以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施形態の代表例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。
[アミン化合物]
本発明のアミン化合物は、下記一般式(1)で表される。
(式(1)中、Ar1ないしAr4は、置換基を有しても良い環式置換基を表し、R1ないしR4は、水素原子、又は、置換基を有しても良いアルキル基を表し、AないしBは、置換基を有しても良いベンゼン環を表す。)
Ar1ないしAr4は、置換基を有しても良い環式置換基であり、例えば、置換基を有しても良いアリール基、置換基を有しても良い脂環基、置換基を有しても良い縮合多環基、置換基を有しても良い複素環基等が挙げられる。好ましくは、炭素数20以下の環式置換基である。また、置換基を有しても良いアリール基であることが好ましく、特に好ましくは、炭素数20以下のアリール基である。具体的には、フェニル基、ナフチル基、ピレニル基であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。なお、Ar1ないしAr4のそれぞれは、同じものであってもよいし異なるものであってもよい。
Ar1ないしAr4の環式置換基に置換する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基等が挙げられる。アルキル基としては、炭素数8以下のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。アルコキシ基としては、炭素数8以下のアルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基が好ましい。アリール基としては、フェニル基が好ましい。また、Ar1ないしAr4がフェニル基である場合には、窒素原子のp−位に置換基があることが好ましく、この場合の置換基としてはアルキル基が好ましく、更に好ましくはメチル基である。また、複数の置換基がAr1ないしAr4の環式置換基に置換していてもよく、例えばメチル基が2つ置換していても良い。
AないしBは、置換基を有しても良いベンゼン環を表す。これらベンゼン環に置換しても良い置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基等が挙げられる。なかでも、炭素数8以下のアルキル基や炭素数8以下のアルコキシ基好ましく、特にメチル基が好ましい。
R1ないしR4は、水素原子、又は、置換基を有しても良いアルキル基を表す。R3ないしR4は、置換基を有しても良い炭素数8以下のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数2以下のアルキル基であって、更に好ましくはメチル基である。
R1ないしR2においては、R1が水素原子であり、R2が置換基を有しても良いアルキル基であることが好ましい。また、R1ないしR2がいずれもアルキル基の場合、連結して環構造を形成しても構わない。また、R1ないしR2においては、少なくともいずれか一つが、キラルな構造を有することが好ましい。また、R1ないしR2においては、少なくともいずれか一つが、炭素数8以下の置換基を有しても良いアルキル基であることが好ましい。
これらR1ないしR4に置換しても良い置換基としては、アルコキシ基、アリール基、アルケニル基等が挙げられるが、これらR1ないしR4は無置換であることが好ましい。
また、一般式(1)は、一般式(2)で示されることが好ましい。
一般式(1)又は一般式(2)で表されるアミン化合物の分子量としては、大きすぎると発生する有害ガスに対する耐性が劣ってくるため、1200以下が好ましく、更に好ましくは1000以下である。また、小さすぎると、移動度が足りなくなる可能性があり、550以上が好ましく、更に好ましくは650以上である。なお、ここでの分子量は質量分析法により測定される分子量を表しており、例えば、アミン化合物をマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)によりイオン化し、飛行時間型質量分析法(TOFMS)により測定した結果から得ることができる。
以下に、一般式(1)の具体例を挙げるが、これら具体例は例示のために示したものである。
上述したアミン化合物は、公知の方法により容易に合成することができる。例えば、上記の例示化合物1は、次のようにして製造することができ、他の例示化合物も同様の方法によって製造することができる。まず、トリアリールアミンを合成し、次に酸触媒を用いてカルボニル基を有する化合物を縮合させて例示化合物を得ることができる。
[電子写真感光体]
以下、本発明の電子写真感光体について説明する。本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を有し、その感光層中に上記一般式(1)で表されるアミン化合物を含有するものである。
電子写真感光体の感光層は、導電性支持体上に設けられ、下引き層を有する場合は、導電性支持体上に下引き層を介して設けられる。感光層の型式としては、電荷発生材料と電荷輸送材料とが同一層に存在し且つ結着樹脂中に分散された、いわゆる単層型感光体であってもよいし、電荷発生材料が結着樹脂中に分散された電荷発生層及び電荷輸送材料が結着樹脂中に分散された電荷輸送層の二つに機能分離された複層構造の、いわゆる積層型感光体であってもよい。また、感光層上に、帯電性の改善や、耐摩耗性改善を目的としてオーバーコート層を設けてもよい。
積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に電荷輸送層及び電荷発生層をこの順に積層して設ける逆積層型感光層とがあり、いずれを採用することも可能であるが、最もバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光層が好ましい。
本発明の電子写真感光体で使用される一般式(1)で表されるアミン化合物は、導電性支持体上に形成される何れの層に含有されていても構わないが、通常、単層型感光層又は積層型感光層の電荷輸送層に含有される。特に、電気特性に高い効果が得られることから、積層型感光層の電荷輸送層中に含有されるのが好ましい。
(導電性支持体)
感光体に用いる導電性支持体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。金属材料の導電性支持体に、導電性・表面性等の制御のためや欠陥被覆のために、適当な抵抗値をもつ導電性材料を塗布したものでもよい。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いてもよい。陽極酸化被膜を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより陽極酸化被膜が形成されるが、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は100〜300g/l、溶存アルミニウム濃度は2〜15g/l、液温は15〜30℃、電解電圧は10〜20V、電流密度は0.5〜2A/dm2の範囲内に設定されるのが好ましいが、前記条件に限定されるものではない。
このようにして形成された陽極酸化被膜に対して、封孔処理を行なうことは好ましい。封孔処理は、公知の方法で行われればよいが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、あるいは主成分として酢酸ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理が施されるのが好ましい。
