JP3550845B2 - ポリプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物に関し、詳しくは、低温ヒートシール特性の改良されたポリプロピレン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、一般包装用の無延伸ポリプロピレンフィルム(以下「CPPフィルム」と略記する。)及び延伸ポリプロピレンフィルム(以下「OPPフィルム」と略記する。)は、二次加工での製袋速度を速くし、生産性の向上を図るため、より一層のヒートシール温度の低温化が求められている。
【0003】
通常、ポリプロピレン系フィルムのヒートシール化は、プロピレンを主としたエチレンとのランダム共重合体を主体とした樹脂組成物を用い、これを135℃程度に加熱してシール層を形成することによりなされている。
【0004】
これまで、ポリプロピレン系樹脂の低温ヒートシール性を改良する方法として、ポリブテン−1樹脂を配合する方法が知られている。
【0005】
しかしながら、ポリブテン−1樹脂は、フィルム成形直後に形成する低融点の正方晶系結晶(以下「F−II」と略記する。)から高融点の六方晶系結晶(以下「F−I」と略記する。)へ常温で相転移を起こすため、経時的にヒートシール特性が変化するという欠点があった。例えば、製膜直後は、約100℃程度のヒートシール性があっても、常温で数日間経過後は、ヒートシール性が悪化する現象が認められる。このため、経時変化の問題を解消し、更なる低温ヒートシール化を付与することが強く求められていた。
【0006】
ポリブテン−1樹脂の第3の結晶形態として、斜方晶系と考えられている結晶形態がある。この結晶形態(以下「F−III」と略記する。)は、他のいずれの結晶形態と比較しても最も低融点であり、且つ常温で結晶転移を起こさないため、このF−IIIを利用することは、上記問題の解消に有効であると考えられる。しかしながら、F−IIIを形成させるには、溶液から結晶化させる方法しか提案されておらず、工業的には困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低温ヒートシール性の付与を目的としてポリブテン−1樹脂を添加してなるポリプロピレン系樹脂フィルムにおいて、上記のヒートシール性の経時変化による問題を解消し、更にヒートシール温度の低温化を図り、成形加工性の良好なポリプロピレン系樹脂組成物を提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、上記問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、ポリプロピレン系樹脂及びポリブテン−1樹脂に対し、特定のアミド系化合物を添加することにより所期の効果が得られることを見いだし、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂及びポリブテン−1樹脂を含有する樹脂組成物において、スルホニルジ安息香酸ジアニリド(以下「本アミド系化合物」という。)を添加することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンを主要な構成成分としてなる重合体であって、プロピレンを主なコモノマーとし、例えば、エチレン、ブテン−1等の他のα−オレフィンを少数コモノマーとする共重合体、具体的には、プロピレン−エチレンランダムコポリマーが例示される。かかる共重合体は、プロピレンを全コモノマーに対して70重量%以上、好ましくは80重量%程度以上、より好ましくは90重量%程度以上含有するのが推奨される。又、プロピレンホモポリマー及びプロピレン−エチレンブロックコポリマーも使用できる。
【0011】
又、上記プロピレンコポリマー及びホモポリマーの立体規則性としては、アイソタクティック及びシンジオタクティックが推奨されるが、少量のアタクティック部分が含まれていても、本発明の効果は十分発現できる。
【0012】
かかる重合体を製造するために適用される触媒としては、一般に使用されているチーグラー・ナッタ型触媒はもちろん、遷移金属化合物(例えば、三塩化チタン、四塩化チタン等のチタンのハロゲン化物)を塩化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウムを主成分とする担体に担持してなる触媒と、アルキルアルミニウム化合物(トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド等)とを組み合わせてなる触媒系やメタロセン触媒も使用できる。
