JP2007148387A - 電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ、及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】好適な電気特性を示し、長期間の繰り返し使用によっても良好な画像を形成することができ、メモリ現象等の画像欠陥が発生せず、高品質の画像を形成することのできる電子写真感光体、この電子写真感光体を用いた電子写真プロセスカートリッジ、及びこの電子写真感光体を用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】フタロシアニン結晶前駆体を、化学的処理後、有機溶媒に接触して得られる、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.6°、24.1°、及び27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンと、下記一般式(1)で示されるヒドラゾン化合物とを感光層に含有することを特徴とする電子写真感光体。
【選択図】なし
【解決手段】フタロシアニン結晶前駆体を、化学的処理後、有機溶媒に接触して得られる、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.6°、24.1°、及び27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンと、下記一般式(1)で示されるヒドラゾン化合物とを感光層に含有することを特徴とする電子写真感光体。
【選択図】なし
Description
本発明は、特定材料を組み合わせて使用する電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ、及び画像形成装置に関する。特に、レーザープリンター、複写機、Fax等に使用される電子写真感光体で、LED光や半導体レーザー光に対して非常に有効で、耐久性にも優れた電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ、及び画像形成装置に関する。
電子写真技術は、即時性に優れ、高品質の画像が得られること等から、近年では複写機の分野にとどまらず、各種のプリンター、印刷機の分野でも広く応用されてきている。
電子写真技術の中核となる感光体としては、従来、セレン、砒素−セレン合金、酸化亜鉛といった無機系の光導電材料を使用した感光体が用いられてきたが、最近では、無公害である、成膜・製造が容易である、材料選択・組み合わせの自由度が高い等の利点を有する有機系の光導電材料を使用した感光体が主流となっている。
有機感光体の層構成としては、電荷発生物質(本明細書においては、「電荷発生物質」を、「電荷発生材料」という場合がある。)と電荷輸送物質(本明細書においては、「電荷輸送物質」を、「電荷移動物質」又は「電荷輸送材料」という場合がある。)をバインダー樹脂に分散させたいわゆる単層型感光体、電荷発生層及び電荷輸送層を有する積層型感光体が知られている。積層型感光体は、効率の高い電荷発生物質、及び電荷移動物質を別々の層に分けて、最適なものを組み合わせることにより高感度かつ安定な感光体が得られること、材料選択範囲が広く特性の調整が容易なことから多く使用されている。
また、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、及び普通紙ファックス等では、プロセスの簡略化、低価格化等のために転写工程後の除電工程を省略したものが知られている。すなわち、帯電、露光、現像、転写、クリーニング、及び除電等のプロセスを含む通常の電子写真方式に対して、ACコロナ放電、光等により除電する工程を含まない電子写真方式が知られている。
しかしながら、この除電工程を省略した複写機、プリンター、及び普通紙ファックス等によって、画像を印刷した後にハーフトーン画像を印刷した場合、ハーフトーン画像部に先に印刷した画像が出現する現象、いわゆるメモリ(ゴースト)現象が生じる場合がある。このメモリ現象には、より濃い濃度で出現するポジメモリー現象と、濃度が薄くなるネガメモリー現象がある。
この画像のメモリ現象の発生機構の詳細は、未だに不明な部分が数多くあり、完全には解明されていないが、特に電子写真感光体が、電子写真プロセス中の転写工程で逆帯電を負荷された場合に、感光層へ電荷が注入され、この注入された電荷の影響がメモリ現象の要因の一つであると考えられている。
さらには、近年、複写機、プリンターは、共にモノクロからフルカラー化に向かっている。このフルカラー画像形成方法には主としてタンデム方式、4サイクル方式があり、また印刷媒体への転写方式としては、直接転写方式、転写ドラム方式、中間転写方式、及び多重現像一括転写方式等がある。これらの中でタンデム方式すなわち各色画像を各別の画像形成ユニットで形成し、逐次転写していくカラー画像形成装置は使用可能な記録材の種類が豊富であり、フルカラーの品質も高く、高速度でフルカラー画像を得ることができることから、すぐれた画像形成方法である。中でも高速でフルカラー画像ができる特質は他の方式にはみられない利点である。
ところが、タンデム方式の場合は、高速である反面、各色画像を複数の画像形成ユニットで形成し、逐次転写していくため、画像形成ユニットが後になるほど非転写媒体(中間転写媒体又は記録材)に転写されたトナー像の厚みが厚くなり、電子写真感光体上に形成されたトナー層を転写するためにはより大きな転写電圧を印加する必要性が生じてきた。この結果、上記逆極性を負荷された場合の感光層への電荷の注入がより顕著となり、メモリ現象がより明瞭に生じる場合が出てきた。
近年の電子写真プロセスの高速化に伴い、電子写真感光体の特性として高感度化、高速応答化が必須となっており、高感度化のためには電荷発生材料の最適化、それとのマッチング良好な電荷輸送材料の開発が必要であり、高速応答性については高移動度かつ低残留電位の電荷輸送材料の開発が必須となっている。
高感度のためには電荷発生能力の高い電荷発生材料が必要である。その中でも現在主流となっている600〜850nmでの単色露光に高感度を示すオキシチタニウムフタロシアニンに関して盛んに研究が行われている。前記オキシチタニウムフタロシアニンは結晶多型を有することが知られていが、その中でも、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを有する結晶型が高い量子効率を示し、高感度を示すことが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
この結晶型は主として、アモルファス、又は低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンから結晶変換することによって製造される。これら結晶型は準安定型の結晶型であり、製造方法の違いにより様々な結晶型、粒子形状を示し、電荷発生能力、帯電性、及び暗減衰等の電子写真感光体としての特性の面も製造方法に依存して異なることが知られている。また感光体を作製して、複写機、プリンター、及び普通紙ファックス等の実際のマシンへ感光体を搭載した場合に得られる画質も異なり、様々な性能を製造方法から予測することは困難である。
また、高速応答化のためには、高移動度かつ露光時に十分な低残留電位を示し、電荷発生材料とマッチングのよい電荷輸送物質の開発が必要である。高移動度化のための指針として分子の双極子モーメント、分極率等を一定の値以上にする等(例えば、特許文献1参照)の電荷輸送材料の分子設計の指針が明らかになり始めており、様々な高移動度・低残留電位の電荷輸送材料が開発されてきている。しかしながら、移動度、低残留電位等の電子写真感光体特性を満足させても、電荷輸送材料の基本的な分子骨格、置換基の置換位置の違いにより、実際の複写機、レーザープリンターで得られる画質、又は転写等の周辺プロセスから受ける影響が異なる場合があり、この相違がなにに起因するかについては明らかになっていない。
特開平10−312070号公報
電子写真学会誌 1990年 第29巻 第3号 p.250〜258
高感度を示すことが知られている電荷発生材料と、高移動度・低残留電位の電荷輸送材料とを組み合わせた電子写真感光体において、電子写真感光体としての基本的特性(感度、残留電位、帯電性、暗減衰等)の性能は満たすことができる。しかしながら、単に高感度な電荷発生材料と高移動度・低残留電位の電荷輸送材料を組み合わせた電子写真感光体を、前述のタンデム型フルカラー画像形成装置、又は、少なくとも帯電、露光、現像、及び転写工程を有する電子写真法において、転写工程後の除電工程が除かれたことを特徴とするプリンター、複写機、及び普通紙ファックス等の画像形成装置に搭載した場合、メモリ現象等の画像欠陥がより顕著になる場合があった。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の電荷発生材料の製造方法で得られる、及び/又は特定量の塩素化物を含有するオキシチタニウムフタロシアニンと、特定構造を有する電荷輸送材料と、を組み合わせることにより、メモリ現象等の画像欠陥が発生しない、高品質の画像を形成することのできる電子写真感光体を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の第1の要旨は、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体であって、該感光層が、フタロシアニン結晶前駆体を、化学的処理後、有機溶媒に接触して得られるCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.6°、24.1°、及び27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンと、特定構造を有するヒドラゾン化合物を電荷輸送材料として用いる電子写真感光体に存する。このように、オキシチタニウムフタロシアニンは、フタロシアニン結晶前駆体を、化学的処理後、有機溶媒に接触して得られるものであり、そのCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.6°、24.1°、及び27.2°に主たる回折ピークを有するものである。より具体的には、フタロシアニン結晶前駆体を、化学的処理後、有機溶媒に接触させることによって、オキシチタニウムフタロシアニンを特定の結晶型にして用いるものである。
また、本発明の第2の要旨は、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体であって、該感光層が、フタロシアニン結晶前駆体を、化学的処理後、有機溶媒に接触して得られるCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、9.7°、24.2°、及び27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンと、特定構造を有するヒドラゾン化合物を電荷輸送材料として用いる電子写真感光体に存する。このように、オキシチタニウムフタロシアニンは、フタロシアニン結晶前駆体を、化学的処理後、有機溶媒に接触して得られるものであり、そのCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、9.7°、24.2°、及び27.2°に主たる回折ピークを有するものである。より具体的には、フタロシアニン結晶前駆体を、化学的処理後、有機溶媒に接触させることによって、オキシチタニウムフタロシアニンを特定の結晶型にして用いるものである。
また、本発明の第3の要旨は、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体であって、該感光層が、塩素含有量が0.4重量%以下のオキシチタニウムフタロシアニン、又は、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンの割合が無置換オキシチタニウムフタロシアニンに対してマススペクトル強度比が0.05以下であるオキシチタニウムフタロシアニン、から結晶変換して得られ、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンと、特定構造を有するヒドラゾン化合物を電荷輸送材料として用いる電子写真感光体に存する。このように、オキシチタニウムフタロシアニンは、所定の塩素含有量又はマススペクトル強度比を有するオキシチタニウムフタロシアニンを結晶変換して得られるものである。より具体的には、所定の塩素含有量又はマススペクトル強度比を有するオキシチタニウムフタロシアニンを結晶変換して、オキシチタニウムフタロシアニンを特定の結晶型にして用いるものである。
