JP4863691B2 - 電子写真感光体、電子写真感光体用材料及びその製造方法、並びに電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体、電子写真感光体用材料及びその製造方法、並びに電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体用材料及びその製造方法、並びに電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置に関する。より詳しくは、トリアリールアミン化合物を電荷輸送物質として用いた電子写真感光体、トリアリールアミン化合物からなる電子写真感光体用材料及びその製造方法、並びにその電子写真感光体を用いた電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置に関する。
近年、電荷キャリヤーの発生と輸送の機能を別々の化合物に分担させ、これらの化合物を含有する層を個別に設けてこれらを積層した、いわゆる機能分離型の感光体が提案されている。この積層構造を有する電子写真感光体は、高感度、表面強度、耐オゾン性等に有効であることから、このタイプによる有機系の電子写真感光体の開発が主流となっており、実用化が行なわれている。
一般に、電子写真感光体内で用いられる電荷キャリヤー輸送媒体としては、高分子電荷輸送材を用いる場合と低分子光導電性化合物をバインダーポリマー中に分散溶解する場合とがある。これらの電荷輸送物質としてはこれまで多くの有機化合物が提案されているが、とりわけ、トリアリールアミン構造を有する化合物は分子設計が容易で、ホール移動度が高いなど、他の化合物に比べ電子写真特性に優れたものが多いため、電荷輸送物質に適した化合物がその後も数多く提案されている。
しかし、これらトリアリールアミン化合物を電荷輸送物質に用いた場合でも、感光体の感度特性は必ずしも十分ではなく、繰り返し使用時の電位の変動、低湿度下、高湿度下での画像欠陥など、未だ改善すべき点がある。
さらに、電子写真感光体の特性は、電荷輸送物質の構造だけでなく、その製造法にも影響される。特に、残留電位及び画像特性の変動に関しては、電荷輸送物質の製造方法の影響が強く現れることが分かっている。このような影響は、電荷輸送物質の純度、不純物のみでは説明できない点もあり、電気特性に有効なアリールアミンの製造方法が切に求められている。
一般的に、電荷輸送物質に用いられるアミン化合物は、対応するアリールハライドとアミン化合物との縮合反応で合成される。例としては、対応するヨウ化ベンゼン類とアミン化合物とから、銅触媒を用いて合成する方法(Ullmann反応)が知られている。しかし、これら銅触媒を用いる反応では、多量の銅触媒を使用すること、高い反応温度を要すること、反応時間が長いことなどの理由から、生成物であるアリールアミンの収率が低くなると同時に、電子写真特性に悪影響を及ぼす着色性の不純物や分解物が副生する。よって、反応系からのアリールアミン類の精製が困難となり、精製に高いコストを要するという課題があった。
これに対して、最近、アリールハライドとアミン化合物を原料として、塩基の存在下、有機ホスフィン化合物とパラジウム化合物とを触媒に用いてアミン類を合成する合成法が報告されている(非特許文献1〜3等参照)。この反応は比較的穏和な条件下で進むため、Ullmann反応に比べて不純物の生成量が著しく減少すると考えられる。
この反応を応用したトリアリールアミン化合物の合成法として、特許文献1及び特許文献2には、トリアルキルホスフィン及びパラジウム化合物を触媒に用いたトリアリールアミン化合物の合成法が開示されている。これらの文献によれば、各種のトリアルキルホスフィンの中で最も触媒活性の高いものはトリ−tert−ブチルホスフィンであって、これを使用することにより、コスト的に有利なアリールブロマイドを原料に使用できること、反応温度を比較的低くできること、反応時間を短縮できること、収率が非常に良いことなどのメリットを得られるとの記載がある。
また、特許文献3には、トリアルキル/アリールホスフィン化合物とパラジウム化合物とを触媒に用いたトリアリールアミン化合物の合成法が開示されている。
さらに、特許文献4には、トリシクロヘキシルホスフィンと酢酸パラジウム化合物との4/1の錯形成物質を触媒に用い、アリールアイオダイドとアミン化合物から、トリアリールアミン化合物を合成する方法が開示されている。
特許3161360号公報 特開平10−310561号公報 特開2001−356507号公報 特開2003−226674号公報 Tetrahedron. Lett., Vol.36, No.21, 3609 (1995) J. Am. Chem. Soc., Vol.120, 9722 (1998) J. Org. Chem., Vol.61, 1133 (1996)
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の方法では、触媒として使用するトリ−tert−ブチルホスフィンが極めて高価であり、製造コストが高くなる上に、空気中で非常に不安定で、取り扱いが困難である等の課題がある。
特許文献3に記載の方法では、生成物である電荷輸送物質(トリアリールアミン化合物)中に、触媒起因の不純物がごく微量ではあるが残存してしまい、これが電子写真感光体の電気特性に悪影響を与えるという課題がある。また、場合によっては、触媒活性が足りず、カプリング反応がうまく行かないケースもある。
また、特許文献4に記載の方法では、反応活性の高いアリールアイオダイドが原料として使用されている。しかし、アリールアイオダイドは比較的高価であり、且つ分子量が大きいため、原料として使用すると使用量(重量)が大きくなり、製造コストが高くなって経済的に不利である。更に、同文献に記載されたトリシクロヘキシルホスフィンと酢酸パラジウム化合物との4/1の錯形成物質を触媒成分として使用する場合には、アリールアイオダイド以外のハロゲン化物(安価なアリールブロマイドまたはアリールクロライド)を原料として用いると、十分な触媒活性が得られないため、反応時間の延長による生産性の低下、更には生成物の純度低下による電子写真感光体の電気特性の悪化など、未解決の課題が残されている。特に、原料のアミン化合物が第一級アミンである場合は、ホスフィン/パラジウムのモル比が5/1以上でないと、反応活性の高いアリールアイオダイドを使用しても、電荷輸送物質の収率及び純度のいずれについても満足できる結果が得られないという課題もある。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、その目的は、トリアリールアミン化合物を電荷輸送物質として用いた電子写真感光体であって、高感度で、耐久安定性に優れ、製造が容易で、比較的安価な、優れた電子写真感光体を提供すること、及び、この様な電子写真感光体を実現でき、優れた電子写真感光体用材料及びその製造方法を提供すること、並びに、この電子写真感光体を用いた電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特許文献1及び特許文献2に記載されたトリ−tert−ブチルホスフィン等の触媒配位子に比べ、保存安定性・安全性・コストの面で優れているトリシクロアルキルホスフィン化合物を、トリアリールアミン化合物を合成する際の触媒配位子としてパラジウム化合物を組み合わせて用いることにより、十分な触媒活性が発揮されることを見出した。更に、上記の触媒配位子を使用することにより、安価なアリールクロライド又はアリールブロマイドを原料に使用でき、しかも、得られたトリアリールアミン化合物を電荷輸送物質として電子写真感光体に用いた場合に、耐久時の電位安定性、環境安定性等に優れた特性を示すことを見出して、本発明を完成させた。
即ち、本発明の趣旨は、導電性支持体上に、電荷発生物質と電荷輸送物質とを含む感光層が少なくとも設けられてなる電子写真感光体であって、電荷輸送物質が、アリールアミン化合物、ジアリールアミン化合物の少なくとも一種、及びアリールハライドを原料とし、トリシクロアルキルホスフィンとパラジウム化合物とを5/1〜15/1のモル比で混合した触媒を用いて合成されたトリアリールアミン化合物であることを特徴とする、電子写真感光体に存する(請求項1)。
ここで、該トリアリールアミン化合物は、塩基存在下で合成されたものであることが好ましく(請求項2)、また、窒素流通下で合成されたものであることが好ましい(請求項3)。
また、トリアリールアミン化合物は、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表わされる化合物であることが好ましい(請求項4)。
Figure 0004863691
(一般式(1)及び一般式(2)中、A〜Iで表わされる環は、それぞれ独立して、置換基を有しても良いベンゼン環を表わす。)
また、本発明の別の趣旨は、上述の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電部、帯電した該電子写真感光体を露光させ静電潜像を形成する露光部、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像部のうち、少なくとも一つとを備えたことを特徴とする、電子写真感光体カートリッジに存する(請求項)。
