JP3748348B2 - 電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真用感光体に関するものである。さらに詳しくは有機系の光導電性物質を含有する感光層を有する非常に高感度かつ高性能で生産性のよい電子写真用感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真感光体として、電荷キャリヤーの発生と移動の機能を別々の化合物に分担させる、いわゆる機能分離型の感光体が開発の主流となっており、このタイプによる有機系感光体の実用化も行なわれている。
電荷キャリヤー輸送媒体としては、ポリビニルカルバゾールなどの高分子電荷輸送性化合物を用いる場合と低分子電荷輸送性化合物をバインダーポリマー中に分散又は溶解する場合とがある。
【0003】
特に、有機系の低分子電荷輸送性化合物は、バインダーとして皮膜性、可とう性、接着性などのすぐれたポリマーを選択することができるので容易に機械的特性の優れた感光体を得ることができる(例えば、特開昭60−196767号公報、特開昭60−218652号公報、特開昭60−233156号公報、特開昭63−48552号公報、特開平1−267552号公報、特公平3−39306号公報、特開平3−113459号公報、特開平3−123358号公報、特開平3−149560号公報、特開平6−273950号公報、特開昭62−36674号公報、特開平7ー036203号公報、特開平ー6ー11854、特開昭63−48553号公報、等参照)。しかしながら、より高感度な感光体が望まれていた。
【0004】
更に、絶え間ない高感度化の要請の中で、電気特性的には残留電位が不十分、光応答性が悪い、繰り返し使用した場合帯電性が低下し、残留電位が蓄積する等種々の問題を抱えており、こうした問題に対し、例えば特定の2種類のヒドラゾン化合物を併用し、感光体の他の特性をあまり損わずに残留電位上昇を防止する技術(特開昭61−134767号公報)等が報告されている。しかしながら、特性のバランスの点では必ずしも十分ではなく、感光体全体としての特性をバランスよく向上させる技術が求められていた。
【0005】
一方、光源として半導体レーザーがプリンター分野において積極的に応用されてきており、この場合該光源の波長は800nm前後である事から800nm前後の長波長光に対しても高感度な特性を有する感光体の開発が強く望まれている。
この目的に合致する材料として特開昭59−49544号公報、特開昭59−214034号公報、特開昭61−109056号公報、特開昭61−171771号公報、特開昭61−217050号公報、特開昭61−239248号公報、特開昭62−67094号公報、特開昭62−134651号公報、特開昭62−275272号公報、特開昭63−198067号公報、特開昭63−198068号公報、特開昭63−210942号公報、特開昭63−218768号公報等に記載された材料が挙げられ、それぞれ電荷発生剤として好適な結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニン類が種々知られている。電荷輸送剤としては、これらの新しい電荷発生剤と相性のよいものが望まれている。
また、特開平3−149560号公報、特開昭50−31773では、以下の化合物が高感度感光体用の電荷輸送材として、用いられている。
【0006】
【化2】
【0007】
しかしながら比較例に示す通り、THF 溶媒には極めて溶解性が悪く、公報中で使用されているような、クロロホルム等のハロゲン系溶媒にしか溶解しない。しかし、このクロロホルムは現在、哺乳類に対する癌原性が認められていること等の問題を抱えている。そこで、より毒性の低く、より害の少ない溶媒に対する溶解性の高い電荷輸送材が求められていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであり、800nm前後の長波長においても高感度であり、キャリヤー移動度の速くかつ生産性の容易な写真用感光体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの目的を満足しえる有機系の低分子電荷輸送性化合物について鋭意研究したところ、連結部にブタジエン骨格等を有するアリールアミン系化合物の二量体が好適であることを見い出し、本発明にいたった。即ち、本発明の要旨は、導電性支持体上に、下記一般式[1]で表わされるアリールアミン系化合物を含有する感光体を有することを特徴とする電子写真感光体にある。
【0010】
【化3】
【0011】
(一般式[1]中、Ar1 及びAr4 は置換基を有してもよいアリーレン基を表わし、Ar2,Ar3,Ar5 及びAr6 は、置換基としてアルキル基、アルコキシ基もしくはアリール基を有しても良いアルキル基、アリール基、縮合多環基もしくは複素環基を表し(Ar1 ないしAr3 又は、Ar4 ないしAr6 は、お互いに結合して炭素環、複素環基を形成してもよい)、Xは二価の芳香族炭化水素残基、複素環残基又はビフェニレンを表わし(但し、R 2 およびR 7 については水素原子を除く。)、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 およびR8 は、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、シアノ基又はニトロ基を表わし、これらは互いに同一でも異なっていてもよく、n1 およびn2 はそれぞれ1ないし4の整数を表わす。)
