JP4240830B2 - 電子写真感光体用アリールアミン組成物および当該組成物を使用した電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体用アリールアミン組成物および当該組成物を使用した電子写真感光体に関し、詳しくは、光導電性物質として優れた電子写真感光体用アリールアミン組成物および当該組成物を使用した高感度で且つ高性能の電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真感光体の感光層には、セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛などの無機系の光導電性物質が広く使用されていた。しかしながら、セレン及び硫化カドミウムは毒物のために回収する必要があり、セレンは熱により結晶化するため耐熱性に劣り、硫化カドミウム及び酸化亜鉛は耐湿性に劣り、また、酸化亜鉛は耐刷性がない等の欠点を有しており、新規な感光体の開発の努力が続けられている。
【0003】
近時、電子写真感光体の感光層に有機系の光導電性物質を使用する研究が進み、その幾つかが実用化されている。有機系の光導電性物質は、無機系のものに比し、軽量である、成膜が容易である、感光体の製造が容易である、種類によっては透明な感光体を製造できる材料が無公害である等の利点を有する。
【0004】
また、高感度化に有効であることから、電荷キャリヤーの発生と移動の機能を別々の化合物に分担させる、いわゆる機能分離型の感光体が開発の主流となっており、このタイプによる有機系感光体の実用化も行なわれている。電荷キャリヤー輸送媒体としては、ポリビニルカルバゾール等の高分子光導電性化合物を使用する場合と低分子光導電性化合物をバインダーポリマー中に分散溶解して使用する場合とがある。
【0005】
特に、有機系の低分子光導電性化合物は、バインダーとして、皮膜性、可とう性、接着性などの優れたポリマーを選択することが出来るため、容易に機械的特性の優れた感光体を得ることが出来る(例えば、特開昭60−196767号公報、特開昭60−218652号公報、特開昭60−233156号公報、特開昭63−48552号公報、特開平1−267552号公報、特公平3−39306号公報、特開平3−113459号公報、特開平3−123358号公報、特開平3−149560号公報、特開平6−273950号公報、特開昭62−36674号公報、特開平7−036203号公報、特開平6−11854、特開昭63−48553号公報、等参照)。しかしながら、高感度な感光体の製作に適した化合物を見出すことは困難である。
【0006】
更に、絶え間ない高感度化の要請の中で、電気特性的には、残留電位が不十分、光応答性が悪い、繰り返し使用した場合の帯電性が低下する、残留電位が蓄積する等の種々の問題を抱えている。斯かる問題に対しては、例えば、特定の2種類のヒドラゾン化合物を併用し、感光体の他の特性を余り損わずに残留電位上昇を防止する技術(特開昭61−134767号公報)等が報告されている。しかしながら、特性のバランスの点では必ずしも十分ではなく、感光体全体としての特性をバランスよく向上させる技術が求められている。
【0007】
更にまた、光源として半導体レーザーがプリンター分野において積極的に応用されてきており、この場合、当該光源の波長が800nm前後であるため、800nm前後の長波長光に対しても高感度な特性を有する感光体の開発が強く望まれている。
【0008】
上記の目的に合致する材料としては、特開昭59−49544号公報、特開昭59−214034号公報、特開昭61−109056号公報、特開昭61−171771号公報、特開昭61−217050号公報、特開昭61−239248号公報、特開昭62−67094号公報、特開昭62−134651号公報、特開昭62−275272号公報、特開昭63−198067号公報、特開昭63−198068号公報、特開昭63−210942号公報、特開昭63−218768号公報、特開平6−273950号公報、特開平8−36268号公報、特開平9−244278号公報などに記載された材料が挙げられる。すなわち、これらにより、電子写真感光体用材料として好適な結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニン類が種々知られている。しかしながら、更に、長波長光に対して高感度で且つ他の電気特性も良好な電子写真感光体が求められている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その第1の目的は、高感度および高耐久性の電子写真感光体を提供することにある。
【0010】
本発明の第2の目的は、高感度であって、膜厚を厚くした場合においても残留電位が充分低く、繰り返し使用しても特性の変動が少なく、且つ、耐久性に非常に優れた電子写真感光体を提供することにある。
【0011】
本発明の第3の目的は、800nm前後の長波長においても高感度で且つ帯電性、暗減衰、残留電位等が良好なバランスの取れた電子写真感光体を提供することにある。
【0012】
本発明の第4の目的は、応答性の良い、キャリヤー移動度の速い感光体を提供することにある。
【0013】
本発明の第5の目的は、溶解安定性の高い塗布溶液を提供することにある。
【0014】