また、本発明の別の趣旨は、上述の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電部と、帯電した該電子写真感光体を露光させ静電潜像を形成する露光部と、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像部とを備えたことを特徴とする、画像形成装置に存する(請求項)。
本発明の電子写真感光体は、高感度で、耐久安定性に優れ、製造が容易で、比較的安価な、優れた特性を有する。また、本発明の電子写真感光体用材料によれば、この様な優れた電子写真感光体を実現することができる。また、本発明の電子写真感光体用材料の製造方法によれば、上述の電子写真感光体用材料を効率的に製造することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変形を加えて実施することができる。
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも、電荷発生物質と電荷輸送物質とを含む感光層を設けてなるものであり、その電荷輸送物質として、特定の合成方法により合成されたトリアリールアミン化合物を用いることを特徴としている。
以下、まず本発明の電子写真感光体に用いられる電荷輸送物質(以下適宜「本発明の電荷輸送物質」と略称する。)について説明した上で、本発明の電子写真感光体のその他の詳細について説明し、続いて、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置について説明する。
〔1.電荷輸送物質〕
本発明の電荷輸送物質は、トリアリールアミン化合物からなる材料であって、アミン化合物及びアリールハライドを原料とし、特定の触媒(トリシクロアルキルホスフィン化合物とパラジウム化合物を5/1〜15/1の割合で混合した触媒)を用いて合成されたものである。
以下、触媒として用いられるトリシクロアルキルホスフィン化合物及びパラジウム化合物についてまず説明した上で、この触媒を用いたトリアリールアミン化合物の合成手順について詳しく説明する。
(トリシクロアルキルホスフィン化合物)
トリシクロアルキルホスフィン化合物は、リン原子に3つのシクロアルキル基が結合した構造の化合物である。
個々のシクロアルキル基の種類は特に制限されない。環の数は単一でも複数でも良く、複数の場合には互いに縮合していても良いが、単環であることが好ましい。個々の環の炭素数は通常3以上、好ましくは5以上、また、通常8以下、好ましくは7以下の範囲である。シクロアルキル基全体の炭素数としては、通常9以上、好ましくは15以上、また、通常24以下、好ましくは21以下である。シクロアルキル基の好ましい具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられるが、中でも、製造が容易であるという理由から、シクロヘキシル基が好ましい。
また、個々のシクロアルキル基は、更に置換基を有していても良い。置換基を有する場合、本発明の趣旨に反するものでない限り、その種類は特に制限されない。例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜6のアルキル基や、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基などが挙げられる。中でもアルキル基が好ましく、アルキル基の中でもメチル基が特に好ましい。但し、個々のシクロアルキル基は、無置換であるか、置換基を有している場合にはメチル基であることが好ましく、無置換であることが最も好ましい。
3つのシクロアルキル基は、置換基を有する場合にはその置換基も含めて、全て同じものであってもよく、何れか2つ又は3つが互いに異なるものであっても良い。但し、合成の容易さの観点からは、全てが同一であることが好ましい。
また、これらのシクロアルキル基のうち任意の2つ、又は3つ全てが、任意の連結基を介して互いに連結されていてもよい。
以下に、本発明に用いられるトリシクロアルキルホスフィン化合物の具体例を示すが、これに限定されるものではない。
Figure 0004863691
上記例示のトリシクロアルキルホスフィン化合物の中でも、触媒の安定性を鑑みると、トリシクロヘキシルホスフィン、トリス(2−メチルシクロヘキシル)ホスフィン、トリシクロペンチルホスフィンが好ましく、中でも、製造コストの観点からは、トリシクロヘキシルホスフィンが特に好ましい。
なお、トリシクロアルキルホスフィン化合物は、何れか一種を単独で用いても良く、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
トリシクロアルキルホスフィン化合物は、特許文献1及び特許文献2に記載されたトリ−tert−ブチルホスフィン等に比べて、保存安定性・安全性の面で優れている。即ち、トリ−tert−ブチルホスフィン等は、空気に接触させると発煙したり、場合によっては発火したりするおそれがあるのに対し、トリシクロアルキルホスフィン化合物は、室温で空気に短時間接触させても発煙や発火のおそれがなく、触媒活性を失わずに比較的容易に取り扱えるのが特徴である。
(パラジウム化合物)
パラジウム化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、ヘキサクロルパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、ヘキサクロルパラジウム(IV)酸カリウム四水和物等の四価パラジウム化合物類;塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)等の二価パラジウム化合物類;トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)などのパラジウム化合物類などが挙げられる。中でも、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)が好ましく、触媒活性を鑑みた場合、酢酸パラジウム(II)が特に好ましい。なお、パラジウム化合物は、何れか一種を単独で用いても良く、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いても良い。
(トリアリールアミン化合物)
上述の触媒(トリシクロアルキルホスフィン化合物及びパラジウム化合物)を用いて合成するトリアリールアミン化合物としては、電子写真感光体の電荷輸送物質として使用可能なものであれば、その種類は特に制限されない。但し、上述の触媒を使って合成した場合に本発明の効果が顕著に得られるという点から、トリフェニルアミン構造を有するものであることが好ましく、中でも、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表わされる化合物であることが特に好ましい。
Figure 0004863691
一般式(1)及び一般式(2)中、A〜Iで表わされる環は、それぞれ独立して、置換基を有しても良いベンゼン環を表わす。置換基の種類としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ビニル基、ブタジエニル基等が挙げられる。これらの置換基は、更にアルキル基、アルコキシ基、アリール基等の有機基により置換されていても構わない。置換基の炭素数は、これらが更に他の有機基により置換されている場合にはそれも含めた値で、通常2以上、好ましくは4以上、また、通常30以下、好ましくは15以下の範囲である。個々のベンゼン環が有する置換基の数は、通常0〜4、中でも0〜2の範囲が好ましい。複数の置換基を有する場合は、これらが互いに連結基を介して、又は直接結合して環構造を作成しても構わない。
特に、トリアリールアミン化合物は、下記一般式(3)、下記一般式(4)、又は下記一般式(5)で示される化合物であることが好ましい。
Figure 0004863691
上記の一般式(3)、一般式(4)、及び一般式(5)中、R1〜R13は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していても良い、アルキル基、アルコキシ基、若しくはアリール基を表わす。特に、アルキル基、アリール基が好ましく、得られる効果の点からは、アルキル基が好ましい。アルキル基の中でも、メチル基が好ましい。
Yは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基を表わす。中でも、水素原子又はアルキル基が好ましい。
lは、1〜3の整数を表わす。電気特性の観点から、2又は3が好ましく、溶解性の観点から、2が特に好ましい。
m、n、o及びpは、各々独立に0〜5の整数を表わす。中でも1又は2が好ましい。xは、0又は1を表わす。中でも0が好ましい。
上述のトリアリールアミン化合物の具体例を以下に示すが、本発明の電荷輸送物質として使用可能なトリアリールアミン化合物は、これらの例に限定されるものではない。
Figure 0004863691
Figure 0004863691
上記例示のトリアリールアミン化合物の中でも、本発明の効果が特に顕著に現れる化合物としては、(CT−1)、(CT−5)等のテトラフェニルベンジジン構造を有する化合物や、(CT−8)、(CT−9)等のトリフェニルアミン構造を有する化合物が挙げられる。
(アリールハライド及びアミン化合物)
