JP5430673B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
この発明は、操向ハンドル(ステアリングホイール)による車両の操舵時に、モータ(電動モータ)等のアクチュエータの動力を操舵系に操舵アシスト力(操舵補助力)として伝え、運転者による操向ハンドルの操作負担を軽減する電動パワーステアリング装置に関する。
車両を操向ハンドルの軽い操作力で旋回できるように、操舵アシスト力を発生させるパワーステアリング装置が公知である。
特開昭54−110527号公報に係る油圧式パワーステアリング装置は、操向ハンドルの操舵回転時(転舵時)にステアリングシャフトに作用する回転抵抗力が、操向ハンドルの静止時にステアリングシャフトに作用する回転抵抗力より小さくなるよう、ラックガイドを常時押圧しているバネ力に抗うように油圧を発生させ、転舵時に前記油圧が低下するようにしてピニオン(ステアリングシャフト)への押圧力を低下させる予圧装置を備えている。
特開昭60−174364号公報に係る油圧式パワーステアリング装置は、操向ハンドルのニュートラル領域においてのみ車速に応じた油圧がラックガイド部に付与されるようにして、高速走行時における操向ハンドルのふらつきを防止するとともに、ラック軸に車速に応じた摩擦抵抗力(フリクション)を作用させて、車輪側から操向ハンドルに伝えられる振動を抑制し、その一方、操向ハンドルがニュートラル領域を越えて操作された場合には、前記ラックガイド部への油圧の付与を停止して、軽い操舵が行えるようにした油圧押圧機構を備えている。
特開2000−313348号公報に係る油圧式パワーステアリング装置は、ラックをピニオンヘ向けて押圧するラックガイドと、該ラックガイドに一定の押圧力を常時作用させるバネと、油圧上昇に応じて前記ラックガイドによる押圧力を増大する予圧装置を有し、ステアリングの操作時には前記油圧を低下させることで前記ラックガイドによる押圧力を低下させて軽快な操舵が行えるようにし、操舵中立時には前記油圧を上昇させることで前記ラックガイドによる押圧力を高く保持し操舵安定性を高めるようにしている。
一般に、操向ハンドルを含むステアリング系に作用する摩擦抵抗力(以下、フリクションという。)が大きければ、路面からの外乱が抑制され、繰舵が安定し操舵がし易くなる。
このため、車両の運転時において、操舵の安定性及び操舵の快適性の観点からは、回転半径が一定のカーブの旋回走行時(旋回保舵時という。)又は直進走行時のように、操向ハンドルが静止状態にあるときには操向ハンドルに付与されるフリクションが比較的に大きいことが好ましい。
しかしながらパワーステアリングの操舵アシスト力のゲイン(アシストゲインという。)をGAと表した場合、旋回保舵時のように操舵アシスト力が作用している場合、フリクションによる舵の安定効果が操舵アシスト力により相殺されて1/(1+GA)に低下する。
このため、パワーステアリングにおいて、舵の安定効果を得るためには、より大きなフリクションを付与する必要がある。
その一方、操向ハンドルが回転操作される操舵時(切り込み時、往き時)には、フリクション損失(摩擦損失)の低減が図られることが好ましく、操向ハンドルの戻しの観点からは、操向ハンドルに作用するフリクションが比較的に小さいことが好ましい。
上述した特開昭54−110527号公報、特開昭60−174364号公報、及び特開2000−313348号に係る技術では、操向ハンドルに作用するフリクションの大小を、ラックガイドによる押圧力を可変させることで調整することができるように構成されている。
しかしながら、特開昭54−110527号公報及び特開昭60−174364号公報に係る技術では、旋回保舵時にはフリクションを増大させることができないため、旋回保舵時の安定性が得られないという課題がある。
また、特開昭54−110527号公報、特開昭60−174364号公報、及び特開2000−313348号に係る技術では、フリクションを機械的に増大させているために、操舵アシスト機構は、フリクションを機械的に増大させる分、大きな仕事量を発生しなければならないので、摩擦損失が増大するという課題を解決することができない。
