JP4136209B2 - 電子写真装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真感光体に関し、詳しくは画像の高解像度化が可能な短波長の半導体レーザーに適した電子写真感光体及びプロセスカートリッジ及び短波長の半導体レーザーを露光光源として有する電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、レーザープリンターなどに代表されるレーザーを光源として使用している電子写真装置において使用されているレーザーは、800nm付近あるいは680nm付近に発振波長を有する半導体レーザーが主流である。近年、出力画像の高画質化のニーズの高まりから、高解像度化に向けた様々なアプローチがなされている。レーザーの波長もこの高解像度化に深く関わっており、特開平9−240051号公報にも記載されている様に、レーザーの発振波長が短くなるほど、レーザーのスポット径を小さくすることが可能となり、高解像度の潜像形成が可能となる。
【0003】
レーザーの発振波長の短波長化には、いくつかの手法が挙げられる。
【0004】
一つは、非線形光学材料を利用し、第2高調波発生(SHG)を用いてレーザー光の波長を2分の1にするものである(特開平9−275242号公報、特開平9−189930号公報及び特開平5−313033号公報など)。この系は、一次光源として、既に技術が確立し、高出力可能なGaAs半導体レーザーやYAGレーザーを使用することができるため、長寿命化や大出力化が可能である。
【0005】
もう一つは、ワイドギャップ半導体を用いるもので、SHG利用のデバイスと比べ、装置の小型化が可能である。ZnSe系半導体レーザー(特開平7−321409号公報及び特開平6−334272号公報など)やGaN系半導体レーザー(特開平8−088441号公報及び特開平7−335975号公報など)が、その発光効率の高さから、以前から多くの研究の対象となっている。
【0006】
これらの半導体レーザーは素子構造、結晶成長条件及び電極などの最適化が難しく、結晶中の欠陥などにより、実用化に必須である室温での長時間発振が困難であった。
【0007】
ところが、基盤等の技術革新が進み、1997年10月には、GaN系半導体レーザーで1150時間連続発振(50℃条件)が報告されるなど、実用化が目前に迫っている状態である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来のレーザーを用いた電子写真装置に使用される電子写真感光体は、700〜800nm付近の波長域で実用的な感度特性を発現するよう設計されてきた。しかしながら、従来のこれらの電子写真感光体を、400〜500nmに発振波長を有する半導体レーザーを用いた電子写真装置に組み込んでも、実用的な感度特性を得ることができない。その主な理由は、従来の長波長レーザー用感光体に使用されている電荷発生物質、具体的には無金属フタロシアニン、銅フタロシアニン及びオキシチタニウムフタロシアニンなどの金属フタロシアニン、及び一部のアゾ顔料などは、400〜500nm付近には十分な吸収帯がなく、こうした波長域では十分なキャリアが発生しないためである。
【0009】
また、400〜500nm付近に十分な吸収帯を有する電荷発生物質を用いた場合でも、十分な感度特性が得られるとは限らない。電子写真感光体は近年、電荷キャリアの発生と電荷の移動の機能を別々に層に分担させる、いわゆる積層型(機能分離型)が高感度化に有利なことから、研究開発及び製品の主流となっている。導電性支持体上に電荷発生層と電荷輸送層がこの順に積層された感光体では、レーザー光が電荷輸送層を透過して電荷発生層に到達した場合にのみ感度を発現する。しかし400〜500nm付近の短波光の吸収係数の大きい電荷輸送物質を用いた感光体は、電荷発生層まで光が十分に届かないため、400〜500nmの光の吸収の大きな電荷発生物質を使用したとしても十分な感度を示さない。
【0010】
さらに、400〜500nm付近に十分な吸収帯を有する電荷発生物質を使用した感光体と400nm付近の光源を組み合わせた場合、従来の長波長光源用感光体と長波長光源を組み合わせた場合と比較して、繰り返し使用した際に感光体の電位変動が大きかったり、画像においてゴースト現象等の画像欠陥を生じ易いことが本発明者らの検討により明らかになった。この一因として、短波長の強いエネルギーの光の照射により電荷発生層で発生した励起子及び電荷キャリアの一部が、電子写真プロセスで消費されずに感光層内に蓄積していき、感光体の帯電能や感度特性を変化させることが考えられる。本発明者らは、このような励起子やキャリアは、電荷輸送物質や他の化合物との電子移動反応により蓄積を抑えることが可能であることを見い出した。つまり、繰り返し使用時の電位変動やメモリー現象を抑制させ、安定した高品位な画像を得るために、最適な電荷輸送物質が存在するのである。
【0011】
また近年、電子写真感光体を使用したプリンターなどは多種多様な分野で使用されるようになり、より様々な環境においても常に安定した画像を提供することがさらに厳しく要求されている。
【0012】
