JP7322461B2 - 操舵制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、操舵制御装置に関する。
従来、車両用の操舵装置として、モータを駆動源として運転者による操舵を補助するためのアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置(EPS)が広く採用されている。こうしたEPSを制御対象とする操舵制御装置では、例えば特許文献1に記載されるように、操舵フィーリングの向上等を図るべく、センサにより検出される車両や操舵装置の状態を示す検出値を目標値に追従させる種々のフィードバック演算を行ってモータの作動を制御している。
また、近年では、車両用の操舵装置として、運転者により操舵される操舵部と運転者の操舵に応じて転舵輪を転舵させる転舵部との間の動力伝達が分離されたステアバイワイヤ(SBW)式の操舵装置の開発が進められている。こうしたSBW式の操舵装置を制御対象とする操舵制御装置でも、例えば特許文献2に記載されるように、操舵フィーリングや転舵輪の転舵特性の向上等を図るべく、種々のフィードバック演算を行ってモータの作動を制御している。
特開2018-95198号公報 特開2017-165219号公報
ところで、近年、様々な走行状況において、運転者の違和感をより一層低減できるようにモータの作動を制御することが求められているが、上記従来の構成では要求される水準に達しているとは言い切れないのが実情である。そのため、運転者の違和感をより一層低減できる新たな技術の創出が求められていた。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、運転者の違和感を低減できる操舵制御装置を提供することにある。
上記課題を解決する操舵制御装置は、モータを駆動源とするアクチュエータから付与されるモータトルクによりステアリングホイールの操舵に必要な操舵トルクを可変とする操舵装置を制御対象とし、前記モータの作動を制御するためのモータ制御信号を出力する制御部と、前記モータ制御信号に基づいて前記モータに駆動電力を供給する駆動回路とを備えたものにおいて、前記制御部は、各種のセンサにより検出される検出値を目標値に追従させるフィードバック演算を含んで前記モータ制御信号を生成するものであって、前記操舵装置の転舵輪から該転舵輪が連結される転舵軸に作用する複数種の軸力を互いに異なる状態量に基づいて演算する複数の軸力演算部と、前記複数種の軸力に基づいてグリップ状態量を演算するグリップ状態量演算部とを備え、前記制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記フィードバック演算に用いる制御ゲインを調整する。
ここで、運転者の操舵状態や車両が走行する路面状態に応じて、転舵輪の路面に対するグリップ状態が変化する。そして、このようにグリップ状態が変化する際に運転者が違和感を覚え易いため、同グリップ状態に基づいてモータが出力するモータトルクを変化することが好ましい。この点、上記構成によれば、グリップ状態量に基づいて調整された制御ゲインを用いてフィードバック演算を行うことにより、モータの作動を制御してステアリング操作に必要な操舵トルクを変更する。そのため、グリップ状態に応じた適切な操舵フィーリングの実現を通じて、運転者の違和感を低減できる。
上記操舵制御装置において、前記操舵装置は、操舵部と、前記操舵部に入力される操舵に応じて転舵輪を転舵させる転舵部との間の動力伝達が分離した構造を有するものであり、前記モータは、前記操舵部に入力される操舵に抗する力である操舵反力として前記モータトルクを付与する操舵側モータであって、前記制御部は、前記操舵反力の目標値となる目標反力トルクを演算する目標反力トルク演算部と、前記目標反力トルクに基づいて前記モータ制御信号である操舵側モータ制御信号を演算する操舵側モータ制御信号演算部とを備え、前記目標反力トルク演算部は、前記操舵部に入力すべき前記操舵トルクの目標値となる目標操舵トルクを演算する目標操舵トルク演算部と、前記フィードバック演算として前記検出値である前記操舵トルクを前記目標操舵トルクに追従させるトルクフィードバック演算を実行することにより、トルクフィードバック成分を演算するトルクフィードバック制御部とを備え、前記トルクフィードバック成分に基づいて前記目標反力トルクを演算するものであり、前記トルクフィードバック制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記トルクフィードバック演算に用いる制御ゲインを調整することが好ましい。
上記構成によれば、グリップ状態量に応じてトルクフィードバック演算に係る制御ゲインが調整され、同制御ゲインが反映されたトルクフィードバック成分に基づいて目標反力トルクが演算される。そのため、運転者が入力すべき操舵トルクの目標操舵トルクに対する追従性がグリップ状態に応じたものとなるように、操舵反力としてモータトルクが付与される。これにより、操舵トルクの目標操舵トルクに対する追従性をグリップ状態に応じて最適化するような操舵反力を付与でき、操舵フィーリングの向上を通じて運転者の違和感を低減できる。
上記操舵制御装置において、前記操舵装置は、操舵部と、前記操舵部に入力される操舵に応じて転舵輪を転舵させる転舵部との間の動力伝達が分離した構造を有するものであり、前記モータは、前記操舵部に入力される操舵に抗する力である操舵反力として前記モータトルクを付与する操舵側モータであって、前記制御部は、前記操舵反力の目標値となる目標反力トルクを演算する目標反力トルク演算部と、前記目標反力トルクに基づいて前記モータ制御信号である操舵側モータ制御信号を演算する操舵側モータ制御信号演算部とを備え、前記目標反力トルク演算部は、前記操舵部に連結される前記ステアリングホイールの操舵角の目標値となる目標操舵角を演算する目標操舵角演算部と、前記フィードバック演算として前記検出値である前記操舵角を前記目標操舵角に追従させる操舵角フィードバック演算を実行することにより、操舵角フィードバック成分を演算する操舵角フィードバック制御部とを備え、前記操舵角フィードバック成分に基づいて前記目標反力トルクを演算するものであり、前記操舵角フィードバック制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記操舵角フィードバック演算に用いる制御ゲインを調整することが好ましい。
上記構成によれば、グリップ状態量に応じて操舵角フィードバック演算に係る制御ゲインが調整され、同制御ゲインが反映された操舵角フィードバック成分に基づいて目標反力トルクが演算される。そのため、操舵角の目標操舵角に対する追従性がグリップ状態に応じたものとなるように、操舵反力としてモータトルクが付与される。これにより、操舵角の目標操舵角に対する追従性をグリップ状態に応じて最適化するような操舵反力を付与でき、操舵フィーリングの向上を通じて運転者の違和感を低減できる。
上記操舵制御装置において、前記操舵装置は、操舵部と、前記操舵部に入力される操舵に応じて転舵輪を転舵させる転舵部との間の動力伝達が分離した構造を有するものであり、前記モータは、前記操舵部に入力される操舵に抗する力である操舵反力として前記モータトルクを付与する操舵側モータであって、前記制御部は、前記操舵反力の目標値となる目標反力トルクを演算する目標反力トルク演算部と、前記目標反力トルクに基づいて前記モータ制御信号である操舵側モータ制御信号を演算する操舵側モータ制御信号演算部とを備え、前記操舵側モータ制御信号演算部は、前記目標反力トルクに応じた目標電流値を演算する目標電流値演算部と、前記フィードバック演算として前記検出値である前記操舵側モータに供給される実電流値を前記目標電流値に追従させる電流フィードバック演算を実行することにより、電流フィードバック成分を演算する電流フィードバック制御部とを備え、前記電流フィードバック成分に基づいて前記操舵側モータ制御信号を演算するものであり、前記電流フィードバック制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記電流フィードバック演算に用いる制御ゲインを調整することが好ましい。
上記構成によれば、グリップ状態量に応じて電流フィードバック演算に係る制御ゲインが調整され、同制御ゲインが反映された電流フィードバック成分に基づいて操舵側モータ制御信号が演算される。そのため、操舵側モータに供給される実電流値の目標電流値に対する追従性、すなわち操舵側モータの応答性がグリップ状態に応じたものとなる。これにより、操舵側モータの応答性をグリップ状態に応じて最適化でき、操舵フィーリングの向上を通じて運転者の違和感を低減できる。
上記課題を解決する操舵制御装置は、モータを駆動源とするアクチュエータから付与されるモータトルクにより転舵輪が連結される転舵軸を往復動させる操舵装置を制御対象とし、前記モータの作動を制御するためのモータ制御信号を出力する制御部と、前記モータ制御信号に基づいて前記モータに駆動電力を供給する駆動回路とを備えたものにおいて、前記制御部は、各種のセンサにより検出される検出値を目標値に追従させるフィードバック演算を含んで前記モータ制御信号を生成するものであって、前記転舵輪から該転舵輪が連結される転舵軸に作用する複数種の軸力を互いに異なる状態量に基づいて演算する複数の軸力演算部と、前記複数種の軸力に基づいてグリップ状態量を演算するグリップ状態量演算部とを備え、前記制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記フィードバック演算に用いる制御ゲインを調整する。
ここで、運転者の操舵状態や車両が走行する路面状態に応じて、転舵輪の路面に対するグリップ状態が変化する。そして、このようにグリップ状態が変化する際に運転者が違和感を覚え易いため、同グリップ状態に基づいてモータが出力するモータトルクを変化することが好ましい。この点、上記構成によれば、グリップ状態量に基づいて調整された制御ゲインを用いてフィードバック演算を行うことにより、モータの作動を制御して転舵輪を転舵させる。そのため、グリップ状態に応じた適切な転舵輪の転舵速度等の転舵特性の実現を通じて、運転者の違和感を低減できる。
上記操舵制御装置において、前記操舵装置は、操舵部と、前記操舵部に入力される操舵に応じて転舵輪を転舵させる転舵部との間の動力伝達が分離した構造を有するものであり、前記モータは、前記転舵輪を転舵させる力である転舵力として前記モータトルクを付与する転舵側モータであって、前記制御部は、前記転舵力の目標値となる目標転舵トルクを演算する目標転舵トルク演算部と、前記目標転舵トルクに基づいて前記モータ制御信号である転舵側モータ制御信号を演算する転舵側モータ制御信号演算部とを備え、前記目標転舵トルク演算部は、前記転舵輪の転舵角に換算可能な回転軸の回転角である転舵対応角を、該転舵対応角の目標値となる目標転舵対応角に追従させる転舵角フィードバック演算を実行することにより、転舵角フィードバック成分を演算する転舵角フィードバック制御部を備え、前記転舵角フィードバック成分に基づいて前記目標転舵トルクを演算するものであり、前記転舵角フィードバック制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記転舵角フィードバック演算に用いる制御ゲインを調整することが好ましい。
上記構成によれば、グリップ状態量に応じて転舵角フィードバック演算に係る制御ゲインが調整され、同制御ゲインが反映された転舵角フィードバック成分に基づいて目標転舵トルクが演算される。そのため、転舵対応角の目標転舵対応角に対する追従性がグリップ状態に応じたものとなるように、転舵力としてモータトルクが付与される。これにより、転舵対応角の目標転舵対応角に対する追従性をグリップ状態に応じて最適化するような転舵力を付与でき、転舵特性の向上を通じて運転者の違和感を低減できる。
上記操舵制御装置において、前記操舵装置は、操舵部と、前記操舵部に入力される操舵に応じて転舵輪を転舵させる転舵部との間の動力伝達が分離した構造を有するものであり、前記モータは、前記転舵輪を転舵させる力である転舵力として前記モータトルクを付与する転舵側モータであって、前記制御部は、前記転舵力の目標値となる目標転舵トルクを演算する目標転舵トルク演算部と、前記目標転舵トルクに基づいて前記モータ制御信号である転舵側モータ制御信号を演算する転舵側モータ制御信号演算部とを備え、前記転舵側モータ制御信号演算部は、前記目標転舵トルクに応じた目標電流値を演算する目標電流値演算部と、前記フィードバック演算として前記検出値である前記転舵側モータに供給される実電流値を前記目標電流値に追従させる電流フィードバック演算を実行することにより、電流フィードバック成分を演算する電流フィードバック制御部とを備え、前記電流フィードバック成分に基づいて前記転舵側モータ制御信号を演算するものであり、前記電流フィードバック制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記電流フィードバック演算に用いる制御ゲインを調整することが好ましい。
上記構成によれば、グリップ状態量に応じて電流フィードバック演算に係る制御ゲインが調整され、同制御ゲインが反映された電流フィードバック成分に基づいて転舵側モータ制御信号が演算される。そのため、転舵側モータに供給される実電流値の目標電流値に対する追従性、すなわち転舵側モータの応答性がグリップ状態に応じたものとなる。これにより、転舵側モータの応答性をグリップ状態に応じて最適化でき、転舵特性の向上を通じて運転者の違和感を低減できる。
上記操舵制御装置において、前記操舵装置は、ステアリングホイールの操作に基づいて転舵輪を転舵させる操舵機構を有するものであり、前記モータは、ステアリング操作を補助するためのアシスト力として前記モータトルクを付与するアシストモータであって、前記制御部は、前記アシスト力の目標値となる目標アシストトルクを演算する目標アシストトルク演算部と、前記目標アシストトルクに基づいて前記モータ制御信号を演算するモータ制御信号演算部とを備え、前記目標アシストトルク演算部は、前記操舵機構に入力すべき前記操舵トルクの目標値となる目標操舵トルクを演算する目標操舵トルク演算部と、前記フィードバック演算として前記検出値である前記操舵トルクを前記目標操舵トルクに追従させるトルクフィードバック演算を実行することにより、トルクフィードバック成分を演算するトルクフィードバック制御部とを備え、前記トルクフィードバック成分に基づいて前記目標アシストトルクを演算するものであり、前記トルクフィードバック制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記トルクフィードバック演算に用いる制御ゲインを調整することが好ましい。
上記構成によれば、グリップ状態量に応じてトルクフィードバック演算に係る制御ゲインが調整され、同制御ゲインが反映されたトルクフィードバック成分に基づいて目標アシストトルクが演算される。そのため、運転者が入力すべき操舵トルクの目標操舵トルクに対する追従性がグリップ状態に応じたものとなるように、アシスト力としてモータトルクが付与される。これにより、操舵トルクの目標操舵トルクに対する追従性をグリップ状態に応じて最適化するようなアシスト力を付与でき、操舵フィーリングの向上を通じて運転者の違和感を低減できる。
