以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜実施することができる。
本発明の製造方法では、原料アミン化合物と有機ハロゲン化合物とを銅化合物と三級リン化合物の存在下で反応させ、且つ、用いた銅のモル数(以下、Cumolということがある)と、用いた三級リン化合物モル数(以下、Pmolということがある)の関係が、下記式(1)で表されることを特徴とするアミン化合物の製造方法である(請求項1)。
ここで、該原料アミン化合物と該有機ハロゲン化合物とを塩基の存在下で反応させることは好ましく(請求項2)、反応温度が140〜200℃であることは好ましい(請求項3)。
また、本発明の製造方法において用いる有機ハロゲン化合物が含有するハロゲン元素のモル数(以下、Xmolということがある)と、Cumolとの関係が下記式(2)で表されることは好ましい(請求項4)。
また、本発明の製造法で作製されたアミン化合物は、経済的に作製でき、工業的な応用に適し、特に、電子材料用途に影響する不純物が少ないため、電子写真システムに有効である(請求項5〜7)。
本発明の製造方法における反応機構は明らかでないが、反応で用いる銅は、反応触媒として働いており、三級リンは、銅化合物に対する配位子として働くと共に、反応速度を促進し、副反応を抑制するのに役立っているものと思われる。
また、反応プロセスにおいて酸をトラップするため、及び副反応を制御するために塩基は有効であり、中でも金属アルコキシドは反応速度向上のために有効であるものと思われる。
<原料アミン化合物>
本発明において原料として用いるアミン化合物(本明細書ではこれを「原料アミン化合物」という場合がある。)は特に制限されないが、通常は1級又は2級アミン化合物である。
アミンの窒素原子に結合する有機基の種類は特に制限されないが、炭化水素基が好ましく、例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基などが挙げられる。2級アミン化合物の場合、アミンの窒素原子が有する2つの有機基は、互いに同じでも異なっていても良い。また、これらの有機基が互いに結合して、環を形成していてもよい。個々の有機基の総炭素数は通常1以上、また、通常20以下、好ましくは15以下の範囲である。
アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ピレニル基、フルオレニル基、アントリル基などが挙げられる。
アルキル基としては、鎖状アルキル基と環状アルキル基が挙げられるが、いずれであってもよい。鎖状アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n−プロピル基、i−プロピル基)、ブチル基(n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基)、ペンチル基(n−ペンチル基等)、ヘキシル基(n−ヘキシル基等)などが挙げられる。環状アルキル基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。また、これらの鎖状アルキル基と環状アルキル基が結合したものであっても良い。
アルケニル基、アルキニル基の例としては、上記例示のアルキル基において、炭化水素鎖上の1又は2以上の炭素−炭素結合を二重結合又は三重結合として得られる基が挙げられる。具体的には、ビニル基(エテニル基)、プロペニル基(1−プロペニル基、2−プロペニル基)などが挙げられる。
アリールアルキル基の例としては、上記例示のアルキル基が上記例示の1又は2以上のアリール基によって置換された基が挙げられる。具体的には、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。
アルキルアリール基の例としては、上記例示のアリール基が上記例示の1又は2以上のアルキル基によって置換された基が挙げられる。具体的には、トリル基(o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基)、キシリル基(3,4−キシリル基等)などが挙げられる。
なお、これらの有機基は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、更に置換基を有していても良い。置換基の種類は、本発明の趣旨を逸脱しないものであれば特に制限されないが、例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等);ヒドロキシル基;ニトロ基;シアノ基;カルボニルオキシ基;カルボキシル基;スルホン酸基;アミノ基;アルキル基;アルケニル基;アルキニル基;アリール基;複素環基(含硫黄複素環基、含酸素複素環基、含窒素複素環基等);アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオ基;アリールチオ基;カルボン酸エステル基;スルホン酸エステル基;置換シリル基(トリメチルシリル基等);置換アミノ基;アミド基などが挙げられる。なお、上記の有機基がこれらの置換基を有する場合には、その置換基を含めた有機基全体の炭素数が、上記規定の範囲内となることが好ましい。
中でも、製造されるアミン化合物の電気特性を向上させる観点から、原料アミン化合物としては、炭化水素基としてアリール基やアルキルアリール基を有するもの、即ち、アリールアミン化合物が好ましく、特にアニリン誘導体が好ましい。
但し、以上はあくまでも例示であって、反応に使用する原料アミン化合物は、製造するアミン化合物及び併用するハロゲン化合物の構造を考慮して、適切なものを適宜選択すればよい。
<有機ハロゲン化合物>
本発明に用いられる有機ハロゲン化合物の種類は特に制限されないが、好ましくは、ハロゲン原子が炭化水素基に結合したハロゲン化炭化水素である。ハロゲン原子の種類は特に制限されない。例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。中でも、臭素原子又はヨウ素原子が好ましい。
ハロゲン化合物1分子当たりのハロゲン原子数は特に制限されず、1でも2以上でも良いが、得られるアミン化合物の電子材料としての実用性の面からは、1〜3が好ましい。分子当たりのハロゲン原子数が2以上の場合、複数のハロゲン原子は同一であっても良く、互いに異なっていても良いが、化合物の製造の容易さの観点からは、同一であることが好ましい。
炭化水素基の種類は特に制限されない。1価の炭化水素基の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、アリールアルキルアリール基、アルキルアリールアルキル基などが挙げられる。また、2価以上の炭化水素基の例としては、上述の1価の炭化水素基から1以上の水素原子を省いて得られるものが挙げられる。個々の炭化水素基の炭素数は通常1以上、また、通常30以下、好ましくは20以下の範囲である。
アリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリールアルキル基、アルキルアリール基の具体例としては、原料アミン化合物について先に例示したものと同様の基が挙げられる。
アルキルアリールアルキル基の具体例としては、上記例示のアリールアルキル基が更に上記例示の1又は2以上のアルキル基によって置換された基が挙げられる。
アリールアルキルアリール基の具体例としては、上記例示のアルキルアリール基が更に上記例示の1又は2以上のアリール基によって置換された基が挙げられる。
また、2価の炭化水素基としては、これらの1価の例示基から更に1つの水素原子を省くことにより誘導される2価の基が好ましい。
中でも、製造されるアミン化合物の電気特性を向上させる観点から、1価の炭化水素基としては、アリール基、アリールアルキル基、又はアリールアルキルアリール基が特に好ましく、2価の炭化水素基としては、これらの基から誘導される基が好ましい。
なお、これらの炭化水素基は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、更に置換基を有していても良い。置換基の種類は、本発明の趣旨を逸脱しないものであれば特に制限されないが、例としては、原料アミン化合物について先に例示したものと同様の基が挙げられる。即ち、有機ハロゲン化合物としては、ヨウ化炭化水素又は臭化炭化水素が好ましく、ヨウ化アリール誘導体又は臭化アリール誘導体が特に好ましい。
但し、以上はあくまでも例示であって、反応に使用するハロゲン化合物は、製造するアミン化合物及び併用する原料アミン化合物の構造を考慮して、適切なものを適宜選択すればよい。
<原料アミン化合物と有機ハロゲン化合物との関係>
原料アミン化合物と有機ハロゲン化合物との組み合わせは特に限定されるものではなく、所望のアミン化合物の構造に応じて適切な組み合わせを選択すれば良い。例えば、後に例示するトリアリールアミン化合物を製造する場合、好ましい組み合わせの例としては、ジアリールアミン化合物とアリールモノハライドとの組み合わせ、ジアリールアミン化合物とアリールジハライドとの組み合わせ、アリールアミン化合物とアリールモノハライドとの組み合わせ、(ジ)アルキルアミン化合物とアルキルハライドとの組み合わせなどが挙げられる。
また、原料アミン化合物と有機ハロゲン化合物との使用比率は、原料アミン化合物及び有機ハロゲン化合物の構造や、目的とするアミン化合物の構造に応じて、適切な当量比となるように選択する。
<銅化合物>
使用する銅化合物としては、特に限定するものではないが、塩化銅(I)、塩化銅(II)、臭化銅(I)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(I)、ヨウ化銅(II)、炭酸銅(I)、炭酸銅(II)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、硫酸銅(II)、シアン化銅(I)、シアン化銅(II)等が好ましく、1価の銅であることは好ましく、ハロゲン化銅(I)であることは好ましい。特にヨウ化銅(I)であることは好ましい。
<三級リン化合物>
本発明の製造方法において、前記銅化合物中の銅のモル数をCumolとし、三級リン化合物中のリンのモル数をPmolとした場合の両者の関係は、下記式(1)のようになる。
Pmol/Cumolは、好ましくは4.0以上であり、好ましくは100以下、より好ましくは50以下であって、更に好ましくは10以下である。Pmol/Cumolが小さすぎると本発明の効果が得られず、Pmol/Cumolを大きくしても使用量に見合って反応性、収率が向上するわけでもなく、製造効率が悪くなるばかりか、不要分の廃棄に問題が生じ、経済的に不利になり好ましくない。
本発明に用いられる三級リン化合物は、リン原子に3つの有機基が結合した化合物であれば、その種類は特に制限されない。
リン原子に結合する有機基の例としては、アリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基(含硫黄複素環基、含酸素複素環基、含窒素複素環基等)、縮合多環基、アルコキシ基、アリールオキシ基;アルキルチオ基;アリールチオ基;置換シリル基(トリメチルシリル基等)などが挙げられる。有機基一つ当たりの有機基の炭素数は通常1以上、また、通常30以下、好ましくは10以下の範囲である。
中でも、有機基としては、アリール基又はアルキル基が好ましい。アリール基及びアルキル基の具体例としては、原料アミン化合物について先に例示したものと同様の基が挙げられる。
リン原子に結合する3つの有機基は、同じであっても良く、互いに異なるものであっても良いが、製造上の容易さの観点から、同じであることが好ましい。即ち、三級リン化合物としては、トリアリールホスフィン又はトリアルキルホスフィンが好ましい。
これらのうち、生成するアミン化合物の電子材料としての電気特性や画像形成特性を考えると、トリアリールホスフィンが好ましい。トリアリールホスフィンの具体例としては、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(p−トリル)ホスフィン等が挙げられる。中でも、工業的に大量に製造可能で安価であるという点から、トリフェニルホスフィンが好ましい。
一方、トリアルキルホスフィンは、反応速度を向上させる観点からは好ましいが、まれに生成されるアミン化合物の電気特性に悪影響を及ぼすことがある。具体例としては、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。中でも、電気特性や取扱いの点では、トリシクロヘキシルホスフィンが好ましく、反応性の点では、トリ−n−ブチルホスフィンが好ましい。
<ハロゲン化合物>
本発明の製造方法において、ハロゲン化合物が含有するハロゲン元素のモル数をXmolとし、前記銅化合物中の銅のモル数をCumolとした場合の両者の関係は、下記式(2)のようになる。
両者の関係は、特には10以上となることが好ましい。使用量が少なすぎると、本発明の効果を得ることができない。一方、使用量を増やしても使用量に見合って反応性、収率が向上するわけでもなく、製造効率が悪くなるばかりか、不要分の廃棄に問題が生じ、経済的に不利になり好ましくない。
<塩基>
本発明の製造方法においては、反応系に塩基を共存させることが好ましい。塩基の種類は特に限定されないが、通常は各種の金属塩が用いられる。
金属塩は、無機塩と有機塩とに分けられる。無機塩としては、アルカリ金属の無機塩と、その他一般金属の無機塩とが挙げられるが、アルカリ金属の無機塩が好ましい。アルカリ金属の無機塩としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
