JP3704966B2 - 電子写真用感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真用感光体に係り、詳しくは有機系の光導電性物質を含有する感光層を有する、非常に高感度で高性能の電子写真用感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真用感光体の感光層には、セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛等の無機系の光導電性物質が広く用いられていた。しかしながら、セレン、硫化カドミウムは使用後回収する必要であり、また、セレンは耐熱性に劣り、硫化カドミウム、酸化亜鉛は耐湿性に劣り、酸化亜鉛は耐刷性がないなど、いずれも欠点を有することから、新規な感光材料の開発が行われている。そして、近年、有機系の光導電性物質を電子写真用感光体の感光層に用いる研究が進み、一部が実用化されている。
【0003】
有機系の光導電性物質は、無機系のものに比し、軽量である、成膜が容易である、感光体の製造が容易である、種類によっては透明な感光体を製造できる、材料が無公害である等の利点を有する。
【0004】
最近では、電荷キャリヤーの発生機能と電荷移動の機能とを別々の化合物に分担させる、所謂機能分離型の感光体が、高感度化に有効であることから、開発の主流となっており、この機能分離型の有機系感光体の実用化も行なわれている。
【0005】
この機能分離型の有機感光体において、電荷キャリヤー輸送媒体としては、ポリビニルカルバゾールなどの高分子光導電性化合物を用いる場合と、低分子光導電性化合物をバインダーポリマー中に分散溶解して用いる場合とがある。
【0006】
これらのうち、特に、有機系の低分子光導電性化合物を用いる場合には、バインダーとして皮膜性、可撓性、接着性等に優れたポリマーを選択することで、容易に機械的特性に優れた感光体を得ることができるという利点がある(例えば、特開昭60−196767号公報、特開昭60−218652号公報、特開昭60−233156号公報、特開昭63−48552号公報、特開平1−267552号公報、特公平3−39306号公報、特開平3−113459号公報、特開平3−123358号公報、特開平3−149560号公報、特開平6−273950号公報、特開昭62−36674号公報、特開平7−36203号公報、特開平6−11854号公報、特開昭63−48553号公報等)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、低分子光導電性化合物を用いる場合には、その分子自体が低分子であるため、耐刷性に劣るという欠点がある。
【0008】
これに対して、高分子光導電性化合物では、分子が高分子であるため、耐刷性については優れた効果を期待できるが、従来の電子写真用感光体の研究において高分子光導電性化合物として開発されたポリビニルカルバゾール等は、バインダーを用いずに塗膜形成が可能であるものの、低感度、高残留電位で、繰り返し使用による残留電位の上昇等の問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、高感度、低残留電位で、繰り返し使用による残留電位の上昇の問題もない、高分子光導電性化合物を用いた電子写真用感光体を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子写真用感光体は、導電性支持体上に感光層が形成された電子写真用感光体において、該感光層中に下記一般式[1]及び[2]で表される繰り返し単位を有する高分子化合物と電荷発生材料とが含有されており、該電荷発生材料がオキシチタニウムフタロシアニンであることを特徴とする。
【0011】
【化2】
【0012】
上記一般式[1]及び[2]で表される繰り返し単位を有する高分子化合物であれば、高感度、低残留電位で帯電性が高く、繰り返し使用による残留電位の上昇の問題もなく、特に画像濃度に影響する帯電安定性が良好であることから、高耐久性感光体を得ることができる。
【0013】
本発明においては、上記高分子化合物を電荷輸送材料として用い、電荷発生材料としてオキシチタニウムフタロシアニンから選ばれる1種又は2種以上、好ましくは次の(1) , (2)を用いることにより、750〜850nmの領域の感度が高く、特に半導体レーザープリンター用感光体として好適な電子写真用感光体を得ることができる。
【0014】
(1) X線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)9.7°,14.2°,27.3°に回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン
(2) X線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)9.3°,13.2°,26.2°,27.1°に回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明の電子写真用感光体の感光層に用いられる、高分子光導電性化合物について説明する。
【0017】
この高分子光導電性化合物は前記一般式[1]及び[2]で表わされる繰り
返し単位を有する高分子化合物(以下、この高分子化合物を「高分子ポリアミン」と称す場合がある。)である。
【0018】
前記一般式[1]及び[2]中、Ar1,Ar4,Ar5,Ar6,Ar7,Ar8は、各々独立して、二価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル等の二価の芳香族環残基、又は、チエニレン基等の二価の複素環残基、又は、メチレン基、エチレン基等のアルキレン基を表し、これらは置換基を有していても良い。また、これらは互いに、単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基等を介して連結されて炭素環を形成してもよく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む連結基で複素環を形成していても良い。
