以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で任意に変形して実施することができる。
[電子写真感光体]
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体であって、感光層が、特定の構造を持ち、特定の波長の光を吸収する化合物Aを含有する。以下の記載では、まず感光層に含有される化合物A(以下、適宜「本発明の光吸収剤」と略称する場合がある。)について説明した後、続いて本発明の電子写真感光体、カートリッジ及び画像形成装置について説明する。
<感光層>
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を有する。
(化合物A)
感光層は下記式(1)で表される化合物Aを含有する。下記式(1)で表される化合物Aは、通常、特定の波長の光を吸収する光吸収剤として機能する。
一般式(1)中のX1、X2、R0は、それぞれ独立に水素原子、炭素数20以下の有機基、置換基を有してもよい芳香環基の何れかを表す。ただし、X1、X2、R0のうち少なくとも1つは置換基を有してもよい芳香族基を表す。
炭素数20以下の有機基としては各種のものを用いることができるが、本発明の効果をより発揮するためには炭素数10以下であることが好ましい。この有機基は、直鎖および分岐のいずれの構造を持ってもよい。
有機基の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分岐、環状構造を有するアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等のアルキルアミノ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等のハロアルキル基;フェニルカルボニル基、メチルカルボニル基、プロペニルカルボニル基等の有機カルボニル基が挙げられる。これらの中でも電子写真感光体特性の面から、アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基が好ましく、更にこれらの中でも炭素数5以下のアルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基がより好ましく、更に好ましくは炭素数3以下のアルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基であり、更により好ましくはメチル基、メトキシ基、エトキシ基、トリフルオロメチル基である。
置換基を有してもよい芳香族基としては、炭素数5〜20の芳香環基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ビフェニル基、ピレニル基、ピリジル基、チオフェニル基、フラニル基等が挙げられる。中でも、電子写真感光体の特性を考慮すると、フェニル基、ナフチル基、チオフェニル基、フラニル基が好ましく、フェニル基、ナフチル基、フラニル基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。
前記芳香環基は置換基を有していてもよい。置換基の分子量は本発明の効果を得るために、好ましくは100以下であり、より好ましくは80以下、更に好ましくは60以下、更により好ましくは40以下である。例えば、水酸基、カルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、アリル基、アリール基、ポリオキシアルキレンオキシド基等を挙げることができる。中でも好ましくは、水酸基;カルボニル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、γ−メトキシプロピル基、ベンジル基、p−メチルベンジル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アリル基、γ−クロルアリル基等のアリル基;フェニル基、ナフチル基、トリル基、p−メトキシフェニル基等のアリール基を挙げることができる。また、これらの置換基は、さらに当該置換基とは異なる置換基を有してもよい。こうした異なる置換基としては、上記説明した置換基から選ばれる任意の基を適宜用いればよい。
本発明の化合物A(光吸収剤)は1種類のみを用いても、いくつかを併用してもよい。以下に本発明の光吸収剤の具体例を示す。
ここで、上記一般式(1)で表される化合物Aの紫外線吸収メカニズムについて考察する。一般式(1)で表される化合物Aは、特定の波長の光を吸収すると、芳香環内の分子が励起され、熱エネルギーとなって放出する化学反応を繰り返すことが知られており、この反応により、ある特定波長が感光体に与えるダメージを防いでいると考えられる。しかし、この分子の活動は非常に活発なため、分子構造やその添加量によってはまれに、化合物自体が分解して感光体の電気特性に悪影響を及ぼすことも考えられる。ところが、本願で特定する化合物Aはそうした分解が起き難いので感光体の電気特性に悪影響を与えることなく、特定の波長を吸収することができるのである。
次に、分解が起き難いメカニズムについて考察する。当該化合物Aの構造は、下記式に示されるジケトン体とそのエノール体との平衡混合物として表すことができる。この平衡は、固体および溶液状態ではエノール体の方に傾いており、エノール性水酸基の水素原子とカルボニル酸素原子が、強い水素結合を形成して安定化されており、光に対して極めて安定な化合物となる。これにより、光吸収剤自体の分解を抑えることができるものと考えている。
化合物A(光吸収剤)の感光層中の含有量は、後述する感光層中のバインダー樹脂100重量部に対して、通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、また、通常50重量部以下、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下とする。上記範囲とすれば、感光体の電気的特性を阻害することなく、感光層を形成するために用いる塗布液の安定性も向上させやすくなる。
化合物Aは、種々の方法で製造できるが、その一例について説明すると、たとえば次式(A)で示される置換アセトフェノンと一般式(B)で示される置換芳香族エステルとをクライゼン縮合させると、次式(C)に示す本発明の化合物が得られる(R,Hauser等、Organic Reactions、8巻、P59(1954)参照)。
この反応は、アルカリ金属水素化物(たとえば水素化ナトリウム)、アルカリ金属アミド(たとえばナトリウムアミド)、又はアルカリ金属アルコラート(たとえばナトリウムエチラート又はナトリウムメチラート)のような強塩基の存在下で行うとよい。反応は、エーテル類(たとえばテトラヒドロフラン)又は炭化水素(たとえばトルエン)のような不活性溶媒の存在下で行うとよい。反応温度は、通常20℃以上、好ましくは40℃以上、また、通常90℃以下、好ましくは60℃以下とする。式(1)に表される化合物Aの分離は、化合物Aの金属塩に氷及び酸(たとえば鉱酸又は酢酸のようなアルカンカルボン酸)を加えて行い、低級アルコールからの再結晶で精製することにより行うことができる。
(化合物B)
感光層には、下記式(2)で表される化合物Bを含有することが好ましい。化合物Bは、通常、電荷輸送物質として用いられる。
式(2)中、Yは、置換基を有してもよいアルキレン基を表し、置換基は互いに結合して環を形成してもよく、Ar3及びAr4は、各々独立して、置換基を有していてもよいアルキレン基又は置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Ar5、Ar6、Ar7及びAr8は、各々独立して、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。