本発明では、上述のトリアリールアミン化合物を合成するための原料として、アリールハライド及びアミン化合物を用いる。アリールハライド及びアミン化合物の種類は、所望のトリアリールアミン化合物の構造に対応した組み合わせであれば良く、特に限定されるものではない。具体的に、アリールハライドとしては、ハライドの種類の違いに応じて、アリールクロライド、アリールブロマイド、またはアリールアイオダイドが挙げられる。なかでも、製造コストの観点から、比較的安価、かつ反応活性も優れたブロモ体がより好ましい。ハライドの数の違いに応じて、アリールモノハライド、アリールジハライド等が挙げられるが、これらの何れであってもよい。また、アミン化合物としては、アリール基の数に応じて、アリールアミン、ジアリールアミン等が挙げられるが、やはりこれらの何れであってもよい。中でも、アリールモノハライドとジアリールアミンの組み合わせ、アリールジハライドとジアリールアミンの組み合わせ、アリールモノハライドとアリールアミンの組み合わせなどが好ましい。なお、アリールハライドとアミン化合物は、それぞれ一種を単独で用いても良く、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
(原料及び触媒の割合)
原料であるアリールハライドとアミン化合物との割合は、使用するアリールハライドとアミン化合物との組み合わせや、目的とするトリアリールアミン化合物の種類に応じて、適切な当量比となるように選択する。原料の割合が適切な当量比を満たさないと、過剰な原料が反応に関与せずに残ってしまい、コスト面や反応効率の面で好ましくない上に、意図しない副反応等が生じる場合もある。
触媒成分であるトリシクロアルキルホスフィン化合物とパラジウム化合物との割合は、トリシクロアルキルホスフィン化合物/パラジウム化合物のモル比の値で、通常5/1以上、好ましくは6/1以上、また、通常15/1以下、好ましくは10/1以下の範囲である。トリシクロアルキルホスフィン化合物の割合が低すぎると、アリールアイオダイド以外のハロゲン化物(安価なアリールブロマイドまたはアリールクロライド)を原料として用いる時、十分な触媒活性が得られないことがある。特に、原料のアミン化合物は第一級アミンである場合は、ホスフィン/パラジウムのモル比が5/1以上でないと、反応活性の高いアリールアイオダイドを使用しても、電荷輸送物質の収率および純度において、いずれも満足できる結果が得られないため好ましくない。一方、トリシクロアルキルホスフィン化合物の割合が多過ぎると(ホスフィン/パラジウムのモル比が15/1以上)、添加量に見合った効果が得られず、逆に、電荷輸送物質中にリン成分が残存してしまい、電気特性に悪影響に与えることで好ましくない。なお、複数種のトリシクロアルキルホスフィン化合物及び/又は複数種のパラジウム化合物を併用する場合は、複数種のトリシクロアルキルホスフィン化合物及び/又は複数種のパラジウム化合物の合計量が上述の割合の範囲を満たすようにする。
パラジウム化合物を基準に換算した触媒配位子の添加量は、アリールハライド化合物環上のハロゲン原子1molに対し、通常0.005mol%以上、好ましくは0.02mol%以上、また、通常1mol%以下、好ましくは0.1mol%以下の範囲である。触媒成分の割合が少な過ぎると、十分な触媒活性が得られないという理由から好ましくなく、逆に触媒成分の割合が多過ぎると、添加量に見合った効果が得られず、経済的に不利という理由から好ましくない。
(反応用溶媒)
トリアリールアミン化合物の合成反応は、通常は溶媒の存在下に実施される。反応用の溶媒としては、ハロゲン溶媒以外の一般的な不活性な有機溶媒であれば良く、特に限定されるものではないが、原料(アリールハライド及びアミン化合物)に対する溶解性の点で、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素溶媒や、モノグライム等のエーテル系溶媒が好ましく、中でもキシレンが特に好ましい。
反応用溶媒を用いる場合、その使用量は特に制限されないが、全原料(アリールハライド及びアミン化合物)に対する重量比の値で、通常100重量%以上、好ましくは200重量%以上、また、通常800重量%以下、好ましくは600重量%以下の範囲である。反応用溶媒の割合が少な過ぎると、生成物の純度が低下するおそれがあるという理由から好ましくなく、逆に反応用溶媒の割合が多過ぎると、合成効率が悪くなるという理由から好ましくない。
(合成反応)
トリアリールアミン化合物の合成反応の手順は特に制限されないが、通常は反応容器中で、触媒成分であるトリシクロアルキルホスフィン化合物及びパラジウム化合物の共存下、原料であるアリールハライドとアミン化合物とを接触させて反応させればよい。個々の触媒や原料を加える順序は特に制限されないが、通常は、原料であるアリールハライドとアミン化合物とを溶媒の存在下で混合して反応系溶液を作製し、この反応系溶液に触媒成分であるトリシクロアルキルホスフィン化合物及びパラジウム化合物を加えて反応を開始させる。個々の触媒成分であるトリシクロアルキルホスフィン化合物及びパラジウム化合物は、それぞれ単独で反応系溶液に加えてもよいが、予めこれらの触媒成分を溶媒の存在下で混合して錯体形成させてから、これを反応系溶液に加えてもよい。
なお、反応系溶液中に塩基を加えるのが好ましい。塩基の存在下でトリアリールアミン化合物の合成反応を行なうと、副生するハロゲン化水素を効率良く除去できるという利点が得られる。使用される塩基としては、無機塩基及び/又は有機塩基から選択すれば良く、特に限定するものではないが、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、リチウム−tert−ブトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド及びカリウム−tert−ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドが好ましく、中でもナトリウム−tert−ブトキシドがより好ましい。また、リン酸三カリウム及び炭酸セシウムなどの無機塩基も有効である。塩基の使用量は特に制限されないが、原料のアリールアミン化合物に対するモル比の値で、通常100mol%以上、好ましくは120mol%以上、また、通常600mol%以下、好ましくは500mol%以下の範囲である。塩基の割合が少な過ぎると、反応が進行し難いという理由から好ましくない。
また、合成反応時には、シクロアルキルホスフィン化合物の触媒活性を高め、反応を効率的に進める観点から、系中に発生するアルコール等を系外に早期に、強制的に排出することも有効である。排出を行なうには窒素フローを用いると有効である。合成反応を窒素フロー(窒素流通)下で行なう場合、その窒素流通量は、反応容器の体積に対して、1分当たり通常0.0001%以上、好ましくは0.001%以上、また、通常5%以下、好ましくは3%以下の範囲である。利用する窒素は高純度のものが好ましいが、安価製造の為には、液体窒素から発生する窒素を利用しても構わない。
反応時の温度は特に制限されないが、通常70℃以上、好ましくは100℃以上、また、通常170℃以下、好ましくは150℃以下の範囲である。反応時の温度が低過ぎると、反応速度が遅くなるという理由から好ましくなく、逆に反応時の温度が高過ぎると、目的のトリアリールアミン化合物が着色し易くなるという理由からやはり好ましくない。
反応時の圧力も特に制限されないが、通常1×104Pa以上、好ましくは5×104Pa以上、また、通常1×107Pa以下、好ましくは1×106Pa以下の範囲である。反応時の圧力が低過ぎると、必要な反応温度に達成できず、反応が進行し難いという理由から好ましくなく、逆に反応時の圧力が高過ぎると、製造設備の安全性に関わる投資が上がりかねないという理由からやはり好ましくない。
反応時間は特に制限されないが、反応が終点に達するまで(即ち、ほぼ全ての原料が反応して、残存する原料が実質的に無くなるまで)行えばよい。反応が終点に達したか否かは、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の手法により確認することができる。反応が終点に達するまでの時間は、使用する原料や触媒成分の種類や量、反応温度や反応圧力等によって異なるため、一概に言うことはできないが、反応が終点に、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、また、通常10時間以下、好ましくは6時間以下の範囲である。
反応終了後、必要に応じて反応系溶液に後処理を行なう。例えば、反応系溶液に塩基を加えている場合には、精製水を用いて溶媒分画することにより塩基成分を抽出し、反応系容液を中和するのが好ましい。
反応後(及び後処理後)の反応系溶液から溶媒を除去することにより、粗生成物を得る。溶媒を除去する手法は特に制限されないが、常温又は加熱条件下、また、常圧又は減圧条件下で、必要に応じて反応系溶液に攪拌を加えながら、溶媒を蒸発させればよい。
得られた粗生成物を、濾過やフラッシュカラムクロマトグラフィー等の手法で精製することにより、目的とするトリアリールアミン化合物を得ることができる。
(その他)
本発明において、上述の合成反応により得られるトリアリールアミン化合物の収率及び純度は特に限定されるものではないが、収率は通常70%以上、好ましくは80%以上、また、純度は通常98%以上、好ましくは99%以上の範囲である。収率は原料と得られた生成物の重量比から、また、純度は得られた生成物を高速液体クロマトグラフィー等により分析し、そのピーク面積値から、それぞれ算出することができる。