【0019】
なお、上記置換基としては、水酸基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等のアルコキシ基;アリル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基;ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基等のジ複素環アミノ基;ジアリルアミノ基,或いは上記のアミノ基の置換基を組み合わせたジ置換アミノ基等の置換アミノ基等が挙げられ、ベンゼン環等に置換する置換基は互いに同一でも異なっていても良く、また、これらの置換基は互いに縮合して、単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基等を介した炭素環基;酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む複素環基を形成してもいても良い。
【0020】
合成の容易さ、電気特性の面から、Ar1,Ar4,Ar5,Ar6,Ar7,Ar8は、各々独立して、置換基を有していても良いベンゼン環、ナフタレン環、メチレン基等であることが好ましい。
【0021】
前記一般式[1]中、Ar2、Ar3は、各々独立して、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル等の芳香族環基、又は、チエニル基、フリル基等の複素環基、又は、メチル基、エチル基等のアルキル基を表し、これらは置換基を有しても良い。また、これらは互いに、単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基等を介して連結されて炭素環を形成してもよく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む連結基で複素環を形成していても良い。
【0022】
なお、上記置換基としては、Ar1等の置換基として前掲したものが挙げられ、これらの置換基についても互いに同一でも異なっていても良く、また、これらの置換基は互いに縮合して、単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基等を介した炭素環基;酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む複素環基を形成してもいても良い。
【0023】
合成の容易さ、電気特性の面からは、Ar2、Ar3は、各々独立して、置換基を有していても良いベンゼン環、ナフタレン環、メチレン基等であることが好ましい。
【0024】
また、一般式[1]式、kは0又は1を表し、電気特性の点からは、好ましくは1である。
【0025】
また、一般式[2]中、Xは直接結合及び下記の連結基から選ばれる。
【0026】
【化3】
【0027】
上記式中、R1はメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、シクロヘキシリデン基等のアルキレン基を表し、好ましくは、メチレン基、シクロヘキシリデン基である。R2としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0028】
このような本発明に係る高分子ポリアミンは、耐刷性、溶解性の面から、重量平均分子量が1000〜100000であることが好ましい。
【0029】
以下に、本発明に係る高分子ポリアミンの代表例を挙げるが,これらは例示であって、本発明に用いる高分子ポリアミンはこれら代表例に限定されるものではない。
【0030】
【化4】
【0031】
【化5】
【0032】
【化6】
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
【0035】
【化9】
【0036】
【化10】
【0037】
【化11】
【0038】
【化12】
【0039】
【化13】
【0040】
【化14】
【0041】
【化15】
【0042】
【化16】
【0043】
このような高分子ポリアミンは、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、公知の高分子化合物を原料として公知の反応により合成することができる。
【0044】
具体的には、下記反応式に従ってフェノール系化合物とフッ素化合物とを塩基の存在下に縮合させる方法が挙げられる。
【0045】
【化17】
【0046】
これらの反応において、場合によっては各工程終了毎に又は全工程終了後に、再結晶精製、再沈精製、昇華精製、カラム精製等の公知の精製を行うことにより、高純度化合物を得ることが可能である。
【0047】
本発明の電子写真用感光体は、このような高分子ポリアミンの1種又は2種以上を含有する感光層を有するものである。
【0048】
一般に、電子写真用感光体の感光層(光伝導層)の形態としては、電荷発生層、電荷輸送層をこの順で或いは逆に積層した積層型、或いは電荷輸送材料(電荷輸送媒体)中に電荷発生材料(電荷発生物質)の粒子を分散した所謂分散型など種々の形態のものが知られているが、本発明の電子写真用感光体の感光層はそのいずれの形態であっても良い。
【0049】
積層型感光層としては、例えば、高分子ポリアミンとバインダーからなる電荷輸送層と、光を吸収すると極めて高い効率で電荷キャリヤーを発生する電荷発生材料、或いはこの電荷発生材料とバインダーからなる電荷発生層とを積層した感光層が挙げられる。
【0050】
このような積層型感光体は、一般に、導電性支持体上に電荷発生材料を直接蒸着することにより又はバインダーとの分散液として塗布することにより電荷発生層を形成し、その上に、高分子ポリアミンを含む有機溶剤溶液をキャストするか、或いは高分子ポリアミンをバインダー、他の低分子化合物等とともに溶解ないし分散させて塗布液を調製して塗布するなどして、この高分子ポリアミンを電荷輸送材料として含有する電荷輸送層を形成することにより製造することができる。なお、前述の如く、この積層型感光体において、電荷発生層と電荷輸送層の積層順序は逆であっても良い。