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の電子写真感光体は、感光層中に前記一般式[1]で表わされるアリールアミン系化合物を含有する。
前記一般式[1]中、 R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 およびR8 は、それぞれ、水素原子;シアノ基;ニトロ基;メチル基、エチル基、プロピル、イソプロピル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ピレニル基等のアリール基;ピリジル基、チエニル基等の複素環基;等を示し、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。これらのうち、特に、水素原子、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0013】
これらのアルキル基、アリール基、複素環基は置換基を有していてもよく、置換基としては、水酸基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等のアルコキシ基;アリル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールビニル基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基、ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基等のジ複素環アミノ基;ジアリルアミノ基、又、上記のアミノ基の置換基を組み合わせたジ置換アミノ基等の置換アミノ基等があげられ、またこれらの置換基はお互いに縮合して、単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基等を介した炭素環基あるいは酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む複素環基を形成してもよい。
【0014】
これらの中で、特に、R2 、R7 は水素、置換基を有してもよいアリール基、又は、置換基を有しても良いアルキル基であることが、電気特性の面から好ましく、さらには、置換基を有しても良いフェニル基、置換基を有しても良いアルキル基であることが、合成時における中間体の安定性の点から、好ましい。
また、Ar1 及びAr4 は置換基を有してもよいアリーレン基を表わし、Ar2,Ar3, Ar5及びAr6 は、置換基としてアルキル基、アルコキシ基、もしくはアリール基を有しても良いアルキル基、アリール基、縮合多環基もしくは複素環基を表し、Ar1 ないしAr3 又は、Ar4 ないしAr6 は、お互いに、結合して炭素環、複素環基を形成してもよい。これらのうち、溶解性の点から、Ar1 ないしAr6 のうち少なくとも一つは、置換基を有することが好ましい。
【0015】
Ar1 及びAr4 の置換基としては、R1 〜R8 のアルキル基、アリール基もしくは複素環基上の置換基と同様なものが用いられ、特に、電気特性の点から、メチル基、フェニル基等は好ましい。
また、電気特性及び原料コストの点から、Ar1 及びAr4 は、置換基を有しても良いフェニレン基であることは好ましい。
また、電気特性及び原料コストの点からAr2,Ar3,Ar5 及びAr6 は、置換基としてアルキル基、アルコキシ基もしくはアリール基を有しても良いフェニル基である事は好ましく、さらには、置換基としてアルキル基、アルコキシ基もしくは、アリール基を有しても良いトリル基である事が好ましい。
【0016】
また、n1 およびn2 はそれぞれ1ないし4の整数を表わす。n1 及び/又はn2 が2以上の場合、各繰り返し単位が異なっていてもよい。例えば
【0017】
【化4】
【0018】
の場合、
【0019】
【化5】
【0020】
でR3 とR′3 とR4 とR′4 が異なるものも本発明に含まれる。
また、一般式[1]で表されるアリールアミン系化合物は左右対称のものでも非対称のものでもよいが、対称のものの方が合成しやすい。
以下に、一般式[1]で表わされる、アリールアミン系化合物についてその代表例を挙げるが、これら代表例は例示の為にしめされるのであって本発明に用いるアリールアミン系化合物はこれら代表例に限定されるものではない。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】
【表5】
【0026】
【表6】
【0027】
【表7】
【0028】
【表8】
【0029】
【表9】
【0030】
【表10】
【0031】
【表11】
【0032】
【表12】
【0033】
【表13】
【0034】
【表14】
【0035】
【表15】
【0036】
【表16】
【0037】
【表17】
【0038】
【表18】
【0039】
【表19】
【0040】
【表20】
【0041】
【表21】
【0042】
【表22】
【0043】
【表23】
【0044】
【表24】
【0045】
【表25】
【0046】
【表26】
【0047】
【表27】
【0048】
【表28】
【0049】
【表29】
【0050】
【表30】
【0051】
【表31】
【0052】
【表32】
【0053】
【表33】
【0054】
【表34】
【0055】
【表35】
【0056】
【表36】
【0057】
【表37】
【0058】
【表38】
【0059】
【表39】
【0060】
【表40】
【0061】
【表41】
【0062】
【表42】
【0063】
【表43】
【0064】
【表44】
【0065】
【表45】
【0066】
【表46】
【0067】
【表47】
