JP3897665B2 - 電子写真感光体、プロセスカ―トリッジおよび電子写真装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関し、詳しくは、発振波長が380〜500nmの範囲にある半導体レーザーによって表面に静電潜像が形成される電子写真感光体、該電子写真感光体を有し、発振波長が380〜500nmの範囲にある半導体レーザーを有する露光手段を有する電子写真装置に着脱自在であるプロセスカートリッジ、該電子写真感光体と、発振波長が380〜500nmの範囲にある半導体レーザーを有する露光手段を有する電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、出力画像の高解像度化へのニーズの高まりから、高解像度化に向けた様々なアプローチがなされている。
【0003】
レーザー波長も、この高解像度化に深く関わっており、特開平9−240051号公報に記載されているように、レーザー発振波長が短くなるにつれて、レーザーのスポット径が小さくなることが知られており、このことから、高解像度の潜像形成が可能となることが報告されている。
【0004】
しかしながら、現在までに発振波長が380〜500nmの短波長レーザーを用いた電子写真感光体、特に電荷発生物質についての報告はほとんどなされておらず、報告例にしてもいくつかの問題を抱えている。
【0005】
例えば、特開平9−240051号公報には、400〜500nmのレーザーに適した電子写真感光体として、電荷発生物質にα型オキシチタニウムフタロシアニン(TiOPc)を用いた単層型、または、電荷発生層を最上層とした積層型の感光層を有する電子写真感光体が開示されているが、本発明者らの検討の結果、感度が悪い上に、特に400nm付近の光に対するメモリーが非常に大きいため、繰り返し使用した際の電子写真感光体の電位変動が大きいという問題があることが明らかとなっている。
【0006】
一方、現在、レーザープリンターなどの電子写真感光体に使用される光源としては、800nmまたは680nm付近の発振波長を有するGaAs半導体レーザーが主流であり、レーザー波長の短波長化には、非線形光学材料の使用やワイドギャップ半導体の使用などいくつかの手法が報告されている。
【0007】
しかしながら、これらの方法では、室温での長時間発振が困難であり、短波長のレーザーの電子写真への応用は困難な状態が1997年まで続いていた。
【0008】
この状態は、日亜化学工業(株)から長時間発振(50℃、1150時間)可能なGaN系半導体レーザー光源の報告がなされたことで大きな展開を迎えた。
【0009】
この報告後、短波長レーザーを用いた光化学デバイスをめぐる状況は大きく変化し、電子写真感光体の分野においても、高解像度化に向けたアプローチが可能となり、本格的に短波長レーザーを搭載した電子写真装置の製造が可能となってきているのが現在の状況である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このように、現在、高解像度化の目的で380〜500nmに発振波長を持つ短波長レーザーを有する露光手段を搭載した電子写真装置の実用化の目途は立ってきた。
【0011】
しかしながら、この波長領域で優れた電子写真特性をもつ電子写真感光体、特に電荷発生物質の実用化の目途が立っていないのが現状である。
【0012】
本発明の目的は、380〜500nmの波長領域でも高い感度特性を有し、かつ、光メモリーが小さく、繰り返し使用時の電位変動の小さな電子写真感光体、および、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを提供し、また、この電子写真感光体と短波長レーザーを有する露光手段を使用することによって、実用的で安定して高画質な出力画像が得られる電子写真装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電子写真感光体、帯電手段、発振波長が380〜500nmの範囲にある半導体レーザーを有している露光手段、現像手段および転写手段を有する電子写真装置において、
該電子写真感光体が、下記式(1)で示される構造を有するポルフィラジン化合物を電荷発生物質として含有している感光層を具備していることを特徴とする電子写真装置である。
【0014】
【化13】
(式(1)中、Mは、水素原子、または、軸配位子を有してもよい第1族から第15族までの金属元素を示す。R 101とR102、R103とR104、R105とR106、R107とR108 は、共同で、置換または無置換の2環式以上の芳香族炭化水素環を形成する)。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、より詳細に説明する。
【0018】
上記Mが水素原子の場合は、下記式(1)’で示される構造をとる。
【外4】
【0019】
上記式(1)´中、R 101 とR102、R103とR104、R105とR106、R107とR108は、共同で、置換または未置換の2環式以上の芳香族炭化水素環を形成する。
【0020】