【0051】
また、単層型感光層としては、例えば、高分子ポリアミンと、必要に応じて増感剤となる色素や電子吸引性化合物を添加した感光層や、電荷発生材料と高分子ポリアミンを適当なバインダー中に分散させた感光層等が挙げられる。
【0052】
このような単層型感光体は、電荷発生材料と電荷輸送材料としての高分子ポリアミンとをバインダー中に分散ないし溶解させた塗布液を導電性支持体上に塗布することにより製造することができる。
【0053】
本発明においては、高分子ポリアミンを、電荷発生層と電荷輸送層(電荷移動層)との2層からなる積層型感光層の電荷輸送層中に用いる場合に、特に感度が高く、残留電位が小さく、かつ繰り返し使用した場合に表面電位の変動や感度の低下、残留電位の蓄積等が少なく、耐久性に優れた感光体を得ることができ、好ましい。
【0054】
本発明に係る高分子ポリアミンと共に用いる電荷発生材料は、オキシチタニウムフタロシアニン類である。
【0055】
特に、下記(1) , (2)のオキシチタニウムフタロシアニンと高分子ポリアミンとを組合せると、レーザー光に対する感度が向上した感光体を得ることができる。
【0056】
(1) X線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)9.7°,14.2°,27.3°に回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン
(2) X線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)9.3°,13.2°,26.2°,27.1°に回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン
電荷発生材料としては、とりわけ上記(1)又は(2)のオキシチタニウムフタロシアニンを用いることにより、高感度で、残留電位が低く帯電性が高く、かつ、繰返しによる変動が小さく、特に、画像濃度に影響する帯電安定性が良好で高耐久性の電子写真用感光体を得ることができる。この電子写真用感光体はまた750〜850nmの領域の感度が高いことから、特に半導体レーザープリンター用感光体に適している。
【0057】
以下に、本発明の電子写真用感光体の構成について詳細に説明する。
【0058】
本発明において、感光層が形成される導電性支持体としては周知の電子写真用感光体に採用されているものがいずれも使用できる。具体的には、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料からなるドラム、シート又はこれらの金属箔のラミネート物、蒸着物、或いは表面にアルミニウム、銅、パラジウム、酸化すず、酸化インジウム等の導電性層を設けたポリエステルフィルム、紙等の絶縁性支持体が挙げられる。更に、金属粉末、カーボンブラック、ヨウ化銅、高分子電解質等の導電性物質を適当なバインダーと共に塗布して導電処理したプラスチックフィルム、プラスチックドラム、紙、紙管等が挙げられる。また、金属粉末、カーボンブラック、炭素繊維等の導電性物質を配合することで導電性を付与したプラスチックのシートやドラム、更には酸化スズ、酸化インジウム等の導電性金属酸化物で導電処理したプラスチックフィルムやベルトが挙げられる。
【0059】
これらのうち、特に好ましい支持体はアルミニウム等の金属のエンドレスパイプである。
【0060】
単層型の電子写真用感光体は、本発明に係る高分子ポリアミンを適当な溶剤中に溶解し、必要に応じ、適当な電荷発生材料、増感染料、高分子ポリアミンと電荷移動錯体を形成する電子吸引性化合物、他の電荷輸送材料、或いは、成膜性、可撓性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、架橋剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、流動性付与剤、界面活性剤、例えばシリコーンオイル、フッ素系オイル、顔料、その他の周知の添加剤を添加して得られる塗布液を、上記の導電性支持体上に塗布、乾燥し、通常、数μ〜数十μ、好ましくは10〜45μm、特に好ましくは25μm以上の膜厚の感光層を形成することにより製造することができる。
【0061】
なお、単層の感光層に電荷発生材料の粒子を分散させた分散型感光層の場合の電荷発生材料の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下とされる。また、感光層内に分散される電荷発生材料の量は例えば0.5〜50重量%の範囲であるが、この含有量が少なすぎると充分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下などの弊害がある。電荷発生材料のより好ましい含有量は1〜20重量%であり、分散型感光層の膜厚は通常5〜50μm、好ましくは10〜45μmとされる。
【0062】
ここで、マトリックスとして使用されるバインダー樹脂としては、高分子ポリアミンとの相溶性が良く、塗膜形成後に高分子ポリアミンが結晶化したり、相分離することのないポリマーが好ましく、例えば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ブタジエン等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロースエステル、セルロースエーテル、フェノキシ樹脂、けい素樹脂、エポキシ樹脂等の各種ポリマーが挙げられ、また、これらの部分的架橋硬化物も使用できる。バインダーの使用量は通常高分子ポリアミンに対し、0.5〜30重量倍、好ましくは0.7〜10重量倍の範囲である。
【0063】
