JP3725981B2 - 電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真用感光体に関するものである。さらに詳しくは、有機系の光導電性物質を含有する感光層を有する、非常に高感度でかつ高性能の電子写真用感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真感光体の感光層には、セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛等の無機系の光導電性物質が広く用いられていた。しかしながら、セレン、硫化カドミウムは毒物として回収が必要であり、セレンは熱により結晶化するので耐熱性に劣り、硫化カドミウム、酸化亜鉛は耐湿性に劣り、また酸化亜鉛は耐刷性がないなどの欠点を有しており、新規な感光体の開発の努力が続けられている。最近は、有機系の光導電性物質を電子写真用感光体の感光層に用いる研究が進み、そのいくつかが実用化された。有機系の光導電性物質は無機系のものに比し、軽量である、成膜が容易である、感光体の製造が容易である、種類によっては透明な感光体を製造できる、材料が無公害である等の利点を有する。
【0003】
最近は、電荷キャリヤーの発生と移動の機能を別々の化合物に分担させる、いわゆる機能分離型の感光体が高感度化に有効であることから、開発の主流となっており、このタイプによる有機系感光体の実用化も行なわれている。
電荷キャリヤー輸送媒体としては、ポリビニルカルバゾールなどの高分子光導電性化合物を用いる場合と低分子光導電性化合物をバインダーポリマー中に分散溶解する場合とがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特に、有機系の低分子光導電性化合物は、バインダーとして皮膜性、可とう性、接着性などの優れたポリマーを選択することができるので、容易に機械的特性の優れた感光体を得ることができる(例えば、特開昭60−196767号公報、特開昭60−218652号公報、特開昭60−233156号公報、特開昭63−48552号公報、特開平1−267552号公報、特公平3−39306号公報、特開平3−113459号公報、特開平3−123358号公報、特開平3−149560号公報、特開平6−273950号公報、特開昭62−36674号公報、特開平7ー036203号公報、特開平ー6ー11854、特開昭63−48553号公報等参照)。しかしながら、高感度な感光体を作るのに適した化合物を見出すことが困難であった。
【0005】
更に、絶え間ない高感度化の要請の中で、電気特性的には残留電位が不十分、光応答性が悪い、繰り返し使用した場合帯電性が低下し、残留電位が蓄積する等種々の問題を抱えており、こうした問題に対し、例えば特定の2種類のヒドラゾン化合物を併用し、感光体の他の特性をあまり損わずに残留電位上昇を防止する技術(特開昭61−134767号公報)等が報告されている。しかしながら、特性のバランスの点では必ずしも十分ではなく、感光体全体としての特性をバランスよく向上させる技術が求められていた。
【0006】
更にまた、光源として半導体レーザーがプリンター分野において積極的に応用されてきており、この場合該光源の波長は800nm前後であることから800nm前後の長波長光に対しても高感度な特性を有する感光体の開発が強く望まれている。
この目的に合致する材料として、特開昭59−49544号公報、特開昭59−214034号公報、特開昭61−109056号公報、特開昭61−171771号公報、特開昭61−217050号公報、特開昭61−239248号公報、特開昭62−67094号公報、特開昭62−134651号公報、特開昭62−275272号公報、特開昭63−198067号公報、特開昭63−198068号公報、特開昭63−210942号公報、特開昭63−218768号公報等に記載された材料が挙げられ、それぞれ電子写真感光体用材料として好適な結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニン類が種々知られている。しかしながら、更に、長波長光に対して高感度でかつ他の電気特性も良好な電子写真用感光体が求められていた。
【0007】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、その目的の第1は、高感度および高耐久性の電子写真用感光体を提供することにある。
目的の第2は、高感度であって、膜厚を厚くした場合においても残留電位が充分低く、繰り返し使用しても特性の変動が少なく、かつ耐久性に非常に優れた電子写真用感光体を提供することにある。
目的の第3は、800nm前後の長波長においても高感度でかつ帯電性、暗減衰、残留電位等が良好なバランスの取れた電子写真用感光体を提供することにある。
目的の第4は、応答性のよい、キャリヤー移動度の速い感光体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの目的を満足し得る有機系の低分子光導電性化合物について鋭意研究したところ、特定のアリールアミン系化合物が好適であることを見い出し、本発明にいたった。即ち、本発明の要旨は、導電性支持体上に、下記一般式[1]で表わされるアリールアミン系化合物を含有する感光層を有することを特徴とする電子写真感光体にある。
【0009】
【化3】
【0010】
(上記一般式[1]中、A、B、C、D、EおよびFは、置換基を有してもよいベンゼン環を表わし、これらは互いに結合して複素環を形成してもよく;Yは、置換基を有してもよい二価の芳香族炭化水素残基を表わし;R1 、R2 、R3 およびR4 は、それぞれ、水素原子を表わし;n1 およびn2 は、それぞれ、1ないし4の整数を表わし、これらは互いに同一でも異なっていてもよく;X1 およびX2 は、それぞれ、下記一般式[2]および一般式[3]で示される基を表わし、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0011】
【化4】
【0012】
