JP3910005B2 - 電子写真感光体 - Google Patents
電子写真感光体 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3910005B2 JP3910005B2 JP2000209293A JP2000209293A JP3910005B2 JP 3910005 B2 JP3910005 B2 JP 3910005B2 JP 2000209293 A JP2000209293 A JP 2000209293A JP 2000209293 A JP2000209293 A JP 2000209293A JP 3910005 B2 JP3910005 B2 JP 3910005B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- substituent
- general formula
- charge transport
- group
- electrophotographic
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Photoreceptors In Electrophotography (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体に関するものである。さらに詳しくは有機系の光導電性物質を含有する感光層を有する高感度・高性能の電子写真感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真用感光体の感光層にはセレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛等の無機系の光導電性物質が広く用いられてきた。しかしながら、セレン、硫化カドミウムは毒物として回収が必要であり、セレンは熱により結晶化するため耐熱性に劣り、硫化カドミウム、酸化亜鉛は耐湿性に劣り、また酸化亜鉛は耐刷性がないなどの欠点を有しており、新規な感光体の開発の努力が続けられている。最近は、有機系の光導電性物質を電子写真用感光体の感光層に用いる研究が進み、そのいくつかが実用化された。有機系の光導電性物質は無機系のものに比し、軽量である、成膜が容易である、感光体の製造が容易である、種類によっては透明な感光体を製造できる等の利点を有する。
【0003】
これら有機光導電性化合物を用いた電子写真感光体は、電荷輸送層と電荷発生層を積層させた機能分離型の感光体として利用されることが多い。これは電気的、機械的双方の特性を満足させる電子写真感光体の設計が容易だからである。ここで電子写真感光体が満足すべき電気的、機械的双方の特性には、初期的に優れた性能を有するだけでなく、繰り返し使用される場合に十分な耐久性が必要なことも含まれる。
【0004】
電子写真感光体の露光部にトナーを付着させる、いわゆる反転現像方式の電子写真プロセスにおいて、初期的に優れた性能とは、使用される電子写真プロセスにマッチする最適感度・電気特性を有することをいい、繰り返し使用される場合の十分な耐久性とは、繰り返し使用時に電子写真感光体表面に直接加えられる、コロナ又は直接帯電、画像露光、トナー現像、転写工程及び表面クリーニング等による、電気的、機械的外力による劣化に対する耐久性を有することをいう。
【0005】
しかし、電子写真感光体に望まれる耐久性は、前記の繰り返し使用時の耐久性といった電子写真プロセス内で使用される際に必要とされる耐久性に限られない。電子写真プロセス外、すなわち電子写真装置外に取り出される際にも、実使用に耐えうるだけの十分な耐久性が必要とされるのである。具体的に述べれば、電子写真感光体は、電子写真装置の組立の際に一時的に外部光にさらされる場合があり、市場においても電子写真装置の紙詰まり発生時やメンテナンス時に電子写真装置外へと取り出されることによって外部光にさらされる場合もあるが、これら外部光の照射に対しても電子写真感光体は十分な耐久性を有することが要求されるのである。
【0006】
言い換えれば、電子写真感光体は、電子写真プロセス内では照射される光に対し反応して十分な光感度を有する必要がある一方で、外部光にさらされた場合は安定でなければならないという、相反する二つの性能を満たさなければならないのである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記の諸特性を満足させるための一つの手段として、優れた電気的特性、機械的特性を有する電荷輸送物質を採用する方法が挙げられる。このような電荷輸送物質として、特公昭56−13939号公報に記載されているアリールアミン化合物が、優れた初期電気特性及び電子写真プロセスで繰り返し使用された場合に十分な耐久性を有することは従来から知られている。また最近では、特開平5−119489号公報に記載されているアリールアミン化合物も、優れた初期電気特性及び電子写真プロセスで繰り返し使用された場合に十分な耐久性を有する。
【0008】
しかしながら、これらアリールアミン化合物を用いた電子写真感光体は、前記外部光に対する耐久性が十分とはいえず、以下に示す問題があった。即ち、電子写真装置組立時や市場で電子写真装置外へ電子写真感光体が取り出された時において、前記電子写真感光体に強く外部光が照射されることがある。このような外部光の照射を受けた後、この電子写真感光体を再度電子写真プロセス内で使用した場合に前記外部光が照射された部位の露光電位が急激に上昇し、照射部位に対応する印字画像上において、反転現像の電子写真プロセスにおいては画像濃度の低下、正転現像の電子写真プロセスにおいては画像濃度の上昇が引き起こされてしまう問題が発生してしまうのである。
【0009】
この外部光照射による電位上昇の問題は、電子写真プロセス内で直接引き起こされる現象ではないため常に問題となるわけではないものの、電子写真感光体を外部光の下にいっさい置かないことは実際上考えられないので、実使用可能な電子写真感光体を得ようとする場合には無視できない技術的課題である。
また、従来の白黒のプリンターでは、文字画像の出力が主体であり、上記外部光照射による電位上昇の問題は許容される場合もあったが、近年本格的に普及しつつあるデジタル複写機及びフルカラープリンタ・フルカラー複写機については、写真画像の出力も行われるため、わずかな電位上昇も大きな問題となってきている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記実情に鑑みて鋭意検討を行った結果、特定の電子輸送物質を併用することにより、前記アリールアミン化合物が有する性能をさらに向上させつつ、外部光による電位上昇の発生しない感光体を得られることを見い出し本発明を完成した。
【0011】
即ち本発明の要旨は、すなわち、本発明の第一の要旨は、導電性支持体上に、電荷発生物質及び電荷輸送物質を含有する感光層を有する電子写真感光体において、該電荷輸送物質が、下記一般式(4)で表され、トルエンを溶媒とする5重量%溶液を調製し該溶液の透過率を分光光度計で測定した場合に透過率50%となる波長が350〜450nmの範囲にあるアリールアミン化合物、及び、下記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体、に存する。