また、本発明の第4の要旨は、少なくとも、本発明に係る電子写真感光体、及び該感光体を備え、画像形成装置に着脱自在に構成される、電子写真プロセスカートリッジに存し、本発明の第5の要旨は、本発明に係る電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電部、帯電した該電子写真感光体を露光させ静電潜像を形成する露光部、及び該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像部のうち少なくとも1つと、を備えたことを特徴とする、画像形成装置に存する。
フタロシアニン前駆体を、化学的処理後に有機溶媒に接触して得られるCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.6°、24.1°、及び27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンと、特定構造を有するヒドラゾン化合物を電荷輸送材料として用いる本発明に係る電子写真感光体、フタロシアニン前駆体を、化学的処理後に有機溶媒に接触して得られるCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、9.7°、24.2°、及び27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンと、特定構造を有するヒドラゾン化合物を電荷輸送材料として用いる本発明に係る電子写真感光体、又は、塩素含有量が0.4重量%以下のオキシチタニウムフタロシアニン、若しくは、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンの割合が無置換オキシチタニウムフタロシアニンに対してマススペクトル強度比が0.05以下であるオキシチタニウムフタロシアニン、から結晶変換して得られるCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンと、特定構造を有するヒドラゾン化合物を電荷輸送材料として用いる本発明に係る電子写真感光体、によれば、メモリ現象等の画像欠陥が発生しない高品質の画像を形成することのできる電子写真感光体、該電子写真感光体を備える電子写真プロセスカートリッジ、及び該電子写真感光体を備える画像形成装置を提供することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更して実施することができる。
本発明は、フタロシアニン前駆体を、化学的処理後、有機溶媒に接触して得られる特定結晶型のオキシチタニウムフタロシアニンと、特定のヒドラゾン化合物とを併用することにより、高性能の電子写真感光体を得る。
また、本発明は、所定の塩素含有量又はマススペクトル強度比を有するオキシチタニウムフタロシアニンを結晶変換して得られる、特定の結晶型のオキシチタニウムフタロシアニンと、特定のヒドラゾン化合物を併用することにより、高性能の電子写真感光体を得る。結晶変換前にこうした特定の物性値を有するオキシチタニウムフタロシアニンが得られているか否かは、後述する塩素含有量の測定方法及びマススペクトル強度比の測定方法を実施することによって確認することができる。また、結晶変換の方法も特に制限はされないが、好ましくは、化学的処理後、有機溶媒に接触するという方法が用いられる。
<化学的処理後、有機溶媒に接触して得られるオキシチタニウムフタロシアニン>
本発明に係る電子写真感光体の感光層は、特定のオキシチタニウムフタロシアニンを含有するが、当該オキシチタニウムフタロシアニンは、フタロシアニン前駆体を、化学的処理後に有機溶媒に接触して得られる。
本発明に係る電子写真感光体の感光層は、特定のオキシチタニウムフタロシアニンを含有するが、当該オキシチタニウムフタロシアニンは、フタロシアニン前駆体を、化学的処理後に有機溶媒に接触して得られる。
本発明において化学的処理とは、アモルファスオキシチタニウムフタロシアニン、低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを調製する段階で用いられる処理である。
化学的処理とは、単に物理的な力(例えば、機械的磨砕等)を用いてアモルファスオキシチタニウムフタロシアニン、又は低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを得る方法ではなく、溶解、反応等の化学的現象を用いてアモルファス、もしくは低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを得る処理方法のことである。
化学的処理の具体的な例としては、フタロシアニン前駆体を強酸中に溶解して行うアシッドペースティング法(本明細書においては、「アシッドペースティング法」を、単に「アシッドペースト法」という場合がある。)、強酸中で分散状態を経るアシッドスラリー法、及びジクロロチタニルフタロシアニンにフェノール、アルコールを付加させた後に脱離させてオキシチタニウムフタロシアニンを得る方法等の化学的処理方法があげられ、より安定的なアモルファス、低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを得るには、アシッドペースト法、アシッドスラリー法が好ましく、アシッドペースト法がより好ましい。
アシッドペースト法、アシッドスラリー法とは、顔料を強酸に溶解もしくは、懸濁、分散させた溶液を調製し、その調製した溶液を、強酸と均一に混じり、顔料がほとんど溶解しない媒体中(例えば、オキシチタニウムフタロシアニンの場合は、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類等)に放出し、再顔料化させることにより顔料を改質する方法である。
アシッドスラリー法、アシッドペースト法には濃硫酸、有機スルホン酸、有機ホスホン酸、トリハロゲン化酢酸等の強酸が使用される。これら強酸は、強酸単独、もしくは強酸同士の混合使用、又は強酸と有機溶媒の組み合わせ等で用いることが可能である。強酸の種類はフタロシアニン前駆体の溶解性を考慮すると、トリハロゲン化酢酸、濃硫酸が好ましく、生産コストを考慮すると、濃硫酸がより好ましい。
濃硫酸の濃度は、フタロシアニン前駆体の溶解性を考慮すると、90重量%以上の濃硫酸が好ましく、さらに濃硫酸の含有量が低いと生産効率が低下することから、より好ましくは95重量%以上の濃硫酸である。
強酸にフタロシアニン前駆体を溶解させる温度は、公知文献に掲載されている温度条件で溶解させることが可能であるが、温度が高すぎると前駆体のフタロシアニン環が開環し、分解してしまうことから、5℃以下が好ましく、得られる電子写真感光体に及ぼす影響を考慮すると0℃以下がより好ましい。
強酸は任意の量で用いることが可能であるが、少なすぎるとフタロシアニン前駆体の溶解性が悪くなることから、強酸の量は、フタロシアニン前駆体1重量部に対して5重量部以上、溶液中の固形分濃度が高すぎると撹拌効率が低下することから15重量部以上が好ましく、より好ましくは20重量部以上である。また、強酸使用量が多すぎると、廃棄酸量が増えることから、100重量部以下が好ましく、また生産効率を考慮すると50重量部以下がより好ましい。
得られたフタロシアニン前駆体の酸溶液を放出する媒体の種類としては、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等の鎖状―エーテル等が挙げられ、公知の方法同様に、放出媒体は単一種で用いても、2種類以上を混合して使用してもよい。用いる媒体種により再顔料化された際の粒子形状、結晶状態等が変化し、この履歴が後に得られる最終結晶の電子写真感光体特性に影響を与えることから、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、及び2−プロパノール等の低級アルコール類が好ましく、生産性、コストの面から水がより好ましい。
フタロシアニン前駆体の濃硫酸溶液を放出媒体に放出し、再顔料化されたオキシチタニウムフタロシアニンは、ウエットケーキとして濾別されるが、このウエットケーキは放出媒体中に存在する濃硫酸の硫酸イオン等の不純物を多く含むことから、再顔料化された後に、洗浄媒体で洗浄を行う。洗浄を行う媒体は、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、酢酸ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液等のアルカリ性水溶液、希塩酸、希硝酸、希酢酸等の酸性水溶液、イオン交換水等の水等が挙げられるが、顔料中に残存したイオン性物質は電子写真感光体特性に悪影響を与える場合が多いことから、イオン交換水等のイオン性の物質を取り除いた水が好ましい。
通常、アシッドペースト法、アシッドスラリー法より得られるオキシチタニウムフタロシアニンは明確な回折ピークを有さないアモルファスか、ピークは有するが、その強度が非常に弱く、半値幅の非常に大きいピークを有する低結晶性のものである。
通常、アシッドペースト法、アシッドスラリー法により得られたアモルファスオキシチタニウムフタロシアニン、又は低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを有機溶媒に接触させることにより、本発明の電子写真感光体に用いることができるCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.6°、24.1°、及び27.2°又は、9.5°、9.7°、24.2°、及び27.2に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを得ることができる。本発明に係るオキシチタニウムフタロシアニン結晶のCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)のピークについては、いかなる公知の方法でも測定可能である。
本発明に係る特定のオキシチタニウムフタロシアニンは、化学的処理後、有機溶媒に接触することにより得られるが、化学的処理後のアモルファスオキシチタニウムフタロシアニン、及び低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを纏めて「低結晶性フタロシアニン類」と呼ぶ。
本発明において「低結晶性フタロシアニン類」とは、粉末X線回折(X-ray diffraction:以下「XRD」と省略する場合がある。)スペクトルにおいて、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)0〜40°の範囲内に、半値幅が0.30°以下のピークを有さないフタロシアニン類をいう。この半値幅が小さ過ぎると、固体中でフタロシアニン分子がある程度一定の規則性や長期的秩序を有している状態になっており、有機溶媒に接触することにより本発明に係るオキシチタニウムフタロシアニンを得る際に、結晶型の制御性が低下する場合がある。このため、本発明において用いる低結晶性フタロシアニン類は、その半値幅が、通常0.35°以下、さらには0.40°以下、特に0.45°以下のピークを有さないものであることが好ましい。
なお、本明細書において、フタロシアニン類の粉末X線回折スペクトルの測定、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)の決定、及びピーク半値幅の算出は、以下の条件で行なうものとする。
粉末X線回折スペクトルの測定装置としては、CuKα(CuKα1+CuKα2)線をX線源とした集中光学系の粉末X線回折計(例えばPANalytical社製PW1700)を使用する。粉末X線回折スペクトルの測定条件は、走査範囲(2θ)3.0〜40.0°、スキャンステップ幅0.05°、走査速度3.0°/min、発散スリット1°、散乱スリット1°、受光スリット0.2mmとする。
ピーク半値幅は、プロファイルフィッティング法により算出することができる。プロファイルフィッティングは、例えばMDI社製粉末X線回折パターン解析ソフトJADE5.0+を用いて行なうことができる。その算出条件は、以下の通りである。まず、バックグランドは、全測定範囲(2θ=3.0〜40.0°)から理想的な位置に固定する。フィッティング関数としては、CuKα2の寄与を考慮したPeason−VII関数を用いる。フィッティング関数の変数としては、回折角(2θ)、ピーク高さ、及びピーク半値幅(βo)の3つを精密化する。CuKα2の影響を除去し、CuKα1由来の回折角(2θ)、ピーク高さ、及びピーク半値幅(βo)を計算する。そして、非対称は0に、形定数は1.5に固定する。