以上説明した合成法により得られたトリアリールアミン化合物は、電荷輸送物質として電子写真感光体の感光層に含有させた場合に、耐久時の電位安定性、環境安定性等に優れた特性を示す。また、合成反応時に触媒成分として用いるトリシクロアルキルホスフィン化合物は、特許文献1や特許文献2に記載されたトリ−tert−ブチルホスフィン等の従来の触媒に比べ、保存安定性・安全性・コストの面で優れている。さらに、上記の触媒配位子を使用することにより、安価なアリールクロライドまたはアリールブロマイドを原料に使用てき、しかも、得られたトリアリールアミン化合物の収率と純度とも高い。よって、このトリアリールアミン化合物を電荷輸送物質として用いることにより、高感度で、耐久安定性に優れ、製造が容易で、比較的安価な、優れた電子写真感光体を得ることが可能になる。
[2.電子写真感光体]
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を有するとともに、上に説明した本発明の電荷輸送物質を感光層中に含有するものである。
(導電性支持体)
電性支持体について特に制限は無いが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫合金)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙などが主として使用される。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、その形態としては、例えばドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。さらに、金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性などの制御のためや欠陥被覆のため、適当な抵抗値を有する導電性材料を塗布したものを用いても良い。
また、導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化処理を施してから用いても良い。なお、陽極酸化処理を施した場合には、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
支持体表面は、平滑であっても良いし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていても良い。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでも良い。また、安価化のためには、切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。
具体的に、アルミニウムドラムを用いる場合には、その材質としては、JISで規定されている例えば3000番台、5000番台、6000番台等のアルミニウム合金の押し出し・引き抜き管或いはそれらを切削加工したものが用いられ、その表面粗さとしては、最大表面粗さRmaxの値が2.5μm以下であることが好ましい。
(下引き層)
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したものなどが用いられる。
下引き層に用いる金属酸化物粒子の種類としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子などが挙げられる。これらは一種類の粒子を単独で用いても良いし、複数の種類の粒子を混合して用いても良い。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また、複数の結晶状態のものが含まれていても良い。金属酸化物粒子の粒径にも特に制限は無く、種々のものが利用できるが、中でも下引き層の原料である樹脂等の特性及び液の安定性の面から、平均一次粒径として通常1nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下のものが望ましい。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダ樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いるバインダ樹脂としては、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が挙げられる。なお、これらは単独で用いても良く、或いは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、硬化剤とともに硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性及び塗布性を示すので、好ましい。
下引き層におけるバインダ樹脂に対する金属酸化物粒子の混合比は特に制限されないが、分散液の安定性、塗布性の面で、通常10重量%以上、500重量%以下の範囲で使用することが好ましい。
下引き層には、これらのバインダ樹脂及びバインダ樹脂の他にも、その趣旨を外れない限りにおいて、公知の酸化防止剤等の任意の物質を含有させても良い。
下引き層の膜厚は特に制限されず、任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性を向上させる観点から、通常は0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上、また、通常20μm以下、好ましくは5μm以下の範囲が望ましい。
(感光層)
感光層は、上述した本発明のアリールアミン系化合物を電荷輸送物質として含有する層であり、上述の導電性支持体上(下引き層を設ける場合には下引き層上)に形成される。感光層の型式としては、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、バインダ樹脂中に分散された単層型と、電荷発生物質がバインダ樹脂中に分散された電荷発生層及び電荷輸送物質がバインダ樹脂中に分散された電荷輸送層の二層からなる積層型とが挙げられるが、何れであってもよい。一般に、電荷輸送物質は、単層型でも積層型でも、電荷移動機能としては、同等の性能を示すことが知られている。
また、積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に電荷輸送層、電荷発生層の順に積層して設ける逆積層型感光層とがあり、いずれを採用することも可能であるが、最もバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光層が好ましい。
(電荷発生層)
積層型感光層の場合、電荷発生層は、結着樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に、電荷発生物質を分散させて塗布液を調整し、これを導電性支持体上に塗布し、電荷発生物質を各種バインダ樹脂で結着することにより形成される。
電荷発生物質としては、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他の無機系光導電材料と、有機顔料等の有機系光導電材料とが挙げられるが、有機系光導電材料の方が好ましく、特に有機顔料が好ましい。有機顔料の具体例としては、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料などが挙げられる。
上記例示の有機顔料の中でも、電荷発生物質としては、特にフタロシアニン顔料又はアゾ顔料が好ましい。フタロシアニン顔料は、波長600nm〜900nmの比較的長波長のレーザー光に対して高感度の感光体が得られる点で、また、アゾ顔料は、白色光及び波長300〜500nmの比較的短波長のレーザー光に対し十分な感度を持つ点で、それぞれ優れている。
電荷発生物質としてフタロシアニン化合物を用いる場合、具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン類の各種結晶型が使用される。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型,I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。
また、フタロシアニン類の中でも、CuKa特性X線に対するX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)が、27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン、9.3°,13.2°,26.2°及び27.1°に主たる回折ピークを示すチタニルフタロシアニン(オキシチタニウムフタロシアニン)、9.2°,14.1°,15.3°,19.7°,27.1°に主たる回折ピークを有するジヒドロキシシリコンフタロシアニン、8.5°,12.2°,13.8°,16.9°,22.4°,28.4°及び30.1°に主たる回折ピークを示すジクロロスズフタロシアニン、7.5°,9.9°,12.5°,16.3°,18.6°,25.1°及び28.3°に主たる回折ピークを示すヒドロキシカリウムフタロシアニン、並びに、7.4°,16.6°,25.5°及び28.3°に回折ピークを示すクロロガリウムフタロシアニンが好ましい。これらの中でも、27.3°に主たる回折ピークを示すチタニルフタロシアニン(オキシチタニウムフタロシアニン)が特に好ましく、この場合、9.5°,24.1°及び27.3°に主たる回折ピークを示すチタニルフタロシアニン(オキシチタニウムフタロシアニン)がとりわけ好ましい。