本発明の目的は、380〜500nmの波長域でも高い感度特性を有し、かつ繰り返し使用時の電位変動の小さい電子写真感光体を提供し、また、この感光体と短波長レーザーを使用することによって、実用的で安定して高画質な出力画像が得られる電子写真装置及びこの装置に着脱可能なプロセスカートリッジを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有する電子写真装置において、
該露光手段が、380〜500nmの波長域の単色光を生じさせるものであり、
該電子写真感光体が、支持体上に感光層を有し、該感光層が下記式(2)または(3)で示される電荷輸送物質であって、下記例示化合物No.2−6、2−12、2−15、2−19、2−21、2−56、3−5、3−16、3−22、3−25または3−26で示される電荷輸送物質を含有する電子写真感光体であることを特徴とする電子写真装置である:
No.2−6
【化14】
No.2−12
【化15】
No.2−15
【化16】
No.2−19
【化17】
No.2−21
【化18】
No.2−56
【化19】
No.3−5
【化20】
No.3−16
【化21】
No.3−22
【化22】
No.3−25
【化23】
No.3−26
【化24】
。
【0016】
下記式(1)で示される電荷輸送物質は、本発明における参考例にかかるものである。
【化25】
【0017】
式中、Ar1-1 及びAr1-2 は置換基を有してもよい芳香環基を示す。R1-1 〜R1-4 は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいビニル基及び置換基を有してもよい芳香環基を示す(但し、R1-1 〜R1-4 のうち少なくとも2つは置換基を有してもよい芳香環基である)。なお、R1-1 とR1-2 及びR1-3 とR1-4 は直接、あるいは−CH2 −、−CH2 CH2 −、−CH=CH−、−O−及び−S−などの有機基を介して環を形成してもよい。
【0018】
【外11】
【0019】
式中、Ar2-1 は置換基を有してもよい芳香環基を示す。R2-1 〜R2-4 は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいビニル基及び置換基を有してもよい芳香環基を示す(但し、R2-1 〜R2-4 のうち少なくとも2つは置換基を有してもよい芳香環基である)。なお、R2-1 とR2-2 及びR2-3 とR2-4 は直接、あるいは−CH2 −、−CH2 CH2 −、−CH=CH−、−O−及び−S−などの有機基を介して環を形成してもよい。
【0020】
【外12】
【0021】
式中、Ar3-1 及びAr3-2 は置換基を有してもよい芳香環基を示す。R3-1 〜R3-4 は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいビニル基及び置換基を有してもよい芳香環基を示す(但し、R3-1 〜R3-4 のうち少なくとも2つは置換基を有してもよい芳香環基である)。なお、R3-1 とR3-2 及びR3-3 とR3-4 は直接、あるいは−CH2 −、−CH2 CH2 −、−CH=CH−、−O−及び−S−などの有機基を介して環を形成してもよい。また、X3-1 は2価の有機基を示し、好ましくは−CR1 R2 −(式中、R1 及びR2 は水素、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよい芳香環基及び置換基を有してもよい複素環基を示し、R1 とR2 は環を形成してもよい)、−O−、−S−、−CH2 −O−CH2 −、−O−CH2 −O−、−NR3 −(式中、R3 は置換基を有してもよいアルキル基及び置換基を有してもよい芳香環基を示す)及び置換基を有してもよいアリーレン基を示す。
【0022】
式(1)乃至(3)中、R1-1 〜R1-4 、R2-1 〜R2-4 、R3-1 〜R3-4 及びR1〜R3の芳香環基としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びピレニルなどの芳香族炭化水素基、ピリジル、キノリル、チエニル、フリル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾリル及びベンゾチアゾリルなどの芳香族複素環基が挙げられる。Ar1-1 、Ar1-2 、Ar2-1 、Ar3-1 及びAr3-2 の芳香環基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びピレンなどの芳香族炭化水素環及びピリジン、キノリン、チオフェン及びフランなどの芳香族複素環から2個の水素原子を除いた、2価の芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が挙げられる。アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びヘキシルなどの基が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル、フェネチル、ナフチルメチル及びフルフリルなどの基が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ及びエトキシなどの基が挙げられる。
【0023】