2環式以上の芳香族炭化水素環としては、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスレン環などが挙げられる。
【0021】
上記Mは、軸配位子を有してもよい3価または4価の遷移金属であることが好ましい。3価または4価の遷移金属としては、アルミニウム、ガリウム、インジウム、シリコン、ゲルマニウム、スズ、鉄などが挙げられる。
【0022】
軸配位子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、水酸基、メチル基、エチル基、n−プロピル基などの炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基などのアルコキシ基、シロキサン誘導体、または、ナフタロシアニン、アントラシアニンなどの環拡張テトラアザポルフィリン誘導体が好ましく、これらの中でも、環拡張テトラアザポルフィリン誘導体がより好ましい。
【0023】
また、上記式(1)中、R101とR102、R103とR104、R105とR106、R107とR108は、それぞれ共同で、置換または無置換の2環式以上の芳香族炭化水素環を形成している。さらに、上記式(1)で示される構造を有するポルフィラジン化合物が、下記式(2)で示される構造を有するナフタロシアニン誘導体であることがより好ましい。
【化14】
【0024】
上記式(2)中、Mは上記式(1)中のMと同義であり、水素原子、または、軸配位子を有してもよい第1族から第15族までの金属元素を示す。R201〜R224は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換の芳香環を示す。
【0025】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられ、芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられる。
【0026】
上記各基が有してもよい置換基としては、シアノ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子や、メチル基、エチル基、n−プロピル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピル基などのアルコキシ基などが挙げられる。
【0027】
本発明に係る電荷発生物質の好適例を以下に示す。
【化15】
【0028】
【外7】
【0029】
【外8】
【0030】
【外9】
【0031】
【外10】
【0032】
【外11】
【0033】
【外12】
【0034】
【外13】
【0035】
【外14】
【0036】
【外15】
【0037】
これらの中でも、(2−2)、(2−4)の化合物がより好ましい。
【0038】
また、上記式(2)で示される構造を有するナフタロシアニン誘導体は、Cukα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の14.2°および27.5°に強いピークを有する結晶型、または、7.8°、12.5°および26.3°に強いピークを有する結晶型であることが好ましい。
【0039】
発振波長が380〜500nmの範囲にある半導体レーザーによって電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する露光手段を有する電子写真装置に用いる電子写真感光体の感光層に電荷発生物質として、上記式(1)で示される構造を有するポルフィラジン化合物を使用した背景は以下のとおりである。
【0040】
一般に、最も基本的なポルフィラジン構造であるテトラアザポルフィリンのπ−共役系の伸張、いわゆる環拡大化を行うことで、吸収波長の長波長化が予想されている。
【0041】
例えば、“PHTHALOCYANINES Properties and Application volume 4(VHC Publication, New York, 1989)”には、膨大な量の環拡大テトラアザポルフィリンの分子軌道計算結果と共に環拡大に伴う電子吸収スペクトルの長波長化の例が開示されている。
【0042】
一方、特開昭62−47169号公報、特開昭63−231355号公報、特開昭64−2061号公報、特開昭64−19356号公報、特開昭64−28652号公報、特開昭64−38753号公報、特開平2−79046号公報、特開平2−28663号公報、特開平2−39053号公報、特開平2−39054号公報などによると、環拡大型フタロシアニン(フタロシアニンは、溶液中で700〜800nm付近にHOMO−LUMOバンドによる吸収帯(Q帯)を持つ環拡大型テトラアザポルフィリン化合物)がフタロシアニンと比べて電子写真の光感度分布がより長波長側にあることが報告されている。
【0043】
本発明の目的が、発振波長が380〜500nmの半導体レーザーに対応した電子写真感光体の実用化、すなわち感度分布の短波長化であるため、このことは一見関係ないことのように考えられる。
【0044】
しかしながら、テトラアザポルフィリン化合物にはQ帯以外に第2HOMOからLUMOへの遷移に由来した強い吸収帯(ソーレ帯)が、溶液中で300〜350nmに観測されることが知られており、このソーレ帯を利用すれば短波長レーザーに適した電子写真感光体の作製が可能なことが予想される。