本発明者らの検討において、化合物Bが高感度で耐久性のよい良好な感光体を得るために有効であることがわかった。ところが、化合物Bを感光層に含有させた感光体は、マシン組み立て時やメンテナンス時にさらされる外光でダメージを受ける傾向が強い。これは感光体が光に曝されることにより、感光層の内部に大量の電荷トラップが生成し、多くの場合残留電位の大幅な上昇につながるためである。電荷トラップが生じるメカニズムについてはよく判っていないところであるが、例えば電荷輸送物質自身が露光された光を吸収することにより励起され、その励起状態から緩和する際に、元の基底状態には戻らず、途中のエネルギー状態を持つ別の構造に変化してしまい、それが電荷トラップの要因となる場合や、感光層中の他の成分(電荷輸送物質単独の場合あるいは電子吸引性物質を含む場合は電荷輸送物質との間で形成される弱い電荷移動錯体等)が直接励起され電荷キャリアペアを生成し、それらが原因となる場合等が考えられる。
化合物Bを感光層に含有させた感光体は、上記説明したように、マシン組み立て時やメンテナンス時にさらされる外光でダメージを受け、耐光性に課題を有するものとなることが多い。こうした場合に、本発明で用いる化合物A(光吸収剤)を併用することにより、高い電気特性を有しながら耐光性にも優れた電子写真感光体を提供することができる。
化合物Bは、1種類のみを用いても、いくつかを併用してもよい。また、化合物Bを電荷輸送物質として用いる場合には、必要に応じて、式(2)で示される化合物Bに更に他の電荷輸送物質を併用することもできる。併用する電荷輸送物質の量に特に制限はないが、本発明の効果を充分に得るため、併用する電荷輸送物質の感光層中に含まれる総重量は、式(2)で示される化合物Bの重量を超えないことが好ましい。
化合物Bにおける式(2)中のYは、置換基を有してもよいアルキレン基を表し、置換基は互いに結合してシクロヘキサン環のような環を形成してもよい。アルキレン基としては、下記式(3)で表される基であるのが好ましい。
式(3)中R1,R2は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもいてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。
式(3)中R1は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。R1が水素原子の場合、R2は、好ましくは、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R1が置換基を有していてもよいアルキル基の場合、R2は、好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R1が置換基を有していてもよいアリール基の場合、R2は、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していても良いアリール基を表す。
式(3)中R1,R2に用いるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基等を挙げることができ、直鎖及び分岐のいずれの構造であってもよい。式(3)中R1,R2に用いるアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、チオフェニル基、フラニル基、ピレニル基等、炭化水素系アリール基及び複素環系アリール基を挙げることができる。これらアルキル基やアリール基はさらに置換基を有していてもよく、それらの置換基としては、例えば、メチル基等のアルキル基、フッ素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
式(3)中R1は、キラル中心を少なくとも一つ有する基であることがより好ましく、キラル中心を有する基としては、キラル中心を炭素原子とする下記式(4)で表される基であるのがさらに好ましい。
式(4)中、R3、R4、及びR5は、各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、及び置換基を有していてもよいアリール基を示し、R3〜R5は互いに異なる。
式(4)において、R3、R4、及びR5としては、この三者が互いに異なり、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基等の電気特性を悪化させるような基でない限り、特に限定されるものではない。R3、R4、及びR5としては、例えば、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、及び置換基を有していてもよいアリール基等が挙げられる。これらのうちで、R3、R4、及びR5は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基であることが好ましく、水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基であることがより好ましい。R3、R4、及びR5をアルキル基とする場合は、炭素数が、通常1以上、また、通常17以下、好ましくは5以下のものを用いる。
R3、R4、及びR5に用いるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアリール基等の置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、さらに置換基を有していてもよいメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、さらに置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、さらに置換基を有していてもよいフェニルチオ基等のアリールチオ基等が挙げられる。そして、さらに有してもよい置換基としては、例えば、メチル基等のアルキル基、弗素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
式(4)におけるR3、R4、及びR5のうちの二つが置換基を有していてもよいアルキル基であり、一つが水素原子であるのが特に好ましい。
式(3)におけるR1を式(4)で表される構造とする場合、R2は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び置換基を有するアリール基とすることが好ましい。より好ましくは、R2を、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基とする。さらに好ましくは、R2を水素原子とする。また、アルキル基及びアリール基の置換基としては、上記のR1において挙げた置換基と同様のものを用いることができる。
式(2)中、Ar3及びAr4は、各々独立して、置換基を有していてもよいアルキレン基又は置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。より具体的には、Ar3、Ar4は同一であっても、異なっていてもよい。Ar3、Ar4は、置換基を有していてもよいアルキレン基、及び置換基を有していてもよいアリーレン基の中で、置換基を有していてもよいアリーレン基であるのが好ましく、フェニレン基であるのが更に好ましく、1,4−フェニレン基であるのが特に好ましい。尚、アルキレン基、及びアリーレン基の置換基としては、式(4)のR4に用いるものとして挙げた置換基と同様のものを用いることができる。