【0013】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂の推奨されるメルトフローレート(以下「MFR」と略記する。JIS K 6758−1981)は、その適用する成形方法により適宜選択されるが、通常、0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分である。
【0014】
本発明に係るポリブテン−1樹脂とは、ブテン−1を主要な構成成分としてなる重合体であって、ブテン−1を主なコモノマーとし、例えば、エチレン、プロピレン等の他のα−オレフィンを少数コモノマーとする共重合体、具体的には、ブテン−1−エチレンコポリマー、ブテン−1−プロピレンコポリマーが例示される。かかる共重合体は、ブテン−1を、全コモノマーに対して60重量%以上、好ましくは70重量%程度以上、より好ましくは80重量%程度以上含有するのが推奨される。又、ブテン−1ホモポリマーも使用できる。
【0015】
又、上記ブテン−1コポリマー及びホモポリマーの立体規則性としては、アイソタクティック及びシンジオタクティックが推奨されるが、少量のアタクティック部分が含まれていても、本発明の効果は十分発現できる。
【0016】
かかる重合体を製造するために適用される触媒としては、一般に使用されているチーグラー・ナッタ型触媒はもちろん、遷移金属化合物(例えば、三塩化チタン、四塩化チタン等のチタンのハロゲン化物)を塩化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウムを主成分とする担体に担持してなる触媒と、アルキルアルミニウム化合物(トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド等)とを組み合わせてなる触媒系の他、いわゆるカミンスキー触媒も使用できる。
【0017】
本発明に係るポリブテン−1樹脂の推奨されるMFR(JIS K 7210 (190℃、2.16kgf))は、その適用する成形方法により適宜選択されるが、通常、0.01〜50g/10分、好ましくは0.03〜20g/10分である。
【0018】
ポリプロピレン系樹脂とポリブテン−1樹脂との比率としては、ポリプロピレン系樹脂30〜80重量%とポリブテン−1樹脂70〜20重量%が推奨される。ポリブテン−1樹脂が20重量%未満では、低温下での実用的なヒートシール強度を得ることが困難であり、一方、70重量%を超えるときには、経済的に不利となり、場合によっては物性低下を招くことがある。
【0019】
本発明で適用されるスルホニルジ安息香酸ジアニリドとしては、3,3’−スルホニルジ安息香酸ジアニリド、3,4’−スルホニルジ安息香酸ジアニリド、4,4’−スルホニルジ安息香酸ジアニリドが挙げられるが、中でも、4,4’−スルホニルジ安息香酸ジアニリドが効果的である。
【0020】
スルホニルジ安息香酸ジアニリドは、スルホニルジ安息香酸又はその反応性誘導体、例えばクロリド、エステル等とアニリンとをアミド化反応に供することにより容易に調製することができる化合物である。
【0021】
このアミド化反応は、各種の慣用されている方法に従って行われ、典型的な方法として、次の方法(i)〜(iii)が挙げられる。
【0022】
(i)上記ジカルボン酸とアニリンとを不活性溶媒中、60〜200℃程度で2〜10時間程度反応させる。アニリンは、一般にジカルボン酸1当量に対して1〜10当量程度使用する。
【0023】
本製造法において、反応時間を短縮するためには、活性化剤を用いることがより好ましい。当該活性化剤としては、五酸化リン、ポリリン酸、五酸化リン−メタンスルホン酸、亜リン酸エステル(亜リン酸トリフェニル)−ピリジン、亜リン酸エステル−金属塩(塩化リチウム等)、トリフェニルホスフィン−ヘキサクロロエタン等が例示され、通常、上記ポリカルボン酸とほぼ同じ当量程度使用される。
【0024】
(ii)上記ジカルボン酸のクロリドとアニリンとを不活性溶媒中、0〜100℃程度出1〜5時間程度反応させる。アニリンは、一般にジカルボン酸ジクロリド1当量に対して1〜5当量程度使用する。
【0025】
(iii)上記ジカルボン酸のエステル、特にジアルキル(炭素数1〜3)エステルとアニリンとを不活性溶媒中、無触媒又は触媒存在下で0〜250℃程度で3〜50時間程度反応させる。アニリンは、一般にジカルボン酸ジエステル1当量に対して1〜20当量程度使用する。
【0026】