フタロシアニン化合物は一種の化合物を単独で用いても良いし、複数種の化合物を混合あるいは混晶状態で用いても良い。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態における混合状態として、それぞれの構成要素を後から混合して用いても良いし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じせしめたものでも良い。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。混晶状態を生じさせるためには、特開平10−48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に摩砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
一方、電荷発生物質としてアゾ顔料を使用する場合には、各種公知のビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。電荷発生物質としてアゾ顔料を使用する場合には、各種公知のビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。好ましいアゾ顔料の例を下記に示す。
Figure 0004863691
上記例示の有機顔料は、1種を単独で用いてもよいが、2種類以上の顔料を混合して用いてもよい。この場合、可視域と近赤域の異なるスペクトル領域で分光感度特性を有する2種類以上の電荷発生物質を組み合わせて用いることが好ましく、中でもジスアゾ顔料又はトリスアゾ顔料とフタロシアニン顔料とを組み合わせて用いることがより好ましい。
電荷発生層は、上述の電荷発生物質を単独で用いて、蒸着膜等に形成してもよいが、通常は電荷発生物質をバインダ樹脂で結着した形で使用する。特に、電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、これらの有機顔料の微粒子をバインダ樹脂で結着した形で使用することが好ましい。バインダ樹脂の種類は特に制限されないが、例えばポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテルなどが挙げられる。
電荷発生物質とバインダ樹脂との使用比率は、バインダ樹脂100重量部に対して電荷発生物質が通常30重量部以上、500重量部以下の範囲である。
電荷発生層には、上述の電荷発生物質及びバインダ樹脂の他にも、その趣旨に反しない限りにおいて、必要に応じて、塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種成分を含有させても良い。
電荷発生層の膜厚は、通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、また、通常1μm以下、好ましくは0.6μm以下の範囲が好適である。
(電荷輸送層)
積層型感光体の電荷輸送層は、電荷輸送物質を含有するとともに、通常はバインダ樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷輸送層は、具体的には、例えば電荷輸送物質等とバインダ樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)、塗布、乾燥して得ることができる。
電荷輸送物質としては、上述した本発明の電荷輸送物質を用いる。本発明の電荷輸送物質は、何れか一種を単独で用いても良く、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
更には、一種又は二種以上の本発明の電荷輸送物質に加えて、一種又は二種以上の公知の他の電荷輸送物質を併用してもよい。他の電荷輸送物質を併用する場合、その種類は特に制限されないが、例えばカルバゾール誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体及びこれらの誘導体が複数結合されたものが好ましい。更に具体的には、特開平2−230255号、特開昭63−225660号、特開昭58−198043号、特公昭58−32372号、及び特公平7−21646号の各公報に記載の化合物が好ましく使用される。本発明の電荷輸送物質と他の電荷輸送物質との組み合わせや比率は特に制限されない。但し、本発明の電荷輸送物質による上述の効果を得る観点から、電荷輸送物質としては本発明の電荷輸送物質のみを用いることが好ましく、他の電荷輸送物質を併用する場合でもその比率はできるだけ少ないことが好ましい。
バインダ樹脂は、膜強度確保のために使用される。バインダ樹脂の種類は特に制限されないが、例えばブタジエン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミド、ポリウレタン、セルロースエーテル、フェノキシ樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。このうちポリカーボネート、ポリアリレートが特に好ましい。なお、これらは適当な硬化剤等を用いて熱、光等により架橋させて用いることもできる。また、これらのバインダ樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用することもできる。
バインダ樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダ樹脂100重量部に対して電荷輸送物質を20重量部以上の比率で使用する。中でも、残留電位低減の観点から30重量部以上が好ましく、更には、繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点から40重量部以上がより好ましい。一方、感光層の熱安定性の観点から、電荷輸送物質を通常は150重量部以下の比率で使用する。中でも、電荷輸送物質とバインダ樹脂との相溶性の観点から110重量部以下が好ましく、耐刷性の観点から80重量部以下がより好ましく、耐傷性の観点から70重量部以下が最も好ましい。
電荷輸送層には、上述の電荷輸送物質及びバインダ樹脂の他にも、必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、レベリング剤、電子吸引性物質等の各種添加剤を含有させてもよい。
電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、長寿命、画像安定性の観点、更には高解像度の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは45μm以下、更には30μm以下の範囲とする。
(単層型感光層)
単層型感光体の感光層は、電荷発生物質及び電荷輸送物質に加えて、積層型感光体の電荷輸送層と同様に、膜強度確保のためにバインダ樹脂を使用して形成する。具体的には、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダ樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、導電性支持体上(下引き層を設ける場合は下引き層上)に塗布、乾燥して得ることができる。
電荷輸送物質及びバインダ樹脂の種類並びにこれらの使用比率は、積層型感光体の電荷輸送層について説明したものと同様である。これらの電荷輸送物質及びバインダ樹脂からなる電荷輸送媒体中に、さらに電荷発生物質が分散される。
電荷発生物質は、積層型感光体の電荷発生層について説明したものと同様のものが使用できる。但し、単層型感光体の感光層の場合、電荷発生物質の粒子径を充分に小さくする必要がある。具体的には、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下の範囲とする。
単層型感光層内に分散される電荷発生物質の量は、少な過ぎると充分な感度が得られない一方で、多過ぎると帯電性の低下、感度の低下などの弊害があることから、単層型感光層全体に対して通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下の範囲で使用される。
また、単層型感光層におけるバインダ樹脂と電荷発生物質との使用比率は、バインダ樹脂100重量部に対して電荷発生物質が通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、また、通常30重量部以下、好ましくは10重量部以下の範囲とする。
単層型感光層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。
(その他)
積層型感光体、単層型感光体ともに、感光層又はそれを構成する各層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性などを向上させる目的で、周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤などの添加物を含有させても良い。
また、積層型感光体、単層型感光体ともに、上述の手順により形成された感光層を最上層、即ち表面層としてもよいが、その上に更に別の層を設け、これを表面層としてもよい。例えば、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で、保護層を設けても良い。
