JP2023147721A - 耐熱部材 - Google Patents

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Hiroki Shimazu
大輔 中村
Daisuke Nakamura
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Abstract

【課題】従来の耐熱部材に比べて全放射率が高く、全放射率の温度依存性が小さい耐熱部材を提供すること。【解決手段】耐熱部材は、等方性黒鉛からなる基材と、基材の表面の全部又は一部に形成された超多孔質・高放射率層とを備えている。但し、「超多孔質・高放射率層」とは、空隙率が60%以上であり、かつ、25℃における全放射率が60%以上である層をいう。超多孔質・高放射率層は、全放射率変化率ΔεT(=(εT2500-εT25)/εT25)が0.6以下である。但し、εT2500は、2500℃における超多孔質・高放射率層の全放射率、εT25は、25℃における超多孔質・高放射率層の全放射率。耐熱部材は、基材と超多孔質・高放射率層の間の界面の全部又は一部に形成れた、緻密層又は多孔質層をさらに備えていても良い。但し、「多孔質層」とは、空隙率が10%以上60%未満である層をいい、「緻密層」とは、空隙率が10%未満である層をいう。【選択図】図7

Description

本発明は、耐熱部材に関し、さらに詳しくは、全放射率が高く、全放射率の温度依存性が小さい耐熱部材に関する。
SiCやIII族窒化物半導体のバルク単結晶成長やエピタキシャル成膜などの半導体プロセスは、プロセス条件が過酷である。これらのプロセスに用いられるルツボやサセプタなどの部材(以下、これらを総称して「耐熱部材」ともいう)は、プロセス中に、高温、かつ、腐食性の強い雰囲気に曝される。従来、このような耐熱部材にはSiCコート黒鉛材やpBNコート黒鉛材が用いられていた。しかし、これらの材料は、現状の半導体プロセス環境下における寿命が短いという問題がある。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、等方性黒鉛からなる黒鉛基材と、黒鉛基材の表面を被覆する無配向粒状組織からなるTaC被膜とを備えた高温耐熱部材が開示されている。
同文献には、
(A)TaC被膜は、無配向粒状組織を呈しているためにクラックが伝搬しにくい点、
(B)その結果として、高温耐熱部材を高温雰囲気下で長時間使用した場合であっても黒鉛基材が保護される点、及び、
(C)このような高温耐熱部材は、III族窒化物のMOCVDエピタキシャル成長のためのサセプタ部材などに用いることができる点
が記載されている。
特許文献2には、角部に面取りが施された黒鉛基材と、黒鉛基材の表面を被覆するTaC被膜とを備えた高温耐熱部材が開示されている。
同文献には、
(A)黒鉛基材の表面に角部があると、成膜時又は使用中にTaC被膜の局所的な割れ、浮き、剥離等が生じやすい点、及び、
(B)黒鉛基材の角部に面取りを施すと、成膜時又は使用中におけるTaC被膜の割れ、浮き、剥離等を抑制することができる点
が記載されている。
特許文献3には、
(a)黒鉛基材の表面にTaC粒子を含むスラリーを塗布して塗膜を形成し、
(b)塗膜を乾燥させて成形膜とし、
(c)成形膜の表面を研磨して成形膜の表面粗さ又は表面うねりを小さくし、
(d)成形膜を加熱してTaC粒子を焼結させ、焼結膜を得る
耐熱黒鉛部材の製造方法が開示されている。
同文献には、
(A)焼結膜に対して研磨、研削等の加工を行うと、焼結膜に微小クラックが発生するおそれがある点、及び、
(B)焼結膜に代えて、成形膜に対して研磨を行うと、研磨が容易となる点
が記載されている。
特許文献4には、黒鉛基材の表面にTaC膜が形成されており、黒鉛基材の熱膨張係数(CTE)が5.8~6.4×10-6/Kであり、嵩密度が1.83~2.0g/cm3である耐熱黒鉛部材が開示されている。
同文献には、黒鉛基材の表面にTaC被膜を形成する場合において、黒鉛基材のCTE及び嵩密度を最適化すると、耐久性及び耐熱性が向上する点が記載されている。
特許文献5には、等方性黒鉛からなる基材の表面がTaC被膜で被覆され、TaC被膜の鉄含有量が20~1000mass ppmである高耐熱部材が開示されている。
同文献には、TaCの鉄量を最適化すると、TaC膜中のクラックの発生が抑制され、TaC被膜の耐熱性が向上する点が記載されている。
特許文献6には、炭素系材料からなる基材と、前記基材の表面に形成された、TaC又はSiCからなる保護層と、前記保護層の表面に形成された、W、Mo、Ru、及び/又は、Irからなる寄生反応防止層とを備えた結晶成長部材が開示されている。
同文献には、基材の表面に保護層及び寄生反応防止層を形成すると、保護機能と寄生反応抑制機能とを兼ね備えた結晶成長部材が得られる点が記載されている。
特許文献7には、グラファイトの表面に、グラファイトよりも輻射率が小さいコーティング層が形成された補助加熱部材が開示されている。
同文献には、
(A)坩堝の外周側から誘導加熱により坩堝の周壁部を加熱するだけでは、坩堝の中央軸に近い領域の温度が低くなり、坩堝の中央軸に近い領域に位置する原料粉末の昇華が十分に進行せず、単結晶の成長速度が小さくなる点、及び