(上記一般式[2]および[3]中、n3 は、0ないし4の整数を表わし;n4 は、1ないし4の整数を表わし;R6 、R7 、R11およびR12は、それぞれ、水素原子を表わし;R5 およびR10は、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表わし、これらは互いに同一でも異なっていてもよく;R8 、R9 、R13およびR14は、それぞれ、水素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を表わし、これらは互いに同一でも異なっていてもよく、R8 とR9 からなる対およびR13とR14からなる対は、縮合して炭素環基または複素環基を形成していてもよく、また、これらの対のRのどちらか一方が水素原子のときは、もう一方はアリール基または複素環基である。)
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の電子写真感光体は、感光層中に前記一般式[1]で表わされるアリールアミン系化合物を含有する。
【0014】
前記一般式[1]中、R1 、R2 、R3 およびR4 は、それぞれ、
水素原子;シアノ基;ニトロ基;
フッソ原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;
メチル基、エチル基、プロピル、イソプロピル基等のアルキル基;
フェニル基、ナフチル基、ピレニル基等のアリール基;
ピリジル基、チエニル基等の複素環基等を表し、
これらは互いに同一でも異なっていてもよく、
特に、水素原子、メチル基、フェニル基が好ましい。
また、同式[1]中、n1 およびn2 は、それぞれ、1ないし4の整数を表わし、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0015】
これらのアルキル基、アリール基、複素環基は置換基を有していてもよく、
置換基としては、
水酸基;
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基等のアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等のアルコキシ基;
アリル基、ビニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;
フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;
ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルコキシ基;
フェニル基、ナフチル基等のアリール基;
スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールビニル基;
アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;
ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、
ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基、
ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基、
ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基等のジ複素環アミノ基、
ジアリルアミノ基等のジ置換アミノ基、または、これらのジ置換アミノ基の置換基の一方を別の置換基または水素原子に変えたジ置換アミノ基またはモノ置換アミノ基等の置換アミノ基等があげられる。
アルキル基、アリール基、複素環基が有する上記各種の置換基は、単数でも複数でもよく、また、複数の場合は、これら置換基がお互いに縮合して、同一のR1 、R2 、R3 若しくはR4 内にまたは異なるR1 、R2 間に若しくは異なるR3 、R4 間に、
単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基等を介した炭素環を形成してもよく、所望ならば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む、複素環を形成してもよい。
【0016】
前記一般式[1]中、A、B、C、D、EおよびFは、それぞれ、ベンゼン環を表わし、これらはお互いに結合して、A、B、Cのいずれか二者間にまたはD、E、Fのいずれか二者間に、
単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基等を介した窒素原子を含む複素環を形成してもよく、所望ならば、さらに酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む、複素環を形成してもよい。
【0017】
これらのベンゼン環は、置換基を有してもよく、置換基としては、
水酸基;
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基等のアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等のアルコキシ基;
アリル基、ビニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;
フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;
ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルコキシ基;
フェニル基、ナフチル基等のアリール基;
アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;
ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、
ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基、
ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基、
ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基等のジ複素環アミノ基、
ジアリルアミノ基等のジ置換アミノ基、または、これらのジ置換アミノ基の置換基の一方を別の置換基または水素原子に変えたジ置換アミノ基またはモノ置換アミノ基等の置換アミノ基等があげられる。
それぞれのベンゼン環が有する置換基は、単数でも複数でもよく、また、複数の場合は、互いに同一でも異なっていてもよく、さらに、これらの置換基はお互いに縮合して、それぞれのベンゼン環上の異なる位置間に、
単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基等を介した炭素環を形成してもよく、所望ならば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む、複素環基を形成してもよい。
【0018】
前記一般式[1]中、Yは、
フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン等の二価の芳香族炭化水素残基;
チエニレン等の二価の複素環化合物残基を表わし、
好ましくは、フェニレンまたはビフェニレンであり、複素環化合物残基はとくに芳香族性をもつ複素環化合物残基、例えばチエニレンが好ましい。
【0019】
これら二価の残基は、炭素環上または複素環上に置換基を有していてもよく、置換基は、単数でも複数でもよく、また、複数の場合は、互いに同一でも異なっていてもよく、さらに、これらの置換基はお互いに縮合して、それぞれの環上の異なる位置間にまたは別の環との間に、炭素環または複素環を形成してもよい。さらにそれらの縮合形成された環も、置換基を有していてもよい。
上記二価の残基または縮合形成された環が有する置換基としては、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基等のアルキル基;
フェニル基、ナフチル基等のアリール基;
シアノ基;
アルコキシカルボニル基;
アリールオキシカルボニル基;
ニトロ基;
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子等があげられる。
【0020】
また、一般式[1]中、X1 は、下記一般式[2]で示される基を表わし、
X2 は、下記一般式[3]で示される基を表わし、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0021】
【化5】
【0022】
一般式[2]および[3]中、n3 は、0ないし4の整数を表わし;n4 は、1ないし4の整数を表わす。n3 は、溶解性の面から、0ないし2が好ましい。
【0023】
また、R5 、R6 、R7 、R8 、R9 、R10、R11、R12、R13およびR14は、
それぞれ、水素原子;シアノ基;ニトロ基;
メチル基、エチル基、プロピル、イソプロピル基等のアルキル基;
フェニル基、ナフチル基、ピレニル基等のアリール基;
ピリジル基、チエニル基等の複素環基等を表し、
これらは互いに同一でも異なっていてもよく、
特に、水素原子、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0024】
これらのアルキル基、アリール基、複素環基は置換基を有していてもよく、
置換基としては、
水酸基;
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基等のアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等のアルコキシ基;
アリル基、ビニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;
フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;
ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルコキシ基;
フェニル基、ナフチル基等のアリール基;
スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールビニル基;
アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;
ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、
ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基、
ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基、
ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基等のジ複素環アミノ基、
ジアリルアミノ基等のジ置換アミノ基、または、これらのジ置換アミノ基の置換基の一方を別の置換基または水素原子に変えたジ置換アミノ基またはモノ置換アミノ基等の置換アミノ基等があげられる。
アルキル基、アリール基、複素環基が有する上記各種の置換基は、単数でも複数でもよく、また、複数の場合は、これら置換基がお互いに縮合して、同一のR5 、R6 、R7 、R8 、R9 、R10、R11、R12、R13若しくはR14内に、異なるR5 、R6 間に、異なるR10、R11間に、R7 とR5 、R6 との間にまたはR12とR10、R11との間に、
単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基等を介した炭素環を形成してもよく、所望ならば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む、複素環を形成してもよい。