そこで、フリクションを機械的に付与するのではなく、フリクションを電気的に付与することが考えられる。
特許第3840310号公報には、モータ回転方向に抗う方向に作用するフリクションを打ち消すためには、モータ回転方向と同方向にモータ出力を発生させればよいとの考察の基に、モータ角速度センサによりモータ回転方向を検出し、それと同方向にモータ出力を発生させるよう、フリクション補償値の極性を選択するように構成した電動パワーステアリング装置が開示されている。
しかしながら、特許第3840310号公報に係る電動パワーステアリング装置は、フリクションを電気的に付与する技術ではなく、フリクションを電気的に打ち消す(相殺する)技術である。
すなわち、特許第3840310号公報で提案されている技術は、フリクションは、操向ハンドルの切り込み時には運転者が抵抗として感じるという課題と、操向ハンドルの戻し時にはセルフアライニングトルク(SAT)がフリクションによって打ち消されるので操向ハンドルの戻り性が悪化するという課題を挙げ、これら両課題を解決するために、フリクションを打ち消すためのフリクション電流値によりモータを駆動制御する技術である。
この発明は、上述した背景技術及び課題を考慮してなされたものであり、車両の運転時において、操向ハンドルの操作に対し適切な機械的フリクションを電気的に発生させる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
また、この発明は、回転半径が一定のカーブの旋回走行時(旋回保舵時という。)又は直進走行時のように、操向ハンドルが少なくとも静止状態又は静止状態とみなせる状態にあるときに操向ハンドルの操作に対し適切なフリクションを電気的に発生させて付与し、操舵の安定性を向上させた電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
この発明に係る電動パワーステアリング装置は、操向ハンドルの操作に応じて操舵トルクセンサにより検出される操舵トルク値に基づいてアシスト制御部により目標電流値を決定し、前記目標電流値に基づいてモータを駆動制御する電動パワーステアリング装置において、前記操向ハンドルの操作に対しフリクションを付与するため、前記操舵トルク値に基づいてフリクショントルク値を決定するフリクション制御部と、前記操舵トルク値を前記フリクショントルク値で補正した補正操舵トルク値を生成する第1フリクション生成部と、を備え、前記アシスト制御部は、前記補正操舵トルク値に基づいて前記目標電流値に換わる第1補正目標電流値を決定することを特徴とする(例えば、図4B、図5参照)。
この発明によれば、操舵トルク値に基づいてモータの目標電流値を決定するアシスト制御部が、前記操舵トルク値をフリクショントルク値で補正した補正操舵トルク値に基づいて第1目標電流値を決定するようにしているので、操向ハンドルの操作に対し機械的フリクションを電気的に発生して付与することができる。
この場合、さらに、前記フリクショントルク値をフリクション電流値に変換するフリクショントルク・電流変換部と、前記第1補正目標電流値を前記フリクション電流値で補正した第2補正目標電流値を発生する目標電流補正部と、を備えることで(図2、図4D参照)、回転半径が一定のカーブの旋回走行時(旋回保舵時という。)又は直進走行時のように、操向ハンドルが少なくとも静止状態又は静止状態とみなせる状態にあるときに操向ハンドルの操作に対しフリクションを電気的に発生させて付与し、操舵の安定性を向上させることができる。