電荷発生層と電荷輸送層との2層からなる積層型の電子写真用感光体の場合は、電荷発生層の上に上記単層感光層形成用の塗布液を塗布するか、或いはこの塗布液を塗布して得られる電荷輸送層の上に電荷発生層を形成させることにより、製造することができる。なお、この場合、電荷輸送層を形成するための高分子ポリアミン含有塗布液は、前記組成のものでも良いが、光導電性粒子、染料色素、電子吸引性化合物等は除くか、少量の添加でよい。
【0064】
この場合の電荷発生層としては上記光導電性粒子と必要に応じバインダーや他の有機光導電性物質、染料色素、電子吸引性化合物等の溶媒に溶解ないし分散させて得られる塗布液を塗布乾燥した薄層、或いは前記光導電性粒子を蒸着等の手段により成膜した層が挙げられる。積層型感光層の場合の電荷輸送層には、必要に応じて酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤並びに他の電荷輸送材料を含んでいても良い。電荷輸送層の膜厚は通常10〜60μm、好ましくは10〜45μm、更に好ましくは25〜40μmである。
【0065】
一方、電荷発生層は、前記電荷発生材料と必要に応じバインダーや他の有機光導電性物質、染料色素、電子吸引性化合物等を溶媒に溶解ないし分散させて得られる塗布液を塗布乾燥することにより、或いは前記電荷発生材料を蒸着等の手段により直接成膜することにより形成することができる。
【0066】
積層型感光層における電荷発生層を塗布法により形成する場合は、電荷発生材料の微粒子を、例えばポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテルなどの各種バインダー樹脂で結着した形の分散層として形成しても良い。更に、バインダー樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリアミド、けい素樹脂等も用いることができる。
【0067】
この場合の電荷発生材料の使用比率は、バインダー樹脂100重量部に対して通常20〜2000重量部、好ましくは30〜500重量部、より好ましくは33〜500重量部の範囲とされ、電荷発生層の膜厚は通常0.05〜5μm、好ましくは0.1〜2μm、より好ましくは0.15〜0.8μmが好適である。
【0068】
また、電荷発生層は必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいても良い。
【0069】
前述の如く、電荷発生層は上記電荷発生材料の蒸着膜であっても良い。
【0070】
このような積層型電子写真用感光体の場合、通常は、電荷発生層の上に電荷移動層を形成するが、電荷移動層の上に電荷発生層を形成しても良い。
【0071】
本発明の電子写真用感光体の感光層において、成膜性、可撓性、機械的強度を向上させるために前記塗布液中に添加する可塑剤としては、フタル酸エステル、りん酸エステル、エポキシ化合物、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸エステル、メチルナフタレンなどの芳香族化合物などが挙げられる。
【0072】
また、場合により添加される染料色素としては、例えばメチルバイオレッド、ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレット等のトリフェニルメタン染料、メチレンブルー等のチアジン染料、キニザリン等のキノン染料及びシアニン染料やピリリウム塩、チアピリリウム塩、ベンゾピリリウム塩等が挙げられる。
【0073】
また、高分子ポリアミンと電荷移動錯体を形成する電子吸引性化合物としては、例えばクロラニル、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、1−ニトロアントラキノン、1−クロロ−5−ニトロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類;4−ニトロベンズアルデヒド等のアルデヒド類;9−ベンゾイルアントラセン、インダンジオン、3,5−ジニトロベンゾフェノン、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、3,3′,5,5′−テトラニトロベンゾフェノン等のケトン類;無水フタル酸、4−クロロナフタル酸無水物等の酸無水物;テトラシアノエチレン、テレフタラルマロノニトリル、9−アントリルメチリデンマロノニトリル、4−ニトロベンザルマロノニトリル、4−(p−ニトロベンゾイルオキシ)ベンザルマロノニトリル等のシアノ化合物;3−ベンザルフタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)フタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等のフタリド類等の電子吸引性化合物が挙げられる。
【0074】
塗布液調製用の溶剤としてはテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;酢酸エチル、蟻酸メチル、メチルセロソルブアセテート等のエステル類;ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素などの高分子ポリアミド及びバインダーを溶解させる溶剤が挙げられる。
【0075】
本発明において、感光層には、高分子ポリアミンと共に、有機光伝導体として優れた性能を有する公知の他のアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物を混合しても良い。
【0076】
感光層の塗布方法としては、スプレー塗布法、スパイラル塗布法、リング塗布法、浸漬塗布法等がある。
【0077】
スプレー塗布法としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等があるが、均一な膜厚を得るための微粒化度、付着効率等を考えると回転霧化式静電スプレーにおいて、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、即ち円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を開けることなく連続して搬送することにより、総合的に高い付着効率で膜厚の均一性に優れた電子写真用感光体を得ることができる。