そして、本発明の第6の目的は、上記の目的を達成するために光導電性性物質として使用される新規なアリールアミン組成物を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本出願人は、先に、電荷移動材として特定のアリールアミン化合物およびそれを使用した電子写真感光体を提案した(特開平10−282698号公報、特開平10−312070号公報、特開2000−66420号公報、特開2000−47405号公報等)。これらのアリールアミンについて更に検討した結果、アリールアミンに存在する二重結合の幾何異性によって、電子写真感光体の電荷移動材として使用した場合の性能が変化することを見出し本発明に到達した。
【0016】
すなわち、本発明の第1の要旨は、下記一般式(1)で表されるアリールアミンを含有し、二重結合の幾何異性に依ってもシェーンフリースの記号におけるC2空間群およびCs空間群に属し得ないアリールアミンであって且つ一般式(1)中のアリールアミン残基(G)に直結する二重結合の幾何異性体の60%以上がEE体であることを特徴とする電子写真感光体用アリールアミン組成物に存する。
【0017】
【化5】
(一般式(1)中、Gは下記一般式(1a)で表されるアリールアミン残基を表し、X1は下記一般式(2)で表される置換基を表し、X2は下記一般式(3)で表される置換基を表す。)
【0018】
【化6】
【0019】
そして、本発明の第2の要旨は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体であって、当該感光層に上記のアリールアミン組成物を含有することを特徴とする電子写真感光体に存する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のアリールアミン組成物は、前記一般式(1)で表されるアリールアミンを含有する。
【0021】
そして、本発明のアリールアミン組成物は、二重結合の幾何異性に依ってもシェーンフリースの記号におけるC2空間群およびCs空間群に属し得ないアリールアミンであって且つ一般式(1)中のアリールアミン残基(G)に直結する二重結合の幾何異性体の60%以上がEE体であることを特徴とする。なお、Cs空間群はSI空間群と表されることもあるが、これらは同義である。
【0022】
ここで、「二重結合の幾何異性に依ってもシェーンフリースの記号におけるC2空間群に属し得ない化合物」について、式(4)及び式(5)の化合物を例に挙げて説明する。
【0023】
【化7】
【0024】
式(4)の化合物において、フェニレン基に直結していない二重結合の幾何異性を便宜上E体に固定すると、フェニレン基に直結する2つの二重結合の幾何異性に依り、ZZ体、ZE体、EE体の3種の異性体が存在し得る(なお、式(4)はこれらのうちEE体を示す)。このうち、ZZ体とEE体は、C2対称軸を有し、ZE体はC2対称軸を有さない。すなわち、式(4)の化合物は、ZZ体とEE体がC2対称軸を有するので、「二重結合の幾何異性に依ってもC2空間群に属し得ない化合物」に含まれない。
【0025】
式(5)の化合物は、末端のフェニル基上にメチル基を1つ有しており、二重結合の幾何異性がどの様な組み合わせになろうともC2対称軸を有さない。従って、式(5)の化合物は、「二重結合の幾何異性に依ってもC2空間群に属し得ない化合物」に含まれる。
【0026】
次に、「二重結合の幾何異性に依ってもシェーンフリースの記号におけるCs空間群に属し得ない化合物」について、式(6)及び式(7)の化合物を例に挙げて説明する。
【0027】
【化8】
【0028】
式(6)の化合物において、フェニレン基に直結していない二重結合の幾何異性を便宜上Z体に固定すると、フェニレン基に直結する2つの二重結合の幾何異性に依り、ZZ体、ZE体、EE体の3種の異性体が存在し得る。このうち、ZZ体とEE体は、鏡映面を有し(窒素上に置換したm−トリル基は鏡映面上に位置する)、ZE体は鏡映面を有さない。すなわち、式(6)の化合物は、ZZ体とEE体が鏡映面を有するので、「二重結合の幾何異性に依ってもCs空間群に属し得ない化合物」に含まれない。
【0029】
式(7)の化合物は、末端のフェニル基上にメチル基を1つ有しており、二重結合の幾何異性がどの様な組み合わせになろうともCs対称軸を有さない。従って、式(7)の化合物は、「二重結合の幾何異性に依ってもCs空間群に属し得ない化合物」に含まれる。
【0030】
二重結合の幾何異性に依っても、C2空間群およびCs空間群に属し得ない上記アリールアミン化合物から成る組成物であって、E体の多い組成物(50%以上)は、電子写真感光体における電荷移動剤として有用である。
【0031】
すなわち、電荷輸送剤としては、二重結合を有する化合物が多く知られているが、E体が多い方が本発明における様に電気特性的に有利である。但し、E体は、Z体に比較し、結晶性が高く、塗布液中または電荷移動層の作成途中などで結晶が析出して問題を生じ易い。そこで、これらの二重結合を有する化合物のうち、C2空間群およびCs空間群に属し得ない化合物は、その低い対称性のために結晶性が低く、塗布液中または電荷移動層の作成途中などで結晶が析出することなく、均一な感光層が得られ易い。
【0032】
アリールアミン残基に直結する二重結合の幾何異性のE体の割合は、50〜100%であるが、好ましくは60〜90%である。アリールアミン残基に直結する二重結合は、2つの場合から4つの場合がある。また、アリールアミン残基に直結する二重結合が2つである化合物においては、EE体の割合は、60%以上、好ましくは70から90%である。また、アリールアミン残基に直結する二重結合が4つである化合物においては、EEEE体の割合は、好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上、特に好ましくは50%以上である。アリールアミン残基に直結する二重結合が少ない程、結晶性は下がるため、E体比率は高い方が好ましい。