また、感光体表面の摩擦抵抗や摩耗を軽減する目的で、フッ素系樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂、又はこれらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を、表面層に含有させても良い。或いは、これらの樹脂や粒子を含む層を新たに表面層として形成しても良い。
(層形成方法)
これらの感光体を構成する各層は、含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を、支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等の公知の方法により順次塗布して形成される。
塗布液の作製に用いられる溶媒あるいは分散媒に特に制限は無いが、具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられる。また、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び種類で併用してもよい。
溶媒又は分散媒の使用量は特に制限されないが、各層の目的や選択した溶媒・分散媒の性質を考慮して、塗布液の固形分濃度や粘度等の物性が所望の範囲となるように適宜調整するのが好ましい。
例えば、単層型感光体の感光層及び積層型感光体の電荷輸送層の場合には、塗布液或いは分散液の固形分濃度は、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、また、通常40重量%以下、好ましくは35重量%以下の範囲とする。さらに、塗布液或いは分散液の粘度は、通常10cps以上、好ましくは50cps以上、また、通常500cps以下、好ましくは400cps以下の範囲とする。
また、積層型感光体の電荷発生層の場合には、塗布液或いは分散液の固形分濃度は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常15重量%以下、好ましくは10重量%以下の範囲とする。さらに、塗布液或いは分散液の粘度は、通常0.01cps以上、好ましくは0.1cps以上、また、通常20cps以下、好ましくは10cps以下の範囲とする。
塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
塗布液の乾燥は、室温における指触乾燥後、通常30℃以上、200℃以下の温度範囲で、1分から2時間の間、静止、又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であってもよく、乾燥時に温度を変更させながら加熱を行なっても良い。
〔3.画像形成装置〕
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1,帯電装置2,露光装置3及び現像装置4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置5,クリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2,露光装置3,現像装置4,転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。図1では帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。
なお、電子写真感光体1及び帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下適宜、感光体カートリッジという)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されている。そして、例えば電子写真感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述するトナーについても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。更に、電子写真感光体1,帯電装置2,トナーが全て備えられたカートリッジを用いることもある。
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LEDなどが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの短波長の単色光などで露光を行なえばよい。
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄,ステンレス鋼,アルミニウム,ニッケルなどの金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコーン樹脂,ウレタン樹脂,フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼,アルミニウム,銅,真鍮,リン青銅などの金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法などを用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト上の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー,転写ローラ,転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体)Pに転写するものである。
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73がそなえられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73がそなえられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス,アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
以下、製造例,実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、本明細書において「部」とは、特に断らない限り「重量部」を意味する。
<電荷輸送物質(トリアリールアミン化合物)の製造>
(製造例1:例示化合物CT−5の製造)
室温下において、攪拌装置、温度計、精密蒸留装置を装着した500mlの四つ口フラスコに、4,4’−ジヨードビフェニル40.60g(0.1mol)、p,p’−ジトリルアミン40.45g(0.205mol)、ナトリウムtert−ブトキシド22.10g(0.23mol)、充分に脱酸素したキシレン200mlを順次に加え、系内を窒素により置換した後、10分間程攪拌した。一方、酢酸パラジウム5.6mgを5mlの脱酸素したキシレンに加え、更に、トリシクロヘキシルホスフィンの15%トルエン溶液234mgを加え、2、3分間程超音波処理を加えて、触媒の錯形成をさせた。その後、窒素フローを加えながら、得られた触媒溶液を手早く反応器に加え、140℃まで加熱し、その温度に保ちながら加熱還流を続け、反応を実施した。反応の間、反応系溶液を高速液体クロマトグラフィー(カラム:ジーエルサイエンス(株)社製イナートシルODS−3V、溶媒:アセトニトリル)で一定時間毎に分析することにより反応を追跡し、反応系溶液中の4,4’−ジブロモビフェニルが検出されなくなるまで(約2時間)反応を行なった。反応終了後、70℃まで冷却し、水50ml、キシレン250mlを加え、分液した。得られた有機層を、70℃の脱塩水を用いてpHが中性になるまで洗浄した後、硫酸マグネシウム10gを加えて水分を除去し、硫酸マグネシウムを濾別・除去して有機層を取り出した。得られた有機相(溶液)を、キシレン溶媒量の半分になるまで減圧濃縮した。室温で30分程攪拌し、結晶の析出を確認してから、更にメタノール200mlをゆっくり注ぎ、生成物粗体を完全に結晶化させた。析出した結晶を濾別し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル300g、展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/2)に通し、さらにメタノールによる再沈で精製した。真空乾燥した後、上記の例示化合物CT−5を白い微結晶として得た(収量50.05g、収率92%、純度99.5%)。なお、生成物が目的の例示化合物であることは、1H−NMR分析により確認した。また、純度は、高速液体クロマトグラフィーのチャートの単純面積比率値から算出した。
(製造例2:例示化合物CT−5の製造)
4,4’−ジブロモビフェニル31.20g(0.1mol)を原料として使用し、酢酸パラジウム11.24mgとトリシクロヘキシルホスフィンの15%トルエン溶液562mgからなる錯形成物を触媒として使用し、反応時間が3時間であった以外は、上述の製造例1と同様の製造法で、例示化合物CT−5を白い結晶として得た(収量50.66g、収率93%、純度99.4%)。
(製造例3:例示化合物CT−8の製造)
p−ヨードトルエン44.70g(0.205mol)、p,p’−ジトリルアミン40.45g(0.2mol)を原料として使用し、酢酸パラジウム11.51mgとトリシクロヘキシルホスフィンの15%トルエン溶液479mgからなる錯形成物を触媒として使用し、反応時間が2時間であった以外は、上述の製造例1(例示化合物CT−5の製造)と同様の製造法で、例示化合物CT−8を白い結晶として得た(収量51.15g、収率89%、純度99.4%)。