上記のプロファイルフィッティング法により算出したピーク半値幅(βo)を、同測定条件、同プロファイルフィッティング条件により算出した標準Si(NIST Si 640b)の111ピーク(2θ=28.442°)のピーク半値幅(βSi)により、下式に従って補正することにより、試料由来のピーク半値幅(β)が求められる。
なお、アモルファスオキシチタニウムフタロシアニンと、低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンとの境界は明確ではないが、本発明においては何れを原料としても、本発明に係る特定のオキシチタニウムフタロシアニンを得ることが可能である。
後述のように、本発明に係るオキシチタニウムフタロシアニンの結晶は、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.6°、24.1°、及び27.2°又は9.5°、9.7°、24.2°、及び27.2°に主たる回折ピークを有するが、27.2°付近にピークを有する低結晶性フタロシアニン類は、上記特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンとある程度類似した規則性を有しており、上記特定結晶型への結晶型制御性に優れる。この場合における低結晶性フタロシアニン類は、その半値幅が通常0.30°以下のピークを有さないものであり、好ましくは0.35°以下のピークを有さないものであり、より好ましくはその半値幅が0.40°以下のピークを有さないものであり、さらに好ましくはその半値幅が0.45°以下のピークを有さないものである。
一方、27.2°付近にピークを有さない低結晶性フタロシアニン類を本発明に係るオキシチタニウムフタロシアニンの原料として用いる場合には、上記特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンへの結晶型制御性が低いことから、より結晶性が低いことが望ましい。この場合における低結晶性フタロシアニンは、その半値幅が通常0.30°以下のピークを有さないものであり、好ましくはその半値幅が0.50°以下のピークを有さないものであり、より好ましくはその半値幅が0.70°以下のピークを有さないものであり、さらに好ましくはその半値幅が0.90°以下のピークを有さないものである。
通常、低結晶性フタロシアニン類と有機溶媒との接触は水の存在下で行われる。水は、アシッドペースト法、アシッドスラリー法により得られた含水ケーキ中に含まれる水を用いても、含水ケーキ中に含まれる水以外にさらに後から水を添加して用いてもよい。また、アシッドペースト法、アシッドスラリー法後に得られた含水ケーキを一旦乾燥させ、結晶変換時に新たに水を追加して用いてもよいが、乾燥させてしまうと顔料と水との親和性が低下することから、乾燥させずにアシッドペースト法、アシッドスラリー法により得られた含水ケーキ中に含まれる水を用いるか、又は含水ケーキ中に含まれる水にさらに後から水を添加することが好ましい。
結晶変換に用いることができる溶媒としては、水と相溶性のある溶媒、水と非相溶の溶媒のいずれも可能である。水と相溶性のある溶媒の好適な例としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、及び1,3−ジオキソラン等の環状エーテルが挙げられる。また、水と非相溶の溶媒の好適な例としては、例えば、トルエン、ナフタレン、及びメチルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、ジクロロトルエン、ジクロロフルオロベンゼン、及び1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ニトロベンゼン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、及びアセトフェノン等の置換芳香族系溶媒が挙げられ、中でも環状エーテル、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、ジクロロフルオロベンゼン、ジクロロトルエン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、及び芳香族炭化水素系溶媒が得られた結晶の電子写真特性が良好であり好ましく、テトラヒドロフラン、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、2,4−ジクロロトルエン、ジクロロフルオロベンゼン、トルエン、及びナフタレンが、得られた結晶の分散時の安定性という点でより好ましい。
結晶変換後得られた結晶は、乾燥工程を行うことになるが、乾燥方法は、例えば、送風乾燥、加熱乾燥、真空乾燥、及び凍結乾燥等の公知の方法で乾燥することが可能である。
前記製造法により得られたオキシチタニウムフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.6°、24.1°、及び27.2°又は、9.5°、9.7°、24.2°、及び27.2°に主たる回折ピークを有する結晶である。他の回折ピークとしては、26.2°付近にピークを有する結晶は分散時の結晶安定性に劣ることから、26.2°付近にはピークを有さない結晶であることが好ましい。中でも、7.3°、9.6°、11.6°、14.2°、18.0°、24.1°及び27.2°、又は、7.3°、9.5°、9.7°、11.6°、14.2°、18.0°、24.2°及び27.2°に主たる回折ピークを有する結晶が電子写真感光体として用いた場合の暗減衰、残留電位の観点からより好ましい。なお、ブラック角は、2θ±0.2°で示される通り、±0.2°の誤差を有する。このため、例えば、「ブラッグ角(2θ±0.2°)9.6°」という場合は、9.4〜9.8°の範囲を意味している。この誤差範囲は、他の角度においても同様である。
これらオキシチタニウムフタロシアニンの粒子径は製法、結晶変換方法によって大きく異なるが、分散性を考慮すると、SEM写真により観察される任意の10個の粒子の最大径の平均値を平均1次粒子径とした場合に、その平均1次粒子径が500nm以下であることが好ましく、塗布成膜性の面からは250nm以下であることが好ましい。
本発明に係るオキシチタニウムフタロシアニン結晶中の塩素含有量は、公知の如何なる方法でも測定することが可能であるが、より具体的には例えば下記の「塩素含有量の測定」の項に記載する方法で測定すればよい。また、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンと無置換オキシチタニウムフタロシアニンのマススペクトルの強度比も、公知の如何なる方法でも測定することが可能であるが、より具体的には、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンと無置換オキシチタニウムフタロシアニンのマススペクトルの強度比は「マススペクトルの測定条件」の項に記載する条件にしたがって求めればよい。
<塩素含有量の測定>
オキシチタニウムフタロシアニン約100mgを精秤し、石英ボードにとり、三菱化学社製昇温型電気炉QF−02にて完全燃焼し、燃焼ガスを水15mlにて定量吸収させた。その吸収液を50mlに希釈し、イオンクロマトグラフィー(Dionex社製「DX−120」)でCl分析を行った。下記にイオンクロマトグラフィーの条件を示す。
カラム:Dionex IonPak AG12A+AS12A
溶離液:2.7mM Na2CO3/0.3mM NaHCO3 混合溶液
流量:1.3ml/min
注入量:50μl
オキシチタニウムフタロシアニン約100mgを精秤し、石英ボードにとり、三菱化学社製昇温型電気炉QF−02にて完全燃焼し、燃焼ガスを水15mlにて定量吸収させた。その吸収液を50mlに希釈し、イオンクロマトグラフィー(Dionex社製「DX−120」)でCl分析を行った。下記にイオンクロマトグラフィーの条件を示す。
カラム:Dionex IonPak AG12A+AS12A
溶離液:2.7mM Na2CO3/0.3mM NaHCO3 混合溶液
流量:1.3ml/min
注入量:50μl
<マススペクトル測定条件>
1.試料の調製
オキシチタニウムフタロシアニン0.50gをガラスビーズ(φ1.0−1.4mm)30g、シクロヘキサノン10gと共に50mlのガラス容器に入れ、染料分散試験機(ペイントシェーカー)で3時間分散処理をし、オキシチタニウムフタロシアニン分散液とした。この分散液を20mlサンプル瓶に1μl採取し、クロロホルム5mlを加えた。次に1時間超音波により分散させ、10ppm分散液を調製した。
1.試料の調製
オキシチタニウムフタロシアニン0.50gをガラスビーズ(φ1.0−1.4mm)30g、シクロヘキサノン10gと共に50mlのガラス容器に入れ、染料分散試験機(ペイントシェーカー)で3時間分散処理をし、オキシチタニウムフタロシアニン分散液とした。この分散液を20mlサンプル瓶に1μl採取し、クロロホルム5mlを加えた。次に1時間超音波により分散させ、10ppm分散液を調製した。
2.測定装置・条件
測定装置:JEOL製 JMS−700/MStaion
イオン化モード:DCI(−)
反応ガス:イソブタン(イオン化室圧力1×10−5Torr)
フィラメントレート:0 → 0.90A(1A/min)
質量分析能:2000
スキャン法:MF−Linear
スキャン質量範囲:500 to 600
全質量範囲スキャン時間:0.8sec
繰り返し時間:0.5sec
測定装置:JEOL製 JMS−700/MStaion
イオン化モード:DCI(−)
反応ガス:イソブタン(イオン化室圧力1×10−5Torr)
フィラメントレート:0 → 0.90A(1A/min)
質量分析能:2000
スキャン法:MF−Linear
スキャン質量範囲:500 to 600
全質量範囲スキャン時間:0.8sec
繰り返し時間:0.5sec
3.塩素化オキシチタニウムフタロシアニンと無置換オキシチタニウムフタロシアニンのマススペクトル強度比算出方法
測定用分散液1μlをDCIプローブのフィラメントに塗布し、マススペクトルを上記条件で実施した。得られたマススペクトルにおいて、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンの分子イオンに相当するm/z=610及び無置換オキシチタニウムフタロシアニンの分子イオンに相当するm/z=576のイオンクロマトから得られるピーク面積の比(「610」ピーク面積/「576」ピーク面積)をマススペクトル強度比として算出する。
測定用分散液1μlをDCIプローブのフィラメントに塗布し、マススペクトルを上記条件で実施した。得られたマススペクトルにおいて、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンの分子イオンに相当するm/z=610及び無置換オキシチタニウムフタロシアニンの分子イオンに相当するm/z=576のイオンクロマトから得られるピーク面積の比(「610」ピーク面積/「576」ピーク面積)をマススペクトル強度比として算出する。
オキシチタニウムフタロシアニン中に含有される塩素分の種類としては、例えば、反応に用いた溶媒の残存物、原料として用いる四塩化チタンから由来したイオン種として含有されるもの、及び四塩化チタンを中心金属源として用いた場合に反応系中でフタロシアニン環に塩素化が起こり、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンとして結晶中に含有されるもの等がある。これら不純物のうち、反応溶媒や、イオン種のものについては、ほとんどのものが反応後の洗浄操作で洗い出されるのに対して、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンについては、反応系中でフタロシアニン結晶を形成する際に、その結晶中に取り込まれてしまうことから、容易に除去できず、これが最終段階まで残り、塩素分として残存することになる。これら残存した塩素化オキシチタニウムフタロシアニンが画像のメモリ現象にどの様なメカニズムで影響を与えているかは明確ではないが、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンを含有することにより、結晶格子に歪みが生じたり、また結晶粒子の表面電荷状態に影響が現れ、この影響が電荷輸送材料と電荷発生材料が接している界面近傍での電荷のトラップに関与しているのではないかと推測される。