上記操舵制御装置において、前記操舵装置は、ステアリングホイールの操作に基づいて転舵輪を転舵させる操舵機構を有するものであり、前記モータは、ステアリング操作を補助するためのアシスト力として前記モータトルクを付与するアシストモータであって、前記制御部は、前記アシスト力の目標値となる目標アシストトルクを演算する目標アシストトルク演算部と、前記目標アシストトルクに基づいて前記モータ制御信号を演算するモータ制御信号演算部とを備え、前記目標アシストトルク演算部は、前記転舵輪の転舵角に換算可能な回転軸の回転角である転舵対応角の目標値となる目標転舵対応角を演算する目標転舵対応角演算部と、前記フィードバック演算として前記検出値である前記転舵対応角を前記目標転舵対応角に追従させる転舵角フィードバック演算を実行することにより、転舵角フィードバック成分を演算する転舵角フィードバック制御部とを備え、前記転舵角フィードバック成分に基づいて前記目標アシストトルクを演算するものであり、前記転舵角フィードバック制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記転舵角フィードバック演算に用いる制御ゲインを調整することが好ましい。
上記構成によれば、グリップ状態量に応じて転舵角フィードバック演算に係る制御ゲインが調整され、同制御ゲインが反映された転舵角フィードバック成分に基づいて目標アシストトルクが演算される。そのため、転舵対応角の目標転舵対応角に対する追従性がグリップ状態に応じたものとなるように、アシスト力としてモータトルクが付与される。これにより、転舵対応角の目標転舵対応角に対する追従性をグリップ状態に応じて最適化するようなアシスト力を付与でき、転舵特性の向上を通じて運転者の違和感を低減できる。
上記操舵制御装置において、前記操舵装置は、ステアリングホイールの操作に基づいて転舵輪を転舵させる操舵機構を有するものであり、前記モータは、ステアリング操作を補助するためのアシスト力として前記モータトルクを付与するアシストモータであって、前記制御部は、前記アシスト力の目標値となる目標アシストトルクを演算する目標アシストトルク演算部と、前記目標アシストトルクに基づいて前記モータ制御信号を演算するモータ制御信号演算部とを備え、前記モータ制御信号演算部は、前記目標アシストトルクに応じた目標電流値を演算する目標電流値演算部と、前記フィードバック演算として前記検出値である前記アシストモータに供給される実電流値を前記目標電流値に追従させる電流フィードバック演算を実行することにより、電流フィードバック成分を演算する電流フィードバック制御部とを備え、前記電流フィードバック成分に基づいて前記操舵側モータ制御信号を演算するものであり、前記電流フィードバック制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記電流フィードバック演算に用いる制御ゲインを調整することが好ましい。
上記構成によれば、グリップ状態量に応じて電流フィードバック演算に係る制御ゲインが調整され、同制御ゲインが反映された電流フィードバック成分に基づいてモータ制御信号が演算される。そのため、アシストモータに供給される実電流値の目標電流値に対する追従性、すなわちアシストモータの応答性がグリップ状態に応じたものとなる。これにより、アシストモータの応答性をグリップ状態に応じて最適化でき、操舵フィーリング及び転舵特性の向上を通じて運転者の違和感を低減できる。
上記操舵制御装置において、前記グリップ状態量が、前記転舵輪のグリップ状態が限界領域であることを示す場合には、前記転舵輪のグリップ状態が通常領域であることを示す場合よりも、前記制御ゲインを大きくすることが好ましい。
上記構成によれば、転舵輪のグリップ状態が悪化した場合に制御ゲインが大きくなるため、検出値の目標値に対する追従性が高くなり、グリップ状態に応じて好適に運転者の違和感を低減できる。
本発明によれば、運転者の違和感を低減できる。
第1実施形態の操舵装置の概略構成図。 第1実施形態の操舵制御装置のブロック図。 第1実施形態の目標反力トルク演算部のブロック図。 着力点に作用する横力、セルフアライニングトルク、及びニューマチックトレールの関係を示す模式図。 スリップ角の変化に対する角度軸力、横力、セルフアライニングトルク、及びニューマチックトレールの変化を示すグラフ。 第1実施形態の操舵側モータ制御信号演算部のブロック図。 第1実施形態の転舵側モータ制御信号演算部のブロック図。 第1実施形態のトルクフィードバック制御部のブロック図。 第1実施形態のトルクフィードバック比例成分演算部のブロック図。 第1実施形態のトルクフィードバック積分成分演算部のブロック図。 第1実施形態のトルクフィードバック微分成分演算部のブロック図。 第1実施形態のトルクダンピング成分演算部のブロック図。 第1実施形態の操舵角フィードバック制御部のブロック図。 第1実施形態のd軸電流フィードバック制御部のブロック図。 操舵角と操舵トルクとの関係の一例を示すグラフ。 横加速度と理想的な操舵フィーリングを実現する操舵トルクとの関係の一例を示すグラフ。 路面からラック軸に作用する軸力と目標操舵トルクとの関係の一例を示すグラフ。 限界領域近傍での操舵角と操舵トルクとの関係の一例を示すグラフ。 限界領域近傍での操舵角と操舵トルクとの関係の一例を示すグラフ。 第2実施形態の操舵装置の概略構成図。 第2実施形態の操舵制御装置のブロック図。
(第1実施形態)
以下、操舵制御装置の第1実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の操舵制御装置1の制御対象となる操舵装置2はステアバイワイヤ式の操舵装置として構成されている。操舵装置2は、ステアリングホイール3を介して運転者により操舵される操舵部4と、運転者による操舵部4の操舵に応じて転舵輪5を転舵させる転舵部6とを備えている。
操舵部4は、ステアリングホイール3が固定されるステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11を介してステアリングホイール3に操舵に抗する力である操舵反力を付与する操舵側アクチュエータ12とを備えている。操舵側アクチュエータ12は、駆動源となる操舵側モータ13と、操舵側モータ13の回転を減速してステアリングシャフト11に伝達する操舵側減速機14とを備えている。つまり、操舵側モータ13は、そのモータトルクを操舵反力として付与する。なお、本実施形態の操舵側モータ13には、例えば三相のブラシレスモータが採用されている。
転舵部6は、ピニオン軸21と、ピニオン軸21に連結された転舵軸としてのラック軸22と、ラック軸22を往復動可能に収容するラックハウジング23と、ピニオン軸21及びラック軸22からなるラックアンドピニオン機構24とを備えている。ピニオン軸21とラック軸22とは、所定の交差角をもって配置されており、ラックアンドピニオン機構24は、ピニオン軸21に形成されたピニオン歯21aとラック軸22に形成されたラック歯22aとを噛合することにより構成されている。つまり、ピニオン軸21は、転舵輪5の転舵角に換算可能な回転軸に相当する。ラック軸22の両端には、ボールジョイントからなるラックエンド25を介してタイロッド26が連結されており、タイロッド26の先端は、それぞれ左右の転舵輪5が組み付けられた図示しないナックルに連結されている。
また、転舵部6は、ラック軸22に転舵輪5を転舵させる転舵力を付与する転舵側アクチュエータ31を備えている。転舵側アクチュエータ31は、駆動源となる転舵側モータ32と、伝達機構33と、変換機構34とを備えている。そして、転舵側アクチュエータ31は、転舵側モータ32の回転を伝達機構33を介して変換機構34に伝達し、変換機構34にてラック軸22の往復動に変換することで転舵部6に転舵力を付与する。つまり、転舵側モータ32は、そのモータトルクを転舵力として付与する。なお、本実施形態の転舵側モータ32には、例えば三相のブラシレスモータが採用され、伝達機構33には、例えばベルト機構が採用され、変換機構34には、例えばボールネジ機構が採用されている。
このように構成された操舵装置2では、運転者によるステアリング操作に応じて転舵側アクチュエータ31からラック軸22にモータトルクが転舵力として付与されることで、転舵輪5の転舵角が変更される。このとき、操舵側アクチュエータ12からは、運転者の操舵に抗する操舵反力がステアリングホイール3に付与される。つまり、操舵装置2では、操舵側アクチュエータ12から付与されるモータトルクである操舵反力により、ステアリングホイール3の操舵に必要な操舵トルクThが変更される。
次に、本実施形態の電気的構成について説明する。
操舵制御装置1は、操舵側モータ13及び転舵側モータ32に接続されており、これらの作動を制御する。なお、操舵制御装置1は、図示しない中央処理装置(CPU)やメモリを備えており、所定の演算周期ごとにメモリに記憶されたプログラムをCPUが実行する。これにより、各種の制御が実行される。
操舵制御装置1には、車両の車速SPを検出する車速センサ41、及びステアリングシャフト11に付与された検出値としての操舵トルクThを検出するトルクセンサ42が接続されている。なお、トルクセンサ42は、ステアリングシャフト11における操舵側減速機14との連結部分よりもステアリングホイール3側に設けられており、トーションバー43の捩れに基づいて操舵トルクThを検出する。また、操舵制御装置1には、操舵部4の操舵量を示す検出値として操舵側モータ13の回転角θsを360°の範囲内の相対角で検出する操舵側回転センサ44、及び転舵部6の転舵量を示す検出値として転舵側モータ32の回転角θtを相対角で検出する転舵側回転センサ45が接続されている。なお、上記操舵トルクTh及び回転角θs,θtは、例えば右方向に操舵した場合に正の値、左方向に操舵した場合に負の値として検出する。また、操舵制御装置1には、車両のヨーレートγを検出するヨーレートセンサ46、及び車両の横加速度LAを検出する横加速度センサ47が接続されている。そして、操舵制御装置1は、これらの各種状態量に基づいて操舵側モータ13及び転舵側モータ32の作動を制御する。
以下、操舵制御装置1の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、操舵制御装置1は、モータ制御信号としての操舵側モータ制御信号Msを出力する制御部としての操舵側制御部51と、操舵側モータ制御信号Msに基づいて操舵側モータ13に駆動電力を供給する駆動回路としての操舵側駆動回路52とを備えている。操舵側制御部51には、操舵側駆動回路52と操舵側モータ13の各相のモータコイルとの間の接続線53を流れる検出値としての操舵側モータ13の各相電流値Ius,Ivs,Iwsを検出する電流センサ54が接続されている。なお、図2では、説明の便宜上、各相の接続線53及び各相の電流センサ54をそれぞれ1つにまとめて図示している。
また、操舵制御装置1は、モータ制御信号としての転舵側モータ制御信号Mtを出力する制御部としての転舵側制御部56と、転舵側モータ制御信号Mtに基づいて転舵側モータ32に駆動電力を供給する駆動回路としての転舵側駆動回路57とを備えている。転舵側制御部56には、転舵側駆動回路57と転舵側モータ32の各相のモータコイルとの間の接続線58を流れる検出値としての転舵側モータ32の各相電流値Iut,Ivt,Iwtを検出する電流センサ59が接続されている。なお、図2では、説明の便宜上、各相の接続線58及び各相の電流センサ59をそれぞれ1つにまとめて図示している。本実施形態の操舵側駆動回路52及び転舵側駆動回路57には、例えばFET等の複数のスイッチング素子を有する周知のPWMインバータがそれぞれ採用されている。また、操舵側モータ制御信号Ms及び転舵側モータ制御信号Mtは、それぞれ各スイッチング素子のオンオフ状態を規定するゲートオンオフ信号となっている。
そして、操舵側制御部51及び転舵側制御部56は、操舵側モータ制御信号Ms及び転舵側モータ制御信号Mtを操舵側駆動回路52及び転舵側駆動回路57に出力することにより、車載電源Bから操舵側モータ13及び転舵側モータ32に駆動電力をそれぞれ供給する。これにより、操舵側制御部51及び転舵側制御部56は、操舵側モータ13及び転舵側モータ32の作動を制御する。
先ず、操舵側制御部51の構成について説明する。
操舵側制御部51は、所定の演算周期毎に以下の各制御ブロックに示される各演算処理を実行して、操舵側モータ制御信号Msを生成する。操舵側制御部51には、上記車速SP、操舵トルクTh、回転角θs、ヨーレートγ、横加速度LA、各相電流値Ius,Ivs,Iws及び転舵側モータ32の駆動電流であるq軸電流値Iqtが入力される。そして、操舵側制御部51は、これら各状態量に基づいて操舵側モータ制御信号Msを生成して出力する。
詳しくは、操舵側制御部51は、回転角θsに基づいて検出値としてのステアリングホイール3の操舵角θhを演算する操舵角演算部61と、操舵反力の目標値となる目標反力トルクTs*を演算する目標反力トルク演算部62と、操舵側モータ制御信号Msを演算する操舵側モータ制御信号演算部63とを備えている。
操舵角演算部61には、操舵側モータ13の回転角θsが入力される。操舵角演算部61は、回転角θsを、例えばステアリング中立位置からの操舵側モータ13の回転数をカウントすることにより、360°を超える範囲を含む絶対角に換算して取得する。そして、操舵角演算部61は、絶対角に換算された回転角に操舵側減速機14の回転速度比に基づく換算係数を乗算することで、操舵角θhを演算する。このように演算された操舵角θhは、目標反力トルク演算部62に出力される。
目標反力トルク演算部62には、車速SP、操舵トルクTh、ヨーレートγ及び横加速度LA、操舵角θh及びq軸電流値Iqtが入力される。目標反力トルク演算部62は、後述するようにこれらの状態量に基づいて目標反力トルクTs*を演算し、操舵側モータ制御信号演算部63に出力する。また、目標反力トルク演算部62は、目標反力トルクTs*を演算する過程で得られたステアリングホイール3の操舵角θhの目標値である目標操舵角θh*を転舵側制御部56に出力する。さらに、目標反力トルク演算部62は、目標反力トルクTs*を演算する過程で得られた転舵輪5の路面に対するグリップ状態を示すグリップ状態量Grを操舵側モータ制御信号演算部63、及び転舵側制御部56に出力する。
操舵側モータ制御信号演算部63には、目標反力トルクTs*に加え、回転角θs、相電流値Ius,Ivs,Iws及びグリップ状態量Grが入力される。本実施形態の操舵側モータ制御信号演算部63は、後述するようにこれらの状態量に基づいて操舵側モータ制御信号Msを演算し、操舵側駆動回路52に出力する。これにより、操舵側モータ13には、操舵側駆動回路52から操舵側モータ制御信号Msに応じた駆動電力が供給される。そして、操舵側モータ13は、目標反力トルクTs*に示されるモータトルクを操舵反力としてステアリングホイール3に付与する。
次に、転舵側制御部56について説明する。
転舵側制御部56は、所定の演算周期毎に以下の各制御ブロックに示される各演算処理を実行して、転舵側モータ制御信号Mtを生成する。転舵側制御部56には、上記回転角θt、目標操舵角θh*、転舵側モータ32の各相電流値Iut,Ivt,Iwt及びグリップ状態量Grが入力される。そして、転舵側制御部56は、これら各状態量に基づいて転舵側モータ制御信号Mtを生成して出力する。なお、本実施形態の操舵装置2では、操舵角θhと転舵対応角θpとの比である舵角比が一定に設定されており、転舵対応角θpの目標値となる目標転舵対応角は、目標操舵角θh*と等しい。