(製造例4:例示化合物CT−8の製造)
p−ブロモトルエン35.06g(0.205mol)、p,p’−ジトリルアミン40.45g(0.2mol)を原料として使用し、酢酸パラジウム23.01mgとトリシクロヘキシルホスフィンの15%トルエン溶液1.15gからなる錯形成物を触媒として使用し、反応時間が3時間であった以外は、上述の製造例1(例示化合物CT−5の製造)と同様の製造法で、例示化合物CT−8を白い結晶として得た(収量50.58g、収率88%、純度99.7%)。
(製造例5:例示化合物CT−8の製造)
p−クロロトルエン27.85g(0.22mol)、p,p’−ジトリルアミン40.45g(0.2mol)を原料として使用し、酢酸パラジウム44.45mgとトリシクロヘキシルホスフィンの15%トルエン溶液2.59gからなる錯形成物を触媒として使用し、反応時間が7時間であった以外は、上述の製造例1(例示化合物CT−5の製造)と同様の製造法で、例示化合物CT−8を白い結晶として得た(収量47.14g、収率82%、純度99.6%)。
(製造例6:例示化合物CT−8の製造)
p−ヨードトルエン47.97g(0.22mol)、p−トルイジン10.72g(0.10mol)を原料として使用し、酢酸パラジウム12.35mgとトリシクロヘキシルホスフィンの15%トルエン溶液823mgからなる錯形成物を触媒として使用し、反応時間が2時間であった以外は、上述の製造例1(例示化合物CT−5の製造)と同様の製造法で、例示化合物CT−8を白い結晶として得た(収量25.00g、収率87%、純度99.3%)。
(製造例7:例示化合物CT−8の製造)
p−ブロモトルエン37.63g(0.22mol)、p−トルイジン10.72g(0.10mol)を原料として使用し、酢酸パラジウム24.70mgとトリシクロヘキシルホスフィンの15%トルエン溶液1.85gからなる錯形成物を触媒として使用し、反応時間が3時間であった以外は、上述の製造例1(例示化合物CT−5の製造)と同様の製造法で、例示化合物CT−8を白い結晶として得た(収量25.01g、収率87%、純度99.4%)。
(製造例8:例示化合物CT−8の製造)
p−クロロトルエン27.85g(0.22mol)、p−トルイジン10.72g(0.10mol)を原料として使用し、酢酸パラジウム44.45mgとトリシクロヘキシルホスフィンの15%トルエン溶液3.70gからなる錯形成物を触媒として使用し、反応時間が6時間であった以外は、上述の製造例1(例示化合物CT−5の製造)と同様の製造法で、例示化合物CT−8を白い結晶として得た(収量23.27g、収率81%、純度99.3%)。
(製造例9:例示化合物CT−9の製造)
下記構造式を有する化合物73.65g(0.205mol)、p,p’−ジトリルアミン40.45g(0.2mol)を原料として使用し、酢酸パラジウム23.01mgとトリシクロヘキシルホスフィンの15%トルエン溶液1.15gからなる錯形成物を触媒として使用し、反応時間が4時間であった以外は、上述の製造例1(例示化合物CT−5の製造)と同様の製造法で、例示化合物CT−9を薄黄色の結晶として得た(収量88.46g、収率93%、純度99.2%)。
Figure 0004863691
以上の実施例の結果を、表1にまとめた。
Figure 0004863691
(比較製造例1〜4)
トリシクロヘキシルホスフィン/酢酸パラジウムのモル比が16/1および17/1の錯形成物を触媒成分として用いた以外は、上述の各製造例1〜2と同様の原料、仕込み量、及び精製手順により、電荷輸送物質CT−5の合成及び精製を行なった。収率及び純度は、下記表2に示す通りであった。なお、生成物の純度は、生成物を高速液体クロマトグラフィーにより分析し、得られたピークの単純面積値から算出した。
Figure 0004863691
以上のように、トリシクロヘキシルホスフィン/酢酸パラジウムのモル比が15/1以上の錯形成物を触媒成分として用いると、電荷輸送物質の純度が99%以下に落ちる。従って、ホスフィン/パラジウムのモル比が15/1以下で妥当である。
(比較製造例5〜13)
上述の各製造例1〜9に使用したトリシクロヘキシルホスフィンに代えて、特許文献3に記載された下記構造を有するホスフィン化合物を用いた以外は、上述の各製造例1〜9と同様の原料、仕込み量、及び精製手順により、電荷輸送物質の合成及び精製を行なった。収率及び純度は、下記表3に示す通りであった。なお、生成物の純度は、生成物を高速液体クロマトグラフィーにより分析し、得られたピークの単純面積値から算出した。
Figure 0004863691
Figure 0004863691
(比較製造例14)
製造例5に使われた本願のトリシクロヘキシルホスフィンに代えて、特許文献3に記載されたホスフィン化合物であるトリフェニルホスフィンを用いた以外は、製造例5と同様にして、電荷輸送物質の合成を行おうとしたが、反応が非常に進行し難く、一日反応させた後、反応混合物を分離できず、電荷輸送物質を作製することが出来なかった。
Figure 0004863691
(比較製造例15)
製造例6に使われた本願のトリシクロヘキシルホスフィンに代えて、特許文献3に記載されたホスフィン化合物であるトリフェニルホスフィンを用いた以外は、製造例6と同様にして、電荷輸送物質の合成を行おうとしたが、2日反応しても反応が全く進行せず、電荷輸送材を作成する事が出来なかった。
(比較製造例16〜24)
反応触媒として、トリシクロヘキシルホスフィンと酢酸パラジウムからなるモル比4/1の錯形成体(特許文献4に記載)を用いた以外は、製造例1〜9と同様の原料、精製手順により、電荷輸送物質の合成及び精製を行なった。収率及び純度は、下記表4に示す通りであった。なお、反応時間は、反応開始後、30分毎に高速液体クロマトグラフィーにより反応追跡し、反応系の変化が認められなくなるまでの経過時間を意味し、生成物の純度は、生成物を高速液体クロマトグラフィーにより分析し、得られたピークの単純面積値から算出した。
Figure 0004863691
同じ電荷輸送物質を用いた実施例1〜9と比較例16〜24とをそれぞれ対照して比較すると、反応触媒として、トリシクロヘキシルホスフィンと酢酸パラジウムからなるモル比4/1の錯形成体(特許文献4に記載)を用いた場合は、最も反応活性の高いアリールアイオダイドでも、本発明記載の製造法より、反応時間の延長が認められ、また、生成物の収率や純度も、本発明記載の製造法より劣ることがある。さらに、アリールアイオダイド以外のハロゲン化物を原料として用いる時、十分な触媒活性が得られないため、反応時間の延長や生成物の収率、純度低下は明らかである。特に、原料のアミン化合物は第一級アミンである場合は、トリシクロヘキシルホスフィンと酢酸パラジウムからなるモル比4/1の錯形成体は反応触媒として非常に応用し難いことが分かる。従って、本発明の製造方法では、電荷輸送物質の高収率、高純度製造に大変有用である。
<電子写真感光体の作製>
(実施例1〜9:電子写真感光体A1〜A9)
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(厚み75μm)の表面にアルミニウム蒸着層(厚み70nm)を形成した導電性支持体を用い、その導電性支持体のアルミニウム蒸着層上に、以下の下引き層用分散液をバーコーターにより、乾燥後の膜厚が1.25μmとなるように塗布し、乾燥させ下引き層を形成した。
下引き層用分散液は、次のようにして製造した。即ち、平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、高速流動式混合混練機((株)カワタ社製「SMG300」)に投入し、回転周速34.5m/秒で高速混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、及び、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、75%/9.5%/3%/9.5%/3%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行なうことにより、メタノール/1−プロパノール/トルエンの重量比が7/1/2で、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層用分散液とした。
Figure 0004863691
別に、A型オキシチタニウムフタロシアニン(CuKa特性X線に対するX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)に9.3°,10.6°,26.3°に回折ピークを示す)10重量部を、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン150重量部に加え、サンドグラインドミルにて1時間、粉砕分散処理を行なった。その後、バインダー樹脂としてのポリビニルブチラール(電気化学工業社製「デンカブチラール#6000C」)の5重量%1,2−ジメトキシエタン溶液100重量部、及び、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイト社製「PKHH」)の5重量%1,2−ジメトキシエタン溶液100重量部を加えて、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、上記の導電性支持体の下引き層上に、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるようにバーコーターにより塗布し、乾燥させて電荷発生層を形成した。