当該触媒としては、通常のエステル・アミド交換反応に用いられる酸触媒、塩基触媒が挙げられるが、中でも塩基触媒が好ましい。具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメチラート(sodium methoxide)、ナトリウムエチラート、カリウム−tert−ブチラート等の金属アルコラート、ナトリウムアミド、リチウムジプロピルアミド等のアルカリ金属アミド等が例示され、通常、上記ジカルボン酸に対して当モル程度使用される。
【0027】
上記(i)、(ii)及び(iii)法に係る不活性溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等が例示される。
【0028】
上記(i)、(ii)及び(iii)法により得られる化合物は、慣用されている単離精製方法、例えば、クロマトグラフィー、再沈澱、再結晶法、分別結晶法等に従って精製される。
【0029】
本発明に係るスルホニルジ安息香酸ジアニリドの適用量は、ポリブテン−1樹脂100重量部に対し、0.001〜10重量部、より好ましくは0.05〜5重量部である。0.001重量部未満ではF−IIIの形成が認められにくく、10重量部を超えて含有しても効果上の優位差が認められない。
【0030】
尚、スルホニルジ安息香酸ジアニリドを適用するに際し、次のいずれの方法を適用しても良い。
【0031】
(1)予め所定量のスルホニルジ安息香酸ジアニリドをポリブテン−1樹脂に添加してポリブテン−1樹脂組成物を調製し、当該樹脂組成物を所定量のポリプロピレン系樹脂と混練する方法。このとき、ポリブテン−1樹脂の調製時に配合してもよいし、別途調製したポリブテン−1樹脂に添加混合してもよい。
【0032】
(2)予め所定量のスルホニルジ安息香酸ジアニリドをポリプロピレン系樹脂に添加してポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、当該樹脂組成物を所定量のポリブテン−1樹脂と混練する方法。このとき、ポリプロピレン系樹脂の調製時に配合してもよいし、別途調製したポリプロピレン系樹脂に添加混合してもよい。
【0033】
(3)所定量のポリプロピレン系樹脂、ポリブテン−1樹脂及びスルホニルジ安息香酸ジアニリドを一段で混練する方法。
【0034】
スルホニルジ安息香酸ジアニリドをポリブテン−1に添加することにより、当該ポリブテン−1樹脂組成物の溶融物からは、従来のF−IIに加えてかなりの量のF−IIIが生成する。F−IIは、数日経過する中で順次F−Iへ結晶転移する。一方、F−IIIは常温では安定である。
【0035】
本発明に係るポリブテン−1樹脂において、推奨されるF−IとF−IIIの合計量に対するF−IIIの量としては、通常、100〜20重量%、特に90〜30重量%である。
【0036】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物には、使用目的やその用途に応じて適宜、従来公知のポリオレフィン樹脂改質剤を本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。
【0037】
かかるポリオレフィン用改質剤としては、例えばポリオレフィン等衛生協議会編「ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主規制基準、第3版」(1988年9月)「ポリブテン−1」及び「ポリプロピレン」の項に記載されている添加剤、例えば、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、滑剤、充填剤、発泡剤、発泡助剤、可塑剤、架橋剤、架橋促進剤、帯電防止剤、中和剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、難燃剤、分散剤、加工助剤等の各種添加剤が例示される。
【0038】