しかし、反応速度の向上という観点からは、有機塩の方が好ましく、中でも金属アルコキシドが好ましい。金属アルコキシドとしては、アルカリ金属を含むものと、その他一般金属を含むものとが挙げられるが、アルカリ金属を含むものが好ましい。その例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムtert−ブトキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムフェノキシド、リチウムフェノキシド等が挙げられる。これらの中でも、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシドが好ましい。中でも、反応速度の向上という観点からは、ナトリウムtert−ブトキシド又はカリウムtert−ブトキシドがより好ましく、コスト面及び反応制御性の面からは、ナトリウムメトキシドが特に好ましい。
塩基の使用量は、有機ハロゲン化合物のハロゲン原子1モル当量に対する値で、通常0.5モル当量以上、好ましくは1.0モル当量以上、また、通常2モル当量以下、好ましくは1.5モル当量以下、更に好ましくは1.3モル当量以下の範囲である。塩基の使用量が少な過ぎると、反応の進行が遅くなり、反応が完結できないおそれもある。一方、塩基の使用量が多過ぎると、収率を向上させる効果が得られず、経済的に不利になり、且つ、副生物を生成し易くなるため、電気特性の観点からも好ましくない。
<溶媒>
原料アミン化合物と有機ハロゲン化合物との反応は、通常は溶媒の存在下に実施される。反応用の溶媒としては、原料(原料アミン化合物、有機ハロゲン化合物)を好適に溶解又は分散でき、且つこれらの原料や金属銅、三級リン化合物等の反応成分に対して不活性な有機溶媒であれば、任意の有機溶媒を使用することができる。
中でも、原料に対する溶解性の点からは、反応用溶媒として、芳香族系有機溶媒又はエーテル系有機溶媒を用いることが好ましく、芳香族系有機溶媒を用いるのがより好ましい。芳香族系有機溶媒の中では、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等のアルキル置換ベンゼン化合物や、テトラリン等の縮合環系芳香族化合物が好ましい。一方、エーテル系有機溶媒としては、モノグライム、ジグライム、トリグライム、ジオキサン等が好ましい。
反応用溶媒を用いる場合、その使用量は特に制限されないが、全原料(原料アミン化合物及びハロゲン化合物)に対する重量比の値で、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、また、通常1000重量%以下、好ましくは500重量%以下の範囲である。反応用溶媒の割合が少な過ぎると、原料等の分散性が不十分で、反応が進行しにくいという理由から好ましくなく、逆に反応用溶媒の割合が多過ぎると、反応速度が遅くなってしまう上に、製造コストが高くなり産業上不利であるという理由から好ましくない。
反応時の温度は、140℃〜200℃の範囲にあることが好ましく、特に好ましくは180℃以下である。上限を超えると副生成物が多くなり、収率等に影響する恐れがあり、下限未満では、反応速度が著しく遅くなる恐れがあるためである。
本発明の手法を用いて製造したアミン化合物は、電子材料として特性に優れ、特に、電子写真感光体として用いられたときに、効力を発揮する。
本発明の反応において、反応温度が高く、有機ハロゲン化合物に対し銅化合物の量を多くすれば、反応性は上がるが、副生物が生成し易くなったり、製品から触媒を完全に除去することが難しくなったりするために電気特性を悪化させる可能性があり、本発明のアミン化合物を電子写真感光体として用いる場合はこれらの要素が製品の特性に大きく影響する。
また、本発明の効果が顕著に現れるトリアリールアミン系化合物の具体例としては例えば、一般式(1)ないし(2)で表される構造が挙げられる。
一般式(1)及び一般式(2)中、A〜Iで表わされる環は、それぞれ独立して、置換基を有しても良い芳香族環を表わす。該芳香族環としては、芳香族環を含むものであればナフタレン環、ピレン環のような、縮合環であっても、アズレン環、フルオレン環のような芳香族環以外の環を含むものであっても構わない。好ましい芳香族環としては、ベンゼン環が挙げられる。個々の芳香族環が有していても良い置換基の種類は特に制限されないが、例としては、原料アミン化合物の説明において例示した各種の置換基が挙げられる。中でも、炭化水素基が好ましい。炭化水素基の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基等が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、通常1以上、また、通常20以下、好ましくは10以下の範囲である。
これらの置換基は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、更に他の有機基により置換されていても構わない。この有機基の例としては、例としては、原料アミン化合物の説明において例示した各種の置換基が挙げられる。
個々のベンゼン環が有する置換基の数は、通常0〜4、中でも0〜2の範囲が好ましい。複数の置換基を有する場合は、これらが互いに連結基を介して、又は直接結合して環構造を作製しても構わない。
以下に、本発明の製造方法によって製造され、電子材料用途に用いられるアミン化合物の具体例を示すが、本発明の製造方法によって製造されるアミン化合物は、これらの例に限定されるものではない。
これらの中でも、本発明の効果が特に顕著に現れる例としては、テトラフェニルベンジジン構造を有するもの(上記の例示化合物(T−0)(T−5)等)、トリフェニルアミン構造を有するもの(上記の例示化合物(T−8)(T−9)等)などが挙げられる。
また、上に例示したトリアリールアミン化合物や、その他の各種のアミン化合物の合成過程における中間体を製造するために、本発明の製造方法を用いてもよい。
本発明の製造方法により得られたアミン化合物(以下、適宜「本発明のアミン化合物」と略称する。)は、各種の電気特性に優れている。これは、アミン化合物の電気特性に影響を及ぼす不純物の含有率が低いためであると考えられる。よって、煩雑な分離・精製の作業を行なわなくとも、そのまま或いは簡単な精製操作を加えただけで、各種の電子材料として使用することができる。
中でも、上に例示したものに代表されるトリアリールアミン化合物(以下、適宜「本発明のトリアリールアミン化合物」と略称する。)は、電荷輸送材料として、電子写真感光体の感光層などに好適に用いることが可能である。
以下、本発明のアミン化合物を用いた、電子写真感光体及び画像形成装置の詳細について説明する。
[電子写真感光体]