(B)坩堝の底壁部に対向するように補助加熱部材を配置すると、補助加熱部材からの輻射熱により坩堝の低壁部が加熱され、坩堝の中央軸に近い領域の温度が上昇するために、坩堝の中央軸に近い領域に位置する原料粉末の昇華が十分に進行する点
が記載されている。
特許文献8には、 等方性黒鉛からなる基材の表面に、空隙率が3%未満である緻密WC層が形成され、緻密WC層の表面に、空隙率が20~50%である多孔WC層が形成された耐熱部材が開示されている。
同文献には、
(A)基材の表面に緻密WC層を形成すると、下地の黒鉛をより長期的に腐食性ガスから保護することができる点、及び、
(B)被膜の最表面に多孔WC層を形成すると、緻密WC層のみからなる被膜に比べて放射率が高くなる点
が記載されている。
特許文献9には、等方性黒鉛からなる基材の表面に炭化物被膜が形成されており、炭化物被膜の表面に付着している不純物膜の被覆率が3%未満であり、炭化物被膜の算術平均粗さRaが1.5μm以下である耐熱部材が開示されている。
同文献には、基材表面に炭化物被膜が形成され、炭化物被膜の表面に不純物膜が付着している耐熱部材に対して、炭化物被膜の表面に軟質のメディアを衝突させるブラスト処理(ソフトブラスト処理)を施すと、炭化物被膜に損傷を与えることなく、炭化物被膜上の不純物膜を簡便に、かつ、低コストで除去することができる点が記載されている。
特許文献10には、耐熱部材ではないが、TaCに0.02質量%のSiO2を添加し、原料混合物を成形し、常圧焼結することにより得られる焼結体が開示されている。
同文献には、このような方法により相対密度が95.1%のTaC焼結体が得られる点が記載されている。
非特許文献1には、湿式セラミックス法で作製されたTaCコートグラファイト坩堝が開示されている。
同文献には、
(A)昇華法によりSiC単結晶を成長させる場合において、グラファイト坩堝に代えてTaCコートグラファイト坩堝を用いると、成長速度を長時間に渡って増加させることができる点、及び、
(B)これによって結晶サイズを約1.2倍に増大させることができる点
が記載されている。
さらに、非特許文献2には、粉末成形及び焼結法を用いて作製されたTaCコートグラファイト部材が開示されている。
同文献には、
(A)TaCとの熱膨張係数差Δαが約2×10-6であるグラファイトの表面にTaC層を形成すると、TaC層にクラックが形成される点、及び、
(B)TaCとの熱膨張係数差Δαが約0.02×10-6であるグラファイトの表面にTaC層を形成すると、部材の反りが最も小さくなる点
が記載されている。
上述したように、SiCやGaNを始めとするIII族窒化物半導体のバルク単結晶成長(主に、昇華法成長)におけるプロセス条件は、高温、かつ、腐食性雰囲気である。そのため、成長用の耐熱部材(例えば、坩堝)に黒鉛を用いた場合、黒鉛がプロセス中に徐々にエッチングされ、その寿命は短い。これが製造コスト上の課題となっていた。
一方、TaCコート黒鉛からなる耐熱部材は、その化学的安定性から長寿命が期待されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、TaCコート黒鉛部材は、コートなしの黒鉛部材に比べて放射率が小さいため、黒鉛部材をTaCコート黒鉛部材に置き換えることが困難な場合もあることが報告されている(非特許文献2参照)。
この問題を解決するために、特許文献8には、被膜の最表面を空隙率が20~50%である多孔WC層で構成し、これによって被膜の放射率を高くする方法が開示されている。特許文献8に記載の方法によれば、耐熱部材の耐食性の向上と、高放射率とを同時に実現することができる。
しかしながら、結晶成長のプロセス中において、耐熱部材は、室温から高温(約2500℃)までの大きな温度変化に曝される。この大きな温度変化に伴い、耐熱部材の全放射率も大きく変化する。そのため、従来の耐熱部材では、大きな温度変化を伴う場合に、精密な温度制御が難しいという問題があった。
特開2013-075814号公報 特開2013-193943号公報 特開2015-044719号公報 特開2017-075075号公報 特開2018-145022号公報
特開2020-063175号公報 特開2016-037441号公報 特開2021-084826号公報 特開2021-138578号公報 国際公開第2019/159851号
D. Nakamura: Appl. Phys. Express 9 (2016) 055507 D. Nakamura and K. Shigetoh: Jpn. J. Appl. Phys. 56 (2017) 085504
本発明が解決しようとする課題は、従来の耐熱部材に比べて全放射率が高く、全放射率の温度依存性が小さい耐熱部材を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、従来の耐熱部材に比べて全放射率が高く、全放射率の温度依存性が小さく、しかも、高温の腐食性ガスに対する高い耐食性を備えた耐熱部材を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る耐熱部材は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記耐熱部材は、
等方性黒鉛からなる基材と、
前記基材の表面の全部又は一部に形成された超多孔質・高放射率層と
を備えている。
