JP3582298B2 - 電子写真感光体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真感光体に関するものである。さらに詳しくは有機系の光導電性物質を含有する感光層を有する、非常に高感度でかつ高性能の電子写真感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真感光体の感光層にはセレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛等の無機系の光導電性物質が広く用いられていた。しかしながら、セレン、硫化カドミウムは毒物として回収が必要であり、セレンは熱により結晶化するための耐熱性に劣り、硫化カドミウム、酸化亜鉛は耐湿性に劣り、また酸化亜鉛は耐刷性がないなどの欠点を有しており、新規な感光体の開発の努力が続けられている。最近は、有機系の光導電性物質を電子写真感光体の感光層に用いる研究が進み、そのいくつかが実用化された。有機系の光導電性物質は無機系のものに比し、軽量である、成膜が容易である、感光体の製造が容易である、種類によっては透明な感光体を製造できる、材料が無公害である等の利点を有する。
【0003】
最近は、電荷キャリヤーの発生と移動の機能を別々の化合物に分担させる、いわゆる機能分離型の感光体が高感度化に有効であることから、開発の主流となっており、このタイプによる有機系感光体の実用化も行なわれている。
電荷キャリヤー移動媒体としては、ポリビニルカルバゾールなどの高分子光導電性化合物を用いる場合と低分子光導電性化合物をバインダーポリマー中に分散溶解する場合とがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特に、有機系の低分子光導電性化合物は、バインダーとして皮膜性、可とう性、接着性などのすぐれたポリマーを選択することができるので容易に機械的特性の優れた感光体を得ることができる(例えば、特開昭60−196767号公報、特開昭60−218652号公報、特開昭60−233156号公報、特開昭63−48552号公報、特開平1−267552号公報、特公平3−39306号公報、特開平3−113459号公報、特開平3−123358号公報、特開平3−149560号公報等参照)。しかしながら、高感度な感光体を作るのに適した化合物を見出すことが困難であった。
【0005】
更に、絶え間ない高感度化の要請の中で、電気特性的には残留電位が不十分、光応答性が悪い、繰り返し使用した場合帯電性が低下し、残留電位が蓄積する等種々の問題を抱えており、こうした問題に対し、例えば特定の2種類のヒドラゾン化合物を併用し、感光体の他の特性をあまり損わずに残留電位上昇を防止する技術(特開昭61−134767号公報)等が報告されている。しかしながら、特性のバランスの点では必ずしも十分ではなく、感光体全体としての特性をバランスよく向上させる技術が求められていた。
更に又、光源として半導体レーザーがプリンター分野において積極的に応用されてきており、この場合該光源の波長は800nm前後である事から800nm前後の長波長光に対しても高感度な特性を有する感光体の開発が強く望まれている。
【0006】
この目的に合致する材料として特開昭59−49544号公報、特開昭59−214034号公報、特開昭61−109056号公報、特開昭61−171771号公報、特開昭61−217050号公報、特開昭61−239248号公報、特開昭62−67094号公報、特開昭62−134651号公報、特開昭62−275272号公報、特開昭63−198067号公報、特開昭63−198068号公報、特開昭63−210942号公報、特開昭63−218768号公報、特開昭62−36674号公報、特開平7−36203号公報、特開平6−110228号公報、特開平6−11854号公報、特開昭63−48553号公報等に記載された材料が挙げられ、それぞれ電子写真感光体用材料として好適な結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニン類が種々知られている。しかしながら、更に、長波長光に対して高感度でかつ他の電気特性も良好な電子写真感光体が求められていた。
【0007】
本発明は上述の問題点を解決するためになされたものでありその目的は、高感度、特に800nm前後の長波長においても高感度であって、膜厚を厚くした場合においても残留電位が充分低く、繰り返し使用しても特性の変動が少なく、かつ耐久性に非常に優れた電子写真感光体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの目的を満足しえる有機系の低分子光導電性化合物について鋭意研究したところ特定のアリールアミン系化合物が好適であることを見い出し、本発明に到った。
即ち、本発明の要旨は、導電性支持体上に、下記一般式〔1〕
【0009】
【化4】
Figure 0003582298
【0010】
(一般式〔1〕中、R、R、R、R、R、及びRは、それぞれ、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、又は、置換アミノ基を表わし、これらは互いに同一でも異なっていてもよく、k、l、m、n、o、及びpは、それぞれ、0ないし4の整数を表わし、2以上の整数の場合に、複数存在するR〜Rのそれぞれは、同一でも異なっていてもよく、Xは、下記一般式〔2〕
【0011】
【化5】
Figure 0003582298
【0012】
、また、X、X、及びXは、下記一般式〔2′〕
【0013】
【化6】
Figure 0003582298
【0014】