【0012】
【化6】
【0013】
(一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、又は、置換アミノ基を表し、これらはお互いに同一でも異なっていてもよい。k、l、m、n、o及びpは、それぞれ、0〜4の整数を表し、2以上の整数の場合に複数存在するR1〜R6のそれぞれは、同一でも異なっていてもよい。また、一般式(1)中、X1は、下記一般式(2)を、X2は、下記一般式(3)を表す。)
【0014】
【化7】
【0015】
【化8】
【0016】
(一般式(2)、(3)中、iは0又は1の整数を表し、hは0又は1の整数を表し、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、又は、置換基を有してもよい複素環基を表し、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。X1及びX2は同一でも異なっていてもよい。)
【0017】
【化9】
【0018】
(一般式(4)中、Xは、置換基を有していてもよいメチレン基、又は、一般式(5)で表される基、Arは置換基を有していてもよいアリール基、Rは置換基を有していてもよいアリールを表す)
【化5】
−O−X1−O− (5)
(一般式(5)中、X1は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素残基を表す。)。また本発明の第二の要旨は、上記電子写真感光体に500nm以上の光で静電潜像を形成することを特徴とする電子写真方法、に存する。
【0019】
さらに本発明の第三の要旨は、前記電子写真感光体を具備してなるプロセスカートリッジ、に存する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
<導電性支持体>
感光層が形成される導電性支持体としては公知の電子写真感光体に採用されているものがいずれも使用できる。具体的には例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料からなるドラム、シート、ベルトあるいはこれらの金属箔のラミネート物、蒸着物、あるいは表面にアルミニウム、銅、パラジウム、酸化すず、酸化インジウム等の導電性層を設けたポリエステルフィルム、紙等の絶縁性支持体が挙げられる。更に、金属粉末、カーボンブラック、ヨウ化銅、高分子電解質等の導電性物質を適当なバインダーとともに塗布して導電処理したプラスチックフィルム、プラスチックドラム、紙、紙管等が挙げられる。また、金属粉末、カーボンブラック、炭素繊維等の導電性物質を含有し、導電性となったプラスチックのシート、ベルトやドラムが挙げられる。又、酸化スズ、酸化インジウム等の導電性金属酸化物で導電処理したプラスチックフィルムやベルトが挙げられる。
【0021】
なかでもアルミニウム等の金属のエンドレスパイプが好ましい支持体である。
<バリアー層ないし下引き層>
本発明においては、導電性支持体と感光層との間には通常使用されるような公知のバリアー層が設けられていてもよい。バリアー層としては、例えばアルミニウム陽極酸化被膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機層、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミドなどの樹脂を用いる有機層が使用される。有機層をバリアー層として用いる場合には単独あるいはチタニア、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム等の金属酸化物あるいは銅、銀、アルミニウム等の金属微粉末を分散させて用いてもよい。
【0022】
有機層の場合は、前述の樹脂を単独或いは前述金属酸化物・金属微粉末とともに溶媒に溶解あるいは分散し、前述の導電性支持体の上にワイヤーバー、ドクターブレード、フィルムアプリケータ、浸積、スプレーなどの塗布方法により塗工し乾燥させることにより形成することができる。これらのバリアー層の膜厚は適宜設定できるが、0.05〜20μm、好ましくは0.1〜10μmの範囲で用いることが好ましい。
【0023】
これらのバリアー層ないし下引き層は、単独で用いてもよいし、いくつかを組み合わせて設けてもよい。
<感光層>
(1) 電荷輸送物質
前記バリアー層の上には、電荷発生物質及び電荷輸送物質を含有する感光層が形成される。
【0024】
本発明における感光層は、電荷輸送物質と電荷発生物質を同一の層に含有する単層型であっても、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、電荷発生物質を含有する電荷発生層に分離した積層型でもよいが、いずれの場合にも以下に詳述する特定の電荷輸送物質を用いることを必要とする。
本発明においては、電荷輸送物質として以下の特定のアリールアミン化合物と、後述する一般式(1)で表されるアリールアミン化合物とを併用することが必要である。
【0025】
用いられる電荷輸送物質としては、まず、透過率50%となる波長が350〜450nm、好ましくは350〜400nmにあるアリールアミン化合物が挙げられる。
ここで、本発明において「透過率50%となる波長が350〜450nmにあるアリールアミン化合物」とは、該アリールアミン化合物について、トルエンを溶媒とする5重量%溶液を調製し、その溶液の透過率を分光光度計で測定した場合に、透過率が50%となるような波長が、350〜450nmの範囲にあるようなアリールアミン化合物をいう。
【0026】
また、本発明に用いられるアリールアミン化合物として、下記一般式(4)で表される電荷輸送物質を、後述する一般式(1)で表されるアリールアミン化合物と併用することもできる。
【0027】
【化10】
【0028】
一般式(4)中、Xは置換基を有していてもよい二価の残基、Arは置換基を有していても良いアリール基、Rは置換基を有していても良いアリール、アルキル、縮合多環、または複素環を表す。
一般式(4)において、より好ましい構造は、Xは、−O−、−S−、−SO2−、置換基を有していても良い二価の有機残基、Arは置換基を有していても良いフェニル基、Rは置換基を有していてもよいフェニル基又はナフチル基である。さらに好ましい構造は、Xは置換基を有していても良いメチレン基、Arは置換基を有していても良いフェニル基、Rは置換基を有していても良いパラトリル基であるか、又は、Xは下記一般式(5)、Arは置換基を有していても良いフェニル基、Rは置換基を有していても良いパラトリル基である。
【0029】
【化11】
−O−X1−O− (5)
一般式(5)中、X1は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素残基を表す。
【0030】