【0033】
一般式(1)中、Gは2〜4価のアリールアミン残基を表すが、2価のアリールアミン残基であることが好ましい。アリールアミン残基は、アリール基と窒素原子が直接結合した部分を有する基であれば何れでもよく、例えば、トリフェニルアミン構造、エチルジフェニルアミン構造、ナフチルジフェニルアミン構造などを有する基が挙げられる。
【0034】
また、本発明のアリールアミン組成物は、上述のアリールアミン残基に2〜4個の二重結合がアリール部位に直接結合している。アリールアミンに直結する二重結合のα位は、水素原子となっているが、これは、分子間相互作用の増大のため、また、移動度の点において重要である。本発明のアリールアミン化合物の好ましいものは、下記一般式(Ia)で表される化合物である。
【0035】
【化9】
【0036】
Ar1,Ar3,Ar4及びAr6は、置換基を有してもよいアリーレン基を表し、好ましくは置換基を有してもよいフェニレン基であり、Ar2及びAr5は、置換基を有してもよいアリール基を表し、好ましくは置換基を有してもよいフェニル基であり、また、これらのAr1〜Ar3又はAr4〜Ar6は、互いに結合して縮合環または複素環を形成してもよい。Yは、単結合または二価の有機残基を表す。好ましくは、単結合または−O−CH2−O−である。
【0037】
Ar2及びAr5のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ピレニル基などが挙げられ、特に、炭素数6〜12のアリール基が好ましい。Ar1、Ar3、Ar4及びAr6のアリーレン基としては、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基、ピレニレン基などが挙げられ、特に、炭素数6〜12のアリーレン基が好ましい。
【0038】
Ar1〜Ar6は、置換基を有していてもよく、置換基としては、水酸基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基などのアルコキシ基;アリル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基などのアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;スチリル基、ナフチルビニル基などのアリールビニル基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基などのジアリールアミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基などのジアラルキルアミノ基;ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基などのジ複素環アミノ基;ジアリルアミノ基、または、上記のアミノ基の置換基を組み合わせたジ置換アミノ基などの置換アミノ基などが挙げられるが、電気特性の点から、好ましくは、メチル基、フェニル基である。これらの置換基は、互いに縮合して、単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基などを介した炭素環基;酸素原子、硫黄原子、窒素原子などを含む複素環基を形成してもよい。
【0039】
具体的には、(1a)で表される構造としては、以下に示す構造が好ましい(A、B、C、Dは、メチル基を有していてもよいベンゼン環を表す)。
【0040】
【化10】
【0041】
また、前述の一般式(2)及び(3)としては以下に示す構造が好ましい。
【0042】
【化11】
【0043】
以下、一般式(1)で表わされるアリールアミン化合物についてその代表例を挙げるが、本発明に使用するアリールアミン化合物はこれらに限定されるものではない。
【0044】
【化12】
【0045】
【化13】
【0046】
【化14】
【0047】
【化15】
【0048】
【化16】
【0049】
【化17】
【0050】
【化18】
【0051】
【化19】
【0052】
前記一般式(1)で表わされるアリールアミン化合物は公知の方法で製造することが出来る。例えば、原料として公知のアリールアミン系化合物を使用し、公知のカルボニル導入反応を行い、そして、Wittig反応を行う方法を採用することが出来る。
【0053】
先ず、以下の(A)で表されるアリールアミン系化合物をオキシ塩化リンの存在下にホルミル化剤(N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド等)と反応させ、一般式(B)で表されるアルデヒド体を得る。なお、一般式(A)及び(B)中、Ar1〜Ar6、Y,n2は、前記一般式と同義を表す(以下、同じ)。
【0054】
【化20】
【0055】
大過剰のホルルミル化剤の使用により、反応溶媒を兼ねることも出来るが、反応溶媒としてo−ジクロロベンゼン、ベンゼン等を使用することも出来る。
【0056】
そして、一般式(2)で表される置換基の整数sが例えば1の場合は、得られた一般式(B)で表わされるアルデヒド体またはケトン体とウィテッヒ試薬とを反応させることにより一般式(1)で表わされる化合物が得られる。
【0057】