詳しくは、転舵側制御部56は、回転角θtに基づいてピニオン軸21の回転角である検出値としての転舵対応角θpを演算する転舵対応角演算部71と、上記転舵力の目標値となる目標転舵トルクTt*を演算する目標転舵トルク演算部72と、転舵側モータ制御信号Mtを出力する転舵側モータ制御信号演算部73とを備えている。
転舵対応角演算部71には、転舵側モータ32の回転角θtが入力される。転舵対応角演算部71は、入力される回転角θtを、例えば車両が直進する中立位置からの転舵側モータ32の回転数をカウントすることにより、絶対角に換算して取得する。そして、転舵対応角演算部71は、絶対角に換算された回転角に伝達機構33の減速比、変換機構34のリード、及びラックアンドピニオン機構24の回転速度比に基づく換算係数を乗算して転舵対応角θpを演算する。つまり、転舵対応角θpは、ピニオン軸21がステアリングシャフト11に連結されていると仮定した場合におけるステアリングホイール3の操舵角θhに相当する。このように演算された転舵対応角θpは、目標転舵トルク演算部72に出力される。
目標転舵トルク演算部72には、目標操舵角θh*、転舵対応角θp及びグリップ状態量Grが入力される。目標転舵トルク演算部72は、後述するようにこれらの状態量に基づいて目標転舵トルクTt*を演算し、転舵側モータ制御信号演算部73に出力する。
転舵側モータ制御信号演算部73には、目標転舵トルクTt*に加え、回転角θt、相電流値Iut,Ivt,Iwt及びグリップ状態量Grが入力される。転舵側モータ制御信号演算部73は、後述するようにこれらの状態量に基づいて転舵側モータ制御信号Mtを演算し、転舵側駆動回路57に出力する。これにより、転舵側モータ32には、転舵側駆動回路57から転舵側モータ制御信号Mtに応じた駆動電力が供給される。そして、転舵側モータ32は、目標転舵トルクTt*に示されるモータトルクを転舵力として転舵輪5に付与する。なお、転舵側モータ制御信号演算部73は、転舵側モータ制御信号Mtを演算する過程で得られたq軸電流値Iqtを目標反力トルク演算部62に出力する。
次に、目標反力トルク演算部62について説明する。
図3に示すように、目標反力トルク演算部62は、運転者の操舵方向にステアリングホイール3を回転させる力である入力トルク基礎成分としてトルクフィードバック成分Tfbtを演算する入力トルク基礎成分演算部81を備えている。なお、以下では、フィードバックという文言を「F/B」と記すことがある。また、目標反力トルク演算部62は、運転者の操舵によるステアリングホイール3の回転に抗する力である、すなわち転舵輪5からラック軸22に作用する軸力である反力成分Firを演算する反力成分演算部82を備えている。さらに、目標反力トルク演算部62は、操舵角θhの目標値となる目標操舵角θh*を演算する目標操舵角演算部83と、操舵角F/B演算の実行により操舵角F/B成分Tfbhを演算する操舵角F/B制御部84を備えている。そして、目標反力トルク演算部62は、トルクF/B成分Tfbt及び操舵角F/B成分Tfbhに基づいて目標反力トルクTs*を演算する。
詳しくは、入力トルク基礎成分演算部81には、操舵トルクTh及びグリップ状態量Grが入力される。入力トルク基礎成分演算部81は、操舵部4に入力すべき操舵トルクThの目標値である目標操舵トルクTh*を演算する目標操舵トルク演算部91と、トルクF/B演算の実行によりトルクF/B成分Tfbtを演算するトルクF/B制御部92とを備えている。
目標操舵トルク演算部91には、加算器93において操舵トルクThにトルクF/B成分Tfbtが足し合わされた駆動トルクTcが入力される。目標操舵トルク演算部91は、駆動トルクTcの絶対値が大きいほど、より大きな絶対値となる目標操舵トルクTh*を演算する。なお、駆動トルクTcは、操舵部4と転舵部6とが機械的に連結されたものにおいて、転舵輪5を転舵させるトルクであり、近似的にラック軸22に作用する軸力と釣り合う。つまり、駆動トルクTcは、ラック軸22に作用する軸力を推定した演算上の軸力に相当する。
トルクF/B制御部92には、操舵トルクTh、減算器94において操舵トルクThから目標操舵トルクTh*が差し引かれたトルク偏差ΔTh及びグリップ状態量Grが入力される。そして、トルクF/B制御部92は、後述するようにこれらの各状態量に基づいて、操舵トルクThを目標操舵トルクTh*に追従させるフィードバック演算としてのトルクフィードバック演算を行い、目標反力トルクTs*を演算する基礎となるトルクF/B成分Tfbtを演算する。このように演算されたトルクF/B成分Tfbtは、加算器85,93及び目標操舵角演算部83に出力される。
反力成分演算部82には、車速SP、ヨーレートγ、横加速度LA、転舵側モータ32のq軸電流値Iqt及び目標操舵角θh*が入力される。反力成分演算部82は、これらの状態量に基づいて、ラック軸22に作用する軸力に応じた反力成分Firを演算し、目標操舵角演算部83に出力する。
詳しくは、反力成分演算部82は、角度軸力Fibを演算する軸力演算部としての角度軸力演算部101と、電流軸力Ferを演算する軸力演算部としての電流軸力演算部102とを備えている。なお、角度軸力Fib及び電流軸力Ferは、トルクの次元(N・m)で演算される。また、反力成分演算部82は、転舵輪5に対して路面から加えられる軸力、すなわち路面から伝達される路面情報が反映されるように、角度軸力Fib及び電流軸力Ferを所定割合で配分した配分軸力を反力成分Firとして演算する配分処理部103を備えている。
角度軸力演算部101には、目標転舵対応角である目標操舵角θh*及び車速SPが入力される。角度軸力演算部101は、転舵輪5に作用する軸力、すなわち転舵輪5に伝達される伝達力を目標操舵角θh*に基づいて演算する。つまり、角度軸力Fibは、任意に設定されるモデルにおける軸力の理想値であって、車両の横方向への挙動に影響を与えない微小な凹凸や車両の横方向への挙動に影響を与える段差等の路面情報を含まない軸力である。具体的には、角度軸力演算部101は、目標操舵角θh*の絶対値が大きくなるほど、角度軸力Fibの絶対値が大きくなるように演算する。また、角度軸力演算部101は、車速SPが大きくなるにつれて角度軸力Fibの絶対値が大きくなるように演算する。このように演算された角度軸力Fibは、配分処理部103に出力される。
電流軸力演算部102には、転舵側モータ32のq軸電流値Iqtが入力される。電流軸力演算部102は、転舵輪5に作用する軸力をq軸電流値Iqtに基づいて演算する。つまり、電流軸力Ferは、転舵輪5に作用する軸力の推定値であって、路面情報を含む路面軸力の一である。具体的には、電流軸力演算部102は、転舵側モータ32によってラック軸22に加えられるトルクと、転舵輪5に対して路面から加えられる力に応じたトルクとが釣り合うとして、q軸電流値Iqtの絶対値が大きくなるほど、電流軸力Ferの絶対値が大きくなるように演算する。このように演算された電流軸力Ferは、配分処理部103に出力される。
配分処理部103には、車速SPに加え、角度軸力Fib及び電流軸力Ferが入力される。配分処理部103には、角度軸力Fibの配分比率を示す角度配分ゲインGib、及び電流軸力Ferの配分比率を示す電流配分ゲインGerが実験等により予め設定されている。なお、角度配分ゲインGib及び電流配分ゲインGerは、車速SPに応じて可変設定されている。そして、配分処理部103は、角度軸力Fibに角度配分ゲインGibを乗算した値、及び電流軸力Ferに電流配分ゲインGerを乗算した値を足し合わせることにより得られる配分軸力を反力成分Firとして演算する。つまり、本実施形態の反力成分演算部82は、角度軸力Fib及び電流軸力Ferの2つの軸力を取得し、これら2つの軸力に基づいて反力成分Firを演算する。このように演算された反力成分Firは、上記のように目標操舵角演算部83に出力される。なお、反力成分Firは、ラック軸22に作用する軸力を推定した演算上の軸力に相当する。
また、反力成分演算部82は、車両状態量軸力Fyrを演算する軸力演算部としての車両状態量軸力演算部105と、グリップ状態量Grを演算するグリップ状態量演算部106とを備えている。なお、車両状態量軸力Fyrは、トルクの次元(N・m)で演算される。
詳しくは、車両状態量軸力演算部105には、車速SP、ヨーレートγ及び横加速度LAが入力される。車両状態量軸力演算部105は、下記(1)式にヨーレートγ及び横加速度LAを入力することにより演算される横力Fyを車両状態量軸力Fyrとして演算する。つまり、車両状態量軸力Fyrは、転舵輪5に作用する軸力を該転舵輪5に作用する横力Fyであると近似的にみなした推定値であって、車両の横方向への挙動の変化を引き起こさない路面情報は含まず、車両の横方向への挙動の変化を通じて伝達可能な路面情報を含む軸力である。
Fy=Kla×LA+Kγ×γ’…(1)
なお、「γ’」は、ヨーレートγの微分値を示し、「Kla」及び「Kγ」は、試験等により予め設定された係数を示し、車速SPに応じて可変設定されている。
グリップ状態量演算部106には、車両状態量軸力Fyr及び電流軸力Ferが入力される。グリップ状態量演算部106は、下記(2)式に車両状態量軸力Fyr及び電流軸力Ferを入力することにより、転舵輪5のグリップがどの程度失われたかを示すグリップロス度からなるグリップ状態量Grを演算する。
Gr=(Ky×Fyr)-(Ker×Fer)…(2)
なお、「Ker」及び「Ky」は、試験等により予め設定された係数を示し、グリップ状態量演算部106に記憶されている。
ここで、転舵輪のスリップ角βと該転舵輪に作用する力との関係について、図4及び図5を参照して説明する。
図4は、車両が右旋回している際に、スリップ角βが付いている転舵輪の接地面を上から見た図である。転舵輪の向きに向かう中心線xが元々の転舵輪5の向きを示しており、転舵輪5の進行方向はこれに対して線αで示している。同図において、A点が転舵輪5の接地開始点で、B点が接地終了点とすると、スリップ角β分だけ、トレッド面が路面に引きずられて中心線xから線αのラインに沿ってずれて撓む。なお、図4において、トレッド面がずれて撓んだ領域をハッチングで示す。この撓んだ領域のうち、A点側の領域が粘着域であり、B点側の領域が滑り域である。そして、このようなスリップ角βで旋回したときの転舵輪5の接地面の着力点には、横力Fyが働き、鉛直軸周りのモーメントがセルフアライニングトルクSATとなる。なお、転舵輪5の接地中心と着力点間の距離がニューマチックトレールであり、ニューマチックトレールは転舵輪5の路面に対するグリップ状態を示す値と言える。また、ニューマチックトレールとキャスタトレールの和がトレールである。
図5は、スリップ角βの変化に対する、角度軸力Fib、横力Fy、セルフアライニングトルクSAT、及びニューマチックトレールの変化を示している。同図に示すように旋回中の転舵輪において、スリップ角βが小さい領域では、スリップ角βの増大に従って角度軸力Fib、横力Fy及びセルフアライニングトルクSATがそれぞれ略線形に増大し、これらの各値の差は小さい。一方、スリップ角βがある程度大きな領域では、スリップ角βの増大に従って、角度軸力Fibは引き続き略線形に増大するものの、横力Fyは増大を続けた後に略一定又はやや減少傾向を示す。また、セルフアライニングトルクSATは、スリップ角βの増大に従って、しばらくは略一定となるが、ニューマチックトレールの減少に伴って大きく減少する傾向を示す。このように各値が略線形に変化し、これらの差が小さい領域を通常領域とし、横力Fy及びセルフアライニングトルクSATが非線形に変化し、これらの差が大きくなる領域を限界領域とする。なお、図5に示す通常領域と限界領域との区切りは便宜上のものである。
ここで、旋回時の軸力をセルフアライニングトルクSATと捉えると、セルフアライニングトルクSATと横力Fyの関係は、図4に示すように、タイヤと路面との接地中心から横力の着力点までのニューマチックトレールに相当するパラメータを用いた下記(3)式で表現できる。
SAT=Fy×ニューマチックトレール…(3)
そして、セルフアライニングトルクSATを「軸力≒路面からの反力」と考えると、転舵側モータ32の駆動電流、すなわち、q軸電流値Iqtに基づく電流軸力FerがセルフアライニングトルクSATを近似的に表現しているといえる。
なお、横力Fyは、転舵輪5に発生している力であり、「横力Fy≒車両横向きに発生している力」と置き換えて、横力Fyを横加速度LAによって近似的に表現することができる。なお、横加速度LAだけでは、実際の軸力に対し、動き出し時の応答性が不足するため、応答性を改善するためにヨーレートγの微分を加算して、上記式(1)が得られる。
一方、図5に示すように、ニューマチックトレールの減少傾向は、横力FyからセルフアライニングトルクSATを減算した値の絶対値の増加傾向に比例しているため、グリップ状態量Grは、下記(4)式のように表わすことができる。
Gr=Fy-SAT…(4)
そして、電流軸力FerがセルフアライニングトルクSATを近似的に表現でき、車両状態量軸力Fyrが横力Fyを近似的に表現できることを踏まえると、グリップ状態量Grは、上記(2)式で表される。
図3に示すように、グリップ状態量演算部106が演算したグリップ状態量Grは、トルクF/B制御部92、操舵角F/B制御部84、操舵側モータ制御信号演算部63、目標転舵トルク演算部72及び転舵側モータ制御信号演算部73に出力される。
目標操舵角演算部83には、車速SP、操舵トルクTh、トルクF/B成分Tfbt及び反力成分Firが入力される。目標操舵角演算部83は、トルクF/B成分Tfbtに操舵トルクThを加算するとともに反力成分Firを減算した値である入力トルクTin*と目標操舵角θh*とを関係づける下記(5)のステアリングモデル式を利用して、目標操舵角θh*を演算する。
Tin*=C・θh*’+J・θh*’’…(5)
このモデル式は、ステアリングホイール3と転舵輪5とが機械的に連結されたもの、すなわち操舵部4と転舵部6とが機械的に連結されたものにおいて、ステアリングホイール3の回転に伴って回転する回転軸のトルクと回転角との関係を定めて表したものである。そして、このモデル式は、操舵装置2の摩擦等をモデル化した粘性係数C、操舵装置2の慣性をモデル化した慣性係数Jを用いて表される。なお、粘性係数C及び慣性係数Jは、車速SPに応じて可変設定される。そして、このようにモデル式を用いて演算された目標操舵角θh*は、目標転舵トルク演算部72に加え、反力成分演算部82に出力される。
操舵角F/B制御部84には、減算器86において目標操舵角θh*から操舵角θhが差し引かれた角度偏差Δθh、及びグリップ状態量Grが入力される。そして、操舵角F/B制御部84は、後述するようにこれらの各状態量に基づいて、操舵角θhを目標操舵角θh*に追従させるフィードバック演算としての操舵角フィードバック演算を行い、目標反力トルクTs*の基礎となる操舵角F/B成分Tfbhを演算する。このように演算された操舵角F/B成分Tfbhは、加算器85に出力される。
そして、目標反力トルク演算部62は、加算器85においてトルクF/B成分Tfbtに操舵角F/B成分Tfbhを加算した値を目標反力トルクTs*として演算する。このように演算された目標反力トルクTs*は、操舵側モータ制御信号演算部63に出力される。
次に、操舵側モータ制御信号演算部63について説明する。
図6に示すように、操舵側モータ制御信号演算部63は、目標反力トルクTs*に基づいてdq座標系における電流フィードバック演算を実行することにより、操舵側モータ制御信号Msを演算する。