また、これらの基が有してもよい置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びヘキシルなどのアルキル基、メトキシ、エトキシ及びブトキシなどのアルコキシ基、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素などのハロゲン原子、フェニル及びナフチルなどの芳香族炭化水素基、ピリジル、キノリル、チエニル及びフリルなどの複素環基、アセチル及びベンジルなどのアシル基、トリフルオロメチルなどのハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、フェニルカルバモイル基、カルボキシ基及びヒドロキシ基などが挙げられる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に式(1)、式(2)及び式(3)で示される電荷輸送物質の例を挙げる。但し、下記例示化合物のうち、No.2−6、2−12、2−15、2−19、2−21、2−56、3−5、3−16、3−22、3−25および3−26で示される電荷輸送物質が、本発明にかかるものである。
【0025】
また、式(2)は構造式を、
【化26】
で示した時のA−Ar2−1−B、A及びBに相当する部分のみを記載した。
【0026】
【外14】
【0027】
【外15】
【0028】
【外16】
【0029】
【外17】
【0030】
【外18】
【0031】
【外19】
【0032】
【外20】
【0033】
【外21】
【0034】
【外22】
【0035】
【外23】
【0036】
【外24】
【0037】
【外25】
【0038】
【外26】
【0039】
【外27】
【0040】
【外28】
【0041】
【外29】
【0042】
【外30】
【0043】
次に、本発明の電子写真感光体について更に詳しく説明する。
【0044】
感光体の構成は、図1〜図6に示されるように、支持体上に電荷発生物質と電荷輸送物質の両方を含有する単一の感光層を設けた単層型、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を有する積層型など、のいかなるものであってもよい。また、支持体と感光層の間にバリヤー機能や接着機能を有する下引き層を設けたり(図4及び図6)、感光層を外部からの機械的及び化学的悪影響から保護することなどを目的として、感光層上に保護層をもうけてもよい(図5及び図6)。これらの構成の中では、支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層が、この順に積層された構成を有する積層型、例えば図1、図4、図5及び図6の構成が電子写真特性の点で特に好ましい。なお、各図中、aは支持体、bは電荷発生層、cは電荷輸送層、dは単層型の感光層、eは下引き層、fは保護層を示す。
【0045】
以下に、支持体上に電荷発生層と電荷輸送層を積層した機能分離型感光体について、その作成方法を述べる。
【0046】
本発明における支持体は、導電性を有していればよく、例えば以下に示した形態のものを挙げることができる。
【0047】
(1)アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス及び銅などの金属を板形状またはドラム形状にしたもの。
【0048】
(2)ガラス、樹脂及び紙などの非導電性支持体や前記(1)の導電性支持体上にアルミニウム、パラジウム、ロジウム、金及び白金などの金属を蒸着もしくはラミネートしたもの。
【0049】
(3)ガラス、樹脂及び紙などの非導電性支持体や前記(1)の導電性支持体上に導電性高分子、酸化スズ及び酸化インジウムなどの導電性化合物を含有する層を蒸着あるいは塗布することにより形成したもの。
【0050】
本発明に用いられる有効な電荷発生物質としては、例えば以下のような物質が挙げられる。これらの電荷発生物質は単独で用いてもよく、2種類以上組み合わせてもよい。
【0051】
(1)モノアゾ、ビスアゾ及びトリスアゾなどのアゾ系顔料
(2)インジゴ及びチオインジゴなどのインジゴ系顔料
(3)金属フタロシアニン及び非金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料
(4)ペリレン酸無水物及びペリレン酸イミドなどのペリレン系顔料
(5)アンスラキノン及びピレンキノンなどの多環キノン系顔料
(6)スクアリリウム色素
(7)ピリリウム塩及びチオピリリウム塩類
(8)トリフェニルメタン系色素
(9)セレン及び非晶質シリコンなどの無機物質
【0052】
電荷発生物質を含有する層、即ち電荷発生層は上記のような電荷発生物質を適当な結着剤に分散し、これを導電性支持体上に塗工することにより形成することができる。また、導電性支持体上に蒸着、スパッタ及びCVDなどの乾式法で形成することができる。
【0053】
上記結着剤としては広範囲な結着性樹脂から選択でき、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独または共重合体ポリマーとして1種または2種以上混合して用いてもよい。
【0054】
電荷発生層中に含有する樹脂は、80重量%以下、特には40重量%以下であることが好ましい。また、電荷発生層の膜厚は5μm以下、特には0.01〜2μmとすることが好ましい。また、電荷発生層には種々の増感剤を添加してもよい。