より具体的には、エポキシ化大豆油等のエポキシ化合物、トリス(ミックスド、モノ及びジノニルフェニル)フォスファイト等のリン化合物、3,3’−チオジプロピオン酸ジアルキル(炭素数12〜18)等の硫黄化合物、ブチル化ヒドロキシトルエン、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、トコフェロール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のフェノール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸(炭素数6〜22)エステル、ポリオキシエチレン(4〜50モル)アルキル(炭素数7以上)フェニルエーテル、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)脂肪族(炭素数8〜18)アミン等の非イオン界面活性剤、流動パラフィン、水素添加ポリブテン等の脂肪族炭化水素、炭素数8〜22の高級脂肪酸、炭素数8〜22の高級脂肪酸又はリシノール酸の金属(Al、Ca、Mg、Zn)塩、トリグリセリド、アセチル化モノグリセリド、ワックス、エチレンビス脂肪酸(炭素数16、18)アミド、高級脂肪酸(炭素数8〜22)アミド、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄、酸化亜鉛等の酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、炭酸カルシウム等の炭酸塩、硫酸バリウム等の硫酸塩、アルミノ珪酸塩(Ca)、珪酸アルミニウムカルシウム等の珪酸塩、クレー、珪藻土、カオリン、タルク、マイカ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、パーライト、ガラス繊維、チタンイエロー、コバルトブルー、群青等の色材、アルミニウム等の金属、硫化亜鉛等の硫化物、少量の熱可塑性樹脂及び/又はエラストマー、例えば、ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、ナイロン、テレフタル酸トリメチルヘキサメチレンジアミン縮合物、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリマーが例示される。
【0039】
【発明の実施の形態】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、所定の成分と必要に応じて他の添加剤と併用して、従来公知の混合装置(ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、バンバリミキサー等)を用いて混合した後、一軸或いは二軸の押出機等で溶融混練して製造される。
【0040】
かくして得られた樹脂組成物は、用途に応じてTダイ押出成形やチューブラー成形等により単層又は多層構成のポリプロピレン系フィルムとすることが出来る。フィルムの形態としては、CPPフィルム及び一軸又は二軸に延伸したOPPフィルムを採用することが出来る。
【0041】
多層構成のポリプロピレン系フィルムでは、当該ヒートシール性ポリプロピレン系樹脂組成物を片面或いは両面のシール層として、例えば、ホモポリプロピレンやプロピレンを主体とするプロピレン−エチレンランダム共重合体よりなる二層或いは三層にラミネートすることにより、優れた低温ヒートシール性を付与することが出来る。
【0042】
成形条件としては、従来から慣用されている条件がいずれも採用できる。例えば、Tダイ押出成形の場合は、樹脂温度140〜300℃程度、好ましくは170〜250℃程度、チルロール温度10〜80℃程度、好ましくは20〜50℃程度を採用するのが好ましい。
【0043】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を掲げ、本発明を詳しく説明する。尚、実施例及び比較例における樹脂組成物ヒートシール強さは、次の方法に従い測定した。
【0044】
ヒートシール強さの評価
各例で得た2枚の単層CPPフィルムを重ね合わせ、ヒートシールテスター(商品名「TP−701」、テスター産業社製)を使用して、所定の温度で、幅5mmのシールバーを用い、2.0kg/cmの圧力で1秒間ヒートシールした。このヒートシールフィルムをJIS Z 1707の試験方法に準じて測定した。
【0045】
実施例1
MFRが1.0g/10分のポリブテン−1(商品名「ビューロンM3110」、三井石油化学工業社製、以下「M3110」という。)50重量部、MFRが6.0g/10分のプロピレン−エチレンランダム共重合体(エチレン含有量3.0%、以下「R−PP」と略記する。)50重量部及び4,4’−スルホニルジ安息香酸ジアニリド0.5重量部を配合し、ヘンシェルミキサーで混合後、200℃に設定された20mmφの一軸押出機を用い溶融混練を行い、ペレット化した。得られたペレットを25mmφの一軸Tダイ押出機(田辺プラスチックス機械社製)とS200型フィルム引取巻取機(田辺プラスチックス機械社製)を用い、樹脂温度200℃、チルロール温度40℃で製膜し、厚み100μmのフィルムを得た。
