JP5444602B2 - 偏光板、画像表示装置及び偏光板の製造方法 - Google Patents

偏光板、画像表示装置及び偏光板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ヘーズが小さく透明性に優れ、複屈折が小さい等の光学特性に優れ、良好な機械強度および耐熱性を有し、透湿性に優れた偏光子の保護膜用光学フィルム、及び該フィルムを偏光子の片面又は両面に保護膜として利用した偏光板、並びに該偏光板を用いた画像表示装置に関する。
偏光板は、特定の振動方向をもつ光のみを透過させ、その他の光を遮蔽する機能を有する材料であり、例えば液晶表示装置を構成する部品の一つとして広く使用されている。このような偏光板としては、偏光子と保護フィルムが積層された構成をもつものが一般的に使用されている。前記偏光子は、特定の振動方向をもつ光のみを透過する機能を有するものであり、例えばポリビニルアルコール(以下「PVA」と記すことがある。)フィルム等を延伸し、ヨウ素や二色性染料などで染色したフィルムが一般に使用されている。また、最近では塗布型の偏光子も用いられている。
前記保護フィルムは、偏光子を保持して偏光板全体に実用的な強度を付与するなどの機能を担うものであり、例えばセルロース系フィルムのトリアセチルセルロース(以下「TAC」と記す。)フィルムなどが一般に使用されている。セルロース系フィルムは、透明性が良好で、複屈折が小さいなど光学的な均一性に優れ、実用的な耐熱性と優れた機械強度を持っているため偏光子保護フィルムとして優れた特性を有している。
また、透湿度が高いためPVAなどの偏光子と貼り合わせる際に、PVAや接着剤の水分透過性に優れるなど加工性も良いため、偏光子保護フィルムとして一般的に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、セルロース系フィルム(例えばTACフィルム)は吸水性も高いため、偏光子の性能低下、吸水による寸法安定性などに問題があった。
この問題点を解決すべく、従来のTACフィルムよりも吸水率の小さいフィルム素材を偏光子保護フィルムとして用いることにより、寸法安定性を向上しようとする試みがなされているが、吸水性の小さなポリカーボネートフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムは、光弾性定数が大きく、外部応力の作用によって位相差の変化が生じるため偏光板としての性能低下を生じてしまうという問題があった。
そこで、偏光子保護膜として、フィルムとして透湿度の低い、一軸延伸された高密度ポリエチレンまたはポリプロピレンフィルムが提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
しかしながら、一軸延伸されたポリエチレン又はポリプロピレンには、位相差が発生し、偏光板としての機能低下をもたらすという問題があった。
特開平7−120617号公報 特公平6−12362号公報
本発明は上記問題点に鑑み、ヘーズが小さく透明性に優れ、複屈折が小さい等の光学特性に優れ、良好な機械強度および耐熱性を有し、透湿性に優れた偏光子の保護膜用光学フィルム、及び該フィルムを偏光子の片面又は両面に保護膜として利用した偏光板、並びに該偏光板を用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、メタロセン触媒により合成された所定のメルトフローレートを有するポリプロピレン系樹脂を用いてなる光学フィルムが、偏光子の保護膜用として適しており、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、
[1]メタロセン触媒により合成されたポリプロピレン系樹脂から構成され、該ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR;JIS K7210に準拠した、230℃、2.16kg荷重の条件における測定値)が20g/10分 以上である偏光子の保護膜用光学フィルム、
[2]前記光学フィルムが未延伸フィルムである上記[1]に記載の光学フィルム、
[3]前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、0.03〜0.5質量部のジベンジリデンソルビトール系添加物をさらに含有するものである上記[1]又は[2]に記載の光学フィルム、
[4]前記光学フィルムの厚さ方向の位相差Rthが20〜60nmである上記[1]〜[3]のいずれかに記載の光学フィルム、
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の光学フィルムを偏光子の少なくとも片面に形成してなる偏光板、及び
[6]上記[5]に記載の偏光板を用いてなる画像表示装置、
を提供するものである。
本発明の光学フィルムは、ヘーズが小さく透明性に優れ、複屈折が小さい等の光学特性に優れ、透湿性に優れる。また、耐熱性、耐湿熱性等の各種耐久性に優れ、また偏光板の光学的機能に何ら影響を与えることなく、偏光板の偏光度を向上させることができ、しかも、柔軟でかつ弾性に富む。さらに、本発明の光学フィルムは、外部からの衝撃や変形に対し抵抗力を有するため、偏光子に貼り合わせることで、液晶表示素子としての強度や信頼性を顕著に向上させた偏光板が得られる。
これに加えて、本発明の光学フィルムは、従来汎用されているTACフィルムと比較した場合、これと同等以上の保護機能を有する。特にTACフィルムは親水性であり、防湿性が殆んどないのに対し、本発明の光学フィルムは疎水性であるので、偏光板の耐久性を大幅に向上させることができる。
本発明の光学フィルムは、メタロセン触媒により合成されたポリプロピレン系樹脂から構成されており、そのメルトフローレート(MFR;JIS K7210に準拠した、230℃、2.16kg荷重の条件における測定値)が20g/10分 以上であることを特徴とする。
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂は、後述するメタロセン触媒により合成されたものであり、プロピレンとα−オレフィンの共重合体であることが好ましい。α−オレフィンとしては、エチレン、炭素数4〜18の1−オレフィンが用いられ、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。共重合体中のプロピレン単位の割合は、好ましくは80モル%以上であり、コモノマーは20モル%以下である。コモノマーとして、上記のα−オレフィンは1種類に限られず、2種類以上を用いることができ、共重合体をターポリマーのような多元系共重合体とすることもできる。
