JP6131208B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

電動パワーステアリング装置 Download PDF

Info

Publication number
JP6131208B2
JP6131208B2 JP2014058539A JP2014058539A JP6131208B2 JP 6131208 B2 JP6131208 B2 JP 6131208B2 JP 2014058539 A JP2014058539 A JP 2014058539A JP 2014058539 A JP2014058539 A JP 2014058539A JP 6131208 B2 JP6131208 B2 JP 6131208B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steering
torque
phase compensation
steering angle
torque signal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014058539A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015182493A (ja
Inventor
智史 大野
智史 大野
大庭 吉裕
吉裕 大庭
米田 篤彦
篤彦 米田
清水 康夫
康夫 清水
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Honda Motor Co Ltd filed Critical Honda Motor Co Ltd
Priority to JP2014058539A priority Critical patent/JP6131208B2/ja
Publication of JP2015182493A publication Critical patent/JP2015182493A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6131208B2 publication Critical patent/JP6131208B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Steering Control In Accordance With Driving Conditions (AREA)
  • Power Steering Mechanism (AREA)

Description

本発明は、電動パワーステアリング装置に関する。
電動モータが発生するトルクで運転者の操舵をアシストする電動パワーステアリング装置が広く使用されている(特許文献1参照)。
電動パワーステアリング装置は、操向ハンドルに生じる操舵トルクに応じたアシスト力を電動モータのトルク(補助操舵トルク)で発生させる。さらに、操舵角が大きい領域での制御安定性を確保するため、特許文献1に記載される電動パワーステアリング装置は操舵トルクの検出信号(トルク信号)に位相補償を施し、位相補償が施されたトルク信号に基づいて補助操舵トルクを設定する。特許文献1に記載される電動パワーステアリング装置は、電動モータに供給するアシスト電流に応じてトルク信号に位相補償が施される。
特開2012−228925号公報
電動パワーステアリング装置は、操舵角の増大にともなってステアリングレシオが徐々に低下する。つまり、操舵角が増大するほど、操向ハンドルの操作に対する転舵輪の動作が速やかになる(クイックになる)。このため操舵角が増大すると電動パワーステアリング装置の減衰性が低下する。したがって、電動パワーステアリング装置の制御安定性を高めるため、操舵角が大きい領域では、トルク信号に対して大きな遅れ位相補償が施されることが好ましい。
特許文献1に記載される電動パワーステアリング装置は、電動モータに供給されるアシスト電流の大きさに応じてトルク信号に位相補償が施される。この電動パワーステアリング装置は、操舵角の増大にともなってアシスト電流が増大する場合、トルク信号に対して大きな遅れ位相補償が施される。このようにトルク信号に対して位相補償が施されることで、操舵角が小さい領域では良好な操舵フィーリングが確保され、操舵角が大きい領域では制御安定性が確保される。
しかしながら、操舵角が増大した状態で操向ハンドルの操舵が止められた後に操舵が再開される場合など、操舵角が大きな状態でもアシスト電流が小さい場合がある。このような場合、操舵角が大きい領域であってもトルク信号に対して小さな遅れ位相補償(大きな進み位相補償)が施される。このため、操舵角が大きい領域での制御安定性が低下する。
特に、操向ハンドルと転舵輪の間のギア比が操舵角に応じて変化する可変ギアレシオの機能が備わる電動パワーステアリング装置の場合、操舵角が大きい領域での制御安定性の低下が顕著になる。
また、電動モータに供給されるアシスト電流が変動すると、その変動に引き摺られてトルク信号に施される位相補償が変動する。このような位相補償の変動は補助操舵トルクの変動となって操向ハンドルを介して運転者に伝達される。したがって、アシスト電流が変動すると操舵フィーリングが低下する。
そこで、本発明は、トルク信号に対して効果的に位相補償を施し、制御安定性や操舵フィーリングの低下を抑制できる電動パワーステアリング装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため本発明は、操作部材に加えられた操舵トルクに応じて電動機を制御し、この電動機が発生する駆動力をステアリング機構に伝達して操舵を補助するとともに、前記ステアリング機構の操舵角の増大にともなってステアリングレシオが低下する電動パワーステアリング装置とする。そして、前記操舵トルクを検出するトルクセンサと、前記ステアリング機構の前記操舵角を検出する舵角センサと、前記トルクセンサから出力されるトルク信号に対して位相補償を施す位相補償部と、前記位相補償部で位相補償が施された後のトルク信号に基づいて前記電動機に供給するアシスト電流を決定するアシスト電流算出部と、を備え、前記位相補償部は、前記操舵角が大きいほど、前記トルクセンサから出力されるトルク信号に対して大きな遅れ位相補償を施すことを特徴とする。
本発明の電動パワーステアリング装置は、操舵角が大きくて高い制御安定性が要求される領域では、トルク信号に対して常に大きな遅れ位相補償が施される。したがって、操舵角が大きい領域での高い制御安定性が確保される。また、この電動パワーステアリング装置は、操舵角が小さい領域では、トルク信号に対して小さな遅れ位相補償が施される。したがって、操舵角が小さい領域での良好な操舵フィーリングが確保される。さらに、操舵角は高い周波数で変動することがないため、トルク信号の位相補償は高い周波数で変動しない。つまり、補助操舵トルクの不要な変動が抑制されることになり、良好な操舵フィーリングが確保される。