ただし、R8 とR9 からなる対およびR13とR14からなる対は、縮合して炭素環基または複素環基を形成していてもよく、また、これらの対のRのどちらか一方が水素原子のときは、もう一方はアリール基または複素環基である。
【0025】
以下に、一般式[1]で表わされるアリールアミン系化合物について、その代表例を例示のために列挙する。もちろん、本発明に用いるアリールアミン系化合物が、これら代表例のみに限定されるものではない。なお、以下の例示においては、一般式[1]に倣い、化合物の構造式と置換基X1、X2とに分けて表示し、置換基のみが相違する化合物の場合は、2番目以降の化合物については置換基X1、X2のみを表示した。
【0026】
【化6】
【0027】
【化7】
【0028】
【化8】
【0029】
【化9】
【0030】
【化10】
【0031】
【化11】
【0032】
【化12】
【0033】
【化13】
【0034】
【化14】
【0035】
【化15】
【0036】
【化16】
【0037】
【化17】
【0038】
【化18】
【0039】
【化19】
【0040】
【化20】
【0041】
【化21】
【0042】
【化22】
【0043】
【化23】
【0044】
前記一般式[1]で表わされるアリールアミン系化合物は、公知の方法を用いて、製造できる。例えば、公知のアリールアミン系化合物を原料として用いて、公知のカルボニル導入反応を行い、次いで、Wittig反応を行うことにより、目的の化合物を得る方法である。
この方法を詳しく説明すると、まず、カルボニル導入反応は、下記の反応式で示される。
【0045】
【化24】
【0046】
上記のカルボニル導入反応を示す反応式および後記のWittig反応を示す反応式において、環A、B、C、D、EおよびF、基R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 、R9 、R10、R11、R12、R13、R14、Y、X1 およびX2 並びに添字n1 、n2 、n3 およびn4 は、前述の一般式[1]、[2]、[3]におけるものと同一の意義を有する。
【0047】
1)R5 =R10=Hの場合:
一般式[4]で表わされるアリールアミン系化合物を、オキシ塩化リンの存在下に、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド等のホルミル化剤と反応させると、一般式[5]で示されるアルデヒド体が得られる。その際、ホルミル化剤を大過剰に用いて、反応溶媒を兼ねることもできるが、O−ジクロロベンゼン、ベンゼン等の反応に不活性な溶媒を用いることもできる。
【0048】
2)R5 、R10≠Hの場合
一般式[4]で表わされるアリールアミン系化合物を、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化亜鉛等のルイス酸存在下、ニトロベンゼン、ジクロルメタン、四塩化炭素等の溶媒中、一般式Cl−CO−R5 で表わされる酸塩化物および一般式Cl−CO−R10で表わされる酸塩化物と、反応させることにより一般式[5]で表わされるケトン体が得られる。
【0049】
次いで、カルボニル導入反応で得られた、一般式[5]で表わされるアルデヒド体またはケトン体と、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベンゼン、トルエン等の反応に不活性な公知の有機溶媒中で、一般式[6]、[6’](両式中、Qは塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を示す。)で表わされるハロゲン化合物にトリフェニルホスフィンまたはトリアルコキシリン化合物(R15O)3 P(R15はメチル基、エチル基等のアルキル基をあらわす。)を作用させて得られるWittig試薬とを、10〜200℃、好ましくは20〜100℃の温度で、ブチルリチウム、フェニルリチウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等の公知な塩基性触媒の存在下反応させることにより、一般式[1]で表わされるアリールアミン系化合物が得られる。
このWittig反応は、下記の反応式で示される。
【0050】
【化25】
【0051】
この時、一般式[1]で表わされるアリールアミン系化合物としては、シス体、トランス体およびシス体とトランス体との混合物のいずれかが得られる。
これらの反応において、場合によっては、各工程終了後または全工程終了後に、再結晶精製、再沈精製、昇華精製、カラム精製等の公知な精製手段により、高純度体を得ることも可能である。
【0052】
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、上記一般式[1]で表わされるアリールアミン系化合物を、1種または2種以上含有する感光層(光伝導層)を有する。しかして、一般式[1]で表わされるアリールアミン系化合物は、有機光伝導体として極めて優れた性能を示す。特に、電荷輸送媒体として用いた場合には、高感度で耐久性に優れた感光体を与える。
【0053】
本発明の電子写真感光体において、感光層は、上記一般式[1]で表わされるアリールアミン系化合物を含有するものであれば、任意の形態をとることができる。すなわち、感光層は、光を吸収すると極めて高い効率で電荷キャリヤーを発生する電荷発生材料を含有する電荷発生層および電荷キャリヤーを輸送する電荷輸送材料を含有する電荷輸送層を、この順にまたは逆の順に積層形成したいわゆる積層型でもよいし、また電荷輸送材料を含有する分散媒体中に電荷発生材料の粒子を分散させた層を形成したいわゆる分散型でもよい。
【0054】
本発明においては、上記一般式[1]で表わされる、アリールアミン系化合物を、電荷発生層と電荷輸送層の2層からなる積層型感光層の、電荷輸送層中に用いる場合に、特に感度が高く、残留電位が小さく、かつ、繰り返し使用した場合に、表面電位の変動や感度の低下、残留電位の蓄積等が少なく、耐久性に優れた感光体を得ることができる。
【0055】