本発明で用いられるメタロセン触媒は、活性点が均一なシングルサイト触媒であっても、活性点が均一ではないマルチサイト触媒であってもよく、なかでもマルチサイト触媒であることが好ましい。一般的には、Zr、Ti、Hf等の4〜6族遷移金属化合物、特に4族遷移金属化合物と、シクロペンタジエニル基あるいはシクロペンタジエニル誘導体の基を有する有機遷移金属化合物を使用することができる。
シクロペンタジエニル誘導体の基としては、ペンタメチルシクロペンタジエニル等のアルキル置換体基、あるいは2以上の置換基が結合して飽和もしくは不飽和の環状置換基を構成した基を使用することができ、代表的にはインデニル基、フルオレニル基、アズレニル基、あるいはこれらの部分水素添加物を挙げることができる。また、複数のシクロペンタジエニル基がアルキレン基、シリレン基、ゲルミレン基等で結合されたものも好適に挙げることができる。
助触媒としては、アルミニウムオキシ化合物、メタロセン化合物と反応してメタロセン化合物成分をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物もしくはルイス酸、固体酸、あるいは、イオン交換性層状珪酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を用いることができる。また、必要に応じてこれらの化合物と共に有機アルミニウム化合物を添加することができる。
上述の層状ケイ酸塩とは、イオン結合等によって、構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとるケイ酸塩化合物をいう。本発明では、層状ケイ酸塩は、イオン交換性であることが好ましい。ここでイオン交換性とは、層状ケイ酸塩の層間陽イオンが交換可能なことを意味する。大部分の層状ケイ酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら層状ケイ酸塩は特に天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
層状ケイ酸塩の具体例としては、公知の層状ケイ酸塩であれば特に制限はなく、例えば、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族;クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族;モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、テニオライト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族;バーミキュライト等のバーミキュライト族;雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族;アタパルジャイト;セピオライト;パリゴルスカイト;ベントナイト;パイロフィライト;タルク;緑泥石群が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
これらの中では、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
これらの層状ケイ酸塩は化学処理を施すことができる。ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と層状ケイ酸塩の結晶構造、化学組成に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。具体的には、(イ)酸処理、(ロ)アルカリ処理、(ハ)塩類処理、(ニ)有機物処理等が挙げられる。これらの処理は、表面の不純物を取り除く、層間の陽イオンを交換する、結晶構造中のAl、Fe、Mg等の陽イオンを溶出させ、その結果、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体等を形成し、表面積や層間距離、固体酸性度等を変えることができる。これらの処理は単独で行ってもよいし、2つ以上の処理を組み合わせてもよい。
上記メタロセン触媒によりポリプロピレン系樹脂を合成する方法(重合方法)としては、これらの触媒の存在下、不活性溶媒を用いたスラリー法、実質的に溶媒を用いない気相法、溶液法、あるいは重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等が挙げられる。
次に、本発明におけるポリプロピレン系樹脂は、メルトフローレート(以下、MFRと記すことがある。)が20g/10分 以上であることを要し、望ましくは20〜40g/10分である。ここで、MFRはJIS K7210に準拠して測定される値であり、その測定条件は、230℃、2.16kg荷重である。ポリプロピレン系樹脂のMFRが上記範囲内にあれば、光学フィルムとして十分な強度が得られ、後加工を容易に行うことができる。MFRが上記範囲内にあれば、樹脂にひずみが起きることがないので位相差が発現しにくくなり、また、製造ロット内でのMFRの安定が容易となるので安定成形ができ、MFR調整剤等の添加剤の添加量をおさえることができるので、物性に悪影響を与えることがない。なお、ポリプロピレン系樹脂のMFRの調整は、一般的なMFR調整剤などによって行うことができる。
また、該ポリプロピレン系樹脂は、融点(Tm)が130℃以上であることが好ましい。融点(Tm)が130℃以上であれば、未延伸フィルムの場合は、曲げ弾性率が高くなり、光学フィルムとして強度が増し、後加工に影響を与えることがなく好ましい。
さらに、該ポリプロピレン系樹脂は、引張強度が20MPa以上であることが好ましい。20MPa以上であると、光学フィルムを、接着剤層を介して偏光子にロール・ツウ・ロールの方法で貼り合わせる時に、配向がかからず、光学フィルムに位相差が発生しないため、偏光板の性能を維持できる。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂は、曲げ弾性率が700MPa以上であることが好ましく、900MPa以上であることがより好ましい。曲げ弾性率が上記範囲内であると、光学フィルムとして十分な強度が得られ、後加工を容易に行うことができる。