この発明に係る電動パワーステアリング装置は、操向ハンドルの操作に応じて操舵トルクセンサにより検出される操舵トルク値に基づいてアシスト制御部により目標電流値を決定し、前記目標電流値に基づいてモータを駆動制御する電動パワーステアリング装置において、前記操向ハンドルの操作に対しフリクションを付与するため、前記操舵トルク値に基づいてフリクショントルク値を決定するフリクション制御部と、前記フリクショントルク値をフリクション電流値に変換するフリクショントルク・電流変換部と、前記目標電流値を前記フリクション電流値で補正した補正目標電流値を発生する目標電流補正部と、を有することを特徴とする(例えば、図4C、図6参照)。
この発明によれば、操舵トルク値に基づいてモータの目標電流値を決定するアシスト制御部が、前記目標電流値をフリクション電流値(前記操舵トルク値に基づいて決定されたフリクショントルク値を変換したフリクション電流値)で補正した補正目標電流値に基づいてモータを駆動制御するようにしたので、操向ハンドルの操作に対し機械的フリクションを電気的に発生して付与することができる。結果として、直進走行時に操向ハンドルの操作に対し機械的フリクションを電気的に発生させて付与することができるので、操舵の安定性を向上させることができる。
上記の各発明において、前記フリクション制御部は、前記フリクショントルク値を決定する際、前記モータの回転速度がゼロ値となる値を前記フリクショントルク値に決定することで、電気的に簡易にフリクショントルク値を決定することができる。
この発明によれば、車両の運転時において、操向ハンドルの操作に対し機械的フリクションを電気的に発生させて付与することができる。
従来、機械的に付与していたフリクションを電気的に付与することができるので、従来のようにラックガイドによる押圧力を可変にする機構が不要となり、電動パワーステアリング装置における操舵機構の構成の簡略化・低重量化・低コスト化を達成することができる。
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置100の構成図である。
図1に示すように、電動パワーステアリング装置100は、操向ハンドル2に連結されたステアリングシャフト1を備えている。ステアリングシャフト1は、操向ハンドル2に一体結合されたメインステアリングシャフト3と、ラック&ピニオン機構のピニオン7が設けられたピニオン軸5とが、ユニバーサルジョイント4によって連結されて構成されている。
ピニオン軸5はその下部、中間部、上部を軸受6a、6b、6cによって支持されており、ピニオン7はピニオン軸5の下端部に設けられている。ピニオン7は、車幅方向に往復動し得るラック軸8のラック歯8aに噛合し、ラック軸8の両端には、タイロッド9を介して転舵輪としての左右の前輪10が連結されている。
この構成により、操向ハンドル2の操舵時に通常のラック&ピニオン式の転舵操作が可能であり、前輪10を転舵させて車両の向きを変えることができる。ここで、ラック軸8、ラック歯8a、タイロッド9は転舵機構を構成する。
また、電動パワーステアリング装置100は、操向ハンドル2による操舵力を軽減するための操舵アシスト力をピニオン軸5に供給するモータ11を備えており、このモータ11の出力軸に設けられたウォームギヤ12が、ピニオン軸5の中間部の軸受6bの下側に設けられたウォームホイールギヤ13に噛合している。
また、ピニオン軸5の中間部の軸受6bと上部の軸受6cとの間には、磁歪に起因する磁気特性の変化に基づいてトルクを検出する磁歪式の公知の操舵トルクセンサ30が配置されている。
磁歪式の操舵トルクセンサ30は、ピニオン軸5の外周面に周方向全周に亘って環状に設けられた第1磁歪膜31及び第2磁歪膜32と、第1磁歪膜31に対向配置された第1検出コイル33aと第2検出コイル33b、及び第2磁歪膜32に対向配置された第3検出コイル34aと第4検出コイル34b、第1〜第4検出コイル33a〜34bに接続された検出回路35を主要構成としている。
第1、第2磁歪膜31、32は、歪みに対して透磁率の変化が大きい素材からなる金属膜であり、例えば、ピニオン軸5の外周にメッキ法で形成したNi−Fe系の合金膜からなる。