式(2)中、Ar5、Ar6、Ar7、及びAr8は、各々独立して、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。Ar5、Ar6、Ar7、及びAr8は、置換基を有していてもよいアルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基の中で、置換基を有していてもよいアリール基であるのが好ましく、4つ全てが置換基を有していてもよいアリール基であるのがより好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、その置換基としては、Ar2,Ar3において挙げた置換基と同様のものを用いることができ、中でも、アルキル基が好ましく、窒素原子に結合する炭素原子に対して3位及び/又は4位に置換メチル基を有するトリル基、キシリル基が特に好ましい。
化合物Bは1種類のみを用いても、いくつかを併用してもよい。以下に、化合物Bの好適な具体例を示す。
化合物Bの製造方法は特に限定されない。化合物Bの製造方法としては、例えば、式(2)におけるAr3、Ar5、及びAr6を置換基として有する第三アミン化合物、及びAr4、Ar7、及びAr8を置換基として有する第三アミン化合物と、式(3)におけるR1及びR2を有するカルボニル化合物と、を、酸縮合反応させる方法を挙げることができる。また、化合物Bは、式(2)におけるAr3及びAr5を置換基として有する第二アミン化合物、及びAr4及びAr7を置換基として有する第二アミン化合物と、式(3)におけるR1及びR2を有するカルボニル化合物と、を、酸縮合反応させた後、更に、Ar6を有するハロゲン化合物、及びAr8を有するハロゲン化合物とカップリング反応させる方法等により、製造することもできる。
なお、上記のカップリング反応は、銅触媒や鉄触媒を用いるウルマン(Ullmann)反応で行ってもよいし、パラジウム触媒を用いる方法で行ってもよい。但し、本発明の化合物Bを電子写真感光体に用いる場合の電気特性を勘案すれば、パラジウム触媒を用いる方法によるのが好ましい。そして、パラジウム触媒の配位子としては、燐誘導体が好ましい。また、以上の反応において、生成する水、酸、アルコール等を早期に系外に排出するのが好ましく、例えば、窒素流通下で反応を行うのが特に好ましい。その際の窒素流通量は、通常、反応容器の0.0001容量%/分以上、好ましくは、反応容器の0.001容量%/分以上、また、通常、反応容器の5容量%/分以下、好ましくは、反応容器の3容量%/分以下とする。
化合物Bの感光層中の含有量は、後述する感光層中のバインダー樹脂100重量部に対して、通常30重量部以上、好ましくは50重量部以上、また、通常150重量部以下、好ましくは120重量部以下、より好ましくは100重量部以下とする。上記範囲とすれば、感光層の機械的強度と電気的特性とのバランスを確保しやすい。
(アゾ化合物、電荷発生物質)
感光層には、アゾ化合物を含有させることが好ましい。アゾ化合物は、通常、電荷発生物質として機能し、短波長の光源で露光する場合に所望の感度を得やすいので、短波長の光源で画像形成可能な感光体としやすい。以下では、まずアゾ化合物の説明を行った後、アゾ化合物以外の電荷発生物質について説明する。
アゾ化合物(以下、アゾ顔料という場合がある。)としては、特に制限はなく、例えば、モノアゾ顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料を挙げることができる。アゾ化合物としては、アゾ結合が複数あるものが好ましく、ジスアゾ顔料又はトリスアゾ顔料を用いることが好ましい。また、複数のアゾ結合を有する場合のカップラー成分は、同じでも異なっていてもよいが、好ましくは、異なるカップラーを用いる。
アゾ化合物の好適な具体例を以下に示す。
これらアゾ化合物の中で、短波長の光源で画像形成可能な感光体に用いるという点において、アゾ1,アゾ2、アゾ3で表されるものが特に好ましい。
上記のとおり、アゾ化合物は、通常、電荷発生物質として用いる。こうした電荷発生物質としては、アゾ化合物以外にも種々の材料を挙げることができる。例えば、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム等の無機系光導電材料と、有機顔料等の有機系光導電材料とが挙げられるが、有機系光導電材料の方が好ましく、特に有機顔料が好ましい。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等が挙げられる。これらの中でも、特にフタロシアニン顔料が好ましい。
すなわち、電荷発生物質としては、フタロシアニン顔料又はアゾ顔料を用いることが好ましい。フタロシアニン顔料は、比較的長波長のレーザー光に対して高感度の感光体が得られる点で、また、アゾ顔料は、白色光及び比較的短波長のレーザー光に対し十分な感度を持つ点で、それぞれ優れている。ただ、フタロシアニン顔料やアゾ顔料を用いる場合には、波長380nm〜500nmの単色光で露光して静電潜像を形成する感光体を得やすいという共通の利点もある。
フタロシアニン顔料としては、具体的には無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、スズ、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム、アルミニウム等の金属又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン類の各結晶型を持ったもの、酸素原子等を架橋原子として用いたフタロシアニンダイマー類等が挙げられる。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ヒドロキシインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型、I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。
これらフタロシアニン顔料の中でも、A型(別称β型)、B型(別称α型)、及び粉末X線回折の回折角2θ(±0.2゜)が27.1゜又は27.3゜に明瞭なピークを示すことを特徴とするD型(Y型)チタニルフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型のヒドロキシガリウムフタロシアニン、及び28.1゜にもっとも強いピークを有し、また26.2゜にピークを持たず28.1゜に明瞭なピークを有し、かつ25.9゜の半値幅Wが0.1゜≦W≦0.4゜であるヒドロキシガリウムフタロシアニンが特に好ましい。
電荷発生物質として有機顔料を用いる場合には、1種を単独で用いてもよいが、2種類以上の顔料を混合して用いてもよく、好ましくはアゾ顔料同士、フタロシアニン顔料同士、あるいはアゾ顔料とフタロシアニン顔料とを組み合わせて用いる。電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、通常はこれらの有機顔料の微粒子を、各種のバインダー樹脂で結着した分散層の形で使用する。
(感光層のその他の成分:バインダー樹脂)
感光層には、膜強度確保のために、通常、バインダー樹脂が含有される。この場合、感光層は、上記電荷輸送物質等とバインダー樹脂を溶剤に溶解又は分散して得られる塗布液を塗布・乾燥して得ることができる。
バインダー樹脂としては、例えば、ブタジエン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミド、ポリウレタン、セルロースエーテル、フェノキシ樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。このうちポリカーボネート、ポリアリレートが特に好ましい。なお、これらは適当な硬化剤等を用いて熱、光等により架橋させて用いることもできる。これらのバインダーは2種類以上をブレンドして用いることもできる。
バインダー樹脂の分子量は、過度に低いと機械的強度が不足する傾向となり、逆に分子量が過度に高いと感光層形成のための塗布液の粘度が高くなり生産性が低下する傾向となる。このため、ポリカーボネートやポリアリレートをバインダー樹脂として用いる場合には、分子量は、粘度平均分子量で、通常10,000以上、好ましくは20,000以上、また、通常100,000以下、好ましくは70,000以下とする。
