホウ酸を効率よく溶解させてもよい。この場合、pH調整剤を利用しないで、原料スラリーのpHを増加させ、ホウ酸を充分に溶解できるので、効率良く原料スラリーを調整できる。また、この場合には、攪拌時間が長いだけ、不溶解性のガラス原料などを粉砕する効果もあるため、ガラス原料中の各成分の粒子径を大きくしても、原料スラリーを調整できる。この場合には、粒子径の小さいガラス原料を準備する費用はその粒子径が小さくなるほど大きくなるため、原料コストの面からも効果がある。
本実施形態のガラス製品の製造方法は、上述した製造方法によって製造されたガラス原料粒子を加熱して溶融ガラスとし、溶融ガラスを成形固化してガラス製品とする。
ガラス原料粒子を加熱して溶融ガラスするに際し、シーメンス型のガラス溶融炉を利用する通常の溶融方法でも効果があり、気中溶融法を適用することが好ましい。以下では、気中溶融法を用いる場合について説明する。
アルミナからなる直径20mmのボールが10kg収容された容量10リットルの容器を備えたボールミルを用いて、以下に示すように、原料スラリーを調製し、造粒体を製造した。
まず、表1および表2に示す組成のガラス原料と、表1および表2に示すpH調整剤と、液状溶媒としての水とを、表1および表2に示す割合(ガラス原料:水)でボールミルの容器に入れ、1時間攪拌することにより、表1および表2に示すpHの実施例1〜12、比較例1〜4の原料スラリーを調製した。なお、実施例1〜2、4〜5、8〜12及び比較例1〜2は、溶解後のガラス組成の目標値が酸化物基準でSiO2:60質量%、Al2O3:17質量%、B2O3:8質量%、MgO:3質量%、CaO:4質量%、SrO:7.6質量%、BaO:0.065質量%、Fe2O3:0.055質量%となるように調合した。また、実施例6〜7及び比較例4は、溶解後のガラス組成の目標値が酸化物基準でSiO2:50質量%、Al2O3:10質量%、B2O3:15質量%、BaO:25質量%となるように調合した。溶解後のガラス組成は、実施例1〜2、4〜12においてほぼ目標通りとなった。
条件A:スプレードライヤー乾燥室径 φ2000mm(大川原化工機(株)製)
アトマイザー回転数 10000rpm
入口温度 250℃、出口温度 130℃
スラリー供給量 15〜20kg/hr
条件B:スプレードライヤー乾燥室径 φ2600mm((株)プリス製)
アトマイザー回転数 12000rpm
入口温度 300℃、出口温度 120℃
スラリー供給量 20〜25kg/hr
すなわち、ガラス原料造粒体同士を衝突させて、造粒体の破壊(崩壊)の程度を造粒体の粒度分布の変化を測定することにより評価した。より詳細には、まず、レーザー回折・散乱法を用いて粒径分布を測定する粒径分布測定装置(前記したマイクロトラックMT3300)を用い、粒径分布測定装置の測定室に入る直前の造粒体に圧縮空気圧0psi(0kPa)または50psi(345kPa)の圧縮空気を吹き込んで、圧縮空気圧0psi(0kPa)での粒径分布と、圧縮空気圧50psi(345kPa)での粒径分布とを測定した。その後、圧縮空気圧0psi(0kPa)での粒径分布と、圧縮空気圧50psi(345kPa)での粒径分布とを用いて、粒径0.972〜322.8μmの範囲での両者の相関係数を算出した。その結果を表1および表2に示す。なお、各粒径分布を求める場合のサンプリング数は、粒径0.972〜322.8μmに対応する標準ふるいの目開きの区分と、目開きの各区分の上下限値に対する平均目開きの値を加えた68点とした。具体的には、得られた2つの粒径分布に対する累積パーセントのデータに対して、マイクロソフト社製EXCEL2002SP3の組み込み関数であるCORREL関数を利用して、両者の相関係数を算出した。
実験例1と同様にして製造した実施例3、比較例1および比較例2の造粒体を、気中加熱装置の気相雰囲気中に空気搬送し、気相雰囲気中で酸素バーナーを用いて加熱して溶融ガラスの粒子とし、その後、その液状の溶融ガラス粒子を固化させることにより実施例3、比較例1および比較例2のガラス粒子を得た。溶解条件は、バーナー熱量38kW、造粒体を酸素バーナーの炎に入れる投入速度であるフィード量50〜60g/minで実施した。その際の溶融ガラスの温度は、約1700〜1900℃であると推定された。
図1に示すように、実施例3のガラス粒子には微粉が含まれていないが、比較例1および比較例2のガラス粒子には微粉が含まれていた。
このことより、実施例3の造粒体は、空気搬送しても微粉が生成されない充分な強度を有していたことが分かる。また、比較例1および比較例2の造粒体は、強度が不十分であるために、空気搬送によって微粉が生成されたことが分かる。
実験例1と同様にして製造した実施例1および比較例1の造粒体の表面を観察した。その結果を図2および図3に示す。図2は、実施例1の造粒体の顕微鏡写真であり、図3は、比較例1の造粒体の顕微鏡写真である。
また、実験例1と同様にして製造した実施例1および比較例1の造粒体の表面を、オージエ電子分光法を用いて元素分析することにより、表面の元素量を測定した。その結果を表4に示す。ここで各成分の元素量比は原子百分率(atomic%)である。