第1磁歪膜31は、ピニオン軸5の軸線に対して約45度傾斜した方向に磁気異方性を備えるように構成されており、第2磁歪膜32は、第1磁歪膜31の磁気異方性の方向に対して約90度傾斜した方向に磁気異方性を備えるように構成されている。すなわち、2つの磁歪膜31、32の磁気異方性は互いに約90度位相を異にしている。
第1検出コイル33a及び第2検出コイル33bは、第1磁歪膜31の周囲にこれと所定の隙間を有した状態で同軸状に配置されている。一方、第3検出コイル34a及び第4検出コイル34bは、第2磁歪膜32の周囲にこれと所定の隙間を有した状態で同軸状に配置されている。
第1、第2磁歪膜31、32の磁気異方性を前述のように設定したことにより、ピニオン軸5にトルク(操舵トルク)が作用した状態では、磁歪膜31、32の一方に圧縮力が作用し、他方に引っ張り力が作用するようになり、その結果、一方の磁歪膜の透磁率が増加し、他方の磁歪膜の透磁率が減少する。そして、これに応じて一方の磁歪膜の周囲に配置された検出コイルのインダクタンスが増加し、他方の磁歪膜の周囲に配置された検出コイルのインダクタンスが減少する。
検出回路35は、前記検出コイルのインダクタンス変化を、故障検出信号VT1、VT2及びトルク信号(以下、操舵トルク値という。)VT3に変換してECU(電子制御ユニット)50に出力する。
ECU50の一部の機能として構成される目標電流算出部50Aは、操舵トルク値VT3を出力する検出回路35、モータ11の回転速度Nmを検出する回転速度センサ14、車両の走行速度(車速)Vsを検出する車速センサ16、及び操向ハンドル2の操舵角度θsを検出する舵角センサ17の各出力に基づいて目標電流値Itarを算出し、算出した目標電流値Itarがモータ11に流れる電流Imに一致するようにモータ11を駆動制御することで操舵アシスト力を発生し、操向ハンドル2による操舵力を軽減する機能を有する。
なお、ECU50は、CPU、ROM、RAM、並びにA/D変換器、D/A変換器等の入出力インタフェース、タイマ等を備えるマイクロコンピュータを含み、該マイクロコンピュータのCPUが各種入力に基づきROMに記憶されているプログラムを実行することで各種機能部として動作し、モータ11等を駆動制御する。
次に、ECU50の目標電流算出部50Aにて行われるモータ11の駆動制御における、目標電流値Itarの算出処理について図2及び図3を参照して説明する。
図2は、操舵アシスト力を発生するためにモータ11に供給される目標電流値Itarを算出するためのECU50の目標電流算出部50Aの機能ブロック図(目標電流算出ブロック図)であり、図3は、図2の目標電流算出ブロックのうち、フリクション制御部54の詳細な構成を示すブロック図である。
図2に示すように、目標電流算出部50Aは、操向ハンドル2の運転者による操舵力Fsの軽減を図るために、操舵トルク値VT3と車速Vsに基づいてアシスト電流値Ia(基本アシスト電流値)を算出するアシスト制御部51と、モータ11の慣性を補償するために、操舵トルク値VT3に対して微分等を行ったトルク微分値と車速Vs及び操舵トルク値VT3に基づいてイナーシャ電流値Iiを算出するイナーシャ制御部52と、車両の収斂性を向上させるために、モータ11の回転速度Nm、操舵トルク値VT3及び車速Vsに基づいてダンパ電流値Idを算出するダンパ制御部53を基本的な制御部として有する。
アシスト制御部51は、概ね、車速Vsが早くなるほどゲインを低くし、操舵トルク値VT3が大きくなるに従いゲインを高くする特性を備える。結果、アシスト電流値Iaは、概ね、操舵トルク値VT3の増加に応じて増加し、車速Vsが早くなるほど減少する。
イナーシャ制御部52は、モータ11の回転子の慣性による応答性の低下を補償する特性等を備え、主に、操舵トルク値VT3のトルク微分値等に応じたイナーシャ電流値Iiを算出する。イナーシャ電流値Iiは、電流値演算器58(電流値加減算器、電流値加減算部)によりアシスト電流値Iaに加算される。
ダンパ制御部53は、モータ11の回転速度を抑制するテーブルを備え、主に、モータ回転速度Nmが高いほど大きくなるダンパ電流値Idを算出する。ダンパ電流値Idは、電流値演算器58によりアシスト電流値Iaから減算される。このステアリングダンパ効果により、操向ハンドル2の収斂性が向上する。