(一般式〔2〕、〔2′〕中、iは1以上の整数を表わし、hは0以上の整数を表わし、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、及びR16は、それぞれ、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、又は、置換基を有してもよい複素環基を表わし、これらは互いに同一でも異なっていてもよく、ただしR10とR11からなる対、又はR15とR16からなる対は、それぞれにおけるどちらか一方が水素原子またはアルキル基のときは、もう一方はアリール基、又は、複素環基であり、もしくはR10とR11からなる対、又はR15とR16からなる対は縮合して、炭素環基または、複素環基を形成していてもよく、iが2以上の場合、それぞれのRとRは同一でも異なっていてもよく、hが2以上の場合、それぞれのR12とR13は同一でも異なっていてもよい。)でそれぞれ示される基を表わし、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、a、b、c、及びdは、それぞれ1または2の整数を表わす。)
で表わされるアリールアミン系化合物を含有する感光層を有することを特徴とする電子写真感光体にある。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の電子写真感光体は、感光層中に前記一般式〔1〕で表わされるアリールアミン系化合物を含有する。
前記一般式〔1〕中、R、R、R、R、R、及びRは、それぞれ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子と等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、ピレニル基等のアリール基、ジメチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基、ジベンジルアミノ基等のジアラルキルアミノ基、ジピリジルアミノ基等のジ複素環アミノ基、ジアリルアミノ基、又、上記のアミノ基の置換基を組み合わせたジ置換アミノ基等の置換アミノ基を表わし、これらは互いに同一でも異なっていてもよく、特に、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0016】
これらのアルキル基、アルコキシ基、アリール基は置換基を有していてもよく、置換基としては、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等のアルコキシ基、アリル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールビニル基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基、ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基等のジ複素環アミノ基、ジアリルアミノ基、又、上記のアミノ基の置換基を組み合わせたジ置換アミノ基等の置換アミノ基等があげられ、これらの置換基はお互いに縮合して、単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基等を介した炭素環基、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む複素環基を形成してもよい。
また、k、l、m、n、o、及びpはそれぞれ0ないし4の整数を表わし、0または1の数が好ましい。
一般式〔1〕中、Xは、下記一般式〔2〕
【0017】
【化7】
Figure 0003582298
【0018】
で示される基を表わし、X、X、及びXは、下記一般式〔2′〕
【0019】
【化8】
Figure 0003582298
【0020】
で示される基を表わし、これらはそれぞれ、同一でも異なっていてもよく、a、b、c、及びdは、それぞれ1または2の整数を表わす。一般式〔2〕、〔2′〕中、i及びhは何れも1である。R7 、R8 、R9 、R10、R11、R12、R13、R14、R15、及びR16は、それぞれ水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基等のアリール基、ピロリル基、チエニル基、フリル基、カルバゾリル基等の複素環基等を表わし、これらは、互いに同一でも異なっていてもよい。ただしR10とR11からなる対、又はR15とR16からなる対は、それぞれにおけるどちらか一方が水素原子またはアルキル基のときは、もう一方はアリール基、又は、複素環基である。複素環基はとくに芳香族性をもつ複素環基が好ましい。
【0021】
これらのアルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基は置換基を有していてもよく、置換基としては、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等のアルコキシ基、アリル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールビニル基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基、ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基等のジ複素環アミノ基、ジアリルアミノ基、又、上記のアミノ基の置換基を組み合わせたジ置換アミノ基等の置換アミノ基等があげられ、これらの置換基はお互いに縮合して、単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基等を介した炭素環基、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む複素環基等を形成してもよい。
【0022】
また、R 10とR11からなる対、又はR15とR16からなる対は、縮合して、単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基等を介した炭素環基、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む複素環基を形成してもよく、さらにそれらの環は、置換基を有していても良く、置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子等があげられる。以下に、一般式〔1〕で表わされるアリールアミン系化合物についてその代表例を挙げるが、これら代表例は例示の為に示したものであって本発明に用いるアリールアミン系化合物はこれら代表例に限定されるものではない。