本発明では、引張強度を向上させて、かつ透明性を向上させるため、添加物を添加しても良い。添加物としては、位相差への影響が微小であるジベンジリデンソルビトール系添加物が好ましい。
本発明で使用するジベンジリデンソルビトール系添加物は、1,3−2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3−2,4−ジパラメチルジベンジリデンソルビトール等のジ−置換ジベンジリデンソルビトール、及びジ−置換ベンジリデンソルビトールとジグリセリンモノ脂肪酸エステルとを配合したもの等が好適に使用できる。
ジベンジリデンソルビトール系添加物は、透明化核剤として、ポリプロピレン樹脂の透明性向上と強度向上に寄与することが知られており、さらに、偏光子の保護膜用光学フィルムに使用した場合に、位相差への影響がほとんどないという優れた性能を有する。
上記ジベンジリデンソルビトール系添加物の中でも、ブリードの少なく安定したジグリセリンモノ脂肪酸エステル添加ジベンジリデンソルビトール系核剤が望ましい。ジグリセリンモノ脂肪酸エステルとしては、ジグリセリンモノラウリン酸エステル、ジグリセリンモノミリスチン酸エステル、ジグリセリンモノステアリン酸エステル等が好ましく、単独で又はこれらを混合して使用される。
上記添加物の含有量は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、0.03〜0.5質量部の範囲であることが好ましい。0.03質量部以上であると、透明性の向上及び十分な強度の向上が図れる。一方、0.5質量部を超えて加えても、それ以上の透明性向上や強度向上にはつながらず、コスト的に不利となる。
また、特に、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルを添加したジ−置換ベンジリデンソルビトールを用いる場合には、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、ジ−置換ベンジリデンソルビトールが0.01〜0.3質量部、混合するジグリセリンモノ脂肪酸エステルが0.01〜0.2質量部とすることが好ましい。
また本発明における光学フィルムには、得られるフィルムの所望物性に応じて、必要な透明性を損なわない範囲で、各種オレフィン樹脂や添加剤を配合することができる。
オレフィン樹脂としては、チーグラー触媒で合成されたホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン等を、10質量%を超えない範囲で少量ブレンドしても良い。
また、添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、アンチブロッキング剤、滑剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、などが挙げられる。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。
紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。
一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。
また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常光学フィルムの膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
光学フィルムには、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
[光学フィルムの製造方法]
以下、本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。
光学フィルムは、上述のポリプロピレン系樹脂を押出しコーティング成形法、キャスト法、Tダイ押出し成形法、インフレーション法、射出成形法等の各種成形法によって、直接、偏光子の上に作製することができる(図1参照)。また、上記各種成形法によって、光学フィルム1を作製しておき、その後、接着剤層を介して偏光子に貼り合わせても良い。
本発明では、偏光子上に作製される光学フィルムが配向しないことが望まれるため、延伸のかからない未延伸のTダイ押出し成形が望ましい。
光学フィルムの厚さは、10〜200μmの範囲が好ましく、30〜150μmがより好ましい。該厚さが10μm以上であると、偏光子の保護膜としての強度が十分に確保され、200μm以下であると十分な可撓性が得られ、また軽量であることからハンドリングが容易であり、かつコスト的にも有利である。
直接偏光子の上に光学フィルムを製造する方法を図1に示す。図1では、事前に、偏光子3の上に接着剤層5を塗布しておき、押出し法にて、ポリプロピレンの溶融樹脂1を製膜する(図1、左図)。製膜したポリプロピレン樹脂が固化して保護膜4となる。
また、保護膜4をあらかじめ、Tダイ法で製膜しておき、接着剤層2をあらかじめ塗布して偏光子3と貼り合わせても良い。
本発明において、光学フィルムの厚さ方向の位相差Rthは、偏光子の保護膜用としてTACと併用する場合を考慮して、従来使用されているTACフィルム(厚み80μm)のRth45nmとほぼ同等であることが望まれている。光学フィルムの厚さ方向の位相差Rthは、偏光子の保護膜用として用いるためには、好ましくは20〜60nmの範囲であり、より好ましくは20〜50nmの範囲である。光学フィルムの厚さ方向の位相差Rthは、併用して使用するTACのRthに応じて、フィルム厚みを調整することで所望の数値の範囲内とすることができる。
[偏光板]
本発明に係る偏光板は、偏光子の片面又は両面に、上記本発明の光学フィルムを貼合したものである。ここで、該光学フィルムは偏光子と接着されて、保護膜としての機能を果たす。
