JP2019130958A - 操舵制御装置 - Google Patents

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Isao Namikawa
勲 並河
厚二 安樂
Koji Anraku
厚二 安樂
祐輔 柿本
Yusuke KAKIMOTO
祐輔 柿本
松田 哲
Satoru Matsuda
哲 松田
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Abstract

【課題】車両偏向の発生を抑制できる操舵制御装置を提供すること。【解決手段】操舵部と、転舵部とが機械的に分離された構造を有し、転舵部に前記転舵輪を転舵させる力である転舵力を与える転舵側モータと、を備えたステアバイワイヤ式操舵装置を制御対象とする操舵制御装置であって、転舵輪の転舵角に換算可能な転舵対応角と、操舵部の操舵に応じて設定される目標操舵角との角度偏差Δθpが小さくなるように転舵側モータをフィードバック制御する転舵制御部を備え、転舵側制御部は、車両が直進しているときは、車両が直進していないときと比較してフィードバック制御の角度偏差Δθpに基づき得られる比例項P及び積分項Iを、角度偏差Δθpが小さくなり難くなるように下限ガード設定部92で演算される最終ゲインKfにより制限する制限処理を実行する。【選択図】図3

Description

本発明は、操舵制御装置に関する。
特許文献1には、運転者が操作するステアリングホイールと、ステアリングホイールの操作に応じて左右に転舵する転舵輪との間の動力伝達が分離された構造を有するステアバイワイヤ式操舵装置が開示されている。
上記ステアバイワイヤ式操舵装置は、ステアリングホイールに操舵反力を付与する操舵反力アクチュエータ、及びステアリングホイールの操舵角に応じて転舵輪を左右に転舵させる転舵力を発生させる転舵アクチュエータの作動をそれぞれ制御する操舵制御装置を備えている。操舵制御装置は、転舵輪の転舵角がステアリングホイールの操舵角に応じて設定される目標値と一致するように転舵アクチュエータをフィードバック制御する。
特開2004−306717号公報
転舵角は、車両が直進しているときの角度が中立位置として設定されている。そのため、車両が直進している場合、ステアリングホイールの操舵角及び転舵輪の転舵角は、いずれも中立位置となる。
しかし、操舵装置の組み付け公差等の影響により、車両が直進しているときの転舵角からずれた角度が転舵角の中立位置となることがある。この場合、転舵角を目標値に一致させるように転舵アクチュエータをフィードバック制御すると、車両が直進しているときにステアリングホイールの操舵角が中立位置からずれた状態となり、ひいてはステアリングホイールを中立位置にすることで転舵輪が転舵され、車両が直進しない状態が発生する、すなわち車両偏向が発生する。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両偏向の発生を抑制できる操舵制御装置を提供することにある。
上記目的を達成する操舵制御装置は、ステアリングホイールに連結される操舵部と、前記操舵部の操舵に応じて転舵輪を転舵させる転舵部とが機械的に連結可能な構造又は機械的に分離された構造を有し、前記操舵部の操舵に抗する力である操舵反力を与える操舵側モータと、前記転舵部に前記転舵輪を転舵させる力である転舵力を与える転舵側モータと、を備えたステアバイワイヤ式操舵装置を制御対象とする操舵制御装置を前提としている。前記転舵輪の転舵角に換算可能な状態量と、前記操舵部の操舵に応じて設定される当該状態量の目標値との偏差が小さくなるように前記転舵側モータをフィードバック制御する制御部を備え、前記制御部は、車両が直進しているときは、車両が直進していないときと比較して前記フィードバック制御の前記偏差に基づき得られる制御項を前記偏差が小さくなり難くなるように制限する制限処理を実行する。
この構成によれば、車両が直進しているときは、操舵部が操舵されて状態量の目標値に変化があって偏差が生じたとしても、当該偏差が小さくなり難い状態となる。このため、操舵部が操舵されたとしても、フィードバック制御が転舵側モータに反映され難くなる。すなわち、ステアリングホイールの操舵角が、転舵輪の転舵角が中立位置となるときの角度から当該操舵角の中立位置に変更されても、転舵輪の転舵角は中立位置から変化し難い。したがって、車両偏向の発生を抑えることができる。
前記制御部は、前記制御部は、前記制御項として前記偏差に基づき得られる比例項、積分項、及び微分項を用いる前記フィードバック制御を実行し、前記比例項及び前記積分項に対してのみ前記制限処理を実行することが好ましい。
この構成によれば、フィードバック制御において、制御項のうち比例項及び積分項については制限処理による制限を反映させる。一方で、フィードバック制御において、制御項のうちの転舵輪の転舵の応答性に影響を与える微分項については制限処理による制限を行わない。これにより、操舵部の操舵速度が大きくなり、それに伴って上記目標値の変化速度が大きくなるほど、転舵輪の転舵の応答性が、微分項についての上記制限を行う場合と比較して、高くなる。したがって、比例項及び積分項に対して制限処理を行うことで車両偏向の発生を抑制しつつも、車両進行方向の迅速な変更を意図したステアリングホイールの操作がなされた場合には、転舵輪の転舵の応答性を確保することができる。
前記制御部は、前記制限処理として、前記積分項を「0」に設定することが好ましい。
車両が直進している場合、ステアリングホイールの操舵角を中立位置に維持している状態が継続されると、積分項を制限したとしても当該積分項は徐々に増大する。積分項が増大すると、制御部により演算されるフィードバック制御量が大きくなるため、制限処理を実行することによる車両偏向の発生の抑制効果が低下する。
その点、この構成では、積分項を「0」に設定するため、車両偏向の発生の抑制効果の低下を抑えることができる。
前記制御部は、前記制限処理として、前記積分項の積分動作を停止させることが好ましい。