上記低温封孔処理の場合、使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は適宜選べるが、その濃度が3〜6g/lの範囲で使用された場合により好ましい結果が得られる。また、低温封孔処理をスムーズに進めるために、処理温度としては、25〜40℃、好ましくは30〜35℃で、また、フッ化ニッケル水溶液のpHは、4.5〜6.5、好ましくは5.5〜6.0の範囲で処理するのがよい。pH調節剤としては、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることができる。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1〜3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するためにフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に添加しておいてもよい。この低温封孔処理は、水洗、乾燥して終了する。
前記高温封孔処理の場合、封孔剤としては、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることができるが、特に酢酸ニッケルを用いるのが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は5〜20g/lの範囲内で使用するのが好ましい。処理温度は80〜100℃、好ましくは90〜98℃で、また、酢酸ニッケル水溶液のpHは5.0〜6.0の範囲で処理するのが好ましい。pH調節剤としては、アンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることができる。処理時間は10分以上、好ましくは20分以上処理するのが好ましい。なお、この高温封孔処理の場合も被膜物性を改良するために、酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に添加してもよい。この高温封孔処理も、水洗、乾燥して終了する。形成された陽極酸化被膜の平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理等のような強い封孔条件を必要とする。こうした強い封孔条件は、生産性を悪くすると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じ易くさせる。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は通常20μm以下、特に7μm以下で形成されることが好ましい。
導電性支持体の表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであってもよい。また、安価化のためには切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。特に引き抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム支持体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等が無くなり、均一で清浄な支持体が得られるので好ましい。
(下引き層)
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けてもよい。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子等が挙げられる。これらは一種類の粒子を単独で用いてもよいし、複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコン等の有機物による処理を施されていてもよい。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また、複数の結晶状態のものが含まれていてもよい。
また、金属酸化物粒子の粒径としては種々のものが利用できるが、中でも電気特性及び下引き層形成要の塗布液の安定性の面から、平均一次粒径として通常1nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下のものが望ましい。
下引き層は、金属酸化物粒子を結着樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられる結着樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤等の公知の結着樹脂が挙げられる。これらは単独で用いても良く、或いは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、硬化剤とともに硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性、塗布性を示すことから好ましい。
下引き層に用いられる結着樹脂に対する無機粒子の使用比率は任意に選ぶことが可能であるが、分散液の安定性、塗布性の観点から、通常は10重量%以上、500重量%以下の範囲で使用することが好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性を向上させる観点から、通常は0.1μm以上、20μm以下の範囲が好ましい。
下引き層には、公知の酸化防止剤等を混合してもよい。画像欠陥防止等を目的として、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させ用いてもよい。
(電荷発生材料)
導電性支持体上に形成された感光層としては、電荷発生材料と電荷輸送材料が同一層に存在し、結着樹脂中に分散された単層構造のものであっても、もしくは電荷発生材料が結着樹脂中に分散された電荷発生層と電荷輸送材料が結着樹脂中に分散された電荷輸送層とに機能分離された積層構造のもののいずれであってもよい。感光層が積層構造を有する場合において、電荷発生層はオキシチタニウムフタロシアニン、又は/及び、アゾ顔料を電荷発生材料の少なくとも1種として含有する電荷発生材料と結着樹脂からなることは好ましい。
特に、化学的処理後に有機溶媒に接触して得られるCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを有するチタニルフタロシアニンは、好ましい。化学的処理とは、溶解、反応等の化学的現象を用いてアモルファス、もしくは低結晶性チタニルフタロシアニンを得る処理方法のことである。化学的処理の具体的な例としては、アシッドスラリー法、アシッドペースト法、ジクロロチタニルフタロシアニンにフェノール、アルコールを付加させた後に脱離させてチタニルフタロシアニンを得る方法等の化学的処理方法が挙げられ、より安定的なアモルファス、低結晶性チタニルフタロシアニンを得るにはアシッドペースト法がより好ましい。
アシッドペースト法により低結晶性チタニルフタロシアニンを得るには、チタニルフタロシアニンの濃硫酸溶液を放出媒体に放出し、再顔料化された低結晶性チタニルフタロシアニンを濾過によりウェットケーキとして濾別する。このウェットケーキは放出媒体中に存在した濃硫酸の硫酸イオン等の不純物を多く含むことから、再顔料化された後に、洗浄媒体で洗浄を行った後、有機溶媒との接触を行うことにより、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2に主たる回折ピークを有するチタニルフタロシアニンを得ることができる。