詳しくは、操舵側モータ制御信号演算部63は、d軸目標電流値Ids*及びq軸目標電流値Iqs*を演算する操舵側目標電流値演算部111と、実電流値としてのd軸電流値Ids及びq軸電流値Iqsを演算する三相二相変換部112とを備えている。また、操舵側モータ制御信号演算部63は、電流F/B演算の実行により電流F/B成分としてのd軸目標電圧値Vds*を演算するd軸電流F/B制御部113と、電流F/B演算の実行により電流F/B成分としてのq軸目標電圧値Vqs*を演算するq軸電流F/B制御部114とを備えている。また、操舵側モータ制御信号演算部63は、三相の目標電圧値Vus*,Vvs*,Vws*を演算する二相三相変換部115と、デューティ指令値αus*,αvs*,αws*を演算するPWM変換部116と、操舵側モータ制御信号Msを生成する制御信号生成部117とを備えている。
操舵側目標電流値演算部111には、目標反力トルクTs*が入力される。操舵側目標電流値演算部111は、目標反力トルクTs*に基づいてq軸目標電流値Iqs*を演算する。具体的には、操舵側目標電流値演算部111は、目標反力トルクTs*の絶対値の増大に基づいてより大きな絶対値を有するq軸目標電流値Iqs*を演算する。また、操舵側目標電流値演算部111は、基本的にゼロを示すd軸目標電流値Ids*を演算する。このように演算されたd軸目標電流値Ids*は減算器118に出力され、q軸目標電流値Iqs*は減算器119に出力される。
三相二相変換部112には、各相電流値Ius,Ivs,Iws及び回転角θsが入力される。三相二相変換部112は、回転角θsに基づいて各相電流値Ius,Ivs,Iwsをdq座標上に写像することにより、d軸電流値Ids及びq軸電流値Iqsを演算する。d軸電流値Idsは、d軸目標電流値Ids*とともに減算器118に入力され、q軸電流値Iqsは、q軸目標電流値Iqs*とともに減算器119に入力される。そして、各減算器118,119は、d軸電流偏差ΔIds及びq軸電流偏差ΔIqsを演算する。このように演算されたd軸電流偏差ΔIdsはd軸電流F/B制御部113に出力され、q軸電流偏差ΔIqsはq軸電流F/B制御部114に出力される。
d軸電流F/B制御部113には、d軸電流偏差ΔIdsに加え、グリップ状態量Grが入力され、q軸電流F/B制御部114には、q軸電流偏差ΔIqsに加え、グリップ状態量Grが入力される。そして、d軸電流F/B制御部113は、これらの状態量に基づいて、後述するようにd軸目標電流値Ids*にd軸電流値Idsを追従させるフィードバック演算としての電流フィードバック演算を行い、操舵側モータ制御信号Msの基礎となるd軸目標電圧値Vds*を演算する。また、q軸電流F/B制御部114は、これらの状態量に基づいて、後述するようにq軸目標電流値Iqs*にq軸電流値Iqsを追従させるフィードバック演算としての電流フィードバック演算を行い、操舵側モータ制御信号Msの基礎となるq軸目標電圧値Vqs*を演算する。このように演算されたd軸目標電圧値Vds*及びq軸目標電圧値Vqs*は、二相三相変換部115に出力される。
二相三相変換部115には、d軸目標電圧値Vds*及びq軸目標電圧値Vqs*に加え、回転角θsが入力される。二相三相変換部115は、回転角θsに基づいてd軸目標電圧値Vds*及びq軸目標電圧値Vqs*を三相の交流座標上に写像することにより三相の目標電圧値Vus*,Vvs*,Vws*を演算する。このように演算された目標電圧値Vus*,Vvs*,Vws*は、PWM変換部116に出力される。
PWM変換部116は、各目標電圧値Vus*,Vvs*,Vws*に基づいてデューティ指令値αus*,αvs*,αws*を演算する。このように演算されたデューティ指令値αus*,αvs*,αws*は、制御信号生成部117に出力される。
制御信号生成部117は、デューティ指令値αus*,αvs*,αws*と三角波や鋸波等の搬送波としてのPWMキャリアとの比較を通じて、デューティ指令値αus*,αvs*,αws*に示されるデューティ比を有する操舵側モータ制御信号Msを生成する。このように演算された操舵側モータ制御信号Msが操舵側駆動回路52に出力され、操舵側モータ制御信号Msに応じた駆動電力が操舵側モータ13に出力される。これにより、操舵側モータ13から目標反力トルクTs*に示されるモータトルクが操舵反力としてステアリングホイール3に付与される。
なお、上記のように目標反力トルク演算部62は、トルクF/B演算に用いる目標操舵トルクTh*を演算上の軸力である駆動トルクTcに基づいて演算するとともに、操舵角F/B演算に用いる目標操舵角θh*を演算上の軸力である反力成分Firに基づいて演算し、これらを足し合わせて目標反力トルクTs*として演算している。そのため、操舵側モータ13が付与する操舵反力は、基本的には運転者の操舵に抗する力であるが、演算上の軸力とラック軸22に作用する実際の軸力との偏差によっては、運転者の操舵を補助する力にもなり得るものである。
次に、目標転舵トルク演算部72について説明する。
図2に示すように、目標転舵トルク演算部72は、転舵角F/B演算の実行により得られる転舵角F/B成分を目標転舵トルクTt*として演算する転舵角F/B制御部121を備えている。転舵角F/B制御部121には、減算器122において目標転舵対応角である目標操舵角θh*から転舵対応角θpが差し引かれた角度偏差Δθp、及びグリップ状態量Grが入力される。そして、転舵角F/B制御部121は、後述するようにこれらの各状態量に基づいて、転舵対応角θpを目標転舵対応角である目標操舵角θh*に追従させるフィードバック演算としての転舵角フィードバック演算を行い、目標転舵トルクTt*を演算する。このように演算された目標転舵トルクTt*は、転舵側モータ制御信号演算部73に出力される。
次に、転舵側モータ制御信号演算部73について説明する。
図7に示すように、転舵側モータ制御信号演算部73は、目標転舵トルクTt*に基づいてdq座標系における電流F/B演算を実行することにより、転舵側モータ制御信号Mtを演算する。
転舵側モータ制御信号演算部73は、操舵側モータ制御信号演算部63を構成する各制御ブロックと同様の制御ブロックを備えており、操舵側モータ制御信号演算部63と同様に、dq座標系における電流F/B演算を行う。すなわち、転舵側モータ制御信号演算部73は、d軸目標電流値Idt*及びq軸目標電流値Iqt*を演算する転舵側目標電流値演算部131と、実電流値としてのd軸電流値Idt及びq軸電流値Iqtを演算する三相二相変換部132とを備えている。また、転舵側モータ制御信号演算部73は、電流F/B演算の実行により電流F/B成分としてのd軸目標電圧値Vdt*を演算するd軸電流F/B制御部133と、電流F/B演算の実行により電流F/B成分としてのq軸目標電圧値Vqt*を演算するq軸電流F/B制御部134とを備えている。また、転舵側モータ制御信号演算部73は、三相の目標電圧値Vut*,Vvt*,Vwt*を演算する二相三相変換部135と、デューティ指令値αut*,αvt*,αwt*を演算するPWM変換部136と、転舵側モータ制御信号Mtを生成する制御信号生成部137とを備えている。なお、三相二相変換部132が演算したq軸電流値Iqtは、上記のように目標反力トルク演算部62にも出力される。
次に、各種のフィードバック演算について説明する。
まず、トルクF/B制御部92によるトルクF/B演算について説明する。
図8に示すように、トルクF/B制御部92は、トルク偏差ΔThを入力とし、PID制御の実行に基づいてトルクF/B成分Tfbtを演算する。つまり、トルクF/B制御部92は、トルク偏差ΔThに基づくトルクF/B比例成分Ttpと、トルク偏差ΔThを積分したトルク偏差積分値ΔThiに基づくトルクF/B積分成分Ttiと、トルク偏差ΔThを微分したトルク偏差微分値ΔThdに基づくトルクF/B微分成分Ttdとを演算する。また、本実施形態のトルクF/B制御部92は、操舵トルクThを微分したトルク微分値dThに基づいて、PID制御の出力値に加算する補償量としてトルクダンピング成分Ttvを演算する。そして、トルクF/B制御部92は、トルクF/B比例成分Ttp、トルクF/B積分成分Tti、トルクF/B微分成分Ttd及びトルクダンピング成分Ttvを足し合わせた値をトルクF/B成分Tfbtとして演算する。
詳しくは、トルクF/B制御部92は、トルクF/B比例成分Ttpを演算するトルクF/B比例成分演算部141と、トルクF/B積分成分Ttiを演算するトルクF/B積分成分演算部142と、トルクF/B微分成分Ttdを演算するトルクF/B微分成分演算部143とを備えている。また、トルクF/B制御部92は、トルクダンピング成分Ttvを演算するトルクダンピング成分演算部144を備えている。
トルクF/B比例成分演算部141には、トルク偏差ΔTh及びグリップ状態量Grが入力される。トルクF/B比例成分演算部141は、トルク偏差ΔThに対してグリップ状態量Grに基づいて調整したトルク比例ゲインKtp’を乗算することにより、トルクF/B比例成分Ttpを演算する。
具体的には、図9に示すように、トルクF/B比例成分演算部141は、トルク比例ゲインKtpをグリップ状態量Grに基づいて調整するためのトルク比例調整ゲインKtpaを演算するトルク比例調整ゲイン演算部151を備えている。トルク比例調整ゲイン演算部151には、グリップ状態量Grが入力される。トルク比例調整ゲイン演算部151は、グリップ状態量Grとトルク比例調整ゲインKtpaとの関係を定めたマップを備えており、同マップを参照することによりグリップ状態量Grに応じたトルク比例調整ゲインKtpaを演算する。このマップは、グリップ状態量Grがグリップ閾値Grth以下の領域ではトルク比例調整ゲインKtpaが「1」となり、グリップ状態量Grがグリップ閾値Grthよりも大きくなると、該グリップ状態量Grの増大に基づいてトルク比例調整ゲインKtpaが大きくなるように設定されている。つまり、トルク比例調整ゲインKtpaは、グリップ状態量Grが大きくなるほど、すなわちグリップロス度が大きくなり転舵輪5のグリップ状態が悪化するほど、トルクF/B比例成分Ttpが大きくなるように設定されている。なお、グリップ閾値Grthは、通常領域と限界領域との境となるスリップ角βでのグリップ状態量Grを示す値であり、予め試験等により設定されている。このように演算されたトルク比例調整ゲインKtpaは、乗算器152に出力される。
乗算器152には、トルク比例調整ゲインKtpaに加え、予め設定された制御ゲインとしての一定のトルク比例ゲインKtpが入力される。トルクF/B比例成分演算部141は、乗算器152においてトルク比例ゲインKtpにトルク比例調整ゲインKtpaを乗算した値をトルク比例ゲインKtp’として演算する。このように演算されたトルク比例ゲインKtp’は、乗算器153に出力される。
乗算器153には、トルク比例ゲインKtp’に加え、トルク偏差ΔThが入力される。そして、トルクF/B比例成分演算部141は、乗算器153においてトルク偏差ΔThにトルク比例ゲインKtp’を乗算することにより、トルクF/B比例成分Ttpを演算する。図8に示すように、このように演算されたトルクF/B比例成分Ttpは、加算器145に出力される。
トルクF/B積分成分演算部142には、トルク偏差積分値ΔThi及びグリップ状態量Grが入力される。トルクF/B積分成分演算部142は、トルク偏差積分値ΔThiに対してグリップ状態量Grに基づいて調整したトルク積分ゲインKti’を乗算することにより、トルクF/B積分成分Ttiを演算する。
具体的には、図10に示すように、トルクF/B積分成分演算部142は、トルク積分ゲインKtiをグリップ状態量Grに基づいて調整するためのトルク積分調整ゲインKtiaを演算するトルク積分調整ゲイン演算部161を備えている。トルク積分調整ゲイン演算部161には、グリップ状態量Grが入力される。トルク積分調整ゲイン演算部161は、グリップ状態量Grとトルク積分調整ゲインKtiaとの関係を定めたマップを備えており、同マップを参照することによりグリップ状態量Grに応じたトルク積分調整ゲインKtiaを演算する。このマップは、グリップ状態量Grがグリップ閾値Grth以下の領域ではトルク積分調整ゲインKtiaが「1」となり、グリップ状態量Grがグリップ閾値Grthよりも大きくなると、該グリップ状態量Grの増大に基づいてトルク積分調整ゲインKtiaが大きくなるように設定されている。つまり、トルク積分調整ゲインKtiaは、グリップ状態量Grが大きくなるほど、トルクF/B積分成分Ttiが大きくなるように設定されている。このように演算されたトルク積分調整ゲインKtiaは、乗算器162に出力される。
乗算器162には、トルク積分調整ゲインKtiaに加え、予め設定された制御ゲインとしての一定のトルク積分ゲインKtiが入力される。トルクF/B積分成分演算部142は、乗算器162においてトルク積分ゲインKtiにトルク積分調整ゲインKtiaを乗算した値をトルク積分ゲインKti’として演算する。このように演算されたトルク積分ゲインKti’は、乗算器163に出力される。
乗算器163には、トルク積分ゲインKti’に加え、トルク偏差積分値ΔThiが入力される。そして、トルクF/B積分成分演算部142は、乗算器163においてトルク偏差積分値ΔThiにトルク積分ゲインKti’を乗算することにより、トルクF/B積分成分Ttiを演算する。図8に示すように、このように演算されたトルクF/B積分成分Ttiは、加算器145に出力される。
トルクF/B微分成分演算部143には、トルク偏差微分値ΔThd及びグリップ状態量Grが入力される。トルクF/B微分成分演算部143は、トルク偏差微分値ΔThdに対してグリップ状態量Grに基づいて調整したトルク微分ゲインKtd’を乗算することにより、トルクF/B微分成分Ttdを演算する。
具体的には、図11に示すように、トルクF/B微分成分演算部143は、トルク微分ゲインKtdをグリップ状態量Grに基づいて調整するためのトルク微分調整ゲインKtdaを演算するトルク微分調整ゲイン演算部171を備えている。トルク微分調整ゲイン演算部171には、グリップ状態量Grが入力される。トルク微分調整ゲイン演算部171は、グリップ状態量Grとトルク微分調整ゲインKtdaとの関係を定めたマップを備えており、同マップを参照することによりグリップ状態量Grに応じたトルク微分調整ゲインKtdaを演算する。このマップは、グリップ状態量Grがグリップ閾値Grth以下の領域ではトルク微分調整ゲインKtdaが「1」となり、グリップ状態量Grがグリップ閾値Grthよりも大きくなると、該グリップ状態量Grの増大に基づいてトルク微分調整ゲインKtdaが大きくなるように設定されている。つまり、トルク微分調整ゲインKtdaは、グリップ状態量Grが大きくなるほど、トルクF/B微分成分Ttdが大きくなるように設定されている。このように演算されたトルク微分調整ゲインKtdaは、乗算器172に出力される。
乗算器172には、トルク微分調整ゲインKtdaに加え、予め設定された制御ゲインとしての一定のトルク微分ゲインKtdが入力される。トルクF/B微分成分演算部143は、乗算器172においてトルク微分ゲインKtdにトルク微分調整ゲインKtdaを乗算した値をトルク微分ゲインKtd’として演算する。このように演算されたトルク微分ゲインKtd’は、乗算器173に出力される。