上記のウィテッヒ試薬は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベンゼン、トルエン等の反応溶媒中、一般式(C)又は(D)で表されるハロゲン化合物(Q:ハロゲン)とトリフェニルホスフィン又は亜リン酸トリアルキルとを作用させて得られる。
【0058】
【化21】
CH2Q−CH=CR1R2 (C)
CH2Q−CH=CR3R4 (D)
【0059】
アルデヒド体またはケトン体とウィテッヒ試薬との反応は、ブチルリチウム、フェニルリチウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等の塩基性触媒の存在下、通常−20〜60℃、好ましくは−10〜40℃の温度で行われる。
【0060】
特に、上記の二重結合生成工程において、極性の低い溶媒を使用することは、E体比が向上し且つ溶解性の高い組成物が得られるので好ましい。ただし、ウィッティッヒ試薬の溶解性を考えて溶媒選択をする必要がある。そして、これらの溶媒は、ウィッテッヒ試薬およびホルミル体の溶解性などを考慮し、反応に不活性な他の溶媒と兼用しても構わない。また、E体比向上の観点から、前記二重結合生成工程において、亜リン酸トリアルキルを使用する、Wittig−Horner反応を利用し又は併用することも好ましい。
【0061】
また、粗体精製において吸着処理を利用する場合、室温以上の温度で処理するならばE体比が向上すので好ましい。吸着処理温度は、得られる組成物の気特性の観点から、好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上、特に好ましくは60℃以上である。吸着剤処理においては、活性白土、活性炭などの活性化された吸着剤を使用することが好ましい。特に、35℃以上で白土による吸着処理は、E体比向上および得られる組成物の気特性電気特性の観点から好ましい。本発明においては、再結晶精製、再沈精製、昇華精製、カラム精製などの公知の精製手段により、高純度体を得ることも可能である。
【0062】
本発明のアリールアミン組成物は、その優れた溶解性のため、後述する様に、電子写真感光体の感光層に好適に使用される。特に、位置異性体化合物の使用、すなわち、本発明のアリールアミン組成物の使用および既存アリールアミンの併用は、イオン化ポテンシャルのマッチングの点から好ましい。ここでの位置異性体の化合物とは、以下の様な化合物を指す。
【0063】
【化22】
【0064】
次に、本発明の電子写真感光体について説明する。本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する。そして、感光層に前記のアリールアミン組成物を含有することを特徴とする。アリールアミン組成物は、感光層に含まれる電荷輸送物質のうち、通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上を占める。
【0065】
前記のアリールアミン組成物は、特に、電荷輸送媒体として使用した場合には高感度で耐久性に優れた感光体を与える。電子写真感光体の感光層の形態は種々知られているが、本発明の電子写真感光体の感光層は公知の何れの形態であってもよい。すなわち、感光層(光伝導層)としては、電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に又は逆の順序に積層した積層型、電荷輸送媒体中に電荷発生材料(電荷発生物質)の粒子を分散したいわゆる分散型など、何れの構成も採用することが出来る。
【0066】
そして、上記の感光層としては、(1)バインダー中にアリールアミン組成物と必要に応じて増感剤となる色素や電子吸引性化合物を添加した感光層、(2)バインダー中にアリールアミン組成物と光吸収によって電荷キャリヤーを発生する電荷発生材料(光伝導性粒子)とを添加した感光層、(3)バインダー中にアリールアミン組成物を添加した電荷発生層に光伝導性粒子またはこれとバインダーから成る電荷発生層を積層した感光層などが挙げられる。
【0067】
上記の感光層には、前記のアリールアミン組成物と共に有機光伝導体として優れた性能を有する公知の他のアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物などを混合してもよい。
【0068】
本発明においては、電荷発生層と電荷輸送層(電荷移動層)の2層から成る感光層の電荷輸送層中に前記のアリールアミン組成物を使用する場合に、特に感度が高く、残留電位が小さく、かつ、繰り返し使用した場合に、表面電位の変動や感度の低下、残留電位の蓄積等が少なく、耐久性に優れた感光体を得ることが出来る。
【0069】
具体的には、先ず、電荷発生材料を直接蒸着またはバインダーとの分散液として塗布して電荷発生層を作成する。次いで、電荷発生層の上に、前記のアリールアミン組成物を含む溶液をキャストするか、または、前記のアリールアミン組成物をバインダー等と共に溶解し、その分散液を塗布する。これにより、前記のアリールアミン組成物を含む電荷輸送材料を含有する電荷輸送層を作成してなる積層型感光体か得られるが、電荷発生層と電荷輸送層の積層順序は逆の構成でもよい。また、電荷発生材料と電荷輸送材料とがバインダー中に分散・溶解した状態で導電性支持体上に塗布された一層型感光体であってもよい。
【0070】
電荷発生材料としては、セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、硫化カドミウム、アモルファスシリコン等の無機光伝導性粒子;無金属フタロシアニン、金属含有フタロシアニン、ペリノン系顔料、チオインジゴ、キナクリドン、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔料、アゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキス系アゾ顔料、シアニン系顔料などの有機光伝導性粒子が挙げられる。