【0023】
▲1▼ 下記構造
【0024】
【化9】
Figure 0003582298
【0025】
を基本骨格とする化合物として、次表1に示すNo.1〜11のものが挙げられる。
【0026】
【表1】
Figure 0003582298
【0027】
▲2▼ 下記構造
【0028】
【化10】
Figure 0003582298
【0029】
を基本骨格とする化合物として、次表2に示すNo.12〜22のものが挙げられる。
【0030】
【表2】
Figure 0003582298
【0031】
▲3▼ 下記構造
【0032】
【化11】
Figure 0003582298
【0033】
を基本骨格とする化合物として、次表3に示すNo.23〜33のものが挙げられる。
【0034】
【表3】
Figure 0003582298
【0035】
▲4▼ 下記構造
【0036】
【化12】
Figure 0003582298
【0037】
を基本骨格とする化合物として、次表4に示すNo.34〜44のものが挙げられる。
【0038】
【表4】
Figure 0003582298
【0039】
▲5▼ 下記構造
【0040】
【化13】
Figure 0003582298
【0041】
を基本骨格とする化合物として、次表5に示すNo.45〜55のものが挙げられる。
【0042】
【表5】
Figure 0003582298
【0043】
▲6▼ 下記構造
【0044】
【化14】
Figure 0003582298
【0045】
を基本骨格とする化合物として、次表6に示すNo.56〜66のものが挙げられる。
【0046】
【表6】
Figure 0003582298
【0047】
尚、前記表1〜6におけるX〜Xを表わすS1〜S13は、それぞれ、以下に記す基を表わす。
S1;
【0048】
【化15】
Figure 0003582298
【0049】
S2;
【0050】
【化16】
Figure 0003582298
【0051】
S3;
【0052】
【化17】
Figure 0003582298
【0053】
S4;
【0054】
【化18】
Figure 0003582298
【0055】
S5;
【0056】
【化19】
Figure 0003582298
【0057】
S6;
【0058】
【化20】
Figure 0003582298
【0059】
S7;
【0060】
【化21】
Figure 0003582298
【0061】
S8;
【0062】
【化22】
Figure 0003582298
【0063】
S9;
【0064】
【化23】
Figure 0003582298
【0065】
S10;
【0066】
【化24】
Figure 0003582298
【0067】
S11;
【0068】
【化25】
Figure 0003582298
【0069】
S12;
【0070】
【化26】
Figure 0003582298
【0071】
S13;
【0072】
【化27】
Figure 0003582298
【0073】
前記一般式〔1〕で表わされるアリールアミン系化合物は、公知の方法を用いて、製造できる。
例えば、公知のアリールアミン系化合物を原料として用いて、公知なカルボニル導入反応を行い、次いで、Wittig反応を行うことにより、目的の化合物を得る方法である。この方法を詳しく説明するとまず、下記のように、
【0074】
【化28】
Figure 0003582298
【0075】
1)R=Hの場合
一般式〔3〕(一般式〔3〕、および〔4〕中、R、R、R、R、R、R、R、X、X、k、l、m、n、o、c、及びdは、一般式〔1〕におけるものと同一の意義を有する。)で表わされるアリールアミン系化合物をオキシ塩化リンの存在下に、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド等のホルミル化剤と反応させる一般式〔4〕で示されるアルデヒド体が得られる。この場合、ホルミル化剤を大過剰に用いて、反応溶媒を兼ねることもできるが、O−ジクロロベンゼン、ベンゼン等の反応に不活性な溶媒を用いることもでき、
2)R≠Hの場合
一般式〔3〕で表わされるアリールアミン系化合物を塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化亜鉛等のルイス酸存在下、ニトロベンゼン、ジクロルメタン、四塩化炭素等の溶媒中、一般式Cl−CO−Rで表わされる酸塩化物と反応させることにより、一般式〔4〕で表わされるケトン体が得られる。
【0076】
次いで得られた一般式〔4〕で表わされるアルデヒド体又はケトン体と、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベンゼン、トルエン等の反応に不活性な公知の有機溶媒中、次の一般式〔5〕(一般式〔5〕中、R、R、R,R10、およびR11は一般式〔2〕におけるものと同一の意義を有し、またQは塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を示す。)で表わされるハロゲン化合物とトリフェニルホスフィンとを作用させるかまたは、上記ハロゲン化合物とトリアルコキシリン化合物とを作用させて得られるウィテッヒ試薬を、10〜200℃、好ましくは20〜100℃の温度で、ブチルリチウム、フェニルリチウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等の公知な塩基性触媒の存在下反応させることより一般式〔6〕で表わされる化合物が得られる。この時、シス体、トランス体およびシス体とトランス体の混合物のいずれかが得られる。(本発明において、一般式〔1〕、〔6〕はシス体、トランス体およびシス体とトランス体の混合物のいずれかを表わす。)