【0055】
電荷輸送物質を含有する層、即ち電荷輸送層は、少なくとも本発明にかかる電荷輸送物質と、適当な結着剤とを組み合わせて形成することができる。電荷輸送層に用いられる結着剤としては、前記電荷発生層に用いられているものが挙げられ、更にポリビニルカルバゾール及びポリビニルアントラセンなどの光導電性高分子も挙げられる。
【0056】
電荷輸送物質には電子輸送性物質と正孔輸送性物質があり、電子輸送性物質としては、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、クロラニル及びテトラシアノキノジメタンなどの電子吸引性物質やこれら電子吸引性材料を高分子化したものなどが挙げられる。
【0057】
正孔輸送性物質としては、前記式(1)、式(2)及び式(3)で示されるアミン化合物の他に、例えば、ピレン及びアントラセンなどの多環芳香族化合物、カルバゾール系、インドール系、オキサゾール系、チアゾール系、オキサジアゾール系、ピラゾール系、ピラゾリン系、チアジアゾール系、トリアゾール系化合物などの複素環化合物、ヒドラゾン系化合物、トリアリールメタン系化合物、スチルベン系化合物、あるいは、これらの化合物からなる基を主鎖または側鎖に有するポリマー(例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びポリビニルアントラセンなど)が挙げられる。
【0058】
本発明においては、本発明にかかるアミン化合物を単独で用いても2種類以上組み合わせて用いてもよく、また、本発明の顕著な効果が得られる範囲内で先に挙げた他の構造の電荷輸送物質と組み合わせて用いてもよい。
【0059】
結着剤と電荷輸送物質との配合割合は、結着剤100重量部あたり電荷輸送物質を10〜500重量部とすることが好ましい。電荷輸送層は、上述の電荷発生層と電気的に接続されており、電界の存在下で電荷発生層から注入された電荷キャリアを受け取るとともに、これらの電荷キャリアを表面まで輸送できる機能を有している。この電荷輸送層は電荷キャリアを輸送できる限界があるので、必要以上に膜厚を厚くすることができないが、5μm〜40μm、特には10μm〜30μmの範囲が好ましい。
【0060】
更に、電荷輸送層中に酸化防止剤、紫外線吸収剤及び可塑剤などを必要に応じて添加することもできる。
【0061】
下引き層はカゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、共重合ナイロン及びN−アルコキシメチル化ナイロンなど)、ポリウレタン及び酸化アルミニウムなどによって形成することができる。膜厚は0.1〜10μmであることが好ましく、特には0.5〜5μmであることが好ましい。
【0062】
保護層は樹脂層や導電性粒子などを含有する樹脂層である。
【0063】
これら各種の層は、適当な有機溶媒を用い、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法及びブレードコーティング法などのコーティング法により形成することができる。
【0064】
本発明における露光手段は、露光光源として380〜500nmの発振波長を有する半導体レーザーを有していればよく、他の構成は特に限定されるものではない。また、半導体レーザーも発振波長が上記の範囲内であれば、他の構成は特に限定されるものではない。なお、本発明においては、半導体レーザーの発振波長が400〜450nmであることが、電荷輸送物質の選択範囲の広さ、及びコスト及び電子写真特性の点で好ましい。
【0065】
また、本発明における帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段も特に限定されるものではない。
【0066】
図7に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。
【0067】
図において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。感光体1は、回転過程において、一次帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、レーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)からの露光光4を受ける。こうして感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0068】
形成された静電潜像は、次いで現像手段5によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から感光体1と転写手段6との間に感光体1の回転と同期取りされて給送された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。
【0069】
像転写を受けた転写材7は、感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0070】
