JP5403092B2 - 高耐熱部材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、黒鉛基材の表面を炭化物被膜で被覆した高耐熱部材とその製造方法に関する。
炭化ケイ素(SiC)や窒化アルミニウム(AlN)等の単結晶ウエハを昇華(再結晶)法等によって製造する場合、対向配置した単結晶の種結晶と原料粉末(SiC粉末等)とを不活性雰囲気中で2000〜2400℃で加熱する必要がある。この際、高温に耐え得る部材(高耐熱部材)が必要となり、その材料として高融点金属やその炭化物が考えられる。しかし、これらの材料は希少で高価であり、また、硬くて脆く加工も難しい。このため、それら材料は単体で用いることは現実的ではない。
そのような材料に替えて、ヒーターやルツボ等の高耐熱部材には黒鉛基材が用いられている。しかし、黒鉛基材自体は、還元性ガスと反応して目減りし易く、製品(単結晶)に不純物を混入させるおそれもある。このため、黒鉛基材をそのまま高耐熱部材として用いることも好ましくない。
そこで黒鉛基材の表面を超高融点の金属炭化物(炭化タンタル等)で被覆してなる高耐熱部材が下記の特許文献等で提案されている。
特開平6−280117号公報 特開平8−64110号公報 特開平10−236892号公報 特開平11−116398号公報 特開平11−116399号公報 特開2004−84057号公報 特開2005−68002号公報 特開2008−169111号公報 WO2006/08635号公報 特開2010−248060号公報
特許文献1〜9に記載の高耐熱部材は、依然として製造コストが高く、また表面に形成された炭化物被膜の剥離等を生じ易い。これらに対して特許文献10は、黒鉛基材の表面に炭化物スラリーを塗布、乾燥および焼結させることにより炭化物被膜を形成する焼結成膜法を提案している。こうして得られた高耐熱部材は、気相成膜法等を用いて得られた高耐熱部材と異なり、簡便なプロセスで製造可能であり、低コスト化を図り易い。
もっとも、その焼結成膜法により形成された炭化物被膜でも、黒鉛基材に鋭角状または直角状の隅部や角部があると、局部的な割れ、浮き、剥離等を成膜時または使用中に生じ得ることがわかった。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、歩留りや信頼性に優れた炭化物被膜を黒鉛基材上に有する高耐熱部材とその製造方法を供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、炭化物被膜を成膜する黒鉛基材の隅部または角部に面取部を設けることを思いついた。そして面取部を設けた黒鉛基材に形成された炭化物被膜は、成膜後のみならず高温環境下での使用後も、割れ、浮き等を生じないことを確認した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《高耐熱部材》
(1)本発明の高耐熱部材は、黒鉛基材と、該黒鉛基材の表面を被覆する炭化物からなる炭化物被膜と、を有する高耐熱部材であって、前記黒鉛基材は、前記炭化物被膜により被覆される平面または曲面からなる隅面取部および角面取部を有し、該炭化物被膜は、炭化タンタル(TaC)を含み膜厚が40〜300μmであり、該隅面部は、曲率半径が1.0〜20mmの曲面からなる隅曲面部または面取り幅が1.0〜20mmの平面からなる隅平面部であり、該角面部は、曲率半径が1.0〜20mmの曲面からなる角曲面部または面取り幅が1.0〜20mmの平面からなる角平面部であることを特徴とする。
(2)本発明に係る炭化物被膜は、複雑形状をした黒鉛基材の隅部や角部で割れ、浮き(部分的に基材に密着していない状態)、剥離等を生じ難い。このため、炭化物被膜の成膜不良が大幅に低減され、高耐熱部材の歩留りが向上する。さらに、その炭化物被膜は高温環境下で使用した後も、割れ、浮き等を生じ難い。こうして本発明の高耐熱部材は、歩留りおよび信頼性に非常に優れる。