具体的にこのような化合物として、例えば、表−1のNo.1〜9、12〜21の構造のものが挙げられる。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
【0037】
ここで、表−1中の化合物のうち、No.2、No.7、No.13につき、それぞれをトルエン溶媒中に5重量%溶解させた溶液の透過率を測定した。その結果を図−1及び図−2に示す。ここで、透過率の測定は、(株)日立製作所製の分光光度計U−3210形を使用して行った。図−1及び図−2の結果より、No.2及びNo.7の化合物の透過率50%となるような波長はいずれも380nm付近であり、No.13の化合物のそれは390nm付近となった。つまり、前記一般式(4)の構造を有するアリールアミン化合物には、その選択される構造によっては、350〜450nmの範囲に透過率50%となる波長を有するものがあることがわかる。
【0038】
さらに本発明においては、前記した、350〜450nmの範囲に透過率50%となる波長を有する化合物、又は前記一般式(4)で表されるアリールアミン化合物とともに、下記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物も電荷輸送物質として併用する。
【0039】
【化12】
【0040】
(一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、又は、置換アミノ基を表し、これらはお互いに同一でも異なっていてもよい。k、l、m、n、o及びpは、それぞれ、0〜4の整数を表し、2以上の整数の場合に複数存在するR1〜R6のそれぞれは、同一でも異なっていてもよい。また、一般式(1)中、X1は、下記一般式(2)を、X2は、下記一般式(3)を表す。)
【0041】
【化13】
【0042】
【化14】
【0043】
(一般式(2)、(3)中、iは0〜2の整数を表し、hは0〜2の整数を表し、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、又は、置換基を有してもよい複素環基を表し、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。さらにR10とR11からなる対、又はR15とR16からなる対は縮合して炭素環基または複素環基を形成してもよい。但しR10とR11からなる対、又はR15とR16からなる対は、どちらか一方が水素原子またはアルキル基の場合は、もう一方はアリール基、又は複素環基である。i=2の場合、それぞれのR7とR8は同一でも異なっていてもよく、またh=2の場合、それぞれのR15とR16は同一でも異なっていてもよい。X1及びX2は同一でも異なっていてもよい。)
このような化合物の具体例としては、特開平9−244278号公報に詳細に紹介されているが、例えば、表−2のNo.1〜5の構造のものが挙げられる。これらの化合物は、通常、450nmよりも長波長側に、透過率50%となる波長を有する。
【0044】
本発明において、350〜450nmの範囲に透過率50%となる波長を有するアリールアミン化合物又は上記一般式(4)で表されるアリールアミン化合物と、上記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物との使用割合は、重量比で通常、99/1〜1/99、好ましくは、99/1〜50/50である。
【0045】
【表7】
【0046】
【表8】
【0048】
(2) 積層型感光層
▲1▼電荷発生層
積層型の場合、電荷発生層の上に電荷輸送層を積層したものでも、電荷輸送層の上に電荷発生層を積層したものでもよい。
はじめに電荷発生層について説明する。前記バリアー層の上には、好ましくは電荷発生層が形成される。電荷発生層は、電荷発生物質を蒸着することによっても形成することができるが、電荷発生物質および必要に応じ他の有機光導電性化合物、色素、電子吸引性化合物等をバインダー樹脂と共に溶剤に溶解あるいは分散し、得られた塗布液をワイヤーバー、ドクターブレード、フィルムアプリケータ、浸積、スプレーなどの公知の塗布方法により塗工し乾燥させることにより形成することができる。
【0049】
電荷発生物質としては、セレン、セレンーテルル合金、セレンーヒ素合金、硫化カドミウム,アモルファスシリコン等の無機光伝導性粒子、無金属フタロシアニン、金属含有フタロシアニン、ペリノン系顔料、チオインジゴ、キクリドン、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔料、アゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキス系アゾ顔料、シアニン系顔料等の有機光伝導性粒子が挙げられる。更に、多環キノン、ピリリウム塩、チオピリリウム塩、インジゴ、アントアントロン、ピラントロン等の各種有機顔料、染料が使用できる。中でも無金属フタロシアニン、銅、塩化インジウム,塩化ガリウム、錫、オキシチタニウム、亜鉛、バナジウム等の金属又は、その酸化物、塩化物の配位したフタロシアニン類、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ、ポリアゾ類等のアゾ顔料及びペリレン系顔料が好ましい。
【0050】
電荷発生物質は、単独で用いてもよいし、複数を混合した形で用いてもよい。バインダー樹脂としては、ポリエステル、ポリビニルアセテート、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ、エポキシ、ウレタン、セルロースエステル、セルロースエーテル等が挙げられる。また、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリアミド、けい素樹脂等を用いてもよい。これらバインダ樹脂は、単独で又はブレンドして使用される。電荷発生層は、前記電荷発生物質その他添加物を前記バインダー樹脂に結着した形の分散層として成膜することができる。
【0051】
この場合の電荷発生物質の使用比率はバインダー樹脂100重量部に対して通常20〜2000重量部、好ましくは30〜500重量部、より好ましくは33〜500重量部の範囲より使用され、電荷発生層の膜厚は通常0.05〜5μm、好ましくは0.1〜2μm、より好ましくは0.15〜0.8μmが好適である。また電荷発生層は塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0052】
▲2▼電荷輸送層
積層型の場合、電荷発生層の上に、主として本発明に用いられる電荷輸送物質2種類と、及びバインダー樹脂からなる電荷輸送層が形成される。