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層が設けられたものであって、上に説明した本発明のアミン化合物を、感光層中に含有するものである。特に、上に説明したトリアリールアミン化合物(本発明のトリアリールアミン化合物)を、電荷輸送材料として感光層中に含有することが好ましい。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化処理を施してから用いても良い。陽極酸化処理を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより陽極酸化被膜が形成されるが、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は100〜300g/l、溶存アルミニウム濃度は2〜15g/l、液温は15〜30℃、電解電圧は10〜20V、電流密度は0.5〜2A/dm2の範囲内に設定されるのが好ましいが、前記条件に限定されるものではない。
このようにして形成された陽極酸化被膜に対して、封孔処理を行うことは好ましい。封孔処理は、公知の方法で行なえば良いが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、あるいは主成分として酢酸ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理を施すのが好ましい。
上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は、適宜選べるが、3〜6g/lの範囲で使用された場合、より好ましい結果が得られる。また、封孔処理をスムーズに進めるために、処理温度としては、通常25℃以上、好ましくは30℃以上、また、通常40℃以下、好ましくは35℃以下の範囲で、また、フッ化ニッケル水溶液pHは、通常4.5以上、好ましくは5.5以上、また、通常6.5以下、好ましくは6.0以下の範囲で処理するのがよい。pH調節剤としては、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることができる。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1〜3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するためにフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に添加しておいてもよい。次いで水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。前記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることができるが、特に酢酸ニッケルを用いるのが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は5〜20g/lの範囲内で使用するのが好ましい。処理温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは98℃以下の範囲で、また、酢酸ニッケル水溶液のpHは5.0〜6.0の範囲で処理するのが好ましい。ここでpH調節剤としてはアンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることができる。処理時間は10分以上、好ましくは15分以上処理するのが好ましい。なお、この場合も被膜物性を改良するために酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に添加してもよい。更に、塩類を含まない高温水や高温水蒸気等により処理しても良い。次いで水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件を必要とする。従って生産性が悪くなると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じ易くなる。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は通常20μm以下、特に7μm以下で形成されることが好ましい。
支持体表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであってもよい。また、安価化のためには切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。特に引き抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム支持体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等が無くなり、均一で清浄な支持体が得られるので好ましい。
導電性支持体と感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したものなどが用いられる。
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。一種類の粒子のみを用いても良いし複数の種類の粒子を混合して用いても良い。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスの何れも用いることができる。複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の面から、平均一次粒径として通常1nm以上、特に10nm以上、また、通常100nm以下、特に50nm以下の範囲が好ましい。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二以上を任意の組み合わせで用いてもよい。また、硬化剤と共に硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性・塗布性を示すので好ましい。
下引き層に用いられるバインダー樹脂に対する無機粒子の添加比は任意に選択すれば良いが、通常は10重量%以上、500重量%以下の範囲で使用することが、分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。
下引き層の膜厚は任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性を向上させる観点 から、通常は0.1μm以上、20μm以下の範囲が好ましい。また、下引き層には、公知の酸化防止剤等を添加しても良い。
導電性支持体上に形成される感光層の型式としては、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、バインダー樹脂中に分散された単層型と、電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層及び電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層の二層からなる積層型とが挙げられるが、何れであってもよい。一般に電荷輸送物質は、単層型でも積層型でも、電荷移動機能としては同等の性能を示すことが知られている。