バインダー樹脂の感光層に対する含有量は、通常40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは53重量%以上とする。また、バインダー樹脂の感光層に対する含有量は、通常80重量%以下、好ましくは78重量%以下、より好ましくは75重量%以下とする。上記範囲とすれば、機械的強度と電気特性とのバランスを確保しやすい。
(感光層のその他の成分:添加剤)
感光層には添加剤が含有されていてもよい。化合物Aは、通常、添加剤として感光層に含有されるものであるが、化合物A以外に用いることが可能な添加剤として以下のものを挙げることができる。例えば、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、及び耐光性等を向上させるために、周知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、界面活性剤、可塑剤、例えばシリコ−ンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤等を含有させてもよい。酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、(ヒンダード)アミン化合物等が挙げられる。
(電子写真感光体の層構成、感光層の層構成)
電子写真感光体の層構成について説明する。通常、電子写真感光体の感光層は、導電性支持体上に設けられ、下引き層を有する場合は下引き層上に設けられる。感光層の型式としては、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、バインダー樹脂中に分散された、いわゆる単層型感光層がある。この他、感光層の型式としては、電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層、及び電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層の二つに機能分離された複層構造の、いわゆる積層型感光層が挙げられる。感光層の型式は、単層型感光層又は積層型感光層の何れの構成であってもよい。また、感光層上に、帯電性の改善や、耐摩耗性改善を目的としてオーバーコート層を設けてもよい。
積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に電荷輸送層、電荷発生層の順に積層して設ける逆積層型感光層とがあり、いずれを採用することも可能である。ただ、最もバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光層が好ましい。
本発明の電子写真感光体で使用される式(1)で表される化合物A、及び式(2)で表される化合物Bは、導電性支持体上に形成される感光層のいずれの層に含有されていても構わない。通常、化合物A、化合物B共に単層型感光層に含有されるか、又は積層型感光層の電荷輸送層に含有される。特に、電気特性に高い効果が得られることから、積層型感光層の電荷輸送層中に含有されるのが好ましい。
(導電性支持体)
本発明の電子写真感光体は、感光層を支持するための導電性支持体を備えている。導電性支持体について特に制限はないが、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。導電性支持体の形態としては、ドラム型、シート型、ベルト型等のものが用いられる。さらには、金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性等の制御や欠陥被覆のために、適当な抵抗値を有する導電性材料を塗布したものを用いてもよい。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いてもよい。また、陽極酸化被膜を施した導電性支持体に対しては、封孔処理を施すのが望ましい。陽極酸化被膜の形成や封孔処理は公知の方法により行えばよい。こうした陽極酸化処理の方法及び封孔処理の方法について以下説明する。
例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、及びスルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより陽極酸化被膜が形成されるが、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は100〜300g/l、溶存アルミニウム濃度は2〜15g/l、液温は15〜30℃、電解電圧は10〜20V、電流密度は0.5〜2A/dm2の範囲内に設定されるのが好ましいが、前記条件に限定されるものではない。
こうして形成された陽極酸化被膜に対して、封孔処理を行うことが好ましい。封孔処理は、公知の方法で行われればよいが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、あるいは主成分として酢酸ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理が施されるのが好ましい。
上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は、適宜選べるが、3〜6g/lの範囲で使用された場合、より好ましい結果が得られる。また、封孔処理をスムースに進めるために、処理温度としては、通常25℃以上、好ましくは30℃以上、また、通常40℃以下、好ましくは35℃以下で、また、フッ化ニッケル水溶液のpHは、通常4.5以上、好ましくは5.5以上、また、通常6.5以下、好ましくは6.0以下の範囲で処理するのがよい。pH調節剤としては、例えば、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、及びアンモニア水等を用いることができる。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1〜3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するために、例えば、フッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、及び界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に添加しておいてもよい。次いで水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。上記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、例えば、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、及び硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることができるが、特に酢酸ニッケルを用いるのが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は5〜20g/lの範囲内で使用するのが好ましい。処理温度は、通常80℃以上、好ましくは90℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは98℃以下で、また、酢酸ニッケル水溶液のpHは5.0〜6.0の範囲で処理するのが好ましい。ここでpH調節剤としてはアンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることができる。処理時間は、通常10分以上、好ましくは20分以上とする。なお、この場合も被膜物性を改良するために、例えば、酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、及びノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に添加してもよい。次いで水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件を必要とする。従って生産性が悪くなると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じやすくなる。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は通常20μm以下、特に7μm以下で形成されることが好ましい。