【0068】
【表48】
【0069】
【表49】
【0070】
【表50】
【0071】
【表51】
【0072】
【表52】
【0073】
【表53】
【0074】
【表54】
【0075】
【表55】
【0076】
【表56】
【0077】
前記一般式[1]で表わされるアリールアミン系化合物は、公知の方法を用いて、製造できる。
例えば、公知のアリールアミン系化合物を原料として用いて、公知のカルボニル導入反応を行い、Wittig反応を行うことにより、目的の化合物を得る方法である。
この方法を詳しく説明すると、まず、下記のような反応を行い、アルデヒド体又はケトン体を合成する。
【0078】
【化6】
【0079】
1)R3 、R6 が水素原子の場合、
(以下Ar1 、Ar2 、Ar3 、Ar4 、Ar5 、Ar6 、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 、R8 、X、n1 、n2 は、それぞれ一般式[1]におけるものと同一の意義を有する。)
一般式[2]又は一般式[4]で表わされるアリールアミン系化合物をオキシ塩化リンの存在下に、N,Nージメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド等のホルミル化剤と反応させると一般式[3]又は一般式[5]で示されるアルデヒド体が得られる。
ホルミル化剤を大過剰に用いて、反応溶媒を兼ねることもできるが、Oージクロロベンゼン、ベンゼン等の反応に不活性な溶媒を用いることもできる。
【0080】
2)R3 、R8 が水素原子でない場合
一般式[2]又は一般式[4]で表わされるアリールアミン系化合物を塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化亜鉛等のルイス酸存在下、ニトロベンゼン、ジクロルメタン、四塩化炭素等の溶媒中、一般式Cl−CO−R3 又はCl−CO−R6 で表わされる酸塩化物と反応させることにより一般式[3]又は一般式[5]で表わされるケトン体が得られる。
次いで得られた、一般式[3]又は一般式[5]で表わされるアルデヒド体又はケトン体と、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベンゼン、トルエン等の反応に不活性な公知の有機溶媒中、一般式[6]
【0081】
【化7】
QR4 CH−X−CHR5 Q [6]
【0082】
(式中Qはハロゲン原子を示す)で表わされるハロゲン化合物とトリフェニルホスフィンとを作用させるかまたは、上記ハロゲン化合物とトリアルコキシリン化合物(R9 O)3 P(R9 はメチル基、メチル基等のアルキル基をあらわす。)とを作用させて得られるウィテッヒ試薬とを、10〜200℃好ましくは、20〜100℃の温度で、ブチルリチウム、フェニルリチウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtーブトキシド等の公知な塩基性触媒の存在下反応させることにより一般式[1]で表わされる化合物が得られる。
この時、シス体、トランス体およびシス体とトランス体の混合物のいずれかが得られる。
(以上の式において、一般式[1]はシス体、トランス体およびシス体とトランス体の混合物のいずれかを表わす。)
【0083】
これらの反応において場合によっては、各行程終了後、あるいは、全行程終了後、再結晶精製、再沈精製、昇華精製、カラム精製等の公知な精製手段により、高純度体を得ることも可能である。
本発明の電子写真感光体は、感光層中に上記一般式[1]で表わされる、アリールアミン系化合物を1種、または、2種以上含有する。
一般式[1]で表わされるアリールアミン系化合物を電荷輸送媒体として用いた場合には高感度で耐久性に優れた感光体を与える。
【0084】
電子写真感光体の感光層の形態としては、種々のものが知られているが、本発明の電子写真感光体の感光層としてはそのいずれであっても良い。
感光層(光伝導層)は、電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層したもの、あるいは、逆に積層したものである積層型、さらには電荷輸送媒体中に電荷発生材料(電荷発生物質)の粒子を分散したいわゆる分散型など、いずれの構成も用いることができる。
たとえばバインダー中にアリールアミン系化合物と必要に応じ、増感剤となる色素や、電子吸引性化合物を添加した感光層、光を吸収すると極めて高い効率で電荷キャリヤーを発生する電荷発生材料(光伝導性粒子)と、アリールアミン系化合物をバインダー中に添加した感光層、アリールアミン系化合物とバインダーからなる電荷発生層と光を吸収すると極めて高い効率で電荷キャリヤーを発生する電荷発生材料からなるあるいはこれとバインダーからなる電荷発生層を積層した感光層等があげられる。
【0085】
これらの感光層には、一般式[1]で表わされるアリールアミン化合物とともに電荷輸送剤として優れた性能を有する公知の他のアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物を混合してもよい。
本発明においては、上記一般式[1]で表わされる、アリールアミン系化合物を電荷発生層と電荷輸送層(電荷移動層)の2層からなる感光層の電荷輸送層中に用いる場合に、特に感度が高く、残留電位が小さく、かつ、繰り返し使用した場合に、表面電位の変動や感度の低下、残留電位の蓄積等が少なく、耐久性に優れた感光体を得ることができる。
【0086】