バインダー樹脂としては、例えばポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体、及びその共重合体、ポリカーボネイト、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂など重合体、及びその共重合体でもよく、又これらの部分的架橋硬化物も使用できる。さらに、前記バインダー樹脂の2種以上をブレンドして用いてもよい。バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100重量部に対して30〜90重量部、好ましくは40〜70重量部の範囲で使用される。また電荷輸送層には、必要に応じて酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。電荷輸送層の膜厚は10〜60μm、好ましくは10〜45μm、さらに好ましくは25〜40μmの厚みで使用されるのがよい。
【0053】
電荷輸送層の成形方法としては、層に含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液をワイヤーバー、ドクターブレード、フィルムアプリケータ、浸積、スプレーなどの公知の塗布方法により塗工し乾燥させることにより形成することができる。
(3)単層型感光体
次に感光層が単層型の場合について説明する。キャスティング法で単層感光層を設ける場合、多くは電荷発生物質と電荷輸送物質よりなる機能分離型のものが挙げられる。即ち、電荷発生物質と電荷輸送物質には、前出の材料を用いることができる。
【0054】
単層感光層は、電荷発生物質及び電荷輸送物資及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤、電子輸送剤等を添加することもできる。バインダー樹脂としては、先に積層型の電荷輸送層で挙げたバインダー樹脂をそのまま用いる他に、前出の積層型の電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。
【0055】
単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質及びバインダー樹脂をテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより形成できる。塗布は、ワイヤバー、ドクターブレード、フィルムアプリケータ、浸漬やスプレーなどの公知の塗布方法を用いて行うことができる。ピリリウム系染料、ビスフェノールA系ポリカーボネイトから形成される非晶錯体に、電荷輸送物質を添加した感光体も、適当な溶媒から同様な塗工法で形成できる。単層感光体の膜厚は、5〜100um程度が適当である。
【0056】
<電子写真感光体>
本発明の電子写真感光体は、上述のように導電性支持体上に少なくとも感光層、また必要に応じて導電性支持体上にバリアー層及び感光層を設けてなるものであるが、必要に応じて、さらに中間層、透明絶縁層、表面保護層を有していてもよいことはいうまでもない。
【0057】
例えば、最表面層として従来公知の例えば熱可塑性あるいは熱硬化性ポリマーを主体とするオーバーコート層を用いてもよい。
このようにして得られる電子写真感光体は長期間にわたって優れた耐刷性を維持する感光体であり、複写機、プリンター、ファックス、製版機等の電子写真分野に好適である。
【0058】
<電子写真装置及び電子写真方法>
本発明の電子写真感光体を使用する複写機・プリンター等の電子写真装置は、少なくとも帯電、露光、現像、転写の各プロセスを含むが、どのプロセスも通常用いられる方法のいずれを用いてもよい。
帯電方法(帯電器)としては、例えば、コロナ放電を利用したコロトロンあるいはスコロトロン帯電、導電性ローラーあるいはブラシ、フィルムなどによる接触帯電などいずれを用いてもよい。このうち、コロナ放電を利用した帯電方法では暗部電位を一定に保つためにスコロトロン帯電が用いられることが多い。また、接触帯電を用いる場合、DC電圧のみを印加してもよいし、DC電圧にAC電圧を重畳させたものを印加してもよい。
【0059】
本発明においては、露光は、通常、波長500nm以上のものを用い、具体的には、He−Ne等のレーザー光、ハロゲンランプ、蛍光灯、LED光を発する露光装置等が用いられるが、レーザー光またはLED光を用いることが好ましく、特に530〜850nmのレーザー光またはLED光が好ましい。具体的には、532nm付近、635nm付近、650nm付近、780nm付近、830nm付近のレーザー光、740nm付近のLED光などが挙げられる。
【0060】
現像方法としては、磁性あるいは非磁性の一成分現像剤、二成分現像剤などを接触あるいは非接触させて現像する一般的な方法が用いられる。
転写方法としては、コロナ放電によるもの、転写ローラーあるいは転写ベルトを用いた方法等いずれでもよい。転写は、紙やOHP用フィルムに対して直接行ってもよいし、一旦中間転写体(ベルト状あるいはドラム状)に転写した後に、紙やOHP用フィルム上に転写してもよい。
【0061】
通常、転写の後、現像剤を紙などに定着する定着プロセスが用いられ、定着手段としては一般的に用いられる熱定着、圧力定着などを用いることができる。
これらのプロセスの他に、通常用いられるクリーニング、除電等のプロセスを有してもよい。
さらに、本発明の電子写真感光体は、特に外部光の照射を受ける機会が多い、脱着式のプロセスカートリッジ用の電子写真感光体として用いることができる。プロセスカートリッジとは、電子写真感光体を内蔵し、他の帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。そのようなプロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例を図−4に示す。図−4において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。感光体1は、回転過程において、一次帯電手段3によりその周囲に正又は負の所定の電位の均一な帯電を受け、ついて、スリット露光やレーザービーム走査露光、LEDアレイ露光等の像露光手段(不図示)から波長500nm以上の画像露光光4を受ける。こうして感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0062】
形成された静電潜像は、ついで現像手段5によりトナー現像(現像方法については前述したとおりである)され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から感光体1と転写手段6との間に感光体1の回転と同期取り出されて給紙された転写材7に、転写手段6により静電気力により順次転写されていく。
像転写を受けた転写材7は、感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。像転写後の感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、さらに除電手段(不図示)からの除電光10により除電された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、選択される電子写真のプロセスによっては、除電は必ずしも必要とされない。