本発明の偏光板で用いる偏光子としては、特定の振動方向をもつ光のみを透過する機能を有する偏光子であれば如何なるものでもよく、例えばポリビニルアルコール系フィルム等を延伸し、ヨウ素や二色性染料などで染色したポリビニルアルコール系偏光子;ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系偏光子;コレステリック液晶を用いた反射型偏光子;薄膜結晶フィルム系偏光子等が挙げられ、その中でもポリビニルアルコール系偏光子が好ましく用いられる。
ポリビニルアルコール系偏光子としては、例えばポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したものが挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適に用いられる。これら偏光子の厚さは特に制限されず、一般的に、1〜100μm程度である。
偏光子を構成する樹脂として好適に用いられるPVA系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。
PVA系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%、好ましくは98〜100モル%の範囲である。このPVA系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。PVA系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000、好ましくは1,500〜10,000の範囲である。
偏光板は、例えば、上述のようなPVA系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、PVA系樹脂フィルムを二色性色素で染色して、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたPVA系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程、及びこれらの工程が施されて二色性色素が吸着配向された一軸延伸PVA系樹脂フィルムに保護膜を貼合する工程を経て、製造される。
一軸延伸は、二色性色素による染色の前に行ってもよいし、二色性色素による染色と同時に行ってもよいし、また、二色性色素による染色の後に行ってもよい。一軸延伸を二色性色素による染色後に行う場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸するには、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤により膨潤した状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常4〜8倍程度である。
PVA系樹脂フィルムを二色性色素で染色するには、例えば、PVA系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬すればよい。二色性色素として、具体的にはヨウ素又は二色性染料が用いられる。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、PVA系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は通常、水100質量部あたり0.01〜0.5質量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は通常、水100質量部あたり0.5〜10質量部程度である。この水溶液の温度は、通常20〜40℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間は、通常30〜300秒程度である。
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、PVA系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は通常、水100質量部あたり1×10-3〜1×10-2質量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を含有していてもよい。この水溶液の温度は、通常20〜80℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間は、通常30〜300秒程度である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたPVA系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は通常、水100質量部あたり2〜15質量部程度、好ましくは5〜12質量部程度である。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有するのが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は通常、水100質量部あたり2〜20質量部程度、好ましくは5〜15質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常100〜1,200秒程度、好ましくは150〜600秒程度、さらに好ましくは200〜400秒程度である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃である。
ホウ酸処理後のPVA系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたPVA系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗後は乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常2〜120秒程度である。その後に行われる乾燥処理は通常、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行われる。乾燥温度は、通常40〜100℃である。乾燥処理における処理時間は、通常120〜600秒程度である。
こうして、ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたPVA系樹脂フィルムからなる偏光子が得られる。
[接着剤層]