【0046】
次に、得られたフィルムを所定のヒートシール温度で、製膜直後と40℃に設定したオーブンで3日間エージング後にヒートシールし、夫々のヒートシール温度におけるヒートシール強さ(g/15mm)を測定した。得られた結果を第1表に示す。
【0047】
又、得られたフィルムの融点を、製膜直後と40℃で3日間エージング後に、示差走査熱量計(DSC)により10℃/minの昇温速度で測定した。その結果、ポリブテン−1に起因する融解ピーク温度(融点)は、製膜直後とエージング後のいずれの場合も88℃であり、R−PPに起因する当該温度は上記いずれの場合も140℃であった。
【0048】
実施例2
樹脂成分を「M3110」60重量部及びR−PP40重量部とした他は実施例1と同様にしてフィルムを調製し、そのヒートシール強さを測定した。得られた結果を第1表に示す。又、得られたフィルムの融点を実施例1と同様に測定した結果、ポリブテン−1に起因する融解ピーク温度(融点)は、製膜直後とエージング後のいずれの場合も88℃であり、R−PPに起因する当該温度は上記いずれの場合も140℃であった。
【0049】
実施例3
樹脂成分を「M3110」30重量部及びR−PP70重量部とした他は実施例1と同様にしてフィルムを調製し、そのヒートシール強さを測定した。得られた結果を第1表に示す。又、得られたフィルムの融点を実施例1と同様に測定した結果、ポリブテン−1に起因する融解ピーク温度(融点)は、製膜直後とエージング後のいずれの場合も88℃であり、R−PPに起因する当該温度は上記いずれの場合も140℃であった。
【0050】
実施例4
樹脂成分をMFRが4.0g/10分のポリブテン−1(商品名「ビューロンM3450」、三井石油化学工業社製、以下「M3450」という。)50重量部及びR−PP50重量部とした他は実施例1と同様にしてフィルムを調製し、そのヒートシール強さを測定した。得られた結果を第1表に示す。又、得られたフィルムの融点を実施例1と同様に測定した結果、ポリブテン−1に起因する融解ピーク温度(融点)は、製膜直後とエージング後のいずれの場合も78℃であり、R−PPに起因する当該温度は上記いずれの場合も140℃であった。
【0051】
実施例5
樹脂成分を「M3450」60重量部及びR−PP40重量部とした他は実施例1と同様にしてフィルムを調製し、そのヒートシール強さを測定した。得られた結果を第1表に示す。又、得られたフィルムの融点を実施例1と同様に測定した結果、ポリブテン−1に起因する融解ピーク温度(融点)は、製膜直後とエージング後のいずれの場合も78℃であり、R−PPに起因する当該温度は上記いずれの場合も140℃であった。
【0052】
実施例6
樹脂成分を「M3450」70重量部及びR−PP30重量部とした他は実施例1と同様にしてフィルムを調製し、そのヒートシール強さを測定した。得られた結果を第1表に示す。又、得られたフィルムの融点を実施例1と同様に測定した結果、ポリブテン−1に起因する融解ピーク温度(融点)は、製膜直後とエージング後のいずれの場合も78℃であり、R−PPに起因する当該温度は上記いずれの場合も140℃であった。
【0053】
比較例1
樹脂成分をR−PPとした他は実施例1と同様にしてフィルムを調製し、そのヒートシール強さを測定した。得られた結果を第1表に示す。尚、4,4’−スルホニルジ安息香酸ジアニリドは添加していない。又、得られたフィルムの融点を実施例1と同様に測定した結果、R−PPに起因する融解ピーク温度(融点)は、製膜直後とエージング後のいずれの場合も140℃であった。
【0054】
比較例2
樹脂成分を「M3110」50重量部及びR−PP50重量部とした他は実施例1と同様にしてフィルムを調製し、そのヒートシール強さを測定した。得られた結果を第1表に示す。尚、4,4’−スルホニルジ安息香酸ジアニリドは添加していない。又、得られたフィルムの融点を実施例1と同様に測定した結果、ポリブテン−1に起因する融解ピーク温度(融点)は、製膜直後では98℃であり、エージング後では113℃であった。一方、R−PPに起因する当該温度は上記いずれの場合も140℃であった。
【0055】
比較例3
樹脂成分を「M3450」50重量部及びR−PP50重量部とした他は実施例1と同様にしてフィルムを調製し、そのヒートシール強さを測定した。得られた結果を第1表に示す。尚、4,4’−スルホニルジ安息香酸ジアニリドは添加していない。又、得られたフィルムの融点を実施例1と同様に測定した結果、ポリブテン−1に起因する融解ピーク温度(融点)は、製膜直後では90℃であり、エージング後では105℃であった。一方、R−PPに起因する当該温度は上記いずれの場合も140℃であった。