この構成によれば、制限処理の実行中に積分動作を停止させることで、車両進行方向の迅速な変更を意図したステアリングホイールの操作がなされた場合には、操舵の違和感を運転者に与えることを低減できる。
前記制御部は、前記操舵部の操舵状態を示す状態量が、車両が直進している状態に維持されることを示す当該状態量の下限値を下回ることを条件に、前記制限処理の実行を設定し、当該状態量が前記下限値以上となることを条件に、前記制限処理の非実行を設定することが好ましい。
この構成によれば、車両進行方向の迅速な変更を意図したステアリングホイールの操作がなされた場合には、制限処理を非実行とし、運転者の意図を好適に反映させた制御を実現することができる。
ここで、運転者は、車速が速いほど車両偏向の発生を感じやすく、車速が低いほど車両偏向の発生を感じにくい。
そのため、前記制御部は、車両が直進している場合、車速が規定値を超えるときに前記制限処理の実行及び非実行を設定し、前記車速が前記規定値以下となるときに前記制限処理の非実行を設定することが好ましい。
そのため、制限処理を実施するための条件を最適化することができる。
本発明によれば、車両偏向の発生を抑制できる。
ステアバイワイヤ式操舵装置の概略構成図。 操舵制御装置のブロック図。 転舵側目標電流値設定部のブロック図。 不感帯ゲイン演算部のマップ。 下限ガード値演算部のブロック図。 変形例のステアバイワイヤ式操舵装置のブロック図。
以下、操舵制御装置の一実施形態を説明する。
図1に示すように、操舵制御装置1は、ステアリングホイール11に連結される操舵部3と、操舵部3の操舵に応じて転舵輪4を転舵させる転舵部5とが機械的に分離された構造を有するリンクレスのステアバイワイヤ式操舵装置2を制御対象としている。
操舵部3は、ステアリングホイール11が一体回転可能に固定されるステアリングシャフト12と、ステアリングシャフト12に操舵反力を付与する操舵側アクチュエータ13とを備えている。操舵側アクチュエータ13は、駆動源となる操舵側モータ14と、操舵側モータ14の回転を減速してステアリングシャフト12に伝達する操舵側減速機15とを備えている。
転舵部5は、第1ピニオン軸31と、第1ピニオン軸31に連結されたラック軸32と、ラック軸32を往復動可能に収容するラックハウジング33とを備えている。第1ピニオン軸31とラック軸32とは、所定の交差角をもって配置されている。第1ピニオン軸31に形成された第1ピニオン歯31aとラック軸32に形成された第1ラック歯32aとが噛み合うことによって第1ラックアンドピニオン機構34が構成されている。第1ラックアンドピニオン機構34によりラック軸32は、その軸方向一端側が往復動可能に支持されている。ラック軸32の両端には、ボールジョイント35を介してタイロッド36が連結されており、タイロッド36の先端は、転舵輪4が組み付けられた図示しないナックルに連結されている。
また、転舵部5には、第2ピニオン軸42と、第2ピニオン軸42を介してラック軸32に転舵輪4を転舵させる転舵力を付与する転舵側アクチュエータ41とを備えている。転舵側アクチュエータ41は、駆動源となる転舵側モータ43と、転舵側モータ43の回転を減速して第2ピニオン軸42に伝達する転舵側減速機44とを備えている。第2ピニオン軸42とラック軸32とは、所定の交差角をもって配置されている。第2ピニオン軸42に形成された第2ピニオン歯42aとラック軸32に形成された第2ラック歯32bとが噛み合うことによって第2ラックアンドピニオン機構45が構成されている。第2ラックアンドピニオン機構45によりラック軸32は、その軸方向他端側が往復動可能に支持されている。
このように構成されたステアバイワイヤ式操舵装置2では、運転者によるステアリングホイール11の操作に応じて転舵側アクチュエータ41により第2ピニオン軸42が回転駆動され、この回転が第2ラックアンドピニオン機構45によりラック軸32の軸方向の往復動に変換される。ひいては転舵輪4の転舵角が変更される。
操舵制御装置1は、操舵側アクチュエータ13及び転舵側アクチュエータ41に接続されており、これらの作動を制御する。なお、操舵制御装置1は、図示しない中央処理装置(CPU)やメモリを備えており、所定の演算周期ごとにメモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することによって、各種制御が実行される。
操舵制御装置1には、車両の車速SPDを検出する車速センサ51、及びステアリングシャフト12に付与された操舵トルクTrqを検出するトルクセンサ52が接続されている。トルクセンサ52は、ステアリングシャフト12における操舵側減速機15との連結部分よりもステアリングホイール11側に設けられている。また、操舵制御装置1には、操舵側モータ14の回転角θsを検出する操舵側回転角センサ53、及び転舵側モータ43の回転角θtを検出する転舵側回転角センサ54が接続されている。さらに、操舵制御装置1には、横加速度Gを検出する横加速度センサ55及びヨーレートYRを検出するヨーレートセンサ56、が接続されている。ヨーレートYRとは、車両の重心点を通る鉛直軸まわりの回転角速度(車両の旋回方向への回転角の変化速度)である。横加速度Gとは、車両を上からみたとき、車両の進行方向に対して直交する左右方向に働く加速度である。
そして、操舵制御装置1は、車速SPD、操舵トルクTrq、回転角θs,θt、ヨーレートYR及び横加速度Gの各種状態量に基づいて操舵側モータ14及び転舵側モータ43の作動を制御する。なお、操舵トルクTrq及び回転角θs,θtは、ステアリングホイール11を一方向(本実施形態では、右方向)に操舵した場合に正の値、他方向(本実施形態では、左方向)に操舵した場合に負の値として検出される。
操舵制御装置1の電気的構成について説明する。