〔6〕にさらに上記のようにカルボニル導入反応を行い、一般式〔7〕を合成し、次いで、上記のようにWittig反応を行うことにより、目的の化合物〔1〕を得ることができる。
【0077】
【化29】
Figure 0003582298
【0078】
【化30】
Figure 0003582298
【0079】
【化31】
Figure 0003582298
【0080】
これらの反応において場合によっては、各行程終了後、あるいは、全行程終了後、再結晶精製、再沈精製、昇華精製、カラム精製等の公知な精製手段により、高純度体を得ることも可能である。
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、上記一般式〔1〕で表わされるアリールアミン系化合物を1種、または、2種以上含有する感光層を有する。
【0081】
一般式〔1〕で表わされるアリールアミン系化合物は有機光導電体として極めて優れた性能を示す。特に、電荷輸送材料として用いた場合には高感度で耐久性に優れた感光体を与える。
電子写真感光体の感光層の形態としては、種々のものが知られているが、本発明の電子写真感光体の感光層(光導電層)としては、電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層したもの、あるいは、逆に積層したものである積層型、さらには電荷輸送媒体中に電荷発生材料(電荷発生物質)の粒子を分散したいわゆる分散型など、いずれの構成も用いることができる。
【0082】
たとえばバインダー樹脂中にアリールアミン系化合物と必要に応じ、増感剤となる色素や、電子吸引性化合物を添加した感光層、光を吸収する極めて高い効率で電荷キャリヤーを発生する電荷発生材料(光導電性粒子)と、アリールアミン系化合物をバインダー樹脂中に添加した感光層、アリールアミン系化合物とバインダー樹脂からなる電荷発生層と光を吸収すると極めて高い効率で電荷キャリヤーを発生する電荷発生材料からなるあるいはこれとバインダー樹脂からなる電荷発生層を積層した感光層等があげられる。
これらの感光層には、一般式〔1〕で表わされるアリールアミン化合物とともに有機光導電体、特に電荷輸送材料として優れた性能を有する公知の他のアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物を混合してもよい。
【0083】
本発明においては、上記一般式〔1〕で表わされる、アリールアミン系化合物を電荷発生層と電荷輸送層(電荷移動層)の2層からなる感光層の電荷輸送層中に用いる場合に、特に感度が高く、残留電位が小さく、かつ、繰り返し使用した場合に、表面電位の変動や感度の低下、残留電位の蓄積等が少なく、耐久性に優れた感光体を得ることができる。
具体的には通常、導電性支持体上に、電荷発生材料を直接蒸着あるいはバインダー樹脂との分散液として塗布して電荷発生層を形成し、その上に、前記アリールアミン系化合物を含む有機溶剤溶液をキャストするか、あるいは前記アリールアミン系化合物をバインダー樹脂等とともに溶解し、その分散液を塗布することにより、前記一般式〔1〕で表わされるアリールアミン系化合物を含む電荷輸送材料を含有する電荷輸送層を形成してなる積層型感光体であるが、電荷発生層と電荷輸送層の積層順序は逆の構成でも良い。
また電荷発生材料と電荷輸送材料とが、バインダー樹脂中に分散、溶解した状態で導電性支持体上に塗布した一層型感光体であってもよい。
【0084】
電荷発生材料としては、セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、硫化カドミウム、アモルファスシリコン等の無機光導電性粒子、無金属フタロシアニン、金属含有フタロシアニン、ペリノン系顔料、チオインジゴ、キナクリドン、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔料、アゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキス系アゾ顔料、シアニン系顔料等の有機光導電性粒子が挙げられる。更に、多環キノン、ピリリウム塩、チオピリリウム塩、インジゴ、アントアントロン、ピラントロン等の各種有機顔料、染料が使用できる。中でも無金属フタロシアニン、銅、塩化インジウム、塩化ガリウム、錫、オキシチタニウム、亜鉛、バナジウム等の金属又は、その酸化物、塩化物の配位したフタロシアニン類、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ、ポリアゾ類等のアゾ顔料が好ましい。特に、下記一般式〔9〕で表わされるカップラー成分を分子内に有するアゾ顔料が好ましい。
【0085】
【化32】
Figure 0003582298
【0086】
一般式〔9〕において、Bは、芳香族炭化水素の2価基、または、窒素原子を環内に含む複素環の2価基を示す。芳香族炭化水素の2価基としては、例えば、O−フェニレン基等の単環式芳香族炭化水素の2価基、O−ナフチレン基、Peri−ナフチレン基、1,2−アントラキノニレン基、9,10−フェナントリレン基等の縮合多環式芳香族炭化水素の2価基等が挙げられる。
また、窒素原子を環内に含む複素環の2価基としては、例えば、3,4−ピラゾールジイル基、2,3−ピリジンジイル基、4,5−ピリミジンジイル基、6,7−インダゾールジイル基、5,6−ベンズイミダゾールジイル基、6,7−キノリジジイル基等の5〜10員環の窒素原子、好ましくは、2個以下の窒素原子を環内に含む複素環の2価基等が挙げられる。
【0087】
これら芳香族炭化水素の2価基および窒素原子を環内に含む複素環の2価基は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、弗素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、カルボキシル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、フェノキシ基等のアリーロキシ基、ベンジルオキシ基、フェニロキシカルボニル基等のアリーロキシカルボニル基等が挙げられる。