また、別に、電荷輸送物質として上記製造例1〜にて得られた各例示化合物50重量部、バインダー樹脂100重量部、及び、レベリング剤としてシリコーンオイル0.03重量部を、テトラヒドロフラン/トルエン(重量比8/2)混合溶媒640重量部に溶解させて電荷輸送層用塗布液を調製した。なお、バインダー樹脂としては、以下に示す2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンを芳香族ジオール成分とする繰り返し単位51モル%と、同じく以下に示す1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを芳香族ジオール成分とする繰り返し単位49モル%とからなり、p−tert−ブチルフェノールに由来する末端構造を有するポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量30000)を用いた。
Figure 0004863691
Figure 0004863691
電荷輸送層用塗布液を、前記電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が20μmとなるようにフィルムアプリケーターにより塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成して、積層型感光層を有する電子写真感光体A1〜A9を製造した。得られた電子写真感光体A1〜A9は、それぞれ製造例1〜9による電荷輸送物質を含有したものに対応する。
(比較例1〜4:電子写真感光体P1〜P4)
トリシクロヘキシルホスフィン/パラジウムのモル比が16/1および17/1の錯形成物を触媒成分として用いて製造した、比較製造例1〜4の電荷輸送物質CT−5を使用した以外は、実施例1と同様の手順に従い、比較例1〜4としての電子写真感光体P1〜P4を得た。
(比較例5〜13:電子写真感光体P5〜P13)
特許文献3に記載されたホスフィン化合物を用いて製造した比較製造例5〜13の電荷輸送物質を使用した以外は、実施例1〜9と同様の手順に従い、比較例5〜13としての電子写真感光体P5〜P13を得た。
(比較例14〜22:電子写真感光体P14〜P22)
特許文献4に記載された酢酸パラジウムとトリシクロヘキシルホスフィンからなるモル比1/4の錯形成体を触媒として用いて製造した比較製造例16〜24の電荷輸送物質を使用した以外は、実施例1〜9と同様の手順に従い、比較例14〜22としての電子写真感光体P14〜P22を得た。
<電子写真感光体の電気特性評価>
得られた電子写真感光体A1〜A9、P1〜P22の電子写真特性を、感光体評価装置(シンシアー55、ジェンテック社製)を用いて、スタティック方式でそれぞれ以下のようにして測定した。
まず、暗所でスコロトロン帯電器により、電子写真感光体を表面電位が、約−700Vになるよう放電を行ない、一定速度(125mm/sec)で電子写真感光体を通過させて帯電させ、その帯電圧を測定し、初期帯電圧を求めた(以下「V0」ということがある。)。その後、2.5秒間放置したときの電位低下を測定した(以下「DD」ということがある。)。次に、強度1.0μW/cm2の780nm単色光を照射し、感光体表面電位が、−550Vから−275Vになるまでに要した半減露光エネルギー(μJ/cm2)を求めた(以下「E1/2」ということがある。)。また、照射10秒後の残留電位を求めた。
各電子写真感光体A1〜A9、P1〜P22の評価結果を表5及び表6に示す。
Figure 0004863691
Figure 0004863691
同じ電荷輸送物質を用いた実施例と比較例とをそれぞれ対照して比較すると(実施例1〜2と比較例1〜4)、トリシクロヘキシルホスフィン/酢酸パラジウムのモル比が15/1以上の錯形成物を触媒成分として用いると、電荷輸送物質の電気特性が悪化した。従って、より良い電気特性を追求するために、ホスフィン/パラジウムのモル比を15/1以下にする必要がある。
また、実施例1〜9と比較例5〜13とをそれぞれ対照して比較すると、特許文献3に記載されたホスフィン化合物を触媒として合成した電荷輸送物質を用いた比較例の電子写真感光体P5〜P13では、電荷輸送物質の純度が高いにもかかわらず、良好な電気特性を示さなかったのに対して、本願の触媒系を用いて合成した電荷輸送物質を用いた実施例1〜9の電子写真感光体A1〜A9は、いずれも電荷輸送能力を充分に発揮することができ、良好な電気特性を示した。
さらに、実施例1〜9と比較例14〜22とをそれぞれ対照して比較すると、特許文献4に記載された酢酸パラジウムとトリシクロヘキシルホスフィンからなるモル比1/4の錯形成体を触媒として合成した電荷輸送物質(比較製造例14〜22)を用いた比較例の電子写真感光体P14〜P22では、電荷輸送物質の純度が不十分なため、測定不能であったか、電気特性の悪化が認められた。
<画像形成試験、及び、感光体の安定性・耐久性試験>
(実施例10)
表面を陽極酸化し、封孔処理を施した直径3cm、長さ25.4cmのアルミニウムチューブ上に、電子写真感光体A1と同様に作製した電荷発生層及び電荷輸送層用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥して、膜厚が電荷発生層0.3μm、電荷輸送層20μmの電子写真感光体ドラムを作製した。この電子写真感光体ドラムを、ヒューレットパッカード社製レーザープリンタ、レーザージェット4(LJ4)改造機に搭載し画像試験を行ったところ、画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次いで、1万枚連続プリントを行ったが、ゴースト、カブリ、黒ポチ等の画像劣化は見られず、安定していた。
(比較例23)
製造例1で製造した材料(CT−5)を使用する代わりに、比較製造例5で製造した材料を使用した以外は、実施例10と同様の手順に従って電子写真感光体を作製し、画像形成試験及び感光体の安定性・耐久性試験を行なった。初期から画像の濃度が薄く、かつ繰返しにおいて、カブリが認められた。
以上の結果から、本発明の実施例である電子写真感光体は優れた電子写真特性を有し、優れた繰り返し特性を有することが確認された。
本発明の電子写真感光体は、高感度で、耐久安定性に優れ、製造が容易で、比較的安価であるという利点を有する。よって、電子写真感光体が用いられる各種の分野、例えば複写機、プリンター、印刷機等の分野において好適に用いることができる。
本発明の画像形成装置の一実施態様の要部構成を示す概略図である。
符号の説明
1 感光体(電子写真感光体)
2 帯電装置(帯電ローラ;帯電部)
3 露光装置(露光部)
4 現像装置(現像部)
5 転写装置
6 クリーニング装置(クリーニング部)
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(定着ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙(用紙,媒体)

Claims (6)

  1. 導電性支持体上に、電荷発生物質と電荷輸送物質とを含む感光層が少なくとも設けられてなる電子写真感光体であって、
    該電荷輸送物質が、アリールアミン化合物、ジアリールアミン化合物の少なくとも一種、及びアリールハライドを原料とし、トリシクロアルキルホスフィンとパラジウム化合物とを5/1〜15/1のモル比で混合した触媒を用いて合成されたトリアリールアミン化合物である
    ことを特徴とする、電子写真感光体。
  2. 該トリアリールアミン化合物が、塩基の存在下で合成されたものである
    ことを特徴とする、請求項1記載の電子写真感光体。
  3. 該トリアリールアミン化合物が、窒素流通下で合成されたものである
    ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
  4. 該トリアリールアミン化合物が、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表わされる化合物である
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の電子写真感光体。
    Figure 0004863691
    (一般式(1)及び一般式(2)中、A〜Iで表わされる環は、それぞれ独立して、置換基を有しても良いベンゼン環を表わす。)
  5. 請求項1〜4の何れか一項に記載の電子写真感光体と、
    該電子写真感光体を帯電させる帯電部、帯電した該電子写真感光体を露光させ静電潜像を形成する露光部、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像部のうち、少なくとも一つとを備えた
    ことを特徴とする、電子写真感光体カートリッジ。
  6. 請求項1〜4の何れか一項に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電部と、帯電した該電子写真感光体を露光させ静電潜像を形成する露光部と、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像部とを備えた
    ことを特徴とする、画像形成装置。
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