本発明の高耐熱部材がこのような優れた効果を発揮する理由は必ずしも定かではないが、次のように考えられる。本発明に係る黒鉛基材は角部や隅部を有する複雑形状であっても、その角部や隅部は平面または曲面からなる隅面取部または角面取部(両者を合わせて単に「面取部」という。)となっている。このため炭化物被膜は、黒鉛基材の隅部および角部で、膜厚等のムラを生じ難い。つまり、隅部や角部でも均一的な炭化物被膜が形成され易い。そして焼結成膜法を行う場合でも、焼結時に引張応力等が隅部や角部にある炭化物被膜に集中して作用することが回避される。また高耐熱部材を高温で使用している際に温度ムラや黒鉛基材の物性変化等に起因した熱応力が生じても、隅面取部や角面取部により、その熱応力が隅部や角部にある炭化物被膜に集中することが回避される。
こうして本発明に係る炭化物被膜は、膜厚が大きい場合でも、隅部や角部等の局所を含む全面で、製造時のみならず使用時にも、割れ、浮き、剥離等を生じ難くなり、本発明の高耐熱部材は、高歩留り、高信頼性等を発揮するようになったと考えられる。
《高耐熱部材の製造方法》
(1)本発明は高耐熱部材としてのみならず、その製造方法としても把握できる。すなわち本発明は、炭化物粒子を含むスラリーを黒鉛基材の表面に塗布する塗布工程と、該塗布工程後の黒鉛基材を加熱して該炭化物粒子が焼結してなる炭化物被膜を形成する成膜工程と、を備える高耐熱部材の製造方法であって、前記黒鉛基材は、平面または曲面からなる隅面取部および角面取部を有し、上述した高耐熱部材が得られることを特徴とする高耐熱部材の製造方法としても把握できる。
(2)本発明の製造方法では、スラリーを塗布(さらには乾燥)した後、焼結させて炭化物被膜を成膜しているだけである。このため様々な形状の黒鉛基材にも容易に対応でき、施工自由度が高く、高歩留りで高信頼性の高耐熱部材を低コストで製造し得る。
《その他》
(1)本明細書中でいう炭化物被膜や黒鉛基材は、それぞれの特性改善に有効な改質元素、またはコスト的または技術的な理由等により除去することが困難な不可避不純物(元素)を含み得る。
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。また本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような数値範囲を新設し得る。
複雑形状を有する高耐熱部材(ルツボ)を模式的に示す断面図である。 隅面取部および角面取部を設けた黒鉛ルツボを模式的に示す断面図である。 曲面からなる面取部を設けた直線メサ加工片の断面図である。 平面からなる面取部を設けた直線メサ加工片の断面図である。 内周側に面取部を設けた供試用黒鉛ルツボの断面図である。 内周側に面取部を設けなかった供試用黒鉛ルツボの断面図である。
本明細書で説明する内容は、本発明の高耐熱部材のみならず、その製造方法にも該当し得る。製造方法に関する構成要素は、プロダクトバイプロセス・クレームとして理解すれば物に関する構成要素ともなり得る。上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《黒鉛基材》
(1)本発明に係る黒鉛基材は、複数の構成面(平面および/または曲面)からなる三次元形状をしており、それら構成面の交線近傍またはそれら交線の交点近傍に、隅部または角部(両者を合わせて「局部」という。)を有する。このような黒鉛基材の形態を本明細書では「複雑形状」という(図1A参照)。
本明細書では、少なくとも2面が凹状に交差する部分を隅部といい、少なくとも2面が凸状に交差する部分を角部という。また隅部の構成面が交差するエッジ部を特に隅といい、角部の構成面が交差するエッジ部を特に角という。