前述した元素分析手法に基づいて測定される塩素含有量について0.4重量%以下であることが好ましい。この理由は明確ではないが、不純物として、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン結晶は、準安定型の結晶型であり、物理的力等の外的な衝撃に弱く、安定結晶型への結晶型の転位が起こってしまう。塩素原子を有する化合物等の大きな分子団が結晶中に存在すると、結晶中の分子配列の歪みが大きくなり、物理的な力による影響を受けやすくなり、結晶安定性が低下するため、塩素含有量0.3重量%以下であることが好ましい。また、塩素原子を有する化合物等が存在すると結晶中の分子間距離が離れ、分子面間のπ電子系の相互作用が低下し、電荷発生能力に対して悪影響を与えることから、塩素含有量は0.2重量%以下であることがより好ましい。
フタロシアニン環が塩素化された、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンの量については、前述したマススペクトルのサンプル調製方法、測定方法、及びスペクトル強度比算出方法にもとづいて求めることが可能である。前記同様に、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンが結晶中に含有されると、その塩素基が置換されている分だけ単分子の体積が大きくなり、結晶中の分子配列に影響を与え、結晶の安定性が低下することから、前記マススペクトル測定によるピーク強度比が、0.05以下が好ましく、0.04以下がより好ましく、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンの含有量が多くなると、感度が悪化する傾向にあることから、0.03以下がさらに好ましい。
<ヒドラゾン化合物>
本発明の電子写真感光体には、特定構造を有するヒドラゾン化合物が使用される。後記する構造を有するヒドラゾン化合物が、メモリ発現に対して関与するメカニズムについては明確ではないが、特定の基本骨格を有し、特定位置に置換基を有することにより、電荷発生材料との相互作用が緩和され、電荷発生材料と接する際に注入された電荷をトラップし難い状態でヒドラゾン化合物が電荷発生材料と接しているためではないかと推測される。
本発明の電子写真感光体には、特定構造を有するヒドラゾン化合物が使用される。後記する構造を有するヒドラゾン化合物が、メモリ発現に対して関与するメカニズムについては明確ではないが、特定の基本骨格を有し、特定位置に置換基を有することにより、電荷発生材料との相互作用が緩和され、電荷発生材料と接する際に注入された電荷をトラップし難い状態でヒドラゾン化合物が電荷発生材料と接しているためではないかと推測される。
本発明における電子写真感光体には、下記一般式(1)の構造を有するヒドラゾン化合物が使用される。
Ar1、Ar2はアリール基を表し、Ar1、Ar2のうち少なくとも一つは置換基を有するアリール基である。Ar3、Ar4は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。Ar5は置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。なお、Ar1、Ar2は、置換基同士が結合して、シクロペンチル環、シクロヘキシル環等の脂環式構造をとなっていてもよいが、Ar1とAr2、Ar3とAr4が互いに直接結合、又はアルキレン基等を介して互いに結合し、環構造を形成すると、感度の悪化、残留電位の上昇等の電子写真感光体としての特性に悪影響を及ぼすことから、Ar1とAr2、Ar3とAr4は互いに直接結合、又はアルキレン基等を介して環構造を形成することはない。
Ar1、Ar2で表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、及びアントリル基等が挙げられるが、縮合多環等の置換で高度に共役系が拡張すると分子同士の相互作用が強くなり溶媒への溶解性が低下することから、フェニル基が好ましい。
Ar1〜Ar4が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びイソプロピル基等の炭素数5以下の低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数5以下のアルコキシ基等を有することが可能である。Ar1〜Ar4が置換基を有する場合、電子写真感光体として用いた際の繰り返し使用に対する耐久性、オゾンに対する耐久性を考慮すると炭素数3以下のアルキル基が好ましい。中でも電荷輸送材料としての移動度の観点からAr1とAr2が共に4−メチルフェニル基であることがより好ましい。また、電子写真感光体として用いた際の残留電位を考慮すると、Ar3とAr4は置換基を有さないフェニル基であることがより好ましい。
Ar5は置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、及びアントリレン基、等が挙げられる。有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びイソプロピル基等の炭素数5以下の低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数5以下のアルコキシ基等が挙げられる。Ar5が縮合多環構造をとった場合は、感光層を塗布形成する際に用いる有機溶媒に対して溶解性が低下することから、フェニレン基であることが好ましい。Ar5が置換基を有する場合は、電子写真感光体として用いた際の繰り返し使用に対する耐久性、オゾンに対する耐久性を考慮すると炭素数3以下のアルキル基が好ましいが、Ar5が置換基を有すると分子内にねじれを生じ、移動度の低下を引き起こす可能性があることから、Ar5は置換基を有さない1,4−フェニレン基であることが好ましい。
以下に本発明に用いることができるヒドラゾン化合物の好適な構造を例示する。本例示は、本発明の趣旨を明確にするために行うものであり、本発明の趣旨に反しない限りは例示される構造に限定されるものではない。
<電子写真感光体>
以下、本発明の電子写真感光体について詳述する。
以下、本発明の電子写真感光体について詳述する。
導電性支持体上に形成された感光層としては、電荷発生物質と電荷輸送物質が同一層に存在し、バインダー樹脂中に分散された単層構造のものであってもよい。また、導電性支持体上に形成された感光層としては、電荷発生物質がバインダー中に分散された電荷発生層と電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層とに機能分離された積層構造のものであってもよい(この機能分離された積層構造の感光体を「機能分離型感光体」という場合がある。)。感光層が積層構造を有する場合において、電荷発生層は前記オキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生物質の少なくとも1種として含有する電荷発生物質と結着樹脂からなる。
機能分離型感光体においての電荷発生層は、結着樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に前記オキシチタニウムフタロシアニンを少なくとも1種含有する電荷発生物質を分散させることにより塗布液を調製し、これを導電性支持体上に塗布し、電荷発生物質の微粒子と各種バインダー樹脂とを結着することにより形成される。
電荷発生物質はオキシチタニウムフタロシアニンを単独として用いてもよいし、又はいくつかの染顔料との混合状態で用いてもよい。
オキシチタニウムフタロシアニンと混合状態として用いる染顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム顔料)、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、及びベンズイミダゾール顔料等が挙げられる。
混合状態として用いる染顔料としては、光感度の面から、フタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましく使用される。
機能分離型感光体における電荷発生層に用いられる結着樹脂の例としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマー等を挙げることができる。結着樹脂は、これら樹脂の中から選択し、用いることができるが、これらポリマーに限定されるものではない。また、これら結着樹脂は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
結着樹脂を溶解させ、塗布液の作製に用いられる溶媒、分散媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の鎖状、及び環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2―ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状、及び環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、及び水等が挙げられる。溶媒、分散媒は、後述する下引き層を溶解しないものが好ましく用いられる。またこれらは単独、又は2種以上を併用して用いることが可能である。
機能分離型感光体の電荷発生層において、前記結着樹脂と電荷発生物質との配合比(重量)は、バインダー樹脂100重量部に対して10〜1000重量部、好ましくは30〜500重量部の範囲であり、その膜厚は通常0.1〜10μm、好ましくは0.15〜0.6μmの範囲である。電荷発生物質の比率が高すぎる場合は電荷発生物質の凝集等の問題により塗布液の安定性が低下し、一方低すぎる場合は感光体としての感度の低下を招くことから、前記範囲で使用することが好ましい。前記電荷発生物質を分散させる方法としては、例えば、ボールミル分散法、アトライター分散法、及びサンドミル分散法等の公知の分散方法を用いることができる。この際粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の粒子サイズに微細化することが有効である。
感光体に用いる導電性支持体としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、及び紙等が主として使用される。形態としては、例えば、ドラム状、シート状、及びベルト状等のものが用いられる。金属材料の導電性支持体に、導電性・表面性等の制御のためや欠陥被覆のために、適当な抵抗値をもつ導電性材料を塗布したものでもよい。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いてもよい。陽極酸化被膜を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
陽極酸化被膜は、例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、及びスルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより形成されるが、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は100〜300g/l、溶存アルミニウム濃度は2〜15g/l、液温は15〜30℃、電解電圧は10〜20V、電流密度は0.5〜2A/dm2の範囲内に設定されるのが好ましいが、前記条件に限定されるものではない。
このようにして形成された陽極酸化被膜に対して、封孔処理を行うことは好ましい。封孔処理は、通常の方法でよいが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、あるいは主成分として酢酸ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理が施されるのが好ましい。