【0056】
【表1】
Figure 0003550845
【0057】
第1表より明らかな如く、本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、4,4’−スルホニルジ安息香酸ジアニリドを添加しない組成物に比し、製膜直後のみならず、3日間エージング後も良好な低温ヒートシール特性を維持している。更に、同一グレードのポリブテン−1樹脂と比較すると、充分なヒートシール強さを得るためのヒートシール温度が製膜直後では約10℃、3日間エージング後では約30℃低くなっている。即ち、4,4’−スルホニルジ安息香酸ジアニリドを添加することにより、低温ヒートシール特性の経時安定性に加えてヒートシール温度の低温化が図られている。
【0058】
更に、本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物は、4,4’−スルホニルジ安息香酸ジアニリドを添加しない組成物に比し、製膜直後と3日間エージング後のフィルムで融点の変化がない。尚、このとき得られたポリブテン−1の融解ピークは、斜方晶系と考えられているF−IIIであることをフィルムの赤外吸収スペクトルより確認している(Bert H et al,J.Polym.Sci.,Part C,6,43−51(1964))。
【0059】
一方、4,4’−スルホニルジ安息香酸ジアニリドを添加しない組成物のポリブテン−1の融点は、製膜直後で約10℃高く、3日間エージング後では、更に約15℃高くなっている。この現象は、ポリブテン−1のF−IIからF−Iへの結晶転移によるものである。かかる事実は、フィルムのX線回折により確認されている(小田ら,高分子論文集,31,2,129−134(1974))。
【0060】
上記の融解挙動とヒートシール特性の結果はよく一致しており、ポリブテン−1への4,4’−スルホニルジ安息香酸ジアニリドの添加によるF−III結晶の形成により、低温ヒートシール特性の経時安定化とヒートシール温度の低温化が達成されていることが判る。
【0061】
一方、本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、ヒートシール温度が80〜90℃という低温で実用上のヒートシール強さが得られる組成物でありながら、チルロールへの巻き付きもなく生産生の向上が図られ、得られたフィルムのベトツキもなかった。このため、夏期の高温下においてもフィルム同士が付着しにくく、ブロッキングも抑制される。これは、形成されるF−IIIの融解ピークがかなりシャープであることが一因しているものと考えられる。
【0062】
【発明の効果】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、経時変化による低温ヒートシール特性の低下が抑制され、ヒートシール温度の低温化が図られるため、二次加工での製袋速度をより高速化でき、生産性の向上を図ることが出来る。更に、F−IIIの融解ピークがシャープであるため、ベタツキのない優れた低温ヒートシール性を具備するポリプロピレン系樹脂フィルムを得ることが出来る。

Claims (4)

  1. ポリプロピレン系樹脂及びポリブテン−1樹脂を含有する樹脂組成物において、スルホニルジ安息香酸ジアニリドを添加することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
  2. 樹脂組成物が、ポリブテン−1樹脂70〜20重量%とポリプロピレン系樹脂30〜80重量%とからなる樹脂組成物である請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  3. スルホニルジ安息香酸ジアニリドが、4,4’−スルホニルジ安息香酸ジアニリドである請求項1又は請求項2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  4. スルホニルジ安息香酸ジアニリドの添加量が、ポリブテン−1樹脂100重量部に対し、0.001〜10重量部である請求項1〜3のいずれかの請求項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
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