【0088】
また、金属含有又は無金属フタロシアニンとの組み合わせにおいて、レーザー光に対する感度が向上した感光体が得られ、特に、導電性支持体上に、少なくとも、電荷発生材料と電荷輸送材料とを含有する感光層を有する電子写真感光体において、該電荷発生材料として、X線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンを含有し、該電荷輸送材料として、前記一般式〔1〕で示されるアリールアミン系化合物を含有する電子写真感光体が好ましい。
【0089】
このようにして得られる電子写真感光体は高感度で、残留電位が低く帯電性が高く、かつ、繰返しによる変動が小さく、特に、画像濃度に影響する帯電安定性が良好であることから、高耐久性感光体として用いることができる。又750〜850nmの領域の感度が高いことから、特に半導体レーザープリンター用感光体に適している。
【0090】
電荷発生材料として使用されるオキシチタニウムフタロシアニンはそのX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に主たる回折ピークを有する。前記の「主たる回折ピーク」とは、そのX線回折スペクトルにおける強度が一番強い(高い)ピークを指す。
使用されるオキシチタニウムフタロシアニンの粉末X線スペクトルは、ブラック角(2θ±0.2°)27.3°の回折ピークが主たるピークであり、そのピーク以外は細かい条件によって種々ふれ、その他9.5°、24.1°等にピークを有する。しかし、27.3°のピーク強度に対していずれのピークもその強度(ピーク高さの比較)は50%以下であるものが、電子写真感光体としての帯電性、感度等の点から好ましい。
【0091】
また、本発明では他のオキシチタニウムフタロシアニンも使用でき、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.3°、13.2°、26.2°及び27.1°に強い回折ピークを有するA型、7.6°、22.5°、25.5°及び28.6°に強い回折ピークを有するB型等も使用し得る。
【0092】
前記のX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン粒子はバインダー樹脂および必要に応じ他の有機光導電性化合物、色素、電子吸引性化合物等と共に溶剤に溶解あるいは分散し、こうして得られる塗布液を塗布乾燥して電荷発生層を得る。例えば前記のX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンとX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)9.3°、13.2°、26.2°および27.1°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンとを用いること、又は前記のX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンとX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)8.5°、12.2°、13.8°、16.9°、22.4°、28.4°および30.1°に主たる回折ピークを示すジクロロスズフタロシアニンとを用いることは好ましい。
【0093】
本発明においては、場合により染料、色素を添加してもよく、これら染料、色素としては、例えばメチルバイオレット、ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレット等のトリフェニルメタン染料、メチレンブルーなどのチアジン染料、キニザリン等のキノン染料及びシアニン染料やビリリウム塩、チアビリリウム塩、ベンゾビリリウム塩等が挙げられる。また、アリールアミン系化合物と電荷移動錯体を形成する電子吸引性化合物としては、例えばクロラニル、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、1−ニトロアントラキノン、1−クロロ−5−ニトロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類、4−ニトロベンズアルデヒド等のアルデヒド類、9−ベンゾイルアントラセン、インダンジオン、3,5−ジニトロベンゾフェノン、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、3,3′,5,5′−テトラニトロベンゾフェノン等のケトン類、無水フタル酸、4−クロロナフタル酸無水物等の酸無水物、テトラシアノエチレン、テレフタラルマロノニトリル、9−アントリルメチリデンマロノニトリル、4−ニトロベンザルマロノニトリル、4−(p−ニトロベンゾイルオキシ)ベンザルマロノニトリル等のシアノ化合物、3−ベンザルフタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)フタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等のフタリド類等の電子吸引性化合物が挙げられる。
【0094】
更に、本発明の電子写真感光体の感光層は成膜性、可撓性、機械的強度を向上させるために周知の可塑剤を含有していてもよい。そのために添加する可塑剤としては、フタル酸エステル、りん酸エステル、エポキシ化合物、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸エステル、メチルナフタレンなどの芳香族化合物などが挙げられる。アリールアミン系化合物を電荷輸送層中の電荷輸送材料として用いる場合の塗布液は、前記組成のものでもよいが、光導電性粒子、染料色素、電子吸引性化合物等は除くか、少量の添加でよい。この場合の電荷発生層としては上記光導電性粒子と必要に応じバインダー樹脂ポリマーや他の有機光導電性物質、染料色素、電子吸引性化合物等の溶媒に溶解乃至分散させて得られる塗布液を塗布乾燥した薄層、あるいは前記光導電性粒子を蒸着等の手段により製膜とした層が挙げられる。