但し、前記「超多孔質・高放射率層」とは、空隙率が60%以上であり、かつ、25℃における全放射率が60%以上である層をいう。
(2)前記超多孔質・高放射率層は、次の式(1)で表される全放射率変化率ΔεTが0.6以下である。
ΔεT=(εT2500-εT25)/εT25 …(1)
但し、
εT2500は、2500℃における前記超多孔質・高放射率層の全放射率、
εT25は、25℃における前記超多孔質・高放射率層の全放射率。
前記耐熱部材は、前記基材と前記超多孔質・高放射率層の間の界面の全部又は一部に形成れた、緻密層又は多孔質層をさらに備えているものが好ましい。
但し、
前記「多孔質層」とは、空隙率が10%以上60%未満である層をいい、
前記「緻密層」とは、空隙率が10%未満である層をいう。
耐熱部材の最表面に超多孔質・高放射率層を形成すると、耐熱部材の全放射率が相対的に高くなり、ΔεTも相対的に小さくなる。さらに、基材と超多孔質・高放射率層の間の界面の全部又は一部に緻密層又は多孔質層をさらに形成すると、耐熱部材の全放射率が相対的に高くなり、ΔεTも相対的に小さくなることに加えて、耐熱部材の耐食性がさらに向上する。
本発明の第1の実施の形態に係る耐熱部材の断面模式図である。 本発明の第2の実施の形態に係る耐熱部材の断面模式図である。 比較例1の耐熱部材の断面模式図である。 比較例3の耐熱部材の断面模式図である。 図5(A)は、比較例1で得られた多孔TaC層(A)の表面のSEM像である。図5(B)は、比較例2で得られた多孔TaC層(B)の表面のSEM像である。図5(C)は、実施例1で得られた超多孔TaC層の表面のSEM像である。 空隙率と全放射率との関係を示す図である。 ΔεTの空隙率依存性を示す図である。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 耐熱部材]
本発明に係る耐熱部材は、以下の構成を備えている。
(1)前記耐熱部材は、
等方性黒鉛からなる基材と、
前記基材の表面の全部又は一部に形成された超多孔質・高放射率層と
を備えている。
(2)前記超多孔質・高放射率層は、全放射率変化率ΔεTが0.6以下である。
[1.1. 基材]
[1.1.1. 材料]
基材は、等方性黒鉛からなる。「等方性黒鉛」とは、冷間静水圧成型(Cold Isostatic Press(CIP)法)により作製された多結晶黒鉛材料をいう。黒鉛は、六方晶系に属するため、特性に異方性がある。一方、等方性黒鉛は、各結晶粒の結晶方位が無配向であるため、切り出し方向の違いによる特性差が無いという特徴がある。
本発明において、基材の形状、大きさ等は特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択することができる。
[1.1.2. 平均熱膨張係数]
「平均熱膨張係数」とは、室温から500℃までの温度範囲における熱膨張係数の平均値をいう。
基材の平均熱膨張係数は、基材の表面に形成される被膜(超多孔質・高放射率層、多孔質層、及び/又は、緻密層)の耐久性に影響を与える。一般に、基材と被膜との間の熱膨張係数差が大きくなるほど、基材の反り、被膜の剥離などが生じやすくなる。
等方性黒鉛の平均熱膨張係数は、その製法や組成に応じて、通常、3.8~7.0×10-6/K程度の値を持つ。そのため、種々の等方性黒鉛の中から、適切な平均熱膨張係数を持つものを基材の材料として選択するのが好ましい。
[1.2. 超多孔質・高放射率層]
[1.2.1. 定義]
基材の表面の全部又は一部には、超多孔質・高放射率層が形成されている。
「超多孔質・高放射率層」とは、空隙率が60%以上であり、25℃における全放射率が60%以上である層をいう。
[1.2.2. 空隙率]
超多孔質・高放射率層の空隙率は、25℃における全放射率や全放射率変化率ΔεTに影響を与える。一般に、空隙率が大きくなるほど、25℃における全放射率が高くなる。また、空隙率が相対的に高い領域においては、空隙率が大きくなるほど、ΔεTは小さくなる。相対的に高い全放射率及び相対的に低いΔεTを得るためには、空隙率は、60%以上である必要がある。空隙率は、好ましくは、70%以上、さらに好ましくは、80%以上である。
一方、空隙率が高くなりすぎると、超多孔質・高放射率層の強度が著しく低下する。従って、空隙率は、95%以下が好ましい。空隙率は、さらに好ましくは、90%以下である。
[1.2.3. 25℃における全放射率]
黒鉛は、実用材料の中でも高い全放射率を持つ。そのため、黒鉛部材を本発明に係る耐熱部材で置き換えることを容易化するためには、基材の表面を被覆する超多孔質・高放射率層の全放射率は高いほど良い。
超多孔質・高放射率層の25℃における全放射率は、主として、超多孔質・高放射率層の材料や空隙率等(特に、空隙率)に依存する。超多孔質・高放射率層の構造を最適化すると、超多孔質・高放射率層の25℃における全放射率は、60%以上となる。構造をさらに最適化すると、25℃における全放射率は、65%以上となる。
[1.2.4. 全放射率変化率]
「全放射率変化率ΔεT」とは、次の式(1)で表される値をいう。
ΔεT=(εT2500-εT25)/εT25 …(1)
但し、
εT2500は、2500℃における前記超多孔質・高放射率層の全放射率、
εT25は、25℃における前記超多孔質・高放射率層の全放射率。