さらに、目標電流算出部50Aは、ハンドル戻りを向上させるために、操舵角θs、操舵トルク値VT3及び車速Vsに基づいてハンドル戻し電流値Ibを算出するハンドル戻し制御部56を有する。
ハンドル戻し制御部56は、操向ハンドル2の戻し時にSATにより操向ハンドル2を素直に戻させるための特性を有し、ハンドル戻し電流値Ibを算出する。ハンドル戻し電流値Ibは、電流値減算器60(電流値減算部)によりアシスト電流値Ia2から減算される。
図3に示すように、フリクション制御部54は、モータ回転速度Nmが目標値“0”に一致するように制御する(PID制御)ことで擬似的に(電気的に)フリクショントルク値VTfrinを算出するコントローラ541(擬似的フリクショントルク値算出部)と、モータ回転速度Nmに基づいて付与フリクションを決定する特性102(可変することは可能であるが、ここでは、モータ回転数Nmによらない一定値の付与フリクションを算出する特性)を備えるフリクション決定部542と、操舵トルク値VT3に応じて特性103によるレシオ出力(値0〜1:操舵トルクVT3が大きくなるとレシオ値が値1に近づく特性)により前記付与フリクションを乗算器70を介して変化させるトルクレシオ部543と、車速Vsに応じて特性104によるレシオ出力(値0〜1:車速Vsが高くなるとレシオ値が値1に近づく特性)により前記付与フリクション値を乗算器72を介して変化させる車速レシオ部544と、さらにフリクション決定部542、トルクレシオ部543及び車速レシオ部544によって決定された付与フリクション制御値に基づく特性110によりフリクショントルク値VTfrinを補正してフリクショントルク値VTfrを算出するフリクショントルク値可変部(フリクショントルク値調整部)545と、を備える。
フリクショントルク値可変部545は、入力ポート74に供給されたフリクショントルク値VTfrinを、その値が小さい場合には特性110の傾斜に応じて比例的に出力し、値が大きい場合には、所定値に制限して出力する。例えば、車速Vsが高いときには、特性110maxに制限し、車速Vsが低いときには、特性110minに制限する。また、特性110の傾斜部を利用して比例的に出力する際、車速Vs、操舵トルクVT3、及びモータ回転速度Nmに応じて、特性110の傾斜の傾きを変えること、あるいは傾斜を直線ではなく曲線にすることもできる。
フリクション制御部54で算出されフリクショントルク値可変部545を介して出力されたフリクショントルク値VTfrは、トルク値減算器57(トルク値減算部)の減数ポートに供給されるとともに、フリクショントルク値・電流値変換部55を介してフリクション電流値Ifrに変換され、電流値減算器59(電流値減算部)の減数ポートに供給される。
フリクショントルク値・電流値変換部55により算出されたフリクション電流値Ifrが、電流値演算器58によって、アシスト電流値Ia、イナーシャ電流値Ii及びダンパ電流値Idから求められたアシスト電流値Ia1から減算されることで、運転者の操向ハンドル2の操舵に抗うトルクを重畳して発生するアシスト電流値Ia2が算出される。アシスト電流値Ia2からハンドル戻し電流値Ibを電流値減算器60により減算した電流が目標電流値Itarとしてモータ11に供給される。これにより、操向ハンドル2の切り込み時に機械的フリクションを電気的に付与することができる。
ところで、フリクション電流値Ifrによって操向ハンドル2を含むステアリング系に付与されるフリクションは、直進走行時等の操舵アシスト力が発生していない場合には、有効に付与されるが、旋回保舵時のように操舵アシスト力が発生しているときには、アシスト制御部51のアシストゲインGAによって1/(1+GA)に減少してしまう。