【0095】
塗布液調製用の溶剤としてはテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、酢酸エチル、蟻酸メチル、メチルセロソルブアセテート等のエステル類、ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素などのアリールアミン系化合物を溶解させる溶剤が挙げられる。勿論これらの中からバインダー樹脂を溶解するものを選択する必要がある。
【0096】
積層型感光層における電荷発生層は電荷発生材料その他の微粒子を、例えばポリビニルアセテート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルフロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテルなどの各種バインダー樹脂で結着した形の分散層で使用してもよい。更に、バインダー樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリアミド、けい素樹脂等が挙げられる。この場合の電荷発生材料(電荷発生物質)の使用比率はバインダー樹脂100重量部に対して通常20から2000重量部、好ましくは30から500重量部の範囲より使用され、電荷発生層の膜厚は通常0.05〜5μm、好ましくは0.1μmから2μm、より好ましくは0.15μmから0.8μmが好適である。また電荷発生層は必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。更にまた電荷発生層は上記電荷発生材料の蒸着膜であってもよい。
【0097】
積層型感光層の場合の電荷輸送層に使用されるバインダー樹脂、あるいは分散型感光層の場合のマトリックスとして使用されるバインダー樹脂としては、電荷輸送材料との相溶性が良く、塗膜形成後に電荷輸送材料が結晶化したり、相分離することのないポリマーが好ましく、例えば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ブタジエン等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロースエステル、セルロースエーテル、フェノキシ樹脂、けい素樹脂、エポキシ樹脂等の各種ポリマーが挙げられ、またこれらの部分的架橋硬化物も使用できる。バインダー樹脂の使用量は通常アリールアミン系化合物に対し、0.5〜30重量倍、好ましくは0.7〜10重量倍の範囲である。
【0098】
積層型感光層の場合の電荷輸送層には、必要に応じて酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤並びに他の電荷輸送材料を含んでいてもよい。電荷輸送層の膜厚は通常、10〜60μm、好ましくは10〜45μm、更に好ましくは27〜40μmの厚みで使用されるのがよい。最表面層として従来公知の例えば熱可塑性或いは熱硬化性ポリマーを主体とするオーバーコート層を設けても良い。通常は、電荷発生層の上に電荷輸送層を形成するが、逆も可能である。各層の成形方法としては、層に含有させる物質を溶剤に溶解又は分解させて得られた塗布液を順次塗布するなどの公知の方法が適用できる。電荷輸送層にはこの他に、塗膜の機械的強度や、耐久性向上のための種々の添加剤を用いることができる。このような添加剤としては、周知の可塑剤や、種々の安定剤、流動性付与剤、架橋剤等が挙げられる。
【0099】
分散型感光層の場合の電荷発生材料の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生材料の量は例えば0.5〜50重量%の範囲であるが少なすぎると充分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下などの弊害があり、より好ましくは1〜20重量%の範囲で使用される。
分散型感光層の膜厚は通常5〜50μm、より好ましくは10〜45μmで使用される。またこの場合には成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、例えばシリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤が添加されていても良い。
【0100】
感光層の塗布方法としては、スプレー塗布法、スパイラル塗布法、リング塗布法、浸漬塗布法等がある。
スプレー塗布法としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等があるが、均一な膜厚を得るための微粒化度、付着効率等を考えると回転霧化式静電スプレーにおいて、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、すなわち円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を空けることなく連続して搬送することにより、総合的に高い付着効率で膜厚の均一性に優れた電子写真感光体を得ることができる。
スパイラル塗布法としては、特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機またはカーテン塗布液を用いた方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗料を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を用いた方法等がある。
以下、浸漬塗布法について説明する。