【0063】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9等の構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して脱着可能に構成する。
【0064】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
実施例1
実験は、導電性支持体と感光層の間に下引き層を設ける電子写真感光体を使用して行った。下引き層は、表面を珪素化合物で被覆した酸化チタンとポリアミド樹脂を含有するものを用いたが、具体的な形成方法は以下の通りである。すなわち、実験に用いたメチル水素ポリシロキサン表面処理酸化チタンは、まず、酸化チタンとして石原産業(株)製 製品名TTO-55N(結晶型 ルチル 1次粒径0.03〜0.05μm)を用い、この表面にメチル水素ポリシロキサンを3重量%均一に施して調整した。このようにして得たメチル水素ポリシロキサン処理酸化チタニアは、混合アルコール(メタノール/1−プロパノール=7/3)とともにボールミルで16時間分散された。次に、得られた酸化チタン分散液を特開平4−31870号公報の実施例で記載された製造法により製造された下記構造のランダム共重合体ポリアミドの混合アルコール(メタノール/1−プロパノール=70/30)溶液に加えた。最終的に酸化チタン/ポリアミド比3/1(重量比)で固形分濃度16重量%の分散液を調製した。
【0065】
【化15】
【0066】
この分散液をポリエステルフィルム上に蒸着したアルミニウム蒸着面上にバーコーターにより乾燥後の膜厚が1.3μmとなるように下引き層を設けた。
粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラック角(2θ±0.2°)27.3°に最大回折ピークを示し、7.4°、9.7°及び24.2°に回折ピークを示す結晶系のオキシチタニウムフタロシアニン10重量部を200重量部の4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2に加え、サンドクラインドミルにて粉砕分散処理を行い、顔料分散予備液を調整した。これを、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)5重量部の10%メタノール溶液と混合し分散液を作成した。
【0067】
そして、この分散液を前述の下引き層の上にバーコーターにより乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように電荷発生層を設けた。
この電荷発生層の上に、特公昭56−13939号公報で開示される製造方法により製造された前記表−1中No.7のアリールアミン化合物(電荷輸送物質1)を49重量部、及び、特開平9−244278号公報で開示される製造方法により製造された前記表−2中No.1のアリールアミン化合物(電荷輸送物質2)を1重量部及び、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)8重量部、特開平3−221962号公報の実施例中に記載された製造法により製造された、2つの繰り返し構造単位を有する下記ポリカーボネート樹脂(モノマーモル比1:1)100重量部
【0068】
【化16】
【0069】
をテトラヒドロフラン、トルエン混合溶液687重量部で溶解させた溶液をフィルムアプリケータにより塗布し、乾燥後の膜厚が25μmとなるように電荷輸送層を設けた。この様にして作成した感光体を感光体Aとする。
実施例2
実施例1において、前記表−1中No.7のアリールアミン化合物(電荷輸送物質1)を48重量部、及び前記表−2中No.1のアリールアミン化合物(電荷輸送物質2)を2重量部とした電荷輸送層塗布溶液を用いて電荷輸送層を設けた以外は実施例1と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Bとする。
【0070】
実施例3
実施例1において、前記表−1中No.7のアリールアミン化合物(電荷輸送物質1)を45重量部、及び前記表−2中No.1のアリールアミン化合物(電荷輸送物質2)を5重量部とした電荷輸送層塗布溶液を用いて電荷輸送層を設けた以外は実施例−1と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Cとする。
【0071】
実施例4
実施例1において、前記表−1中No.7のアリールアミン化合物(電荷輸送物質1)を40重量部、及び前記表−2中No.1のアリールアミン化合物(電荷輸送物質2)を10重量部とした電荷輸送層塗布溶液を用いて電荷輸送層を設けた以外は、実施例1と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Dとする。
【0072】
実施例5
実施例1において、前記表−1中No.7のアリールアミン化合物(電荷輸送物質1)を30重量部、及び前記表−2中No.1のアリールアミン化合物(電荷輸送物質2)を20重量部とした電荷輸送層塗布溶液を用いて電荷輸送層を設けた以外は、実施例1と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Eとする。
【0073】
比較例1
実施例1において、前記表−1中No.7のアリールアミン化合物(電荷輸送物質1)を単独で50重量部使用した電荷輸送層塗布溶液を用いて電荷輸送層を設けた以外は、実施例1と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Fとする。
【0074】
比較例2
前記表−1中No.7のアリールアミン化合物(電荷輸送物質1)を45重量部、及び下記構造式の化合物(電荷輸送物質3)を5重量部とした電荷輸送層塗布溶液を用いて電荷輸送層を設けた以外は、実施例1と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Gとする。
【0075】
【化17】
【0076】
実施例6
実施例1において、アリールアミン化合物を特公昭56−13939号公報で開示される製造方法により製造された前記表−1中のNo.2の化合物(電荷輸送物質4)にした以外は、実施例1と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Hとする。
【0077】
実施例7
実施例2において、アリールアミン化合物を前記表−1中のNo.2の化合物(電荷輸送物質4)にした以外は実施例2と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Iとする。
実施例8
実施例3において、アリールアミン化合物を前記表−1中のNo.2の化合物(電荷輸送物質4)にした以外は実施例3と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Jとする
実施例9
実施例4において、アリールアミン化合物を前記表−1中のNo.2の化合物(電荷輸送物質4)にした以外は実施例4と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Kとする。