結晶変換に用いることができる溶媒としては、水と相溶性のある溶媒、水と非相溶の溶媒のいずれでも可能である。水と相溶性のある溶媒の好適な例としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテルが挙げられる。また、水と非相溶の溶媒の好適な例としては、トルエン、ナフタレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロトルエン、o−ジクロロトルエン、ジクロロフルオロベンゼン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、ニトロベンゼン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、アセトフェノン等の置換芳香族系溶媒が挙げられ、中でもテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテル、クロロトルエン、o−ジクロロベンゼン、1,2−ジクロロトルエン等のハロゲン化炭化水素溶媒、トルエン、ナフタレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒が得られた結晶の電子写真特性が良好であり好ましく、テトラヒドロフラン、モノクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,2−ジクロロトルエン、ジクロロフルオロベンゼン、トルエン、ナフタレンが、得られた結晶の分散時の安定性という点でより好ましい。
結晶変換後に得られた結晶は、乾燥工程を行うことになるが、乾燥方法は送風乾燥、加熱乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の公知の方法で乾燥することが可能である。
前記製造法により得られたチタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを有する結晶である。他の回折ピークとして、7.3°、9.6°、11.6°、14.2°、18.0°、24.1°及び27.2°、又は7.3°、9.5°、9.7°、11.6°、14.2°、18.0°、24.2°及び27.2°に主たる回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶は、電子写真感光体として用いた場合の暗減衰、残留電位の観点からより好ましい。一方、26.2°付近にピークを有する結晶は分散時の結晶安定性に劣ることから、26.2°付近にはピークを有さないことが好ましい。
これらチタニルフタロシアニンの粒子径は、製法及び結晶変換方法によって大きく異なるが、分散性を考慮すると、1次粒子径として500nm以下が好ましく、塗布成膜性の面からは300nm以下であることが好ましい。
また、チタニルフタロシアニンにおいて、昇温型電気炉(例えば三菱化学社製、QF−02など)等による元素分析手法に基づいて測定される塩素含有率は、0.4重量%以下であることが好ましい。
また、フタロシアニン環が塩素化されたフタロシアニン(クロロチタニルフタロシアニン)については、特開2001−115054号公報中に記載されている<マススペクトル測定条件>の方法をもとに測定することによっても定義することが可能である。前記同様に、クロロチタニルフタロシアニンが結晶中に含有されると、その塩素基が置換されている分だけ単分子の体積が大きくなり、結晶中の分子配列に影響を与え、結晶の安定性が低下することから、前記マススペクトル測定によるピーク強度比が、0.05以下が好ましく、クロロチタニルフタロシアニンの含有量が多くなると、感度が悪化する傾向にあることから、0.03以下がより好ましい。
また、700nm以下の波長による露光を行う場合には、以下の化学構造を示すアゾ顔料を使用することが好ましい。特に、露光工程で青−紫外露光を用いる場合は、効果が高い。下記一般式において、Cp1ないしCp3は、カップラーを表す。
カップラーCp1ないしCp3としては、好ましくは以下の化学構造が挙げられる。
更に、好ましくは、以下の化学構造を示す化合物を挙げることができる。
(式(3)中、R12は、アルキル置換基を有していてもよいシクロアルキル基を有する、総炭素数4以上20以下のアルキル基を表し、Zは
を表す。なお、環Xは置換基を有していてもよい。)
R12ないしZに置換しても良い置換基としては、C10以下のアルキル基、アルコキシ基、アリール基等が挙げられる。
機能分離した積層構造の感光体においての電荷発生層は、結着樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に電荷発生材料を分散させることにより塗布液を調整し、これを導電性支持体上に塗布し、電荷発生材料の微粒子と結着樹脂とを結着することにより形成される。電荷発生材料は、単独として用いてもよいし、又はいくつかの染顔料との混合状態で用いてもよい。
混合状態として用いる染顔料としては、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等が挙げられる。混合状態として用いる染顔料としては、光感度の面から、フタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましく使用される。
機能分離した積層構造の感光体における電荷発生層に用いられる結着樹脂の例としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーの中から選択し、用いることができるが、これらポリマーに限定されるものではない。また、これら結着樹脂は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
結着樹脂を溶解させ、塗布液の作製に用いられる溶媒、分散媒としては例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メトキシー4−メチルー2−ペンタノン等の鎖状、分岐、及び環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2―ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状、及び環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、水等が挙げられ、前述した下引き層を溶解しないものが好ましく用いられる。また、これらは単独、又は2種以上を併用しても用いることが可能である。
機能分離した積層構造の感光体の電荷発生層において、前記結着樹脂と電荷発生材料との配合比(重量)は、結着樹脂100重量部に対して電荷発生材料が10重量部以上1000重量部以下、好ましくは30重量部以上500重量部以下の範囲であり、その膜厚は通常0.1μm以上4μm以下、好ましくは0.15μm以上0.6μm以下である。電荷発生材料の比率が高すぎる場合は電荷発生材料の凝集等の問題により塗布液の安定性が低下し、一方、その比率が低すぎる場合は感光体としての感度の低下をまねくことから、前記範囲で使用することが好ましい。前記電荷発生材料を分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の公知の分散方法を用いることができる。この分散方法を用いることによって、粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の粒子サイズに微細化することが有効である。
(電荷輸送材料)
機能分離した積層構造の感光体の電荷輸送層は、電荷輸送材料を含有するとともに、通常は結着樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷輸送層は、具体的には、例えば電荷輸送材料等と結着樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布、乾燥して得ることができる。
本発明の感光体においては、電荷輸送材料として、一般式(1)に示されるアミン化合物を含有するが、それ以外に、任意の物質を併用することも可能である。公知の電荷輸送材料の例としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。これらの電荷輸送材料は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。
前記一般式(1)に示されるアミン化合物と併用可能な電荷輸送材料の好適な構造の具体例を以下に示す。これら具体例は例示のために示したものであり、本発明の趣旨に反しない限りはいかなる公知の電荷輸送材料を用いてもよい。