面取部は、隅部または角部において、隅または角を構成する略線状または略点状のエッジ部を、面状にした部分である。面取部を構成する面は、平面でも曲面でもよく、曲面の形態は問わない。曲面からなる面取部は「丸め」とも呼ばれるが、本明細書ではその「丸め」も含めて面取部という。
隅部に形成される面取部を隅面取部、角部に形成される面取部を角面取部という。また面取部を構成する面の形状に着目して、平面からなる隅面取部を隅平面部、曲面からなる隅面取部を隅曲面部、平面からなる角面取部を角平面部または曲面からなる角面取部を角曲面部という(図1B参照)。
隅曲面部は、曲率半径(隅R)が0.7〜20mmさらには1〜5mmの曲面であると好ましい。この理由は次の通りである。例えば、焼結成膜法により炭化物被膜を形成する場合、炭化物粒子を含むスラリーは表面張力により隅部などの局所的に溜まり易い。このような状態でスラリーが乾燥、焼結されると、その隅部には不均一な収縮応力が発生する。また焼結時の収縮により生じる引張応力も隅部に集中し易くなる。この傾向は隅Rが過小になるほど顕著であり、炭化物被膜に浮きや割れ等が発生し易い。隅Rが過大になると、そのような傾向は改善されるが、逆に、高耐熱部材の形状自由度が低下し、容積効率や材料効率等の低下を招く。そこで隅曲面部の隅Rは上述した範囲が好ましい。
隅平面部は、面取り幅(隅W)が0.7〜20mmさらには1〜5mmの平面からなると好ましい。この隅Wが過小でも過大でも好ましくないことは、上述した隅Rの場合と同様である。
角曲面部は、曲率半径(角R)が0.05〜20mmさらには0.1〜3mmの曲面からなると好ましい。角部では隅部とは逆に、塗布されたスラリーはその表面張力により局所的に薄くなり、焼結された炭化物被膜には不均一な収縮応力が作用する。従って角Rが過小になると、炭化物被膜に浮きや割れ等が発生し易くなる。角Rが過大になると、高耐熱部材の形状自由度等が低下して好ましくない。そこで角曲面部の角Rは上述した範囲が好ましい。
角平面部は、面取り幅(角W)が0.05〜20mmさらには0.1〜3mmの平面からなると好ましい。この角Wが過小でも過大でも好ましくないことは角Rの場合と同様である。
なお、上述した隅曲面部または角曲面部を構成する曲面は、曲率半径(隅R、角R)の中心を通る断面が略円弧状であればよい。例えば、二面からなる隅部または角部なら、隅曲面部または角曲面部の曲面は円筒面とし、三面からなる隅部または角部なら、隅曲面部または角曲面部の曲面は球面とするとよい。
上述した隅平面部または角平面部の面取り幅(隅W、角W)は、隅部または角部の構成面の延長上に想定される交線または交点(エッジ部)と、隅平面部または角平面部の構成面がその交線を横切る切片との距離(面取長)で、最短のものとする。
隅平面部または角平面部が、いわゆる45°面取り(C面取り)である場合、各交線または交点と各切片との長さは均等であり、その長さが面取り幅(隅W、角W)となる。この場合、隅平面部または角平面部の構成面(面取面)は、隅部または角部の構成面間のなす角を等分する面または法線(図1Bの直線la、lc)に直角な面となる。なお、隅部または角部の構成面間のなす角は90°超でもよいが、90°以下(直角または鋭角)である場合に本発明は特に有効である。
(2)本発明の黒鉛基材は、等方性黒鉛からなると好ましい。等方性黒鉛は、冷間静水圧成形(Cold Isostatic Pressing法/CIP法)により作成された黒鉛材料の一般名称である。この等方性黒鉛基材は等方的な炭化物被膜と整合的であり、両者が相乗的に作用することにより、本発明の高耐熱部材はより高い耐久性、信頼性を発揮する。なお、黒鉛基材と炭化物被膜の線膨張係数(CTE)が近いほど、炭化物被膜に作用する熱応力が低減されて好ましい。ちなみに、黒鉛基材の線膨張係数は、通常、3.5〜8.5x10−6/K(室温〜500℃で測定)である。
《炭化物被膜》
(1)膜厚