導電性支持体の表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法や研磨処理により粗面化されていてもよい。また、導電性支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、その表面を粗面化してもよい。また、より安価にするために、切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。特に引き抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム支持体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等が無くなり、均一で清浄な導電性支持体が得られるので好ましい。
(下引き層)
導電性支持体と感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けてもよい。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。金属酸化物粒子は、一種類の粒子のみを用いてもよいし複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていてもよい。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルックカイト、アモルファスの何れも用いることができる。複数の結晶状態のものが含まれていてもよい。
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の面から、平均一次粒径は、通常1nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは25nm以下とする。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二以上を任意の組み合わせで用いてもよい。また、硬化剤とともに硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性・塗布性を示すので好ましい
下引き層に用いられるバインダー樹脂に対する無機粒子の添加比は任意に選択すればよいが、通常は10重量%以上、500重量%以下の範囲で使用することが、分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。
下引き層の膜厚は任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性を向上させる観点から、通常は0.1μm以上、20μm以下の範囲が好ましい。また、下引き層には、公知の酸化防止剤等を添加してもよい。
(積層型感光層:電荷発生層)
上記のとおり、感光層の型式として積層型感光層を用いる場合、感光層は、通常、電荷発生層及び電荷輸送層から構成される。
電荷発生層中の電荷発生物質としては、前述のように無機系導電材料や各種の有機系導電材料が使用でき、中でも有機顔料が好ましい。本発明においては、アゾ化合物(アゾ顔料)又はフタロシアニン顔料を電荷発生物質として用いることが好ましいことは上記説明したとおりである。
電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、これらの微粒子を、例えばポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル等の各種バインダー樹脂で結着した形で使用する。有機顔料の含有量は、積層型感光層の場合、バインダー樹脂100重量部に対して通常30重量部以上、500重量部以下の範囲とする。また、電荷発生層の膜厚は、通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、また、通常1μm以下、好ましくは0.6μm以下の範囲とする。
(積層型感光層:電荷輸送層)
電荷輸送層には、電荷輸送物質が含有される。電荷輸送物質としては、化合物Bを用いることができるが、本発明の電荷輸送物質の性能を阻害しないような公知の他の電荷輸送物質を併用してもかまわない。他の電荷輸送物質を併用する場合、その種類は特に制限されないが、例えばカルバゾール誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体及びこれらの誘導体が複数結合されたものが好ましい。更に具体的には、特開平2−230255号、特開昭63−225660号、特開昭58−198043号、特公昭58−32372号、及び特公平7−21646号の各公報に記載の化合物が好ましく使用される。
電荷輸送層におけるバインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100重量部に対して、電荷輸送物質を、通常20重量部以上、更に残留電位低減の観点から30重量部以上が好ましく、更に繰り返し使用した際の安定性、電荷移動度の観点から、40重量部以上がより好ましい。また、一方で感光層の熱安定性の観点から、通常は150重量部以下、更に電荷輸送物質とバインダー樹脂の相溶性の観点から好ましくは110重量部以下、更に耐刷性の観点から80重量部以下がより好ましく、耐傷性の観点からは70重量部以下が最も好ましい。
電荷輸送層の膜厚は、通常5μm以上、通常50μm以下の範囲、長寿命化、画像安定性の観点からは10μm以上、45μm以下の範囲が好ましく、高解像度化の観点からは10μm以上、30μm以下の範囲がより好ましい。
電荷輸送層には上記説明した添加剤を適宜含有させてもよい。具体的には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるために、例えば、化合物A、化合物B、及びバインダー樹脂等の他に、周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、及びレベリング剤等の添加物を含有させてもよい。
(単層型感光層)
感光層の型式として単層型感光層を用いる場合、通常、電荷輸送層を形成するための電荷輸送層用の塗布液(媒体)中に、電荷発生物質が分散される。その場合の電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下で使用される。
単層型感光層内に分散される電荷発生物質の量は、過度に少ないと充分な感度が得られない一方で、過度に多いと帯電性の低下・感度の低下等が観測される場合がある。このため、電荷発生物質の含有量は、バインダー樹脂100重量部に対して、通常0.1重量部以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量部以下とする。
単層型感光層におけるバインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100重量部に対して、電荷輸送物質を、通常20重量部以上、更に残留電位低減の観点から30重量部以上が好ましく、更に繰り返し使用した際の安定性、電荷移動度の観点から、40重量部以上がより好ましい。また、一方で感光層の熱安定性の観点から、通常は150重量部以下、更に電荷輸送物質とバインダー樹脂の相溶性の観点から好ましくは120重量部以下、更に耐刷性の観点から100重量部以下がより好ましく、耐傷性の観点からは90重量部以下が最も好ましい。なお、一般に電荷輸送物質は、単層型感光層でも積層型感光層でも、電荷移動機能としては同等の性能を示すことが知られている。