乗算器173には、トルク微分ゲインKtd’に加え、トルク偏差微分値ΔThdが入力される。そして、トルクF/B微分成分演算部143は、乗算器173においてトルク偏差微分値ΔThdにトルク微分ゲインKtd’を乗算することにより、トルクF/B微分成分Ttdを演算する。図8に示すように、このように演算されたトルクF/B微分成分Ttdは、加算器145に出力される。
トルクダンピング成分演算部144には、トルク微分値dTh及びグリップ状態量Grが入力される。トルクダンピング成分演算部144は、トルク微分値dThに対してグリップ状態量Grに基づいて調整したトルクダンピングゲインKtv’を乗算することにより、トルクダンピング成分Ttvを演算する。
具体的には、図12に示すように、トルクダンピング成分演算部144は、トルクダンピングゲインKtvをグリップ状態量Grに基づいて調整するためのトルクダンピング調整ゲインKtvaを演算するトルクダンピング調整ゲイン演算部181を備えている。トルクダンピング調整ゲイン演算部181には、グリップ状態量Grが入力される。トルクダンピング調整ゲイン演算部181は、グリップ状態量Grとトルクダンピング調整ゲインKtvaとの関係を定めたマップを備えており、同マップを参照することによりグリップ状態量Grに応じたトルクダンピング調整ゲインKtvaを演算する。このマップは、グリップ状態量Grがグリップ閾値Grth以下の領域ではトルクダンピング調整ゲインKtvaが「1」となり、グリップ状態量Grがグリップ閾値Grthよりも大きくなると、該グリップ状態量Grの増大に基づいてトルクダンピング調整ゲインKtvaが大きくなるように設定されている。つまり、トルクダンピング調整ゲインKtvaは、グリップ状態量Grが大きくなるほど、トルクダンピング成分Ttvが大きくなるように設定されている。このように演算されたトルクダンピング調整ゲインKtvaは、乗算器182に出力される。
乗算器182には、トルクダンピング調整ゲインKtvaに加え、予め設定された制御ゲインとしての一定のトルクダンピングゲインKtvが入力される。トルクダンピング成分演算部144は、乗算器182においてトルクダンピングゲインKtvにトルクダンピング調整ゲインKtvaを乗算した値をトルクダンピングゲインKtv’として演算する。このように演算されたトルクダンピングゲインKtv’は、乗算器183に出力される。
乗算器183には、トルクダンピングゲインKtv’に加え、トルク微分値dThが入力される。そして、トルクダンピング成分演算部144は、乗算器183においてトルク微分値dThにトルクダンピングゲインKtv’を乗算することにより、トルクダンピング成分Ttvを演算する。図8に示すように、このように演算されたトルクダンピング成分Ttvは、加算器145に出力される。
そして、トルクF/B制御部92は、加算器145において、トルクF/B比例成分Ttpと、トルクF/B積分成分Ttiと、トルクF/B微分成分Ttdと、トルクダンピング成分Ttvとを加算することにより、トルクF/B成分Tfbtを演算する。
次に、操舵角F/B制御部84による操舵角F/B演算について説明する。
図13に示すように、操舵角F/B制御部84は、角度偏差Δθhを入力とし、PID制御の実行に基づいて操舵角F/B成分Tfbhを演算する。つまり、操舵角F/B制御部84は、角度偏差Δθhに基づく操舵角F/B比例成分Thpと、角度偏差Δθhを積分した角度偏差積分値Δθhiに基づく操舵角F/B積分成分Thiと、角度偏差Δθhを微分した角度偏差微分値Δθhdに基づく操舵角F/B微分成分Thdを演算する。また、本実施形態の操舵角F/B制御部84は、操舵角θhを微分した操舵角速度ωhに基づいて、PID制御の出力値に加算する補償量として操舵ダンピング成分Thvを演算する。そして、操舵角F/B制御部84は、操舵角F/B比例成分Thp、操舵角F/B積分成分Thi、操舵角F/B微分成分Thd及び操舵ダンピング成分Thvを足し合わせた値を操舵角F/B成分Tfbhとして演算する。
詳しくは、操舵角F/B制御部84は、操舵角F/B比例成分Thpを演算する操舵角F/B比例成分演算部191と、操舵角F/B積分成分Thiを演算する操舵角F/B積分成分演算部192と、操舵角F/B微分成分Thdを演算する操舵角F/B微分成分演算部193とを備えている。また、操舵角F/B制御部84は、操舵ダンピング成分Thvを演算する操舵ダンピング成分演算部194を備えている。
操舵角F/B比例成分演算部191には、角度偏差Δθh及びグリップ状態量Grが入力される。操舵角F/B比例成分演算部191は、角度偏差Δθhに対してグリップ状態量Grに基づいて調整した操舵角比例ゲインを乗算することにより、操舵角F/B比例成分Thpを演算する。なお、操舵角F/B比例成分演算部191は、トルクF/B比例成分演算部141と同様に構成されており、予め設定された制御ゲインとしての一定の操舵角比例ゲインに操舵角比例調整ゲインを乗算することにより該操舵角比例ゲインを調整し、これに角度偏差Δθhを乗算することにより操舵角F/B比例成分Thpを演算する。このように演算された操舵角F/B比例成分Thpは、加算器195に出力される。
操舵角F/B積分成分演算部192には、角度偏差積分値Δθhi及びグリップ状態量Grが入力される。操舵角F/B積分成分演算部192は、角度偏差積分値Δθhiに対してグリップ状態量Grに基づいて調整した操舵角積分ゲインを乗算することにより、操舵角F/B積分成分Thiを演算する。なお、操舵角F/B積分成分演算部192は、トルクF/B積分成分演算部142と同様に構成されており、予め設定された制御ゲインとしての一定の操舵角積分ゲインに操舵角積分調整ゲインを乗算することにより該操舵角積分ゲインを調整し、これに角度偏差積分値Δθhiを乗算することにより操舵角F/B積分成分Thiを演算する。このように演算された操舵角F/B積分成分Thiは、加算器195に出力される。
操舵角F/B微分成分演算部193には、角度偏差微分値Δθhd及びグリップ状態量Grが入力される。操舵角F/B微分成分演算部193は、角度偏差微分値Δθhdに対してグリップ状態量Grに基づいて調整した操舵角微分ゲインを乗算することにより、操舵角F/B微分成分Thdを演算する。なお、操舵角F/B微分成分演算部193は、トルクF/B微分成分演算部143と同様に構成されており、予め設定された制御ゲインとしての一定の操舵角微分ゲインに操舵角微分調整ゲインを乗算することにより該操舵角微分ゲインを調整し、これに角度偏差微分値Δθhdを乗算することにより操舵角F/B微分成分Thdを演算する。このように演算された操舵角F/B微分成分Thdは、加算器195に出力される。
操舵ダンピング成分演算部194には、操舵角速度ωh及びグリップ状態量Grが入力される。操舵ダンピング成分演算部194は、操舵角速度ωhに対してグリップ状態量Grに基づいて調整した操舵ダンピングゲインを乗算することにより、操舵ダンピング成分Thvを演算する。なお、操舵ダンピング成分演算部194は、トルクダンピング成分演算部144と同様に構成されており、予め設定された制御ゲインとしての一定の操舵ダンピングゲインに操舵トルクダンピング調整ゲインを乗算することにより該ダンピングゲインを調整し、これに操舵角速度ωhを乗算することにより操舵ダンピング成分Thvを演算する。このように演算された操舵ダンピング成分Thvは、加算器195に出力される。
そして、操舵角F/B制御部84は、加算器195において、操舵角F/B比例成分Thpと、操舵角F/B積分成分Thiと、操舵角F/B微分成分Thdと、操舵ダンピング成分Thvとを加算することにより、操舵角F/B成分Tfbhを演算する。
なお、転舵角F/B制御部121による転舵角F/B演算は、角度偏差Δθhに代えて角度偏差Δθpを用いること以外は上記操舵角F/B制御部84による操舵角F/B演算と同様の演算処理であるため、その説明を省略する。ただし、転舵角比例ゲインや転舵角比例調整ゲイン等の各値について、転舵角F/B演算で適宜の値を用いてもよいことは言うまでもない。
次に、操舵側モータ制御信号演算部63のd軸電流F/B制御部113による電流F/B演算について説明する。
図14に示すように、d軸電流F/B制御部113は、d軸電流偏差ΔIdsを入力とし、PID制御の実行に基づいて電流F/B成分としてのd軸目標電圧値Vds*を演算する。つまり、d軸電流F/B制御部113は、d軸電流偏差ΔIdsに基づくd軸電流F/B比例成分Tipと、d軸電流偏差ΔIdsを積分した電流偏差積分値ΔIdsiに基づくd軸電流F/B積分成分Tiiと、d軸電流偏差ΔIdsを微分した電流偏差微分値ΔIdsdに基づくd軸電流F/B微分成分Tidを演算する。そして、d軸電流F/B制御部113は、d軸電流F/B比例成分Tip、d軸電流F/B積分成分Tii及びd軸電流F/B微分成分Tidを足し合わせた値をd軸目標電圧値Vds*として演算する。
詳しくは、d軸電流F/B制御部113は、d軸電流F/B比例成分Tipを演算するd軸電流F/B比例成分演算部201と、d軸電流F/B積分成分Tiiを演算するd軸電流F/B積分成分演算部202と、d軸電流F/B微分成分Tidを演算するd軸電流F/B微分成分演算部203とを備えている。
d軸電流F/B比例成分演算部201には、d軸電流偏差ΔIds及びグリップ状態量Grが入力される。d軸電流F/B比例成分演算部201は、d軸電流偏差ΔIdsに対してグリップ状態量Grに基づいて調整したd軸電流比例ゲインを乗算することにより、d軸電流F/B比例成分Tipを演算する。なお、d軸電流F/B比例成分演算部201は、トルクF/B比例成分演算部141と同様に構成されており、予め設定された制御ゲインとしての一定のd軸電流比例ゲインにd軸電流比例調整ゲインを乗算することにより該d軸電流比例ゲインを調整し、これにd軸電流偏差ΔIdsを乗算することによりd軸電流F/B比例成分Tipを演算する。このように演算されたd軸電流F/B比例成分Tipは、加算器204に出力される。
d軸電流F/B積分成分演算部202には、電流偏差積分値ΔIdsi及びグリップ状態量Grが入力される。d軸電流F/B積分成分演算部202は、電流偏差積分値ΔIdsiに対してグリップ状態量Grに基づいて調整したd軸電流積分ゲインを乗算することにより、d軸電流F/B積分成分Tiiを演算する。なお、d軸電流F/B積分成分演算部202は、トルクF/B積分成分演算部142と同様に構成されており、予め設定された制御ゲインとしての一定のd軸電流積分ゲインにd軸電流積分調整ゲインを乗算することにより該d軸電流積分ゲインを調整し、これに電流偏差積分値ΔIdsiを乗算することによりd軸電流F/B積分成分Tiiを演算する。このように演算されたd軸電流F/B積分成分Tiiは、加算器204に出力される。
d軸電流F/B微分成分演算部203には、電流偏差微分値ΔIdsd及びグリップ状態量Grが入力される。d軸電流F/B微分成分演算部203は、角度偏差微分値Δθhdに対してグリップ状態量Grに基づいて調整したd軸電流微分ゲインを乗算することにより、d軸電流F/B微分成分Tidを演算する。なお、d軸電流F/B微分成分演算部203は、トルクF/B微分成分演算部143と同様に構成されており、予め設定された制御ゲインとしての一定のd軸電流微分ゲインにd軸電流微分調整ゲインを乗算することにより該d軸電流微分ゲインを調整し、これに電流偏差微分値ΔIdsdを乗算することによりd軸電流F/B微分成分Tidを演算する。このように演算されたd軸電流F/B微分成分Tidは、加算器204に出力される。
そして、d軸電流F/B制御部113は、加算器204において、d軸電流F/B比例成分Tipと、d軸電流F/B積分成分Tiiと、d軸電流F/B微分成分Tidとを加算することにより、d軸目標電圧値Vds*を演算する。
なお、操舵側モータ制御信号演算部63のq軸電流F/B制御部114による電流F/B演算は、d軸電流偏差ΔIdsに代えてq軸電流偏差ΔIqsを用いること以外は上記d軸電流F/B制御部113による電流F/B演算と同様の演算処理であるため、その説明を省略する。また、転舵側モータ制御信号演算部73のd軸電流F/B制御部133による電流F/B演算も、操舵側モータ13のd軸電流偏差ΔIdsに代えて転舵側モータ32のd軸電流偏差ΔIdtを用いること以外は上記d軸電流F/B制御部113による電流F/B演算と同様の演算処理であるため、その説明を省略する。さらに、転舵側モータ制御信号演算部73のq軸電流F/B制御部134による電流F/B演算も、操舵側モータ13のd軸電流偏差ΔIdsに代えて転舵側モータ32のq軸電流偏差ΔIqtをそれぞれ用いること以外は上記d軸電流F/B制御部113による電流F/B演算と同様の演算処理であるため、その説明を省略する。なお、電流比例ゲインや電流比例調整ゲイン等の各値について、各電流F/B演算で適宜の値を用いてもよいことは言うまでもない。
次に、各種のフィードバック演算における制御ゲインの調整に伴う操舵フィーリング及び転舵特性の変化について説明する。
まず、操舵部4と転舵部6とが機械的に連結された操舵装置を搭載した車両が略一定の車速SPで走行中に、運転者がゆっくりと操舵する場合を想定する。この場合、例えば図15に示すように、転舵輪5が路面に対してグリップしている通常領域では、操舵トルクThは操舵角θhの増大に基づいて大きくなる。一方、転舵輪5が路面に対するグリップが低下し始める限界領域に差し掛かると、操舵角θhが増大しても操舵トルクThは略一定となり、その後減少する。このような操舵トルクThの動きは、上記図5に示すセルフアライニングトルクSATの動きに近似する。
また、例えば図16に示すように、車両の横加速度LAの増大に基づいて操舵トルクThが大きくなるとともにヒステリシス特性を有するように、横加速度LAと操舵トルクThとの関係が表される場合に、操舵トルクThの操舵角θhに対する動きがセルフアライニングトルクSATの動きに近似し、自然な操舵フィーリングが得られる。ここで、横加速度LAは、路面からラック軸22に作用する軸力と比例関係にある。そのため、軸力と目標操舵トルクTh*との関係が、例えば図17に示す関係となるように該目標操舵トルクTh*を演算すると、操舵角θhと目標操舵トルクTh*との関係が上記図15に示すような関係になり、良好な操舵フィーリングが得られる。なお、上記のように駆動トルクTcは、ラック軸22に作用する軸力に近似するものであり、目標操舵トルク演算部91は、駆動トルクTcと目標操舵トルクTh*との関係を示すマップとして、上記図17に示す関係を模擬するマップを備えている。
次に、従来例として、各種のフィードバック演算における制御ゲインをグリップ状態に基づいて調整しない場合を想定する。この場合、操舵トルクThは、例えば図18において破線で示すように、実線で示す目標操舵トルクTh*に追従しつつも、比較的大きく乖離した変化を示す。そのため、転舵輪5のスリップ角βが限界領域に差し掛かっても、例えば依然として操舵トルクThが操舵角θhの増大に基づいて大きくなることで、限界領域に差し掛かっていることを運転者が認識し難い。この点、本実施形態では、グリップ状態量Grに基づいてトルクF/B演算に係る制御ゲイン、すなわちトルク比例調整ゲインKtpa、トルク積分調整ゲインKtia、トルク微分調整ゲインKtda及びトルクダンピング調整ゲインKtvaが変更され、限界領域ではこれらの制御ゲインの値が大きくなる。そのため、スリップ角βが限界領域に差し掛かった際に、操舵角θhが大きくなっても操舵トルクThが略変化しない状況が的確に再現され、限界領域に差し掛かっていることを運転者が認識し易い。また、限界領域に差し掛かっていることを運転者が認識し、ステアリングホイール3を切り戻すカウンターステアを行った際においても、従来例に比べ、操舵トルクThの目標操舵トルクTh*に対する追従性が高くなるため、通常領域に戻し易くなる。