像転写後の感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更に前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図においては、一次帯電手段3が帯電ローラーを用いた接触帯電手段であるので、前露光は必ずしも必要ではない。
【0071】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9などの構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。例えば、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9の少なくとも1つを感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化し、装置本体のレール12などの案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0072】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例中「部」は「重量部」を示す。
【0073】
(参考例1)
アルミニウム支持体上に、N−メトキシメチル化6ナイロン樹脂(重量平均分子量30,000)5.5部とアルコール可溶性共重合ナイロン樹脂(重量平均分子量28,000)8部をメタノール30部/ブタノール89部の混合溶液に溶解した液をマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって、膜厚が約1μmの下引き層を設けた。
【0074】
次に、下記構造式で示されるアゾ化合物20部とブチラール樹脂(ブチラール化度65mol%、重量平均分子量30,000)10部をテトラヒドロフラン400部に添加し、φ1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で20時間分散した。この分散液を先に作成した下引き層の上にマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって、膜厚が約0.25μmの電荷発生層を形成した。
【0075】
【外31】
【0076】
次に、例示化合物1−8を7部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート(重量平均分子量45,000)10部をモノクロルベンゼン65部に溶解した電荷輸送層溶液を調製し、この溶液を電荷発生層上にマイヤーバーで塗布し、100℃で1時間乾燥することによって、膜厚が22μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作成した。
【0077】
以上のようにして作成した感光体の電子写真特性を、静電複写紙試験装置(川口電機製:EPA−8100)を用いて以下のように測定した。
【0078】
(初期特性)
感光体の表面電位を−700Vになるようにコロナ帯電器で帯電し、次いでモノクロメータで分離した450nmの単色光で露光し、表面電位が−350Vまで減衰するのに必要な光量を測定し、半減露光感度(E1/2 )を求めた。また、露光30秒後の残留表面電位(Vr)を測定した。
【0079】
(繰り返し特性及び環境特性)
常温常湿下(温度23℃、湿度55%RH)で初期暗部電位(Vd)及び初期明部電位(Vl)をそれぞれ−700V、−200V付近に設定し、450nmの単色光を用いて帯電及び露光を5000回繰り返し、Vd及びVlの変動量(ΔVd、ΔVl)を測定した。その後、環境を高温高湿(温度33℃、湿度85%RH)に変え、Vlの常温常湿下からの変動量を測定した。電位変動における負符号は電位の絶対値の低下を表し、正符号は電位の絶対値の増加を表す。
【0080】
(光メモリー)
感光体の初期Vd、450nmの単色光での初期Vlをそれぞれ−700V、−200V付近に設定した。次に、感光体の一部に光強度20μW/cm2 の450nmの単色光を20分間照射した後、再度感光体のVd、Vlを測定し、光メモリーとして非照射部と照射部のVdの差(ΔVd)及び非照射部と照射部のVlの差(ΔVl)を測定した。電位差における負符号は照射部電位が非照射部より絶対値が低いことを表し、正符号はその逆を表す。
【0081】
結果を表1に示す。
【0082】
(参考例2〜5)
例示化合物1−8の代わりに表1に示した化合物を用いた他は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0083】
(比較例1)
例示化合物1−8の代わりに下記構造式で示される比較化合物1を用いた以外は、参考例1と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0084】
【外32】
【0085】
(比較例2)
例示化合物1−8の代わりに下記構造式で示される比較化合物2を用いた以外は、参考例1と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0086】
【外33】
【0087】
【表1】
【0088】
(参考例6、実施例1〜3)
例示化合物1−8を表2に示した化合物に代えた以外は、参考例1と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