【0071】
更に、多環キノン、ピリリウム塩、チオピリリウム塩、インジゴ、アントアントロン、ピラントロン等の各種の有機顔料や染料が使用できる。中でも、無金属フタロシアニン、銅、塩化インジウム、塩化ガリウム、錫、オキシチタニウム、亜鉛、バナジウム等の金属、その酸化物、塩化物の配位したフタロシアニン類、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ、ポリアゾ類などのアゾ顔料が好ましい。
【0072】
そして、金属含有または無金属のフタロシアニンと前記のアリールアミン組成物とを組合せることにより、レーザー光に対する感度が向上した感光体が得られる。特に、導電性支持体上に、少なくとも、電荷発生材料と電荷輸送材料とを含有する感光層を有する電子写真感光体において、電荷発生材料として次の化合部を含有する感光層を有することは好ましい。
【0073】
(1)X線回折スペクトルのブラック角(2θ±0.2°)27.3°に回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン化合物。
(2)ブラック角(2θ±0.2°)9.3°、13.2°、26.2°、27.1°に回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン化合物。
(3)ブラック角2θ(±0.3°)9.2°、14.1°、15.3°、19.7°、27.1°に回折ピークを有するジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物。
(4)ブラック角(2θ±0.2°)8.5°、12.2°、13.8°、16.9°、22.4°、28.4°、30.1°に主たる回折ピークを示すジクロロスズフタロシアニン化合物。
【0074】
上記の様にして得られる電子写真感光体は、高感度で、残留電位が低く帯電性が高く、かつ、繰返しによる変動が小さく、特に、画像濃度に影響する帯電安定性が良好であることから、高耐久性感光体として使用することが出来る。また、750〜850nmの領域の感度が高いことから、特に半導体レーザープリンター用感光体に適している。
【0075】
前記のアリールアミン組成物は、バインダーポリマー及び必要に応じ他の有機光導電性化合物、色素、電子吸引性化合物などと共に溶剤に溶解または分散し、こうして得られる塗布液を塗布乾燥して電荷発生層を得る。
【0076】
上記の必要に応じ添加される染料色素としては、例えば、メチルバイオレット、ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレット等のトリフェニルメタン染料、メチレンブルー等のチアジン染料、キニザリン等のキノン染料、シアニン染料、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、ベンゾピリリウム塩などが挙げられる。
【0077】
また、前記のアリールアミン組成物と電荷移動錯体を形成する電子吸引性化合物としては、例えば、クロラニル、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、1−ニトロアントラキノン、1−クロロ−5−ニトロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類;4−ニトロベンズアルデヒド等のアルデヒド類;9−ベンゾイルアントラセン、インダンジオン、3,5−ジニトロベンゾフェノン、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、3,3′,5,5′−テトラニトロベンゾフェノン等のケトン類;無水フタル酸、4−クロロナフタル酸無水物などの酸無水物;テトラシアノエチレン、テレフタラルマロノニトリル、9−アントリルメチリデンマロノニトリル、4−ニトロベンザルマロノニトリル、4−(p−ニトロベンゾイルオキシ)ベンザルマロノニトリル等のシアノ化合物;3−ベンザルフタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)フタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等のフタリド類などが挙げられる。
【0078】
積層型感光層における電荷発生層には、上記の化合物の微粒子をバインダー樹脂で結着した形の分散層で使用してもよい。バインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリアミド、けい素樹脂などが挙げられる。
【0079】
電荷発生材料(電荷発生物質)の使用比率は、バインダー樹脂100重量部に対し、通常20〜200重量部、好ましくは30〜500重量部、更に好ましくは33〜500重量部の範囲である。電荷発生層の膜厚は、通常0.05〜5μm、好ましくは0.1〜2μm、更に好ましくは0.15〜0.8μmの範囲である。また、電荷発生層はも必要に応じ、塗布性を改善するためのレベリング剤、酸化防止剤、増感剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。更にまた、電荷発生層は上記電荷発生材料の蒸着膜であってもよい。