また、本発明は、操作部材に加えられた操舵トルクに応じて電動機を制御し、この電動機が発生する駆動力をステアリング機構に伝達して操舵を補助するとともに、前記ステアリング機構の操舵角の増大にともなってステアリングレシオが低下する電動パワーステアリング装置とする。そして、前記操舵トルクを検出するトルクセンサと、前記電動機の状態にもとづいて前記ステアリング機構の前記操舵角を推定する舵角推定部と、前記トルクセンサから出力されるトルク信号に対して位相補償を施す位相補償部と、前記位相補償部で位相補償が施された後のトルク信号に基づいて前記電動機に供給するアシスト電流を決定するアシスト電流算出部と、を備え、前記位相補償部は、前記舵角推定部が推定する操舵角が大きいほど、前記トルクセンサから出力されるトルク信号に対して大きな遅れ位相補償を施すことを特徴とする。
本発明の電動パワーステアリング装置は、操舵角が大きくて高い制御安定性が要求される領域で、トルク信号に対して常に大きな遅れ位相補償が施される。また、制御部は、電動機の状態にもとづいて操舵角を推定できる。したがって、操舵角を検出するセンサが不要になり、ステアリング機構のコストダウンを図ることができる。また、操舵角が大きい領域での高い制御安定性が確保される。さらに、この電動パワーステアリング装置は操舵角が小さい領域で、トルク信号に対して小さな遅れ位相補償が施され、良好な操舵フィーリングが確保される。
また、前記位相補償部は、前記トルク信号に対して、前記アシスト電流算出部で決定された前記アシスト電流が大きいほど大きな遅れ位相補償を施すことを特徴とする。
本発明の電動パワーステアリング装置は、操舵角とアシスト電流に応じて、トルク信号に位相補償が施される。よって、同じ操舵角でもアシスト電流が大きいほど大きな遅れ位相補償がトルク信号に対して施される。したがって、トルク信号がよりきめ細かく補償され、操舵フィーリングがさらに向上する。
また、前記位相補償部は、前記トルク信号に対して、前記アシスト電流の値を前記操舵トルクの値で除算した値が大きいほど大きな遅れ位相補償を施すことを特徴とする。
本発明の電動パワーステアリング装置は、トルク信号に対し、アシスト電流値を操舵トルク値で除算した値と操舵角に応じた位相補償が施される。よって、同じ操舵角でもアシスト電流値を操舵トルク値で除算した値が大きいほど大きな遅れ位相補償がトルク信号に対して施される。したがって、トルク信号がよりきめ細かく補償され、操舵フィーリングがさらに向上する。
また、本発明の電動パワーステアリング装置は、前記ステアリング機構に備わって前記操作部材の操舵に応じて転舵する転舵輪と、前記操作部材と、の間のギア比である前記ステアリングレシオが、前記操舵角の増大にともなって低下する可変ギアレシオの機能が備わっていることを特徴とする。
本発明の電動パワーステアリング装置は、操作部材と転舵輪の間のギア比が操舵角に応じて変化し、操舵角が大きくなるほど、操作部材の操舵に対して転舵輪が速やかに動作する。したがって、操舵角が大きい領域では、ステアリング機構の減衰性が大きく低下する。しかしながら、操舵角が大きい領域では常に大きな遅れ位相補償がトルク信号に対して施される。このため、ステアリング機構の減衰性の低下を良好に抑制することができ、高い制御安定性の確保が可能になる。また、操舵角が小さい領域では良好な操舵フィーリングが確保される。
このように、本発明によると、操作部材と転舵輪の間のギア比が操舵角に応じて変化する可変ギアレシオの機能を有する電動パワーステアリング装置であっても、良好な制御安定性と良好な操舵フィーリングをともに実現するようにトルク信号を補償できる。
本発明によると、トルク信号に対して効果的に位相補償を施し、制御安定性や操舵フィーリングの低下を抑制できる電動パワーステアリング装置を提供できる。
電動パワーステアリング装置の概略構成図である。 アシスト電流算出部の機能ブロック図である。 (a)は位相補償部が有するゲイン補償マップ、(b)は位相補償部が有する位相補償マップである。 第2実施形態に係るアシスト電流算出部の機能ブロック図である。 第3実施形態に係るアシスト電流算出部の機能ブロック図である。 (a)は、可変ギアレシオの機能を有するラックアンドピニオン機構を示す図、(b)は、操舵角とステアリングレシオの関係を示すグラフである。
《第1実施形態》
以下、本発明を実施するための第1実施形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
図1は、電動パワーステアリング装置の概略構成図である。
図1に示すように、車両のステアリング機構100は、ステアリング軸22(ピニオン軸)に操作部材(操向ハンドル21)が取り付けられて構成される。ステアリング軸22は、ラックアンドピニオン機構25のラック軸25aに噛合するピニオンギア(図示せず)と一体に回転動作する。
そして運転者が操向ハンドル21を操舵すると、図示しないピニオンギアがステアリング軸22と一体に回転してラック軸25aを左右方向に移動(左右動)させる。これによって、ラック軸25aに連結される左右の転舵輪2R,2L(第1実施形態では前輪)が転舵する。操向ハンドル21が操舵されて回転する角度を、ステアリング機構100の操舵角(ハンドル操舵角θh)とする。
このステアリング機構100には、電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering)1が備わる。
電動パワーステアリング装置1には、電動機(電動モータ23)が備わっている。電動モータ23は、補助操舵力(補助操舵トルク)をトルク(駆動トルク)として発生する。補助操舵トルクは、運転者が操向ハンドル21を操舵するときの操舵力を低減する。これによって、運転者による操向ハンドル21の操舵が補助される。
電動モータ23の出力軸は、図示しないピニオンギアを介してラック軸25aに噛合する。本実施形態のステアリング機構100は、ステアリング軸22とラック軸25a、及び、電動モータ23とラック軸25aが、それぞれ異なるピニオンギアを介して噛合するデュアルピニオンEPSとなっている。
運転者が操向ハンドル21を操舵したとき、電動モータ23の出力軸が回転駆動する。この出力軸の回転駆動で生じるトルクが補助操舵トルクとしてラック軸25aに付与される。電動モータ23からラック軸25aに付与される補助操舵トルクによって操舵力が低減される。
電動モータ23には、図示しない回転速度検出手段が備わっている。回転速度検出手段は、電動モータ23(出力軸)の回転速度を検出し回転速度信号Nsを出力する。
また、電動パワーステアリング装置1は制御部(Electronic Control Unit:ECU20)で制御される。ECU20は、電動モータ23を駆動制御して、操向ハンドル21の操舵を補助するように電動パワーステアリング装置1を制御する。
ECU20は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えるマイクロコンピュータおよび周辺回路などから構成される。ECU20は、例えば、ROMに格納されるプログラムを実行して電動パワーステアリング装置1を制御する。
ステアリング軸22にはトルクセンサ16が取り付けられている。トルクセンサ16は、操向ハンドル21が操舵されるときの操舵トルクを検出する。トルクセンサ16は、操向ハンドル21の操舵に応じてトルク信号Tsを出力する。トルク信号Tsは、ECU20に入力される。ECU20は、入力されたトルク信号Tsに基づいて、ステアリング軸22に生じる操舵トルクを算出する。そして、ECU20は、算出した操舵トルクに基づいて電動モータ23を制御する。ECU20は、運転者が操向ハンドル21を操舵するときの操舵力を低減する補助操舵トルクを電動モータ23に発生させる。