本発明において、光学フィルムと偏光子との貼合は、上述のように、接着剤層を介して行われる。
接着剤層を形成する接着剤としては、PVA系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、不飽和カルボン酸またはその無水物をグラフトさせたポリオレフィンもしくは該グラフトさせたポリオレフィンをブレンドしたポリオレフィン系接着剤などが挙げられる。その他、透明性を有する接着剤、例えば、ポリビニルエーテル系、ゴム系等の接着剤を使用することができる。なかでも、PVA系接着剤が好ましい。
PVA系接着剤は、PVA系樹脂と架橋剤を含有するものであり、PVA系樹脂としては、例えばポリ酢酸ビニルをケン化して得られたPVA及びその誘導体、酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物、PVAをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化又はリン酸エステル化等した変性PVAなどが挙げられる。これらPVA系樹脂は一種を単独でまたは二種以上を併用することができる。酢酸ビニルと共重合性を有する単量体としては、(無水)マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類、エチレンやプロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。
PVA系樹脂の重合度等は特に限定されないが、接着性などが良好になることから、平均重合度100〜3000程度、好ましくは500〜3000、平均ケン化度85〜100モル%程度、好ましくは90〜100モル%程度のものを用いることが好ましい。
エポキシ系接着剤としては、水素化エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などがある。エポキシ樹脂には、さらにオキタセン類やポリオール類など、カチオン重合を促進する化合物を含有してもよい。
アクリル系接着剤としては、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステルと、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸、クロトン酸等のα−モノオレフィンカルボン酸との共重合物(アクリルニトリル、酢酸ビニル、スチロールの如きビニル単量体を添加したものも含む)を主体とするものが、偏光子の偏光特性を阻害することがないので特に好ましい。
また、不飽和カルボン酸またはその無水物をグラフトさせたポリオレフィンもしくは該グラフトさせたポリオレフィンをブレンドしたポリオレフィンを接着剤として使用することもできる。グラフトに用いられるポリオレフィンとしては、たとえば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレンープロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、これらの混合物などである。ポリオレフィンのグラフトに用いる不飽和カルボン酸またはその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸などを挙げることができる。こうして得た変性ポリオレフィンはそのまま用いてもよいが、ポリオレフィンに配合して用いることもできる。
上記接着剤層は、光学フィルム、偏光子のいずれかの側または両側に、接着剤を塗布することにより形成する。接着剤層の厚みは、好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.03〜5μmである。
また、上記光学フィルムを偏光子と接着させるに際し、光学フィルムの偏光子と接する面に接着性向上のために易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、低圧UV処理、ケン化処理等の表面処理やアンカー層を形成する方法が挙げられ、これらを併用することもできる。これらの中でも、コロナ処理、アンカー層を形成する方法、およびこれらを併用する方法が好ましい。
次いで、上記のようにして易接着処理を行った面に接着剤層を形成し、該接着剤層を介して、本発明の光学フィルムと偏光子とを貼り合せる。この貼り合わせは、ロールラミネーター等により行うことができる。なお、加熱乾燥温度、乾燥時間は接着剤の種類に応じて適宜決定される。
本発明の光学フィルムを偏光子の保護膜として、偏光子の少なくとも一方の面に貼り合わせる本発明の偏光板には、必要に応じて偏光子の他方の面に、本発明の光学フィルムを積層することもできるし、その他の樹脂からなるフィルムを積層することもできる。その他の樹脂からなるフィルムとしては、例えばフマル酸ジエステル系樹脂、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリナフタレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、マレイミド系樹脂フィルム、フッ素系樹脂フィルム等が挙げられる。上記その他の樹脂からなるフィルムは特定の位相差を持つ位相差フィルムであっても良い。
本発明の偏光板は、表面性、耐傷付き性を向上させる為に、少なくとも一層以上のハードコート層を有する積層体とすることが好ましい。該ハードコート層としては、例えばシリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、紫外線硬化型樹脂、ウレタン系ハードコート剤等よりなるハードコート層が挙げられ、その中でも透明性、耐傷付き性、耐薬品性の点から、紫外線硬化型樹脂よりなるハードコート層が好ましい。これらのハードコート層は、一種類以上で用いることができる。
紫外線硬化型樹脂としては、例えば紫外線硬化型アクリルウレタン、紫外線硬化型エポキシアクリレート、紫外線硬化型(ポリ)エステルアクリレート、紫外線硬化型オキセタン等から選ばれる一種類以上の紫外線硬化樹脂が挙げられる。
ハードコート層の厚みは、0.1〜100μmが好ましく、特に好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは2〜20μmである。また、ハードコート層の間にプライマー処理をすることもできる。