図2に示すように、操舵制御装置1は、操舵側モータ制御信号Msを出力する操舵側制御部61と、操舵側モータ制御信号Msに基づいて操舵側モータ14に駆動電力を供給する操舵側駆動回路62とを備えている。また、操舵制御装置1は、転舵側モータ制御信号Mtを出力する転舵側制御部63と、転舵側モータ制御信号Mtに基づいて転舵側モータ43に駆動電力を供給する転舵側駆動回路64とを備えている。なお、本実施形態の操舵側駆動回路62及び転舵側駆動回路64には、複数のスイッチング素子を有する周知のPWMインバータが採用されている。操舵側モータ制御信号Ms及び転舵側モータ制御信号Mtは、操舵側駆動回路62及び転舵側駆動回路64の各スイッチング素子のオンオフ状態を規定するゲートオンオフ信号となっている。操舵制御装置1は、所定の演算周期ごとに、以下に説明する各制御ブロックに示される各演算処理を実行し、操舵側モータ制御信号Ms及び転舵側モータ制御信号Mtを生成する。そして、操舵側モータ制御信号Ms及び転舵側モータ制御信号Mtが操舵側駆動回路62及び転舵側駆動回路64に出力されることにより、各スイッチング素子がオンオフし、車載電源27から操舵側モータ14及び転舵側モータ43に駆動電力がそれぞれ供給される。これにより、操舵側アクチュエータ13及び転舵側アクチュエータ41の作動が制御される。
次に、操舵側制御部61について説明する。
操舵側制御部61には、車速SPD、操舵トルクTrq及び回転角θsが入力される。また、操舵側制御部61には、操舵側駆動回路62と操舵側モータ14のモータコイルとの間の接続線65に設けられた電流センサ66により検出される操舵側モータ14の電流値Isが入力される。操舵側制御部61は、車速SPD、操舵トルクTrq、回転角θs及び電流値Isの各種状態量に基づいて操舵側モータ制御信号Msを生成して出力する。なお、操舵側モータ14は、三相ブラシレスモータが採用されている。そのため、本来であれば接続線65は操舵側モータ14の各相のモータコイルにそれぞれ接続されるが、説明の便宜上、1つにまとめて図示している。
操舵側制御部61は、入力トルク基礎成分Tb*を演算する基礎成分演算部71と、目標操舵角θh*を演算する目標操舵角演算部72と、操舵側目標電流値Is*を演算する操舵側目標電流値設定部73と、操舵側モータ制御信号Msを生成する操舵側モータ制御信号生成部74とを備えている。また、操舵側制御部61は、操舵側モータ14の回転角θsに基づいてステアリングホイール11の操舵角θhを演算する操舵角演算部75と、操舵角θhを微分することによりステアリングホイール11の操舵速度ωを演算する操舵速度演算部77とを備えている。操舵角演算部75は、入力される回転角θsを、例えばステアリングホイール11の操舵中立から操舵側モータ14の回転数をカウントすることにより、360°を超える範囲の絶対角に換算して取得する。そして、操舵角演算部75は、この絶対角に換算された回転角に操舵側減速機15の回転速度比に基づく換算係数Ksを乗算することで操舵角θhを演算する。
基礎成分演算部71には、操舵トルクTrqが入力される。基礎成分演算部71は、操舵トルクTrqに基づいて操舵トルクTrqの絶対値が大きいほど、大きな絶対値を有する入力トルク基礎成分(反力基礎成分)Tb*を演算する。入力トルク基礎成分Tb*は、加算器78に出力される。加算器78では、入力トルク基礎成分Tb*に操舵トルクTrqが足し合わされることで入力トルクTrq*が演算され、目標操舵角演算部72に出力される。
目標操舵角演算部72は、入力トルクTrq*と目標操舵角θh*とを関係づけるモデル式を利用して、目標操舵角θh*を演算する。このモデル式は、ステアリングホイール11と転舵輪4とが機械的に連結されたものにおいて、ステアリングホイール11の回転に伴って回転する回転軸のトルクと回転角との関係を定めて表したものであり、ステアバイワイヤ式操舵装置2の摩擦等をモデル化した粘性係数C、ステアバイワイヤ式操舵装置2の慣性をモデル化した慣性係数Jを用いて表したものである。なお、粘性係数C及び慣性係数Jは、車速SPDに応じて可変設定される。
操舵側目標電流値設定部73には、減算器76において目標操舵角θh*から操舵角θhが差し引かれた角度偏差Δθhが入力される。操舵側目標電流値設定部73は、角度偏差Δθhに基づき操舵角θhを目標操舵角θh*にフィードバック制御するための制御量として、操舵側モータ14が発生させる操舵反力に対応した駆動電流の目標値である操舵側目標電流値Is*を演算する。
操舵側モータ制御信号生成部74には、操舵側目標電流値Is*、回転角θs、及び電流値Isが入力される。操舵側モータ制御信号生成部74は、これらの各種状態量に基づいてdq座標系における電流フィードバック制御を実行することにより操舵側駆動回路62に出力する操舵側モータ制御信号Msを生成する。これにより、操舵側モータ制御信号Msに応じた駆動電力が操舵側駆動回路62から操舵側モータ14に出力され、操舵側モータ14の作動が制御される。
次に、転舵側制御部63について説明する。
転舵側制御部63には、回転角θt及び目標操舵角θh*が入力される。また、転舵側制御部63には、転舵側駆動回路64と転舵側モータ43のモータコイルとの間の接続線67に設けられた電流センサ68により検出される転舵側モータ43の電流値Itが入力される。さらに、転舵側制御部63には、操舵トルクTrq、車速SPD、ヨーレートYR、横加速度G及び操舵速度ωが入力される。転舵側制御部63は、回転角θt、目標操舵角θh*、電流値It、操舵トルクTrq、車速SPD、ヨーレートYR、横加速度G及び操舵速度ωの各種状態量に基づいて転舵側モータ制御信号Mtを生成して出力する。なお、転舵側モータ43は、三相ブラシレスモータが採用されている。そのため、本来であれば接続線67は転舵側モータ43の各相のモータコイルにそれぞれ接続されるが、説明の便宜上、1つにまとめて図示している。