【0080】
分散型感光層の場合の電荷発生材料の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生材料の量は、通常0.5〜50重量%、好ましくは1〜20重量%の範囲である。電荷発生材料の量が少なすぎる場合は充分な感度が得られず、多すぎる場合は、帯電性の低下、感度の低下などの弊害がある。
【0081】
分散型感光層の膜厚は、通常5〜50μm、好ましくは10〜45μmの範囲である。また、この場合にも、成膜性、可とう性、機械的強度などを改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤(例えば、シリコーンオイル、フッ素系オイル)、その他の添加剤を使用してもよい。
【0082】
更に、本発明の電子写真感光体の感光層は、成膜性、可撓性、機械的強度を向上させるために周知の可塑剤を含有していてもよい。そのために上記の塗布液中に添加する可塑剤としては、フタル酸エステル、りん酸エステル、エポキシ化合物、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸エステル、メチルナフタレン等の芳香族化合物などが挙げられる。
【0083】
電荷輸送層中の電荷輸送材料として前記のアリールアミン組成物を使用する場合の塗布液は、上記の組成でもよいが、光導電性粒子、染料色素、電子吸引性化合物などは除くか、または、少量の添加でよい。この場合の電荷発生層としては、上記の光導電性粒子、バインダー樹脂、有機光導電性物質、染料色素、電子吸引性化合物などを含有する塗布液を塗布乾燥した薄層、または、光導電性粒子を蒸着などの手段により製膜とした層が挙げられる。
【0084】
また、上記の様にして形成される感光体には、必要に応じ、バリアー層、接着層、ブロッキング層などの中間層、透明絶縁層、保護層など、電気特性、機械特性の改良のための層を有していてもよい。
【0085】
感光層が形成される導電性支持体としては、周知の電子写真感光体に採用されているものが何れも使用できる。具体的には、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料から成るドラム、シート、これらの金属箔のラミネート物、蒸着物、表面にアルミニウム、銅、パラジウム、酸化すず、酸化インジウム等の導電性層を設けたポリエステルフィルム、紙などの絶縁性支持体などが挙げられる。更に、金属粉末、カーボンブラック、ヨウ化銅、高分子電解質などの導電性物質を適当なバインダーと共に塗布して導電処理したプラスチックフィルム、プラスチックドラム、紙、紙管などが挙げられる。また、金属粉末、カーボンブラック、炭素繊維などの導電性物質を含有するプラスチックのシートやドラムが挙げられる。また、酸化スズ、酸化インジウム等の導電性金属酸化物で導電処理したプラスチックフィルムやベルトが挙げられる。中でも、アルミニウム等の金属のエンドレスパイプが好ましい。
【0086】
バリアー層や中間層としては、例えば、アルミニウム陽極酸化被膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機層、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の有機層が使用される。
【0087】
本発明の電子写真感光体は、常法に従って、前記のアリールアミン組成物をバインダーと共に適当な溶剤中に溶解し、必要に応じ、適当な電荷発生材料、増感染料、電子吸引性化合物、他の電荷輸送材料、可塑剤、顔料などの周知の添加剤を添加して得られる塗布液を導電性支持体上に塗布した後に乾燥し、通常、数μ〜数十μ、好ましくは10〜45μm、更に好ましくは20μm以上の膜厚の感光層を形成させることにより製造することが出来る。電荷発生層と電荷輸送層の二層からなる感光層の場合は、電荷発生層の上に上記塗布液を塗布するか、または、上記塗布液を塗布して得られる電荷輸送層の上に電荷発生層を形成させることにより製造することが出来る。
【0088】
塗布液調製用の溶剤としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;酢酸エチル、蟻酸メチル、メチルセロソルブアセテート等のエステル類;ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素などが挙げられる。勿論これらの中からバインダー樹脂を溶解するものを選択する必要がある。
【0089】
積層型感光層の場合の電荷輸送層に使用されるバインダー樹脂または分散型感光層の場合のマトリックスとして使用されるバインダー樹脂としては、電荷輸送材料との相溶性が良く、塗膜形成後に電荷輸送材料が結晶化したり、相分離することのないポリマーが好ましい。斯かるポリマーとしては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ブタジエン等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロースエステル、セルロースエーテル、フェノキシ樹脂、けい素樹脂、エポキシ樹脂などの各種ポリマーが挙げられ、また、これらの部分的架橋硬化物も使用できる。バインダーの使用量は、前記のアリールアミン系化合物に対し、通常0.5〜30重量倍、好ましくは0.7〜10重量倍の範囲である。
【0090】