また、本発明の偏光板は、必要に応じて、反射防止や低反射処理などの公知の防眩処理を行うことができる。
[画像表示装置]
本発明の光学フィルムが少なくとも片面に形成してなる偏光板は、例えば液晶セルなどに貼り合わせて使用される。図2に、本発明の光学フィルム及び偏光板を有する液晶セルの構成例を示す。図2において、6は液晶セルを示す。この液晶セル6は、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型等や、ツイストネマチック型、スーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型などのものが例示される。図2の液晶セルの構成例は、この液晶セル6の上に、粘着剤層(図示せず。以下同じ。)を介して、位相差板8が積層され、この上に、粘着剤層(図示せず)を介して、本発明の偏光板7が積層されたものである。ここで、光学素子2は、当該位相差板8と偏光板7とが積層されており、偏光板7は、中心に偏光子3を有し、その両側の表面に、接着剤層5を介して、本発明の光学フィルムで構成される保護膜4が積層されている。本発明の偏光板7と位相差板8、位相差板8と液晶セル6の積層に際しては、予め偏光板7、位相差板8及び液晶セル6に粘着剤層を設けておくこともできる。
本発明の偏光板と液晶セルを積層する粘着剤としては特に限定されず、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。粘着剤には、光学的透明性、適度な濡れ性、凝集性、接着性などの粘着特性、耐候性、耐熱性などに優れることが求められる。さらに吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる画像表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着剤層が求められる。このような観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
粘着剤には、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層であってもよい。
本発明の偏光板への上記粘着剤の塗工は、特に限定されず、適宜な方法で行うことができる。例えば、トルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒に、ベースポリマー又はその組成物を溶解又は分散させた10〜40質量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で本発明の偏光板上に直接塗工する方法、或いはこの方法に準じ離型性ベースフィルム上に粘着剤層を形成してそれを本発明の偏光板に移着する方法などが挙げられる。
塗工方法は、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等、各種方法が可能であるが、グラビアコートが最も一般的である。
粘着剤層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として本発明の偏光板の片面又は両面に設けることもできる。また、両面に設ける場合、本発明の偏光板の表裏において、粘着剤が同一組成である必要はなく、また同一の厚さである必要もない。異なる組成、異なる厚さの粘着剤層とすることもできる。
また、粘着剤層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1μm〜500μmであり、5μm〜200μmが好ましく、特に10μm〜100μmが好ましい。
粘着剤層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的に離型性フィルムが仮着されてカバーされることが好ましい。これにより、通例の取扱状態で粘着剤層に接触することを防止できる。離型性フィルムとしては、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来公知なものを用いることができる。
なお、本発明において、上記偏光子、保護膜層、粘着剤層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などにより紫外線吸収能を付与してもよい。
本発明の偏光板は、画像表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。ここで画像表示装置としては、液晶セルを含む液晶ディスプレイ、有機EL表示装置、タッチパネル等が挙げられ、偏光板を使用するものであれば、画像表示装置の種類の限定はない。また、液晶ディスプレイの場合、画像表示装置は、一般に、液晶セル、光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては上記した偏光板を用いる点を除いて、画像表示装置の構成には特に限定はない。例えば、液晶セルの片側又は両側に偏光板を配置した画像表示装置や、照明システムとしてバックライト又は反射板を用いたものなどの適宜な画像表示装置が例示される。また、液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。尚、画像表示装置の構成するに際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
[有機EL表示装置への適用]
本発明の偏光板は、有機EL表示装置にも好適に使用し得る。
一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、これらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に本発明の偏光板を設け且つ該透明電極と偏光板との間に複屈折層(位相差板)を設けることができる。
本発明の偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、複屈折層をλ/4板で構成し、かつ偏光板と該複屈折層との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は、一般には複屈折層によって楕円偏光となるが、複屈折層がλ/4板でしかも偏光板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、複屈折層で再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