また、図2および図3に示すように、実施例1の造粒体の表面は比較例1の造粒体の表面と比較して、表面の微細な凹凸が少なく、表面がガラス状の物質で覆われている様子が観察される。これは、造粒体の表面に析出したホウ酸が、造粒体を取り囲んで結合剤として機能していることによるものと推定される。
アルミナからなる直径10mmのボールが1kg収容された容量1リットルの容器を備えたボールミルを用いて、以下に示すように、原料スラリーを調製し、スラリーpHを測定した。この実験においては、ガラス原料として、表3に示す平均粒子径のもの(原料1)とは別に表5に示す平均粒子径のもの(原料2)を用いた。平均粒子径は、原料1と同様の方法によって測定した。なお、以下の表6の実験(実施例および比較例)では、pH調整剤は利用していない。
表6の実施例13に示す組成のガラス原料と、液状溶媒としての水とを、表6の実施例13に示す割合(ガラス原料:水)でボールミルの容器に入れ、15時間攪拌した。途中10分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、10時間後、15時間後にスラリーのサンプリングを行い、pHの変化を測定した。結果を図4(CaseI)に示す。なお、このCaseIの原料は表3に示す原料系(原料1)を利用した場合である。
同様に、表6の実施例14に示す組成のガラス原料と、液状溶媒としての水とを、1:1.2の割合(ガラス原料:水)でボールミルの容器に入れ、15時間粉砕混合した。途中10分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、15時間後にスラリーのサンプリングを行い、pHの変化を測定した。結果を図4(CaseII)に示す。なお、このCaseIIの原料は表5に示す原料系(原料2)を利用した場合である。
混合直後(途中10分後)のスラリーのpHは5.7(CaseII)〜6.0(CaseI)であったが、2時間以上のボールミルによって、いずれの場合でもスラリーのpHは6.6よりも高くなることが判った。ボールミルに伴って、特にpH調整剤を添加しなくても、アルカリ成分であるCaCO3やSrCO3が水中に溶け出し、pHが上昇したと考えられる。
ケイ石からなる直径50〜70mmの玉石が容積の約50%になるように収容された容量20m3の容器を備えたボールミルを用いて、以下に示すように、原料スラリーを調製し、スラリーpHを測定した。
表6の実施例13、および14に示すガラス原料系(それぞれ原料1、原料2)を用い、表6に示す組成のガラス原料と、液状溶媒としての水とを、表6に示す割合(ガラス原料:水)でボールミルの容器に入れ、それぞれ8時間、および12時間粉砕混合することにより、表6に示すpHの実施例13、および14の原料スラリーを調製した。なお、ガラス原料2を用いた実施例14において、原料スラリー調製後の原料スラリー中のガラス原料の平均粒子径は15μmであった。この測定は、株式会社堀場製作所のLA950−V2で行った。また、実施例13は、ガラス組成の目標値が酸化物基準でSiO2:60質量%、Al2O3:17質量%、B2O3:8質量%、MgO:3質量%、CaO:4質量%、SrO:7.6質量%となるように、また実施例14は、溶解後のガラス組成の目標値が酸化物基準でSiO2:58質量%、Al2O3:17質量%、B2O3:9質量%、MgO:3質量%、CaO:4質量%、SrO:8質量%となるように調合した。溶解後のガラス組成は、実施例13、および14においてほぼ目標通りとなった。
次に表6に示す条件Cでスプレードライ造粒法により、実施例13、および14の原料スラリーに含まれる溶媒を除去し、実施例13、および14の造粒体を製造した。表5に示す条件Cを以下に示す。
条件C:スプレードライヤー乾燥室径 φ7000mm((株)マエダマテリアル製)
加圧ノズル方式 ノズル系 φ2mm×7本
入口温度 500℃、出口温度 200℃
なお、実施例13、および14においては、相関係数の算出方法を実施例1〜12等と異なる方法を採用した。すなわち、実施例13、および14に対しては、粒径0.972〜995.6μmの範囲で相関係数を算出した。その他の条件は他の記載例と同様である。この場合、各粒径分布を求める場合のサンプリング数は、粒径0.972〜995.6μmに対応する標準ふるいの目開きの区分と、目開きの各区分の上下限値に対する平均目開きの値を加えた81点とした。このように相関係数の測定を変えた理由は以下のとおりである。スプレー条件AやBの場合は平均粒径が70〜100μm程度で、300μm以上の顆粒は極めて量が少ないため、1〜300μmの範囲で相関係数をとれば十分であった。他方、スプレー条件Cの場合は顆粒径が大きく、また1mmの篩で篩分けしたものを使用していることもあり、1〜997μmの範囲で相関係数をとることが実際に顆粒の特性を反映していると考えられる。