【0078】
スパイラル塗布法としては、特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機またはカーテン塗布機を用いた方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗料を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を用いた方法等がある。
【0079】
浸漬塗布法による場合には、まず、本発明に係る高分子ポリアミン、バインダー、溶剤等を用いて全固形分濃度が好ましくは25〜40重量%で、粘度が通常50〜300センチポアーズ、好ましくは100〜200センチポアーズの電荷輸送層形成用の塗布液を調製する。ここで実質的に塗布液の粘度はバインダーの種類及びその分子量により決まるが、過度に分子量が低い場合にはバインダー自体の機械的強度が低下するため、これを損わない程度の分子量を持つバインダーを使用することが好ましい。そして、調製された塗布液を用いて浸漬塗布法により電荷輸送層を形成し、その後塗膜を乾燥させる。
【0080】
本発明において、塗布液の塗布後の乾燥は、塗膜を十分に乾燥できるように乾燥温度時間を調整して行う。乾燥温度は通常100〜250℃、好ましくは110〜170℃、さらに好ましくは120〜140℃の範囲である。乾燥方法としては、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機及び遠赤外線乾燥機等を用いることができる。
【0081】
このようにして導電性支持体上に感光層を形成してなる本発明の電子写真用感光体にはまた、必要に応じ、バリアー層、接着層、ブロッキング層等の中間層、透明絶縁層、或いは保護層など、電気特性、機械特性の改良のための層が形成されていても良いことはいうまでもない。ここで、バリアー層、中間層としては、例えばアルミニウム陽極酸化被膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機層、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の有機層が使用される。更に、最表面層として従来公知の例えば熱可塑性或いは熱硬化性ポリマーを主体とするオーバーコート層を設けても良い。各層の成形方法としては、層に含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を順次塗布するなどの公知の方法が適用できる。
【0082】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0083】
実施例1
X線回折スペクトルにおいて、ブラック角(2θ±0.2°)9.3°,10.6°,13.2°,15.1°,15.7°,16.1°,20.8°,23.3°,26.2°、27.1°に強い回折ピークを示すチタニウムオキシフタロシアニン顔料1.0重量部を、ジメトキシエタン14重量部に加え、サンドグラインダーで分散処理をした後、ジメトキシエタン14重量部と4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2(三菱化学(株)社製)14重量部を加えて希釈した。これに、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)社製、商品名デンカブチラール#6000−C)0.5重量部と、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド(株)社製、商品名UCAR(商標登録)PKHH)0.5重量部を、ジメトキシエタン6重量部、4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2 6重量部の混合溶媒に溶解した液を混合して分散液を得た。この分散液をアルミ蒸着ポリエステルフィルム(蒸着層75μm)上に乾燥後の重量が0.4g/m2になるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成させた。
【0084】
この上に、下記構造式の高分子ポリアミンのテトラヒドロフラン溶液(5重量%)を塗布した後、乾燥して膜厚約10μmの電荷輸送層を形成した。
【0085】
【化18】
【0086】
このようにして得た2層からなる積層型感光層を有する電子写真用感光体によって感度(半減露光量)を測定したところ1.1μJ/cm2であった。
【0087】
なお、半減露光量は、まず、感光体を暗所で50μAのコロナ電流により負帯電させ、次いで20ルックスの白色光を干渉フィルターに通して得られた780nmの光(露光エネルギー10μW/cm2)で露光し、表面電位が−350Vから−175Vまで減衰するのに要する露光量を測定することにより求めた。
【0088】
更に、露光時間を9.9秒とした時の表面電位を残留電位として測定したところ、−76Vであった。
【0089】
従って、本発明に係る高分子ポリアミンは、電気特性、特に、感度、残留電位に優れることが確認された。
【0090】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の電子写真用感光体は、高感度、低残留電位で帯電性が高く、繰り返し使用による残留電位の上昇の問題もなく、特に画像濃度に影響する帯電安定性が良好であることから、高耐久性を示す。
【0091】
請求項2、特に請求項3の電子写真用感光体であれば、750〜850nmの領域の感度が高いことから、特に半導体レーザープリンター用感光体として好適である。
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