[タッチパネルへの適用]
本発明の光学フィルムは、タッチパネルの偏光板にも好適に使用し得る。一般に、タッチパネルは、操作者が表示画面の上部に設けられた透明な面をペン、または指でタッチすることで、装置、システムの操作を行うものである。画面上を直接タッチすることは、カーソルを方向キーで押して位置を確定することに比べれば、より直接的であり、また直感的でもあることから、近年、非常に多用されるようになっている。また、近年、携帯電話、およびPDA(Personal Digital Assistants;個人用の携帯情報端末)等の携帯端末市場の成長は著しく、太陽光のもとでの視認性、および薄型軽量が強く要求されるようになった。タッチパネルには種々の方式があり、その得失により使い分けられている。タッチパネルには、抵抗膜方式、光学式、静電容量結合方式(アナログ容量結合方式とも呼ばれる)、赤外線方式、超音波式、および電磁誘導式等の方式がある。ここでは、抵抗膜方式のタッチパネルの例で説明する。
抵抗膜方式のタッチパネルには、ガラス/ガラスタイプとガラス/フィルムタイプがある。ガラス/ガラスタイプは透明導電層付ガラス基板と透明導電層付ガラス基板が空間を介して保持されたものであり、これがディスプレイ表面に装着される。また、ガラス/フィルムタイプは、車載用あるいは携帯用のタッチパネルにおいて、より軽量化・薄型化したものが望まれるため、上部の透明導電層付ガラス基板を光学フィルムで置き換えたタイプのタッチパネルである。
ガラス/ガラスタイプのタッチパネルを図3、ガラス/フィルムタイプのタッチパネルを図4に示す。ガラス/ガラスタイプのタッチパネル、及びガラス/フィルムタイプのタッチパネルについて、各々図3及び4を用いて以下に説明する。
直線偏光板、あるいは偏光板にλ/4板を組み合わせて積層した円偏光板をタッチパネルの最表面に使用すれば、タッチパネルとして十分な強度を得ることができ、かつ、反射防止の効果により視認性が向上する。タッチパネルの偏光板は、図3において9、図4において17である。これらタッチパネルの偏光板に本発明の光学フィルムが好適に使用できる。
本発明の光学フィルムと偏光子からなる偏光板とλ/4板を、λ/4板の面内の遅相軸と偏光板の偏光軸との角度が実質的に45°になるように積層すると円偏光板が得られる。実質的に45°とは、40〜50°であることを意味する。λ/4板の面内の遅相軸と偏光膜の偏光軸との角度は、41〜49°であることが好ましく、42〜48°であることがより好ましく、43〜47°であることがさらに好ましく、44〜46°であることが最も好ましい。
本発明の光学フィルムは偏光板の保護膜上・下・下外(ITOを設ける軽量化用フィルム)のいずれにも使用できる。またタッチパネルの反射防止には、直線偏光タイプと円偏光タイプがあるが(直線偏光は円偏光に比べて反射率が高い)、本発明の光学フィルムは円偏光板にも直線偏光タイプの偏光板にも使用できる。
本発明の光学フィルムを使用した円偏光板、又は直線偏光板は、透過型・反射型どちらのタッチパネルにも使用できる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
1.MFRの測定
メルトインデクサ(「F-W01(型番)」;東洋精機製作所製)を用いて、JIS K7210に準拠して、230℃、2.16kg荷重の条件におけるMFRを測定した。
2.引張強度
ASTM D638に準拠して行った。
3.面内位相差の評価
面内位相差を、波長589.3nm、入射角0度で位相差測定機(「KOBRA−WR(型番)」王子計測機器株式会社製)を用いて測定した。
4.透明性(ヘーズ)
JIS K7105に準拠して測定した。
5.耐熱性及び耐湿性
各実施例及び比較例で得られた光学フィルムを、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたPVAを接着剤として、ヨウ素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の両面に接着し、偏光板を得た。
該偏光板から150mm角の試験片を切り出し、耐熱性の評価として、90℃で1,000時間保持後の偏光板の外観を観察した。変形、着色等が起きなかった場合を「○」、変形、着色等が生じて、光学的特性が低下した場合を「×」とした。
また、耐湿性の評価として、70℃、相対湿度95%で1,000時間保持後の偏光板の外観を観察した。変形、着色等が起きなかった場合を「○」、変形、着色等が生じて、光学的特性が低下した場合を「×」とした。
6.曲げ弾性率
JIS K7171に準拠して測定した。
7.Rthの測定
実施例1〜3及び比較例3で得られた光学フィルムを、位相差測定機(「KOBRA−WR(型番)」:王子計測機器株式会社製)を用いて、波長589.3nmにおける入射角−50〜50°での角度依存の位相差を10°毎に測定し、この結果を用いて、光学フィルムの厚さ方向の位相差Rthを算出した。
実施例1
メタロセン触媒により合成したポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)製、商品名:ウィンテック、MFR;24g/10分、融点142℃、以下「mPP−A」と表記する。)を、加工温度200℃・引取りロール温度50℃の条件で、100μmの厚みでTダイ単層押し出し成形することにより、光学フィルムを得た。
当該光学フィルムについて、上記評価方法にて評価した。結果を第1表及び第2表に示す。
実施例2
実施例1で用いたmPP−Aに代えて、メタロセン触媒により合成したポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)製、商品名:ウィンテック、MFR;30g/10分、融点135℃、以下「mPP−B」と表記する。)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを得た。実施例1と同様に評価した結果を第1表及び第2表に示す。
実施例3