そこで、この減少分を補うために、フリクション制御部54において算出されたフリクショントルク値VTfrは、トルク値減算器57によって、操舵トルクVT3から減算するようにする。この結果、アシスト制御部51において算出されるアシスト電流値Iaがフリクショントルク値VTfrにアシストゲインGAを乗じた分だけ必ず変化し、フリクション電流値Ifrと合わせるとアシスト制御部51のゲインGAによらず一様の機械的フリクションを電気的に付与することができる。
このようにして、操舵全域にわたりフリクションが付与され良好な操舵感を得ることができる。
図4Dは、比較例としての操舵角操舵力特性128を示している。図4Aは、上記した図2例の最善の態様(ベストモード)の目標電流算出部50Aを採用した実施例の操舵角操舵力特性122を示している。ベストモードの操舵角操舵力特性122では、切り込み時には操舵角θsに比例して大きくなる操舵力Fs(運転者の操舵力)が必要とされる直線性のよい操舵力Fsとされ、戻し時直後には、操舵アシスト力がフリクショントルク値VTfrにより低減されているのでしっかりとしたヒステリシスが付与され、さらに戻し時には操舵角θsに比例して小さくなる直線性のよい操舵力Fsとされる。全操舵角θsの範囲で適切なフリクション(操舵角操舵力特性が一次関数的に線形の特性になるフリクション)を付与することができる。
この図2例の目標電流算出部50Aを採用した電動パワーステアリング装置100によれば、フリクション電流値Ifrによって付与されたフリクションが旋回保舵時等にアシスト制御部51によるアシストGAによって減少することを補償するために、操舵トルク値VT3からフリクショントルク値VTfrを減算するように構成しているので、フリクションの減少を防止することができる。
なお、図4Bの操舵角操舵力特性124は、図5に示す他の実施形態に係る目標電流算出部50Bを有する電動パワーステアリング装置の特性を示している。この目標電流算出部50Bでは、フリクショントルク値・電流値変換部55を省略しフリクション電流値Ifrをゼロ値としているので、操舵角θsの中立位置近傍では適切なフリクションを付与することはできないが、フリクショントルク値VTfrにより旋回保舵時等には適切なフリクションを付与することができるので、比較例の図4Dの特性128に比較して一定の効果を奏する。なお、電流値減算器59を省略することができる(Ia2=Ia1)。
また、図4Cの操舵角操舵力特性126は、図6に示すさらに他の実施形態に係る目標電流算出部50Cを有する電動パワーステアリング装置の特性を示している。この目標電流算出部50Cでは、フリクショントルク値VTfrを操舵トルク値VT3から減算しない構成としているので(トルク値減算器57は省略可能である。)、旋回保舵時等には適切なフリクションを付与することができないが、フリクション電流値Ifrにより操舵角θsの中立位置近傍では適切なフリクションを付与することができるので、比較例の図4Dに比較して一定の効果を奏する。なお、トルク値減算器57を省略することができる。
上述した図4A〜図4Dの操舵角操舵力特性122、124、126、128において、操舵力Frの所定範囲120は、操舵角θsに対して操舵力Frが直線的に変化している範囲であるので、操舵角θsに応じて操舵アシスト力が比例的に付与されている範囲である。
以上説明したように上述した図5例の目標電流算出部50Bを有する実施形態(図5、図4B)によれば、操向ハンドル2の操作に応じて操舵トルクセンサ30により検出される操舵トルク値VT3に基づいて基本的にはアシスト制御部51により算出される操舵アシスト電流値Iaに基づく目標電流値Itarを決定し、目標電流値Itarに基づいてモータ11を駆動制御する電動パワーステアリング装置100において、操向ハンドル2の操作に対しフリクションを付与するため、操舵トルク値VT3に基づいてフリクショントルク値VTfrを決定するフリクション制御部54と、操舵トルク値VT3をフリクショントルク値VTfrで補正した補正操舵トルク値(VT3−VTfr)を生成するトルク値減算器57(第1フリクション生成部)と、を備え、アシスト制御部51は、操舵トルク値VT3をフリクショントルク値VTfrで補正した前記補正操舵トルク値(VT3−VTfr)に基づいて第1補正目標電流値Ia1を決定しているので、操向ハンドル2の操作に対し機械的フリクションを電気的に発生して付与することができる。