転舵側制御部63は、第2トルク指令値Ta2*を演算するフィードフォワード制御部85と、転舵側目標電流値It*を演算する転舵側目標電流値設定部82と、転舵側モータ制御信号Mtを生成する転舵側モータ制御信号生成部83とを備えている。また、転舵側制御部63は、転舵側モータ43の回転角θtに基づいて転舵輪4の転舵角に換算可能な状態量である第1ピニオン軸31の転舵対応角θpを演算する転舵対応角演算部81を備えている。転舵側制御部63は、入力される回転角θtを、例えば車両が直進するとき操舵中立からの転舵側モータ43の回転数をカウントすることにより、360°を超える範囲の絶対角に換算して取得する。そして、転舵対応角演算部81は、この絶対角に換算された回転角に転舵側減速機44の回転速度比、及び第1及び第2ラックアンドピニオン機構34、45の回転速度比に基づく換算係数Ktを乗算して転舵対応角θpを演算する。つまり、転舵対応角θpは、第1ピニオン軸31がステアリングシャフト12に機械的に連結されていると仮定した場合におけるステアリングホイール11の操舵角θhと基本的に一致する。
転舵側目標電流値設定部82には、減算器84において目標操舵角θh*から転舵対応角θpが差し引かれた角度偏差Δθp、第2トルク指令値Ta2*、目標操舵角θh*、電流値It、操舵トルクTrq、車速SPD、ヨーレートYR、横加速度G及び操舵速度ωが入力される。転舵側目標電流値設定部82は、これらの各種状態量に基づいて転舵側目標電流値It*を演算する。そして、転舵側目標電流値設定部82は、角度偏差Δθpに基づき転舵対応角θpを目標操舵角θh*にフィードバック制御するための制御量として、転舵側モータ43が発生させる転舵力に対応した駆動電流の目標値である転舵側目標電流値It*を演算する。なお、本実施形態では、転舵対応角θpの目標値である目標転舵対応角は、操舵角θhの目標値である目標操舵角θh*と等しく、操舵角θhと転舵対応角θpとの比である舵角比が一定に設定される。
フィードフォワード制御部85は、目標操舵角θh*に基づき角加速度成分を演算し、この各加速度成分に応じて第2トルク指令値Ta2*を演算する。第2トルク指令値Ta2*は、車両が直進している状態から車両が直進しない旋回状態になる場合の応答性を向上させるものである。フィードフォワード制御部85は、第2トルク指令値Ta2*を転舵側目標電流値設定部82に出力する。
転舵側モータ制御信号生成部83には、転舵側目標電流値It*、回転角θt、及び電流値Itが入力される。転舵側モータ制御信号生成部83は、転舵側目標電流値It*、回転角θt及び電流値Itの各種状態量に基づいてdq座標系における電流フィードバック制御を実施することにより転舵側駆動回路64に出力する転舵側モータ制御信号Mtを生成する。これにより、転舵側モータ制御信号Mtに応じた駆動電力が転舵側駆動回路64から転舵側モータ43に出力され、転舵側モータ43の作動が制御される。
次に、転舵側目標電流値設定部82について詳細に説明する。
図3に示すように、転舵側目標電流値設定部82は、第1トルク指令値Ta1*を演算する転舵側フィードバック制御部91,転舵側フィードバック制御部91の機能を制限するか否かを示す値である最終ゲインKfを出力する下限ガード値設定部92,及び第1トルク指令値Ta1*及び第2トルク指令値Ta2*を加算器94により加算したトルク指令値Ta*に応じた転舵側目標電流値It*を演算する転舵側目標電流値演算部93を備えている。
転舵側フィードバック制御部91には、角度偏差Δθpが入力される。転舵側フィードバック制御部91は、角度偏差Δθpに基づき比例制御+積分制御+微分制御(PID制御)を実行し、第1トルク指令値Ta1*を演算する。
具体的には、転舵側フィードバック制御部91は、比例項Pを演算する比例項演算部91aと、積分項Iを演算する積分項演算部91bと、微分項Dを演算する微分項演算部91cとを備えている。なお、比例項P、積分項I及び微分項Dは、制御項の一例である。
比例項演算部91aは、乗算処理部91aaを通じて角度偏差Δθpに比例ゲインKpを乗算して得られる比例要素を乗算器91abに出力し、乗算器91abにおいて最終ゲインKfを乗算することで比例項Pを演算する。
積分項演算部91bは、乗算処理部91baを通じて角度偏差Δθpに積分ゲインKiを乗算して得られる積分要素を積算した値を乗算器91beに出力し、乗算器91beにおいて最終ゲインKfを乗算することで積分項Iを演算する。具体的には、積分項演算部91bでは、演算した積分要素を乗算器91bcに出力し、乗算器91bcにより最終ゲインKfが乗算された値を直前周期(1周期前)の値として遅延処理部91bbに保持する。遅延処理部91bbは、今回値としての積分要素が演算されたとき、保持している直前周期の値を加算器91bdに出力する。積分項演算部91bは、加算器91bdにおいて、今回値として演算された積分要素に直前周期の値を加算する積分動作を実行することにより得られる値を乗算器91beに出力し、乗算器91beにおいて最終ゲインKfを乗算することにより積分項Iを演算する。
微分項演算部91cは、微分処理部91caを通じて角度偏差Δθpを時間微分して得られる微分要素を、乗算処理部91cbを通じて微分ゲインKdを乗算することで微分項Dを演算する。なお、微分項Dは、転舵輪4の転舵の応答性に影響を与える制御項である。
比例項演算部91aにより演算される比例項P、積分項演算部91bにより演算される積分項I、及び微分項演算部91cにより演算される微分項Dは、加算器91dにより加算される。この加算された値が、第1トルク指令値Ta1*として加算器94に出力される。
下限ガード値設定部92には、目標操舵角θh*、操舵トルクTrq、操舵速度ω、ヨーレートYR、横加速度G、電流値It及び車速SPDが入力される。下限ガード値設定部92は、目標操舵角θh*、操舵トルクTrq、操舵速度ω、ヨーレートYR、横加速度G、電流値It及び車速SPDの各種状態量に応じて車両の直進状態及び操舵部3の操舵状態を判定し、その判定結果に応じて最終ゲインKfを演算する。