単層型感光層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下の範囲である。
(オーバーコート層)
積層型感光層又は単層型感光層の上に、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で、オーバーコート層を設けてもかまわない。なお、感光体の表面に当たる層には、感光体表面の摩擦抵抗や摩耗を軽減する目的で、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含有させてもよい。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含有させてもよい。
(感光層の形成)
これらの感光体を構成する各層は、含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を、支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等の公知の方法により順次塗布して形成される。
塗布液の作製に用いられる溶媒又は分散媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;ギ酸メチル、酢酸エチル、等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類;n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類;アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類;等があげられ、これらは単独で又は2種以上を併用して用いられる。
なお、塗布液又は分散液の作製において、単層型感光層、及び積層型感光層の電荷輸送層の場合には、固形分濃度を好ましくは10重量%以上、また、好ましくは40重量%以下、更に好ましくは35重量%以下の範囲とするとともに、粘度を好ましくは50cps以上、また、好ましくは400cps以下の範囲とし、積層型感光層の電荷発生層の場合には、固形分濃度を好ましくは1重量%以上、また、好ましくは15重量%以下、更に好ましくは10重量%以下の範囲とし、粘度を好ましくは0.1cps以上、また、好ましくは10cps以下の範囲とする。
[感光体カートリッジ、画像形成装置]
本発明の感光体カートリッジは、本発明の電子写真感光体と、この電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電手段で帯電された電子写真感光体に対して波長380nm〜500nmの単色光によって像露光を行って静電潜像を形成する像露光手段、像露光手段によって形成された静電潜像をトナーで現像する現像手段、現像手段で現像されたトナーを電子写真感光体から被転写体に転写する転写手段、転写手段の後に電子写真感光体上に残留するトナーを除去するクリーニング手段、及び被転写体に転写されたトナーを定着させる定着手段、のうちの少なくとも一つと、を備える。本発明の電子写真感光体は、化合物Aを感光層に含有させることにより耐光性が良好になるとともに、化合物Bを電荷輸送物質として用いると電気特性も良好となり、さらに、フタロシアニン顔料やアゾ化合物(アゾ顔料)を用いることにより波長380nm〜500nmの単色光によって像露光が可能となる。これにより、380〜500nmの領域の感度が高く、特に該領域の単色光を発する半導体レーザーやLEDによる露光手段を用いた高性能な感光体カートリッジを提供することができる。
本発明の画像形成装置は、本発明の電子写真感光体と、この電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、帯電装置で帯電された電子写真感光体に対して波長380nm〜500nmの単色光で露光することにより静電潜像を形成する像露光装置と、像露光装置によって形成された静電潜像をトナーで現像する現像装置と、を備える。本発明の電子写真感光体は、化合物Aを感光層に含有させることにより耐光性が良好になるとともに、化合物Bを電荷輸送物質として用いると電気特性も良好となり、さらに、フタロシアニン顔料やアゾ化合物(アゾ顔料)を用いることにより波長380nm〜500nmの単色光によって像露光が可能となる。これにより、380〜500nmの領域の感度が高く、特に該領域の単色光を発する半導体レーザーやLEDによる露光手段を用いた高性能な画像形成装置を提供することができる。
こうした本発明の感光体カートリッジ及び画像形成装置の具体例を以下説明する。なお、本発明の感光体カートリッジ及び画像形成装置は、以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図1は、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置の一例を示す模式的な断面図である。
画像形成装置10は、電子写真感光体1と、電子写真感光体1を帯電させる帯電装置2と、帯電装置2で帯電された電子写真感光体1に対して、波長380nm〜500nmの単色光で像露光を行って静電潜像を形成する露光装置3と、露光装置3によって形成された静電潜像をトナーで現像する現像装置4と、現像装置4で現像されたトナーを電子写真感光体1から被転写体である記録紙Pに転写する転写装置5と、を備える。さらに、画像形成装置10には、クリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
感光体カートリッジ20は、電子写真感光体1と、帯電装置2と、で構成されている。そして、帯電装置2が電子写真感光体1を帯電させる帯電手段として機能する。こうして構成される感光体カートリッジ20は、画像形成装置1の本体から取り外し可能に設計されている。そして、例えば電子写真感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、感光体カートリッジ20を画像形成装置10の本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジ20を画像形成装置10の本体に装着することができるようになっている。
感光体カートリッジ20は、帯電装置2(帯電手段)のみを有し、露光装置3、現像装置4、転写装置5、及びクリーニング装置6等は、それぞれ画像形成装置10の本体に固定されている。しかしながら、必要に応じて、露光装置、現像装置、転写装置、及びクリーニング装置の少なくとも1つを、それぞれ像露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段としてそれぞれ感光体カートリッジと一体化してもよい。なお、後述するトナーTについては、多くの場合、図1には図示しないトナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置10の本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置10の本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。さらに、電子写真感光体、帯電装置、及びトナーカートリッジを感光体カートリッジとして構成することもできる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2(帯電手段),露光装置3,現像装置4,転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2(帯電手段)は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。図1では帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示している。帯電ローラの他にも接触型の帯電装置として帯電ブラシを挙げることができる。また非接触型の帯電装置としては、コロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置を挙げることができる。