本発明の電子写真感光体に使用する電荷発生材料としては、特に制限はなく、セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、硫化カドミウム、アモルファスシリコン等の無機光伝導性粒子;無金属フタロシアニン、金属含有フタロシアニン、ペリノン系顔料、チオインジゴ、キナクリドン、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔料、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、ポリアゾ系顔料、シアニン系顔料等の有機光伝導性粒子が挙げられる。さらに、多環キノン、ピリリウム塩、チオピリリウム塩、インジゴ、アントアントロン、ピラントロン等の各種有機色素も使用できる。
【0056】
これらの電荷発生材料の中では、無金属フタロシアニン;銅、塩化インジウム、塩化ガリウム、錫、オキシチタニウム、亜鉛、バナジウム等の金属またはその酸化物、塩化物の配位した金属含有フタロシアニン;モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ、ポリアゾ系等のアゾ顔料が好ましい。
【0057】
中でも、金属含有フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンは、前記一般式[1]で示されるアリールアミン系化合物と組合せた場合、レーザー光に対する感度が向上した感光体が得られるので、好ましい。
とりわけ、a)X線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)9.7°、14.2°および27.3°に回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン、b)X線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)9.3°、13.2°、26.2°および27.1°に回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンまたはc)X線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.3゜)9.2°、14.1°、15.3°、19.7°および27.1゜に回折ピークを有するジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物を含有する電子写真感光体は、高感度で、残留電位が低く帯電性が高く、かつ、繰返しによる変動が小さく、特に、画像濃度に影響する帯電安定性が良好であることから、高耐久性感光体として用いることができる。また、750〜850nmの領域の感度が高いことから、特に半導体レーザープリンター用感光体に適している。
【0058】
前記a)のオキシチタニウムフタロシアニンの製造方法は特に限定されないが、例えば以下の方法で製造される。
1 特開昭62−67094号公報製造例1中に記載されている〔II〕型結晶の製造方法。つまり、オルトフタロジニトリルとチタンのハロゲン化物とを、不活性有機溶剤中で加熱して反応させ、次いで加水分解する。
2 各種結晶型のオキシチタニウムフタロシアニンを、直接または有機酸溶媒中、硫酸または式R−SO3 H(式中、Rは、置換基を有していてもよい、脂肪族または芳香族残基を表わす。)で表わされるスルホン化物で加熱処理するとか、場合によっては、その後不溶性有機溶媒と水との混合溶媒で加熱処理する。
3 所望により、あらかじめ濃硫酸に溶解後氷水中に放出するとか、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドグラインドミル等の機械的摩砕法等の公知な方法により無定型化後、上記スルホン化物で加熱処理したり、水不溶性有機溶媒と水の混合溶媒にて加熱処理する。
4 上述のスルホン化物との処理の場合、加熱処理のかわりに、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドグラインドミル等の機械的摩砕法を併用する。
【0059】
また、本発明において、電荷発生材料として2種以上のフタロシアニン化合物を併用することもできる。例えば、前記のX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)9.7°、14.2°および27.3°に回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンとX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)9.3°、13.2°、26.2°および27.1°に回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンとを併用すること、または前記のX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)9.7°、14.2°および27.3°に回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンとX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)8.5°、12.2°、13.8°、16.9°、22.4°、28.4°および30.1°に回折ピークを示すジクロロスズフタロシアニンとを併用することは、感度の点で好ましい。
【0060】
本発明の電子写真感光体は、常法に従って製造することができる。すなわち、上記の電荷発生材料および/または電荷輸送材料を、バインダーと共に適当な溶剤中に溶解し、必要に応じ、適当な増感染料、電子吸引性化合物、可塑剤等周知の添加剤を添加して得られる塗布液を、導電性支持体上に塗布、乾燥し、所定膜厚の感光層を形成させることにより製造することができる。電荷発生層と電荷輸送層の2層からなる積層型感光層の場合は、電荷発生材料および電荷輸送材料をそれぞれ別個の塗布液として準備し、順次塗布する必要があるが、分散型感光層の場合は、両材料を含む塗布液を塗布するだけでよい。もっとも、積層型感光層の電荷発生層は塗布によらず、蒸着によって形成することも可能である。