上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は、適宜選べるが、3〜6g/lの範囲で使用された場合、より好ましい結果が得られる。また、封孔処理をスムーズに進めるために、処理温度としては、通常25〜40℃、好ましくは30〜35℃で、また、フッ化ニッケル水溶液のpHは、通常4.5〜6.5、好ましくは5.5〜6.0の範囲で処理するのがよい。pH調節剤としては、例えば、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、及びアンモニア水等を用いることができる。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1〜3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性をさらに改良するために、例えば、フッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、及び界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に添加しておいてもよい。次いで水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。前記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、例えば、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、及び硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることができるが、特に酢酸ニッケルを用いるのが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は5〜20g/lの範囲内で使用するのが好ましい。処理温度は、通常80〜100℃、好ましくは90〜98℃で、また、酢酸ニッケル水溶液のpHは5.0〜6.0の範囲で処理するのが好ましい。ここでpH調節剤としてはアンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることができる。処理時間は、通常10分以上、好ましくは20分以上処理するのが好ましい。なお、この場合も被膜物性を改良するために、例えば、酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、及びノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に添加してもよい。次いで水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件を必要とする。従って生産性が悪くなると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じやすくなる。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は通常20μm以下、特に7μm以下に形成されることが好ましい。
支持体表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであってもよい。また、安価化のためには切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。特に引き抜き加工、インパクト加工、及びしごき加工等の非切削アルミニウム基体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等が無くなり、均一で清浄な基体が得られるので好ましい。
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けてもよい。下引き層としては、例えば、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。
下引き層に用いられる金属酸化物粒子の例としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、及び酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、及びチタン酸バリウム等の複数の金属元素含む金属酸化物粒子が挙げられる。金属酸化物粒子は、1種類の粒子のみを用いていてもよいし、複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。これらの金属粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、例えば、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、及び酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、及びシリコーン等の有機物による処理を施されていてもよい。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、及びアモルファスのいずれも用いることができる。また、複数の結晶状態のものが含有されていてもよい。
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の面から、SEM写真により観察される任意の10個の粒子の最大径の平均値を平均1次粒子径とした場合に、その平均1次粒径としては10nm以上100nm以下が好ましく、特に好ましいのは、10nm以上50nm以下である。
下引き層は、前記金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、及びシランカップリング剤等の公知の結着樹脂を用いることができる。これらは単独、もしくは硬化剤とともに硬化した形で使用できる。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は良好な分散性、塗布性を示し好ましい。
下引き層に用いられるバインダー樹脂対する無機粒子の添加比は、任意に選ぶことが可能であるが、10〜500重量%の範囲で使用することが、分散液の安定性、塗布面で好ましい。
下引き層の膜厚は任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性から、通常0.01〜30μm、好ましくは0.1〜20μmの範囲内で使用される。また、下引き層は、画像欠陥防止等を目的として、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させてもよい。
電荷発生層と電荷輸送層を有する機能分離型感光体の電荷輸送層、及び単層型感光体の感光層形成の際は、膜強度確保のためバインダー樹脂が使用される。機能分離型感光体の電荷輸送層の場合、電荷輸送物質と各種バインダー樹脂とを溶剤に溶解、あるいは分散して得られる塗布液、また、単層型感光体の場合、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダー樹脂を溶剤に溶解、あるいは分散して得られる塗布液を塗布、乾燥して得ることができる。バインダー樹脂としては、例えば、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、及びポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。これらバインダー樹脂は、珪素試薬等で修飾されていてもよい。上記バインダー樹脂のうち、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が特に好ましい。
ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂の中でも、下記構造式を有するビスフェノール、又はビフェノール成分が含有されるポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が感度、残留電位の点から好ましく、中でも移動度の面からポリカーボネート樹脂がより好ましい。
ポリカーボネート樹脂に好適に用いることのできるビスフェノール、ビフェノールの構造を以下に例示する。本例示は、本発明の趣旨を明確にするために行うものであり、本発明の趣旨に反しない限りは例示される構造に限定されるものではない。
なお、これら構造は、適当な硬化剤を用いて熱、光等により架橋させて用いることもできる。また、バインダー樹脂は2種類以上ブレンドして用いることもできる。ポリカーボネート樹脂及びポリアリレート樹脂の粘度平均分子量は、特に限定されないが、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、さらに好ましくは20,000以上であり、但し、通常300,000以下、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下である。粘度平均分子量が過度に小さいと、感光層の機械的強度が低下し実用的ではない。また、粘度平均分子量が過度に大きいと、感光層を適当な膜厚に塗布形成することが困難である。
電荷輸送物質としては、前記ヒドラゾン化合物が用いられる。前記ヒドラゾン化合物は単独で用いても他の電荷輸送性物質と併用してもよい。併用する電荷輸送性物質としては、公知の物質であればとくに限定されるものではなく、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、及びエナミン誘導体等の電子供与性物質等を挙げることができる。これらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖、もしくは側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等を挙げることもできる。これらの中で、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。
バインダー樹脂と電荷輸送物質の割合は、単層型感光体、積層型感光体(機能分離型感光体)共に、バインダー樹脂100重量部に対して、通常20重量部以上、残留電位低減の観点から30重量部以上が好ましく、さらに繰り返し使用時の安定性、電荷移動度の観点から、40重量部以上がより好ましい。また、一方で感光層の熱安定性の観点から、通常150重量部以下、さらに電荷輸送物質とバインダー樹脂の相溶性の観点からは好ましくは120重量部以下、さらに耐刷性の観点からは100重量部以下がより好ましく、耐傷性の観点からは80重量部以下がとりわけ好ましい。
また、積層型感光体の場合、膜厚は一般に5〜50μmの範囲で用いられるが、長寿命、画像安定性の観点からは、好ましくは5〜45μm、高解像度の観点からは5〜30μmがより好ましい。
なお、感光層には成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、及び耐光性等を向上させるために周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、及び可視光遮光剤等の添加物を含有させてもよい。
単層型感光体の場合には、上記のような配合比の電荷輸送媒体中に、さらに前出のオキシチタニウムフタロシアニンが分散される。その場合のオキシチタニウムフタロシアニンの体積平均粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散されるオキシチタニウムフタロシアニンは少なすぎると充分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下の弊害があり、好ましくは0.1〜50重量%の範囲、より好ましくは1〜20重量%の範囲で使用される。単層型感光体の場合の膜厚は通常5〜100μm、好ましくは10〜50μmの範囲で使用される。
積層型感光体、あるいは単層型感光体では、その最表層に、感光層の損耗を防止したり、帯電器等からの発生する放電物質等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で保護層を設けてもよい。保護層は、通常、導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成するか、特開平9−190004号公報に記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いることができる。導電性材料としては、例えば、TPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミ、及び酸化亜鉛等の金属酸化物等を用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。保護層に用いる結着樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、及びシロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができ、また、特開平9−190004号公報に記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記樹脂の共重合体を用いることもできる。上記保護層は電気抵抗が109〜1014Ω・cmとなるように構成することが好ましい。電気抵抗が1014Ω・cmより高くなると残留電位が上昇しカブリの多い画像となってしまい、一方109Ω・cmより低くなると画像のボケ、解像度の低下が生じてしまう。また、保護層は像露光に照射される光の透過を実質上妨げないように構成されなければならない。