【0078】
実施例10
実施例5において、アリールアミン化合物を前記表−1中のNo.2の化合物(電荷輸送物質4)にした以外は、実施例5と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Lとする。
比較例3
比較例1において、アリールアミン化合物を前記表−1中のNo.2の化合物(電荷輸送物質4)にした以外は比較例1と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Mとする。
【0079】
比較例4
比較例2において、アリールアミン化合物を前記表−1中のNo.2の化合物(電荷輸送物質4)にした以外は、比較例2と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Nとする。
実施例11
実施例1において、アリールアミン化合物を、特開平5−119489号公報にて開示された製造方法によって製造された前記表−1中のNo.13の化合物(電荷輸送物質5)にした以外は実施例1と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Oとする。
【0080】
実施例12
実施例2において、アリールアミン化合物を前記表−1中のNo.13の化合物(電荷輸送物質5)にした以外は実施例2と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Pとする。
実施例13
実施例3において、アリールアミン化合物を前記表−1中のNo.13の化合物(電荷輸送物質5)にした以外は実施例3と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Qとする。
【0081】
実施例14
実施例4において、アリールアミン化合物を前記表−1中のNo.13の化合物(電荷輸送物質5)にした以外は実施例4と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Rとする。
実施例15
実施例5において、アリールアミン化合物を前記表1中のNo.13の化合物(電荷輸送物質5)にした以外は、実施例5と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Sとする。
【0082】
比較例5
比較例1において、アリールアミン化合物を前記表−1中のNo.13の化合物(電荷輸送物質5)にした以外は比較例1と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Tとする。
比較例6
比較例2において、アリールアミン化合物を前記表−1中のNo.13の化合物(電荷輸送物質5)にした以外は、比較例2と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Uとする。
<感光体の評価>
実施例1〜15及び比較例1〜6において得られた感光層を有する電子写真感光体を感光体特性測定機に装着して、温度25℃/相対湿度50%(NN環境)における電気特性を測定した。測定項目は、表面電位が−700Vになるように帯電させた後780nmの光(0.45μJ/cm2)を照射したときの露光電位(VL1)である。その結果を表−3に示す。なお、表−3中、「電1」、「電2」、「電3」、「電4」、「電5」は、それぞれ電荷輸送物質1、電荷輸送物質2、電荷輸送物質3、電荷輸送物質4、電荷輸送物質5をあらわす。
【0083】
【表10】
【0084】
この結果から、電荷輸送物質1、電荷輸送物質4及び電荷輸送物質5(100重量部)に対し、電荷輸送物質2を2重量部以上添加すると、添加量が増えるに従って初期電気特性が改良されることがわかる。
さらに、感光体F及びDについては、帯電・露光・除電の電子写真プロセスを30000回繰り返し行うことにより、その耐久性を評価した。表−4に、繰り返し使用の前後での暗部電位(Vo)と露光電位(VL2)を示す。ここでVL2は、780nmの光を0.2μJ/cm2照射したときの露光電位をいう。尚、表−4中、「電1」、「電2」とは、それぞれ電荷輸送物質1、電荷輸送物質2をいう。
【0085】
【表11】
【0086】
表−4の結果から、繰り返し使用による感光体のVLの上昇量は、電荷輸送物質2添加により低減される。つまり、電子写真感光体としての耐久性も、前記化合物の添加により改良されることがわかる。
次に、感光体F、感光体C、感光体G、感光体M、感光体J、感光体N、感光体T、感光体Q、感光体Uについて、外部光照射による影響を測定した。具体的には、3000luxの蛍光灯を5分間照射する前後での露光電位(VL3)を測定した後、190回帯電―露光を繰り返した後のVL3を測定した。VL3測定するための測定器として、(株)川口電機製作所製モデルEPA−8100を用い、780nmの光0.1μW/cm2を0.2秒照射したときの表面電位をVL3とした。その結果を表−5に示す。表中、括弧内に示された数字は、照射前(VL3)からの差であり、△はVL3絶対値の増加、▲はVL3絶対値の減少を意味する。また、「電1」、「電2」、「電3」、「電4」、「電5」は、それぞれ電荷輸送物質1、電荷輸送物質2、電荷輸送物質3、電荷輸送物質4、電荷輸送物質5を表す。
【0087】
【表12】
【0088】
外部光照射に強い電子写真感光体というためには、照射後の繰り返し電子写真プロセスにおける使用においてもVL3が安定である必要がある。この点からいえば、電荷輸送物質1、電荷輸送物質4、及び電荷輸送物質5単独で構成される電子写真感光体(感光体F、M、T)は、190回程度の繰り返し使用により、VL3が急激に上昇してしまうことがわかる。この現象は、正転現像における濃度上昇・反転現像における濃度低下として印字画像に現れる。これに対し、感光体C、感光体J、及び感光体Qでは、190回繰り返してもVL3がほとんど変動せず、電荷輸送物質2の添加によって外部光に対し安定性が大きく改善されていることがわかる。
【0089】
電荷輸送物質1又は電荷輸送物質5に電荷輸送物質3を添加した場合(感光体G、感光体U)は、電荷輸送物質1又は電荷輸送物質5単独のもの(感光体F、感光体T)とほぼ同様の結果となり、添加しても外部光に対する安定性は全く向上しないことがわかる。一方、電荷輸送物質4においては、感光体Mよりも感光体Nの方が、繰り返し使用後の電位上昇量が抑制され、添加により外部光に対する安定性が向上することがわかるが、それでもなお47Vの電位上昇が観測されるため、抑制の程度が十分でないといえる。すなわち感光体Nにおいてもなお、正転現像における濃度上昇・反転現像における濃度低下が印字画像に現れてしまうこととなるのである。
【0090】