上記具体例において、Rは、水素原子又は、置換基である。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基等が好ましく、特に好ましくはメチル基である。
(結着樹脂)
電荷発生層と電荷輸送層を有する機能分離型感光体の電荷輸送層、及び単層型感光体の感光層形成の際は、膜強度確保のために結着樹脂(バインダー樹脂ともいう。)が使用される。機能分離型感光体の電荷輸送層の場合においては、電荷輸送材料と各種結着樹脂とを溶剤に溶解、あるいは分散して得られる塗布液を塗布、乾燥して得ることができ、また、単層型感光体の場合においては、電荷発生材料と電荷輸送材料と各種結着樹脂を溶剤に溶解、あるいは分散して得られる塗布液を塗布、乾燥して得ることができる。結着樹脂としては、例えばブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。 これら樹脂は珪素試薬等で修飾されていてもよい。上記結着樹脂のうち、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が特に好ましい。
ポリカーボネート樹脂ないしポリアリレート樹脂としては、下記構造式を有するビスフェノール、又は、ビフェノール成分を原料として合成されるポリカーボネート樹脂若しくはポリアリレート樹脂が感度及び残留電位の点から好ましく、なかでも電荷移動度の面からはポリカーボネート樹脂がより好ましい。
ポリカーボネート樹脂に好適に用いることのできるビスフェノールないしビフェノールの構造を以下に例示する。以下の例示は、本発明の趣旨を明確にするために行うものであり、本発明の趣旨に反しない限りは以下に例示される構造に限定されるものではない。
特に、本発明の効果を最大限に発揮するためには、以下の構造を示すビスフェノール誘導体を原料として合成されるポリカーボネートが好ましい。
積層型感光体の電荷輸送層、及び単層型感光体の感光層に使用される結着樹脂と電荷輸送材料との割合は、単層型感光体及び積層型感光体共に、通常、結着樹脂100重量部に対して電荷輸送材料が20重量部以上であり、残留電位低減の観点からは30重量部以上が好ましく、さらに繰り返し使用時の安定性及び電荷移動度の観点からは40重量部以上がより好ましい。また一方で、感光層の熱安定性の観点からは、結着樹脂100重量部に対して電荷輸送材料が150重量部以下であり、さらに電荷輸送材料と結着樹脂の相溶性の観点からは120重量部以下であることがより好ましく、さらに耐刷性の観点からは100重量部以下であることがより好ましく、耐傷性の観点からは80重量部以下であることが特に好ましい。
単層型感光体の場合には、上記のような配合比の電荷輸送媒体中に、さらに前記の電荷発生材料が分散される。その場合の電荷発生材料の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下のものが使用され、より好ましくは0.5μm以下のものが使用される。感光層内に分散される電荷発生材料は少なすぎると充分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下や感度の低下の弊害があり、例えば、好ましくは0.1重量%以上50重量%以下の範囲で使用され、より好ましくは1重量%以上20重量%以下の範囲で使用される。
単層型感光体の感光層の膜厚は、通常5μm以上100μm以下、好ましくは10μm以上50μm以下の範囲で使用され、順積層型感光体の電荷輸送層の膜厚は、通常5μm以上50μm以下の範囲で用いられるが、長寿命、画像安定性の観点からは、好ましくは10μm以上45μm以下、高解像度の観点からは10μm以上30μm以下がより好ましい。
なお、感光層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるために、周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤等の添加物を含有させてもよい。また、感光層には、必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。また、染料、顔料の例としては、各種の色素化合物、アゾ化合物等が挙げられ、界面活性剤の例としては、シリコーンオイル、フッ素系オイル等が挙げられる。
感光体の最表面層には、感光層の損耗を防止したり、帯電器等からの発生する放電物質等による感光層の劣化を防止・軽減したりする目的で保護層を設けてもよい。保護層は、導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成するか、特開平9−190004号公報や特開平10−252377号公報の記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いることができる。導電性材料としては、TPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミ、酸化亜鉛等の金属酸化物等を用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。保護層に用いる結着樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができ、また、特開平9−190004号公報や特開平10−252377号公報に記載のトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記結着樹脂との共重合体を用いることもできる。上記保護層は、電気抵抗が109Ω・cm以上1014Ω・cm以下となるように構成することが好ましく、電気抵抗が1014Ω・cmより高くなると残留電位が上昇しカブリの多い画像となってしまい、一方、電気抵抗が109Ω・cmより低くなると画像のぼけや解像度の低下が生じて司まう。なお、保護層は、像露光に照射される光の透過を実質上妨げないように構成されなければならない。
また、感光体表面の摩擦抵抗や摩耗を低減したり、感光体から転写ベルト又は紙へのトナーの転写効率を高めたりする等の目的で、感光体の表面層が、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、又はポリスチレン樹脂等を含んでいてもよい。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいてもよい。
(層形成方法)
感光体を構成する各層は、各層を構成する材料を含有する塗布液を、導電性支持体上に公知の塗布方法を用い、各層ごとに塗布・乾燥工程を繰り返し、順次塗布していくことにより形成される。
層形成用の塗布液は、単層型感光体及び積層型感光体の電荷輸送層の場合には、固形分濃度が通常5重量%以上40重量%以下の範囲で用いられるが、10重量%以上35重量%以下の範囲で用いられるのが好ましい。また、該塗布液の粘度は、通常10mPa・s以上500mPa・s以下の範囲で用いられるが、50mPa・s以上400mPa・s以下の範囲とするのが好ましい。
積層型感光体の電荷発生層の場合には、固形分濃度が通常0.1重量%以上15重量%以下の範囲で使用されるが、1重量%以上10重量%以下の範囲で使用されることがより好ましい。この場合の塗布液の粘度は、通常0.01mPa・s以上20mPa・s以下の範囲で使用されるが、0.1mPa・s以上10mPa・s以下の範囲で使用されることがより好ましい。
塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
塗布液の乾燥は、室温における指触乾燥後、30℃以上200℃以下の温度範囲で、1分から2時間の間、無風又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であっても、乾燥時に変更させながら行なってもよい。
[画像形成装置]