ところで、運転者がカウンターステアを行う前後で、操舵側モータ13の回転方向は反転する。そのため、カウンターステアを行う際には、通常、操舵側モータ13が有する慣性の影響により大きな操舵トルクThが必要となる。また、カウンターステアを行った後は、同カウンターステアによって入力トルクTin*が変化し、上記(5)式に基づいて演算される目標操舵角θh*は、カウンターステアを行う前よりも切り戻した側の操舵角θhになる。しかし、従来例では操舵角θhが目標操舵角θh*に対して追従しつつも、比較的大きく乖離するため、例えば図19において破線で示すように、操舵角θhがほとんど変化せずに、操舵トルクThが大きくなり易く、所謂引っ掛かり感が生じる。この点、本実施形態では、グリップ状態量Grに基づいて操舵角F/B演算に係る制御ゲイン、すなわち操舵角比例調整ゲイン、操舵角積分調整ゲイン、操舵角微分調整ゲイン及びダンピング調整ゲインが変更され、限界領域ではこれらの制御ゲインの値が大きくなる。そのため、運転者がカウンターステアを行った際に、操舵角θhの目標操舵角θh*に対する追従性が高くなるため、操舵側モータ13が速やかに反転し、引っ掛かり感の発生を抑制して通常領域に戻り易くなる。
また、本実施形態では、グリップ状態量Grに基づいて転舵角F/B演算に係る制御ゲイン、すなわち転舵角比例調整ゲイン、転舵角積分調整ゲイン、転舵角微分調整ゲイン及び転舵ダンピング調整ゲインが変更され、限界領域ではこれらの制御ゲインの値が大きくなる。そのため、スリップ角βが限界領域に差し掛かり、運転者がカウンターステアを行った際、従来例に比べ、転舵対応角θpを目標転舵対応角である目標操舵角θh*に速やかに追従させることができる。すなわち、転舵輪5を素早く転舵させてスリップ角βを通常領域に戻すことができる。
さらに、本実施形態では、グリップ状態量Grに基づいて電流F/B演算に係る制御ゲイン、すなわちd軸及びq軸電流比例調整ゲイン、d軸及びq軸電流積分調整ゲイン、d軸及びq軸電流微分調整ゲインが変更され、限界領域ではこれらの制御ゲインの値が大きくなる。そのため、d軸目標電流値Ids*,Idt*に対するd軸電流値Ids,Idtの追従性、及びq軸目標電流値Iqs*,Iqt*に対するq軸電流値Iqs,Iqtに対する追従性が高くなる。すなわち、操舵側モータ13及び転舵側モータ32の応答性が高くなる。これにより、限界領域では、運転者の操舵に対して操舵側モータ13及び転舵側モータ32が素早く反応し、カウンターステアを行い易くなるとともに、転舵輪5を素早く転舵させてスリップ角βを通常領域に戻すことができる。特に本実施形態の操舵側モータ13では、グリップ状態量Grに基づいてトルクF/B演算に係る制御ゲイン及び操舵角F/B演算に係る制御ゲインが変更されることで、グリップ状態量Grに応じた目標反力トルクTs*を出力する。そのため、操舵側モータ13の応答性を高くすることにより、スリップ角βが限界領域に差し掛かったことを運転者が認識し易くなる作用、及びカウンターステアを行い易くなる作用が顕著に現れる。また、本実施形態の転舵側モータ32では、グリップ状態量Grに基づいて転舵角F/B演算に係る制御ゲインが変更されることで、グリップ状態量Grに応じた目標転舵トルクTt*を出力する。そのため、転舵側モータ32の応答性を高くすることにより、運転者がカウンターステアを行った際に、転舵輪5を素早く転舵させてスリップ角βを通常領域に戻すことができる作用が顕著に現れる。
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)運転者の操舵状態や車両が走行する路面状態に応じて、転舵輪5の路面に対するグリップ状態が変化する。そして、このようにグリップ状態が変化する際に運転者が違和感を覚え易い。この点を踏まえ、本実施形態では、操舵側制御部51は、グリップ状態量Grに基づいて、各種のフィードバック演算に用いる制御ゲインを調整し、この調整された制御ゲインを用いてフィードバック演算を行うことにより、操舵側モータ13の作動を制御してステアリング操作に必要な操舵トルクを変更する。そのため、グリップ状態に応じた適切な操舵フィーリングの実現を通じて、運転者の違和感を低減できる。
(2)トルクF/B制御部92は、グリップ状態量Grに基づいて、トルクF/B演算に用いる制御ゲインを調整する。目標反力トルク演算部62は、そして、同制御ゲインが反映されたトルクF/B成分に基づいて目標反力トルクTs*を演算する。そのため、運転者が入力すべき操舵トルクThの目標操舵トルクTh*に対する追従性がグリップ状態に応じたものとなるように、操舵反力としてモータトルクが付与される。これにより、操舵トルクThの目標操舵トルクTh*に対する追従性をグリップ状態に応じて最適化するような操舵反力を付与でき、操舵フィーリングの向上を通じて運転者の違和感を低減できる。特に、本実施形態では、グリップ状態の低下に基づいて、トルクF/B演算に用いる制御ゲインを大きくするため、操舵トルクThの目標操舵トルクTh*に対する追従性が高くなり、グリップ状態に応じて好適に運転者の違和感を低減できる。
(3)操舵角F/B制御部84は、グリップ状態量Grに基づいて、操舵角F/B演算に用いる制御ゲインを調整する。そして、目標反力トルク演算部62は、同制御ゲインが反映された操舵角F/B成分Tfbhに基づいて目標反力トルクTs*を演算する。そのため、操舵角θhの目標操舵角θh*に対する追従性がグリップ状態に応じたものとなるように、操舵反力としてモータトルクが付与される。これにより、操舵角θhの目標操舵角θh*に対する追従性をグリップ状態に応じて最適化するような操舵反力を付与でき、操舵フィーリングの向上を通じて運転者の違和感を低減できる。特に、本実施形態では、グリップ状態の低下に基づいて、操舵角F/B演算に用いる制御ゲインを大きくするため、操舵角θhの目標操舵角θh*に対する追従性が高くなり、グリップ状態に応じて好適に運転者の違和感を低減できる。
(4)d軸電流F/B制御部113及びq軸電流F/B制御部114は、グリップ状態量Grに基づいて、それぞれ電流F/B演算に用いる制御ゲインを調整する。そして、操舵側モータ制御信号演算部63は、同制御ゲインが反映されたd軸目標電圧値Vds*及びq軸目標電圧値Vqs*に基づいて操舵側モータ制御信号Msを演算する。そのため、操舵側モータ13に供給されるd軸電流値Ids及びq軸電流値Iqsのd軸目標電流値Ids*及びq軸目標電流値Iqs*に対する追従性、すなわち操舵側モータ13の応答性がグリップ状態に応じたものとなる。これにより、操舵側モータ13の応答性をグリップ状態に応じて最適化でき、操舵フィーリングの向上を通じて運転者の違和感を低減できる。特に、本実施形態では、グリップ状態の低下に基づいて、電流F/B演算に用いる制御ゲインを大きくするため、操舵側モータ13の応答性が高くなり、グリップ状態に応じて好適に運転者の違和感を低減できる。
(5)転舵側制御部56は、グリップ状態量Grに基づいて、各種のフィードバック演算に用いる制御ゲインを調整し、この調整された制御ゲインを用いてフィードバック演算を行うことにより、転舵側モータ32の作動を制御して転舵輪5を転舵させる。そのため、グリップ状態に応じた適切な転舵輪5の転舵速度等の転舵特性の実現を通じて、運転者の違和感を低減できる。
(6)転舵角F/B制御部121は、グリップ状態量Grに基づいて、転舵角F/B演算に用いる制御ゲインを調整し、同制御ゲインを用いた転舵角F/B演算により目標転舵トルクTt*を演算する。そのため、転舵対応角θpの目標転舵対応角である目標操舵角θh*に対する追従性がグリップ状態に応じたものとなるように、転舵力としてモータトルクが付与される。これにより、転舵対応角θpの目標操舵角θh*に対する追従性をグリップ状態に応じて最適化するような転舵力を付与でき、転舵特性の向上を通じて運転者の違和感を低減できる。特に、本実施形態では、グリップ状態の低下に基づいて、転舵角F/B演算に用いる制御ゲインを大きくするため、転舵対応角θpの目標操舵角θh*に対する追従性が高くなり、グリップ状態に応じて好適に運転者の違和感を低減できる。
(7)d軸電流F/B制御部133及びq軸電流F/B制御部134は、グリップ状態量Grに基づいて、電流F/B演算に用いる制御ゲインを調整する。そして、転舵側モータ制御信号演算部73は、同制御ゲインが反映されたd軸目標電圧値Vdt*及びq軸目標電圧値Vqt*に基づいて転舵側モータ制御信号Mtを演算する。そのため、転舵側モータ32に供給されるd軸電流値Idt及びq軸電流値Iqtのd軸目標電流値Idt*及びq軸目標電流値Iqt*に対する追従性、すなわち転舵側モータ32の応答性がグリップ状態に応じたものとなる。これにより、転舵側モータ32の応答性をグリップ状態に応じて最適化でき、転舵特性の向上を通じて運転者の違和感を低減できる。特に、本実施形態では、グリップ状態の低下に基づいて、電流F/B演算に用いる制御ゲインを大きくするため、転舵側モータ32の応答性が高くなり、グリップ状態に応じて好適に運転者の違和感を低減できる。
(第2実施形態)
次に、操舵制御装置の第2実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
図20に示すように、本実施形態の操舵装置301は、電動パワーステアリング装置(EPS)として構成されている。操舵装置301は、運転者によるステアリングホイール3の操作に基づいて転舵輪5を転舵させる操舵機構302と、操舵機構302にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するアシスト機構303とを備えている。
操舵機構302は、ステアリングホイール3が固定されるステアリングシャフト311を備えている。また、操舵機構302は、ステアリングシャフト311に連結された転舵軸としてのラック軸312と、ラック軸312が往復動可能に挿通される円筒状のラックハウジング313と、ステアリングシャフト311の回転をラック軸312の往復動に変換するラックアンドピニオン機構314とを備えている。なお、ステアリングシャフト311は、ステアリングホイール3が位置する側から順にコラム軸315、中間軸316、及びピニオン軸317を連結することにより構成されている。
ラック軸312とピニオン軸317とは、ラックハウジング313内に所定の交差角をもって配置されている。ラックアンドピニオン機構314は、ラック軸312に形成されたラック歯312aとピニオン軸317に形成されたピニオン歯317aとが噛合されることにより構成されている。また、ラック軸312の両端には、その軸端部に設けられたボールジョイントからなるラックエンド318を介してタイロッド319がそれぞれ回動自在に連結されている。タイロッド319の先端は、転舵輪5が組付けられた図示しないナックルに連結されている。したがって、操舵装置301では、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト311の回転がラックアンドピニオン機構314によりラック軸312の軸方向移動に変換され、この軸方向移動がタイロッド319を介してナックルに伝達されることにより、転舵輪5の転舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
アシスト機構303は、駆動源であるアシストモータ321と、アシストモータ321の回転を伝達する伝達機構322と、伝達機構322を介して伝達された回転をラック軸312の往復動に変換する変換機構323とを備えている。そして、アシスト機構303は、アシストモータ321の回転を伝達機構322を介して変換機構323に伝達し、変換機構323にてラック軸312の往復動に変換することで操舵機構302にアシスト力を付与する。つまり、操舵装置301では、アシスト機構303から付与されるモータトルクとしてのアシスト力により、ステアリングホイール3の操舵に必要な操舵トルクThが変更される。なお、本実施形態のアシストモータ321には、例えば三相のブラシレスモータが採用され、伝達機構322には、例えばベルト機構が採用され、変換機構323には、例えばボールネジ機構が採用されている。
本実施形態の操舵制御装置300には、車両の車速SPを検出する車速センサ331、及びステアリングシャフト311に付与された操舵トルクThを検出するトルクセンサ332が接続されている。なお、トルクセンサ332は、ピニオン軸317に設けられており、トーションバー333の捩れに基づいて操舵トルクThを検出する。また、操舵制御装置300には、アシストモータ321のモータ角θmを360°の範囲内の相対角で検出する回転センサ334が接続されている。なお、操舵トルクTh及びモータ角θmは、例えば右方向に操舵した場合に正の値、左方向に操舵した場合に負の値として検出する。また、操舵制御装置300には、車両のヨーレートγを検出するヨーレートセンサ335、及び車両の横加速度LAを検出する横加速度センサ336が接続されている。そして、操舵制御装置300は、これら各センサから入力される各状態量に基づいて、アシストモータ321に駆動電力を供給することにより、アシスト機構303の作動、すなわち操舵機構302にラック軸312を往復動させるべく付与するアシスト力を制御する。
次に、操舵制御装置300の構成について説明する。
図21に示すように、操舵制御装置300は、モータ制御信号Maを出力する制御部としてのマイコン351と、モータ制御信号Maに基づいてアシストモータ321に駆動電力を供給する駆動回路352とを備えている。なお、本実施形態の駆動回路352には、例えばFET等の複数のスイッチング素子を有する周知のPWMインバータが採用されている。そして、マイコン351の出力するモータ制御信号Maは、各スイッチング素子のオンオフ状態を規定するものとなっている。これにより、モータ制御信号Maに応答して各スイッチング素子がオンオフし、各相のモータコイルへの通電パターンが切り替わることにより、車載電源Bの直流電力が三相の駆動電力に変換されてアシストモータ321へと出力される。
マイコン351には、上記車速SP、操舵トルクTh、モータ角θm、ヨーレートγ及び横加速度LAが入力される。また、マイコン351には、駆動回路352と各相のモータコイルとの間の接続線353に設けられた電流センサ354により検出される検出値としてのアシストモータ321の各相電流値Iu,Iv,Iwが入力される。なお、図21では、説明の便宜上、各相の接続線353及び各相の電流センサ354をそれぞれ1つにまとめて図示している。そして、マイコン351は、これら各状態量に基づいてモータ制御信号Maを出力する。
詳しくは、マイコン351は、操舵機構302に付与すべきアシスト力に対応した目標アシストトルクTa*を演算する目標アシストトルク演算部361と、モータ制御信号Maを演算するモータ制御信号演算部362とを備えている。
目標アシストトルク演算部361は、入力トルク基礎成分としてトルクF/B成分Tfbtを演算する入力トルク基礎成分演算部371と、反力成分Firを演算する反力成分演算部372とを備えている。入力トルク基礎成分演算部371には、操舵トルクTh及びグリップ状態量Grが入力される。入力トルク基礎成分演算部371は、目標操舵トルクTh*を演算する目標操舵トルク演算部381と、トルクF/B成分Tfbtを演算するトルクF/B制御部382とを備えており、上記第1実施形態の入力トルク基礎成分演算部81と同様の演算処理によりトルクF/B成分Tfbtを演算する。このように演算されたトルクF/B成分Tfbtは、加算器373,383に出力される。