炭化物被膜の膜厚は問わないが、40〜300μmさらには50〜220μmであると好ましい。膜厚が過小では炭化物被膜のガスバリア性等が必ずしも十分ではなく耐腐食性が低下し得る。膜厚が過大になっても耐腐食性があまり向上しない一方、高コストとなり好ましくない。また炭化物被膜は、膜厚が過大になると、黒鉛基材との線膨張係数差によって割れや剥離等を生じ易くなる。なお、本願明細書でいう炭化物被膜の膜厚は走査型電子顕微鏡(SEM)による破断面観察により特定される。
(2)炭化物
本発明に係る炭化物被膜を構成する炭化物は、その種類を問わないが、融点が最も高い炭化タンタル(TaCまたはTaC)が含まれると好適である。炭化タンタルの含有量は、炭化物被膜全体を100質量%(単に%という。)として50%以上さらには75%以上であると好ましい。この他、炭化物被膜は、炭化ニオブ(NbCまたはNbC)、炭化タングステン(WCまたはWC)または炭化ハフニウム(HfC、HfC)等の高融点金属炭化物の一種以上からなってもよい。また炭化物被膜は、それらの一種以上とTaCが混在した複合炭化物からなってもよい。
《高耐熱部材の製造方法》
(1)塗布工程
塗布工程は、黒鉛基材の表面に炭化物粒子を分散媒(有機溶媒等)に分散させたスラリーを塗布する工程である。スラリーの塗布は、刷毛塗り、噴霧塗布、浸漬塗布等により行えばよい。また、回転する黒鉛基材の表面上へスラリーを流入させ、遠心力でスラリーを薄くかつ均一に引き延ばすスピンコート法を用いてもよい。
スラリーは、焼結助剤、有機バインダー、溶媒などを適宜含み、塗布に適した粘度に調整される。炭化物粒子(特にTaC粒子)は、スラリー全体を100質量%としたとき、50〜80質量%さらには60〜75質量%含まれると、均一な塗布膜を効率的に形成できる。
焼結助剤(助剤粉末)は、炭化物の焼結温度以下の融点をもつ遷移金属またはその炭化物からなる。これらが焼結中に溶融することにより、炭化物被膜の緻密化、安定化または均質化等が図られる。焼結助剤に用いる遷移金属は、沸点(B.P.)が2600〜3300℃であり、焼結が始まる温度帯(1400〜1700℃)で溶融し、焼結中(最高焼結温度)に昇華して不純物として残らないものが好ましい。例えば、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などである。また焼結助剤は、それらの化合物(炭化物、酸化物、塩化物、硝酸塩、酢酸塩等)の粉末でもよい。例えば、TiC、Cr25、FeC、CoC、NiCなどの遷移金属の炭化物である。このような焼結助剤は、例えば、スラリー全体を100質量%としたとき0.3〜5質量%とするとよい。
有機バインダーは、スラリーの粘度を調整し、スラリーの塗布性や粘着性等を改善する。このような有機バインダーとして、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリビニルブチラール(PVB)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、アセチルセルロース、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等が適宜用いられる。このような有機バインダーは、例えば、スラリー全体を100質量%としたとき0.1〜3質量%とするとよい。なお、バインダーは、非酸化雰囲気で比較的除去(脱バインダー)が容易なものが好ましい。脱バインダーは、別途行っても、後述する焼結工程で併せて行ってもよい。
溶媒には、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトンおよび1,3−ジオキソラン、ベンジルアルコール、エタノール、α−ターピネオール、トルエンなどの有機溶媒がある。溶媒はスラリーの残部となるが、敢えていうとスラリー全体を100質量%としたとき20〜40質量%であるとよい。