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置2、露光装置3及び現像装置4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置5、クリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2,露光装置3,現像装置4,転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。帯電装置2としては、コロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、電圧印加された直接帯電部材を感光体表面に接触させて帯電させる直接帯電装置(接触型帯電装置)帯電ブラシ等の接触型帯電装置等がよく用いられる。直接帯電手段の例としては、帯電ローラ、帯電ブラシ等の接触帯電器等が挙げられる。なお、図1では、帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示している。直接帯電手段として、気中放電を伴う帯電、あるいは気中放電を伴わない注入帯電のいずれも可能である。また、帯電ローラに樹脂シートの等を巻き付け、感光体と帯電ローラとを帯電性の安定する距離で非接触に保った状態で帯電を行なうNCローラ帯電方式をとることも可能である。また、帯電時に印加する電圧としては、直流電圧だけの場合、及び直流に交流を重畳させて用いることもできる。
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED等が挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。デジタル式電子写真方式としては、レーザー、LED、光シャッターアレイ等を用いることが好ましい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの短波長の単色光等で露光を行なえばよい。
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分絶縁トナー現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や、湿式現像方式等の任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジ等の容器からトナーTを補給することが可能に構成される。現像方式は、接触方式、非接触方式のいずれの方式で行なってもよい。用いるトナーとしては、粉砕トナーの他に、懸濁造粒、懸濁重合、乳化重合凝集法等のケミカルトナーを用いることができる。特に、ケミカルトナーの場合には、4〜8μm程度の小粒径のものが用いられ、形状も球形に近いものから、ポテト状、ラグビーボール状の球形から外れたものも使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル等の金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコーン樹脂,ウレタン樹脂,フッ素樹脂等を被覆した樹脂ロール等からなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅等の金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5では、電子写真感光体1に、トナーTの帯電電位(負極性)とは逆極性(正極性)の所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体)Pに転写するものである。本発明の画像形成装置は、上記本発明のアミン化合物を電荷輸送材料として感光層に含む電子写真感光体を備えた結果、電子写真感光体に印加するプラス帯電の転写電圧が大きい場合により大きな効果を発現する。
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
定着装置7は、上部定着部材(加圧ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス,アルミニウム等の金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にフッ素樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等が公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着、IH定着、ベルト定着、IHF定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。等の公知の方法のいずれでも用いることが可能であり、これら定着方式は単独で用いても良く、複数の定着方式を組み合わせた形で使用してもよい。
(画像形成方法)
以上のように構成された電子写真装置では、少なくとも、帯電、露光、反転現像及び転写の各プロセスを経て画像の記録が行われる。また、カラー画像形成用の電子写真装置では、電子写真感光体を並列に複数並べて使用し、少なくとも、帯電、露光、反転現像及び転写の各プロセスを各色で各感光体に対して行なうことにより、カラー画像の記録が行われる。
まず、感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えばマイナス600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そして、感光面に形成されたトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この転写装置5では、電子写真感光体1に、トナーTの帯電電位(マイナス帯電)とは逆極性(プラス帯電)の転写電圧を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙、媒体)Pに転写する。
なお、従来の転写装置では、感光面に形成されたトナーを感光体表面から記録紙Pに転写させるために、感光体の劣化原因となるプラスの転写電圧を感光体に印加しているが、本発明に係るアミン化合物を電荷輸送材料として感光層中に含有させた感光体1を用いれば、プラスの転写電圧を感光体に印加しても感光体が劣化し難いので、トナーの種類により、又は被転写媒体の種類や大きさにより、最適なプラスの転写電圧を任意に変化させて印加することが可能となる。また、タンデム方式の画像形成方法においては、各色画像を複数の画像形成ユニットで形成し、被転写媒体に逐次転写していくため、画像形成ユニットが後になるほど被転写媒体(中間転写媒体又は記録材)に転写されたトナー像の厚さが厚くなるが、その場合であっても、最適なプラスの転写電圧を任意に変化させて感光層に印加することができるので、画像の濃淡差を抑えることができる。さらに、そうした感光体1は、LED光や半導体レーザー光(特に青〜紫外露光)のような強い光に曝露しても劣化し難い(すなわち、強露光曝露時でも電位変動が小さい)という効果があるので、近年のレーザープリンター、複写機、ファクス等に使用されるLED光や半導体レーザー光(特に青−紫外露光)に対して有効である。
したがって、この転写装置5には、トナーの種類、又は被転写媒体の種類や大きさに応じて転写電圧を変化させることができる転写電圧制御手段(転写電圧制御装置)を備えていることが好ましく、その制御手段(制御装置)により、トナーの種類や被転写媒体の種類・大きさに応じて変化させたプラスの転写電圧を印加することができる。特にカラー画像の形成方法又は装置においては、各プロセスを各色で各感光体に対して行なうので、転写プロセスでの感光体1へのプラスの転写電圧を、色に応じて段階的に変化させることができる。
その後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。さらに、トナー像の記録紙P上への転写後は、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程等の工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