具体的には、下限ガード値設定部92は、目標操舵角θh*に基づいて転舵側フィードバック制御部91の機能を制限させるか否か示す値であるゲインKを演算する不感帯ゲイン演算部92a、不感帯ゲイン演算部92aにより演算されるゲインKを転舵側フィードバック制御部91に反映させるか否かを判定し、最終ゲインKfを出力する出力値選択部92b、及び出力値選択部92bによる判定の指標となる下限ガード値Luを演算する下限ガード値演算部92cを備えている。なお、ゲインKの値は、「0」以上「1」以下の値であり、ゲインKの値が「0」であることは、転舵側フィードバック制御部91の機能を制限する、すなわち比例項P及び積分項Iを「0」に制限する制限処理を実行することを示している。
下限ガード値演算部92cには、目標操舵角θh*、操舵トルクTrq、操舵速度ω、ヨーレートYR、横加速度G、電流値It及び車速SPDが入力される。下限ガード値演算部92cは、目標操舵角θh*、操舵トルクTrq、操舵速度ω、ヨーレートYR、横加速度G、電流値It及び車速SPDの各種状態量に基づき車両の直進状態及び操舵部3の操舵状態を判定し、下限ガード値Luを出力する。下限ガード値Luは、「0」または「1」である。下限ガード値Luが「0」であることは、不感帯ゲイン演算部92aにより演算されるゲインKを転舵側フィードバック制御部91に反映させることを示し、下限ガード値Luが「1」であることは、不感帯ゲイン演算部92aにより演算されるゲインKを転舵側フィードバック制御部91に反映させないことを示している。
出力値選択部92bには、ゲインK及び下限ガード値Luが入力される。出力値選択部92bは、ゲインK及び下限ガード値Luの大きさを比較する。出力値選択部92bは、ゲインKが下限ガード値Lu以上である場合、最終ゲインKfとしてゲインKを出力し、ゲインKが下限ガード値Luよりも小さい場合、最終ゲインKfとして下限ガード値Luを出力する。
ここで、転舵対応角θpは、車両が直進しているときの角度が中立位置として設定されている。そのため、車両が直進している場合、操舵角θh及び転舵対応角θpは、いずれも中立位置となる。しかし、ステアバイワイヤ式操舵装置2の組み付け公差等の影響により車両が直進しているときの転舵対応角θpからずれた角度が転舵対応角θpの中立位置となることがある。この場合、車両が直進しているときの転舵対応角θpからずれた角度を中立位置とした転舵対応角θpを目標操舵角θh*に一致するようにフィードバック制御すると、車両が直進しているときにステアリングホイール11の操舵角θhが中立位置からずれた状態となり、ひいてはステアリングホイール11を中立位置にすることで転舵輪4が転舵され、車両が直進しない状態が発生する、すなわち車両偏向が発生する。
そのため、本実施形態では、車両が直進しているときの転舵対応角θpからずれた角度を中立位置とした転舵対応角θpを用いてフィードバック制御を実行するときに、ステアリングホイール11の操舵角θhを中立位置に戻したとしても転舵輪4が直進している状態を維持できるように転舵側制御部63を構成している。
具体的には、本実施形態では不感帯ゲイン演算部92aにより演算されるゲインKの特性は、転舵対応角θpの中立位置のずれに応じて設定されている。
図4に示すように、不感帯ゲイン演算部92aは、目標操舵角θh*の絶対値に基づいて同図に示すマップを参照することによりゲインKを演算する。マップには、閾値角度θdzが設定されており、目標操舵角θh*の絶対値が閾値角度θdz以下であるとき、ゲインKが「0」に設定される。目標操舵角θh*の絶対値が閾値角度θdzを超えるとき、「0」よりも大きなゲインKが演算される。具体的には、マップは、目標操舵角θh*の絶対値が閾値角度θdzを超えてある程度大きくなると徐々にゲインKを漸増させ、ゲインKが「1」に達すると「1」を維持する特性を有している。
本実施形態の閾値角度θdzは、転舵対応角θpの中立位置からのずれの最大値を示している。すなわち、車両が直進している状態で、且つ目標操舵角θh*が閾値角度θdz以下の範囲内に含まれる状態で、ステアリングホイール11を操舵したとき、ゲインKが「0」に設定される。そのため、比例項P及び積分項Iが「0」に制限される制限処理が実行される。比例項P及び積分項Iが「0」に制限されることは、トルク指令値Ta*の値を低減させて、転舵側モータ43が動作し難くすることを示している。この場合、転舵対応角θpが目標操舵角θh*に追従し難くなることから、角度偏差Δθpが小さくなり難くなる。換言すると、ゲインKは、車両が直進している場合、目標操舵角θh*の絶対値が閾値角度θdz以下の範囲に含まれる状態でステアリングホイール11を操作したときに角度偏差Δθpが小さくなり難くなるように設定されている。
また、ゲインKは、目標操舵角θh*の絶対値が閾値角度θdzを超えるとき、ゲインKを「0」から「1」に漸増させるため、制限処理の実行が解除される。これは、請求項上の制限処理の非実行が設定されることである。なお、この閾値角度θdz以下の範囲のことを不感帯という。
ここで、車両が直進している場合、目標操舵角θh*の絶対値が不感帯に含まれている状態でステアリングホイール11を操作し、車両が直進している状態から車両が旋回している状態に移行するために操舵部3が意図的に操舵されるときを考える。目標操舵角θh*の絶対値が不感帯に含まれる場合には、ステアリングホイール11の操作に応じて転舵輪4が追従し難くなるように設定されているため、操舵部3が意図的に操舵されたときの転舵輪4の転舵の応答性が低下してしまう。
また、ステアリングホイール11を、操舵角θhの中立位置をまたぐように左右方向の一方から他方に向けて操作しているときを考える。このとき、車両は旋回している状態となっている。ステアリングホイール11の操舵角θhが不感帯に進入するとフィードバック制御における比例項P及び積分項Iが「0」に制限されてしまう。そのため、トルク指令値Ta*が急激に低減されてしまい、ひいてはステアリングホイール11の操作の途中で転舵輪4の転舵の追従性が低下してしまう。そのため、本実施形態において下限ガード値設定部92は、車両の直進状態及び操舵部3の操舵状態(ステアリングホイール11の操作状態)を判定し、その判定結果に応じて上記の制限処理の実行を設定、または上記の制限処理の非実行を設定する。
下限ガード値演算部92cの詳細な構成について説明する.