反力成分演算部372には、車速SP、ヨーレートγ、横加速度LA、アシストモータ321のq軸電流値Iq及び目標転舵対応角θp*が入力される。反力成分演算部372は、上記第1実施形態の反力成分演算部82と同様の演算処理により反力成分Firを演算する。
また、目標アシストトルク演算部361は、転舵対応角演算部374と、目標転舵対応角演算部375と、転舵角F/B制御部376とを備えている。転舵対応角演算部374には、モータ角θmが入力される。転舵対応角演算部374は、モータ角θmに基づいて、上記第1実施形態の転舵対応角演算部71と同様の演算処理により、ピニオン軸317の回転角を示す転舵対応角θpを演算する。このように演算された転舵対応角θpは、減算器377に出力される。
目標転舵対応角演算部375は、操舵トルクTh、トルクF/B成分Tfbt、反力成分Fir及び車速SPが入力される。目標転舵対応角演算部375は、これらの状態量に基づいて、上記第1実施形態の目標操舵角演算部83と同様に、モデル式を利用して、目標転舵対応角θp*を演算する。
転舵角F/B制御部376には、減算器377において、目標転舵対応角θp*から転舵対応角θpを差し引いた角度偏差Δθp、及びグリップ状態量Grが入力される。そして、転舵角F/B制御部376は、上記第1実施形態の操舵角F/B制御部84と同様の演算処理により転舵角F/B成分Tfbpを演算する。このように演算された転舵角F/B成分Tfbpは、加算器373に出力される。
そして、目標アシストトルクTa*は、加算器373においてトルクF/B成分Tfbtと転舵角F/B成分Tfbpとを加算することにより、目標アシストトルクTa*を演算する。
モータ制御信号演算部362には、目標アシストトルクTa*及びグリップ状態量Grが入力される。モータ制御信号演算部362は、上記第1実施形態の操舵側モータ制御信号演算部63と同様の演算処理により、モータ制御信号Maを演算する。
このように演算されたモータ制御信号Maは、駆動回路352に出力される。これにより、アシストモータ321には、駆動回路352からモータ制御信号Maに応じた駆動電力が供給される。そして、アシストモータ321は、目標アシストトルクTa*に示されるアシスト力を操舵機構302に付与する。これにより、各種のフィードバック演算における制御ゲインの調整に伴う操舵フィーリング及び転舵特性の変化について、上記第1実施形態と同様の作用が得られる。
なお、目標アシストトルク演算部361は、トルクF/B演算に用いる目標操舵トルクTh*を演算上の軸力である駆動トルクTcに基づいて演算するとともに、転舵角F/B演算に用いる目標転舵対応角θp*を演算上の軸力である反力成分Firに基づいて演算し、これらを足し合わせて目標アシストトルクTa*を演算している。そのため、アシストモータ321が付与する操舵反力は、基本的には運転者の操舵を補助する力であるが、演算上の軸力とラック軸22に作用する実際の軸力との偏差によっては、運転者の操舵に抗する力にもなり得るものである。
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(8)運転者の操舵状態や車両が走行する路面状態に応じて、転舵輪5の路面に対するグリップ状態が変化する。そして、このようにグリップ状態が変化する際に運転者が違和感を覚え易い。この点を踏まえ、本実施形態では、マイコン351は、グリップ状態量Grに基づいて、各種のフィードバック演算に用いる制御ゲインを調整し、この調整された制御ゲインを用いてフィードバック演算を行うことにより、アシストモータ321の作動を制御してステアリング操作に必要な操舵トルクを変更する。そのため、グリップ状態に応じた適切な操舵フィーリングの実現を通じて、運転者の違和感を低減できる。
(9)トルクF/B制御部382は、グリップ状態量Grに基づいて、トルクF/B演算に用いる制御ゲインを調整する。そして、目標アシストトルク演算部361は、同制御ゲインが反映されたトルクF/B成分Tfbtに基づいて目標アシストトルクTa*を演算する。そのため、運転者が入力すべき操舵トルクThの目標操舵トルクTh*に対する追従性がグリップ状態に応じたものとなるように、アシスト力としてモータトルクが付与される。これにより、操舵トルクThの目標操舵トルクTh*に対する追従性をグリップ状態に応じて最適化するようなアシスト力を付与でき、操舵フィーリングの向上を通じて運転者の違和感を低減できる。特に、本実施形態では、グリップ状態の低下に基づいて、トルクF/B演算に用いる制御ゲインを大きくするため、操舵トルクThの目標操舵トルクTh*に対する追従性が高くなり、グリップ状態に応じて好適に運転者の違和感を低減できる。
(10)転舵角F/B制御部376は、グリップ状態量Grに基づいて、転舵角F/B演算に用いる制御ゲインを調整する。そして、目標アシストトルク演算部361は、同制御ゲインが反映された転舵角F/B成分Tfbpに基づいて目標アシストトルクTa*を演算する。そのため、転舵対応角θpの目標転舵対応角θp*に対する追従性がグリップ状態に応じたものとなるように、アシスト力としてモータトルクが付与される。これにより、転舵対応角θpの目標転舵対応角θp*に対する追従性をグリップ状態に応じて最適化するようなアシスト力を付与でき、転舵特性の向上を通じて運転者の違和感を低減できる。特に、本実施形態では、グリップ状態の低下に基づいて、転舵角F/B演算に用いる制御ゲインを大きくするため、転舵対応角θpの目標転舵対応角θp*に対する追従性が高くなり、グリップ状態に応じて好適に運転者の違和感を低減できる。
(11)モータ制御信号演算部362は、グリップ状態量Grに基づいて、電流F/B演算に用いる制御ゲインを調整し、同制御ゲインが反映されたd軸目標電圧値及びq軸目標電圧値に基づいてモータ制御信号Maを演算する。そのため、アシストモータ321に供給されるd軸電流値及びq軸電流値のd軸目標電流値及びq軸目標電流値に対する追従性、すなわちアシストモータ321の応答性がグリップ状態に応じたものとなる。これにより、アシストモータ321の応答性をグリップ状態に応じて最適化でき、転舵特性の向上を通じて運転者の違和感を低減できる。特に、本実施形態では、グリップ状態の低下に基づいて、電流F/B演算に用いる制御ゲインを大きくするため、アシストモータ321の応答性が高くなり、グリップ状態に応じて好適に運転者の違和感を低減できる。
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記各実施形態のトルクF/B制御部92,382において、トルク比例調整ゲインKtpa、トルク積分調整ゲインKtia、トルク微分調整ゲインKtda及びトルクダンピング調整ゲインKtvaの少なくとも1つをグリップ状態量Grに基づいて調整すれば、他の制御ゲインを一定としてもよい。同様に、他のF/B制御部において、少なくとも1つの制御ゲインをグリップ状態量Grに基づいて調整すれば、他の制御ゲインを一定としてもよい。
・上記各実施形態において、例えばトルクF/B制御部92,382がPID制御の出力値にトルクダンピング成分Ttvを加算せずにトルクF/B成分Tfbtを演算してもよい。また、例えばd軸電流F/B制御部113がダンピング成分を演算し、該ダンピング成分をPID制御の出力値に加算してd軸目標電圧値Vds*を演算してもよい。なお、他のF/B制御部においても、ダンピング成分を加算するか否かは、適宜変更可能である。
・上記実施形態では、トルクF/B制御部92,382がPID制御の実行に基づいてトルクF/B成分Tfbtを演算したが、これに限らず、例えばPI制御の実行に基づいてトルクF/B成分Tfbtを演算してもよい。また、PD制御と外乱オブザーバとを組み合わせた構成としたりしてもよく、フィードバック演算の態様は適宜変更可能である。外乱オブザーバとしては、例えば、車両モデルに対する入力トルクから推定される操舵角の推定値と実操舵角との差にオブザーバゲインを乗算して得られる積分型の拡張状態オブザーバを用いることができる。このように、拡張状態オブザーバを用いる場合には、グリップ状態に応じてオブザーバゲインを調整することになる。なお、外乱オブザーバを用いる場合には、フィードバック制御器の応答性を向上するべくフィードフォワード成分を加えて考慮することもできる。同様に、トルクF/B制御部92,382、操舵角F/B制御部84、転舵角F/B制御部121,376、d軸電流F/B制御部113,133及びq軸電流F/B制御部114,134によるフィードバック演算の態様は適宜変更可能である。
・上記各実施形態において、トルク比例調整ゲイン演算部151が、例えば車速SPに応じてトルク比例調整ゲインKtpaを変更してもよい。この場合、トルク比例調整ゲイン演算部151が有するマップを、グリップ状態量Grがグリップ閾値Grthよりも大きな領域では、車速SPの増大に基づいて、トルク比例調整ゲインKtpaが大きくなるように設定することができる。同様に、他の調整ゲイン演算部が対応する調整ゲインを演算する際に、車速SPを加味してもよい。
・上記各実施形態では、車両状態量軸力Fyrから電流軸力Ferを減算したグリップロス度をグリップ状態量Grとしたが、これに限らず、転舵輪5がどの程度グリップしているかを示すグリップ度をグリップ状態量Grとしてもよい。なお、グリップ度は、上記(3)式により、グリップ状態量Grは、下記(6)式のように表わすことができることを踏まえ、グリップ状態量Grは電流軸力Ferを車両状態量軸力Fyrにより除算した値を用いることができる。
グリップ状態量Gr=セルフアライニングトルクSAT/横力Fy…(6)
この場合、例えばトルク比例調整ゲイン演算部151のマップは、グリップ状態量Grがグリップ閾値Grth以上の領域ではトルク比例調整ゲインKtpaが「1」となり、グリップ状態量Grがグリップ閾値Grthよりも小さくなると、該グリップ状態量Grの減少に基づいてトルク比例調整ゲインKtpaが大きくなるように設定できる。
・上記各実施形態のトルク比例調整ゲイン演算部151のマップの形状は適宜変更可能である。例えばグリップ状態量Grがグリップ閾値Grthよりも領域でトルク比例調整ゲインKtpaが「1」より小さな値となるように設定してもよい。同様に、他のフィードバック演算の制御ゲインを調整する調整ゲイン演算部のマップの形状は適宜変更可能である。
・上記各実施形態では、車両状態量軸力Fyrと電流軸力Ferとに基づいてグリップ状態量Grを演算したが、これに限らず、他の軸力を用いてグリップ状態量Grを演算してもよい。具体的には、角度軸力、路面軸力、及び車両状態量軸力のうちのいずれか2つに基づいてグリップ状態量Grを演算することができる。この際、グリップ状態量Grをグリップロス度とする場合には、角度軸力から路面軸力又は車両状態量軸力を減算する、あるいは車両状態量軸力から路面軸力を減算することにより、グリップ状態量Grを演算する。また、グリップ状態量Grをグリップ度とする場合には、路面軸力又は車両状態量軸力を角度軸力で除算する、あるいは路面軸力を車両状態量軸力で除算することにより、グリップ状態量Grを演算する。
なお、路面軸力としては、電流軸力Fer以外に、例えばラック軸22に作用する軸力を検出する軸力センサの検出値に基づく軸力や、転舵輪5をドライブシャフトを介して回転可能に支持するハブユニットにより検出されるタイヤ力に基づく軸力がある。
・上記各実施形態では、反力成分Firとする配分軸力を角度軸力Fibと電流軸力Ferとを配分することにより演算したが、これに限らず、角度軸力、路面軸力、及び車両状態量軸力のうちの少なくとも2つを配分することにより、配分軸力を演算してもよい。また、反力成分演算部82,372が配分軸力に、他の反力を加味した値を反力成分Firとして演算してもよい。こうした他の反力として、例えばステアリングホイール3の操舵角の絶対値が舵角閾値に近づく場合に、更なる切り込み操舵が行われるのに抗する反力であるエンド反力を採用することができる。なお、舵角閾値としては、例えばラックエンド25がラックハウジング23に当接することでラック軸22の軸方向移動が規制される機械的なラックエンド位置よりも中立位置側に設定される仮想ラックエンド位置での転舵対応角θpを用いることができる。
・上記各実施形態において、配分軸力における電流軸力Fer及び角度軸力Fibの配分割合を、車速SP以外のパラメータに応じて配分割合を変更してもよい。こうしたパラメータとしては、例えば車載のエンジン等の制御パターンの設定状態を示すドライブモード等を用いることができる。
・上記第1実施形態では、電流軸力Ferをq軸電流値Iqtに基づいて演算したが、これに限らず、例えばq軸目標電流値Iqt*に基づいて演算してもよい。同様に、上記第2実施形態において、電流軸力Ferを、例えばq軸目標電流値Iq*に基づいて演算してもよい。
・上記第1実施形態では、角度軸力Fibを目標転舵対応角である目標操舵角θh*に基づいて演算したが、これに限らず、例えば操舵角θhや転舵対応角θpに基づいて演算してもよく、また操舵トルクTh等、他のパラメータを加味する等、他の方法で演算してもよい。同様に、上記第2実施形態において、角度軸力Fibを他の方法で演算してもよい。
・上記各実施形態では、配分軸力を反力成分Firとしたが、配分軸力を用いず、例えば電流軸力Ferのみを反力成分Firとしてもよい。
・上記第1実施形態では、入力トルク基礎成分として目標操舵トルクTh*に操舵トルクThを追従させるトルクF/B制御の実行により演算されるトルクF/B成分Tfbtを用い、トルクF/B成分Tfbtと操舵角F/B成分Tfbhとを足し合わせることにより目標反力トルクTs*を演算した。しかし、これに限らず、目標反力トルクTs*の演算態様は適宜変更可能である。例えば入力トルク基礎成分の演算態様として、操舵トルクThの絶対値が大きいほど、大きな絶対値を有する入力トルク基礎成分を演算してもよい。また、操舵角F/B制御を実行せず、例えば入力トルクTin*に基づいて目標反力トルクTs*を直接演算する態様や、反力成分Firに基づいて目標反力トルクTs*を直接演算する態様を採用可能である。さらに、例えば反力成分Firに基づいて目標操舵トルクを演算し、該目標操舵トルクに操舵トルクThを追従させるトルクF/B制御の実行により得られる値を目標反力トルクTs*として演算してもよい。同様に、上記第2実施形態において、目標アシストトルクTa*の演算態様は適宜変更可能である。
・上記第1実施形態では、制御対象となる操舵装置2を、操舵部4と転舵部6との間の動力伝達が分離したリンクレスの構造としたが、これに限らず、クラッチにより操舵部4と転舵部6との間の動力伝達を分離可能な構造の操舵装置を制御対象としてもよい。