【0061】
積層型感光層における電荷発生層に使用されるバインダー樹脂としては、例えばポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリエステルポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル等が挙げられる。電荷発生材料等の微粒子を、各種バインダー樹脂で結着した形の分散層としうるものであれば制限はない。これらのほかに、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリアミド、けい素樹脂等のバインダー樹脂も使用できる。この場合の電荷発生材料の使用比率は、バインダー樹脂100重量部に対して、通常20〜2000重量部、好ましくは30〜500重量部、より好ましくは33〜500重量部の範囲より選択される。
【0062】
積層型感光層の場合の電荷輸送層に使用されるバインダー樹脂、あるいは分散型感光層の場合のマトリックスとして使用されるバインダー樹脂としては、電荷輸送材料との相溶性が良く、塗膜形成後に電荷輸送材料が結晶化したり、相分離することのないポリマーが好ましく、例えば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ブタジエン等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロースエステル、セルロースエーテル、フェノキシ樹脂、けい素樹脂、エポキシ樹脂等の各種ポリマーが挙げられ、またこれらの部分的架橋硬化物も使用できる。バインダーの使用量は、電荷輸送材料に対し、0.5〜30重量倍、好ましくは0.7〜10重量倍の範囲である。
【0063】
塗布液調製用の溶剤としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、メチルエチルケトン、4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;酢酸エチル、蟻酸メチル、メチルセロソルブアセテート等のエステル類;ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類が挙げられる。勿論、これらの中からバインダーを溶解するものを選択する必要がある。さらに、アリールアミン系化合物等の電荷輸送材料を含む感光層の場合は、これらを溶解させる溶剤を選択することも必要である。
【0064】
次に本発明において場合により添加される染料色素としては、例えばメチルバイオレット、ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレット等のトリフェニルメタン染料、メチレンブルーなどのチアジン染料、キニザリン等のキノン染料およびシアニン染料やビリリウム塩、チアビリリウム塩、ベンゾビリリウム塩等が挙げられる。
【0065】
また、アリールアミン系化合物と電荷移動錯体を形成する電子吸引性化合物としては、例えばクロラニル、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、1−ニトロアントラキノン、1−クロロ−5−ニトロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類;4−ニトロベンズアルデヒド等のアルデヒド類;9−ベンゾイルアントラセン、インダンジオン、3,5−ジニトロベンゾフェノン、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、3,3′,5,5′−テトラニトロベンゾフェノン等のケトン類;無水フタル酸、4−クロロナフタル酸無水物等の酸無水物;テトラシアノエチレン、テレフタラルマロノニトリル、9−アントリルメチリデンマロノニトリル、4−ニトロベンザルマロノニトリル、4−(p−ニトロベンゾイルオキシ)ベンザルマロノニトリル等のシアノ化合物;3−ベンザルフタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)フタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等のフタリド類等の電子吸引性化合物が挙げられる。
【0066】
さらに、本発明の電子写真用感光体の感光層は、成膜性、可撓性、機械的強度を向上させるために、周知の可塑剤を含有していてもよい。具体的には、フタル酸エステル、りん酸エステル、エポキシ化合物、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸エステル、メチルナフタレンのような芳香族化合物等が挙げられる。
【0067】
上記した種々の添加剤のほか、積層型感光層の場合の電荷発生層は、必要に応じて、塗布性を改善するためのレベリング剤、酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。更にまた電荷発生層は上記電荷発生材料の蒸着膜であってもよい。電荷発生層の膜厚は、通常0.05〜5μm、好ましくは0.1〜2μm、より好ましくは0.15〜0.8μmが好適である。
【0068】
積層型感光層の場合の電荷輸送層は、必要に応じて、酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤並びに他の電荷輸送材料、例えば有機光伝導体として優れた性能を有する公知の他のアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物を含んでいてもよい。電荷輸送層にはこの他に、塗膜の機械的強度や、耐久性向上のための種々の添加剤を用いることができる。この様な添加剤としては、前述の可塑剤のほか、種々の安定剤、流動性付与剤、架橋剤等が挙げられる。電荷輸送層の膜厚は、通常10〜60μm、好ましくは10〜45μm、より好ましくは27〜40μmが好適である。