なお、電子写真感光体1を、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(以下適宜「電子写真感光体カートリッジ」という)として構成し、この電子写真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。例えば、帯電手段3、現像手段4及びクリーニング手段6の内、少なくとも1つをドラム状感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化とすることができる。この場合、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
以上説明したように、本発明のアミン化合物を電子写真感光体用の電荷輸送材料として用いれば、トナーを感光体表面から被転写媒体に転写させるためのプラスの転写電圧を印加した場合であっても、感光体の劣化が起き難く、さらにLED光や半導体レーザー光(特に青−紫外露光)のような強い光に曝露しても劣化し難い(すなわち、強露光曝露時でも電位変動が小さい)という効果を奏する。すなわち、本発明のアミン化合物を電子写真感光体用の電荷輸送材料として用いれば、電子写真感光体の使用開始時はもちろんのこと、繰り返し使用により感光体がプラスの転写電圧を繰り返し受けた場合であっても、その転写電圧の影響による感光体の劣化が生じ難いので、転写電圧を最適な値で任意に変化させ又は段階的に印加することができ、画像濃淡差等の画像欠陥の発生を防ぐことができるとともに、光疲労特性に優れ、耐久性にも優れた電子写真感光体及び画像形成装置を得ることができる。その結果、近年のような被転写媒体の種類が豊富な場合で、高いフルカラー品質が要求されている場合であっても、高速で高品質な画像を形成することができる。また、こうした電子写真感光体は、上記のように安定で耐久性にも優れているので、近年の高速の複写機やカラープリンターに好適に用いることができ、特に転写電圧の大きい画像形成装置においても好適に用いることができる。
以下、合成例及び実施例によって本発明を説明する。実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明の要旨に反しない限り、実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例において、「部」は「重量部」を意味し、「%」は「重量%」を意味する。
[製造例1:例示化合物1の製造]
N,N−ビス(4−メチルフェニル)−3−メトキシアニリン 4g、2−メチルプロピルアルデヒド 2g、酢酸 14g、メタンスルホン酸 0.09gの混合溶液を55℃、8時間反応させた。反応後、生成した固体をメタノールで洗浄した。乾燥後、常法により精製し、例示化合物1に相当する化合物を得た。質量分析(m/z):M+=660(理論値:660)、及び元素分析(C46H48N2O2):C,83.70;H,7.25;N,4.15(理論値:C,83.60;H,7.32;N,4.24)より構造を確認した。
[製造例2:例示化合物2の製造]
実施例1において、2−メチルプロピルアルデヒドの代わりに2−メチルブチルアルデヒドを使用する以外は、実施例1と同様にして、例示化合物2を得た。質量分析(m/z):M+=674(理論値:674)、及び元素分析(C47H50N2O2):C,83.70;H,7.65;N,4.25(理論値:C,83.64;H,7.47;N,4.15)より構造を確認した。
[製造例3:例示化合物4の製造]
実施例1において、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−3−メトキシアニリンの代わりにN−(4−メチルフェニル)−N−(2−ナフチル)−3−メトキシアニリンを使用する以外は、実施例1と同様にして、例示化合物4を得た。質量分析(m/z):M+=746(理論値:746)、及び元素分析(C53H50N2O2):C,85.40;H,6.75;N,3.55(理論値:C,85.22;H,6.75;N,3.75)より構造を確認した。
[製造例4:例示化合物7の製造]
実施例1において、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−3−メトキシアニリンの代わりにN−シクロヘキシル−N−(4−メチルフェニル)−3−フェノキシアニリンを使用し、2−メチルプロピルアルデヒドの代わりにアセトンを使用する以外は、実施例1と同様にして、例示化合物7を得た。質量分析(m/z):M+=754(理論値:754)、及び元素分析(C53H58N2O2):C,84.41;H,7.71;N,3.65(理論値:C, 84.31;H,7.74;N,3.71)より構造を確認した。
[製造例5:例示化合物12の製造]
実施例1において、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−3−メトキシアニリンの代わりにN−(4−フェニルフェニル)−N−(3、4−ジメチルフェニル)−3−エトキシアニリンを使用し、2−メチルプロピルアルデヒドの代わりに4−フェニル−2−ブタノンを使用する以外は、実施例1と同様にして、例示化合物12を得た。質量分析(m/z):M+=917(理論値:917)、及び元素分析(C66H64N2O2):C,86.61;H,7.05;N,3.02(理論値:C,86.42;H,7.03;N,3.05;)より構造を確認した。
[製造例G1]
特開平10−7925号公報中に記載の「粗TiOPcの製造例」、「実施例1」の順に従ってβ型チタニルフタロシアニンを調整した。すなわち、特開平10−7925号公報中に記載のように、粗TiOPcは、温度計、撹拌器、還流冷却器を備えた1L反応フラスコに、オルトフタロジニトリル92.0gとメチルナフタレン600mlを仕込み、撹拌下で四塩化チタン20mlを滴下し、滴下後に昇温し、200〜220℃で5時間反応させた後放冷し、130℃で熱濾過し、120℃に加熱したメチルナフタレン400mlで洗浄乾燥し、続いてメタノール200mlで洗浄乾燥してTiCl2Pcの青色粉末61.3gを得た。次に、前記と同様の反応フラスコに、得られたTiCl2Pc湿ケーキと脱酸剤として28%アンモニア水34.74g、N−メチルピロリドン600mlを仕込み、145℃(還流状態)に昇温して3時間撹拌した後、100℃に冷却して濾過し、得られたケーキをメタノールで洗浄後乾燥して粗β型TiOPc青色粉末34.8gを得た。次いで、温度計、撹拌器、還流冷却器を備えた200ml反応フラスコに、上記で得た粗β型TiOPcの湿ケーキ10.0gとトルエン100mlを仕込み、還流状態に昇温して2時間撹拌した後、80℃に冷却して濾過し、得られたケーキをメタノールで洗浄後乾燥して精製β型TiOPc(β型チタニルフタロシアニン)青色粉末9.1gを得た。
−10℃以下に冷却した95%濃硫酸720重量部中に、得られたチタニルフタロシアニン18重量部を添加した。このとき硫酸溶液の内温が−5℃を超えないようにゆっくりと添加した。添加終了後、濃硫酸溶液を−5℃以下で2時間撹拌した。撹拌後、濃硫酸溶液をガラスフィルターで濾過し、不溶分を濾別後、濃硫酸溶液を氷水10800重量部中に放出することにより、チタニルフタロシアニンを析出させ、放出後1時間撹拌した。撹拌後、溶液を濾別し、得られたウェットケーキを再度水900重量部中で1時間洗浄し、濾過を行った。この洗浄操作を濾液のイオン伝導度が0.5mS/mになるまで繰り返すことにより、低結晶性チタニルフタロシアニンのウエトケーキを185重量部得た(チタニルフタロシアニン含有率9.5%)。
得られた低結晶性チタニルフタロシアニンのウェットケーキ93重量部を水190重量部中に添加し、室温で30分撹拌した。その後、o−ジクロロベンゼン39重量部を添加し、さらに室温で1時間撹拌した。撹拌後、水を分離し、メタノール134重量部を添加し、室温で1時間撹拌洗浄した。洗浄後、濾別し、再度メタノール134重量部を用いて1時間撹拌洗浄した後、濾別し、真空乾燥機で加熱乾燥することにより、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、24.1°及び27.2°に主たる回折ピークを有するチタニルフタロシアニンを7.8量部得た。図2は、得られたオキシチタニウムフタロシアニン化合物の粉末X線回折図である。得られたチタニルフタロシアニンに含まれるクロロチタニルフタロシアニンの含有量を、特開2001−115054号公報に記載の下記手法(マススペクトル)にならって調べたところ、チタニルフタロシアニンに対し、強度比0.003以下であることを確認した。
なお、特開2001−115054号公報に記載のマススペクトル測定を以下に示す。<マススペクトル測定条件>1.試料の調整:チタニルフタロシアニン0.50gをガラスビース(1.0〜1.4mmφ)30g、シクロヘキサノン10gとともに50mlガラス容器に入れ、ペイントシェーカーで3時間処理し、チタニルフタロシアニン分散液とした。この分散液を20mlサンプルビンに1μL採取し、クロロホルム5mlを加えた。次に1時間超音波により分散させ、測定用10ppm分散液を調整した。2.測定装置:JEOL JMS−700、イオン化モード:DCI(−)、反応ガス:イソブタン(イオン化室圧力1×10-5Torr)、フィラメントレート:0→0.95A(1A/min)、加速電圧:8.0KV、質量分析能:2000、スキャン法:MF−Linearスキャン、質量範囲:500 to 600全質量範囲、スキャン時間:0.8秒、繰り返し時間:0.5秒(スキャン時間0.05秒、待ち時間0.45秒)。
<スペクトル強度比の算出>測定用分散液1μLをDCIプローブのフィラメントに塗布し、マススペクトル測定を上記条件で実施した。得られたマススペクトルにおいて、塩素化チタニルフタロシアニンの分子イオンに相当するm/z:610及び無置換チタニルフタロシアニンの分子イオンに相当するm/z:576のイオンクロマトから得られるピーク面積の比(「610」ピーク面積/「576」ピーク面積)をスペクトル強度比として算出する。
[製造例G2]
特開2001−115054号公報の実施例1に記載の手法で作製されたβ型チタニルフタロシアニンを使用する以外は、製造例CG1と同様にして、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、24.1°及び27.2°に主たる回折ピークを有するチタニルフタロシアニンを3量部得た。すなわち、特開平2001−115054号公報の実施例1に記載のように、窒素雰囲気下、フタロジニトリル33.3gをジフェニルメタン208ml中に分散し、40℃で四塩化チタン12.5gを添加し、その後1時間かけて205〜210℃まで昇温し、205〜210℃で5時間反応させ、得られた生成物を130℃で熱ろ過し、ジフェニルメタン、メタノールの順で洗浄した。次いで、N−メチルピロリドン(NMP)300ml中で140〜150℃加熱撹拌を2回繰り返し、熱水縣洗、メタノール縣洗後、乾燥してチタニルフタロシアニン26.9gを得た。得られたチタニルフタロシアニンに含まれるクロロチタニルフタロシアニンの含有量を、特開2001−115054に記載の上記手法(マススペクトル)を用いて調べたところ、チタニルフタロシアニンに対し、強度比0.05であることを確認した。
[実施例1]
表面が鏡面仕上げされた外径30mm、長さ351mm、肉厚1.0mmのアルミニウム合金よりなるシリンダーの表面に、陽極酸化処理を行い、その後酢酸ニッケルを主成分とする封孔剤によって封孔処理を行なうことにより、約6μmの陽極酸化被膜(アルマイト被膜)を形成した。
また、電荷発生材料として、製造例G1で得られたオキシチタニウムフタロシアニン20部と1,2−ジメトキシエタン280部を混合し、サンドグラインドミルで2時間粉砕して微粒化分散処理を行った。続いてこの微粉化処理液に、230部の1,2−ジメトキシエタンを混合し、さらに、結着樹脂としてのポリビニルブチラール(電気化学工業株式会社製、商品名「デンカブチラール」#6000C)10部を1,2−ジメトキシエタン253部及び4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン85部からなる混合液に溶解させて得られた結着樹脂溶液を混合して、分散液を調製した。この分散液に、陽極酸化処理したアルミニウムシリンダーを浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が0.3μmとなるように電荷発生層を作製した。
次に、電荷輸送材料として製造例1で製造した例示化合物2を50部と、結着樹脂として下記構造を繰り返し単位として持つポリカーボネート(PC1:粘度平均分子量約30,000;m:n=1:1)100部と、
下記構造を有する酸化防止剤8部と、
レベリング剤としてシリコーンオイル(商品名:KF96、信越化学工業株式会社)0.05部とを、テトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640部に溶解させた液を、上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が18μmとなるように浸漬塗布し、積層型感光層を有する感光体ドラムE1を得た。
[実施例2]
電荷輸送材料として、例示化合物1を用いる代わりに、例示化合物2を70部用い、結着樹脂として下記構造を繰り返し単位として持つポリカーボネート(PC2;粘度平均分子量約35,000)100部を用いた以外は、実施例1とまったく同様にして感光体ドラムE2を得た。
[実施例3]
電荷輸送材料として、例示化合物2を用いる代わりに、例示化合物4を70部用いた以外は、実施例2とまったく同様にして感光体ドラムE3を得た。
[実施例4]
電荷輸送材料として、例示化合物2を用いる代わりに、例示化合物12を70部用いた以外は、実施例2とまったく同様にして感光体ドラムE4を得た。
[実施例5]
電荷発生材料として、製造例G2で得られたオキシチタニウムフタロシアニンを用いた以外は、実施例2とまったく同様にして感光体ドラムE5を得た。
[実施例6]
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、高速流動式混合混練機((株)カワタ社製「SMG300」)に投入し、回転周速34.5m/秒で高速混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、及び、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行なうことにより、メタノール/1−プロパノール/トルエンの重量比が7/1/2で、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層用分散液とした。
この分散液を、陽極酸化されていないアルミニウムシリンダー(外径30mm、長さ351mm、厚さ1.0mm)に浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が1.5μmとなるように下引き層を設けた。この上に、実施例2とまったく同様にして、電荷発生層及び電荷輸送層を設け、感光体ドラムE6を得た。
[実施例7]
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(厚さ75μm)の表面にアルミニウム蒸着層(厚さ70nm)を形成した導電性支持体を用い、その導電性支持体のアルミニウム蒸着層上に、実施例6で示した下引き層用分散液をバーコーターにより乾燥後の膜厚が1.25μmとなるように塗布乾燥させ、さらにその下引き層上に、以下の電荷発生層用塗布液と実施例2と同じ電荷輸送層用塗布液を用い、電荷発生層と電荷輸送層とを順に形成して感光体シートE7を作製した。