【0045】
この現象を利用した例を開示するものとして、特開平9−240051号公報が挙げられるが、本発明者らの検討の結果、α型TiOPcを用いた電子写真感光体では十分な感度が得られなかった。十分な感度が得られなかった理由の1つとして、α型TiOPcのソーレ帯では波長領域が短すぎたため、380〜500nmの半導体レーザーに適した電子写真感光体を作製できなかったと本発明者らは予想している。
【0046】
したがって、本発明者らは、電子写真感光体の電荷発生物質として広く用いられるテトラアザポルフィリン化合物、特にフタロシアニンに対して環拡張を行うことで、ソーレ帯の長波長化を行うことで感度分布の最適化、さらには結晶型の制御を行うことで、380〜500nmの範囲にある半導体レーザーに適した電子写真感光体、および、この電子写真感光体を搭載したプロセスカートリッジおよび電子写真装置を作製した。
【0047】
次に、本発明の電子写真感光体の構成について説明する。
【0048】
支持体は、導電性を有するものであればよく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス、バナジウム、モリブデン、クロム、チタン、ニッケル、インジウム、金や白金などが挙げられる。また、これらの金属または合金を真空蒸着法によって被膜形成したプラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートおよびアクリル樹脂など)や、散乱による干渉縞防止の目的で導電性粒子(例えば、カーボンブラックおよび銀粒子、酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した酸化チタン粉体など)を適当な結着樹脂と共に上記のようなプラスチック、金属または合金上に被覆した(膜厚は5〜40μmが好ましく、さらには10〜30μmがより好ましい。)支持体あるいは導電性粒子をプラスチックや紙に含浸させた支持体などを用いることができる。形状としては、ドラム状、シート状およびベルト状などが挙げられる。
【0049】
本発明においては、支持体と感光層との間にバリア機能や接着機能を有する中間層を設けることもできる。
【0050】
中間層の材料としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ポリアミド、にかわ、ゼラチンなどが用いられる。これらは過当な溶剤に溶解して支持体上に塗布される。
【0051】
中間層の膜厚は、0.2〜3.0μmであることが好ましい。
【0052】
支持体または中間層上に感光層が設けられる。
【0053】
本発明の電子写真感光体の感光層の層構成は、支持体上に電荷発生物質と電荷輸送物質を単一の層に含有する層構成(図3)と、支持体上に電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を積層した層構成がある(図1、2)。これらの中でも、支持体上に電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層した層構成の感光層(図1)が好ましい。
【0054】
特開平9−240051号公報には、図1のような支持体上に電荷発生層と電荷輸送層をこの順に積層した電子写真感光体では、400〜500nmの光は電荷輸送物質に吸収され、電荷発生層まで光が届かないため、原理上感度を示さないと開示されているが、必ずしもそのようなことはなく、電荷輸送層に使用される電荷輸送物質としてレーザーの発振波長に透過性のある電荷輸送物質を用いれば、上記構成の電子写真感光体でも十分な感度が得られ、使用可能である。
【0055】
以下に、支持体上に電荷発生層および電荷輸送層を積層した感光層を有する積層型電子写真感光体について、その作製方法を述べる。
【0056】
電荷発生層は、電荷発生物質として上記式(1)で示される構造を有するポルフィラジン化合物を、適当な溶剤中で結着樹脂と共に分散した液を、支持体上に公知の方法によって塗布し乾燥することによって形成される。
【0057】
電荷発生層の膜厚は、5μm以下であることが好ましく、特には0.1〜1μmであることが好ましい。
【0058】
用いられる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂または有機光導電性ポリマーから選択されるが、ポリビニルブチラール、ポリビニルベンザール、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、フェノキシ樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂およびポリウレタンなどが好ましく、これらの樹脂は置換基を有してもよく、置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基およびトリフルオロメチル基などが好ましい。
【0059】
結着樹脂の使用量は、電荷発生層全質量に対し、好ましくは80質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0060】