具体的には通常、電荷発生材料を直接蒸着あるいはバインダーとの分散液として塗布して電荷発生層を作成し、その上に、前記アリールアミン化合物を含む有機溶剤溶液をキャストするか、あるいは前記アリールアミン系化合物をバインダー等とともに溶解し、その分散液を塗布することにより、前記一般式[1]で表わされる、アリールアミン系化合物を含む電荷輸送材料を含有する電荷輸送層を作成してなる積層型感光体であるが、電荷発生層と電荷輸送層の積層順序は逆の構成でも良い。
【0087】
また電荷発生材料と電荷輸送材料とが、バインダー中に分散、溶解した状態で伝導性支持体上に塗布した一層型感光体であってもよい。
電荷発生材料としては、セレン、セレンーテルル合金、セレンーヒ素合金、硫化カドミウム、アモルファスシリコン等の無機光伝導性粒子;無金属フタロシアニン、金属含有フタロシアニン、ペリノン系顔料、チオインジゴ、キナクリドン、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔料、アゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキス系アゾ顔料、シアニン系顔料等の有機光伝導性粒子、あるいは、多環キノン、ピリリウム塩、チオピリリウム塩、インジゴ、アントアントロン、ピラントロン等の各種有機顔料、染料が挙げられる。
中でも無金属フタロシアニン、銅、塩化インジウム、塩化ガリウム、錫、オキシチタニウム、亜鉛、バナジウム等の金属又は、その酸化物、塩化物の配位したフタロシアニン類、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ、ポリアゾ類等のアゾ顔料が好ましい。
【0088】
さらには、金属含有及び無金属フタロシアニンと前記一般式[1]で示されるアリールアミン誘導体とを組合せるとレーザー光に対する感度が向上した感光体が得られ、特に、導電性支持体上に、少なくとも、電荷発生材料と電荷輸送材料とを含有する感光層を有する電子写真用感光体において、電荷発生材料として、CuKα線によるX線回折図のブラック角2θ(±0.2°)27.3°に回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン、または、2θ(±0.2°)9.3°、13.2°、26.2°、および27.1°に回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン、または2θ(±0.3 ゜)9.2 、14.1、15.3、19.7、 27.1 ゜に回折ピークを有するジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物、または2θ(±0.2°)8.5°、12.2°、13.8°、16.9°、22.4°、28.4°および30.1°に回折ピークを示すジクロロスズフタロシアニンが特に好ましい。
【0089】
この様にして得られる電子写真用感光体は高感度で、残留電位が低く帯電性が高く、かつ、繰返しによる変動が小さく、特に、画像濃度に影響する帯電安定性が良好であることから、高耐久性感光体として用いることができる。又、750〜850nmの領域の感度が高いことから、特に半導体レーザープリンター用感光体に適している。
前記のフタロシアニン粒子はバインダーポリマーおよび必要に応じ他の有機光導電性化合物、色素、電子吸引性化合物等と共に溶剤に溶解あるいは分散し、こうして得られる塗布液を塗布乾燥して電荷発生層を得る。
【0090】
上記の場合により添加される染料色素としては、例えばメチルバイオレット、ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレット等のトリフェニルメタン染料、メチレンブルーなどのチアジン染料、キニザリン等のキノン染料及びシアニン染料やビリリウム塩、チアビリリウム塩、ベンゾビリリウム塩等が挙げられる。また、アリールアミン系化合物と電荷移動錯体を形成する電子吸引性化合物としては、例えばクロラニル、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、1−ニトロアントラキノン、1−クロロ−5−ニトロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類;4−ニトロベンズアルデヒド等のアルデヒド類;9−ベンゾイルアントラセン、インダンジオン、3、5−ジニトロベンゾフェノン、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4、5,7−テトラニトロフルオレノン、3,3′,5,5′−テトラニトロベンゾフェノン等のケトン類;無水フタル酸、4−クロロナフタル酸無水物等の酸無水物;テトラシアノエチレン、テレフタラルマロノニトリル、9−アントリルメチリデンマロノニトリル、4−ニトロベンザルマロノニトリル、4−(p−ニトロベンゾイルオキシ)ベンザルマロノニトリル等のシアノ化合物;3−ベンザルフタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)フタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等のフタリド類等の電子吸引性化合物が挙げられる。
【0091】