実施例1で用いたmPP−Aに、さらにジ−置換ジベンジリデンソルビトール系核剤マスターバッチ(理研ビタミン(株)製、商品名リケマスター、PN−10R、核剤10質量%品)をmPP−A100質量部に対して、3質量部添加(透明核剤含有量;0.1質量部)して、実施例1と同様の方法で光学フィルムを得た。実施例1と同様に評価した結果を第1表及び第2表に示す。
比較例1
実施例1で用いたmPP−Aに代えて、メタロセン触媒により合成したポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)製、商品名:ウィンテック、MFR;15g/10分、融点125℃、以下「mPP−C」と表記する。)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを得た。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
比較例2
実施例1で用いたmPP−Aに代えて、チーグラー系触媒により合成したポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製、商品名:プライムポリプロ、MFR;25g/10分、融点;135℃、以下「ランダムPP」と表記する。)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを得た。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
Figure 0005444602
*1,フィルム端部に応力がかかるために、面内位相差にばらつきを有する。
実施例1〜3で得られた光学フィルムは、優れた性能を有することが示された。一方、比較例1は、フィルム端部に応力がかかりやすく、面内位相差が5〜27nmとばらついており、かつ高い領域を有するため、偏光板への使用ができないことが示された。また比較例2で得られた光学フィルムは面内位相差が25nmと、10nmを大きく超えて高く、ヘーズも大きいため、偏光板への使用には不適であることが示された。
比較例3
市販のTACフィルム(「フジタック(商品名)」:富士フィルム株式会社製,厚さ:80μm)のRthを上記の測定方法により測定した。結果を第2表に示す。
Figure 0005444602
実施例1〜3で用いたポリプロピレン樹脂フィルムのRthは、市販されるTACフィルムのRth相当であり、位相差性能がTACフィルムと同じ程度であることが示された。
本発明によれば、ヘーズが小さく透明性に優れ、複屈折率が小さい等の光学特性に優れ、良好な機械強度および耐熱性を有し、透湿性に優れた偏光子の保護膜として好適な光学フィルムを提供することができる。また、本発明の光学フィルムは、耐熱性、耐湿熱性、耐冷熱サイクル等の各種耐久性に優れ、また偏光板の光学的機能に何ら影響を与えることなく、偏光板の偏光度を向上させることができ、しかも、柔軟でかつ弾性に富む。
また、本発明の光学フィルムは外部からの衝撃や変形に対し抵抗力を有するため、この光学フィルムを偏光子に貼り合わせて用いることで、液晶表示素子としての強度や信頼性を顕著に向上させた偏光板を提供することができる。
さらに、本発明の光学フィルムは、従来汎用されているTACフィルムと比較すると、TACフィルムが親水性であり、防湿性が殆んどないのに対し、本発明の光学フィルムは疎水性であるので、偏光板の耐久性を大幅に向上させることができる。従って、本発明の光学フィルムは、偏光板の少なくとも一面に積層されて液晶セル表面基板と接着される保護膜として好適に使用でき、さらには偏光板の他面側の保護膜に使用することもできる。
本発明の偏光板の製造工程を示す模式図である。 本発明の偏光板を有する液晶セルの構成例を示す模式図である。 本発明の偏光板を有する抵抗膜方式のタッチパネル(ガラス/ガラスタイプ)の構成例を示す模式図である。 本発明の偏光板を有する抵抗膜方式のタッチパネル(ガラス/フィルムタイプ)の構成例を示す模式図である。
符号の説明
1:溶融樹脂(PP)
2:光学素子
3:偏光子
4:保護膜(光学フィルム)
5:接着剤層
6:液晶セル
7:偏光板
8:位相差板(複屈折板)
9:タッチパネルの偏光板
10:反射防止膜
11:λ/4板
12:偏光子の保護膜[上]
12’:偏光子の保護膜[下]
13:偏光子(PVA)
14:ガラス
15:ITO保護膜
16:偏光子の保護膜[下外]
17:タッチパネルの偏光板

Claims (8)

  1. 偏光子の少なくとも片面に、メタロセン触媒により合成されたポリプロピレン系樹脂から構成され、該ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR;JIS K7210に準拠した、230℃、2.16kg荷重の条件における測定値)が20g/10分以上であり、厚さ方向の位相差Rthが20〜60nmの保護膜用光学フィルムを形成してなる偏光板。
  2. 前記光学フィルムが未延伸フィルムである請求項1に記載の偏光板。
  3. 前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、0.03〜0.5質量部のジベンジリデンソルビトール系添加物をさらに含有するものである請求項1又は2に記載の偏光板。
  4. 前記ポリプロピレン系樹脂の融点が130℃以上である請求項1〜のいずれかに記載の偏光板。
  5. 前記ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率が900MPa以上である請求項1〜のいずれかに記載の偏光板。
  6. 前記ポリプロピレン系樹脂がプロピレン単位を80モル%以上含む請求項1〜のいずれかに記載の偏光板。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の偏光板を用いてなる画像表示装置。
  8. 偏光子の少なくとも片面に、接着剤層を介して、メタロセン触媒により合成されたポリプロピレン系樹脂から構成され、該ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR;JIS K7210に準拠した、230℃、2.16kg荷重の条件における測定値)が20g/10分以上であり、厚さ方向の位相差Rthが20〜60nmの保護膜用光学フィルムを形成してなる偏光板の製造方法。
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