ステアリング軸22には磁歪式のトルクセンサ16が備わっている。磁歪式のトルクセンサ16は、2つの磁歪膜(第1磁歪膜16a,第2磁歪膜16b)を有する。2つの磁歪膜は、ステアリング軸22の軸方向2箇所に被着されている。第1磁歪膜16aと第2磁歪膜16bは、歪みに対して透磁率の変化が大きい素材からなる金属膜である。例えば、第1磁歪膜16aと第2磁歪膜16bは、ステアリング軸22の外周にメッキ法で形成されたNi−Fe系の合金膜からなる。
第1磁歪膜16aは、ステアリング軸22の軸方向に対して約45度傾斜した方向に磁気異方性を有する。第2磁歪膜16bは、第1磁歪膜16aの磁気異方性の方向に対して約90度傾斜した方向に磁気異方性を有する。
トルクセンサ16には、4つの検出コイル(第1検出コイル161a,第2検出コイル161b,第3検出コイル161c,第4検出コイル161d)が備わっている。
第1検出コイル161aと第2検出コイル161bはステアリング軸22の軸方向に並んで配置され、第1磁歪膜16aと対向している。第1検出コイル161aと第2検出コイル161bは、第1磁歪膜16aと所定の間隙を有して、第1磁歪膜16aの周囲に配置されている。
第3検出コイル161cと第4検出コイル161dはステアリング軸22の軸方向に並んで配置され、第2磁歪膜16bと対向している。第3検出コイル161cと第4検出コイル161dは、第2磁歪膜16bと所定の間隙を有して、第2磁歪膜16bの周囲に配置されている。
また、トルクセンサ16には、前記した4つの検出コイルと接続される検出回路160が備わっている。
ステアリング軸22にトルクが生じると、第1磁歪膜16aと第2磁歪膜16bの一方に圧縮力が作用して他方に引張力が作用する。その結果、第1磁歪膜16aと第2磁歪膜16bの一方は透磁率が増加し、他方は透磁率が減少する。このとき、透磁率が増加する磁歪膜の周囲に配置される検出コイルのインダクタンスが増加する。また、透磁率が減少する磁歪膜の周囲に配置される検出コイルのインダクタンスが減少する。
検出回路160は、検出コイルのインダクタンスの変化をトルク信号Tsに変換して出力する。検出回路160から出力されたトルク信号TsはECU20に入力される。
ECU20には、車速センサ17、ヨーレートセンサ18、及び舵角センサ19が接続される。
車速センサ17は、車速を単位時間あたりのパルス数として検出し、車速信号Vsを出力する。車速信号Vsは、車速が高いほど大きくなる。
ヨーレートセンサ18は、例えば、車両にヨーモーメントが発生していないときを「0」とする。そして、ヨーレートセンサ18は、例えば、左方向のヨーモーメントが発生しているときに正の値、右方向のヨーモーメントが発生しているときに負の値をヨーレート信号Ysとして出力する。
舵角センサ19は、操向ハンドル21が操舵された角度(ハンドル操舵角θh)を検出する。本実施形態では、舵角センサ19が検出するハンドル操舵角θhをステアリング機構100の操舵角とする。
ECU20には、車速センサ17が出力する車速信号Vsとヨーレートセンサ18が出力するヨーレート信号Ysと舵角センサ19が出力する舵角信号θsが入力される。ECU20は、車速センサ17から入力される車速信号Vsに基づいて車速(車体速)を算出する。また、ECU20は、ヨーレートセンサ18から入力されるヨーレート信号Ysに基づいてヨーレートを算出する。また、ECU20は、舵角センサ19から入力される舵角信号θsに基づいてハンドル操舵角θhを算出する。
ECU20には、電動モータ23の回転速度検出手段が出力する回転速度信号Nsが入力される。ECU20は、入力される回転速度信号Nsに基づいて電動モータ23(出力軸)の回転速度を算出する。
ECU20には、アシスト電流算出部20aが備わる。例えば、ECU20が前記したプログラムを実行してアシスト電流算出部20aの機能を実現する。アシスト電流算出部20aは、電動モータ23に供給するアシスト電流Itarを設定する。ECU20は、アシスト電流算出部20aが設定するアシスト電流Itarを電動モータ23に供給する。電動モータ23は、ECU20から供給されるアシスト電流Itarで駆動し、運転者が操向ハンドル21を操舵するときの操舵力を低減する補助操舵トルクを発生する。
図2は、アシスト電流算出部の機能ブロック図である。
図2に示すように、アシスト電流算出部20aは、基本アシスト制御部51と、イナーシャ制御部52と、フリクション付与制御部53と、ダンパ制御部54と、ハンドル戻し制御部55と、を備える。
イナーシャ制御部52は、イナーシャ電流Iiを設定する。イナーシャ電流Iiは、操向ハンドル21(図1参照)の切り増し時(切り戻し時)における電動モータ23(図1参照)の回転子の慣性(慣性モーメント)による応答性の低下を補償する。イナーシャ制御部52は、トルク微分部68とイナーシャ特性部70を備える。トルク微分部68は、トルクセンサ16(図1参照)から入力されるトルク信号Tsを微分する。トルク微分部68は、立ち上がり部(立ち下がり部)の過渡応答を微分値dTs/dt(dは微分演算子)として抽出する。微分値dTs/dtはイナーシャ特性部70に入力される。このとき、車速信号Vsに応じた車両応答性に基づいた係数が微分値dTs/dtに乗算される構成であってもよい。
イナーシャ特性部70は、イナーシャマップ70iを有する。イナーシャマップ70iは、微分値dTs/dtとイナーシャ電流Iiの関係を示すマップである。イナーシャ電流Iiは、微分値dTs/dtに概ね比例する。このようなイナーシャマップ70iは、あらかじめ設定されてECU20(図1参照)の記憶部に記憶されていることが好ましい。イナーシャ特性部70は、微分値dTs/dtに基づいてイナーシャマップ70iを参照し、イナーシャ電流Iiを設定する。設定されたイナーシャ電流Iiは電流演算器72に入力される。
フリクション付与制御部53には、電動モータ23(図1参照)の回転速度検出手段から回転速度信号Nsが入力される。また、フリクション付与制御部53には、車速センサ17(図1参照)から車速信号Vsが入力される。そして、フリクション付与制御部53は、回転速度信号Nsと車速信号Vsに基づいて付与フリクショントルクVtfを設定する。また、フリクション付与制御部53は、付与フリクショントルクVtfを電流に変換して付与フリクション電流Ifを設定する。設定された付与フリクショントルクVtfはトルク値減算器66に入力される。また、設定された付与フリクション電流Ifは、電流減算器(第1電流減算器74)に入力される。
例えば、車速信号Vsと付与フリクショントルクVtfの相関関係を示すマップがあらかじめ設定されてECU20(図1参照)に記憶されていれば、フリクション付与制御部53は当該マップを参照して付与フリクショントルクVtfを容易に設定できる。また、付与フリクショントルクVtfと付与フリクション電流Ifの相関関係を示すマップがあらかじめ設定されてECU20に記憶されていれば、フリクション付与制御部53は当該マップを参照して付与フリクショントルクVtfを付与フリクション電流Ifに容易に変換できる。
ダンパ制御部54はダンパ電流Idを設定する。ダンパ電流Idは、操向ハンドル21(図1参照)の収斂性を向上させる。ダンパ制御部54は、ダンパマップ54dを有する。ダンパマップ54dは、回転速度信号Nsと、車速信号Vsと、ダンパ電流Idと、の関係を示すマップである。ダンパ電流Idは、車速信号Vsが大きいほど大きくなり、回転速度信号Nsが大きいほど大きくなる。このようなダンパマップ54dは、あらかじめ設定されて、ECU20(図1参照)の記憶部に記憶されていることが好ましい。