積層型感光層における電荷発生層はこれらの物質の微粒子を、例えばポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテルなどの各種バインダー樹脂で結着した形の分散層で使用してもよい。更に、バインダー樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリアミド、けい素樹脂等が挙げられる。この場合の電荷発生材料(電荷発生物質)の使用比率はバインダー樹脂100重量部に対して通常20から2000重量部、好ましくは30から500重量部、より好ましくは33から500重量部の範囲より使用され、電荷発生層の膜厚は通常0.05〜5μm、好ましくは0.1μmから2μm、より好ましくは0.15μmから0.8μmが好適である。また電荷発生層は必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。また電荷発生層は上記電荷発生材料の蒸着膜であってもよい。
【0092】
分散型感光層の場合の電荷発生材料の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生材料の量は例えば0.5〜50重量%の範囲であるが少なすぎると充分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下などの弊害があり、より好ましくは1〜20重量%の範囲で使用される。
分散型感光層の膜厚は通常5〜50μm、より好ましくは10〜45μmで使用される。
またこの場合にも成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、例えばシリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤が添加されていても良い。
【0093】
更に、本発明の電子写真用感光体の感光層は成膜性、可撓性、機械的強度を向上させるために周知の可塑剤を含有していてもよい。そのために上記塗布液中に添加する可塑剤としては、フタル酸エステル、りん酸エステル、エポキシ化合物、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸エステル、メチルナフタレンなどの芳香族化合物などが挙げられる。アリールアミン系化合物を電荷輸送層中の電荷輸送材料として用いる場合の塗布液は、前記組成のものでもよいが、光導電性粒子、染料色素、電子吸引性化合物等は除くか、少量の添加でよい。この場合の電荷発生層としては上記光導電性粒子と必要に応じバインダーポリマーや他の有機光導電性物質、染料色素、電子吸引性化合物等の溶媒に溶解乃至分散させて得られる塗布液を塗布乾燥した薄層、あるいは前記光導電性粒子を蒸着等の手段により製膜とした層が挙げられる。
【0094】
このようにして形成される感光体にはまた、必要に応じ、バリアー層、接着層、ブロッキング層等の中間層、透明絶縁層、あるいは保護層など、電気特性、機械特性の改良のための層を有していてもよいことはいうまでもない。
導電性支持体としては周知の電子写真感光体に採用されているものがいずれも使用できる。具体的には例えばアルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料からなるドラム、シート;これらの金属箔のラミネート物、蒸着物;ポリエステルフィルム、紙等の絶縁性支持体の表面にアルミニウム、銅、パラジウム、酸化すず、酸化インジウム等の導電性層を設けたものが挙げられる。更に、金属粉末、カーボンブラック、ヨウ化銅、高分子電解質等の導電性物質を適当なバインダーとともに塗布して導電処理したプラスチックフィルム、プラスチックドラム、紙、紙管等も挙げられる。なかでもアルミニウム等の金属のエンドレスパイプが好ましい支持体である。
【0095】
バリアー層、中間層としては、例えばアルミニウム陽極酸化被膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機層、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、等の有機層が使用される。
【0096】
本発明の電子写真用感光体は常法に従って上記一般式[I]で表わされるアリールアミン誘導体をバインダーと共に適当な溶剤中に溶解し、必要に応じ、適当な電荷発生材料、増感染料、電子吸引性化合物、他の電荷輸送材料、あるいは、可塑剤、顔料等との周知の添加剤を添加して得られる塗布液を導電性支持体上に塗布、乾燥し、通常、数μm〜数10μm、好ましくは10〜45μm、特に好ましくは20μm以上の膜厚の感光層を形成させることにより製造することができる。電荷発生層と電荷輸送層の二層からなる感光層の場合は、電荷発生層の上に上記塗布液を塗布するか、上記塗布液を塗布して得られる電荷輸送層の上に電荷発生層を形成させることにより、製造することができる。
【0097】
塗布液調製用の溶剤としてはテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;酢酸エチル、蟻酸メチル、メチルセロソルブアセテート等のエステル類;ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素などのアリールアミン系化合物を溶解させる溶剤が挙げられる。勿論これらの中からバインダーを溶解するものを選択する必要がある。
【0098】
積層型感光層の場合の電荷輸送層に使用されるバインダー樹脂、あるいは分散型感光層の場合のマトリックスとして使用されるバインダー樹脂としては、電荷輸送材料との相溶性が良く、塗膜形成後に電荷輸送材料が結晶化したり、相分離することのないポリマーが好ましく、例えば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ブタジエン等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロースエステル、セルロースエーテル、フェノキシ樹脂、けい素樹脂、エポキシ樹脂等の各種ポリマーが挙げられ、またこれらの部分的架橋硬化物も使用できる。バインダーの使用量は通常アリールアミン系化合物に対し、0.5〜30重量倍、好ましくは0.7〜10重量倍の範囲である。