積層型感光層の場合の電荷輸送層には、必要に応じ、酸化防止剤、増感剤などの各種添加剤や他の電荷輸送材料を含んでいてもよい。電荷輸送層の膜厚は、通常10〜60μm、好ましくは10〜45μm、更に好ましくは15〜40μmの範囲である。最表面層として、従来公知の例えば熱可塑性または熱硬化性ポリマーを主体とするオーバーコート層を設けてもよい。通常は、電荷発生層の上に電荷移動層を形成するが、逆も可能である。各層の成形方法としては、層に含有させる物質を溶剤に溶解または分散させて得られた塗布液を順次塗布する等の公知の方法が適用できる。電荷輸送層には、塗膜の機械的強度や耐久性向上のための種々の添加剤を使用することが出来る。この様な添加剤としては、周知の可塑剤、安定剤、流動性付与剤、架橋剤などが挙げられる。
【0091】
感光層の塗布方法としては、スプレー塗布法、スパイラル塗布法、リング塗布法、浸漬塗布法などがある。
【0092】
スプレー塗布法としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等がある。均一な膜厚を得るための微粒化度、付着効率などの観点から、回転霧化式静電スプレーにおいて、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、すなわち円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を開けることなく連続して搬送する方法が好ましい。斯かる方法によれば、総合的に高い付着効率で膜厚の均一性に優れた電子写真感光体を得ることが出来る。
【0093】
スパイラル塗布法としては、特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機またはカーテン塗布機を使用した方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗料を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を使用した方法などがある。
【0094】
浸漬塗布法は次の様に行うことが出来る。先ず、前記のアリールアミン組成物、バインダー、溶剤などを使用して電荷輸送層形成用の塗布液を調製する。全固形分濃度は25〜40重量%、粘度は、通常50〜300センチポアーズ、好ましくは100〜200センチポアーズである。この様にして調製された塗布液を使用して浸漬塗布した後、塗膜を乾燥させる。乾燥温度は、通常100〜250℃、好ましくは110〜170℃、更に好ましくは120〜140℃の範囲である。乾燥方法としては、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機、遠赤外線乾燥機などを使用することが出来る。
【0095】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中「部」とあるは「重量部」を示す。
【0096】
実施例1
原料として下記のビスホルミル化合物を使用した。
【0097】
【化23】
【0098】
上記ビスホルミル化合物29gをTHF200mlに懸濁させ、シンナミルトリフェニルホスホニウムクロライド52gを添加した。系を10℃に保ち、ここにナトリウムメトキシド(28%メタノール溶液)17.0gを10〜0℃で滴下した。3.5時間、室温にて撹拌後、メタノール−水(800ml−100ml)中に放出した。析出した固体を濾取し、減圧下乾燥させた(50g)。生成した固体を、トルエン200ml/アイソパーE(エクソン化学製)50mlの混合溶液)に溶解させた。
【0099】
60℃で、日本活性白土社製、低水活性白土(13g)を添加し、30分撹拌した後、吸着材を保温下に濾別した。この操作を2回繰り返した後、同じ様に活性炭(5g)による吸着剤処理による精製を行い、更に活性白土による吸着材精製を行った。この後、溶液をメタノールにて再沈し、減圧下乾燥させ、以下に示す化合物A、B、Cの混合物(A:B:C=8:36:56)である、黄色固体43gを得た。
【0100】
【化24】
【0101】
上記のうち、C2空間群およびCs空間群に属し得ないBについて、LCとNMRを利用し、アリールアミンに直結する二重結合部位の幾何異性を調べたところ、EE体:EZ体:ZZ体=70:21:5であった。得られたアリールアミン組成物を使用し、下記方法に従い電気特性の測定を行った。
【0102】
[電気特性の測定]
X線回折スペクトルにおいて、X線回折スペクトルのブラック角(2θ±0.2°)27.3°に回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン顔料1.0部をジメトキシエタン14部に加え、サンドグラインダーで分散処理をした後、ジメトキシエタン14部と4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2(三菱化学(株)社製)14部を加えて希釈し、更に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)社製、商品名デンカブチラール#6000−C)0.5部と、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド(株)社製、商品名UCAR(商標登録)PKHH)0.5部をジメトキシエタンと4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2の混合溶媒(6部/6部)に溶解した液と混合し、分散液を得た。
【0103】