ダンパ制御部54は、電動モータ23(図1参照)の回転速度検出手段から入力される回転速度信号Nsと、車速センサ17(図1参照)から入力される車速信号Vsと、に基づいてダンパマップ54dを参照し、ダンパ電流Idを設定する。設定されたダンパ電流Idは、電流演算器72に入力される。
ハンドル戻し制御部55はハンドル戻し電流Ibを設定する。ハンドル戻し電流Ibは、操向ハンドル21(図1参照)の戻り(切り戻し)特性を向上させる。ハンドル戻し制御部55は、舵角信号θs及び車速信号Vsに基づいてハンドル戻し電流Ibを設定する。ハンドル戻し制御部55は、SAT(セルフアライニングトルク)による操向ハンドル21の戻りの効果を高めるようにハンドル戻し電流Ibを算出する。設定されたハンドル戻し電流Ibは電流減算器(第2電流減算器76)に入力される。
例えば、車速とハンドル操舵角θhとハンドル戻し電流Ibの相関関係を示すマップがあらかじめ設定されてECU20に記憶されていれば、ハンドル戻し制御部55は当該マップを参照してハンドル戻し電流Ibを容易に設定できる。
基本アシスト制御部51は、位相補償部62と、アシスト特性部64と、トルク値減算器66とを備える。
位相補償部62は、トルクセンサ16(図1参照)による操舵トルクの検出と、電動モータ23(図1参照)によるステアリング軸22(図1参照)への補助操舵トルクの付与と、の間の位相を補償する。
位相補償部62は、舵角センサ19(図1参照)から入力される舵角信号θsに基づいて、トルクセンサ16(図1参照)から入力されるトルク信号Tsに対して補償を施す。位相補償部62は、トルク信号Tsに対して補償が施された補償トルク信号Tsp(つまり、トルク信号Tsが補償された補償トルク信号Tsp)を設定する。
位相補償部62はハンドル操舵角θhにもとづいてトルク信号Tsのゲイン(振幅)G[dB]と位相Ph[deg]を補償し、補償トルク信号Tspを設定する。設定された補償トルク信号Tspはトルク値減算器66に入力される。
トルク値減算器66は、位相補償部62で設定される補償トルク信号Tspからフリクション付与制御部53で設定される付与フリクショントルクVtfを減算する。付与フリクショントルクVtfが減算された補償トルク信号Tspはアシスト特性部64に入力される。
アシスト特性部64は、付与フリクショントルクVtfが減算された補償トルク信号Tspと、車速センサ17(図1参照)から入力される車速信号Vsと、に基づいて、アシスト電流Itarの基準となる電流(基準電流Ia)を設定する。
アシスト特性部64は、アシスト電流マップ64aを備える。アシスト電流マップ64aは、補償トルク信号Tspと、車速信号Vsと、基準電流Iaと、の相関関係を示すマップである。アシスト電流マップ64aは、車速信号Vsが高いほど(つまり、車速が高いほど)基準電流Iaが低くなり、補償トルク信号Tspが大きいほど基準電流Iaが高くなるという特性を有する。このようなアシスト電流マップ64aは、あらかじめ設定されて、ECU20(図1参照)の記憶部に記憶されていることが好ましい。
アシスト電流マップ64aに示すように、基準電流Iaは、補償トルク信号Tspの増加に応じて増加し、車速信号Vsの低下(車速の低下)に応じて減少する。
アシスト特性部64で設定された基準電流Iaは電流演算器72に入力される。
電流演算器72は、基本アシスト制御部51で設定される基準電流Iaと、イナーシャ制御部52で設定されるイナーシャ電流Iiと、を加算し、ダンパ制御部54で設定されるダンパ電流Idを減算して第1中間電流Ia1を設定する。電流演算器72で設定される第1中間電流Ia1は第1電流減算器74に入力される。
第1電流減算器74は、電流演算器72で設定される第1中間電流Ia1から、フリクション付与制御部53で設定される付与フリクション電流Ifを減算して、第2中間電流Ia2を設定する。第1電流減算器74で設定される第2中間電流Ia2は第2電流減算器76に入力される。
第2電流減算器76は、第1電流減算器74で設定される第2中間電流Ia2から、ハンドル戻し制御部55で設定されるハンドル戻し電流Ibを減算し、アシスト電流Itarを設定する。
つまり、電動モータ23(図1参照)に供給されるアシスト電流Itarは、次式(1)により設定される。
Itar=Ia(基準電流)+Ii(イナーシャ電流)−Id(ダンパ電流)
−If(付与フリクション電流)−Ib(ハンドル戻し電流)
=Ia1(第1中間電流)−If−Ib
=Ia2(第2中間電流)−Ib ・・・(1)
ECU20(図1参照)は、電動モータ23(図1参照)にアシスト電流Itarが供給されるように、電動モータ23をフィードバック制御する。
トルク値減算器66では、付与フリクショントルクVtf(を示す信号)が補償トルク信号Tspから減算される。また、第1電流減算器74では、付与フリクション電流Ifが第1中間電流Ia1から減算される。これによって、電動パワーステアリング装置1(図1参照)に機械的なフリクションが電気的に付与される。
また、第2電流減算器76では、ハンドル戻し電流Ibが第2中間電流Ia2から減算される。これによって、電動モータ23(図1参照)の回転トルクを舵角信号θsの減少に応じて円滑に減少させることができる。
図3の(a)は位相補償部が有するゲイン補償マップ、(b)は位相補償部が有する位相補償マップである。
図3の(a)に示すゲイン補償マップMPgは、横軸がトルク信号Tsの周波数で縦軸がゲインGを示す。また、図3の(b)に示す位相補償マップMPpは、横軸がトルク信号Tsの周波数で縦軸が位相Phを示す。位相補償マップMPpの位相Phは、プラス(+)側が進み位相を示し、マイナス(−)側が遅れ位相を示す。
基本アシスト制御部51の位相補償部62(図2参照)は、図3の(a)に示すゲイン補償マップMPgと、図3の(b)に示す位相補償マップMPpと、に基づいてトルク信号Tsに対して補償を施し、補償トルク信号Tspを設定する。
図2に示す位相補償部62がトルク信号Tsに補償を施す手順(補償トルク信号Tspを設定する手順)を説明する。位相補償部62は、トルク信号Tsが入力されると、ゲイン補償マップMPgを参照し、例えば、ハンドル操舵角θhが「0」のときのゲインGに「Gmax」を選択する。すると、「Gmax」に対応するハンドル操舵角θh(=0)に応じた位相Ph(例えば、「Phmin」)が選択される。そして、位相補償部62は、ゲインGが「Gmax」で位相Phが「Phmin」の補償トルク信号Tspを設定する(デフォルト設定という)。
なお、デフォルト設定のとき、位相補償部62は、ハンドル操舵角θhが「0」のときのゲインGとして「Gmin」を選択してもよい。この場合、「Gmin」に対応するハンドル操舵角θh(=0)に応じた位相Ph(例えば「Phmax」)が選択される。
図3の(a)に示すGmaxはゲインGの最大値(最大ゲイン)であり、GminはゲインGの最小値(最小ゲイン)である。また、図3の(b)に示すPhmaxは位相Phの遅れの最大値(最大位相遅れ)であり、Phminは位相Phの遅れの最小値(最小位相遅れ)である。