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、及び紙への転写効率を高める等の目的で、表面層にフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂等を含んでいてもよい。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいてもよい。
前記方法により得られる塗布液は、単層型感光体、及び機能分離型感光体の電荷輸送層の場合には、固形分濃度を通常5〜40重量%の範囲で使用されるが、10〜35重量%の範囲で使用するのが好ましい。塗布液の粘度は通常10〜500mPa・sの範囲で使用されるが、50〜400mPa・sの範囲で使用するのが好ましい。機能分離型感光体の電荷発生層の場合には、固形分濃度は、通常0.1〜15重量%の範囲で使用されるが、1〜10重量%の範囲で使用することが好ましい。塗布液の粘度は、通常0.01〜20mPa・sの範囲で使用されるが、0.1〜10mPa・sの範囲で使用されることが好ましい。
これらの感光体を構成する各層は、前記方法により得られた塗布液を、支持体上に公知の塗布方法を用い、各層ごとに塗布・乾燥工程を繰り返し、順次塗布していくことにより形成される。
塗布液の塗布方法としては、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、及びカーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
塗布液の乾燥は室温における指触乾燥後、30〜200℃の温度範囲で、1分から2時間の間、無風、又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また加熱温度は、一定であっても、乾燥時に変更させながら行ってもよい。
<画像形成装置・カートリッジ>
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置2、露光装置3、及び現像装置4を備えて構成され、さらに、必要に応じて転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。帯電装置としては、例えば、コロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、電圧印加された直接帯電部材を感光体表面に接触させて帯電させる直接帯電装置(接触型帯電装置)等がよく用いられる。直接帯電装置の例としては、帯電ローラ、帯電ブラシ等の接触帯電器等が挙げられる。なお、図1では、帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示している。直接帯電装置として、気中放電を伴う帯電装置、あるいは気中放電を伴わない注入帯電装置の何れの装置も使用可能である。また、帯電時に印加する電圧としては、直流電圧だけの場合、及び直流に交流を重畳させて用いることもできる。
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、例えば、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、及びLED等が挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380〜500nmの短波長の単色光等で露光を行なえばよい。但し、500nm未満の短い波長の光では、本発明に係るヒドラゾン化合物による吸収のために十分な光書き込みができないケースがあるため、500〜800nmの単色光で露光することが好ましい。
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、例えば、カスケード現像、一成分絶縁トナー現像、一成分導電トナー現像、及び二成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や、湿式現像方式等の任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジ等の容器からトナーTを補給することが可能になるように構成される。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、及びニッケル等の金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、及びフッ素樹脂等を被覆した樹脂ロール等からなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、例えば、シリコーン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、及びリン青銅等の金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁造粒、懸濁重合、乳化重合凝集法等のケミカルトナーを用いることができる。ケミカルトナーの場合には、4〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナー粒子の形状も、球形に近いものから、球形から外れたポテト状のものまで、様々な形状のものを使用することができる。特に重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、例えば、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、及び粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、及び転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体)Pに転写するものである。
クリーニング装置6について特に制限はなく、例えば、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、及びブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。なお、残留トナーが少ないか、ほとんど無い場合、クリーニング装置6は無くてもかまわない。
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、例えば、ステンレス,アルミニウム等の金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、さらにテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等の公知の熱定着部材を使用することができる。さらに、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上に定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、例えば、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、及び圧力定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された画像形成装置では、次の方法(本発明の画像形成方法)に従って画像の記録が行なわれる。
まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成プロセスは、繰り返しプロセスであるため、前回に形成した画像が次回の画像形成時に現れる場合がある。例えば、文字画像を印字した後にハーフトーン画像を印字した場合、ハーフトーン画像部に先に印刷した文字が出現する現象、いわゆるメモリ(ゴースト)現象が生じる場合がある。このメモリ現象にはより濃い濃度で出現するポジメモリー現象と、濃度が薄くなるネガメモリー現象がある。
この画像のメモリ現象の発生機構の詳細は、未だに不明な部分が数多くあり、完全には解明されていないが、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成とすれば改善されるため、除電工程は多くの画像形成装置で採用されている。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。しかしながら、本発明に係る電子写真感光体は、メモリ現象が極めて生じ難いという特徴を有するため、特に除電工程を有さないような画像形成装置において、良好な画像を形成するのに適している。
また、画像形成装置はさらに変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程等の工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、さらには複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
なお、電子写真感光体1を単独で、又は、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上の要素と組み合わせて、一体型のカートリッジ(これを適宜「電子写真感光体カートリッジ」という)として構成し、この電子写真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。この場合、画像形成装置に対して着脱可能に構成されたカートリッジケースを用い、これに電子写真感光体1を単独で、又は上述の要素と組み合わせて収容し支持させることにより、電子写真感光体カートリッジとすることができる。こうした構成により、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
以下、製造例、実施例、及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
<粉末X線回折スペクトル測定方法>
本発明において特定されているオキシチタニウムフタロシアニン結晶のCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)のピークについては、いかなる公知の方法でも可能であるが、本発明の実施例においては、以下の方法により測定を行うことによりオキシチタニウムフタロシアニン結晶のピークの特定を行った。粉末のX線回折スペクトルを測定するため、測定装置は、CuKα線を線源とした集中光学系の粉末X線回折計であるPANalytical社製のPW1700を使用した。測定条件は、X線出力40kV、30mA、走査範囲(2θ)3〜40°、スキャンステップ幅0.05°、走査速度3.0°/min、発散スリット1.0°、散乱スリット1.0°、及び受光スリット0.2mmとした。
本発明において特定されているオキシチタニウムフタロシアニン結晶のCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)のピークについては、いかなる公知の方法でも可能であるが、本発明の実施例においては、以下の方法により測定を行うことによりオキシチタニウムフタロシアニン結晶のピークの特定を行った。粉末のX線回折スペクトルを測定するため、測定装置は、CuKα線を線源とした集中光学系の粉末X線回折計であるPANalytical社製のPW1700を使用した。測定条件は、X線出力40kV、30mA、走査範囲(2θ)3〜40°、スキャンステップ幅0.05°、走査速度3.0°/min、発散スリット1.0°、散乱スリット1.0°、及び受光スリット0.2mmとした。
<オキシチタニウムフタロシアニンの合成>
合成例1
特開平10−7925号報中に記載の「粗TiOPcの製造例」、「実施例1」の順に従ってβ型オキシチタニウムフタロシアニンを調製した。
合成例1
特開平10−7925号報中に記載の「粗TiOPcの製造例」、「実施例1」の順に従ってβ型オキシチタニウムフタロシアニンを調製した。
得られたオキシチタニウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを図2に示す。TiOPc結晶中に含有される塩素含有量を、前記元素分析手法(上記の「塩素含有量の測定」に記載の方法)を用いて分析した結果、塩素含有量は検出下限以下の0.20重量%以下であった。また前記「マススペクトル測定条件」に記載の方法に従ってオキシチタニウムフタロシアニンと塩素化オキシチタニウムフタロシアニンのマススペクトル強度比を算出すると、0.002であった。
合成例2
特開昭62−67094号公報中に記載の製造例1の方法に基づきチタニルオキシフタロシアニンを調製した。TiOPc結晶中に含有される塩素含有量を、前記元素分析手法(上記の「塩素含有量の測定」に記載の方法)を用いて分析した結果、塩素含有量は0.51重量%であった。また、前記「マススペクトル測定条件」に記載の方法に従ってオキシチタニウムフタロシアニンと塩素化オキシチタニウムフタロシアニンのマススペクトル強度比を算出すると、0.055であった。
特開昭62−67094号公報中に記載の製造例1の方法に基づきチタニルオキシフタロシアニンを調製した。TiOPc結晶中に含有される塩素含有量を、前記元素分析手法(上記の「塩素含有量の測定」に記載の方法)を用いて分析した結果、塩素含有量は0.51重量%であった。また、前記「マススペクトル測定条件」に記載の方法に従ってオキシチタニウムフタロシアニンと塩素化オキシチタニウムフタロシアニンのマススペクトル強度比を算出すると、0.055であった。
合成例3
合成例1で得られたオキシチタニウムフタロシアニンをフタロシアニン結晶前駆体として、以下の操作を行った。まず、合成例1で得られたオキシチタニウムフタロシアニン18重量部を−10℃以下に冷却した95重量%濃硫酸720重量部中に添加した。このとき硫酸溶液の内温が−5℃を超えないようにゆっくりと添加した。添加終了後、濃硫酸溶液を−5℃以下で2時間撹拌した。撹拌後、濃硫酸溶液をガラスフィルターで濾過し、不溶分を濾別後、濃硫酸溶液を氷水10800重量部中に放出することにより、オキシチタニウムフタロシアニンを析出させ、放出後1時間撹拌した。撹拌後、溶液を濾別し、得られたウエットケーキを再度水900重量部中で1時間洗浄し、濾過を行った。この洗浄操作を濾液のイオン伝導度が0.5mS/mになるまで繰り返すことにより、図3に示すような粉末X線回折スペクトルを有する低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンのウエットケーキを185重量部得た(オキシチタニウムフタロシアニン含有率9.5重量%)。
合成例1で得られたオキシチタニウムフタロシアニンをフタロシアニン結晶前駆体として、以下の操作を行った。まず、合成例1で得られたオキシチタニウムフタロシアニン18重量部を−10℃以下に冷却した95重量%濃硫酸720重量部中に添加した。このとき硫酸溶液の内温が−5℃を超えないようにゆっくりと添加した。添加終了後、濃硫酸溶液を−5℃以下で2時間撹拌した。撹拌後、濃硫酸溶液をガラスフィルターで濾過し、不溶分を濾別後、濃硫酸溶液を氷水10800重量部中に放出することにより、オキシチタニウムフタロシアニンを析出させ、放出後1時間撹拌した。撹拌後、溶液を濾別し、得られたウエットケーキを再度水900重量部中で1時間洗浄し、濾過を行った。この洗浄操作を濾液のイオン伝導度が0.5mS/mになるまで繰り返すことにより、図3に示すような粉末X線回折スペクトルを有する低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンのウエットケーキを185重量部得た(オキシチタニウムフタロシアニン含有率9.5重量%)。
得られた低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンのウエットケーキ93重量部を水190重量部中に添加し、室温で30分撹拌した。その後、o−ジクロロベンゼン39重量部を添加し、さらに室温で1時間撹拌した。撹拌後、水を分離し、メタノール134重量部を添加し、室温で1時間撹拌洗浄した。洗浄後、濾別し、再度メタノール134重量部を用いて1時間撹拌洗浄後、濾別し、真空乾燥機で加熱乾燥することにより、図4に示すようなCuKα特性X線(波長1.541Å)に対する粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.3°、9.5°、11.6°、14.2°、18.0°、24.3°及び27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを7.8重量部得た。
合成例4
低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンのウエットケーキを得るまでは合成例3と同様の操作を行った。低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンのウエットケーキの46部をテトラヒドロフラン400重量部中に添加し、室温で5時間撹拌した。撹拌後、濾別し、真空乾燥機で加熱乾燥することにより、図5に示すような、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対する粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.3°、9.5°、9.7°、11.6°、14.2°、18.0°、24.2°及び27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを3.9重量部得た。
低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンのウエットケーキを得るまでは合成例3と同様の操作を行った。低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンのウエットケーキの46部をテトラヒドロフラン400重量部中に添加し、室温で5時間撹拌した。撹拌後、濾別し、真空乾燥機で加熱乾燥することにより、図5に示すような、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対する粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.3°、9.5°、9.7°、11.6°、14.2°、18.0°、24.2°及び27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを3.9重量部得た。
合成例5
合成例2で得られたオキシチタニウムフタロシアニンをフタロシアニン結晶前駆体として用いる以外は、合成例3の低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンのウエットケーキを得るまでの工程と同様の操作を行うことにより、図6に示す低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンのウエットケーキを142重量部得た(オキシチタニウムフタロシアニン含有率12.8重量%)。
合成例2で得られたオキシチタニウムフタロシアニンをフタロシアニン結晶前駆体として用いる以外は、合成例3の低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンのウエットケーキを得るまでの工程と同様の操作を行うことにより、図6に示す低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンのウエットケーキを142重量部得た(オキシチタニウムフタロシアニン含有率12.8重量%)。
得られた低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンのウエットケーキ24.8重量部を水100重量部中に添加し、室温で30分撹拌した。その後、o−ジクロロベンゼン6.2重量部を添加し、さらに室温で1時間撹拌した。撹拌後、水を分離し、メタノール79重量部を添加し、室温で1時間撹拌洗浄した。洗浄後、濾別し、再度メタノール79重量部を用いて1時間撹拌洗浄、濾別し、真空乾燥機で加熱乾燥することにより、図7に示すようなCuKα特性X線(波長1.541Å)に対する粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.3°、9.5°、11.6°、14.2°、18.0°、24.0°及び27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを2.5重量部得た。
比較合成例1
特開平2−308863号公報中に記載の実施例1に基づき、結晶変換前のオキシチタニウムフタロシアニンを製造した。得られた結晶変換前のオキシチタニウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを図8に示す。この、結晶変換前のオキシチタニウムフタロシアニン結晶中に含有される塩素含有量を、前記分析手法(上記の「塩素含有量の測定」に記載の方法)を用いて測定した結果、塩素含有量は0.55重量%であった。また、前記「マススペクトル測定条件」に従ってオキシチタニウムフタロシアニンと塩素化オキシチタニウムフタロシアニンのマススペクトル強度比を算出すると、0.058であった。
特開平2−308863号公報中に記載の実施例1に基づき、結晶変換前のオキシチタニウムフタロシアニンを製造した。得られた結晶変換前のオキシチタニウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを図8に示す。この、結晶変換前のオキシチタニウムフタロシアニン結晶中に含有される塩素含有量を、前記分析手法(上記の「塩素含有量の測定」に記載の方法)を用いて測定した結果、塩素含有量は0.55重量%であった。また、前記「マススペクトル測定条件」に従ってオキシチタニウムフタロシアニンと塩素化オキシチタニウムフタロシアニンのマススペクトル強度比を算出すると、0.058であった。
この得られたオキシチタニウムフタロシアニン15重量部とφ1.0〜1.4mmガラスビーズ170重量部と共にポリビン中に充填し、染料分散試験機(ペイントシェーカー)で20時間処理した(機械的摩砕処理)。摩砕処理後のオキシチタニウムフタロシアニンをガラスビーズから剥離し、剥離後水250重量部中に添加し、室温で30分撹拌した。その後、o−ジクロロベンゼン31重量部を添加し、さらに室温で1時間撹拌した。撹拌後、水を分離し、メタノール250重量部を添加し、室温で1時間撹拌洗浄した。洗浄後、濾別し、再度メタノール250重量部を用いて1時間撹拌洗浄後、濾別し、真空乾燥機で加熱乾燥することにより、図9に示すようなCuKα特性X線(波長1.541Å)に対する粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.3°、9.5°、11.6°、14.2°、18.0°、24.3°及び27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを14.3重量部得た。
<感光体製造方法>
電荷発生物質として、オキシチタニウムフタロシアニン20重量部と1,2−ジメトキシエタン280重量部を混合し、サンドグラインドミルで2時間粉砕して微粒化分散処理を行った。続いてこの微細化処理液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)10重量部を、1,2−ジメトキシエタン253重量部と、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン85重量部との混合液に溶解させて得られたバインダー液、及び230重量部の1,2−ジメトキシエタンを混合して分散液を調製した。この分散液に陽極酸化処理したアルミニウムシリンダー(直径30mm、長さ351mm、肉厚1mm)を浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が0.3μm(0.3g/m2)となるように電荷発生層を作製した。
電荷発生物質として、オキシチタニウムフタロシアニン20重量部と1,2−ジメトキシエタン280重量部を混合し、サンドグラインドミルで2時間粉砕して微粒化分散処理を行った。続いてこの微細化処理液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)10重量部を、1,2−ジメトキシエタン253重量部と、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン85重量部との混合液に溶解させて得られたバインダー液、及び230重量部の1,2−ジメトキシエタンを混合して分散液を調製した。この分散液に陽極酸化処理したアルミニウムシリンダー(直径30mm、長さ351mm、肉厚1mm)を浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が0.3μm(0.3g/m2)となるように電荷発生層を作製した。