なお、上述したスラリーの塗布に替えて、圧縮成形や射出成形等により、炭化物粉末と黒鉛基材を密着した状態(一体)としてもよい。
(2)成膜工程
成膜工程は、黒鉛基材上に付着させた炭化物粒子を加熱し焼結させて、黒鉛基材の表面上に炭化物被膜を形成する工程である。この焼結により、黒鉛基材の表面に、炭化物粒子が固着、硬化、緻密化(密度が50〜70%から95%以上に向上する。)した炭化物被膜が形成される。焼結温度は2000〜2800℃さらには2300〜2700℃が好ましい。焼結温度が過小では炭化物被膜の緻密化を図れず、焼結温度が過大では結晶組織が粗大化してしまう。
焼結時間は、焼結温度等にも依るが0.5〜3時間程度である。焼結雰囲気は、1〜95kPaの真空雰囲気または不活性ガス雰囲気が好ましい。
《用途》
本発明の高耐熱部材は、高温用ルツボ、高温用ヒーター、高温用フィラメント、化学気相成長(CVD)用サセプタなどに用いられる。具体的にいうと、耐腐食性雰囲気抵抗加熱ヒーター、昇華法SiC単結晶成長のためのルツボ部材、昇華法AlN単結晶成長のためのルツボ部材、SiCのCVDエピタキシャル成長のためのサセプタ部材、III族窒化物のMOCVDエピタキシャル成長のためのサセプタ部材、電子ビーム蒸着用のハースライナー等に本発明の高耐熱部材は好適である。
<実施例1>
《試料の製造》
(1)黒鉛基材
製造時の歩留りを評価するための黒鉛基材として、等方性黒鉛(熱膨張係数:6.5x10−6/K)からなる直線メサ加工片を用意した。直線メサ加工片は、図2Aおよび図2Bに示すように、等方性黒鉛基板(100×100×10mm)の表面に、種々の断面をもつ直線状溝がフライス加工されたものである。各溝の基本断面形状は深さ:5mm、長さ:100mmとし、それぞれの隅部または角部に種々の面取部を施した。図2Aに示したRは丸み(隅曲面部、角曲面部)の曲率半径を示し、図2Bに示したCは45°面取り(隅平面部、角平面部)の面取り幅(W)を示す。このような2種類の直線メサ加工片をそれぞれ9個用意し、合計18個を供試材とした。
(2)スラリー調製
TaC粒子(炭化物粒子)を分散させたスラリーを次のようにして調製した。各原料の配合割合は、スラリー全体を100質量%(単に「%」と表記する。)として示した。炭化物粉末であるTaC粉末(純度99.9%/粒子径1〜2μm):69%、助剤粉末であるCo粉末(平均粒径:5μm):0.7%、有機バインダーであるポリメタクリル酸メチル(PMMA:Polymethyl methacrylate):0.7%、有機溶媒であるジメチルアセトアミド:5.6%、メチルエチルケトン:12%および1,3−ジオキソラン:12%をそれぞれ秤量して配合した。これら原料をミキサーで混合した後、超音波ホモジナイザーにより分散および粉砕した。こうして炭化タンタル(TaC)粒子を主成分とするスラリーを得た。
(3)塗布工程
上述した各直線メサ加工片の全面(加工面、側面および裏面/但し、直線メサ加工片の凸部の一部に設けた膜厚測定用基準面を除く)に、上記のスラリーを噴霧塗布により塗布した。塗布厚は、焼結後のTaC被膜の膜厚が200μm、100μmまたは60μmとなる3水準とした。また各1水準あたり3個の試料を作製した。この塗布膜は、TaC粒子の充填率が65〜70%で、TaC粒子の粒径が0.2〜0.4μmであった。なお、充填率は、塗布膜全体(100質量%)に対するTaC粒子の割合である。充填率が60%より小さくなると、焼結時に割れ等が発生し易くなる。ちなみに、この充填率は、膜厚および被膜の質量を測定することにより、次式により求められる。被膜を構成する物質の密度ρ、塗布面積S、被膜の質量Wから理想膜厚(充填率100%としたときの膜厚)D=(W/ρ)/S を算出する。SEMによる破断面観察により実際の膜厚Dmを測定する。これらにより充填率f=(D/Dm)×100(%)が求まる。また塗膜中におけるTaC粒子の粒径は、光学顕微鏡観察により特定される。なお、上記の充填率や粒径が幅を有しているのは、測定精度に依る。例えば、充填率の場合、測定誤差が±2%程度あるため、算出された値が67%でも、上述のように65〜69%とした。また粒径の測定誤差は±0.1μm程度あるため、算出された値が0.3μmでも、上述のように0.2〜0.4μmとした。