また、電荷発生物質の含有量は、電荷発生層全質量に対し、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%である。
【0061】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、画像良化、繰り返し特性良化、高感度化などを目的として、他種の電荷発生物質を使用してもよく、他種の電荷発生物質としては、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、アゾ化合物、多環キノン化合物が挙げられる。本発明の効果を損なわないという観点から、上記式(1)で示される構造を有するポルフィラジン化合物は、電荷発生物質全質量に対して、50質量%以上が好ましい。
【0062】
また、使用する溶剤は、結着樹脂を溶解し、後述の電荷輸送層や中間層を溶解しないものから選択することが好ましい。具体的には、テトラヒドロフランおよび1,4−ジオキサンなどのエーテル類、シクロヘキサノンおよびメチルエチルケトンなどのケトン類、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミン類、酢酸メチルおよび酢酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレンおよびクロロベンゼンなどの芳香族類、メタノール、エタノールおよび2−プロパノールなどのアルコール類、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエチレン、四塩化炭素およびトリクロロエチレンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。
【0063】
電荷輸送層は、電荷発生層の上または下に積層され、電界の存在下にて電荷発生層から電荷キャリアを受け取り、これを輸送する機能を有している。電荷輸送層は、電荷輸送物質を必要に応じて適当な結着樹脂と共に溶剤中に溶解した塗布液を塗布することによって形成される。
【0064】
電荷輸送層の膜厚は、5〜40μmであることが好ましく、特には5〜15μmであること好ましい。
【0065】
電荷輸送物質には電子輸送物質と正孔輸送物質がある。高移動度の観点からは、正孔輸送物質が好ましい。
【0066】
電子輸送物質としては、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、クロラニルおよびテトラシアノキノジメタンなどの電子吸引性材料やこれらの電子吸引性材料を高分子化したものなどが挙げられる。
【0067】
正孔輸送材料としては、例えば、ピレンおよびアントラセンなどの多環芳香族化合物、カルバゾール系、インドール系、オキサゾール系、チアゾール系、オキサジアゾール系、ピラゾール系、ピラゾリン系、チアジアゾール系およびトリアゾール系化合物などの複素環化合物、ヒドラゾン系化合物、スチリル系化合物、ベンジジン系化合物、トリアリールメタン系化合物およびトリフェニルアミン系化合物、またはこれらの化合物から誘導される基を、主鎖または側鎖に有するポリマー(例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびポリビニルアントラセンなど)が挙げられる。
【0068】
これらの電荷輸送物質は1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0069】
電荷輸送物質が成膜性を有していない場合には、適当な結着樹脂を用いることができる。具体的には、アクリル樹脂、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアミド、塩素化ゴムなどの絶縁性樹脂またはポリ−N−ビニルカルバゾールおよびポリビニルアントラセンなどの有機光導電性ポリマーなどが挙げられる。
【0070】
電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層全質量に対し、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%である。
【0071】
ただし、図1の構成の電子写真感光体に使用する場合は、前述の通り使用する半導体レーザーの発振波長に対して透過性のある電荷輸送物質や結着樹脂を選択する必要がある。具体的には、電荷輸送物質としては下記式で示される構造を有するのトリフェニルアミン化合物、
【外16】
【0072】
【外17】
【0073】
【外18】
【0074】
【外19】
【0075】
【外20】
【0076】
結着樹脂としてはポリカーボネートが挙げられる。
【0077】
感光層が単層型の場合、電荷発生物質としての上記式(1)で示される構造を有するポルフィラジン化合物と電荷輸送物質を、過当な結着樹脂溶液中に混合して、この混合液を支持体上に塗布乾燥して形成される。結着樹脂としては、上述した樹脂が使用できる。
【0078】
単層型感光層の膜厚は、5〜40μmであることが好ましく、さらには10〜30μmであることが好ましい。
【0079】