次に、位相補償部62は、舵角センサ19(図1参照)から入力される舵角信号θsに基づいてゲインGと位相Phを補償する。位相補償部62は、ハンドル操舵角θhにもとづいて、図3の(a)に示すゲイン補償マップMPgを参照する。そして位相補償部62は、ハンドル操舵角θhに対応するゲインGを選択する。また、位相補償部62は、ハンドル操舵角θhに基づいて、図3の(b)に示す位相補償マップMPpを参照する。そして位相補償部62は、ハンドル操舵角θhに対応する位相Phを選択する。
位相補償部62は、選択したゲインGと位相Phに基づいて補償トルク信号Tspを設定する。位相補償部62は、このような手順でトルク信号Tsに補償を施して補償トルク信号Tspを設定する。
図3の(a)に示すように、ゲイン補償マップMPgは、ハンドル操舵角θhが大きいほど最小ゲインGmin側になり、ハンドル操舵角θhが小さいほど最大ゲインGmax側になる。したがって、補償トルク信号Tspは、ハンドル操舵角θhが大きいほど小さなゲインGになる。
また、図3の(b)に示すように、位相補償マップMPpは、ハンドル操舵角θhが大きいほど最大位相遅れPhmax側になり、ハンドル操舵角θhが小さいほど最小位相遅れPhmin側になる。したがって、補償トルク信号Tspは、ハンドル操舵角θhが大きいほど、トルク信号Tsに対して位相Phの遅れが大きくなる(小さな進み位相になる)。つまり、位相補償部62は、ハンドル操舵角θhが大きいほど大きな遅れ位相となるようにトルク信号Tsを補償する。
図2に示す位相補償部62で設定された補償トルク信号Tspはトルク値減算器66に入力される。トルク値減算器66は、フリクション付与制御部53で設定された付与フリクショントルクVtfを補償トルク信号Tspから減算する。付与フリクショントルクVtfが減算された補償トルク信号Tspは、アシスト特性部64に入力される。アシスト特性部64は、補償トルク信号Tspにもとづいて前記したように基準電流Iaを設定する。
以上のように、第1実施形態の位相補償部62は、ハンドル操舵角θhが大きいほどゲインGが低く抑えられ、かつ位相Phの遅れが大きくなるようにトルク信号Tsに対して補償を施す(補償トルク信号Tspを設定する)。例えば、ハンドル操舵角θhが大きくアシスト電流Itarが小さい状態でも、トルク信号Tsに対して大きな遅れ位相補償が施される。そして、ECU20(アシスト電流算出部20a)は、位相補償部62によって補償が施されたトルク信号Ts(補償トルク信号Tsp)にもとづいて、電動モータ23(図1参照)に供給するアシスト電流Itarを設定する。これによって、ハンドル操舵角θhが大きい領域での制御安定性が確保される。
《第2実施形態》
図4は、第2実施形態に係るアシスト電流算出部の機能ブロック図である。
図1に示すように、第1実施形態のステアリング機構100には舵角センサ19が備わる。そして、ECU20(アシスト電流算出部20a)は、舵角センサ19から入力される舵角信号θsに基づいて、トルク信号Tsに対して補償を施す。
これに対し、第2実施形態のステアリング機構100には舵角センサ19が備わらない。また、図4に示すように、第2実施形態のアシスト電流算出部20aには舵角推定部50が備わっている。舵角推定部50には、電動モータ23(図1参照)の回転速度検出手段が出力する回転速度信号Nsが入力される。
舵角推定部50は、回転速度信号Nsからハンドル操舵角θhの推定値(舵角推定値θh*)を算出する。
例えば、電動モータ23(図1参照)の回転速度検出手段がレゾルバの場合、回転速度検出手段(レゾルバ)は、回転速度信号Nsとして回転角度信号を出力する。舵角推定部50は回転角度信号に基づいて舵角推定値θh*を算出する。
また、電動モータ23の回転速度検出手段が回転子の角速度を検出する角速度センサの場合、回転速度検出手段(角速度センサ)は、回転速度信号Nsとして角速度信号を出力する。舵角推定部50は角速度信号を積分して回転子の回転角度を算出する。さらに、舵角推定部50は、算出した回転角度に基づいて舵角推定値θh*を算出する。
また、電動モータ23の回転速度検出手段が逆起電圧を検出する電圧計の場合、回転速度検出手段(電圧計)は、回転速度信号Nsとして電圧信号を出力する。舵角推定部50は電圧信号から回転子の角速度を推定する。さらに、舵角推定部50は、推定した角速度を積分して回転角度を算出し、算出した回転角度に基づいて舵角推定値θh*を算出する。
このように、舵角推定部50は、電動モータ23の状態(回転角度、回転子の角速度、発生する逆起電圧等)にもとづいてハンドル操舵角θhを推定する(舵角推定値θh*を算出する)。
舵角推定部50が算出した舵角推定値θh*は位相補償部62に入力される。位相補償部62は、舵角推定部50から入力される舵角推定値θh*に基づいてトルク信号Tsに対して補償を施し、補償トルク信号Tspを設定する。
具体的に、位相補償部62は、図3の(a)に示すゲイン補償マップMPgのハンドル操舵角θhを舵角推定値θh*に置き換え、ゲイン補償マップMPgにもとづいて補償トルク信号TspのゲインGを設定する。また、位相補償部62は、図3の(b)に示す位相補償マップMPpのハンドル操舵角θhを舵角推定値θh*に置き換え、位相補償マップMPpにもとづいて補償トルク信号Tspの位相Phを設定する。つまり、位相補償部62は、舵角推定部50が推定したハンドル操舵角θh(舵角推定値θh*)が大きいほど、トルク信号Tsに対して大きな遅れ位相補償を施す。
また、舵角推定部50が算出した舵角推定値θh*は、ハンドル戻し制御部55に入力される。ハンドル戻し制御部55は、舵角推定値θh*と、車速信号Vsと、に基づいてハンドル戻し電流Ibを設定する。
第2実施形態では、車速と舵角推定値θh*とハンドル戻し電流Ibの相関関係を示すマップがあらかじめ設定されてECU20に記憶されていれば、ハンドル戻し制御部55は当該マップを参照してハンドル戻し電流Ibを容易に設定できる。
以上のように、ステアリング機構100(図1参照)に舵角センサ19(図1参照)が備わらない構成であっても、位相補償部62はトルク信号Tsに対してステアリング機構100の操舵角に応じた補償を施すことができる(補償トルク信号Tspを設定できる)。位相補償部62は、ハンドル操舵角θhの推定値(舵角推定値θh*)が大きいほど、トルク信号Tsに対して大きな遅れ位相補償を施すことができる。このため、第1実施形態と同様に、ステアリング機構100の操舵角が大きい領域での制御安定性が確保される。
また、舵角センサ19を削減することができ、ステアリング機構100のコストダウンが可能になる。
《第3実施形態》
図5は、第3実施形態に係るアシスト電流算出部の機能ブロック図である。
第3実施形態のアシスト電流算出部20aは、図5に示すように、基本アシスト制御部51が設定する基準電流Iaが位相補償部62に入力される(フィードバックされる)。この点で、第3実施形態のアシスト電流算出部20aは、図2に示す第1実施形態のアシスト電流算出部20aと異なる。その他、第3実施形態のアシスト電流算出部20aの構成は、第1実施形態のアシスト電流算出部20aと同じである。
第3実施形態の位相補償部62は、トルク信号Tsに対して補償を施すとき、基準電流Iaの大きさに基づいて位相Phを補償する。
第3実施形態の位相補償部62は、トルク信号Tsの同一の周波数に対して、ハンドル操舵角θhが大きいほど最大位相遅れPhmax(図3の(b)参照)側に位相Phを設定する。さらに、位相補償部62は、ハンドル操舵角θhが同じであれば、基準電流Iaが大きいほど最大位相遅れPhmax側に位相Phを設定する。