電荷発生物質としては、例えばセレン及びその合金、硫化カドミウム、その他の無機系光導電材料や、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料などの有機顔料等、各種の光導電材料が使用できる。中でも有機顔料が好ましい。
電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、これらの微粒子を、例えばポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテルなどの各種バインダー樹脂で結着した形で使用する。有機顔料の使用比率は、積層型感光体の場合、バインダー樹脂100重量部に対して通常30重量部以上、500重量部以下の範囲で使用され、その膜厚は通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、また、通常1μm以下、好ましくは0.6μm以下の範囲が好適である。また、単層型感光体の場合は、バインダー樹脂100重量部に対して通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、また、通常30重量部以下、好ましくは10重量部以下の範囲で使用される。
電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、特にフタロシアニン顔料又はアゾ顔料が好ましい。フタロシアニン顔料は、比較的長波長のレーザー光に対して高感度の感光体が得られる点で、また、アゾ顔料は、白色光及び比較的短波長のレーザー光に対し十分な感度を持つ点で、それぞれ優れている。
電荷発生物質としてフタロシアニン化合物を用いる場合、具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン類の各種結晶型が使用される。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型,I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。なお、これらのフタロシアニンの中でも、A型(β型)、B型(α型)及びD型(Y型)チタニルフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。
また、フタロシアニン類の中でも、CuKα特性X線に対するX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)が、27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン、9.3°,13.2°,26.2°及び27.1°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン、9.2,14.1,15.3,19.7,27.1°に主たる回折ピークを有するジヒドロキシシリコンフタロシアニン、8.5°,12.2°,13.8°,16.9°,22.4°,28.4°及び30.1°に主たる回折ピークを示すジクロロスズフタロシアニン、7.5°,9.9°,12.5°,16.3°,18.6°,25.1°及び28.3°に主たる回折ピークを示すヒドロキシカリウムフタロシアニン、並びに、7.4°,16.6°,25.5°及び28.3°に回折ピークを示すクロロガリウムフタロシアニンが好ましい。これらの中でも、27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンが特に好ましく、この場合、9.5°、24.1°及び27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンがとりわけ好ましい。
フタロシアニン化合物は単一の化合物のもののみを用いても良いし、いくつかの混合あるいは混晶状態でも良い。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態に置ける混合状態として、それぞれの構成要素を後から混合して用いても良いし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じさせたものでも良い。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。混晶状態を生じさせるためには、特開平10−48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に摩砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
電荷発生物質としてアゾ顔料を使用する場合、具体例としては、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ、ポリアゾ類等が挙げられるが、中でも、従来公知の各種のビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。好ましいアゾ顔料の例を以下に示す。
電荷輸送物質としては、上述した本発明のトリアリールアミン化合物を用いる。本発明のトリアリールアミン化合物は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
また、本発明のトリアリールアミン化合物に加えて、公知の他の電荷輸送物質を併用してもよい。他の電荷輸送物質を併用する場合、その種類は特に制限されないが、例えばカルバゾール誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体及びこれらの誘導体が複数結合されたものが好ましい。更に具体的には、特開平2−230255号、特開昭63−225660号、特開昭58−198043号、特公昭58−32372号、及び特公平7−21646号の各公報に記載の化合物が好ましく使用される。
感光層の形成に際しては、膜強度確保のために、バインダー樹脂が使用される。この場合、感光層は上記電荷輸送物質等とバインダーポリマーを溶剤に溶解あるいは分散して得られる塗布液を塗布、乾燥して得ることができる。バインダー樹脂としては、例えばブタジエン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミド、ポリウレタン、セルロースエーテル、フェノキシ樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。このうちポリカーボネート、ポリアリレートが特に好ましい。なお、これらは適当な硬化剤等を用いて熱、光等により架橋させて用いることもできる。これらのバインダーは2種類以上をブレンドして用いることもできる。