次に、電荷輸送物質50重量部、バインダー樹脂として、下記構造式(A)に示す、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンを芳香族ジオール成分とする繰り返し単位51モル重量%と、下記構造式(B)に示す、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを芳香族ジオール成分とする繰り返し単位49モル重量%とからなり、p−t−ブチルフェノールに由来する末端構造式を有するポリカーボネート樹脂100重量部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール8重量部、レベリング剤として、シリコーンオイル(商品名 KF96 信越化学工業(株))0.03重量部を、テトラヒドロフラン/トルエン(重量比8/2)混合溶媒640重量部に溶解させて電荷輸送層用塗布液を調製した。この塗布液を、先ほど電荷発生層を設けたアルミニウムシリンダーを浸漬塗布することにより、乾燥後の膜厚が18μmとなるように塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成することにより、積層型感光層を有する電子写真感光体を作製した。
実施例1〜12、比較例1〜20
前記電子写真感光体作製方法に従い、オキシチタニウムフタロシアニンとして、前記合成例3〜5、及び比較合成例1において製造したオキシチタニウムフタロシアニンと、下記構造式(1)〜(8)に表される電荷輸送物質とを用い、積層型感光層を有する電子写真感光体(機能分離型感光体)を作製した。なお、オキシチタニウムフタロシアニンと電荷輸送物質との組み合わせについては、下記表1に示す。
前記電子写真感光体作製方法に従い、オキシチタニウムフタロシアニンとして、前記合成例3〜5、及び比較合成例1において製造したオキシチタニウムフタロシアニンと、下記構造式(1)〜(8)に表される電荷輸送物質とを用い、積層型感光層を有する電子写真感光体(機能分離型感光体)を作製した。なお、オキシチタニウムフタロシアニンと電荷輸送物質との組み合わせについては、下記表1に示す。
<電気特性評価試験>
実施例1〜12、比較例1〜20で得られた電子写真感光体を、電子写真学会標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁に記載)に装着し、以下の手順に従って、帯電、露光、電位測定、及び除電のサイクルによる電気特性の評価を行った。
実施例1〜12、比較例1〜20で得られた電子写真感光体を、電子写真学会標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁に記載)に装着し、以下の手順に従って、帯電、露光、電位測定、及び除電のサイクルによる電気特性の評価を行った。
電子写真感光体の初期表面電位が−700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを照射して、表面電位が−350Vとなる時の照射エネルギー(半減露光エネルギー、単位はμJ/cm2)を感度(E1/2)として測定した。また、1.2μJ/cm2で露光したときの100ミリ秒後の露光後表面電位(Vl)を測定した。結果を以下の表2に示す。
<画像評価試験>
実施例1〜12、及び比較例1〜20で得られた電子写真感光体をA3印刷対応の市販のタンデム型カラープリンター(沖データ社製 Microline3050c)のシアンドラムカートリッジに装着し、上記プリンターに装着した。
実施例1〜12、及び比較例1〜20で得られた電子写真感光体をA3印刷対応の市販のタンデム型カラープリンター(沖データ社製 Microline3050c)のシアンドラムカートリッジに装着し、上記プリンターに装着した。
印刷の入力として、A3領域の上部には白地に線太の文字を持ち、中央部から下部にかけてはハーフトーン部を持ったパターンをパソコンからプリンターに送り、その結果得られる出力画像を目視評価した。
試験したプリンターでは光除電プロセスを使用していないため、感光体の性能によっては、上部の文字パターンが感光体にメモリとして記憶され、次回転の画像形成に影響を及ぼす、つまり、ハーフトーン部にメモリ画像として顕れるケースがある。本来まったく均一でなければならない部分に、メモリ画像が見えている程度を、メモリ画像が最も見えにくいものをランク1、メモリ画像が最も明確に観察されるものをランク5とした、5段階の目視結果で評価した。
さらに、本試験を、通常環境(25℃/50%RH)と低温低湿環境(5℃/10%RH)の両方の環境で実施した。結果を以下の表3に示す。
以上の結果から、化学的処理法で得られたオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生物質として用い、さらに特定のヒドラゾン化合物を電荷輸送物質として用いた場合に限って、環境に依らずメモリの発現し難い感光体を得ることができることがわかる。また、塩素含有量の少ない原料から誘導されるオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生物質として用い、さらに特定のヒドラゾン化合物を電荷輸送物質として用いた場合にも、環境に依存せず、メモリの発現し難い感光体が得られることがわかる。
1 感光体(電子写真感光体)
2 帯電装置(帯電ローラ;帯電部)
3 露光装置(露光部)
4 現像装置(現像部)
5 転写装置
6 クリーニング装置(クリーニング部)
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラー
44 現像ローラー
45 規制部材
71 上部定着部材(加圧ローラー)
72 下部定着部材(定着ローラー)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙(用紙,媒体)
2 帯電装置(帯電ローラ;帯電部)
3 露光装置(露光部)
4 現像装置(現像部)
5 転写装置
6 クリーニング装置(クリーニング部)
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラー
44 現像ローラー
45 規制部材
71 上部定着部材(加圧ローラー)
72 下部定着部材(定着ローラー)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙(用紙,媒体)
Claims (6)
- 導電性支持体上に感光層を有する感光体において、該感光層が、
フタロシアニン結晶前駆体を、化学的処理後、有機溶媒に接触して得られる、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.6°、24.1°、及び27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンと、
下記一般式(1)で示されるヒドラゾン化合物と、
を含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 導電性支持体上に感光層を有する感光体において、該感光層が、
フタロシアニン結晶前駆体を、化学的処理後、有機溶媒に接触されて得られる、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、9.7°、24.2°、及び27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンと、
下記一般式(1)で示されるヒドラゾン化合物と、
を含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 導電性支持体上に感光層を有する感光体において、該感光層が、
塩素含有量が0.4重量%以下のオキシチタニウムフタロシアニン、又は、塩素化オキシチタニウムフタロシアニンの割合が無置換オキシチタニウムフタロシアニンに対してマススペクトル強度比において0.05以下であるオキシチタニウムフタロシアニン、から結晶変換して得られる、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンと、
下記一般式(1)で示されるヒドラゾン化合物と、
を含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 少なくとも、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体、及び該感光体を備え、画像形成装置に着脱自在に構成されることを特徴とする、電子写真プロセスカートリッジ。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電部、帯電した該電子写真感光体を露光させ静電潜像を形成する露光部、及び該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像部のうち少なくとも1つと、を備えたことを特徴とする、画像形成装置。
- 除電プロセスを有さないことを特徴とする、請求項5に記載の画像形成装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006290736A JP2007148387A (ja) | 2005-10-26 | 2006-10-26 | 電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ、及び画像形成装置 |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005311775 | 2005-10-26 | ||
JP2006290736A JP2007148387A (ja) | 2005-10-26 | 2006-10-26 | 電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ、及び画像形成装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2007148387A true JP2007148387A (ja) | 2007-06-14 |
Family
ID=38209790
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2006290736A Withdrawn JP2007148387A (ja) | 2005-10-26 | 2006-10-26 | 電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ、及び画像形成装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2007148387A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013029777A (ja) * | 2011-07-29 | 2013-02-07 | Kyocera Document Solutions Inc | 正帯電単層型電子写真感光体、及び画像形成装置 |
JP2020181012A (ja) * | 2019-04-23 | 2020-11-05 | 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 | 電子写真感光体 |
-
2006
- 2006-10-26 JP JP2006290736A patent/JP2007148387A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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JP2020181012A (ja) * | 2019-04-23 | 2020-11-05 | 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 | 電子写真感光体 |
JP7251289B2 (ja) | 2019-04-23 | 2023-04-04 | 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 | 電子写真感光体 |
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