また、本発明の電子写真感光体の感光層には、必要に応じて、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの添加剤を使用してもよい。
【0080】
また、感光層を外部からの機械的および化学的悪影響から保護することなどを目的として、感光層上に保護層を設けることもできる。
【0081】
保護層は、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、エポキシ樹脂、メラミン樹脂や、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリカーボネート(ポリカーボネートZ、変性ポリカーボネートなど)、ナイロン、ポリイミド、ポリアリレート、ポリウレタン、スチレン−ブタジエンコポリマー,スチレン−アクリル酸コポリマー,スチレン−アクリロニトリルコポリマーなどの樹脂を、適当な有機溶剤によって溶解し、感光層の上に塗布して乾燥する、または、感光層の上に塗布して、加熱、電子線、紫外線などによって硬化することによって形成できる。
【0082】
保護層の膜厚は、0.05〜20μmであることが好ましい。
【0083】
また、保護層中に導電性粒子や紫外線吸収剤やフッ素原子含有樹脂微粒子などの潤滑性粒子などを含有させてもよい。導電性粒子としては、酸化スズ粒子などの金属酸化物が好ましい。
【0084】
上記各層の塗布方法としては、ディッピング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法などが挙げられる。
【0085】
図4に、本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。
【0086】
図4において、11はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸12を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体11は、回転過程において、(一次)帯電手段13によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、露光手段の半導体レーザーからのレーザービーム走査露光光14を受ける。こうして電子写真感光体11の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0087】
本発明においては、半導体レーザーの発振波長は380〜500nmであるが、電子写真特性の観点から、400〜450nmであることが好ましい。
【0088】
形成された静電潜像は、次いで、現像手段15によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から電子写真感光体11と転写手段16との間に電子写真感光体11の回転と同期取り出されて給紙された転写材17に、転写手段16により順次転写されていく。
【0089】
像転写を受けた転写材17は、電子写真感光体面から分離されて定着手段18へ導入されて像定着を受けることにより、複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0090】
像転写後の電子写真感光体11の表面は、クリーニング手段19によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、さらに、前露光手段(不図示)からの前露光光20により除電処理された後、繰り返し像形成に使用される。なお、図のように、帯電手段13が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0091】
本発明においては、上述の電子写真感光体11、帯電手段13、現像手段15およびクリーニング手段19などの構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。例えば、帯電手段13、現像手段15およびクリーニング手段19の少なくとも1つを電子写真感光体11とともに一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール22などの案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ21とすることができる。
【0092】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明をより一層詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0093】
(製造例1)
窒素気流下、2,3−ナフタレンジカルボニトリル(10.0g)と3塩化ガリウム(15.8g)をα−クロロナフタレン(100ml)中、200℃で4時間攪拌を行った。
【0094】
反応終了後、反応液が130℃になったところで、吸引濾過を行い、暗緑色目的物を得た。
【0095】
この化合物を、窒素雰囲気下、N,N−ジメチルホルムアミド(500ml)中、1時間100℃で攪拌清浄を行った後、濾別、濾過器上でメタノール置換を行った後、30℃で真空乾燥を10時間行うことで、6.7gの塩化ガリウムナフタロシアン(上記式(2)のMがGa−Cl(Clは軸配位子)、R201〜R224が総て水素原子の化合物)を得た。