この場合、さらに、図2例の目標電流算出部50Aを有する実施形態(図2、図4A)によれば、フリクショントルク値VTfrをフリクション電流値Ifrに変換するフリクショントルク値・電流値変換部55と、第1補正目標電流値Ia1をフリクション電流値Ifrで補正した第2補正目標電流値Ia2を発生する目標電流補正部としての電流値減算器59と、を備えることで、回転半径が一定のカーブの旋回走行時(旋回保舵時という。)又は直進走行時のように、操向ハンドル2が少なくとも静止状態又は静止状態とみなせる状態にあるときに操向ハンドル2の操作に対し適切にフリクションを電気的に発生させて付与し、操舵の安定性を向上させることができる。
なお、図6例の目標電流算出部50Cを有する実施形態(図6、図4C)によれば、操舵トルク値VTに基づいてモータ11の目標電流値Itarを決定するアシスト制御部51が、目標電流値Itaをフリクション電流値(前記操舵トルク値VT3に基づいて決定されたフリクショントルク値VTfrを変換したフリクション電流値Ifr)で補正した補正目標電流値Ia2に基づいてモータ11を駆動制御するようにしたので、操向ハンドル2の操作に対しフリクションを電気的に発生して付与することができる。結果として、直進走行時に操向ハンドル2の操作に対しフリクションを電気的に発生させて付与することができるので、操舵の安定性を向上させることができる。
上記の各実施形態において、フリクション制御部54は、フリクショントルク値VTfrを決定する際、モータ11の回転速度Nmがゼロ値となる値をフリクショントルク値VTfrに決定するようにしているので、電気的に簡易にフリクショントルク値VTfrを決定することができる。
なお、この発明は、上述の実施形態及び作用効果に限らず、この明細書の記載内容に基づき、例えば、以下に列挙するように、種々の構成を採り得ること並びに作用効果を奏することはもちろんである。
第1に、少なくとも操舵トルクセンサ30によって検出された操舵トルク値VT3に基づいてモータ11を駆動制御することにより、操舵力の軽減を図る際に、機械的フリクションを電気的に付与する構成としたので、操舵が切り込み(行き)状態の場合はその分モータ11の仕事量が低減し、戻り状態の場合はモータ11の仕事量が増加する。結果として、往き戻り全体で見ると、エネルギー損失の増大を招くことなく、直進時や旋回保舵時の安定性及び快適性を向上することができる。
第2に、電気的に付与するフリクションを、車速Vsによって可変とすることで、高速走行時の安定性向上と、低速走行時のハンドル戻りの軽快性を両立することができる。
第3に、電気的に付与するフリクションを、操舵トルク値VT3に応じて変更することで、操舵トルク値VT3に応じて、運転者の感じ取るフリクション感を任意に設定することができる。
第4に、電気的に付与するフリクションを、往き・戻りの状態によって可変とすることで、往きでの手ごたえと、戻りでの軽快さを両立することができる。
第5に、前記第2〜第4の構成の中から2つまたは全てを組み合わせた構成とすることもできる。第2〜第4の構成を組み合わせることで、操舵状態,走行状態に拘わらず操舵フィリングを良好に保つことができる。
第6に、ラック移動速度またはモータ回転速度Nmから操向ハンドル2の操舵速度を検出し、モータ駆動信号(目標電流)となるフリクション電流値Ifrを制御出力として、前記操舵速度がゼロ値となるように制御しているのでで、機械的フリクションを増大させたことと同様のフリクションを付与することができる。
第7に、フリクショントルク値VTfrを制御出力として、操向ハンドル2の操舵速度がゼロ値となるように制御することで、操舵アシスト時においても良好なフリクション感を得ることができる。