外部光に対する安定性が向上する原因を探るべく、電荷輸送物質1、電荷輸送物質2、及び電荷輸送物質3それぞれを、5重量%溶解させたトルエン溶液の透過率を測定した。その結果を図−3に示す。測定の結果、電荷輸送物質2についての、透過率50%となる波長は475nm付近となった。これは、電荷輸送物質1・4(ともに380nm付近)、電荷輸送物質5(390nm付近)よりも長波長側にある。この結果から、電荷輸送物質2を添加することによる外部光に対する安定性の向上は、電荷輸送物質2が電荷輸送物質1・4・5よりも長波長側まで吸収が伸びている分、感光体に照射される外部光を吸収し、電荷輸送物質1、4・5への照射量が軽減される(電荷輸送物質2がフィルターのような役目をはたすこと)ことにより発現するものではないかと推測される。しかしながら、電荷輸送物質3の透過率50%となる波長は、520nm付近であり、電荷輸送物質2のそれよりもさらに長波長側まで伸びている(図−3参照)にもかかわらず、電荷輸送物質3の添加によっては外部光に対する安定性はほとんど向上しない。したがって、前記推測は必ずしも妥当ではなく、なにか他の要因によって、本発明の外部光に対する安定性向上が発現しているものと思われる。
【0091】
また、電荷輸送物質3を添加することにより初期の電気特性(VL1)も悪化してしまい、電荷輸送物質3の添加は、電子写真特性を単に悪化させるだけといえる。従って、理由は明らかではないものの、本発明においては、前記外部光に対する安定性の向上という効果を発現するためには、上記した特定のアリールアミン化合物に対して、上記一般式(1)で表される特定構造のアリールアミン化合物を用いる必要があることがわかる。
【0092】
【発明の効果】
本発明によれば、感光層に特定のアリールアミン化合物を電荷輸送物質として用い、かつこれに特定の構造を有するアリールアミン化合物を電荷輸送物質として含有させることによって、該電荷輸送物質の有する初期電気特性及び耐久性をさらに改善させつつ、かつ外部光の照射に対しても十分な安定性を有する、実用上きわめて高性能な電子写真感光体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】表−1のアリールアミン化合物No.2及びNo.7の透過率を示すグラフである。
【図2】表−1のアリールアミン化合物No.13の透過率を示すグラフである。
【図3】実施例で用いた電荷輸送物質1〜3の透過率を示すグラフである。
【図4】プロセスカートリッジを表す模式図である。
【符号の説明】
1 電子写真感光体
2 軸
3 一次帯電手段
4 波長500nm以上の画像露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 像定着手段
9 クリーニング手段
10 除電光
Claims (8)
- 導電性支持体上に、電荷発生物質及び電荷輸送物質を含有する感光層を有する電子写真感光体において、該電荷輸送物質が、下記一般式(4)で表され、トルエンを溶媒とする5重量%溶液を調製し該溶液の透過率を分光光度計で測定した場合に透過率50%となる波長が350〜450nmの範囲にあるアリールアミン化合物、及び、下記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化5】
−O−X 1 −O− (5)
(一般式(5)中、X 1 は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素残基を表す。) - 一般式(4)で表されるアリールアミン化合物が、Arが置換基を有していてもよいフェニル基、Rが置換基を有していてもよいフェニル基である請求項1に記載の電子写真感光体。
- 一般式(4)で表されるアリールアミン化合物が、Rが置換基を有していてもよいパラトリル基である請求項2に記載の電子写真感光体。
- 一般式(4)で表されるアリールアミン化合物が、Xが−O−CH2−O−で表される基、Rが置換基を有していてもよいパラトリル基である請求項2に記載の電子写真感光体。
- 電荷発生物質がオキシチタニウムフタロシアニンである請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体に500nm以上の光で静電潜像を形成することを特徴とする電子写真方法。
- 静電潜像を形成する光がレーザー光である請求項6に記載の電子写真方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の電子写真感光体を具備してなるプロセスカートリッジ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000209293A JP3910005B2 (ja) | 2000-07-11 | 2000-07-11 | 電子写真感光体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000209293A JP3910005B2 (ja) | 2000-07-11 | 2000-07-11 | 電子写真感光体 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002023395A JP2002023395A (ja) | 2002-01-23 |
JP3910005B2 true JP3910005B2 (ja) | 2007-04-25 |
Family
ID=18705723
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2000209293A Expired - Fee Related JP3910005B2 (ja) | 2000-07-11 | 2000-07-11 | 電子写真感光体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3910005B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4192713B2 (ja) * | 2003-07-25 | 2008-12-10 | 富士ゼロックス株式会社 | アリールアミン化合物、電荷輸送材料、電子写真感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジ |
JP2007093764A (ja) * | 2005-09-27 | 2007-04-12 | Kyocera Mita Corp | フェニレンジアミン化合物および電子写真感光体 |
WO2008058951A1 (de) | 2006-11-15 | 2008-05-22 | Basf Se | Verfahren zur enzymatischen reduktion von alkenderivaten |
JP2014160239A (ja) * | 2013-01-28 | 2014-09-04 | Canon Inc | 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 |
Family Cites Families (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0736203A (ja) * | 1993-07-19 | 1995-02-07 | Dainippon Ink & Chem Inc | 電子写真感光体 |