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行って電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED等が挙げられる。また、露光装置3として、感光体内部露光方式によって露光を行うものを挙げることもできる。露光を行う際の光は、用いる光源によって異なるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜600nmの短波長の単色光等となる。本発明の感光体カートリッジ、画像形成装置では、波長380nm〜500nmの単色光で露光する。
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や、湿式現像方式等の任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給するトナーカートリッジ(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジ等の容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄,ステンレス鋼,アルミニウム,ニッケル等の金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコーン樹脂,ウレタン樹脂,フッ素樹脂等を被覆した樹脂ロール等からなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々接触している。
現像ローラ44及び供給ローラ43は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼,アルミニウム,銅,真鍮,リン青銅等の金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法等を用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト上の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。トナーTは従来公知の方法を用いて製造することができる。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー,転写ローラ,転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を被転写体(用紙,媒体)である記録紙Pに転写するものである。
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、電子写真感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆どない場合には、クリーニング装置6はなくても構わない。
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス,アルミニウム等の金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にフッ素樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等の公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上に定着される。
なお、定着装置7についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された画像形成装置10及び感光体カートリッジ20では、次のようにして画像の記録が行われる。すなわち、まず電子写真感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2(帯電手段)によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させてもよく、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された電子写真感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、電子写真感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行う。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは電子写真感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが電子写真感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が電子写真感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに電子写真感光体1の感光面に残留しているトナーTが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置10は、上述した構成に加え、電子写真感光体1上に残留する電荷を除去する除電装置をさらに備えることが好ましい。また、感光体カートリッジ20は、電子写真感光体1上に残留する電荷を除去する除電手段をさらに備えることが好ましい。こうした除電装置や除電手段は、電子写真感光体1に露光を行うことで電子写真感光体1の除電を行うものであり、除電装置や除電手段としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電装置や除電手段で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置10は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程等の工程を行うことができる構成としたり、オフセット印刷を行う構成とすることができる。さらには、複数種のトナーを用いたカラータンデム方式の構成としてもよい。
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に制約されるものではない。なお、下記実施例で「部」とは「重量部」のことを示す。
(実施例1)
下引き層用分散液の準備;
まず、平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、この酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシランと、をボールミルにて混合して得られたスラリーを乾燥後、更にメタノールで洗浄、乾燥して疎水性処理酸化チタンを得た。この疎水性処理酸化チタンをメタノール/1−プロパノールの混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーを作成した。
次いで、この分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエン(重量比7/1/2)の混合溶媒、及びε−カプロラクタム/ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)メタン/ヘキサメチレンジアミン/デカメチレンジカルボン酸/オクタデカメチレンジカルボン酸(組成モル%75/9.5/3/9.5/3)からなる共重合ポリアミドのペレットと、を加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行うことにより、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する固形分濃度18.0%の分散液とした。