【0096】
得られた化合物の元素分析結果を表1に、X線回折パターンを図5に示す。
【0097】
(製造例2)
窒素気流下、2,3−ナフタレンジカルボニトリル(10.0g)と3塩化ガリウム(15.8g)をキノリン(100ml)中で2時間加熱還流を行った。
【0098】
反応終了後、反応液が130℃になったところで、吸引濾過を行い、暗緑色目的物を得た。
【0099】
この化合物を、窒素雰囲気下、N,N−ジメチルホルムアミド(500ml)中、100℃で攪拌清浄を1時間行った後、濾別、濾過器上でメタノール置換を行った後、30℃で真空乾燥を10時間行うことで7.2gの塩化ガリウムナフタロシアン(上記式(2)のMがGa−Cl(Clは軸配位子)、R201〜R224が総て水素原子の化合物)を得た。
【0100】
得られた化合物の元素分析結果を表1に、X線回折パターンを図6に示す。
【0101】
(製造例3)
窒素気流下、1,3−ジイミノベンゾ[f]イソインドリン(10.0g)と4塩化ケイ素(7.4g)をキノリン(100ml)中で2時間加熱還流を行った。
【0102】
反応終了後、反応液を室温に冷却した後、150mlのエタノールを加えた後、吸引濾過により暗緑色の濾物を集めた。
【0103】
濾物を、窒素雰囲気下、N,N−ジメチルホルムアミド(500ml)中で、100℃で1時間攪拌清浄を行った後、濾別を行った。濾過器上でメタノール置換を行った後、30℃で真空乾燥を10時間行い、5.1gの塩化ケイ素ナフタロシアン(上記式(2)のMがCl−Si−Cl(Clは軸配位子)、R201〜R224が総て水素原子の化合物)を得た。
【0104】
得られた化合物の元素分析結果を表1に示す。
【0105】
(製造例4)
2,3−ナフタレンジカルボニトリル(100.0g)と酢酸鉄(II)(5.0g)を触媒量の1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデ−7−セン存在下、1−ヘキサノール中(300ml)中で150℃で12時間攪拌を行った。
【0106】
反応終了後、エバポレーターを用いて溶媒を除去し、イオン交換水(500ml)、メタノール(300ml)、クロロホルム(300ml)、N,N−ジメチルホルムアミド(300ml)、メタノール(300ml)の順に各1時間ずつ分散洗浄を行うことで、一般式(3)で示されるナフタロシアニン化合物を3.2g得た。
【0107】
【外21】
【0108】
得られた化合物の元素分析結果を表1に示す。
【0109】
(比較製造例1)
特開昭61−239248号公報(USP4,728,529)に開示されている製造法にしたがって、いわゆるα型と呼ばれる結晶型のTiOPcを得た。
【0110】
得られたTiOPcの元素分析結果は表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
支持体としてのアルミニウムシリンダー上に、メトキシメチル化ナイロン(平均分子量32,000)5部とアルコール可溶性共重合ナイロン(平均分子量29,000)10部をメタノール95部に溶解した液をマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって、膜厚が1μmの中間層を形成した。
【0113】
次に、製造例1で得た塩化ガリウムナフタロシアン4部をシクロヘキサノン95部にブチラール樹脂(ブチラール化度63モル%、重量平均分子量100,000)2部を溶かした液に加え、サンドミルで20時間分散した。この分散液を中間層の上に乾燥後の膜厚が0.2μmとなるようにマイヤーバーで塗布し、電荷発生層を形成した。
【0114】
次に、電荷輸送物質として上記式(4−1)で示される構造を有する化合物5部とポリカーボネート樹脂(ユーピロンZ800、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)5.5部をクロロベンゼン40部に溶解し、この液を電荷発生層の上に乾燥後の膜厚が15μmとなるようにマイヤーバーで塗布し、電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製した。
【0115】
このようにして作製した電子写真感光体を、静電複写紙試験装置(川口電機製:EPA−8100)を用いて、以下のように評価した。
【0116】
〈感度〉
電子写真感光体の表面電位を−700Vになるようにコロナ帯電器で帯電し、次いでモノクロメータで分離した400nmの単色光で露光し、表面電位が−350Vまで減衰するのに必要な光量を測定し、感度(E1/2)を求めた。同様にして、450nm、500nmの単色光における感度を測定した。
【0117】
〈繰り返し特性〉
次に、初期暗部電位(VD)および初期明部電位(VL)を、それぞれ−700V、−200V付近に設定し、400nmの単色光を用いて帯電、露光を3000回繰り返し、VD、VLの変動量(ΔVD、ΔVL)を測定した。
【0118】
〈フォトメモリー〉
電子写真感光体の初期VD、400nmの単色光での初期VLを、それぞれ−700V、−200V付近に設定した。