これによって、ハンドル操舵角θhが大きく基準電流Iaが大きいほど補償トルク信号Tspの位相Phの遅れが大きくなる(小さな進み位相になる)。また、ハンドル操舵角θhが大きくても基準電流Iaが小さければ、補償トルク信号Tspの位相Phの遅れが小さくなる。また、基準電流Iaが大きいほど、設定されるアシスト電流Itarが大きくなる。つまり、位相補償部62は、設定するアシスト電流Itarが大きいほど、トルク信号Tsに対して大きな遅れ位相補償を施す。
位相補償部62が、このように補償トルク信号Tspを設定することで、トルク信号Tsの位相Phが第1実施形態よりも細かく補償される。特に、基準電流Ia(アシスト電流Itar)が大きい状態での制御安定性が確保される。
《第4実施形態》
第4実施形態のアシスト電流算出部20aは、図5に示す第3実施形態のアシスト電流算出部20aと同じである。
第4実施形態の位相補償部62は、トルク信号Tsに対して補償を施すとき、基本アシスト制御部51が設定した基準電流Ia(の値)をトルク信号Ts(の値)で除算した値(Ia/Ts:以下、アシストゲインGaという)に基づいて位相Phを補償する。
第4実施形態の位相補償部62は、ハンドル操舵角θhが同じ場合、アシストゲインGaが大きいほど最大位相遅れPhmax(図3の(b)参照)側に位相Phを設定する。つまり、第4実施形態の位相補償部62は、アシストゲインGa(Ia/Ts)が大きいほど、トルク信号Tsに対して大きな遅れ位相補償を施す。
これによって、ハンドル操舵角θhが大きくアシストゲインGaが大きいほど補償トルク信号Tspの位相Phの遅れが大きくなる(小さな進み位相になる)。
また、ハンドル操舵角θhが大きくてもアシストゲインGaが小さければ、補償トルク信号Tspの位相Phの遅れが小さくなる。
位相補償部62が、このように補償トルク信号Tspを設定することで、トルク信号Tsの位相Phが第1実施形態よりも細かく補償される。特に、アシストゲインGa(=基準電流Ia/トルク信号Ts)が大きい状態での制御安定性が確保される。
《第5実施形態》
図6の(a)は、可変ギアレシオの機能を有するラックアンドピニオン機構を示す図、(b)は、操舵角とステアリングレシオの関係を示すグラフである。
第5実施形態のラックアンドピニオン機構25は、可変ギアレシオの機能を有する。
なお、第5実施形態では、ハンドル操舵角θhの変化Δθhを、転舵輪2R,2L(図1参照)の転舵角(タイヤ転舵角θt)の変化Δθtで除算した比(Δθh/Δθt)をステアリングレシオSrとする。ECU20は、図示しないラック位置センサ等でタイヤ転舵角θtを検出する。
図6の(a)に示すように、第5実施形態のラックアンドピニオン機構25のラック軸25aにはラック歯250が形成されている。ラック歯250には、ピニオンギア251が噛合する。ピニオンギア251は、ステアリング軸22に形成されている。
図6の(a)に示すように、ラック歯250は、ラック軸25aの軸方向中央部のピッチP1が、軸方向両端部のピッチP2よりも狭く形成されている(P1<P2)。ラック歯250の中央部(ピッチP1が狭い部分)にピニオンギア251が噛合する状態は、ラック歯250の両端部(ピッチP2が広い部分)にピニオンギア251が噛合する状態よりも、ラック軸25aの回転に対するラック軸25aの左右動が緩やかになる。
このように、第5実施形態のラックアンドピニオン機構25は、操向ハンドル21(図1参照)と、転舵輪2R,2L(図1参照)の間のギア比(ピニオンギア251とラック歯250のギア比)がハンドル操舵角θhに応じて変化し、可変ギアレシオの機能を備える。
ラック歯250のピッチP1が狭い中央部をスロー域SL、ラック歯250のピッチP2が広い両端部をクイック域Quと称する。
そして、ハンドル操舵角θhが小さいとき、ピニオンギア251は、ラック歯250のスロー域SLに噛合する。ラック歯250のスロー域SLにピニオンギア251が噛合すると、ハンドル操舵角θhの変化Δθhに対するタイヤ転舵角θtの変化Δθtが小さくなる。したがって、ステアリングレシオSr(=Δθh/Δθt)が大きくなる。
また、ハンドル操舵角θhが大きいとき、ピニオンギア251は、ラック歯250のクイック域Quに噛合する。ラック歯250のクイック域Quにピニオンギア251が噛合すると、ハンドル操舵角θhの変化Δθhに対するタイヤ転舵角θtの変化Δθtが大きくなる。したがって、ステアリングレシオSr(=Δθh/Δθt)が小さくなる。
図6の(b)に示すように、ハンドル操舵角θhが、0を中心とする所定の範囲内にあるとき、ピニオンギア251がラック歯250のスロー域SLに噛合してステアリングレシオSrが大きくなる。それよりもハンドル操舵角θhが大きくなると、ピニオンギア251がラック歯250のクイック域Quに噛合してステアリングレシオSrが小さくなる。このように、第5実施形態のラックアンドピニオン機構25は、ハンドル操舵角θhの変化に応じてステアリングレシオSrが変化する。
図3の(b)に示すように、ハンドル操舵角θhが小さいほど位相Phが最小位相遅れPhmin側になって、トルク信号Tsに対する補償トルク信号Tspの位相Phの遅れが小さくなる。つまり、ステアリングレシオSrが大きい領域(スロー域SL)では、トルク信号Tsに対して小さな遅れ位相補償が施される。また、ステアリングレシオが小さい領域(クイック域Qu)では、トルク信号Tsに対して大きな遅れ位相補償が施される。
このような位相補償部62(図3参照)の動作によって、ハンドル操舵角θhが大きいクイック域Qu(ステアリングレシオSrが小さい領域)では、トルク信号Tsに対して大きな遅れ位相補償が施されて制御安定性が確保される。また、ハンドル操舵角θhが小さいスロー域SL(ステアリングレシオSrが大きい領域)では、トルク信号Tsに対して小さな遅れ位相補償が施されて良好な操舵フィーリングが確保される。
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更(変形)が可能である。
例えば、図2に示すイナーシャ制御部52は、イナーシャ特性部70が有するイナーシャマップ70iにもとづいてイナーシャ電流Iiを設定する。この構成に限定されず、トルク信号Tsの微分値dTs/dtとイナーシャ電流Iiの関係を示す関数を用いてイナーシャ制御部52がイナーシャ電流Iiを設定する構成であってもよい。
また、図2に示すダンパ制御部54は、ダンパマップ54dにもとづいてダンパ電流Idを設定する。この構成に限定されず、回転速度信号Nsと、車速信号Vsと、ダンパ電流Idと、の関係を示す関数を用いてダンパ制御部54がダンパ電流Idを設定する構成であってもよい。
同様に、車速とハンドル操舵角θhとハンドル戻し電流Ibの関係を示す関数を用いてハンドル戻し制御部55がハンドル戻し電流Ibを設定する構成であってもよい。
また、本発明は、コラムアシストEPS、ピニオンアシストEPS,同軸EPSなど、各種形態のEPSに適用可能である。
1 電動パワーステアリング装置
2R,2L 転舵輪
16 トルクセンサ
19 舵角センサ
20 ECU(制御部)
20a アシスト電流算出部
21 操向ハンドル(操作部材)
23 電動モータ(電動機)
50 舵角推定部
62 位相補償部
100 ステアリング機構