(4)成膜工程
上記の塗布膜を200℃程度で加熱して乾燥させた(乾燥工程)。溶媒が散逸した塗布膜をさらに加熱し、焼結させてTaC被膜を成膜した(成膜工程)。この焼結は、高周波加熱炉内を用いて、アルゴン雰囲気(5kPa)中で、焼結温度:2500℃、焼結時間(最高焼結温度での保持時間):1時間として行った。こうして、種々の面取部を有する黒鉛基材上にTaC被膜を形成した表1に示すような様々な試料(高耐熱部材)が得られた。得られたTaC被膜の基準膜厚は前述した3種(200μm、100μmおよび60μm)である。基準膜厚は、直線メサ加工片の凸部分にあるTaC被膜をマイクロメータで測定して求めた。
《観察》
各試料のTaC被膜を目視により観察した。この際、長さ100mmの隅部または角部の一部にでもTaC被膜の浮きや割れがあれば不良とした。そして面取りなし隅部および角部:100×(1−不良数/24)、面取りあり隅部および角部:100×(1−不良数/12)により歩留り率(%)を計算した。こうして得られた各製造歩留り率を表1に併せて示した。
《評価》
表1の結果から明らかなように、隅部については、曲率半径R≧1mmまたはC面取り幅W≧1mmの隅面取部を設けることにより、TaC被膜の膜厚が大きくなっても、不良は発生せず、高歩留りとなることがわかった。またR<1またはW<1の隅面取部を有する場合(試料113、試料123)でも、面取部を設けない場合(試料100)に比べれば、格段に歩留りが向上した。なお、TaC被膜の膜厚が大きくなるほど、TaC被膜の割れや浮き等の不良が発生し易く、歩留りが低下することも確認された。
同様のことは角部の場合についてもいえる。すなわち、少なくとも、曲率半径R≧0.2mmまたはC面取り幅W≧0.2mmの角面取部を設けることにより、TaC被膜の膜厚が大きくなっても、不良は発生せず、高い歩留りが得られることがわかった。但し、隅部と異なり角部の場合、曲率半径Rや面取り幅Wが小さい面取部でも、十分に歩留りを向上させ得ることもわかった。
<実施例2>
《試料の製造》
信頼性を評価するための黒鉛基材として、等方性黒鉛(熱膨張係数:6.5x10−6/K)からなる2種類の有底円筒状の黒鉛ルツボを用意した。各黒鉛ルツボの断面形状を図3Aおよび図3Bに示した。
図3Aの黒鉛ルツボには、内周側の角部(開口内端部)に面取り幅W:1mmの角平面部を設け、その隅部(底内端部)に曲率半径R:2mmの隅曲面部を設けた。図3Bの黒鉛ルツボには、それら角平面部および隅曲面部を設けなかった。いずれの黒鉛ルツボにも、外周側の角部には面取り幅W:1mmの角平面部を設けた。
図3Aに示す黒鉛ルツボを2個用意した。それぞれの全面に、実施例1の場合と同様にしてTaC被膜を形成した。そのうち一方は膜厚:100μmとし(試料331)、他方は膜厚:30μmとした(試料332)。
また図3Bに示す試験片を1個用意し、その全面にも実施例1の場合と同様にして膜厚:100μmのTaC被膜を形成した(試料300)。
こうして表2に示すような、TaC被膜を有する黒鉛ルツボからなる試料を得た。これら試料を用いて後述する加熱試験を行った。
《観察・評価》
(1)目視で確認したところ、いずれの試料に係るTaC被膜にも浮きや割れ等は無かった。
(2)各試料(ルツボ)内に腐食剤であるAlN粉末を200g充填した。その上方開口部(φ90mm)を、全面が膜厚:100μmのTaC被膜で被覆された黒鉛基材(φ100×3mm)からなる円板状の蓋体で塞いだ。