JP3582298B2 (ja) * | 1997-05-14 | 2004-10-27 | 三菱化学株式会社 | 電子写真感光体 |
JPH11305460A (ja) * | 1998-04-21 | 1999-11-05 | Mitsubishi Chemical Corp | 電子写真感光体 |
JPH11352709A (ja) * | 1998-06-04 | 1999-12-24 | Mitsubishi Chemical Corp | 電子写真感光体 |
JP4136209B2 (ja) * | 1998-07-31 | 2008-08-20 | キヤノン株式会社 | 電子写真装置 |
-
2000
- 2000-07-11 JP JP2000209293A patent/JP3910005B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2002023395A (ja) | 2002-01-23 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5888661B2 (ja) | 電子写真感光体及び電子写真装置 | |
TW382078B (en) | Electrophotographic photosensitive member, electrophotographic apparatus including same and electrophotographic apparatus unit | |
EP0823668B1 (en) | Electrophotographic photosensitive member, and process cartridge and electrophotographic apparatus utilizing the same | |
JP2004045996A (ja) | 電子写真方法及び電子写真画像形成装置 | |
JP3868180B2 (ja) | 電子写真感光体 | |
JP4019809B2 (ja) | 電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP3910005B2 (ja) | 電子写真感光体 | |
JP2007293372A (ja) | 電子写真感光体及び電子写真方法 | |
JP4010739B2 (ja) | 電子写真感光体及び電子写真方法 | |
JP3785021B2 (ja) | 電子写真感光体 | |
JP3785019B2 (ja) | 電子写真感光体 | |
JP2004045997A (ja) | 電子写真方法及び電子写真画像形成装置 | |
JP5718413B2 (ja) | 電子写真感光体及びそれを用いた画像形成装置 | |
JP5655490B2 (ja) | 電子写真感光体、該感光体を用いた画像形成装置、および電子写真カートリッジ | |
US8722289B2 (en) | Electrophotographic photoreceptor and image-forming apparatus | |
JP2005049470A (ja) | 電子写真感光体 | |
JP2005292821A (ja) | 電子写真感光体、該感光体を用いた画像形成装置、およびカートリッジ | |
JP2001350282A (ja) | 電子写真感光体 | |
JP3890276B2 (ja) | 電子写真感光体、プロセスカ―トリッジおよび電子写真装置 | |
JP2019139041A (ja) | 電子写真感光体及び電子写真画像形成装置 | |
JPH10104860A (ja) | 電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP4389349B2 (ja) | 電子写真感光体 | |
EP1262841A1 (en) | Electrophotographic apparatus, process cartridge and electrophotosensitive member | |
JP2002023393A (ja) | 電子写真感光体 | |
JPH05232718A (ja) | 電子写真感光体 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040521 |
|
RD02 | Notification of acceptance of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422 Effective date: 20050118 |
|
RD02 | Notification of acceptance of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422 Effective date: 20041215 |
|
A072 | Dismissal of procedure |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A073 Effective date: 20050428 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060207 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060410 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060530 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060727 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20070123 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20070123 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100202 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110202 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120202 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120202 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130202 Year of fee payment: 6 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |