本発明の電子写真感光体は、下記式[I]で表される共役二重結合の部分構造を持つヒドラゾン化合物を感光層に含有することを特徴とする。
式[I]中、Ar1〜Ar3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基を示す。Ar1〜Ar3としては、6〜20の炭素原子を有するアリール基が好ましく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ただし、後述するように、mが0である場合、Ar1は、ブタジエン構造を持たない有機基を有するフェニル基、または置換基を有していてもよい縮合多環炭化水素基を示す。
アリール基としては、具体的には、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などが挙げられる。製造コストの面で、フェニル基、アントリル基のような6〜15の炭素原子を有するアリール基が好ましく、フェニル基、ナフチル基のような6〜10の炭素原子を有するアリール基が特に好ましい。更に、置換基を有する場合、該置換基としては、通常、1〜10の炭素原子を有し、好ましくは1〜6の炭素原子を有するものであって、特に好ましくは1〜4の炭素原子を有するものである。また、通常、Hammett則における置換基定数σpが0.20以下である置換基であって、好ましくは0以下、特には−0.10以下の置換基が好ましい。特に、炭素原子数が上記特定範囲のものであって、且つ置換基定数σpも上記特定範囲のものであることが好ましい。
ここで、Hammett則とは、芳香族化合物における置換基が芳香環の電子状態に与える効果を説明するために用いられる経験則である。置換ベンゼンの置換基定数σpは、置換基の電子供与/吸引の程度を表す指標となるものであり、置換基のσp値が正の方向に大きいほど電子吸引性が強い置換基であることを意味し、逆に置換基のσp値が負の方向に大きいほど電子供与性が強い置換基であることを意味する。表1に、代表的な置換基のσp値を示す(日本化学会編、「化学便覧 基礎編II 改訂4版」、丸善株式会社、平成5年9月30日発行、p.364−365)。
そのような置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜4のアルキルアミノ基、炭素数6〜10のアリール基などが挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、フェニル基、4−トリル基、4-エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、ナフチル基が挙げられる。中でも、電子写真感光体の電気特性の面からは、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
一般式[I]中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、または置換基を有していてもよいアリール基を示す。ただし、R1とR2は、同時に水素原子であってはならない。置換基を有していてもよいアリール基の中でも、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、4−トリル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、ナフチル基が挙げられる。R1およびR2としては、製造コストの面からは、水素原子またはフェニル基が特に好ましい。
式[I]中、Y1およびY2は、各ベンゼン環上の任意の位置に存在する置換基であり、それぞれ独立に、水素原子、または一価の置換基を示す。Y1およびY2で示される一価の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜4のアルキルアミノ基、炭素数6〜10のアリール基などが挙げられ、具体的には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、フェニル基、4−トリル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、ナフチル基が挙げられる。中でも、電気特性の面から、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、製造が容易であるという点で、水素原子が特に好ましい。
式[I]中、mは0または1であり、nは1以上の整数を示す。製造コストの面からは、n=1の場合が特に好ましい。
本発明で用いる式[I]で表されるヒドラゾン化合物の具体例として、以下に代表的な化合物CT−1〜CT−20を例示する。ただし、式[I]で表されるヒドラゾン化合物は、これらの化合物に限定されるものではない。
これらのヒドラゾン化合物は、公知の方法により容易に合成することができる。例えば、本発明の例示化合物CT−1は、次の反応式に従って製造することができる。
まず、トリアリールアミン(A)をVilsmeier反応でホルミル化してビスホルミル体(B)を作る。同時に、シンナミルクロライド(C)に亜リン酸トリエチルを加え、リン酸エステル(D)を作る。次に、(B)と(D)とを塩基の存在下で縮合させて、ブタジエン骨格を有するトリアリールアミンのモノホルミル体(E)を得る。最後に、(E)とN,N−ジアリールヒドラジンとを酸性条件下で脱水縮合することによって、目的物のヒドラゾン化合物(CT−1)を得ることができる。
また、CT−2のような化合物は、以下のような流れで合成することができる。
まず、1,1−ジアリールエチレン(F)をVilsmeier反応でホルミル化してホルミル体(G)を作る。同時に、p−ブロモベンジルブロマイド(H)に亜リン酸トリエチルを加え、リン酸エステル(I)を作る。次に、(G)と(I)とを塩基の存在下で縮合させて、ブタジエン誘導体(J)を得る。続いて、(J)を分子末端のハロゲン活性サイトでジアリールアミンとカップリングさせて、ブタジエン構造を有するトリアリールアミン誘導体(K)を得る。再びVilsmeier反応で(K)をホルミル化してホルミル体(L)を作り、最後に、(L)とN,N−ジアリールヒドラジンとを酸性条件下で脱水縮合させることによって、目的物のヒドラゾン化合物(CT−2)を得ることができる。
更に、CT−15やCT−16のような化合物は、以下のように合成される。
まず、ブロモアセトアルデヒドジエチルアセタル(M)に亜リン酸トリエチルを加え、リン酸エステル(N)を作る。次に、上に述べたホルミル体(E)、(L)の類縁体(O)または(P)を塩基の存在下で(N)と縮合させて、それぞれアセタル誘導体(Q)または(R)を得る。続いて(Q)または(R)を酸性条件下で加水分解し、それぞれシナミルアルデヒド誘導体(S)または(T)を得る。最後に(S)または(T)とN,N−ジアリールヒドラジンとを酸性条件下で脱水縮合することによって、目的物のヒドラゾン化合物(CT−15または16)を得ることができる。
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、式[I]で示されるヒドラゾン化合物を含有する感光層を設けたものであれば、その構造は特に制限されない。以下に、本発明にかかる電子写真感光体およびこれを用いた画像形成装置の具体的な構成例について、詳細に説明する。
1.電子写真感光体
<導電性支持体>
導電性支持体について特に制限はないが、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着または塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。導電性支持体の形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。更には、金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性などの制御や欠陥被覆のために、適当な抵抗値を有する導電性材料を塗布したものを用いてもよい。
また、導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いてもよい。陽極酸化被膜を施した場合には、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
支持体表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでもよい。また、安価化のためには、切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。
<下引き層>
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けてもよい。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したものなどが用いられる。
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子などが挙げられる。これらは一種類の粒子を単独で用いてもよいし、複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタンおよび酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、またはステアリン酸、ポリオール、シリコン等の有機物による処理を施されていてもよい。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また、複数の結晶状態のものが含まれていてもよい。
また、金属酸化物粒子の粒径としては種々のものが利用できるが、中でも特性および液の安定性の面から、SEM写真により観察される任意の10個の粒子の最大径の平均値を平均一次粒径として、10nm以上100nm以下が好ましく、特に好ましいのは、10nm以上50nm以下である。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤などの公知のバインダー樹脂が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、あるいは2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。また、硬化剤とともに硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性、塗布性を示すことから好ましい。
下引き層に用いられるバインダー樹脂に対する無機粒子の使用比率は任意に選ぶことが可能であるが、分散液の安定性、塗布性の観点から、通常は10質量%以上、500質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性および塗布性を向上させる観点から、通常は0.1μm以上、20μm以下の範囲が好ましい。
また、下引き層には、公知の酸化防止剤等を混合してもよく、画像欠陥防止などを目的として、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させてもよい。
<感光層>
電子写真感光体の感光層の形式としては、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、バインダー樹脂中に分散された単層型と、電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層および電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層の二層からなる機能分離型(積層型)とが挙げられるが、本発明においては、いずれの形式を用いることもできる。
また、積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に電荷輸送層、電荷発生層の順に積層して設ける逆積層型感光層とがあるが、いずれを採用することもできる。
本発明における感光層としては、電荷発生層と、電荷輸送層とが積層された積層型の感光層が好ましく、特に、電荷輸送層が式[I]で示されるヒドラゾン化合物を含有していることが好ましい。また、積層型の感光層の中では、バランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光層が特に好ましい。
(積層型感光層)
・電荷発生層
積層型感光層(機能分離型感光体)の場合、電荷発生層は、電荷発生物質をバインダー樹脂で結着することにより形成される。電荷発生物質としては、セレンおよびその合金、硫化カドミウム等の無機系光導電材料と、有機顔料等の有機系光導電材料とが挙げられるが、有機系光導電材料の方が好ましく、特に有機顔料が好ましい。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等が挙げられる。これらの中でも、特にフタロシアニン顔料またはアゾ顔料が好ましい。電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、通常はこれらの有機顔料の微粒子を、各種のバインダー樹脂で結着した分散層の形で使用する。
電荷発生物質として無金属フタロシアニン化合物、金属含有フタロシアニン化合物を用いた場合は比較的長波長のレーザー光、例えば780nm近辺の波長を有するレーザー光に対して高感度の感光体が得られ、またモノアゾ、ジアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料を用いた場合には、白色光、または660nm近辺の波長を有するレーザー光、もしくは比較的短波長のレーザー光(例えば380〜500nmの範囲の波長を有するレーザー光)に対して十分な感度を有する感光体を得ることができる。
電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、特にフタロシアニン顔料またはアゾ顔料が好ましい。フタロシアニン顔料は、比較的長波長のレーザー光に対して高感度の感光体が得られる点で、また、アゾ顔料は、白色光および比較的短波長のレーザー光(例えば380〜500nmの範囲の波長を有するレーザー光)に対し十分な感度を持つ点で、それぞれ優れている。
電荷発生物質としてフタロシアニン顔料を使用する場合、具体的には無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、スズ、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム、アルミニウムなどの金属またはその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシドなどの配位したフタロシアニン類の各結晶型を持ったもの、酸素原子等を架橋原子として用いたフタロシアニンダイマー類などが使用される。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ヒドロキシインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型、I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。
また、これらフタロシアニンの中でも、A型(別称β型)、B型(別称α型)、および粉末X線回折の回折角2θ(±0.2゜)が27.1゜、もしくは27.3゜に明瞭なピークを示すことを特徴とするD型(Y型)チタニルフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型および28.1゜に最も強いピークを有すること、また26.2゜にピークを持たず28.1゜に明瞭なピークを有し、かつ25.9゜の半値幅Wが0.1゜≦W≦0.4゜であることを特徴とするヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。
フタロシアニン化合物は単一の化合物のものを用いてもよいし、幾つかの混合または混晶状態のものを用いてもよい。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態における混合状態としては、それぞれの構成要素を後から混合したものを用いてもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じさせたものでもよい。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。混晶状態を生じさせるためには、特開平10−48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に磨砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
電荷発生物質としてアゾ顔料を使用する場合には、各種ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。好ましいアゾ顔料の例を下記に示す。
電荷発生物質として、上記例示の有機顔料を用いる場合には、1種を単独で用いてもよいが、2種類以上の顔料を混合して用いてもよい。この場合、可視域と近赤域の異なるスペクトル領域で分光感度特性を有する2種類以上の電荷発生物質を組み合わせて用いることが好ましく、中でもジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料とフタロシアニン顔料とを組み合わせて用いることがより好ましい。
電荷発生層に用いるバインダー樹脂は特に制限されないが、例としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼイン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせで混合して用いてもよい。
電荷発生層は、上述のバインダー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に、電荷発生物質を分散させて塗布液を調整し、これを導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布することにより形成される。
塗布液の作製に用いられる溶剤としては、バインダー樹脂を溶解させるものであれば特に制限されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等の鎖状または環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状または環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、水などが挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。なお、上述の下引き層を設ける場合には、この下引き層を溶解しないものが好ましい。
電荷発生層において、バインダー樹脂と電荷発生物質との配合比(質量)は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷発生物質が通常10質量部以上、好ましくは30質量部以上、また、通常1000質量部以下、好ましくは500質量部以下の範囲であり、その膜厚は通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは0.6μm以下の範囲である。電荷発生物質の比率が高過ぎると、電荷発生物質の凝集等により塗布液の安定性が低下するおそれがある一方、電荷発生物質の比率が低過ぎると、感光体としての感度の低下を招くおそれがある。
電荷発生物質を分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の公知の分散法を用いることができる。この際、粒子の体積平均粒子径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の範囲の粒子サイズに微細化することが有効である。
・電荷輸送層
積層型感光体の電荷輸送層は、電荷輸送物質を含有するとともに、通常はバインダー樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷輸送層は、具体的には、例えば電荷輸送物質等とバインダー樹脂とを溶剤に溶解または分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布、乾燥して得ることができる。
本発明においては、電荷輸送物質として、上述した式[I]で表されるヒドラゾン化合物が用いられる。ヒドラゾン化合物は、1種を単独で用いてもよく、複数種のものを任意の組み合わせおよび比率で用いてもよい。また、式[I]で表されるヒドラゾン化合物に加えて、公知の他の電荷輸送物質を併用してもよい。
他の電荷輸送物質を併用する場合、その種類は特に制限されないが、例えばカルバゾール誘導体、その他のヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体およびこれらの誘導体が複数結合されたものが好ましい。更に具体的には、特開平2−230255号、特開昭63−225660号、特開昭58−198043号、特公昭58−32372号、および特公平7−21646号の各公報に記載の化合物が好ましく使用される。これらの電荷輸送物質は、いずれか1種を単独で用いてもよく、複数種のものを任意の組み合わせで併用してもよい。なお、式[I]で表されるヒドラゾン化合物と公知の他の電荷輸送物質とを併用する場合は、併用する電荷輸送物質の電荷輸送物質全量における含有比率(質量%)は、特に制限されないが、1〜20%の範囲内であることが好ましい。式[I]で表されるヒドラゾン化合物の性能を効果的に発揮させるためには、3〜10%の範囲内であることが特に好ましい。
電荷輸送層に用いられるバインダー樹脂としては、例えばブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が好ましい。これらのバインダー樹脂は、適当な硬化剤を用いて熱、光等により架橋させて用いることもできる。これらのバインダー樹脂は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせで用いてもよい。
バインダー樹脂と電荷輸送物質は、通常、バインダー樹脂100質量部に対して電荷輸送物質が20質量部以上の比率で混合される。中でも、残留電位低減の観点から30質量部以上が好ましく、更には、繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点から40質量部以上がより好ましい。一方、感光層の熱安定性の観点から、電荷輸送物質を通常は150質量部以下の比率で使用する。中でも、電荷輸送物質とバインダー樹脂との相溶性の観点から110質量部以下が好ましく、耐刷性の観点から80質量部以下がより好ましく、耐傷性の観点から70質量部以下が最も好ましい。
電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、長寿命、画像安定性の観点、更には高解像度の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは45μm以下、更には30μm以下の範囲とする。
(単層型感光層)
単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質に加えて、積層型感光体の電荷輸送層と同様に、膜強度確保のためにバインダー樹脂を使用して形成する。具体的には、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダー樹脂とを溶剤に溶解または分散して塗布液を作製し、導電性支持体上(下引き層を設ける場合は下引き層上)に塗布、乾燥して得ることができる。
電荷輸送物質およびバインダー樹脂の種類並びにこれらの使用比率は、積層型感光体の電荷輸送層について説明したものと同様である。単層型感光層においては、これらの電荷輸送物質およびバインダー樹脂からなる電荷輸送媒体中に、更に電荷発生物質が分散される。
電荷発生物質としては、積層型感光体の電荷発生層について説明したものと同様のものが使用できる。ただし、単層型感光体の感光層の場合、電荷発生物質の粒子径を充分に小さくする必要がある。具体的には、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下の範囲とする。
単層型感光層内に分散される電荷発生物質の量は、少なすぎると充分な感度が得られない一方で、多過ぎると帯電性の低下、感度の低下などの弊害があることから、単層型感光層全体に対して通常0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、また、通常50質量%以下、好ましくは20質量%以下の範囲で使用される。
また、単層型感光層におけるバインダー樹脂と電荷発生物質との使用比率は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷発生物質が通常0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、また、通常30質量部以下、好ましくは10質量部以下の範囲とする。
単層型感光層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下の範囲である。
なお、積層型感光体、単層型感光体ともに、感光層またはそれを構成する各層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性などを向上させる目的で、周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤などの添加物を含有させてもよい。
(その他の機能層)
積層型感光体、単層型感光体ともに、上記手順により形成された感光層を最上層、即ち表面層としてもよいが、その上に更に別の層を設け、これを表面層としてもよい。
例えば、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減したりする目的で、保護層を設けてもよい。
保護層は、導電性材料を適当なバインダー樹脂中に含有させて形成するか、特開平9−190004号公報に記載のトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いることができる。
保護層に用いる導電性材料としては、TPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミ、酸化亜鉛等の金属酸化物などを用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。
保護層に用いるバインダー樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができ、また、特開平9−190004号公報に記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記樹脂の共重合体を用いることもできる。
保護層の電気抵抗は、通常109Ω・cm以上、1014Ω・cm以下の範囲とする。電気抵抗が前記範囲より高くなると、残留電位が上昇しカブリの多い画像となってしまう一方、前記範囲より低くなると、画像のボケ、解像度の低下が生じてしまう。また、保護層は像露光の際に照射される光の透過を実質上妨げないように構成されなければならない。
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、表面層にフッ素系樹脂、シリコン樹脂、ポリエチレン樹脂等、またはこれらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を、表面層に含有させてもよい。あるいは、これらの樹脂や粒子を含む層を新たに表面層として形成してもよい。
<電子写真感光体の形成方法>
感光体を構成する上述した各層は、含有させる物質を溶剤に溶解または分散させて得られた塗布液を、公知の手法を用いて、順次塗布・乾燥工程を繰り返して積層することによって形成される。
塗布液の調製に用いられる溶媒または分散媒に特に制限はないが、具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられる。また、これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の組み合わせおよび種類で併用してもよい。
溶媒または分散媒の使用量は特に制限されないが、各層の目的や選択した溶媒・分散媒の性質を考慮して、塗布液の固形分濃度や粘度等の物性が所望の範囲となるように適宜調整するのが好ましい。
例えば、単層型感光体、および機能分離型感光体の電荷輸送層の場合には、塗布液の固形分濃度を通常5質量%以上、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、また、通常40質量%以下、好ましくは35質量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度を通常10mPa・s以上、好ましくは50mPa・s以上、また、通常500mPa・s以下、好ましくは400mPa・s以下の範囲とする。
また、積層型感光体の電荷発生層の場合には、塗布液の固形分濃度は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、また、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度は、通常0.01mPa・s以上、好ましくは0.1mPa・s以上、また、通常20mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下の範囲とする。
塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
塗布液の乾燥は、室温における指触乾燥後、通常30℃以上、200℃以下の温度範囲で、1分から2時間の間、静止または送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であってもよく、乾燥時に温度を変更させながら加熱を行ってもよい。
2.画像形成装置
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。ただし、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置2、露光装置3および現像装置4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置5、クリーニング装置6および定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5およびクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。帯電装置としては、コロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、電圧印加された直接帯電部材を感光体表面に接触させて帯電させる直接帯電装置(接触型帯電装置)帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。直接帯電手段の例としては、帯電ローラ、帯電ブラシ等の接触帯電器などが挙げられる。なお、図1では、帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示している。直接帯電手段として、気中放電を伴う帯電、あるいは気中放電を伴わない注入帯電いずれも可能である。また、帯電時に印可する電圧としては、直流電圧だけの場合、および直流に交流を重畳させて用いることもできる。
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行って電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LEDなどが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行うようにしてもよい。露光を行う際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの短波長の単色光などで露光を行えばよい。
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分絶縁トナー現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、および、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケルなどの金属ロール、またはこうした金属ロールにシリコン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1および供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43および現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅などの金属ブレード、またはこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙、媒体)Pに転写するものである。
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。ただし、感光体表面に残留するトナーが少ないか、ほとんどない場合には、クリーニング装置6はなくても構わない。
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71および下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71または72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部および下部の各定着部材71、72は、ステンレス、アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にフッ素樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71、72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行われる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させてもよく、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行う。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行うことができる構成としてもよい。除電工程は、電子写真感光体に露光を行うことで電子写真感光体の除電を行う工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行うことができる構成としたり、オフセット印刷を行う構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
なお、電子写真感光体1を、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、および定着装置7のうち1つまたは2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(以下適宜「電子写真感光体カートリッジ」という)として構成し、この電子写真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。この場合、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
1.ヒドラゾン化合物の合成
(製造例1:例示化合物CT−1の合成)
窒素雰囲気下、N−(p−トリル)−N−フェニルアニリン(A)25.94g(100mmol)を、機械攪拌をしながら、ジメチルホルムアミド(以下、DMFという。)200mlに溶解した。これに、65〜70℃の温度を維持しながら、オキシ塩化リン(POCl3)91.99g(600mmol)をゆっくり滴下し、更に同温度で48時間攪拌した。室温まで冷却後、反応液とトルエン/脱塩水(v/v=1:1)を1〜2時間混合攪拌し、分液した。水層を更にトルエンにより抽出し、得られた有機層と、先に分液して得られた有機層とを混合した。この有機層を1NのNaOH水溶液で洗浄、分液し、更に有機層を脱塩水2〜3回で洗浄、分液した。得られた有機層の溶媒を減圧留去し、更に60℃下で減圧乾燥することによって、ホルミル体(B)26.18g(83mmol、収率83%)を得た。
窒素雰囲気下、シンナミルクロライド(C)30.52g(200mmol)に亜リン酸トリエチル39.88g(240mmol)を加え、130℃下で1時間攪拌した。減圧蒸留によって余分の亜リン酸トリエチルを留去後、室温まで冷却することによって、リン酸エステル体(D)49.83g(196mmol、収率98%)を得た。
窒素雰囲気下、上記合成したホルミル体(B)11.04g(35mmol)と、リン酸エステル体(D)9.79g(38.5mmol)とをDMF100mlに溶解し、室温下で攪拌をしながら、カリウムtert−ブトキシド4.71g(42mmol)をゆっくり添加し(必要に応じて冷却)、更に1時間攪拌した。この溶液を、メタノール300mlに滴下し、結晶化させた。固体を濾別し、それをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル500g、展開溶媒:トルエン)に通し、減圧濃縮した。これにより得た固体を再結晶により精製することによって、ブタジエン骨格のあるトリアリールアミンのモノホルミル体(E)5.09g(12.3mmol、収率35%)を黄色い粉末として得た。
窒素雰囲気下、N,N−ジフェニルヒドラジン2.49g(13.5mml)を含有するメタノール溶液を、前記モノホルミル体(E)5.09g(12.3mmol)を含有するTHF溶液(加熱還流をしながら)に滴下した。約1時間加熱還流を続け、その後室温まで冷却した。反応混合物にTHFを添加し、完全に溶けるまで攪拌した。この溶液を、メタノールに滴下し、結晶化させた。固体を吸引濾別し、50℃下で減圧乾燥した。トルエン/ヘキサン(v/v=1/2)の混合溶液で溶解し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル500g、展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/2)に通し、減圧濃縮した。得られた固体を再結晶により精製することによって、黄色い粉末として例示化合物CT−1を6.65g(11.4mmol、収率93%)得た。この化合物のIRスペクトル(JASCO社製FT/IR−350スペクトロメーター)を図2に示す。
(製造例2:例示化合物CT−3の合成)
N−(1−ナフチル)−N−フェニルアニリンを出発原料として使用した以外は、製造例1と同じ反応および精製手順で、例示化合物CT−3(収率93%)を黄色い粉末として得た。この化合物のIRスペクトル(JASCO社製FT/IR−350スペクトロメーター)を図3に示す。
(製造例3:例示化合物CT−8の合成)
N−(2,5−ジメチルフェニル)−N−フェニルアニリンを出発原料として使用した以外は、製造例1と同じ反応および精製手順で、例示化合物CT−8(収率87%)を黄色い粉末として得た。この化合物のIRスペクトル(JASCO社製FT/IR−350スペクトロメーター)を図4に示す。
(製造例4:例示化合物CT−2の合成)
窒素雰囲気下、1,1−ジフェニルエチレン(F)36.05g(200mmol)を、機械攪拌をしながら、DMF150mlに溶解した。これに、65〜70℃の温度を維持しながら、オキシ塩化リン(POCl3)61.33g(400mmol)をゆっくり滴下し、更に同温度で48時間攪拌した。室温まで冷却後、反応液とトルエン/脱塩水(v/v=1:1)とを1〜2時間混合攪拌し、分液した。水層を更にトルエンにより抽出し、得られた有機層と、先に分液して得られた有機層とを混合した。この有機層を1NのNaOH水溶液で洗浄、分液し、更に有機層を脱塩水2〜3回で洗浄、分液した。得られた有機層の溶媒を減圧留去し、更に0℃下で結晶化することによって、ホルミル体(G)36.65g(176mmol、収率88%)を得た。
窒素雰囲気下、p−ブロモベンジルブロマイド(H)50.00g(200mmol)に亜リン酸トリエチル39.88g(240mmol)を加え、90℃下で1時間攪拌した。減圧蒸留によって余分の亜リン酸トリエチルを留去後、室温まで冷却することによって、リン酸エステル体(I)61.24g(196mmol、収率98%)を得た。
窒素雰囲気下、上記合成したホルミル体(G)20.83g(100mmol)と、リン酸エステル体(I)34.37g(110mmol)とをDMF150mlに溶解し、室温下で攪拌をしながら、カリウムtert−ブトキシド12.34g(110mmol)をゆっくり添加し(必要に応じて冷却)、更に1時間攪拌した。この溶液を、メタノール/氷水(v/v=8:2)混合液400mlに滴下し、結晶化させた。固体を濾別し、減圧乾燥し、ブタジエン誘導体(J)34.32g(95mmol、収率95%)を薄黄色粉末として得た。
窒素雰囲気下、攪拌装置、温度計、還流管を装着した500mlの四つ口フラスコに、ブタジエン誘導体(J)32.51g(90mmol)、(p−トリル)フェニルアミン18.14g(99mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド9.52g(99mol)、充分に脱酸素したキシレン250mlを順次に加え、系内を窒素により置換した後、酢酸パラジウム11.2mg、トリシクロヘキシルホスフィンの15%トルエン溶液468mgを加え、140℃まで加熱し、その温度に保ちながら加熱還流を続け、反応を実施した。反応の間、反応系溶液を高速液体クロマトグラフィー(カラム:ジーエルサイエンス(株)社製イナートシルODS−3V、溶媒:アセトニトリル)で一定時間毎に分析することにより反応を追跡し、反応系溶液中のブタジエン誘導体(J)がなくなるまで(約3時間)反応を行った。反応終了後、室温まで冷却し、固体を濾別し、濾液を減圧濃縮した。得られたオイルを、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル1000g、展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/2)に通し、更にメタノールによる再沈で精製した。これを真空乾燥することによって、ブタジエン構造を有するトリアリールアミン誘導体(K)35.05g(75.6mmol、収率84%)を黄色い粉末として得た。
窒素雰囲気下、上記トリアリールアミン誘導体(K)35.05g(75.6mmol)を、機械攪拌をしながらDMF150mlに溶解した。その後、65℃まで加熱し、同温度を維持しながら、オキシ塩化リン(POCl3)13.92g(90.8mmol)をゆっくり滴下し、更に同温度で3時間攪拌した。室温まで冷却後、反応液とトルエン/脱塩水(v/v=1:1)を添加し、十分に攪拌した後、分液した。水層を更にトルエンを添加し、攪拌し、分液した。水層を更にトルエンにより抽出し、得られた有機層と、先に分液して得られた有機層とを混合した。この有機層を1NのNaOH水溶液で洗浄、分液し、更に有機層を脱塩水2〜3回で洗浄、分液した。得られた有機層の溶媒を減圧留去し、再び適量のトルエンを加えて溶液を作り、それをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル800g、展開溶媒:トルエン)に通し、減圧濃縮した。これにより得た固体を再結晶により精製することによって、ホルミル体(L)11.89g(24.2 mmol、収率32%)を黄色い粉末として得た。
窒素雰囲気下、N,N−ジフェニルヒドラジン4.91g(26.6mml)を含有するメタノール溶液を、前記モノホルミル体(L)11.89g(24.2mmol)を含有するTHF溶液(加熱還流をしながら)に滴下した。約1時間加熱還流を続け、その後室温まで冷却した。反応混合物にTHFを添加し、完全に溶けるまで攪拌した。この溶液を、メタノールに滴下し、結晶化した。固体を吸引濾別し、減圧乾燥した。トルエン/ヘキサン(v/v=1/2)の混合溶液で溶解し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル600g、展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/2)に通し、減圧濃縮した。得られた固体を再結晶により精製することによって、黄色い粉末として例示化合物CT−2を14.49g(22.0mmol、収率91%)得た。この化合物のIRスペクトル(JASCO社製FT/IR−350スペクトロメーター)を図5に示す。
(製造例5:例示化合物CT−9の合成)
窒素雰囲気下、製造例4で得たブタジエン誘導体(J)32.51g(90mmol)と(2,5−ジメチルフェニル)フェニルアミン19.53g(99mmol)を用い、製造例4のトリアリールアミン誘導体(K)と同様な手順で合成を行い、下記ブタジエン構造を有するトリアリールアミン誘導体(K−9)35.68g(74.7mmol、収率83%)を黄色い粉末として得た。
窒素雰囲気下、上記トリアリールアミン誘導体35.68g(74.7mmol)を用い、製造例4のホルミル体(L)と同様な手順でホルミル化反応および精製を行い、下記構造を有するトリアリールアミンのホルミル体(L−9)15.49g(30.6mmol、収率41%)を黄色い粉末として得た。
窒素雰囲気下、上記トリアリールアミンのホルミル体(L−9)15.49g(30.6mmol)を用い、例示化合物CT−2と同様な手順でヒドラゾン化反応および精製を行い、黄色い粉末として例示化合物CT−2を19.12g(28.5mmol、収率93%)得た。この化合物のIRスペクトル(JASCO社製FT/IR−350スペクトロメーター)を図6に示す。
(製造例6:例示化合物CT−15の合成)
窒素雰囲気下、ブロモアセトアルデヒドジエチルアセタル(M)39.41g(200mmol)に亜リン酸トリエチル39.88g(240mmol)を加え、100℃下で6時間攪拌した。その後、減圧蒸留によって余分の亜リン酸トリエチルおよび未反応の(M)を留去し、室温まで冷却することによって、リン酸エステル体(N)35.60g(140mmol、収率70%)を得た。
窒素雰囲気下、ホルミル体(O)42.96g(100mmol)およびリン酸エステル体(N)27.97g(110mmol)をDMF150mlに溶解し、室温下で攪拌をしながら、カリウムtert−ブトキシド12.34g(110mmol)をゆっくり添加し(必要に応じて冷却)、更に1時間攪拌した。この溶液を、−20℃下、メタノール/氷水(v/v=8:2)混合液400mlに滴下し、結晶化した。固体を濾別し、減圧乾燥することによって、アセタル体(Q)47.67g(90mmol、収率90%)を黄色粉末として得た。
窒素雰囲気下、アセタル体(Q)10.59g(20mmol)、氷酢酸1.0ml、脱塩水2.0mlをTHF30mlに溶解し、加熱還流しながら1時間程攪拌した。得られたアセタル体(Q)の加水分解液に、N,N−ジフェニルヒドラジン4.06g(22mmol)を含有するメタノール溶液を滴下した。約1時間加熱還流を続けた後、室温まで冷却した。反応混合物にTHFを添加し、完全に溶けるまで攪拌した。この溶液を、メタノールに滴下し、結晶化させた。固体を吸引濾別し、減圧乾燥した。得られた固体をトルエン/ヘキサン(v/v=1/2)の混合溶液で溶解し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル550g、展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/2)に通した後、減圧濃縮した。得られた固体を再結晶により精製することによって、黄色い粉末として例示化合物CT−15を10.82g(17.4mmol、収率87%)得た。この化合物のIRスペクトル(JASCO社製FT/IR−350スペクトロメーター)を図7に示す。
(製造例7:例示化合物CT−16の合成)
窒素雰囲気下、ホルミル体(P)を使用し、製造例6と同じ合成および精製手順で、例示化合物CT−16(収率89%)を黄色い粉末として得た。この化合物のIRスペクトル(JASCO社製FT/IR−350スペクトロメーター)を図8に示す。
2.電子写真感光体の作製
(実施例1:電子写真感光体A1)
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(厚み75μm)の表面にアルミニウム蒸着層(厚み70nm)を形成した導電性支持体を用い、そのアルミニウム蒸着層上に、バーコーターによって、乾燥後の膜厚が1.25μmとなるように、以下の下引き層用分散液を塗布し、乾燥させることによって下引き層を形成した。
下引き層用分散液は、次のようにして製造した。即ち、平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3質量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、高速流動式混合混練機((株)カワタ社製「SMG300」)に投入し、回転周速34.5m/秒で高速混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの質量比が7/3の混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、および、特開平4−31870号公報の実施例に記載された、ε−カプロラクタム[下記式(V)で表される化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(W)で表される化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(X)で表される化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(Y)で表される化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(Z)で表される化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行うことにより、メタノール/1−プロパノール/トルエンの質量比が7/1/2で、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを質量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層用分散液とした。
別に、A型オキシチタニウムフタロシアニン(CuKa特性X線に対するX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)に9.3°、10.6°、26.3°に回折ピークを示す)10質量部を、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン150質量部に加え、サンドグラインドミルにて1時間粉砕分散処理を行った。その後、バインダー樹脂としてのポリビニルブチラール(電気化学工業社製「デンカブチラール #6000C」)の5質量%1,2−ジメトキシエタン溶液100質量部、および、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイト社製「PKHH」)の5質量%1,2−ジメトキシエタン溶液100質量部を加えて、電荷発生層用塗布液を調整した。この電荷発生層用塗布液を、上記の導電性支持体の下引き層上に、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるようにバーコーターにより塗布し、乾燥させて電荷発生層を形成した。
また、別に、電荷輸送物質として上記製造例1にて得られた例示化合物CT−1を50質量部、バインダー樹脂100質量部、および、レベリング剤としてシリコーンオイル0.03質量部をテトラヒドロフラン/トルエン(質量比8/2)混合溶媒640質量部に溶解させて電荷輸送層用塗布液を調整した。なお、バインダー樹脂としては、以下に示す2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンを芳香族ジオール成分とする繰り返し単位(U−1)51モル%と、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを芳香族ジオール成分とする繰り返し単位(U−2)49モル%とからなり、p−t−ブチルフェノールに由来する末端構造を有するポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量30000)を用いた。
電荷輸送層用塗布液を、前記電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が20μmとなるようにフィルムアプリケーターにより塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成して、積層型感光層を有する電子写真感光体A1を製造した。
(実施例2:電子写真感光体A2)
例示化合物CT−1に代え、CT−3を電荷輸送物質として使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A2を得た。
(実施例3:電子写真感光体A3)
例示化合物CT−1に代え、CT−8を電荷輸送物質として使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A3を得た。
(実施例4:電子写真感光体A4)
例示化合物CT−1に代え、CT−2を電荷輸送物質として使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A4を得た。
(実施例5:電子写真感光体A5)
例示化合物CT−1に代え、CT−9を電荷輸送物質として使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A5を得た。
(実施例6:電子写真感光体A6)
例示化合物CT−1に代え、CT−15を電荷輸送物質として使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A6を得た。
(実施例7:電子写真感光体A7)
例示化合物CT−1に代え、CT−16を電荷輸送物質として使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A7を得た。
(比較例1:電子写真感光体P1)
例示化合物CT−1に代えて、特許文献1に例示された下記の電荷輸送物質aを使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体P1を得た。
(比較例2:電子写真感光体P2)
例示化合物CT−1に代えて、特許文献1に例示された下記の電荷輸送物質bを使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体P2を得た。
(比較例3:電子写真感光体P3)
例示化合物CT−1に代えて、特許文献1に例示された下記の電荷輸送物質cを使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体P3を得た。
(比較例4:電子写真感光体P4)
例示化合物CT−1に代えて、特許文献1に例示された下記の電荷輸送物質dを使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体P4を得た。
(比較例5:電子写真感光体P5)
例示化合物CT−1に代えて、特許文献1に例示された下記の電荷輸送物質eを使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体P5を得た。
(比較例6:電子写真感光体P6)
例示化合物CT−1に代えて、特許文献2に例示された下記の電荷輸送物質fを使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体P6を得た。
3.電子写真感光体の評価
(1)電気特性評価
上記得られた実施例1〜7および比較例1〜6の電子写真感光体の電子写真特性を、感光体評価装置(シンシア−55、ジェンテック社製)を用いて、スタティック方式でそれぞれ以下のようにして測定した。
まず、暗所でスコロトロン帯電器により、電子写真感光体を表面電位が約−700Vになるよう放電を行い、一定速度(125mm/sec)で電子写真感光体を通過させて帯電させ、その帯電圧を測定し、初期帯電圧(V0)を求めた。その後、2.5秒間放置したときの電位低下(DDR)を測定した。次に、強度1.0μW/cm2の780nm単色光を照射し、感光体表面電位が−550Vから−275Vになるまでに要した半減露光エネルギーE1/2(μJ/cm2)と、照射10秒後の残留電位(Vr)を求めた。結果を表2に示す。
表2に示すように、実施例1〜7の電子写真感光体は、半減露光エネルギーと照射10秒後の残留電圧Vrの両方について、いずれも比較例1〜6の電子写真感光体に比べて良好な結果を示した。このことから、本発明の電子写真感光体は電気特性の面で優れており、画像形成装置に好適であることが分かる。
(2)応答性の評価
実施例1〜7、比較例1〜5で得られた感光体を、電荷輸送層の電界強度E=2.0×105(V/cm)、温度21℃下におけるホールドリフト移動度をTOF法により測定した。各電子写真感光体のホールドリフト移動度を表3に示す。
表3に示すように、実施例1〜4の電子写真感光体は、比較例1〜5の電子写真感光体と比べ、ホールドリフト移動度が速い。このことから、本発明の電子写真感光体は、応答性の面でも優れており、画像形成装置に好適であることが分かる。
以上の評価結果から、式[I]で示されるヒドラゾン化合物を電荷輸送物質とする本発明の電子写真感光体は、構造が近似した電荷輸送物質であるa〜fを使用する従来の電子写真感光体と比較して、電気特性と電荷移動度のいずれの点においても大きく勝っており、両性能を併せ持つ優れた電子写真感光体であることが確認された。
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電子写真感光体および画像形成装置もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。