結晶成長のプロセス中において、耐熱部材は、室温から高温(約2500℃)までの大きな温度変化に曝される。一般に、この大きな温度変化に伴い、耐熱部材の全放射率も大きく変化する場合が多い。しかしながら、温度変化に伴い全放射率が大きく変動すると、精密な温度制御が困難となる場合がある。
これに対し、基材の表面を超多孔質・高放射率層で被覆すると、被覆面のΔεTを小さくすることができる。超多孔質・高放射率層のΔεTは、主として、超多孔質・高放射率層の材料や空隙率等(特に、空隙率)に依存する。超多孔質・高放射率層の構造を最適化すると、超多孔質・高放射率層のΔεTは、0.6以下となる。構造をさらに最適化すると、ΔεTは、0.3以下、あるいは、0.1以下となる。
[1.2.5. 材料]
超多孔質・高放射率層の材料は、上述した条件を満たすものである限りにおいて、特に限定されない。超多孔質・高放射率層の材料としては、例えば、炭化タンタル、炭化チタン、炭化バナジウム、炭化クロム、炭化ジルコニウム、炭化ニオブ、炭化モリブデン、炭化ハフニウム、炭化タングステンなどがある。超多孔質・高放射率層は、これらのいずれか1種の材料からなるものでも良く、あるいは、2種以上の材料からなる混合物若しくは積層膜であっても良い。
[1.2.6. 層数]
超多孔質・高放射率層は、上述した条件を満たす限りにおいて、単層からなるものでも良く、あるいは、多層からなるものでも良い。
ここで、「単層」とは、組成及び相対密度がほぼ均一であると見なせる層をいう。
換言すれば、「単層」とは、製造方法及び製造条件が同一である単一の製造プロセスにより製造された層をいう。単一の製造プロセスにより製造された層内には、製造プロセスに由来する組成や相対密度の揺らぎが生じる場合がある。あるいは、基材と超多孔質・高放射率層の界面に、反応層が形成される場合もある。本発明においては、このような場合であっても、「単層」とみなす。
「多層」とは、組成及び/又は相対密度が異なる複数の層の積層体をいう。
[1.2.7. 形成位置、面積割合、厚さ]
超多孔質・高放射率層の形成位置は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な位置を選択することができる。超多孔質・高放射率層は、特に、
(a)耐熱部材から外部への熱の輻射を促進したい箇所、あるいは、
(b)外部から来る熱の吸収を促進したい箇所
に設けるのが好ましい。
超多孔質・高放射率層は、基材の表面の全部に形成されていても良く、あるいは、基材の表面の一部に形成されていても良い。超多孔質・高放射率層が基材の表面の一部に形成されている場合、基材の総表面積に占める超多孔質・高放射率層の面積の割合は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な面積割合を選択することができる。
さらに、超多孔質・高放射率層の厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な厚さを選択することができる。超多孔質・高放射率層の厚さは、通常、20μm~100μmである。
[1.3. 多孔質層]
[1.3.1. 定義]
本発明において、基材と超多孔質・高放射率層の間の界面の全部又は一部には、多孔質層が形成されていても良い。
「多孔質層」とは、空隙率が10%以上60%未満である層をいう。
[1.3.2. 空隙率]
基材表面が超多孔質・高放射率層のみで被覆されている場合、腐食性のガスが基材表面に到達し、基材の腐食が進行する場合がある。これに対し、多孔質層は、超多孔質・高放射率層に比べて空隙率が低い。そのため、基材表面と超多孔質・高放射率層の間に多孔質層を形成すると、基材表面が超多孔質・高放射率層のみで被覆されている場合に比べて、基材の腐食を抑制することができる。
多孔質層の空隙率は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。一般に、多孔質層の空隙率が小さくなるほど、基材の腐食を抑制する効果が大きくなる。多孔質層の空隙率は、好ましくは、50%以下、さらに好ましくは、30%以下である。
[1.3.3. 25℃における全放射率]
耐熱部材の25℃における全放射率は、最表面にある超多孔質・高放射率層の全放射率で決まる。そのため、その下に形成される多孔質層の25℃における全放射率は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。
[1.3.4. 全放射率変化率ΔεT
耐熱部材のΔεTは、最表面にある超多孔質・高放射率層のΔεTで決まる。そのため、その下に形成される多孔質層のΔεTは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。
[1.3.5. 材料]
多孔質層の材料は、上述した条件を満たすものである限りにおいて、特に限定されない。多孔質層の材料としては、例えば、炭化タンタル、炭化チタン、炭化バナジウム、炭化クロム、炭化ジルコニウム、炭化ニオブ、炭化モリブデン、炭化ハフニウム、炭化タングステンなどがある。多孔質層は、これらのいずれか1種の材料からなるものでも良く、あるいは、2種以上の材料からなる混合物若しくは積層膜であっても良い。
また、多孔質層の材料は、超多孔質・高放射率層の材料と同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。