Claims (5)

  1. 操作部材に加えられた操舵トルクに応じて電動機を制御し、この電動機が発生する駆動力をステアリング機構に伝達して操舵を補助するとともに、前記ステアリング機構の操舵角の増大にともなってステアリングレシオが低下する電動パワーステアリング装置において、
    前記操舵トルクを検出するトルクセンサと、
    前記ステアリング機構の前記操舵角を検出する舵角センサと、
    前記トルクセンサから出力されるトルク信号に対して位相補償を施す位相補償部と、
    前記位相補償部で位相補償が施された後のトルク信号に基づいて前記電動機に供給するアシスト電流を決定するアシスト電流算出部と、を備え、
    前記位相補償部は、前記操舵角が大きいほど、前記トルクセンサから出力されるトルク信号に対して大きな遅れ位相補償を施すことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 操作部材に加えられた操舵トルクに応じて電動機を制御し、この電動機が発生する駆動力をステアリング機構に伝達して操舵を補助するとともに、前記ステアリング機構の操舵角の増大にともなってステアリングレシオが低下する電動パワーステアリング装置において、
    前記操舵トルクを検出するトルクセンサと、
    前記電動機の状態にもとづいて前記ステアリング機構の前記操舵角を推定する舵角推定部と、
    前記トルクセンサから出力されるトルク信号に対して位相補償を施す位相補償部と、
    前記位相補償部で位相補償が施された後のトルク信号に基づいて前記電動機に供給するアシスト電流を決定するアシスト電流算出部と、を備え、
    前記位相補償部は、前記舵角推定部が推定する操舵角が大きいほど、前記トルクセンサから出力されるトルク信号に対して大きな遅れ位相補償を施すことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  3. 前記位相補償部は、前記トルク信号に対して、前記アシスト電流算出部で決定された前記アシスト電流が大きいほど大きな遅れ位相補償を施すことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
  4. 前記位相補償部は、前記トルク信号に対して、前記アシスト電流の値を前記操舵トルクの値で除算した値が大きいほど大きな遅れ位相補償を施すことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
  5. 前記ステアリング機構に備わって前記操作部材の操舵に応じて転舵する転舵輪と、前記操作部材と、の間のギア比である前記ステアリングレシオが、前記操舵角の増大にともなって低下する可変ギアレシオの機能が備わっていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
JP2014058539A 2014-03-20 2014-03-20 電動パワーステアリング装置 Active JP6131208B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014058539A JP6131208B2 (ja) 2014-03-20 2014-03-20 電動パワーステアリング装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014058539A JP6131208B2 (ja) 2014-03-20 2014-03-20 電動パワーステアリング装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015182493A JP2015182493A (ja) 2015-10-22
JP6131208B2 true JP6131208B2 (ja) 2017-05-17