下引き層の形成;
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(厚み75μm)の表面にアルミニウム蒸着層(厚み700Å)を形成した導電性支持体を用い、その支持体の蒸着層上に、上記の下引き層用分散液をバーコーターにより、乾燥後の膜厚が1.25μmとなるように塗布し、乾燥させ下引き層を形成した。
電荷発生層の形成;
電荷発生物質として、図2に示すCuKα特性X線に対する粉末X線回折スペクトルパターンを有するチタニウムオキシフタロシアニン20重量部と、1,2−ジメトキシエタン280重量部と、を混合し、サンドグラインドミルで2時間粉砕して微粒化分散処理を行った。続いてこの微細化分散処理液に、1,2−ジメトキシエタン253重量部と4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンを85重量部との混合液にポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)を溶解させて得られたバインダー液、及び234重量部の1,2−ジメトキシエタンを混合して電荷発生層用塗布液1を調製した。この塗布液を上記の下引き層上にバーコーターで塗布して、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように電荷発生層を形成した。
電荷輸送層の形成;
下記構造をもつ本発明の化合物A(光吸収剤(1))2重量部、電荷輸送物質(1)35重量部と電荷輸送物質(2)35重量部、下記構造のバインダー樹脂(1)100重量部、及びレベリング剤としてシリコーンオイル0.05重量部、をテトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640重量部に溶解させて電荷輸送層形成用の塗布液を調整した。そして、上記の電荷発生層上に、上記塗布液を塗布し、125℃で20分間乾燥し、乾燥後の膜厚が25μmとなるように電荷輸送層を設け感光体を作製した。この感光体を感光体1とする。なお、電荷輸送物質(1)と電荷輸送物質(2)とは、いずれも化合物Bに該当するものである。
(実施例2)
電荷輸送物質(1)及び(2)の代わりに下記構造の電荷輸送物質(3)を70重量部用いたこと、以外は実施例1と同様にして感光体2を得た。
(実施例3)
光吸収剤(1)を下記構造の光吸収剤(2)にしたこと、以外は実施例2と同様にして感光体3を得た。
(参考例4)
電荷輸送物質(3)を電荷輸送物質(4)にしたこと、以外は実施例3と同様にして感光体4を得た。
(実施例5)
電荷発生層用塗布液1の代わりに、下記構造の電荷発生物質(1)を用いて下記方法にて調整した電荷発生層用塗布液2を用いたこと、電荷輸送物質(3)のかわりに電荷輸送物質(5)を使用したこと、以外は実施例3と同様にして感光体5を得た。
電荷発生層用塗布液2の調整;
アゾ化合物である電荷発生物質(1)1.5部に、1,2−ジメトキシエタン30部加え、サンドグラインドミルで8時間粉砕し、微粒化分散処理を行った。続いて、この微粒化分散処理液と、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)0.75部、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製品、PKHH)0.75部を1,2−ジメトキシエタン28.5部に溶解したバインダー溶液と、を混合し、更に1,2−ジメトキシエタンと4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンの任意割合の混合液13.5部を混合して、固形分濃度4.0重量%の電荷発生層用塗布液2を調整した。
(実施例6)
光吸収剤を下記構造の光吸収剤(3)としたこと、以外は実施例5と同様にして感光体6を得た。
(比較例1)
光吸収剤(1)を添加しないこと、以外は実施例2と同様にして感光体7を得た。
(比較例2)
光吸収剤(1)の代わりに下記構造の光吸収剤(4)を2重量部用いたこと、以外は実施例2と同様にして感光体8を得た。
(参考例7)
実施例1において、光吸収剤(1)の代わりに下記構造の光吸収剤(5)を使用し、電荷発生層を実施例5と同じものに代えた以外は、すべて実施例1と同様にして、感光体9を得た。
(参考例8)
参考例7において、光吸収剤(5)の代わりに下記構造の光吸収剤(6)を使用した以外は、参考例7と同様にして、感光体10を得た。
(比較例3)
参考例7において、吸収剤を使用しない以外はすべて同様の操作を行い、感光体11を得た。
(比較例4)
参考例7において、光吸収剤を(2-(2’−ヒドロキシ−5‘−メチルフェニル)ベンゾエート)に代えた以外はすべて同様の操作を行い、感光体12を得た。
<感光体の電気特性評価1>
得られた感光体1〜12を、感光体特性評価装置(三菱化学(株)製)に装着し、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性の評価を行った。
具体的には、各感光体を外径80mmのアルミニウム製ドラムに巻き付け、アルミニウム製ドラムと感光体のアルミニウム蒸着層を電気的に導通させ、回転数30rpmの一定回転速度で回転させた。温度25℃、湿度50%の環境下、感光体の初期表面電位が−700Vとなるように帯電させ、露光にはハロゲンランプの光を干渉フィルターで405nmの単色光としたものを用いて、表面電位が−350Vとなる露光量(以下、感度ということがある)を求めた。露光から電位測定までの時間は389ミリ秒とした。除電光には75ルックスの白色光を用いて、露光幅は5mmとした。除電光照射後の残留電位(以下、Vrという)を測定した。
感度は、表面電位が初期の電位の1/2になるのに必要な露光量であり、数値の小さい方がより感度が高いものとなる。また、Vrは除電光露光後の電位であり、より値の小さい方が電気特性として優れる。結果を表−1と表―4に示した。
<感光体の電気特性評価2>
得られた感光体1〜4を電子写真学会測定標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)に装着し、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性の評価を行い、その結果を表−2に示した。
測定は、25℃、湿度50%の条件下で感光体の初期表面電位が700Vとなるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを照射して、表面電位が350Vとなる時の照射エネルギー(μJ/cm2)を感度とした。また、除電光に660nmのLED光を用いて照射後のVrを測定した。
<感光体の電気特性評価3>
得られた感光体1〜12の耐光特性(耐光性)を測定した。耐光特性の測定は、EPA8100を使用し、感光体を約800Vに帯電させ、2ルックスの白色光を2秒間照射したときの初期の残留電位を測定した(E−Vr)。続いてこれらの感光体に白色蛍光灯(三菱オスラム社製ネオルミスーパーFL20SS・W/18)の光を、感光体表面での光強度が2000ルックスになるように調整後10分間照射し、その後同様に帯電、露光のサイクルを200回行ったのちのE−Vrの測定を行った。そして、初期のE−Vrの測定値と、200回後のE−Vrの測定値とを比較し、その上昇幅を算出した。結果を表−3と表−5に示す。
本発明の化合物A(光吸収剤)を含有する電子写真感光体は、良好な初期電気特性を有しており、且つ、強光下に曝露した後でも残留電位の上昇が抑制され、耐強光曝露特性に優れることがわかる。