【0099】
積層型感光層の場合の電荷輸送層には、必要に応じて酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤並びに他の電荷輸送材料を含んでいてもよい。最表面層として従来公知の例えば熱可塑性或いは熱硬化性ポリマーを主体とするオーバーコート層を設けても良い。通常は、電荷発生層の上に電荷移動層を形成するが、逆も可能である。各層の成形方法としては、層に含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を順次塗布するなどの公知の方法が適用できる。電荷輸送層にはこの他に、塗膜の機械的強度や、耐久性向上のための種々の添加剤を用いることができる。
【0100】
この様な添加剤としては、周知の可塑剤や、種々の安定剤、流動性付与剤、架橋剤等が挙げられる。
感光層の塗布方法としては、スプレー塗布法、スパイラル塗布法、リング塗布法、浸漬塗布法等がある。
スプレー塗布法としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等があるが、均一な膜厚を得るための微粒化度、付着効率等を考えると回転霧化式静電スプレーにおいて、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、すなわち円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を開けることなく連続して搬送することにより、総合的に高い付着効率で膜厚の均一性に優れた電子写真感光体を得ることができる。
【0101】
スパイラル塗布法としては、特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機またはカーテン塗布機を用いた方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗料を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を用いた方法等がある。
以下、浸漬塗布法について説明する。
前述した一般式[I]で示されるアリールアミン誘導体、バインダー、溶剤等を用いて好適な全固形分濃度が25%以上であってより好ましくは40%以下の、かつ粘度が通常50センチポアーズ〜300センチポアーズ以下、好ましくは100センチポアーズ〜200センチポアーズ以下の電荷輸送層形成用の塗布液を調整する。ここで実質的に塗布液の粘度はバインダーポリマーの種類及びその分子量により決まるが、あまり分子量が低い場合にはポリマー自身の機械的強度が低下するためこれを損わない程度の分子量を持つバインダーポリマーを使用することが好ましい。この様にして調整された塗布液を用いて浸漬塗布法により電荷輸送層が形成される。
【0102】
その後塗膜を乾燥させ、必要且つ充分な乾燥が行われる様に乾燥温度時間を調整すると良い。乾燥温度は通常100〜250℃好ましくは、110〜170℃さらに好ましくは、120〜140℃の範囲である。乾燥方法としては、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機及び遠赤外線乾燥機等を用いることができる。
【0103】
【実施例】
つぎに、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の製造例、実施例に限定されるものではない。なお、実施例中「部」とあるは「重量部」を示す。
(製造例1)
【0104】
【化8】
【0105】
m−キシレンーα、α' ージイルジホスホン酸テトラエチル 2.8 g(7.5 mol)と、
【0106】
【化9】
【0107】
上記ホルミル体WF 6.1 g(15mmol)をTHF 100 mlに溶解させ、22℃±5℃で、t−BuOK 2.2 g(20mmol)を少しずつ添加した。二時間撹拌後、放冷後、トルエン200 ml、水200 mlを添加し、分液し、有機層を水100 mlで中性になるまで洗った。
有機層を、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、カラムにより精製し、具体例1に挙げる化合物黄色固体、5.2g(6mmol)を得た。収率80%。
(製造例2)
【0108】
【化10】
【0109】
p−キシレンーα、α' ージイルジホスホン酸テトラエチル 2.8 g(7.5 mol)と、上記ホルミル体WF 6.1 g(15mmol)をTHF 100 mlに溶解させ、22℃±5℃で、t−BuOK 2.2 g(20mmol)を少しずつ添加した。二時間撹拌後、放冷後、トルエン200 ml、水200 mlを添加し、分液し、有機層を水100 mlで中性になるまで洗った。
有機層を、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、カラムにより精製し、具体例2に挙げる化合物黄色固体、4.2g(4.8mmol)を得た。収率64%。
(製造例3)
【0110】
【化11】
【0111】
m−キシレンーα、α' ージイルジホスホン酸テトラエチル 3.8 g(10mmol)と
【0112】
【化12】
【0113】
上記ホルミル体WF 6.8 g(20mmol)をTHF 85mlに溶解させ、22℃±5℃で、t−BuOK 3.6 g(32mmol)を少しずつ添加した。二時間撹拌後、放冷後、トルエン200 ml、水200 mlを添加し、分液し、有機層を水100 mlで中性になるまで洗った。