実施例13の平均顆粒径を変え、スプレードライ条件Cをスプレードライ条件Aに変更して造粒を行った。その造粒の結果を、表6の実施例15に示す。また、実施例15に対して、ボールミルによる粉砕時間を1時間程度にしたものを、表6の比較例6に示す。実施例15のスラリー中のガラス原料の平均粒子径は13μm、比較例6のガラス原料の平均粒子径は35μmであった。これらの結果から、異なるスプレードライ条件によっても、粉砕時間を増やすことによってpHが6.7以上になり、相関係数も十分に大きくなることがわかる。なお、実施例14、15および比較例6において、ガラス原料:水は、それぞれ1:2、1:1.5、および1:1で若干異なるが、この程度の差であれば造粒体の強度に対する影響は小さい。
実施例15のガラス原料系(原料2)を、表5の原料1に変更して造粒を行った。その造粒の結果を、表6の実施例16に示す。また、実施例16に対して、ボールミルによる粉砕時間を1時間にしたものを、表6の比較例5に示す。これらの結果から、異なる原料系によっても、粉砕時間を増やすことによってpHが7.8以上になり、相関係数も十分に大きくなることがわかる。なお、実施例15、16、および比較例5において、ガラス原料:水は、それぞれ1:1.5、1:1、および1:1で、実施例15の場合で若干異なるが、この程度の差であれば造粒体の強度に対する影響は小さい。
実施例13の粉砕時間8時間を、表6の4時間に変更して造粒を行った。その造粒の結果を、表6の実施例17に示す。この造粒の結果から、図4で示したように、粉砕時間が長くなることによってpHの上昇が得られ、4時間でpHが8.1以上になり、相関係数も十分に大きくなることがわかる。なお、実施例13、および17において、ガラス原料:水は、それぞれ1:1.5、および1:1で、両者で若干異なるが、この程度の差であれば造粒体の強度に対する影響は小さい。
なお、2009年8月28日に出願された日本特許出願2009−198477号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
Claims (14)
- ホウ酸としてオルトホウ酸を含むガラス原料とホウ酸可溶性液状媒体とを含む原料スラリーであって、原料スラリー中のホウ酸量が原料スラリーの固形分に対して5〜30質量%であり、かつ原料スラリーのpHが6.6以上である、原料スラリーを調製する工程と、
スプレードライ造粒法により前記原料スラリーからガラス原料造粒体を製造する工程と、
を備えることを特徴とするホウケイ酸ガラス製造用のガラス原料造粒体の製造方法。 - 原料スラリーがさらにpH調整剤を含む、請求項1に記載の製造方法。
- 原料スラリーのpHが7以上である、請求項1または2に記載の製造方法。
- 原料スラリーのpHが6.6以上となるまでホウ酸可溶性液状媒体中でホウ酸とガラス原料を接触させて原料スラリーを調製する、請求項1に記載の製造方法。
- ガラス原料の一部が、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる金属の水酸化物または炭酸塩である、請求項4に記載の製造方法。
- ホウ酸を含むガラス原料とホウ酸可溶性液状媒体とを混合して原料スラリーを調製する手段がボールミルである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記ガラス原料造粒体の平均粒子径が30〜1000μmである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記ホウ酸可溶性液状媒体が水である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
- 原料スラリーのpHが8〜12である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記ガラス原料が、酸化物基準の質量百分率表示で酸化ホウ素含有量が1〜30質量%のホウケイ酸ガラスとなるように調整されたものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記ガラス原料が、酸化物基準の質量百分率表示で下記組成(1)のホウケイ酸ガラス(ただし、下記Rはアルカリ金属を表す。)となるように調整されたものである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
SiO2:40〜85質量%、Al2O3:1〜22質量%、B2O3:2〜20質量%、MgO:0〜8質量%、CaO:0〜14.5質量%、SrO:0〜24質量%、BaO:0〜30質量%、R2O:0〜10質量%・・・(1)。 - 請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたガラス原料造粒体を、加熱して溶融ガラスとする工程と、
前記溶融ガラスを成形固化する工程と、
を含むことを特徴とするガラス製品の製造方法。 - 請求項12に記載のガラス原料造粒体を溶融ガラスとする工程が、前記ガラス原料造粒体を、気相雰囲気中で溶融させて溶融ガラス粒子とする工程と、
前記溶融ガラス粒子を集積してガラス融液とする工程と、
を含むことを特徴とするガラス製品の製造方法。 - 前記ガラス原料造粒体を気流で搬送して前記気相雰囲気に導入する、請求項13に記載のガラス製品の製造方法。
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