【0119】
次に、電子写真感光体の一部に、光強度20μW/cm2の400nmの単色光を15分照射した後、再度電子写真感光体のVD、VLを測定し、フォトメモリーとして非照射部と照射部のVDの差(ΔVDPM)、および、非照射部と照射部のVLの差(ΔVLPM)を測定した。
【0120】
以上の結果を表2に示す。
【0121】
なお、表2中の繰り返し特性およびフォトメモリーにおけるマイナス記号は電位の絶対値の低下を表し、プラス記号は電位の絶対値の上昇を表す。
【0122】
(実施例2、3および比較例1)
電荷発生物質として表2に示した化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。
【0123】
結果を表2に示す。
【0124】
【表2】
【0125】
(実施例5〜8および比較例2)
電荷発生層と電荷輸送層の上下関係を逆にし、電荷輸送物質を下記式で示される構造を有する化合物
【外22】
【0126】
に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして初期の感度を測定した。ただし、帯電極性はプラスとした。
【0127】
結果を表3に示す。
【0128】
【表3】
【0129】
表2、3に示した結果から、本発明の電子写真感光体は、比較例の電子写真感光体に比べ、400〜500nmの短波長レーザーの発振波長領域での感度が非常に優れている上、短波長光に対する光メモリーが小さく、繰り返し使用時の電位や感度の安定性に優れていることがわかる。
【0130】
(実施例9〜12、比較例3)
10%酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した酸化チタン粉体50部、レゾール型フェノール樹脂25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部およびシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3,000)0.002部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して導電層用塗料を調製した。
【0131】
この塗料を、アルミニウムシリンダー上に浸漬塗布し、140℃で30分間乾燥することによって、膜厚が20μmの導電層を形成した。
【0132】
次に、6−66−610−12四元系ポリアミド共重合体樹脂5部をメタノール70部とブタノール25部の混合溶媒に溶解した。この溶液を導電層上に浸漬塗布し、乾燥することによって、膜厚が0.8μmの中間層を設けた。
【0133】
次に、それぞれ表4に示す電荷発生物質10部をポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBM−S、積水化学社製)5部をシクロヘキサノン100部に溶解した液に添加し、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で20時間分散し、さらに100部のメチルエチルケトンを加えて、希釈した。この液を中間層上に浸漬塗布し、100℃で10分間乾燥することによって、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0134】
次に、電荷輸送物質として上記式(4−1)で示される構造を有する化合物8部と上記式(4−2)で示される構造を有する化合物1部、ポリカーボネート樹脂(ユーピロンZ800、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部をモノクロルベンゼン60部に溶解した。
【0135】
この溶液を電荷発生層上に浸漬塗布し、110℃の温度で1時間乾燥することによって、膜厚が15μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製した。
【0136】
(実施例13)
電荷輸送層の膜厚が10μmであること以外は、実施例9と同様な方法で導電層、中間層、電荷発生層、電荷輸送層をアルミシリンダー上に塗布した。
【0137】
次に、下記式で示される構造を有する電荷輸送物質36部
【外23】
【0138】
およびポリテトラフルオロエチレン粒子4部を、n−プロピルアルコール60部に混合した後に分散処理を行い、保護層用塗料を調整した。
【0139】
この塗料を上記電荷輸送層上に塗布した後、窒素中において加速電圧150kV、線量5Mradの条件で電子線を照射した後、引き続いて感光体の温度が150℃になる条件で3分間加熱処理を行った。このときの酸素濃度は50ppmであった。さらに、大気中で140℃、1時間後処理を行って、膜厚5μmの保護層を形成し、電子写真感光体を得た。
【0140】
(実施例14)
実施例13において、保護層内の電荷輸送物質の量を36部から28部、ポリテトラフルオロエチレン粒子の量を4部から12部に変更した以外は、実施例13と同様な方法で電子写真感光体を作製した。
【0141】
(実施例15)
保護層の膜厚を5μmから3μmに変更した以外は、実施例13と同様な方法で電子写真感光体を作製した。
【0142】
(実施例16)