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、単層型・積層型ともに、バインダー樹脂100重量部に対して通常20重量部以上、更に残留電位低減の観点から30部以上が好ましく、更に繰り返し使用した際の安定性、電荷移動度の観点から、40部以上がより好ましい。また、一方で感光層の熱安定性の観点から、通常は150重量部以下、更に電荷輸送物質とバインダー樹脂の相溶性の観点から好ましくは110重量部以下、更に耐刷性の観点から80重量部以下がより好ましく、耐傷性の観点からは70重量部以下が最も好ましい。また膜厚は通常5μm以上、通常50μm以下の範囲、長寿命化、画像安定性の観点からは10μm以上、45μm以下の範囲が好ましく、高解像度化の観点からは10μm以上、30μm以下の範囲がより好ましい。
なお、感光層には成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性などを向上させるために周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤などの添加物を含有させても良い。
単層型感光体の場合には、上記のような配合比の電荷輸送媒体中に、更に前出の電荷発生物質が分散される。その場合の電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生物質の量は、少な過ぎると充分な感度が得られない一方で、多過ぎると帯電性の低下・感度の低下などの弊害があることから、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下の範囲で使用される。単層型感光層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下の範囲である。
積層型又は単層型の感光層の上に、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で、保護層を設けても良い。
なお、感光体の表面に当たる層には、感光体表面の摩擦抵抗や摩耗を軽減する目的で、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含有させても良い。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含有させても良い。
塗布液の作製に用いられる溶媒又は分散媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル、等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−メチル−4−メトキシ−2−ペンタノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。
なお、塗布液又は分散液の作製において、単層型感光層、及び、積層型感光層の電荷輸送層の場合には、固形分濃度を好ましくは10重量%以上、また、好ましくは40重量%以下、更に好ましくは35重量%以下の範囲とすると共に、粘度を好ましくは50cps以上、また、好ましくは400cps以下の範囲とし、積層型感光層の電荷発生層の場合には、固形分濃度を好ましくは1重量%以上、また、好ましくは15重量%以下、更に好ましくは10重量%以下の範囲とし、粘度を好ましくは0.1cps以上、また、好ましくは10cps以下の範囲とする。
なお、以上の説明では、本発明のトリアリールアミン化合物を電荷輸送材料として用いた場合について説明したが、本発明のアミン化合物の含有形態はこれに制限されるものではなく、様々な目的で感光層に含有させることが可能である。例えば、上記の例示化合物(T−28)等は、感光層の酸化防止剤として用いることができる。
[画像形成装置]
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置2、露光装置3及び現像装置4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置5、クリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。図1では帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。
なお、電子写真感光体1及び帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下適宜、感光体カートリッジという)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されている。そして、例えば電子写真感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述するトナーについても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。更に、電子写真感光体1、帯電装置2、トナーが全て備えられたカートリッジを用いることもある。
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LEDなどが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの短波長の単色光などで露光を行なえばよい。
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケルなどの金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅などの金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌すると共に、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法などを用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト上の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙、媒体)Pに転写するものである。
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
定着装置7は、上部定着部材(加圧ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73がそなえられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73がそなえられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス、アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させるためにシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化すると共に、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1:例示化合物T−5の製造)