1,300…操舵制御装置、2…操舵装置、3…ステアリングホイール、4…操舵部、5…転舵輪、6…転舵部、11,311…ステアリングシャフト、12…操舵側アクチュエータ、13…操舵側モータ、21,317…ピニオン軸、22,312…ラック軸、31…転舵側アクチュエータ、32…転舵側モータ、51…操舵側制御部、52…操舵側駆動回路、56…転舵側制御部、57…転舵側駆動回路、62…目標反力トルク演算部、63…操舵側モータ制御信号演算部、72…目標転舵トルク演算部、73…転舵側モータ制御信号演算部、83…目標操舵角演算部、84…操舵角F/B制御部、91…目標操舵トルク演算部、92…トルクF/B制御部、101…角度軸力演算部、102…電流軸力演算部、105…車両状態量軸力演算部、106…グリップ状態量演算部、113…d軸電流F/B制御部、114…q軸電流F/B制御部、121…転舵角F/B制御部、133…d軸電流F/B制御部、134…q軸電流F/B制御部、301…操舵装置、302…操舵機構、303…アシスト機構、321…アシストモータ、351…マイコン、352…駆動回路、361…目標アシストトルク演算部、362…モータ制御信号演算部、374…転舵対応角演算部、375…目標転舵対応角演算部、376…転舵角F/B制御部、381…目標操舵トルク演算部、382…トルクF/B制御部、Fer…電流軸力、Fib…角度軸力、Fyr…車両状態量軸力、Fir…反力成分、Gr…グリップ状態量、Ids,Idt…d軸電流値、Iq,Iqs,Iqt…q軸電流値、Ids*,Idt*…d軸目標電流値、Iq*,Iqs*,Iqt*…q軸目標電流値、Ktd…トルク微分ゲイン、Kti…トルク積分ゲイン、Ktp…トルク比例ゲイン、Ktv…トルクダンピングゲイン、LA…横加速度、Ma…モータ制御信号、Ms…操舵側モータ制御信号、Mt…転舵側モータ制御信号、SP…車速、Ta*…目標アシストトルク、Th…操舵トルク、Th*…目標操舵トルク、Ts*…目標反力トルク、Tt*…目標転舵トルク、Tfbh…操舵角F/B成分、Tfbp…転舵角F/B成分、Tfbt…トルクF/B成分、Vds*…d軸目標電圧値、Vqs*…q軸目標電圧値、θh…操舵角、θp…転舵対応角、θh*…目標操舵角、θp*…目標転舵対応角。

Claims (11)

  1. モータを駆動源とするアクチュエータから付与されるモータトルクによりステアリングホイールの操舵に必要な操舵トルクを可変とする操舵装置を制御対象とし、
    前記モータの作動を制御するためのモータ制御信号を出力する制御部と、前記モータ制御信号に基づいて前記モータに駆動電力を供給する駆動回路とを備えた操舵制御装置において、
    前記制御部は、各種のセンサにより検出される検出値を目標値に追従させるフィードバック演算を含んで前記モータ制御信号を生成するものであって、
    前記操舵装置の転舵輪から該転舵輪が連結される転舵軸に作用する複数種の軸力を互いに異なる状態量に基づいて演算する複数の軸力演算部と、
    前記複数の軸力は、前記転舵輪に対して路面から伝達される路面情報を含まない角度軸力と、前記路面情報を含む路面軸力と、前記路面情報のうち、前記操舵装置が搭載される車両の横方向への挙動の変化を通じて伝達可能な路面情報を含む車両状態量軸力とを含み、
    前記複数種の軸力のうちの少なくともいずれか2つに基づいてグリップ状態量を演算するグリップ状態量演算部とを備え、
    前記制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記フィードバック演算に用いる制御ゲインを調整する操舵制御装置。
  2. 請求項1に記載の操舵制御装置において、
    前記操舵装置は、操舵部と、前記操舵部に入力される操舵に応じて転舵輪を転舵させる転舵部との間の動力伝達が分離した構造を有するものであり、
    前記モータは、前記操舵部に入力される操舵に抗する力である操舵反力として前記モータトルクを付与する操舵側モータであって、
    前記制御部は、
    前記操舵反力の目標値となる目標反力トルクを演算する目標反力トルク演算部と、
    前記目標反力トルクに基づいて前記モータ制御信号である操舵側モータ制御信号を演算する操舵側モータ制御信号演算部とを備え、
    前記目標反力トルク演算部は、
    前記操舵部に入力すべき前記操舵トルクの目標値となる目標操舵トルクを演算する目標操舵トルク演算部と、
    前記フィードバック演算として前記検出値である前記操舵トルクを前記目標操舵トルクに追従させるトルクフィードバック演算を実行することにより、トルクフィードバック成分を演算するトルクフィードバック制御部とを備え、
    前記トルクフィードバック成分に基づいて前記目標反力トルクを演算するものであり、
    前記トルクフィードバック制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記トルクフィードバック演算に用いる制御ゲインを調整する操舵制御装置。
  3. 請求項1又は2に記載の操舵制御装置において、
    前記操舵装置は、操舵部と、前記操舵部に入力される操舵に応じて転舵輪を転舵させる転舵部との間の動力伝達が分離した構造を有するものであり、
    前記モータは、前記操舵部に入力される操舵に抗する力である操舵反力として前記モータトルクを付与する操舵側モータであって、
    前記制御部は、
    前記操舵反力の目標値となる目標反力トルクを演算する目標反力トルク演算部と、
    前記目標反力トルクに基づいて前記モータ制御信号である操舵側モータ制御信号を演算する操舵側モータ制御信号演算部とを備え、
    前記目標反力トルク演算部は、
    前記操舵部に連結される前記ステアリングホイールの操舵角の目標値となる目標操舵角を演算する目標操舵角演算部と、
    前記フィードバック演算として前記検出値である前記操舵角を前記目標操舵角に追従させる操舵角フィードバック演算を実行することにより、操舵角フィードバック成分を演算する操舵角フィードバック制御部とを備え、
    前記操舵角フィードバック成分に基づいて前記目標反力トルクを演算するものであり、
    前記操舵角フィードバック制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記操舵角フィードバック演算に用いる制御ゲインを調整する操舵制御装置。
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載の操舵制御装置において、
    前記操舵装置は、操舵部と、前記操舵部に入力される操舵に応じて転舵輪を転舵させる転舵部との間の動力伝達が分離した構造を有するものであり、
    前記モータは、前記操舵部に入力される操舵に抗する力である操舵反力として前記モータトルクを付与する操舵側モータであって、
    前記制御部は、
    前記操舵反力の目標値となる目標反力トルクを演算する目標反力トルク演算部と、
    前記目標反力トルクに基づいて前記モータ制御信号である操舵側モータ制御信号を演算する操舵側モータ制御信号演算部とを備え、
    前記操舵側モータ制御信号演算部は、
    前記目標反力トルクに応じた目標電流値を演算する目標電流値演算部と、
    前記フィードバック演算として前記検出値である前記操舵側モータに供給される実電流値を前記目標電流値に追従させる電流フィードバック演算を実行することにより、電流フィードバック成分を演算する電流フィードバック制御部とを備え、
    前記電流フィードバック成分に基づいて前記操舵側モータ制御信号を演算するものであり、
    前記電流フィードバック制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記電流フィードバック演算に用いる制御ゲインを調整する操舵制御装置。
  5. モータを駆動源とするアクチュエータから付与されるモータトルクにより転舵輪が連結される転舵軸を往復動させる操舵装置を制御対象とし、
    前記モータの作動を制御するためのモータ制御信号を出力する制御部と、前記モータ制御信号に基づいて前記モータに駆動電力を供給する駆動回路とを備えた操舵制御装置において、
    前記制御部は、各種のセンサにより検出される検出値を目標値に追従させるフィードバック演算を含んで前記モータ制御信号を生成するものであって、
    前記転舵輪から該転舵輪が連結される転舵軸に作用する複数種の軸力を互いに異なる状態量に基づいて演算する複数の軸力演算部と、
    前記複数の軸力は、前記転舵輪に対して路面から伝達される路面情報を含まない角度軸力と、前記路面情報を含む路面軸力と、前記路面情報のうち、前記操舵装置が搭載される車両の横方向への挙動の変化を通じて伝達可能な路面情報を含む車両状態量軸力とを含み、
    前記複数種の軸力のうちの少なくともいずれか2つに基づいてグリップ状態量を演算するグリップ状態量演算部とを備え、
    前記制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記フィードバック演算に用いる制御ゲインを調整する操舵制御装置。
  6. 請求項5に記載の操舵制御装置において、
    前記操舵装置は、操舵部と、前記操舵部に入力される操舵に応じて転舵輪を転舵させる転舵部との間の動力伝達が分離した構造を有するものであり、
    前記モータは、前記転舵輪を転舵させる力である転舵力として前記モータトルクを付与する転舵側モータであって、
    前記制御部は、
    前記転舵力の目標値となる目標転舵トルクを演算する目標転舵トルク演算部と、
    前記目標転舵トルクに基づいて前記モータ制御信号である転舵側モータ制御信号を演算する転舵側モータ制御信号演算部とを備え、
    前記目標転舵トルク演算部は、前記転舵輪の転舵角に換算可能な回転軸の回転角である転舵対応角を、該転舵対応角の目標値となる目標転舵対応角に追従させる転舵角フィードバック演算を実行することにより、転舵角フィードバック成分を演算する転舵角フィードバック制御部を備え、前記転舵角フィードバック成分に基づいて前記目標転舵トルクを演算するものであり、
    前記転舵角フィードバック制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記転舵角フィードバック演算に用いる制御ゲインを調整する操舵制御装置。
  7. 請求項5又は6に記載の操舵制御装置において、
    前記操舵装置は、操舵部と、前記操舵部に入力される操舵に応じて転舵輪を転舵させる転舵部との間の動力伝達が分離した構造を有するものであり、
    前記モータは、前記転舵輪を転舵させる力である転舵力として前記モータトルクを付与する転舵側モータであって、
    前記制御部は、
    前記転舵力の目標値となる目標転舵トルクを演算する目標転舵トルク演算部と、
    前記目標転舵トルクに基づいて前記モータ制御信号である転舵側モータ制御信号を演算する転舵側モータ制御信号演算部とを備え、
    前記転舵側モータ制御信号演算部は、
    前記目標転舵トルクに応じた目標電流値を演算する目標電流値演算部と、
    前記フィードバック演算として前記検出値である前記転舵側モータに供給される実電流値を前記目標電流値に追従させる電流フィードバック演算を実行することにより、電流フィードバック成分を演算する電流フィードバック制御部とを備え、
    前記電流フィードバック成分に基づいて前記転舵側モータ制御信号を演算するものであり、
    前記電流フィードバック制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記電流フィードバック演算に用いる制御ゲインを調整する操舵制御装置。
  8. 請求項1又は5に記載の操舵制御装置において、
    前記操舵装置は、ステアリングホイールの操作に基づいて転舵輪を転舵させる操舵機構を有するものであり、
    前記モータは、ステアリング操作を補助するためのアシスト力として前記モータトルクを付与するアシストモータであって、
    前記制御部は、
    前記アシスト力の目標値となる目標アシストトルクを演算する目標アシストトルク演算部と、
    前記目標アシストトルクに基づいて前記モータ制御信号を演算するモータ制御信号演算部とを備え、
    前記目標アシストトルク演算部は、
    前記操舵機構に入力すべき操舵トルクの目標値となる目標操舵トルクを演算する目標操舵トルク演算部と、
    前記フィードバック演算として前記検出値である前記操舵トルクを前記目標操舵トルクに追従させるトルクフィードバック演算を実行することにより、トルクフィードバック成分を演算するトルクフィードバック制御部とを備え、
    前記トルクフィードバック成分に基づいて前記目標アシストトルクを演算するものであり、
    前記トルクフィードバック制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記トルクフィードバック演算に用いる制御ゲインを調整する操舵制御装置。
  9. 請求項1、5及び8のいずれか一項に記載の操舵制御装置において、
    前記操舵装置は、ステアリングホイールの操作に基づいて転舵輪を転舵させる操舵機構を有するものであり、
    前記モータは、ステアリング操作を補助するためのアシスト力として前記モータトルクを付与するアシストモータであって、
    前記制御部は、
    前記アシスト力の目標値となる目標アシストトルクを演算する目標アシストトルク演算部と、
    前記目標アシストトルクに基づいて前記モータ制御信号を演算するモータ制御信号演算部とを備え、
    前記目標アシストトルク演算部は、
    前記転舵輪の転舵角に換算可能な回転軸の回転角である転舵対応角の目標値となる目標転舵対応角を演算する目標転舵対応角演算部と、
    前記フィードバック演算として前記検出値である前記転舵対応角を前記目標転舵対応角に追従させる転舵角フィードバック演算を実行することにより、転舵角フィードバック成分を演算する転舵角フィードバック制御部とを備え、
    前記転舵角フィードバック成分に基づいて前記目標アシストトルクを演算するものであり、
    前記転舵角フィードバック制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記転舵角フィードバック演算に用いる制御ゲインを調整する操舵制御装置。
  10. 請求項1、5、8及び9のいずれか一項に記載の操舵制御装置において、
    前記操舵装置は、ステアリングホイールの操作に基づいて転舵輪を転舵させる操舵機構を有するものであり、
    前記モータは、ステアリング操作を補助するためのアシスト力として前記モータトルクを付与するアシストモータであって、
    前記制御部は、
    前記アシスト力の目標値となる目標アシストトルクを演算する目標アシストトルク演算部と、
    前記目標アシストトルクに基づいて前記モータ制御信号を演算するモータ制御信号演算部とを備え、
    前記モータ制御信号演算部は、
    前記目標アシストトルクに応じた目標電流値を演算する目標電流値演算部と、
    前記フィードバック演算として前記検出値である前記アシストモータに供給される実電流値を前記目標電流値に追従させる電流フィードバック演算を実行することにより、電流フィードバック成分を演算する電流フィードバック制御部とを備え、
    前記電流フィードバック成分に基づいて前記モータ制御信号を演算するものであり、
    前記電流フィードバック制御部は、前記グリップ状態量に基づいて、前記電流フィードバック演算に用いる制御ゲインを調整する操舵制御装置。
  11. 請求項1~10のいずれか一項に記載の操舵制御装置において、
    前記グリップ状態量が、前記転舵輪のグリップ状態が限界領域であることを示す場合には、前記転舵輪のグリップ状態が通常領域であることを示す場合よりも、前記制御ゲインを大きくする操舵制御装置。
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