上記の分散液を75μmに膜厚のポリエステルフィルムに蒸着されたアミノ蒸着層の上に乾燥後の重量が0.4g/m2になる様にワイヤーバーで塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成させた。この上に前記のアリールアミン組成物50部と下記に示すポリカーボネート樹脂100部をテトラヒドロフラン900部との混合溶媒に溶解した塗布液を塗布、乾燥し、膜厚20μmの電荷輸送層を形成させ感光体を製作した。
【0104】
【化25】
【0105】
電子写真学会測定標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404−405頁記載)で、上記感光体をアルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体のアルミニウム基体との導通を取った上で、ドラムを毎分50回転の一定回転数で回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行った。その際、初期表面電位を−700Vとし、露光は780nm、除電は660nmの単色光を使用した。評価項目としては、表面電位が700Vから350Vに半減するのに要した露光量(半減露光量、E1/2)、780nmの光を1.36μJ/cm2照射した時点の表面電位(VL)及び除電光照射後の残留電位(Vr)を測定した。測定環境温度は25℃とした。結果を表1に示す。
【0106】
参考例1
先ず、実施例1において、吸着処理時の温度を40℃に変更した以外は、実施例1と同様に電荷輸送物質を作成した。得られた化合物の幾何異性を実施例1と同じ様に調べたところ、EE体:EZ体:ZZ体=30:43:23であった。次に、実施例1と同様に、感光体を製作し、電気特性の測定を行った。結果を表1に記す。
【0107】
比較例1
先ず、実施例1において、吸着処理時の温度を20℃に変更した以外は、実施例1と同様に電荷輸送物質を作成した。得られた化合物の幾何異性を実施例1と同じ様に調べたところ、EE体:EZ体:ZZ体=17:42:39であった。次に、実施例1と同様に、感光体を製作し、電気特性の測定を行った。結果を表1に記す。
【0108】
比較例2
実施例1において、原料ビスホルミル化合物を以下の構造を有するビスホルミル化合物に変更した以外は、実施例1と同様に実験を行ったところ、吸着剤処理の途中で結晶が析出したのでその時点で操作を中止し、感光体の製作に到らなかった。
【0109】
【化26】
【0110】
比較例3
実施例1において、原料ビスホルミル化合物を以下の構造を有するビスホルミル化合物に変更した以外は、実施例1と同様に実験を行った。得られた化合物の幾何異性を実施例1と同じ様に調べたところ、EE体:EZ体:ZZ体=80:15:5であった。しかしながら、塗布溶液に完溶せず、感光体の製作に到らなかった。
【0111】
【化27】
【0112】
比較例4
実施例1において、原料ビスホルミル化合物を比較例2で使用したビスホルミル化合物に変更し、吸着剤温度を40℃に変更した以外は、実施例1と同様に実験を行ったところ、吸着剤処理の途中で結晶が析出したのでその時点で操作を中止し、感光体の製作に到らなかった。
【0113】
【表1】
【0114】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、塗布溶液に対する溶解性およびバインダーとの相溶性に優れ、安定して電子写真感光体を製作し得るアリールアミン組成物が定期を得される。また、本発明によれば、電気特性に優れ、かぶりの原因となる残留電位が小さく、特に光疲労が少ないために繰返し使用による残留電位の蓄積や表面電位および感度の変動が小さく耐久性に優れるという特徴を有する電子写真感光体が提供される。そして、斯かる電子写真感光体は、現代の高速化の要求に見合った、高感度、高移動度においても特に優れている。
Claims (8)
- 下記一般式(1)で表されるアリールアミンを含有し、二重結合の幾何異性に依ってもシェーンフリースの記号におけるC2空間群およびCs空間群に属し得ないアリールアミンであって且つ一般式(1)中のアリールアミン残基(G)に直結する二重結合の幾何異性体の60%以上がEE体であることを特徴とする電子写真感光体用アリールアミン組成物。
- 一般式(2)乃至(3)におけるX1及びX2の幾何異性のE体の割合がそれぞれ50%以上である請求項1に記載のアリールアミン組成物。
- 一般式(1a)において、Yが直結か又は−O−Z−O−(Zは有機残基を表す)である請求項1又は2に記載のアリールアミン組成物。
- 一般式(1a)において、n2が1であり、Ar2及びAr5が置換基を有していてもよいフェニル基であり、Ar1、Ar3、Ar4及びAr6が置換基を有していてもよいフェニレン基である請求項1〜3の何れかに記載のアリールアミン組成物。
- 一般式(1b)において、ベンゼン環B及びFに直結する二重結合の幾何異性の50%以上がE体であり、ベンゼン環A〜Fの何れか1つはメチル基を有する、請求項5に記載のアリールアミン組成物。
- 導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体であって、当該感光層に請求項1〜6の何れかに記載のアリールアミン組成物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 感光層にオキシチタニウムフタロシアニン化合物を含有する請求項7に記載の電子写真感光体。
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