【0069】
分散型感光層の場合にも、成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための前述の可塑剤のほか、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、例えばシリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤が添加されていてもよい。分散型感光層の膜厚は、通常5〜50μm、好ましくは10〜45μmが好適である。
【0070】
分散型感光層の場合、電荷発生材料の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生材料の量は、例えば0.5〜50重量%の範囲であるが、少なすぎると充分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下などの弊害があり、より好ましくは1〜20重量%の範囲で使用される。
【0071】
本発明において、所定の感光層を形成するための塗布方法としては、スプレー塗布法、スパイラル塗布法、リング塗布法、浸漬塗布法等がある。
スプレー塗布法としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等があるが、均一な膜厚を得るための微粒化度、付着効率等を考えると回転霧化式静電スプレーにおいて、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、すなわち円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を開けることなく連続して搬送することにより、総合的に高い付着効率で膜厚の均一性に優れた電子写真感光体を得ることができる。
【0072】
スパイラル塗布法としては、特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機またはカーテン塗布機を用いた方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗料を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を用いた方法等がある。
【0073】
浸漬塗布法においては、あらかじめ浸漬用に調整された塗布液を用いる。すなわち、感光体、バインダー樹脂等の全固形分濃度が、25%以上、より好ましくは40%以下、また、粘度が、通常50〜300センチポアーズ、好ましくは100〜200センチポアーズとなるように、塗布液を調整する。ここで、塗布液の粘度は、実質的にバインダー樹脂の種類およびその分子量により決まるが、あまり分子量が低いと樹脂自身の機械的強度が低下するので、これを損わない程度の分子量を持つバインダー樹脂を使用することが好ましい。
【0074】
その後塗膜を乾燥させ、必要且つ充分な乾燥が行われる様に、乾燥温度時間を調整するとよい。乾燥温度は、通常100〜250℃、好ましくは110〜170℃、さらに好ましくは120〜140℃の範囲である。乾燥方法としては、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機および遠赤外線乾燥機等を用いることができる。
【0075】
このようにして形成される感光体は、電気特性・機械特性の改良のために、必要に応じ、感光層間または感光層と支持体の間に、バリアー層、接着層、ブロッキング層等の中間層を有していてもよく、また、感光層の表面に、保護層等の表面層を有していてもよいことはいうまでもない。
【0076】
中間層としては、例えばアルミニウム陽極酸化被膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機層、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の有機層が使用される。また、表面層としては、例えば紫外線硬化樹脂等の保護層が使用される。
【0077】
感光層が形成される導電性支持体としては、電子写真感光体に採用されているものがいずれも使用できる。具体的には、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料からなるドラム、シートあるいはこれらの金属箔のラミネート物;蒸着等により、表面にアルミニウム、銅、パラジウム、酸化スズ、酸化インジウム等の導電性層を設けたポリエステルフィルム、紙等の絶縁性支持体;金属粉末、カーボンブラック、ヨウ化銅、高分子電解質等の導電性物質を適当なバインダーとともに塗布して導電処理したプラスチックフィルム、プラスチックドラム、紙、紙管等;金属粉末、カーボンブラック、炭素繊維等の導電性物質を含有し、導電性となったプラスチックのシートやドラム;酸化スズ、酸化インジウム等の導電性金属酸化物で導電処理したプラスチックフィルムやベルトが挙げられる。なかでも、アルミニウム等の金属ドラムが好ましい支持体である。
【0078】
以下、本発明を、実施例によってさらに詳細に説明する。
(製造例)
カルボニル導入反応
下記式で示されるアリールアミン化合物
【0079】
【化26】
【0080】
12.9gを、DMF100mLに溶解させた。60℃まで昇温させ、オキシ塩化リン9.5gを滴下した(65℃±5℃)。2時間65℃±5℃で反応させ、TLCにて反応終了確認後、放冷し、反応溶液を 水酸化カリウム水溶液(KOH21g/水1L)中に放出した。一昼夜放置後、析出した固体を濾別し、1Lの水で2回懸洗した(濾液が中性であることを確認)。減圧下、60℃で30時間乾燥させ、DMF100mlに溶解させた。水1Lに放出し、析出した固体を濾別し、減圧下、60℃で30時間乾燥し、下記式で示されるホルミル体、暗黄色固体13gを得た。
【0081】
【化27】
【0082】
Wittig反応
上記ホルミル体6.7gおよび下記式で示されるWittig試薬
【0083】
【化28】