前述した一般式〔1〕で示されるアリールアミン系化合物、バインダー樹脂、溶剤等を用いて好適な全固形分濃度が25%以上であってより好ましくは40%以下の、かつ粘度が通常50センチポアーズ以上、300センチポアーズ以下、好ましくは100センチポアーズ以上、200センチポアーズ以下の電荷輸送層形成用の塗布液を調整する。ここで実質的に塗布液の粘度はバインダー樹脂の種類及びその分子量により決まるが、あまり分子量が低い場合にはポリマー自身の機械的強度が低下するためこれを損わない程度の分子量を持つバインダー樹脂を使用することが好ましい。このようにして調整された塗布液を用いて浸漬塗布法により電荷輸送層が形成される。
その後塗膜を乾燥させ、必要且つ充分な乾燥が行われるように乾燥温度時間を調整すると良い。乾燥温度は通常100〜250℃好ましくは、110〜170℃さらに好ましくは、120〜140℃の範囲である。乾燥方法としては、熱風乾燥器、蒸気乾燥器、赤外線乾燥器及び遠赤外線乾燥機等を用いることができる。
【0101】
このようにして形成される感光体にはまた、必要に応じ、バリアー層、接着層、ブロッキング層等の中間層、透明絶縁層、あるいは保護層など、電気特性、機械特性の改良のための層を有していてもよいことはいうまでもない。感光層が形成される導電性支持体としては周知の電子写真感光体に採用されているものがいずれも使用できる。具体的には例えばアルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料からなるドラム、シートあるいはこれらの金属箔のラミネート物、蒸着物、あるいは表面にアルミニウム、銅、パラジウム、酸化すず、酸化インジウム等の導電性層を設けたポリエステルフィルム、紙等の絶縁性支持体が挙げられる。更に、金属粉末、カーボンブラック、ヨウ化銅、高分子電解質等の導電性物質を適当なバインダー樹脂とともに塗布して導電処理したプラスチックフィルム、プラスチックドラム、紙、紙管等が挙げられる。また、金属粉末、カーボンブラック、炭素繊維等の導電性物質を含有し、導電性となったプラスチックのシートやドラムが挙げられる。又、酸化スズ、酸化インジウム等の導電性金属酸化物で導電処理したプラスチックフィルムやベルトが挙げられる。
【0102】
なかでも、アルミニウム等の金属のエンドレスパイプが好ましい支持体である。
バリアー層、中間層としては、例えばアルミニウム陽極酸化被膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機層、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、等の有機層が使用される。
【0103】
【実施例】
つぎに、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の製造例、実施例に限定されるものではない。なお、実施例中「部」とあるは「重量部」を示す。
(製造例)
【0104】
【化33】
Figure 0003582298
【0105】
上記式で表わされる化合物10gをジメチルホルムアミド50mlに溶解させ、40℃まで加熱したオキシ塩化リン5.6gを少しずつ滴下した(発熱有40〜70℃)。反応液を70±5℃にコントロールしながら、3時間攪拌した。40℃まで放冷したのち反応液をNaOH水溶液(水100ml、氷50g、NaOH20g)中に少しずつ放出した。溶液を2時間攪拌した後、減圧ろ過した。ろ別した固体を水10mlで2回懸洗した後、ジメチルホルムアミド20mlに溶解し、メタノール30mlに放出して下記構造式で表わされる黄色固体のビスホルミル化合物9.1g(85%)を得た。
【0106】
【化34】
Figure 0003582298
【0107】
得られたビスホルミル化合物5gと、シンナミルトリフェニルホスホニウムブロミド5.5gをテトラヒドロフラン30mlに溶解した。反応液を20±5℃で保ちながら、ナトリウムメチラートメタノール28%溶液4gを、少しずつ添加した(発熱有)。2時間攪拌後、反応液をメタノール150mlに放出した。析出した沈殿を濾過し、乾燥させて、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製した後、メタノールで晶析し、黄色固体4.1g(66%)を得た。
この化合物は次表7の元素分析値および、赤外吸収スペクトル図(図1)により、前記化合物No.14の構造式で表わされる下記構造のアリールアミン系化合物であることが判明した。
【0108】
【表7】
Figure 0003582298
【0109】
【化35】
Figure 0003582298
【0110】
(実施例1)
X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.3°、10.6°、13.2°、15.1°、15.7°、16.1°、20.8°、23.3°、27.1°に強い回折ピークを示すチタニウムオキシフタロシアニン顔料1.0部をジメトキシエタン14部に加え、サンドグラインダーで分散処理をした後、ジメトキシエタン14部と4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2を14部加え希釈し、さらに、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)社製、商品名デンカブチラール#6000−C)0.5部と、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド(株)社製、商品名UCAR(商標登録)PKHH)0.5部をジメトキシエタン6部、4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2が6部の混合溶媒に溶解した液と混合し、分散液を得た。この分散液を75μmに膜厚のポリエステルフィルムに蒸着されたアルミ蒸着層の上に乾燥後の重量が0.4g/mになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成させた。
この上に製造例で製造したアリールアミン系化合物70部と下記に示す構成単位のポリカーボネート樹脂
【0111】
【化36】
Figure 0003582298
【0112】
100部をテトラヒドロフラン900部に溶解した塗布液を塗布、乾燥し、膜厚20μmの電荷輸送層を形成させた。