[1.3.6. 層数]
多孔質層は、上述した条件を満たす限りにおいて、単層からなるものでも良く、あるいは、多層からなるものでも良い。しかしながら、多孔質層を多層にしても、実益がなく、むしろ高コスト化を招く場合が多い。従って、多孔質層は、単層が好ましい。
[1.3.7. 形成位置、面積割合、厚さ]
多孔質層の形成位置は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な位置を選択することができる。例えば、多孔質層は、基材と超多孔質・高放射率層の間の界面の全部に形成されていても良く、あるいは、界面の一部に形成れていても良い。また、多孔質層は、基材と超多孔質・高放射率層の界面にのみ形成されてても良く、あるいは、超多孔質・高放射率層が形成されていない基材の表面に形成されていても良い。
多孔質層が基材の表面の一部に形成されている場合、基材の総表面積に占める多孔質層の面積の割合は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な面積割合を選択することができる
さらに、多孔質層の厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な厚さを選択することができる。多孔質層の厚さは、通常、20μm~100μmである。
[1.4. 緻密層]
[1.4.1. 定義]
本発明において、基材と超多孔質・高放射率層の間の界面の全部又は一部には、緻密層が形成されていても良い。
「緻密層」とは、空隙率が10%未満である層をいう。
[1.4.2. 空隙率]
基材表面が超多孔質・高放射率層のみで被覆されている場合、腐食性のガスが基材表面に到達し、基材の腐食が進行する場合がある。また、基材表面が多孔質層で被覆されている場合であっても、基材の腐食が進行する場合がある。これに対し、緻密層は、多孔質層に比べてさらに空隙率が低い。そのため、基材表面と超多孔質・高放射率層の間に緻密層を形成すると、基材の腐食をさらに抑制することができる。
緻密層の空隙率は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。一般に、緻密層の空隙率が小さくなるほど、基材の腐食を抑制する効果が大きくなる。緻密層の空隙率は、好ましくは、5%以下である。
[1.4.3. 25℃における全放射率]
耐熱部材の25℃における全放射率は、最表面にある超多孔質・高放射率層の全放射率で決まる。そのため、その下に形成される緻密層の25℃における全放射率は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。
[1.4.4. 全放射率変化率ΔεT
耐熱部材のΔεTは、最表面にある超多孔質・高放射率層のΔεTで決まる。そのため、その下に形成される緻密層のΔεTは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。
[1.4.5. 材料]
緻密層の材料は、上述した条件を満たすものである限りにおいて、特に限定されない。緻密層の材料としては、例えば、炭化タンタル、炭化チタン、炭化バナジウム、炭化クロム、炭化ジルコニウム、炭化ニオブ、炭化モリブデン、炭化ハフニウム、炭化タングステンなどがある。緻密層は、これらのいずれか1種の材料からなるものでも良く、あるいは、2種以上の材料からなる混合物若しくは積層膜であっても良い。
また、緻密層の材料は、超多孔質・高放射率層又は多孔質層の材料と同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。
[1.4.6. 層数]
緻密層は、上述した条件を満たす限りにおいて、単層からなるものでも良く、あるいは、多層からなるものでも良い。しかしながら、緻密層を多層にしても、実益がなく、むしろ高コスト化を招く場合が多い。従って、緻密層は、単層が好ましい。
[1.4.7. 形成位置、面積割合、厚さ]
緻密層の形成位置は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な位置を選択することができる。例えば、緻密層は、基材と超多孔質・高放射率層の間の界面の全部に形成されていても良く、あるいは、界面の一部に形成れていても良い。また、緻密層は、基材と超多孔質・高放射率層の界面にのみ形成されていても良く、あるいは、超多孔質・高放射率層が形成されていない基材の表面に形成されていても良い。
さらに、基材と超多孔質・高放射率の間の界面には、緻密層のみが形成されていても良く、あるいは、緻密層と多孔質層の双方が形成されていても良い。基材と超多孔質・高放射率層の界面に緻密層と多孔質層の双方が形成されている場合、基材/緻密層/多孔質層/超多孔質・高放射率層の順に各層が積層されていても良く、あるいは、基材/多孔質層/緻密層/超多孔質・高放射率層の順に各層が積層されていても良い。
緻密層が基材の表面の一部に形成されている場合、基材の総表面積に占める緻密層の面積の割合は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な面積割合を選択することができる
さらに、緻密層の厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な厚さを選択することができる。緻密層の厚さは、通常、20μm~100μmである。