図5に示すように、下限ガード値演算部92cは、操舵部3の操舵状態を判定する非操舵判定部92ca、車両の直進状態を判定する車両直進判定部92cb、及び非操舵判定部92caと車両直進判定部92cbの判定結果に応じて制限処理について実行を設定するか、非実行を設定するかを判定する実行判定部92ccを備えている。
非操舵判定部92caには、操舵トルクTrq及び操舵速度ωが入力される。非操舵判定部92caは、操舵トルクTrq及び操舵速度ωに基づき操舵部3の操舵状態を判定する。
具体的には、非操舵判定部92caは、操舵トルクTrqの絶対値が閾値Tthを下回ること、且つ操舵速度ωの絶対値が閾値ωthを下回ることを条件に操舵部3が意図的に操舵されていないと判定し、非操舵フラグオン信号f1onを出力する。非操舵判定部92caは、操舵トルクTrqの絶対値が閾値Tth以上となること、且つ操舵速度ωの絶対値が閾値ωth以上となることを条件に操舵部3が意図的に操舵されていないと判定し、非操舵フラグオフ信号f1offを出力する。なお、閾値Tth,ωthは、車両が直進している状態に維持されることを示す操舵トルクTrq及び操舵速度ωの下限値である。
車両直進判定部92cbには、ヨーレートYR、横加速度G、電流値It及び目標操舵角θh*が入力される。車両直進判定部92cbは、これらの各種状態量に基づき車両の直進状態を判定する。
具体的には、車両直進判定部92cbは、ヨーレートYRの絶対値が閾値YRthを下回ること、且つ横加速度Gの絶対値が閾値Gthを下回ること、且つ電流値Itの絶対値が閾値Itthを下回ること、且つ目標操舵角θh*の絶対値が閾値θthを下回ることを条件に車両が直進していると判定し、車両直進フラグオン信号f2onを出力する。車両直進判定部92cbは、ヨーレートYRの絶対値が閾値YRth以上となること、且つ横加速度Gの絶対値が閾値Gth以上となること、且つ電流値Itの絶対値が閾値Itth以上となること、且つ目標操舵角θh*の絶対値が閾値θth以上となることを条件に車両が直進していないと判定し、車両直進フラグオフ信号f2offを出力する。
基本的には、非操舵判定部92caから非操舵フラグオン信号f1onが出力される状況のとき、車両直進判定部92cbは車両直進フラグオン信号f2onを出力され、非操舵判定部92caから非操舵フラグオフ信号f1offが出力される状況のとき、車両直進判定部92cbからは車両直進フラグオフ信号f2offが出力される。これは、閾値YRth,Gth,Itth,θthは、車両が直進している状態に維持されることを示す下限値に設定されているためである。なお、その他の状況として、非操舵判定部92caから非操舵フラグオン信号f1onが出力され、車両直進判定部92cbから車両直進フラグオフ信号f2offが出力されることがある。これは、例えば、路面状態が凸凹である状況で、車両が直進しようとしているときを示している。この場合、非操舵判定部92caから非操舵フラグオン信号f1onが出力されていても、ヨーレートYR、横加速度G及び電流値Itが閾値YRth,Gth,Itth以上となる場合が考えられる。
実行判定部92ccには、非操舵フラグオン信号f1on及び車両直進フラグオン信号f2on、または非操舵フラグオフ信号f1off及び車両直進フラグオフ信号f2off、または非操舵フラグオン信号f1on及び車両直進フラグオフ信号f2offがそれぞれの組み合わせで入力される。また、実行判定部92ccには、車速SPDが入力される。実行判定部92ccは、非操舵フラグオン信号f1on及び車両直進フラグオン信号f2onが入力されている状態、且つ車速SPDが規定値Vthを上回る状態が所定時間t経過することを条件に、下限ガード値Luとして「0」を出力する。所定時間tは、運転者が意図的に車両を直進している状態に維持していることを示す時間である。また、車両偏向の発生の運転者の感じ方は、車速SPDに応じて異なる。一般的に車速SPDがある程度大きい状態であれば、運転者は車両偏向を感じやすく、車速SPDが遅い状態であれば、運転者は車両偏向の発生を感じ難い。そのため、規定値Vthは、運転者が車両偏向を感じない車速SPDを実験的に求めることにより決定される。また、上記の条件が満たされない場合には、下限ガード値Luとして「1」を出力する。
すなわち、図3に示すように、本実施形態では、下限ガード値設定部92により車両が直進している状態が維持され、且つ車速SPDが規定値Vthを超えると判定される場合、下限ガード値Luは、「0」であることから最終ゲインKfとして不感帯ゲイン演算部92aにより演算されるゲインK(=「0」)が採用される。すなわち、比例項P及び積分項Iを「0」にする制限処理を実行する。このとき、積分項Iについては、遅延処理部91bbに入力される積分要素に対してゲインK(=「0」)が乗算されるため、積分動作が停止する。
また、下限ガード値設定部92により車両が直進している状態が維持されていないと判定される、換言すると、ステアリングホイール11の操舵角θhが不感帯に含まれる状態で操舵部3が意図的に操舵される、もしくは車両が旋回状態であると判定される場合、下限ガード値Luが「1」であることから、最終ゲインKfとしては、下限ガード値である「1」が採用される。すなわち、比例項P及び積分項Iの制限処理の非実行を設定する。
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)車両が直進しているときは、操舵部3が操舵されて転舵対応角θpの目標値である目標操舵角θh*に変化があって角度偏差Δθpが生じたとしても、角度偏差Δθpが小さくなり難い状態となる。このため、操舵部3が操舵されたとしても、フィードバック制御が転舵側モータ43に反映され難くなる。すなわち、ステアリングホイール11の操舵角θhが、転舵輪4の転舵角が中立位置となるときの角度から操舵角θhの中立位置に変更されても、転舵輪4の転舵角は中立位置から変化し難い。したがって、車両偏向の発生を抑えることができる。