(実施例4〜7)
例示化合物として表3に示した化合物を用いた以外は、参考例1と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表3に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
(参考例7〜9及び比較例3)
アゾ化合物を下記構造式で示される化合物に代え、電荷輸送物質を表4に示した化合物に代えた以外は、参考例1と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表4に示す。
【0093】
【外34】
【0094】
【表4】
【0095】
(実施例8〜10)
例示化合物を表5に示した化合物に代えた以外は、参考例7と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表5に示す。
【0096】
【表5】
【0097】
(実施例11〜13)
例示化合物を表6に示した化合物に代えた以外は、参考例7と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表6に示す。
【0098】
【表6】
【0099】
これらの結果から、本発明にかかる電荷輸送物質を用いた電子写真感光体は、比較例の感光体に比べて、短波長露光光源を有する電子写真装置に組み込んだ場合に、より優れた感度を発現し、繰り返し使用時の電位や感度の安定性により優れ、環境依存性がより小さく、短波長光に対する光メモリーがより小さいことがわかる。
【0100】
(参考例10〜12、実施例14〜19及び比較例4)
参考例7〜9、実施例8〜13及び比較例3で作成した感光体の電荷発生層と電荷輸送層の上下関係を逆にした感光体を作成し、参考例1と同様にして初期の感度を測定した。但し、帯電極性はプラスとした。結果を表7に示す。
【0101】
【表7】
【0102】
これらの結果から、本発明の電子写真感光体は、電荷輸送層と電荷発生層がこの順に積層されたいわゆる逆層構成においても、短波長レーザー用感光体として実用的な感度が得られることがわかる。
【0103】
(参考例13〜15及び比較例5)
10%酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した酸化チタン粉体50部、レゾール型フェノール樹脂25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部及びシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3,000)0.002部を1mmφガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して導電層用塗料を調製した。この塗料をアルミニウムシリンダー(30mmφ×261mm)上に浸漬塗布し、140℃で30分乾燥することによって、膜厚が20μmの導電層を形成した。
【0104】
この導電層の上に、N−メトキシメチル化6ナイロン樹脂(重量平均分子量52,000)5部とアルコール可溶性共重合ナイロン樹脂(重量平均分子量48,000)10部をメタノール95部に溶解した液を浸漬塗布し、乾燥することによって、膜厚が0.8μmの下引き層を形成した。
【0105】
参考例1で用いたアゾ化合物20部を、ポリビニルブチラール(商品名エスレックBM−S、積水化学(株)製)10部をシクロヘキサノン200部に溶解した液に添加し、1mmφのガラスビーズを用いたサンドミル装置で20時間分散し、更に200部の酢酸エチルを加えて希釈した。この液を下引き層上に浸漬塗布し、95℃で10分間乾燥することによって、膜厚が0.4μmの電荷発生層を形成した。
【0106】
次に、表8に示した例示化合物9部及びビスフェノールZ型ポリカーボネート(重量平均分子量45,000)10部をモノクロロベンゼン65部に溶解した。この液を電荷発生層上に浸漬塗布し、100℃で1時間乾燥することによって、膜厚が22μmの電荷輸送層を形成した。
【0107】
このようにして作成した電子写真感光体を、パルス変調装置を搭載しているキヤノン製プリンターLBP−2000改造機(光源として日立金属(株)製全固体青色SHGレーザーICD−430/発振波長430nmを搭載。また、反転現像系で600dpi相当の画像入力に対応できる帯電−露光−現像−転写−クリーニングからなるカールソン方式の電子写真システムに改造。)に装着し、以下の画像評価を行った。
【0108】
(ドット及び文字の再現性の評価)
暗部電位Vd=−650V、明部電位Vl=−200Vに設定し、1ドット1スペースの画像と文字(5ポイント)画像の出力を行い、得られた画像を目視により評価した。表8中、◎は優、○は良、△は可、×は劣を示す。
【0109】
(ゴーストの評価)
常温常湿下(23℃、湿度55%RH)で、初期で、ドラム一周分適当な文字パターンを印字し、その後画像サンプルを出力し、ゴースト現象が出ているかどうかを目視により確認した。次に、耐久パターンを5000枚連続プリントし耐久後に画像サンプルを出力し、耐久後のゴースト現象が出ているかどうかを確認した。耐久パターンは約2mm幅の線を縦横7mmおきに印字したものである。画像サンプルは全面黒と、1ドット1スペースのドット密度の画像を用い、機械の現像ヴォリューム、F5(中心値)とF9(濃度薄い)で各々サンプリングした。評価基準は、ゴーストが見えないものをランク5とし、1ドット1スペースF9で見えるものをランク4、1ドット1スペースF5で見えるものをランク3、全面黒F9で見えるものをランク2、全面黒F5で見えるものをランク1とした。