有機層を、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、カラムにより精製し、具体例101に挙げる化合物黄色固体、2.1 g( 3 mmol)を得た。収率30%。
【0114】
(実施例1)
CuKα線によるX線回折図において、ブラック角2θ(±0.2°)9.3°、10.6°、13.2°、15.1°、15.7°、16.1°、20.8°、23.3°、26.2°、27.1°に強い回折ピークを示すチタニウムオキシフタロシアニン顔料1.0部をジメトキシエタン14部に加え、サンドグラインダーで分散処理をした後、ジメトキシエタン14部と4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン(三菱化学(株)社製)14部を加え希釈し、さらに、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)社製、商品名デンカブチラール#6000−C)0.5部と、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド(株)社製、商品名UCAR(商標登録)PKHH)0.5部をジメトキシエタン6部、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 6部の混合溶媒に溶解した液と混合し、分散液を得た。この分散液を75μmに膜厚のポリエステルフィルムに蒸着されたアミノ蒸着層の上に乾燥後の重量が0.4g/m2 になる様にワイヤーバーで塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成させた。
この上に製造例1で合成した、前記表1の化合物No.1 70部と下記に示すポリカーボネート樹脂
【0115】
【化13】
【0116】
100部をテトラヒドロフラン900 部との混合溶媒に溶解した塗布液を塗布、乾燥し、膜厚20μmの電荷輸送層を形成させた。
このようにして得た2層からなる感光層を有する電子写真感光体によって感度すなわち半減露光量を測定したところ0.40μJ/cm2 であった。
半減露光量はまず、感光体を暗所で50μAのコロナ電流により負帯電させ、次いで20ルックスの白色光を干渉フィルターに通して得られた780nmの光(露光エネルギー10μW/cm2 )で露光し、表面電位が−550 Vから−275 Vまで減衰するのに要する露光量を測定することにより求めた。さらに露光時間を9.9秒とした時の表面電位を残留電位として測定したところ、- 11Vであった。この操作を2000回繰り返したが、残留電位の上昇は、ほとんどみられなかった。
次に、この感光体の電荷輸送層の移動度を、TOF法で、測定したところ、21℃、電界強度2.0 ×10-5 /cm における移動度は、4.33×10-5 cm 2 /Vs であった。
【0117】
(実施例2)
実施例1で用いたアリールアミン系化合物の代わりに、製造例2で合成した前記表1の化合物No.2 30部を用いる以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。 次いで実施例1と同様にして感度、残留電位を測定したところ、それぞれ、0.43μJ/cm2 、―34Vであった。
【0118】
(実施例3)実施例1で用いたアリールアミン系化合物の代わりに、製造例3で合成した前記表6の化合物No.101 70部を用いる以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。 次いで実施例1と同様にして感度、残留電位を測定したところ、それぞれ、0.34μJ/cm2 、−4Vであった。
【0119】
(比較例1)
実施例1で用いたアリールアミン系化合物の代わりに、下記に示す比較化合物1を用いる以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
比較化合物1
【0120】
【化14】
【0121】
次いで実施例1と同様にして感度、残留電位、移動度を測定した。この結果を実施例1の感光体についての測定結果と共に第15表に示す。
(比較例2)
比較例1で用いたアリールアミン系化合物70部の代わりに、同化合物を30部用いる以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
次いで実施例1と同様にして感度、残留電位を測定した。この結果を実施例1の感光体についての測定結果と共に第15表に示す。
【0122】
(比較例3)
実施例1で用いたアリールアミン系化合物の代わりに、下記に示す比較化合物2を用いる以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
比較化合物2
【0123】
【化15】
【0124】
次いで実施例1と同様にして移動度を測定した。この結果を実施例1の感光体についての測定結果と共に第16表に示す。
(比較例4)
実施例1で用いたアリールアミン系化合物の代わりに、下記に示す比較化合物2を用いる以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得ようとしたが、ポリマー液に溶解した後、塗布したところ、溶媒乾燥中に塗布面上で固体が析出し電気特性の測定はできなかった。
比較化合物3
【0125】
【化16】
【0126】
(比較例5)