[1.5. 用途]
本発明に係る耐熱部材は、種々の用途に用いることができる。本発明に係る耐熱部材は、特に、化合物半導体単結晶を成長する際の成長雰囲気に曝される部材として好適である。このような部材としては、具体的には、
(a)原料を保持するための坩堝、
(b)種結晶を保持するための台座、
(c)坩堝と、台座との間に配置された遮熱板、
(d)遮熱板を保持するための支柱
などがある。
[1.6. 具体例]
[1.6.1. 具体例1]
図1に、本発明の第1の実施の形態に係る耐熱部材の断面模式図を示す。なお、図1においては、見やすくするために各部の寸法を実際の寸法よりも適宜、拡大又は縮小して描いてある。この点は、後述する図2~図4も同様である。図1において、耐熱部材10aは、等方性黒鉛からなる基材20と、基材20の表面の一部に形成された超多孔質・高放射率層30とを備えている。
なお、図1において、超多孔質・高放射率層30は、基材20の上面にのみ形成されているが、これは単なる例示である。超多孔質・高放射率層30は、基材20の上面以外の面に形成されていても良い。基材20及び超多孔質・高放射率層30に関するその他の点については、上述した通りであるので、説明を省略する。
[1.6.2. 具体例2]
図2に、本発明の第2の実施の形態に係る耐熱部材の断面模式図を示す。図2において、耐熱部材10bは、等方性黒鉛からなる基材20と、基材20の表面の一部に形成された超多孔質・高放射率層30と、基材20と超多孔質・高放射率層30の間の界面に形成された緻密層40とを備えている。
なお、図2において、耐熱部材10bは、基材20/緻密層40/超多孔質・高放射率層30の3層構造を備えているが、これは単なる提示である。耐熱部材10bは、緻密層40に代えて、又は、これに加えて、多孔質層が形成されていても良い。基材20、超多孔質・高放射率層30、及び、緻密層40に関するその他の点については、上述した通りであるので、説明を省略する。
[2. 耐熱部材の製造方法]
本発明に係る耐熱部材は、種々の方法により製造することができる。これらの中でも焼結法は、空隙率の調節が容易であるので、耐熱部材の製造方法として好適である。
ここで、「焼結法」とは、
(a)等方性黒鉛からなる基材の表面の全部又は一部に、必要に応じて、緻密層を形成するための原料を含む第1スラリー、及び/又は、多孔質層を形成するための原料を含む第2スラリーを塗布し、乾燥させることにより、基材の表面に第1成形膜及び/又は第2成形膜を形成し、
(b)基材の表面の全部又は一部に、超多孔質・高放射率層を形成するための原料粉末を散布することにより、基材の表面の全部又は一部に第3成形膜を形成し、
(c)第3成形膜、並びに、必要に応じて、第1成形膜及び/又は第2成形膜が形成された基材を不活性雰囲気下で加熱し、第1~第3成形膜を焼結させる
方法をいう。
[2.1. 第1工程]
まず、等方性黒鉛からなる基材の表面の全部又は一部に、必要に応じて、緻密層を形成するための原料を含む第1スラリー、及び/又は、多孔質層を形成するための原料を含む第2スラリーを塗布し、乾燥させる(第1工程)。これにより、基材の表面に第1成形膜及び/又は第2成形膜を形成することができる。なお、第1成形膜及び第2成形膜のいずれも形成しない場合、第1工程を省略することができる。
[2.1.1. 第1スラリー]
第1スラリーは、緻密層を形成するための原料である。また、第1成形膜は、焼結後に緻密層となる層である。緻密層を形成するための原料が難焼結性である場合、第1スラリーには、適量の焼結助剤が添加される。例えば、緻密層の原料として、TaCやWCを用いる場合、焼結助剤としてCoを用いるのが好ましい。第1スラリーは、必要に応じて、有機バインダ、分散剤などがさらに含まれていても良い。
原料粉末の平均粒径、焼結助剤の種類及び量、第1スラリーの組成等は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択することができる。例えば、緻密化を容易化するためには、TaC又はWCの平均粒径は、1~3μmが好ましい。
一般に、第1スラリー中に添加される焼結助剤の量が少なすぎると、緻密化が十分に進行せず、空隙率が大きくなる。一方、焼結助剤の添加量が過剰になると、緻密層に焼結助剤が残留し、残留した焼結助剤が使用中に漏出し、汚染源になる場合がある。好適な焼結助剤の添加量は、焼結助剤の種類により異なる。例えば、焼結助剤がCoである場合、焼結助剤の添加量は、0.1~5mass%が好ましい。
[2.1.2.第2スラリー]
第2スラリーは、多孔質層を形成するための原料である。また、第2成形膜は、焼結後に多孔質層となる層である。第2スラリーの組成は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な組成を選択することができる。例えば、多孔層を形成するための原料が、TaCやWCなどの難焼結性材料を用いる場合、第2スラリーは、焼結助剤を含んでいる必要はない。むしろ、焼結助剤を含まない第2スラリーを用いた方が、多孔層を容易に形成することができる。第2スラリーに関するその他の点については、第1スラリーと同様であるので、説明を省略する。
[2.1.3. スラリーの塗布]