電荷発生層用塗布液;下記式(6)で表される化合物1.5部に、1,2−ジメトキシエタン30部を加え、サンドグラインドミルで8時間粉砕し、微粒化分散処理を行った。続いて、その微粒化分散液を、ポリビニルブチラール(電気化学工業株式会社製、商品名「デンカブチラール」#6000C)0.75部とフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製品、PKHH)0.75部とを1,2−ジメトキシエタン28.5部に溶解してなる結着樹脂溶液に混合し、更に1,2−ジメトキシエタンと4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンの任意割合の混合液13.5部を混合して、固形分濃度4.0重量%の電荷発生層用塗布液を調整した。
[比較例1]
電荷輸送材料として、例示化合物2を用いる代わりに、下記化合物(A)を用いた以外は、実施例2とまったく同様にして感光体ドラムP1を得た。感光体ドラム作製後、一週間後、感光層の内部に結晶の析出が認められた。
[比較例2]
電荷輸送材料として、例示化合物2を用いる代わりに、下記化合物(B)を用いた以外は、実施例2とまったく同様にして感光体ドラムP2を得た。
[比較例3]
電荷輸送材料として、例示化合物2を用いる代わりに、下記化合物(C)を用いた以外は、実施例2とまったく同様にして感光体ドラムP3を得た。
[比較例4]
電荷輸送材料として、例示化合物2を用いる代わりに、下記化合物(D)を用いた以外は、実施例2とまったく同様にして感光体ドラムP4を得た。
[比較例5]
例示化合物2を用いる代わりに、上記化合物(B)を用いた以外は、実施例7とまったく同様にして感光体シートP5を得た。
[電気特性の評価1]
実施例1〜6及び比較例1〜4において作製した感光体ドラムを、電子写真学会標準に従って作製された電子写真特性評価装置(電子写真学会編、「続電子写真技術の基礎と応用」、コロナ社、1996年発行、404〜405頁)に装着し、以下の手順に従って、帯電(マイナス極性)、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性の評価を行った。
感光体ドラムの初期表面電位が−(マイナス。以下同じ。)700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを照射して、表面電位が−350Vとなる時の照射エネルギー(半減露光エネルギー)を感度(E1/2)として測定した(単位:μJ/cm2)。また、該露光光を1.0μJ/cm2の強度で照射したときの100ms後の露光後表面電位(VL1)を測定した(−V)。
さらに、上記プロセスの電位測定と除電の間に、転写をシミュレートする目的で、プラス極性のコロトロン帯電器を装着した。1サイクル/秒のスピードで感光体ドラムを回転させ、除電光はオフとし、マイナス、プラスの帯電のサイクルを4000回繰り返した。その後、再び除電光をオンし、VL1と同様にして露光後表面電位(VL2)を測定した(−V)。ここで、マイナス帯電はスコロトロンで初期表面電位を−700Vに帯電させる条件とし、プラス帯電は出力一定(7kV)でコロトロン帯電とした。
ΔVL=VL2−VL1を計測することで、プラス帯電の繰り返しが電子写真感光体特性に与える影響の大きさを評価した。これらの結果を表1にまとめた。
表1の結果から、実施例及び比較例のすべての感光体において、多少の差はあれ初期的には良好な電気特性を示しているが、その一方で、実施例の感光体のみプラス帯電の繰り返しの影響を受け難く、安定した特性が得られることがわかる。この結果は、本発明に係るアミン化合物を感光体用の電荷輸送材料として用いれば、静電潜像を現像したトナーを感光体表面から被転写媒体に転写させるために7kVという大きなプラス帯電を繰り返し与えた場合であっても、実施例のΔVLは比較例のΔVLに比べて大きくなく、感光体がプラス帯電の繰り返しの影響を受け難いことを示している。こうしたことは、LED光や半導体レーザー光(特に青〜紫外露光)のような強い光に曝露しても劣化し難い(すなわち、強露光曝露時でも電位変動が小さい)といえるので、本発明の感光体は、繰り返し使用して転写プロセスの影響を長く受けた場合であっても、画像濃淡差等の画像欠陥が発生することなく、光疲労特性に優れ、耐久性にも優れたものとなる。
[電気特性の評価2]
実施例7で得られた感光体シートE7と比較例5で得られた感光体シートP5を感光体ドラムに装着し、感光体特性評価装置(三菱化学株式会社製)に装着し、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性の評価を行った。
具体的には、各感光体シートE7,P5を外径80mmのアルミニウム製ドラムに巻き付け、アルミニウム製ドラムと感光体シートのアルミニウム蒸着層を電気的に導通させ、回転数30rpmの一定回転速度で回転させた。温度25℃、湿度50%の環境下、感光体の初期表面電位が−700Vとなるように帯電させ、露光にはハロゲンランプの光を干渉フィルターで427nmの単色光としたものを用いて、表面電位が−350Vとなる露光量(以下、感度ということがある)と、光量1.11μJ/cm2で露光した時の表面電位(以下、VLという)を求めた。露光から電位測定までの時間は389ミリ秒とした。除電光には75ルックスの白色光を用い、露光幅は5mmとした。除電光照射後の残留電位(以下、Vrという)を測定した。
感度は、表面電位が初期の電位の1/2になるのに必要な露光量であり、数値の小さい方がより感度が高いものとなる。また、VL及びVrは露光後の電位であり、より値の小さい方が電気特性として優れる。結果を表2に示す。
実施例7の感光体シートE7は、比較例5の感光体シートP5に比し、感度、VL、Vrがバランスよく良好であり好適な感光体であった。続いて感光体E7及びP5に、白色蛍光灯(三菱オスラム社製ネオルミスーパーFK20SS・W/18)の光を、感光体表面での光強度が2000ルックスになるように調整して10分間照射し、その後暗所で10分間放置した後、同様の測定を行った。下記表3に、初期表面電位とVLの白色蛍光灯照射前後での電気特性の変化量とを示す。変化量の小さい感光体の方が、強い光に暴露された場合でも特性変化が小さいことを示し、感光体の電気特性として、耐強光性能が優れたものである。
実施例7の感光体シートE7は、比較例5の感光体シートP5に比し、強い光に暴露された後でも電位の変化量が小さく、耐強光性能に優れていた。以上のように、一般式(1)で表されるアミン化合物を含有する感光層を有する感光体は、感度、VL、Vrに代表される電気特性がバランスよく良好であって、しかも強い光に暴露された場合でも劣化し難いものであった。
[画像評価]
実施例2及び比較例3で得られた感光体E2,P3をそれぞれ、A3印刷対応である市販のタンデム型カラープリンター(沖データ社製:Microline3050c)のシアンドラムカートリッジに装着し、上記タンデム型プリンターに装着した。まず、温度35℃、湿度80%の条件下、印刷のメディアタイプをOHPに設定し、縦送りで、三菱化学メディア社製A4版OHPフィルムMC502にシアン色の画像を100枚印刷した。次に、A3紙にシアンのベタ画像を印刷し、画像評価を行なった。
A3紙に印刷されたベタ画像のOHPの通紙エリア(感光体がOHPシートを通して転写によるダメージを受けた部分)と、OHPの非通紙エリア(感光体が直接転写によるダメージを受けた部分)との濃度差を確認したところ、比較例3の感光体P3ではOHP非通紙エリアで、実施例2で得られた感光体E2に比較して大きな濃度低下が見られた。
これより、比較例の感光体では、転写プロセスによるプラス帯電の影響で感光体がダメージを受けて、濃度差を生じさせたことがわかる。一方、本発明の感光体に限り、良好な画像を得ることができる。
次に、まったく同様の実験をマゼンタのカートリッジで行なったところ、その程度の差が小さく見られた。
さらに、OHPではなく通常のA4上質紙で転写による疲労を実施させたところ、その程度の差はさらに小さく見られた。