(2)フィードバック制御において、制御項のうち比例項P及び積分項Iについては制限処理による制限を反映させる。一方で、フィードバック制御において、制御項のうちの転舵輪4の転舵の応答性に影響を与える微分項Dについては制限処理による制限を行わない。これにより、操舵部3の操舵速度が大きくなり、それに伴って目標操舵角θh*の変化速度が大きくなるほど、転舵輪4の転舵の応答性が、微分項Dに制限処理を行う場合と比較して、高くなる。したがって、比例項P及び積分項Iに対して制限処理を行うことで車両偏向の発生を抑制しつつも、車両進行方向の迅速な変更を意図したステアリングホイール11の操作がなされた場合には、転舵輪4の転舵の応答性を確保することができる。
(3)車両が直進している場合、ステアリングホイール11の操舵角θhを中立位置に維持している状態が継続されると、積分項Iを制限したとしても当該積分項は徐々に増大する。積分項が増大すると、転舵側制御部63により演算されるトルク指令値Ta*が大きくなるため、制限処理を実行することによる車両偏向の発生の抑制効果が低下する。
その点、本実施形態では、積分項Iを「0」に設定するため、車両偏向の発生の抑制効果の低下を抑えることができる。
(4)また、制限処理の実行中に積分要素が積算される積分動作を停止させることで、車両進行方向の迅速な変更を意図したステアリングホイール11の操作がなされた場合には、操舵の違和感を運転者に与えることを低減できる。
(5)車両進行方向の迅速な変更を意図したステアリングホイール11の操作がなされた場合には、下限ガード値設定部92より、制限処理を非実行とし、運転者の意図を好適に反映させた制御を実現することができる。
(6)運転者は、車速が速いほど車両偏向の発生を感じやすく、車速が低いほど車両偏向の発生を感じにくい。車速SPDが規定値Vthを超えるか否かによって制限処理の実行、非実行を設定するため、制限処理を実施するための条件を最適化することができる。
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・本実施形態において、車速SPDに応じて制限処理の実行または非実行を設定できるようにしていたが、これに限らない。例えば、車速SPDの条件を割愛してもよい。
・本実施形態では、操舵角θhと転舵対応角θpとの舵角比を可変させる構成を採用してもよい。この場合、転舵対応角θpの目標値である目標転舵対応角と、目標操舵角θh*との舵角比は可変となっている。
・本実施形態において、非操舵判定部92caで、操舵トルクTrq及び操舵速度ωに基づいて操舵部3の操舵状態を判定していたが、例えば、操舵トルクTrq及び操舵速度ωの少なくとも一方で判定できればよい。また、操舵トルクTrq及び操舵速度ωに代替して、目標操舵角θh*で判定してもよい。もしくは、操舵角θhや転舵対応角θpの絶対値が閾値θhth,θpthを下回る状態が所定時間続くことを条件に、操舵部3が意図的に操舵されている旨を判定してもよい。なお、閾値θhthや閾値θpthは、車両が直進している状態に維持されることを示す操舵角θhの下限値である。さらに、舵角比可変の構成を採用する場合、目標操舵角θh*に代替して目標転舵対応角を用いて操舵部3の操舵状態を判定してもよい。また、車両直進判定部92cbにて車両の直進状態を判定する際に、ヨーレートYR、横加速度G、電流値It、及び目標操舵角θh*を使用していたが、これら各種状態量の少なくとも1つで判定してもよい。また、舵角比可変の構成を採用した場合、目標転舵対応角を使用して車両の直進状態を判定してもよい。
・また、車両直進判定部92cbを割愛してもよい。この場合、実行判定部92ccにより判定する条件を、非操舵フラグオン信号f1onが入力され、車速SPDが規定値Vthを超えた状態が所定時間t経過することに変更する。
・本実施形態では、実行判定部92ccにより出力される最終ゲインKfは、乗算器91ab,91bc,91beに出力されるが、乗算器91ab,91bc,91beの設置する箇所を変更してもよい。例えば、乗算器91bcだけを割愛してもよい。このようにしても比例項P及び積分項Iに制限処理を実行できる。また、例えば、乗算器91abを乗算処理部91aaよりも前に設け、乗算器91beを乗算処理部91baよりも前に設けてもよい。すなわち、最終ゲインKfにより角度偏差Δθpを制限するようにしてもよい。
・また、比例ゲインKp及び積分ゲインKiを可変に構成し、これらを変更して制限処理を実行してもよい。この場合、操舵感と転舵輪4の転舵の応答性というトレードオフの関係にあるものについて、車両の仕様等に応じて調整することができる。
・本実施形態では、実行判定部92ccは、最終ゲインKfとして下限ガード値Luとして「1」の値を出力している状態で、非操舵フラグオン信号f1on及び車両直進フラグオン信号f2onが入力され、車速SPDが規定値Vthを超える状態が所定時間t経過したことが判定されると、最終ゲインKfを「0」に漸近させるようにしてもよい。これは、最終ゲインKfとして下限ガード値Luとして「0」を出力する場合と比較すると、急激な操舵感の変化が抑制できる。
・本実施形態では、下限ガード値演算部92cと、出力値選択部92bを有しているが、これを割愛してもよい。その場合、不感帯ゲイン演算部92aにより出力されるゲインKを乗算器91ab,91bc,91beに出力する。この場合、車両が直進している状態であり、目標操舵角θh*が不感帯に含まれる状態のときに車両偏向の発生を抑制できる。しかし、操舵部3が操舵され、目標操舵角θh*が不感帯に含まれない状態となることが考えられる。この状態で、再び目標操舵角θh*が不感帯に含まれるように操舵部3がさらに操舵されたとき、転舵輪4が、車両が直進する方向に向けて転舵している最中にゲインKが「0」となり、車両が直進している状態になり難くなることが考えられる。そのため、下限ガード値演算部92c及び出力値選択部92bを割愛する場合は、不感帯ゲイン演算部92aのマップにおける不感帯に対応するゲインKを「0」より大きく、且つ「1」より小さい値に設定する。このようにすれば、車両が直進している状態になり難くなる状況となった場合、少なくとも比例項P及び積分項Iが出力される状態となるため、車両を直進している状態に戻しやすくなる。
・また、不感帯ゲイン演算部92aにおけるマップのゲインKの特性を適宜変更してもよい。さらに、本実施形態では、マップは1つだけであったが、例えば、比例項P及び積分項Iのそれぞれに対して複数のマップを適用してもよい。