第1スラリー及び/又は第2スラリーを調製した後、基材表面にこれらの一方又は双方を塗布する。基材表面に第1スラリー及び第2スラリーの双方を塗布する場合、第1スラリー及び第2スラリーの塗布順序は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な順序を選択することができる。また、第1スラリーの塗布領域と第2スラリーの塗布領域は、必ずしも同一である必要はなく、目的に応じて塗布領域を変えても良い。
[2.2. 第2工程]
次に、基材の表面の全部又は一部に、超多孔質・高放射率層を形成するための原料粉末を散布する(第2工程)。これにより、基材の表面の全部又は一部に第3成形膜を形成することができる。
第3成形膜は、焼結後に超多孔質・高放射率層となる層である。必要に応じて、第1成形膜及び/又は第2成形膜が形成された基材の表面に、超多孔質・高放射率層を形成するための原料粉末を散布すると、第2成形膜よりも空隙率の大きい第3成形膜を形成することができる。これを焼結させると、多孔質層よりも空隙率の大きい超多孔質・高放射率層を形成することができる。なお、原料は、基材の表面に直接散布しても良く、あるいは、第1成形膜及び/又は第2成形膜の表面に散布しても良い。
[2.3. 第3工程]
次に、第3成形膜、並びに、必要に応じて、第1成形膜及び/又は第2成形膜が形成された基材を不活性雰囲気下で加熱し、第1~第3成形膜を焼結させる(第3工程)。これにより、本発明に係る耐熱部材が得られる。
焼結条件は、第1~第3成形膜の組成に応じて最適な条件を選択する。最適な焼結条件は、原料粉末の性状やスラリーの組成などにより異なる。例えば、原料粉末がTaCやWCである場合、2000℃~2300℃で、0.5時間~1.0時間程度加熱するのが好ましい。
[3. 作用]
耐熱部材の最表面に超多孔質・高放射率層を形成すると、耐熱部材の全放射率が相対的に高くなり、ΔεTも相対的に小さくなる。さらに、基材と超多孔質・高放射率層の間の界面の全部又は一部に緻密層又は多孔質層をさらに形成すると、耐熱部材の全放射率が相対的に高くなり、ΔεTも相対的に小さくなることに加えて、耐熱部材の耐食性がさらに向上する。
室温から2500℃程度までの温度範囲において高い全放射率を示し、かつ、ΔεTが小さい耐食性コーティング材で黒鉛基材表面を選択的に被覆することで、化合物半導体単結晶の成長プロセスのような高温プロセス中での温度分布を従来より適切に制御することができる。そのため、このような耐熱部材を、例えば、SiC単結晶の成長プロセスに使用した場合、SiC原料粉末の昇華効率の向上、種結晶の冷却効率の向上、及び、成長結晶内部の熱応力の低減が可能となる。また、これによって、単結晶の高速成長、単結晶の大型化、あるいは、単結晶の高品質化を実現できる。
(実施例1、比較例1~3)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例1]
図1に示す耐熱部材10aを作製した。基材20には、室温から500℃までの温度範囲におけるCTEの平均値が3.5~7.0×10-6/Kである等方性黒鉛を用いた。また、超多孔質・高放射率層30を形成するための原料には、平均粒径が1~3μm程度のTaC粉末を用いた。
目開きが50~150μmのふるいを用いて、基材20の表面にTaC粉末を散布し、厚さが約50μmの第3成形膜を形成した。第3成形膜が形成された基材20を、不活性ガス(主成分:Ar)雰囲気下において、2000℃以上で1hr保持することで、第3成形膜を焼結させ、超多孔・高放射率層30(以下、「超多孔TaC層」ともいう)を備えた耐熱部材10aを得た。
[1.2. 比較例1]
図3に、比較例1の耐熱部材の断面模式図を示す。図3に示すように、基材20の表面に多孔質層50が形成された耐熱部材10cを作製した。基材20には、実施例1と同一の等方性黒鉛を用いた。また、多孔質層50を形成するための原料には、実施例1と同一のTaC粉末を用いた。
TaC粉末、有機バインダー、及び、有機溶媒を所定の比率で混合し、第2スラリーを得た。得られた第2スラリーを基材20の表面にスプレー塗布し、第2成形膜を得た。第2成形膜の厚さは、焼結後の膜厚が50~100μmとなる厚さとした。さらに、第2成形膜中の有機溶媒を除去するために、第2成形膜が形成された基材20をホットプレート上において150℃×30分間加熱した。
以下、実施例1と同様にして第2成形膜の焼結を行い、多孔質層50(以下、「多孔TaC層(A)」ともいう)を備えた耐熱部材10cを得た。
[1.3. 比較例2]
比較例1よりも空隙率が大きい多孔質層50を形成するために、第2スラリーで用いる有機溶媒の内一種類を、融点20~30℃であるものに変更した。以下、比較例1と同様にして、多孔質層50(以下、「多孔TaC層(B)」ともいう)を備えた耐熱部材10cを得た。
[1.4. 比較例3]
図4に、比較例3の耐熱部材の断面模式図を示す。図4に示すように、基材20の表面に緻密層40が形成された耐熱部材10dを作製した。基材20には、実施例1と同一の等方性黒鉛を用いた。緻密層40を形成するための原料には、実施例1と同一のTaC粉末を用いた。
TaC粉末、焼結助剤としてのCo粉末、有機バインダー、及び、有機溶媒を所定の比率で混合し、第1スラリーを得た。得られた第1スラリーを基材20の表面にスプレー塗布し、第1成形膜を得た。第1成形膜の厚さは、焼結後の膜厚が50~100μmとなる厚さとした。さらに、第1成形膜中の有機溶媒を除去するために、第1成形膜が形成された基材20をホットプレート上において150℃×30分間加熱した。