室温下、攪拌装置、温度計を装着した300 mlの四つ口フラスコに、4,4'−ジヨードビフェニル20.3 g(0.05 mol)、p, p'−ジトリルアミン20.7 g(0.105 mol)、ナトリウムtert−ブトキシド12.0 g(0.125 mol)、ヨウ化銅0.29 g (0.0015mol)、脱酸素したキシレン50 mlと、トリ-n-ブチルホスフィン1.2g(0.006mol)を順次に加え、系内を窒素により置換した後、10分間程攪拌する。この後、加熱(145℃)し、高速液体クロマトグラフィー(カラム:ジーエルサイエンス(株)社製イナートシルODS-3V 溶媒:テトラヒドロフラン/水=7/3 検出器:UV(254nm))で反応を追跡した。発生するtert-ブチルアルコールを留去しながら4,4'−ジヨードビフェニルが完全に消えるまで(約6時間)その温度で加熱しつづけ、反応させた。反応終了後、70℃まで冷却し、トルエン100 mlを加え、固形分を濾別した。この濾液を70℃で減圧蒸留して溶媒の約半量を除去したのち、攪拌しながら室温まで冷却した。結晶の析出を確認してから、さらにメタノール200 mlをゆっくり注ぎ、生成物粗体を完全に結晶化させた。析出した結晶を濾別し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル300g、展開溶媒:トルエン/ヘキサン= 1/2)に通し、さらにメタノールによる再沈で精製した。真空乾燥した後、上記の例示化合物T−5を白い微結晶として得た(23.7g、収率87%、純度99.0%)。生成物が目的の例示化合物であることはH1−NMR分析により確認した。純度は、高速液体クロマトグラフィーの単純面積値から算出した。
(実施例2:例示化合物T−5の製造)
ヨウ化銅の使用量を0.58 g (0.003mol)とし、トリ-n-ブチルホスフィンの代わりに、トリフェニルホスフィン3.2g(0.012mol)を、使用し、キシレンの代わりに1,2,4−トリメチルベンゼンを使用し、反応温度を165℃とする以外は、実施例1と同様な製造法(反応時間6時間)で、例示化合物T−5を白い結晶として得た(22.1g、収率81%、純度99.2%)。生成物の確認及び純度の算出は実施例1と同様の手法により行なった。
(実施例3:例示化合物T−5の製造)
トリフェニルホスフィンの使用量を6.4g(0.024mol)とする以外は実施例2と同様な製造法(反応時間6時間)で、例示化合物T−5を白い結晶として得た(22.9 g、収率84 %、純度97.8%)。生成物の確認及び純度の算出は実施例1と同様の手法により行なった。
(実施例4:例示化合物T−5の製造)
ヨウ化銅の代わりに、塩化銅0.3g(0.003mol)を使用し、トリ-n-ブチルホスフィンの使用量を2.4g(0.012mol)とし、キシレンの代わりに1,2,4−トリメチルベンゼンを使用し、反応温度を165℃とする以外は、実施例1と同様な製造法(反応時間8時間)で、例示化合物T−5を白い結晶として得た(22.3g、収率82%、純度98.1%)。生成物の確認及び純度の算出は実施例1と同様の手法により行なった。
(実施例5:例示化合物T−8の製造)
p, p'−ジトリルアミンの代わりに、p−トルイジン5.4g(0.05mol)を、4,4'−ジヨードビフェニルの代わりにp−ヨードトルエン21.8g(0.1mol)を、原料として使用する以外は、実施例1と同様な製造法(反応時間4時間)で、例示化合物T−8を白い結晶として得た(11.8g、収率82%、純度98.8%)。生成物の確認及び純度の算出は実施例1と同様の手法により行なった。
(実施例6:例示化合物T−4の製造)
p, p'−ジトリルアミンの代わりに、m, p'−ジトリルアミンを、ナトリウムtert−ブトキシドの代わりにナトリウムメトキシド6.8g(0.125mol)を使用する以外は、実施例1と同様な製造法(反応時間10時間)で、例示化合物T−4を白い結晶として得た(21.5g、収率79%、純度98.6%)。生成物の確認及び純度の算出は実施例1と同様の手法により行なった。
(実施例7:例示化合物T−8の製造)
p,p'−ジトリルアミンの代わりにp−トルイジン5.4g(0.05mol)を使用し、4,4’−ヨードビフェニルの代わりにp−ブロモトルエン17.1g(0.1mol)を使用し、ヨウ化銅の使用量を1.9g(0.01mol)とし、トリn-ブチルホスフィンの使用量を8.1g(0.04mol)とし、キシレンの代わりに1,2,4−トリメチルベンゼンを使用し、反応温度を165℃とする以外は、実施例1と同様な製造法(反応時間12時間)で、例示化合物T−8を白い結晶として得た(8.5g、収率59%、純度96.8%)。生成物の確認及び純度の算出は実施例1と同様の手法により行なった。
(実施例8:例示化合物T−8の製造)
p,p'−ジトリルアミンの代わりにp−トルイジン5.4g(0.05mol)を使用し、4,4’−ジヨードビフェニルの代わりにp−ヨードトルエン21.8g(0.1mol)を使用し、ヨウ化銅の使用量を1.9g(0.01mol)とし、トリn-ブチルホスフィンの使用量を8.1g(0.04mol)とし、ナトリウムtert−ブトキシドの代わりにリン酸3カリウム31.8g(0.15mol)を使用し、キシレンの代わりに1,2,4−トリメチルベンゼンを使用し、反応温度を165℃とする以外は、実施例1と同様な製造法(反応時間12時間)で、例示化合物T−8を白い結晶として得た(9.6g、収率67 %、純度97.7%)。生成物の確認及び純度の算出は実施例1と同様の手法により行なった。
(実施例9:例示化合物T−28の製造)
p,p'−ジトリルアミンのかわりに、ベンジルアミン5.4g(0.05mol)を、4,4'−ジヨードビフェニルの代わりに、ベンジルブロマイド17.1g(0.1mol)を使用する以外は、実施例2と同様な製造法(反応時間10時間)で、例示化合物T−28を白い結晶として得た(11.5g、収率80%、純度98.8%)。生成物の確認及び純度の算出は実施例1と同様の手法により行なった。
(実施例10:例示化合物T−5の製造)
実施例2において、1,2,4−トリメチルベンゼンの代わりにテトラリンを使用し、反応温度を210℃とした以外は同様に反応を行ったところ(反応時間3時間)例示化合物T−5を白い結晶として得た。(23.1 g、収率85%、純度95.8%)。生成物の確認及び純度の算出は実施例1と同様の手法により行なった。
(実施例11:例示化合物T−5の製造)
実施例2において、ヨウ化銅の使用量を5.8g(0.03mol)、トリフェニルホスフィンの使用量を32g(0.12mol)とする以外は同様に反応を行ったところ(反応時間3時間)例示化合物T−5を白い結晶として得た。(25.1g、収率92 %、純度97.6%)。生成物の確認及び純度の算出は実施例1と同様の手法により行なった。
(比較例1:例示化合物T−5の製造)