【0110】
結果を表8に示す。
【0111】
(比較例6)
アゾ化合物を下記構造式で示される化合物に代えた以外は、参考例13と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0112】
【外35】
【0113】
(比較例7)
例示化合物を前記比較化合物1に代えた以外は、比較例6と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0114】
比較例6及び比較例7で作成した感光体について、プリンターの光源を発振波長が780nmのGaAs系半導体レーザーに代えた以外は、参考例13と同様にして評価を行った。結果を表8に示す。
【0115】
【表8】
【0116】
(実施例20〜21、参考例16)
例示化合物を表9に示される例示化合物に代えた以外は、参考例13と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表9に示す。
【0117】
(比較例8)
アゾ化合物を比較例6で用いた化合物に代えた以外は、実施例20と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0118】
作成した感光体について、プリンターの光源を発振波長が780nmのGaAs系半導体レーザーに代えた以外は、実施例20と同様にして評価を行った。結果を表9に示す。
【0119】
【表9】
【0120】
(実施例22〜24)
例示化合物を表10に示される例示化合物に代えた以外は、実施例参考例13と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表10に示す。
【0121】
(比較例9)
アゾ化合物を比較例6で用いた化合物に代えた以外は、実施例22と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0122】
作成した感光体について、プリンターの光源を発振波長が780nmのGaAs系半導体レーザーに代えた以外は、実施例22と同様にして評価を行った。結果を表10に示す。
【0123】
【表10】
【0124】
これらの結果から、本発明の電子写真装置は、ドットの再現性や文字の再現性に優れ、高解像度の出力画像が得られることがわかる。また、欠陥がなく鮮明な画像が安定して得られることがわかる。
【0125】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明にかかる電子写真感光体は、400〜500nm付近の短波長の半導体レーザーの発振波長領域において高感度であり、また、繰り返し帯電、露光による連続画像形成及び環境の変化に際して明部電位と暗部電位の変動が小さく、高品位な画像が安定して得られるという顕著な効果を奏する。また、この電子写真感光体と上記半導体レーザーを組み合わせることにより、高解像度の画像形成が可能で繰り返し使用や環境変化にも安定して使用し得る電子写真装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の層構成の例を示す断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の層構成の例を示す断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の層構成の例を示す断面図である。
【図4】本発明の電子写真感光体の層構成の例を示す断面図である。
【図5】本発明の電子写真感光体の層構成の例を示す断面図である。
【図6】本発明の電子写真感光体の層構成の例を示す断面図である。
【図7】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
Claims (4)
- 電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有する電子写真装置において、
該露光手段が、380〜500nmの波長域の単色光を生じさせるものであり、
該電子写真感光体が、支持体上に感光層を有し、該感光層が下記式(2)または(3)で示される電荷輸送物質であって、下記例示化合物No.2−6、2−12、2−15、2−19、2−21、2−56、3−5、3−16、3−22、3−25または3−26で示される電荷輸送物質を含有する電子写真感光体であることを特徴とする電子写真装置:
No.2−6
- 前記感光層が電荷発生層上に電荷輸送層を有する請求項1に記載の電子写真装置。
- 該露光手段が、380〜500nmの波長域に発振波長を有する半導体レーザーを露光光源として有する請求項1または2に記載の電子写真装置。
- 前記半導体レーザー光が有する波長が400〜450nmの波長域内である請求項3に記載の電子写真装置。
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