このようにして得た2層からなる感光層を有する電子写真感光体によって感度、すなわち半減露光量を測定したところ0.45μJ/cmであった。半減露光量はまず、感光体を暗所で50μAのコロナ電流により負帯電させ、次いで20ルックスの白色光を干渉フィルターに通して得られた780nmの光(露光エネルギー10μW/cm)で露光し、表面電位が−450Vから−225Vまで減衰するのに要する露光量を測定することにより求めた。さらに露光時間を9.9秒とした時の表面電位を残留電位として測定したところ、1Vであった。この操作を2000回繰り返したが、残留電位の上昇はみられなかった。又、電荷輸送層の電場2e+5 V/cm、21±1℃におけるホールドリフト移動度をTOF法により測定したところ、3.7e−5 cm/Vであった。
【0113】
(比較例1)
実施例1で用いたアリールアミン系化合物の代わりに、下記に示す比較化合物を用いる以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
【0114】
【化37】
Figure 0003582298
【0115】
次いで実施例1と同様にして感度、残留電位、移動度を測定した。結果は、それぞれ、0.47μJ/cm、19V、及び1.1e−5 cm/Vであった。
【0116】
(比較例2)
実施例1で用いたアリールアミン系化合物の代わりに、下記に示す比較化合物を用いる以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
【0117】
【化38】
Figure 0003582298
【0118】
次いで実施例1と同様にして感度、残留電位、移動度を測定した。結果は、それぞれ、0.50μJ/cm、54V、1.7e−6 cm/Vであった。
【0119】
(比較例3)
実施例1で用いたアリールアミン系化合物の代わりに、下記に示す比較化合物を用いる以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
【0120】
【化39】
Figure 0003582298
【0121】
次いで実施例1と同様にして感度、残留電位、移動度を測定した。結果は、それぞれ、0.42μJ/cm、2V、5.2e−6 cm/Vであった。
これらの結果より、明らかに実施例1の化合物は比較例1、2、3の化合物に比べ、特に移動度に優れている。
又、感度、残留電位においても、優れていることがわかる。
【0122】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体は移動度が非常に高く、かつ、かぶりの原因となる残留電位が小さく、とくに光疲労が少ないために繰返し使用による残留電位の蓄積や、表面電位および感度の変動が小さく耐久性に優れるという特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造例で得られたアリールアミンヒドラゾン系化合物の赤外吸収スペクトル図。

Claims (5)

  1. 導電性支持体上に、下記一般式〔1〕
    Figure 0003582298
    (一般式〔1〕中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、及びR6 は、それぞれ、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、又は、置換アミノ基を表わし、これらは互いに同一でも異なっていてもよく、k、l、m、n、o、及びpは、それぞれ、0ないし4の整数を表わし、2以上の整数の場合に、複数存在するR1 〜R6 のそれぞれは、同一でも異なっていてもよく、X1 は、下記一般式〔2〕
    Figure 0003582298
    、また、X2 、X3 、及びX4 は、下記一般式〔2′〕
    Figure 0003582298
    (一般式〔2〕、〔2′〕中、i=h=1であり、R7 、R8 、R9 、R10、R11、R12、R13、R14、R15、及びR16は、それぞれ、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、又は、置換基を有してもよい複素環基を表わし、これらは互いに同一でも異なっていてもよく、ただしR10とR11からなる対、又はR15とR16からなる対は、それぞれにおけるどちらか一方が水素原子またはアルキル基のときは、もう一方はアリール基、又は、複素環基であり、もしくはR10とR11からなる対、又はR15とR16からなる対は縮合して、炭素環基または、複素環基を形成していてもよい。)でそれぞれ示される基を表わし、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、a、b、c、及びdは、それぞれ1または2の整数を表わす。)で表わされるアリールアミン系化合物を含有する感光層を有することを特徴とする電子写真感光体。
  2. 感光層が、電荷輸送材料と電荷発生材料を含み、電荷輸送材料として前記一般式〔1〕のアリールアミン系化合物を含有する請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 電荷発生材料としてX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン、または、(2θ±0.2°)9.3°、13.2°、26.2°、および27.1°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンを含有する請求項2に記載の電子写真感光体。
  4. 感光層が、電荷発生材料を含む電荷発生層と、電荷輸送材料を含む電荷輸送層からなる請求項2または3に記載の電子写真感光体。
  5. 750〜800nmの領域の光で露光することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
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