この状態の試料を、窒素雰囲気(N/80kPa)下で2200℃×24時間加熱した。この加熱を1回とする試験を繰り返し行った。
《評価》
各試料のTaC被膜が損傷を受けるまで、上記の加熱試験を繰り返し行った。損傷がなかった最大試験回数(TaC被膜の損傷が発見された回数N−1)を表2に併せて示した。
先ず試料331のように、黒鉛ルツボの内周側に面取部を設けた場合、加熱試験を10回以上繰り返しても、TaC被膜に割れ等を生じなかった。従って、面取部を設けることにより、高耐腐食性、高信頼性の高耐熱部材が得られることが確認できた。なお、この試料の重量は、加熱試験を重ねても殆ど減少しなかった。
次に試料300のように、面取部を設けなかった場合、3回目の加熱試験後に、底隅部にはTaC被膜の割れが発見された。しかも、このTaC被膜の割れ部分から黒鉛基材がエッチングされたため、3回目の加熱試験後に試料の重量は約1%程度減少した。
TaC被膜に割れが発生した原因として、昇降温過程で生じる温度分布のムラに伴う熱応力、高温加熱により黒鉛基材の物性(密度や熱膨張係数)がドリフトすることで生じる応力等が、面取部のない隅部(ピン角)にあるTaC被膜に集中して作用したためと考えられる。また重量減少は、TaC被膜の割れた隙間から内部へ腐食性の高いAl蒸気が侵入し、黒鉛基材が腐食されて生じたと推定される。
ところで試料332の場合、面取部が設けられた隅部や角部では、TaC被膜の割れや黒鉛基材の腐食が観察されなかった。しかし、黒鉛ルツボの内周面を被覆するTaC被膜が複数箇所で損傷を受け、加熱試験後に試料の重量は約3%程度減少していた。これはTaC被膜の膜厚が小さいため、TaC被膜中のピンホール等を通じて、腐食性の高いAl蒸気が内部へ侵入し、黒鉛基材が腐食されたために生じたと考えられる。
従って、耐腐食性等に優れる高信頼性の高耐熱部材を得るには、黒鉛基材の隅部や角部に面取部を設けると共に、TaC被膜の膜厚をある程度確保することも必要である。
なお、面取り角部あるいは面取り隅部を備えた高耐熱部材の高歩留りや高信頼性は、上述した実施例と異なる方法で成膜された炭化物被膜でも、相応な膜厚(例えば40μm以上)を有する限り、同様に発揮され得る。相応の膜厚を有する炭化物被膜は、黒鉛基材との物性値差(密度ドリフトや熱膨張係数差)に伴う応力をクリープ運動により緩和し難くなり、割れ等を生じ易くなるからである。
Figure 0005403092
Figure 0005403092

Claims (3)

  1. 黒鉛基材と、
    該黒鉛基材の表面を被覆する炭化物からなる炭化物被膜と、
    を有する高耐熱部材であって、
    前記黒鉛基材は、前記炭化物被膜により被覆される平面または曲面からなる隅面取部および角面取部を有し、
    該炭化物被膜は、炭化タンタル(TaC)を含み膜厚が40〜300μmであり、
    該隅面部は、曲率半径が1.0〜20mmの曲面からなる隅曲面部または面取り幅が1.0〜20mmの平面からなる隅平面部であり、
    該角面部は、曲率半径が1.0〜20mmの曲面からなる角曲面部または面取り幅が1.0〜20mmの平面からなる角平面部であることを特徴とする高耐熱部材。
  2. 高温用ルツボ、高温用ヒーター、高温用フィラメントまたは化学気相成長用サセプタのいずれかである請求項1に記載の高耐熱部材。
  3. 炭化物粒子を含むスラリーを黒鉛基材の表面に塗布する塗布工程と、
    該塗布工程後の黒鉛基材を加熱して該炭化物粒子が焼結してなる炭化物被膜を形成する成膜工程と、
    を備える高耐熱部材の製造方法であって、
    前記黒鉛基材は、平面または曲面からなる隅面取部および角面取部を有し、
    請求項1または2に記載の高耐熱部材が得られることを特徴とする高耐熱部材の製造方法。
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