前記第6及び第7の構成を組み合わせることで、アシストゲインGAによって運転者が感じるフリクションの感じが変化しない良好な操舵感を得ることができる。
第8に、前記操舵速度制御手段としてのコントローラ541の制御出力にリミッタを設けたことで、電気的に付与するフリクションを任意に設定することができる。
第9に、前記リミッタによる制限値を車速Vs、操舵トルク値VT3、操舵速度、往き戻り状態のいずれかまたは組み合わせによって可変にすることで、車両の走行状態及び操舵状態に応じて適切なフリクションを付与することができる。
第10に、操舵角θs、ヨーレート、横G、SATの何れかまたはそれらの組み合わせによって操向ハンドル2の戻りを向上させるハンドル戻し制御部56を持つことで、操向ハンドル2のハンドル戻りを悪化させることなく、フリクションを付与することができる。
Claims (3)
- 操向ハンドル(2)の操作に応じて操舵トルクセンサ(30)により検出される操舵トルク値(VT3)に基づいてアシスト制御部(51)により目標電流値(Ia)を決定し、前記目標電流値(Ia)に基づいてモータ(11)を駆動制御する電動パワーステアリング装置(100)において、
前記操向ハンドル(2)の操作に対しフリクションを付与するため、前記操舵トルク値(VT3)に基づいてフリクショントルク値(VTfr)を決定するフリクション制御部(54)と、
前記操舵トルク値(VT3)を前記フリクショントルク値(VTfr)で補正した補正操舵トルク値(VT3−VTfr)を生成する第1フリクション生成部(57)と、を備え、
前記アシスト制御部(51)は、前記補正操舵トルク値(VT3−VTfr)に基づいて前記目標電流値(Ia)に換わる第1補正目標電流値(Ia1)を決定し、
さらに、
前記フリクショントルク値(VTfr)をフリクション電流値(Ifr)に変換するフリクショントルク・電流変換部(55)と、
前記第1補正目標電流値(Ia1)を前記フリクション電流値(Ifr)で補正した第2補正目標電流値(Ia2)を発生する目標電流補正部(59)と、
を有することを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 操向ハンドル(2)の操作に応じて操舵トルクセンサ(30)により検出される操舵トルク値(VT3)に基づいてアシスト制御部(51)により基本アシスト電流値(Ia)を決定し、
前記操舵トルク値(VT3)の微分値に基づいてイナーシャ制御部(52)にてイナーシャ電流値(Ii)を決定し、
モータ(11)の回転速度(Nm)に基づいてダンパ制御部(53)にてダンパ電流値(Id)を決定し、
前記基本アシスト電流値(Ia)、前記イナーシャ電流値(Ii)、及び前記ダンパ電流値(Id)によって求められるアシスト電流値(Ia1)に基づいて前記モータ(11)を駆動制御する電動パワーステアリング装置(100)において、
フリクショントルク値(VTfr)を決定するフリクション制御部(54)と、
前記操舵トルク値(VT3)を前記フリクショントルク値(VTfr)で補正した補正操舵トルク値(VT3−VTfr)を生成する第1フリクション生成部(57)と、を備え、
前記アシスト制御部(51)、前記イナーシャ制御部(52)、及び前記ダンパ制御部(53)のうち、前記アシスト制御部(51)のみが、前記補正操舵トルク値(VT3−VTfr)に基づいて前記基本アシスト電流値(Ia)を決定する
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 請求項1記載の電動パワーステアリング装置において、
前記フリクション制御部(54)は、前記フリクショントルク値(VTfr)を決定する際、前記モータ(11)の回転速度(Nm)がゼロ値となる値を前記フリクショントルク値(VTfr)に決定する
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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