・上記の舵角比可変の構成を採用する場合、不感帯ゲイン演算部92aのマップは、目標操舵角θh*に対応するゲインKの特性が設定されていたが、例えば、目標転舵対応角に対応するゲインKの特性が設定されたマップに変更することができる。
・本実施形態では、目標操舵角θh*が不感帯に含まれる状態で、微分項Dは制限していなかったが、ステアリングホイール11の操作に応じた転舵輪4の転舵の応答性を考慮しなければ、微分項Dにも制限処理を実行してもよい。
・また、比例項P、積分項I、及び微分項Dを制限する場合、例えば、乗算器91ab,91bc,91beを割愛し、加算器91dの後に乗算器を新しく設け、第1トルク指令値Ta1*に対して最終ゲインKfまたはゲインKを乗算することで、制限処理を実行してもよい。
・また、積分項Iの積分動作のみを停止させることにより制限処理を実施してもよい。この場合であっても、例えば、下限ガード値設定部92が割愛された構成を採用したときと比較して、トルク指令値Ta*を低減させることができる。すなわち、車両偏向の発生を抑制できる。
・本実施形態では、転舵対応角θpと目標操舵角θh*とが一致するようにフィードバック制御する操舵制御装置1について説明したが、例えば、ラック位置センサにより検出されるラック位置と、当該ラック位置の目標値である目標ラック位置とを一致させるようにフィードバック制御を実行する操舵制御装置であってもよい。このとき、ラック位置センサにより検出されるラック位置は、転舵輪4の転舵角に換算可能な状態量の一例である。また、転舵角センサにより検出される転舵角と、当該転舵角の目標値である目標転舵角とを一致させるようにフィードバック制御を実行する操舵制御装置であってもよい。この場合、転舵角センサにより検出される転舵角は、転舵輪4の転舵角に換算可能な状態量の一例である。
・本実施形態では、第1ラックアンドピニオン機構34によりラック軸32は、その軸方向一端側が往復動可能に支持されているが、例えば、第1ピニオン軸31を割愛し、第1ラックアンドピニオン機構34を割愛してもよい。この場合、ラックハウジング33の内部にラック軸32を支持するラックブッシュ等を設けてもよい。この場合、第1ラック歯32aをなくすことができる。
・また、本実施形態では、操舵制御装置1の制御対象となるステアバイワイヤ式操舵装置2を、操舵部3と転舵部5とが機械的に分離された構造を有していたが、クラッチにより操舵部3と転舵部5とを機械的に連結可能なステアバイワイヤ式操舵装置としてもよい。
例えば、図6に示すように、操舵部3と転舵部5との間には、クラッチ131が設けられている。クラッチ131は、入力側中間軸132を介してステアリングシャフト12に連結されるとともに、出力側中間軸133を介して第1ピニオン軸31に連結されている。そして、操舵制御装置1からの制御信号によりクラッチ131が解放状態となることで、ステアバイワイヤ式操舵装置2は、ステアバイワイヤモードとなり、クラッチ131が締結状態となることでステアバイワイヤ式操舵装置2は、電動パワーステアリングモードとなる。
・本実施形態では、目標操舵角演算部72により入力トルクTrq*と目標操舵角θh*とを関係づけるモデル式を使用しており、モデル式は、粘性係数C及び慣性係数Jを用いて表したものであるが、例えば、サスペンションやホールアライメント等の仕様によって決定されるバネ係数Kvを用いた、いわゆるバネ項を追加してモデル化したモデル式を用いるようにしてもよい。
1…操舵制御装置、2…ステアバイワイヤ式操舵装置、3…操舵部、4…転舵輪、5…転舵部、11…ステアリングホイール、14…操舵側モータ、43…転舵側モータ、63…転舵側制御部、91…転舵側フィードバック制御部、92…下限ガード値設定部、Lu…下限ガード値、K…ゲイン、Kf…最終ゲイン、θp…転舵対応角、θh*…目標操舵角、Δθp…角度偏差、P…比例項、I…積分項、D…微分項、Trq…操舵トルク、ω…操舵速度、SPD…車速、Tth,ωth,YRth,Gth,Itth,θth、θhth、θpth…閾値、Vth…規定値。

Claims (6)

  1. ステアリングホイールに連結される操舵部と、前記操舵部の操舵に応じて転舵輪を転舵させる転舵部とが機械的に連結可能な構造又は機械的に分離された構造を有し、前記操舵部の操舵に抗する力である操舵反力を与える操舵側モータと、前記転舵部に前記転舵輪を転舵させる力である転舵力を与える転舵側モータと、を備えたステアバイワイヤ式操舵装置を制御対象とする操舵制御装置であって、
    前記転舵輪の転舵角に換算可能な状態量と、前記操舵部の操舵に応じて設定される当該状態量の目標値との偏差が小さくなるように前記転舵側モータをフィードバック制御する制御部を備え、
    前記制御部は、車両が直進しているときは、車両が直進していないときと比較して前記フィードバック制御の前記偏差に基づき得られる制御項を前記偏差が小さくなり難くなるように制限する制限処理を実行する
    操舵制御装置。
  2. 前記制御部は、前記制御項として前記偏差に基づき得られる比例項、積分項、及び微分項を用いる前記フィードバック制御を実行し、前記比例項及び前記積分項に対してのみ前記制限処理を実行する
    請求項1に記載の操舵制御装置。
  3. 前記制御部は、前記制限処理として、前記積分項を「0」に設定する
    請求項2に記載の操舵制御装置。
  4. 前記制御部は、前記制限処理として、前記積分項の積分動作を停止させる
    請求項3に記載の操舵制御装置。
  5. 前記制御部は、前記操舵部の操舵状態を示す状態量が、車両が直進している状態に維持されることを示す当該状態量の下限値を下回ることを条件に、前記制限処理の実行を設定し、当該状態量が前記下限値以上となることを条件に、前記制限処理の非実行を設定する
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の操舵制御装置。
  6. 前記制御部は、車両が直進している場合、車速が規定値を超えるときに前記制限処理の実行及び非実行を設定し、前記車速が前記規定値以下となるときに前記制限処理の非実行を設定する
    請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の操舵制御装置。
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