電荷輸送層の膜厚を10μmから12μm、保護層の膜厚を5μmから3μmに変更した以外は、実施例13と同様な方法で電子写真感光体を作製した。
【0143】
このようにして作製した電子写真感光体を、パルス変調装置を搭載しているキヤノン(株)製プリンターLBP−2000改造機(光源として日亜化学製の半導体レーザー/発振波長405nmを搭載した。また、反転現像系で600dpi相当の画像入力に対応できる帯電−露光−現像−転写−クリーニングからなるカールソン方式の電子写真システムに改造した。)に装着した。
【0144】
暗部電位VD=−650V、明部電位VL=−200Vに設定し、1ドット1スペースの画像と文字(5ポイント)画像の出力を行い、得られた画像を目視により評価した。
【0145】
また、ポジゴーストの評価は以下のように行った。
【0146】
ベタ黒画像を2枚打ち出した後、プリント画像書き出しから感光体1回転の部分に25mm角の正方形のベタ黒部を並べ、感光体2回転目以降に1ドットを桂馬パターンで印字したハーフトーンのテストチャートを打ち出し、ハーフトーンのテストチャート上に表れる、25mm角のベタ黒部の履歴の程度を目視により評価した。ゴーストの程度は以下のようにランク基準に従い、定量化を行った。ランクA:ゴーストは全く見えない。
ランクB:履歴の輪郭が極わずかに見える。
ランクC:履歴の輪郭がうっすら見える。
ランクD:履歴の輪郭がはっきりと見える。
【0147】
結果を表4に示す。
【0148】
【表4】
【0149】
表4に示した結果から、本発明の電子写真装置は、ドットの再現性や文字の再現性に優れ、高解像度の出力画像が得られることがわかる。
【0150】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、380〜500nmの波長領域でも高い感度特性を有し、かつ、光メモリーが小さく、繰り返し使用時の電位変動の小さな電子写真感光体を提供することができる。
【0151】
また、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを提供することができ、また、該電子写真感光体と短波長レーザーを有する露光手段を使用することによって、実用的で安定して高画質な出力画像が得られる電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】支持体上に電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層をこの順に積層した感光層の層構成を示す図である。
【図2】支持体上に電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と電荷発生物質を含有する電荷発生層をこの順に積層した感光層の層構成を示す図である。
【図3】支持体上に電荷発生物質と電荷輸送物質を単一の層に含有する感光層の層構成を示す図である。
【図4】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
【図5】製造例1のX線回折パターンである。
【図6】製造例2のX線回折パターンである。
【符号の説明】
a 支持体
b 感光層
c 電荷発生層
d 電荷輸送層
e 電荷発生物質
11 電子写真感光体
12 軸
13 帯電手段
14 レーザービーム走査露光光
15 現像手段
16 転写手段
17 転写材
18 定着手段
19 クリーニング手段
20 前露光光
21 プロセスカートリッジ
22 レール
Claims (10)
- 前記Mが、軸配位子を有してもよい3価または4価の遷移金属である請求項1または2に記載の電子写真装置。
- 前記Mが、軸配位子として環拡張テトラアザポルフィリン誘導体を有する3価または4価の遷移金属である請求項3に記載の電子写真装置。
- 前記Mが3価のガリウムである請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真装置。
- 前記式(2)で示されるナフタロシアニン誘導体が、前記式(2−2)で示されるものである請求項6に記載の電子写真装置。
- 前記式(2−2)で示される構造を有するナフタロシアニン誘導体が、Cukα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の14.2°および27.5°に強いピークを有する結晶型を有するか、又はCukα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.8°、12.5°および26.3°に強いピークを有する結晶型を有するものである請求項7に記載の電子写真装置。
- 前記感光層が、支持体側から、前記電荷発生物質を含有する電荷発生層、および、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層をこの順に有する請求項1〜8のいずれかに記載の電子写真装置。
- 前記半導体レーザーが、発振波長が400〜450nmの範囲にある半導体レーザーである請求項1〜9のいずれかに記載の電子写真装置。
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