実施例1において、トリ-n-ブチルホスフィンの使用量を0.6g(0.003mol)とする以外は同様に反応を行ったところ(反応時間12時間)例示化合物T−5を黄白色結晶をして得た。(14.7g、収率54%、純度81.8%)。生成物の確認及び純度の算出は実施例1と同様の手法により行なった。
(比較例2:例示化合物T−5の製造)
実施例2において、トリフェニルホスフィンの使用量を2.4g(0.009mol)とする以外は同様に反応を行ったところ(反応時間12時間)例示化合物T−5を黄白色結晶として得た。(16.9g、収率62%、純度85.2%)。生成物の確認及び純度の算出は実施例1と同様の手法により行なった。
(比較例3:例示化合物T−5の製造)
実施例1において、トリ-n-ブチルホスフィンを使用しない以外は同様に反応を行ったところ、反応が完結しなかった。
<電子写真感光体の作製>
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(厚み75μm)の表面にアルミニウム蒸着層(厚み70nm)を形成した導電性支持体を用い、その導電性支持体のアルミニウム蒸着層上に、以下の下引き層用分散液をバーコーターにより、乾燥後の膜厚が1.25μmとなるように塗布し、乾燥させ下引き層を形成した。
下引き層用分散液は、次のようにして製造した。即ち、平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、高速流動式混合混練機((株)カワタ社製「SMG300」)に投入し、回転周速34.5m/秒で高速混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、及び、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、75%/9.5%/3%/9.5%/3%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行なうことにより、メタノール/1−プロパノール/トルエンの重量比が7/1/2で、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層用分散液とした。
別に、A型オキシチタニウムフタロシアニン(CuKα特性X線に対するX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)に9.3°,10.6°,26.3°に回折ピークを示す)10重量部を、4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2 150重量部に加え、サンドグラインドミルにて1時間粉砕分散処理を行なった。その後、バインダー樹脂としてのポリビニルブチラール(電気化学工業社製「デンカブチラール #6000C」)の5重量%1,2−ジメトキシエタン溶液100重量部、及び、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイト社製「PKHH」)の5重量%1,2−ジメトキシエタン溶液100重量部を加えて、電荷発生層用塗布液を調整した。この電荷発生層用塗布液を、上記の導電性支持体の下引き層上に、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるようにバーコーターにより塗布し、乾燥させて電荷発生層を形成した。
また、別に、電荷輸送物質として下記表1に示すアリールアミン化合物50重量部(複数のアリールアミン化合物の場合は、その全量)、バインダー樹脂100重量部、及び、レベリング剤としてシリコーンオイル0.03重量部をテトラヒドロフラン/トルエン(重量比8/2)混合溶媒640重量部に溶解させて電荷輸送層用塗布液を調整した。なお、バインダー樹脂としては、以下に示す2,2−ビス(4―ヒドロキシ−3―メチルフェニル)プロパンを芳香族ジオール成分とする繰り返し単位A51モル%と、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを芳香族ジオール成分とする繰り返し単位B49モル%とからなり、p-tert−ブチルフェノールに由来する末端構造を有するポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量30000)を用いた。
得られた電荷輸送層用塗布液を、前記電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が20μmとなるようにフィルムアプリケーターにより塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成することにより、積層型感光層を有する電子写真感光体を製造した。
<電子写真感光体の電気特性評価>
得られた電子写真感光体A−1〜A−5及びB−1の電子写真特性を、感光体評価装置(シンシア−55、ジェンテック社製)を用いて、スタティック方式により、それぞれ以下の手順に従って測定した。まず、各電子写真感光体A−1〜A−5及びB−1に対して、暗所でスコロトロン帯電器により表面電位が約−700Vになるよう放電を行ない、一定速度(125mm/sec)で電子写真感光体を通過させて帯電させ、その帯電圧を測定して初期帯電圧を求めた(以下「V0」ということがある。)。その後、2.5秒間放置したときの電位低下を測定した(以下「DD」ということがある。)。次に、強度1.0μW/cm2の780nm単色光を照射し、感光体表面電位が−(マイナスのこと。以下同じ。)550Vから−275Vになるまでに要した半減露光エネルギー(μJ/cm2)を求めた(以下「E1/2」ということがある。)。また、照射10秒後の残留電位を求めた(以下「Vr」ということがある。)。
各電子写真感光体A−1〜A−5及びB−1の評価結果を下記表2に示す。
全てのアリールアミンは、同様の手法で精製されているが、比較例に示した感光体においては、本発明の感光体と比較して良好な電気特性を示さなかった。本発明のアリールアミンを含有した電子写真感光体は、いずれも、良好な電気特性を示した。
<画像形成試験、及び感光体の安定性・耐久性試験>
(実施例13)
表面を陽極酸化し、封孔処理を施した直径3cm、長さ25.4cmのアルミニウムチューブ上に、電子写真感光体A−3と同様に作製した電荷発生層及び電荷輸送層用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥して、膜厚が電荷発生層0.3μm、電荷輸送層20μmの電子写真感光体ドラムを作製した。この電子写真感光体ドラムを、ヒューレットパッカード社製レーザープリンタ、レーザージェット4(LJ4)改造機に搭載し画像試験を行ったところ、画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次いで、1万枚連続プリントを行ったが、ゴースト、カブリ、黒ポチ等の画像劣化は見られず、安定していた。