Family

ID=54349558

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014058539A Active JP6131208B2 (ja) 2014-03-20 2014-03-20 電動パワーステアリング装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6131208B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE112020003777T5 (de) 2019-08-09 2022-06-30 Nidec Corporation Elektrischer servolenkapparat, steuervorrichtung, die in einem elektrischen servolenkapparat verwendet wird, und steuerverfahren

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6736028B2 (ja) * 2016-07-20 2020-08-05 日本精工株式会社 電動パワーステアリング装置の制御装置
JP7091995B2 (ja) 2018-10-30 2022-06-28 トヨタ自動車株式会社 ステアリングシステム
CN111216788B (zh) * 2020-02-21 2023-01-06 株洲易力达机电有限公司 一种电动助力转向模糊回正方法

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3901928B2 (ja) * 2000-09-28 2007-04-04 株式会社ジェイテクト 電動パワーステアリング装置の制御装置
JP3974391B2 (ja) * 2001-12-07 2007-09-12 日本精工株式会社 電動パワーステアリング装置の制御装置
JP5480196B2 (ja) * 2011-04-26 2014-04-23 本田技研工業株式会社 電動パワーステアリング装置

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE112020003777T5 (de) 2019-08-09 2022-06-30 Nidec Corporation Elektrischer servolenkapparat, steuervorrichtung, die in einem elektrischen servolenkapparat verwendet wird, und steuerverfahren

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015182493A (ja) 2015-10-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6030459B2 (ja) 車両の操舵制御装置
US10099722B2 (en) Steering control apparatus
JP5575919B2 (ja) 電動パワーステアリング装置
JP7173036B2 (ja) 操舵制御装置
JP5126357B2 (ja) 車両の操舵装置
EP2050655B1 (en) Electric power steering system
JP5139688B2 (ja) 車両用操舵装置
US9610973B2 (en) Motor-driven power steering apparatus
US8798862B2 (en) Electric power steering device
JP7099892B2 (ja) 操舵制御装置
JP4883345B2 (ja) 電動パワーステアリング装置
JP6716782B2 (ja) パワーステアリング装置
JP5494628B2 (ja) 電動パワーステアリング制御装置
US8573352B2 (en) Electric power steering apparatus
JP6740647B2 (ja) 操舵制御装置
JP6812806B2 (ja) ステアバイワイヤ式操舵装置
JP6131208B2 (ja) 電動パワーステアリング装置
JP2017065606A (ja) 電動パワーステアリング装置
JP4094597B2 (ja) 操舵装置
JP5155815B2 (ja) 電動パワーステアリング装置
JP4628829B2 (ja) 操舵装置
JP2011025829A (ja) パワーステアリング装置
JP5939425B2 (ja) 車両用操舵制御装置
KR101172098B1 (ko) 능동조향장치의 반력저감을 위한 전동식 파워스티어링시스템
JP6279367B2 (ja) パワーステアリング装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160226

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20160620

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20161130

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170110

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170313

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170404

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170417

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6131208

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150