【0084】
9.4gをTHF100mLに溶解させ、ナトリウムメトキシドのメタノール28%溶液7.7gを少しずつ添加した(20℃±5℃)。1時間撹拌し、反応物をメタノール500mLに放出し、析出した固体を濾別した。固体を減圧下60℃で乾燥させ、カラムにより精製し、前述の代表例として最初に挙げられた構造式で示され、3番目の置換基X1、X2を有する化合物5.6gを得た。その赤外線スペクトルを図1に示した。
【0085】
(実施例1)
電荷発生層の形成
X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.3°、10.6°、13.2°、15.1°、15.7°、16.1°、20.8°、23.3°、26.2°、27.1°に強い回折ピークを示すチタニウムオキシフタロシアニン顔料1.0部を、ジメトキシエタン14部に加え、サンドグラインダーで分散処理をした後、ジメトキシエタン14部と4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2(三菱化学(株)社製)14部を加え希釈し、さらに、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)社製、商品名デンカブチラール#6000−C)0.5部と、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド(株)社製、商品名UCAR(商標登録)PKHH)0.5部をジメトキシエタン6部、4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2 6部の混合溶媒に溶解した液と混合し、分散液を得た。
この分散液を、75μm膜厚のポリエステルフィルムに蒸着されたアミノ蒸着層の上に、乾燥後の重量が0.4g/m2 になる様に、ワイヤーバーで塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成させた。
【0086】
電荷輸送層の形成
このようにして形成された電荷発生層の上に、前記製造例で合成したアリールアミン系化合物(前述の代表例として最初に挙げられた構造式で示され、3番目の置換基X1、X2を有する化合物)70部と、下記式で示されるポリカーボネート樹脂
【0087】
【化29】
【0088】
100部を、テトラヒドロフランを主とする混合溶媒900部に溶解した塗布液を塗布、乾燥し、膜厚20μmの電荷輸送層を形成させ、2層からなる感光層を有する、いわゆる積層型の電子写真用感光体を得た。
【0089】
感光体の評価
このようにして得た電子写真用感光体について、下記の電気特性を測定した。
(1)感度すなわち半減露光量:
半減露光量はまず、感光体を暗所で50μAのコロナ電流により負帯電させ、次いで20ルックスの白色光を干渉フィルターに通して得られた780nmの光(露光エネルギー10μW/cm2 )で露光し、表面電位が−550Vから−275Vまで減衰するのに要する露光量を測定することにより求めた。測定値は0.53μJ/cm2 であった。
(2)残留電位:
さらに、露光時間を9.9秒とした時の表面電位を残留電位として測定したところ、13Vであった。この操作を2000回繰り返したが、残留電位の上昇はみられなかった。
(3)ホール移動度:
TOF法により、この感光体の電荷輸送層のホール移動度を調べたところ、図2に示す結果が得られた。図中、横軸は電界強度の平方根を示し、縦軸は移動度を示す。
【0090】
(比較例1)
実施例1で用いたアリールアミン系化合物の代わりに、下記式で示される比較化合物1
【0091】
【化30】
【0092】
を用いる以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を得ようとしたが、ポリマー液に溶解した後、塗布したところ、溶媒乾燥中に塗布面上で固体が析出し電気特性の測定はできなかった。
【0093】
(比較例2)
実施例1で用いたアリールアミン系化合物の代わりに、下記式で示される比較化合物2
【0094】
【化31】
【0095】
を用いる以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を得ようとしたが、ポリマー液に溶解させようとしたが、完全に溶解せず、電気特性の測定はできなかった。
【0096】
(比較例3)
実施例1で用いたアリールアミン系化合物の代わりに、下記式で示される比較化合物3
【0097】
【化32】
【0098】
を用いる以外は、実施例1と同様にして、ポリマー液に溶解した後、塗布したところ、溶媒乾燥中に塗布面上で若干固体が析出し、塗布面が白化した。電気特性の測定は可能であったため、次いで実施例1と同様にして感度、残留電位および移動度を測定した。感度および残留電位は、下表に、実施例1の感光体についての測定結果と対比して示す。
【0099】
従って、実施例1のアリールアミン系化合物は、比較例1、2、3の電荷輸送化合物に比べ、明らかにポリマー液に対する溶解性に優れている。電気特性においても、感度、残留電位、共に優れており、比較例3に比べ、特に残留電位に優れていることがわかる。
また、移動度も、比較例3の化合物に比べ、優れていることがわかる。
【0100】
【発明の効果】
本発明の電子写真用感光体は、ポリマーとの相溶性が高く、かつ、かぶりの原因となる残留電位が小さく、とくに光疲労が少ないために繰返し使用による残留電位の蓄積や、表面電位および感度の変動が小さく耐久性に優れるという特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造例で得られたアリールアミン誘導体の赤外吸収スペクトル図。
【図2】実施例1および比較例3の感光体についての電荷輸送層のホール移動度対比図。
Claims (1)
- 導電性支持体上に、下記一般式[1]で表わされるアリールアミン系化合物を含有する感光層を有することを特徴とする電子写真感光体。
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