実施例2で用いたアリールアミン系化合物の代わりに、比較化合物3を用いる以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を得ようとしたが、ポリマー液に溶解した後、塗布したところ、溶媒乾燥中に塗布面上で固体が析出し電気特性の測定はできなかった。すなわち、比較化合物3は、30部と低部数にしても析出しやすく、通常の溶媒では使用できない。
【0127】
(比較例6)
実施例1で用いたアリールアミン系化合物の代わりに、下記に示す比較化合物4を用いる以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得ようとしたが、ポリマー液に溶解させようとしたが、完全に溶解せず、電気特性の測定はできなかった。
比較化合物4
【0128】
【化17】
【0129】
(比較例7)
実施例2で用いたアリールアミン系化合物の代わりに、比較化合物4を用いる以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を得ようとしたが、ポリマー液に溶解させようとしたが、完全に溶解せず、電気特性の測定はできなかった。すなわち、比較化合物4は、30部と低部数にしても、通常の溶媒では利用できない。
【0130】
(比較例8)
実施例1で用いたアリールアミン系化合物の代わりに、下記に示す比較化合物5を用いる以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得ようとしたが、ポリマー液に溶解させようとしたが、一旦溶解した後に固体が析出し、電気特性の測定はできなかった。
比較化合物5
【0131】
【化18】
【0132】
(比較例9)
実施例2で用いたアリールアミン系化合物の代わりに、比較化合物5を用いる以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を得ようとしたが、ポリマー液に溶解させようとしたが、一旦溶解した後に固体が析出し、電気特性の測定はできなかった。すなわち、比較化合物5は、30部と低部数にしても通常の溶媒では利用できない。
【0133】
【表57】
【0134】
第15表より、明らかに実施例1、2、3の化合物は比較例1の化合物に比べ、特に残留電位にすぐれている。又、感度においても、優れていることがわかる。
また、実施例1の化合物は、比較例1、3の化合物に比べ、移動度において、非常に優れている。
さらに、比較化合物3、4、5の化合物に比べ、本発明の化合物は、塗布溶液の溶解性、ポリカーボネートとの相溶性に優れており、本発明の化合物による塗布液は安定性の高いことが分かる。
【0135】
【発明の効果】
本発明の電子写真用感光体は、かぶりの原因となる残留電位が小さく、とくに光疲労が少ないために繰返し使用による残留電位の蓄積や、表面電位および感度の変動が小さく耐久性に優れるという特徴を有する。また、現代の高速化の要求に見合った、高感度、高移動度においても、特に優れている。さらに、本発明に用いる化合物を利用すると、塗布溶液に対する溶解性、バインダーとの相溶性に優れ、安定して感光体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造例1で得られたアリールアミン誘導体の赤外吸収スペクトル図。
【図2】製造例2で得られたアリールアミン誘導体の赤外吸収スペクトル図。
【図3】製造例3で得られたアリールアミン誘導体の赤外吸収スペクトル図。
Claims (4)
- 導電性支持体上に、下記一般式[1]で表わされるアリールアミン系化合物を含有する感光体を有することを特徴とする電子写真感光体。
Ar1 及びAr4 は置換基を有してもよいアリーレン基を表わし、Ar2,Ar3,Ar5 及びAr6 は、置換基としてアルキル基、アルコキシ基もしくはアリール基を有しても良いアルキル基、アリール基、縮合多環基もしくは複素環基を表し(Ar1 ないしAr3 又は、Ar4 ないしAr6 は、お互いに結合して炭素環、複素環基を形成してもよい)、Xは二価の芳香族炭化水素残基、複素環残基又はビフェニレンを表わし、
R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 およびR8 は、それぞれ水素原子(但し、R 2 およびR 7 については水素原子を除く。)、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、シアノ基又はニトロ基を表わし、これらは互いに同一でも異なっていてもよく、n1 およびn2 はそれぞれ1ないし4の整数を表わす。) - 前記一般式[1]において、Ar2,Ar3,Ar5 及びAr6 が置換基としてアルキル基又は、アルコキシ基もしくはアリール基を有しても良いフェニル基であり、Ar1 及びAr4 は置換基を有しても良いフェニレン基であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 導電性支持体上に、電荷輸送材料として前記一般式[1]で表わされるアリールアミン系化合物を含有し、電荷発生材料として、フタロシアニン類を含有する感光層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
- 導電性支持体上に、少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とをこの順で設けてなる電子写真感光体であって、前記一般式[1]で表わされるアリールアミン系化合物が電荷輸送層に含まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体。
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