以下、実施例1と同様にして第1成形膜の焼結を行い、緻密層40(以下、「緻密TaC層」ともいう)を備えた耐熱部材10dを得た。
[2. 試験方法]
[2.1. 全放射率の計測・算出]
フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)の間接測定法(JIS R1693-2:2012)にて全放射率の温度依存性を計測・算出した。測定温度は、室温(25℃)、500℃、1000℃、1500℃、2000℃、及び、2500℃とした。
[2.2. 空隙率の算出]
焼結後の耐熱部材10a~10dから断面観察用の試料を作製し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて断面SEM像を撮影した。得られた断面SEM像を用いて、各層の空隙率を算出した。空隙率は、次式を用いて算出した。
空隙率={1-M/(ρ×V)}×100
但し、
Mは、各層の質量、
ρは、各層の組成に基づいて算出された、各層の真密度、
Vは、各層の厚さから算出した、各層の見かけの体積。
[3. 結果]
[3.1. 全放射率の空隙率依存性]
図5(A)に、比較例1で得られた多孔TaC層(A)の表面のSEM像を示す。図5(B)に、比較例2で得られた多孔TaC層(B)の表面のSEM像を示す。図5(C)に、実施例1で得られた超多孔TaC層の表面のSEM像を示す。図6に、空隙率と全放射率との関係を示す。さらに、表1に、空隙率及び各温度での全放射率を示す。図5~6、及び、表1より、以下のことが分かる。
(1)実施例1の空隙率は、82.8%であった。また、実施例1の全放射率は、いずれの温度においても、比較例1~3より高くなった。
(2)比較例1の空隙率は、27.9%であった。一方、比較例2の空隙率は、33.0%であった。そのため、比較例2の全放射率は、いずれの温度においても、比較例1、3より高くなった。
(3)比較例3の空隙率は、0.5%であった。そのため、比較例3の放射率は、いずれの温度においても、最も低くなった。
Figure 2023147721000002
[3.2. ΔεTの空隙率依存性]
表1の結果に基づいて、空隙率(x)に対する25℃における全放射率εT25の近似曲線、及び、空隙率(x)に対する2500℃における全放射率εT2500の近似曲線を求めた。次の式(1)及び式(2)に、それぞれ、εT25の近似曲線及びεT2500の近似曲線を示す。なお、式(1)はR2=0.999であり、式(2)はR2=1であった。
εT25=0.0182x2-0.2306x-12.874 …(1)
εT2500=-0.0008x2+0.6966x+20.888 …(2)
式(1)及び式(2)を用いて、空隙率(x)が10~70%である時のεT25、εT2500、及びΔεTを算出した。表2に、その結果を示す。また、図7に、ΔεTの空隙率依存性を示す。表2及び図7より、空隙率を60%以上にすると、ΔεT≦0.6となることが分かる。これは、室温(25℃)から高温(2500℃)で全放射率が大きく変動することがなく、温度制御が従来の部材より容易となることを意味している。
Figure 2023147721000003
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
本発明に係る耐熱部材は、化合物半導体からなる結晶又は薄膜を成長させるためのルツボ、サセプタ、ヒータ材、蒸着ボート、リフレクタ材などに用いることができる。
10a、10b 耐熱部材
20 基材
30 超多孔質・高放射率層
40 緻密層

Claims (7)

  1. 以下の構成を備えた耐熱部材。
    (1)前記耐熱部材は、
    等方性黒鉛からなる基材と、
    前記基材の表面の全部又は一部に形成された超多孔質・高放射率層と
    を備えている。
    但し、前記「超多孔質・高放射率層」とは、空隙率が60%以上であり、かつ、25℃における全放射率が60%以上である層をいう。
    (2)前記超多孔質・高放射率層は、次の式(1)で表される全放射率変化率ΔεTが0.6以下である。
    ΔεT=(εT2500-εT25)/εT25 …(1)
    但し、
    εT2500は、2500℃における前記超多孔質・高放射率層の全放射率、
    εT25は、25℃における前記超多孔質・高放射率層の全放射率。
  2. 前記超多孔質・高放射率層は、炭化タンタル、炭化チタン、炭化バナジウム、炭化クロム、炭化ジルコニウム、炭化ニオブ、炭化モリブデン、炭化ハフニウム、及び、炭化タングステンからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む請求項1に記載の耐熱部材。
  3. 前記基材と前記超多孔質・高放射率層の間の界面の全部又は一部に形成れた、多孔質層及び/又は緻密層をさらに備えている請求項1又は2に記載の耐熱部材。
    但し、
    前記「多孔質層」とは、空隙率が10%以上60%未満である層をいい、
    前記「緻密層」とは、空隙率が10%未満である層をいう。
  4. 前記緻密層は、炭化タンタル、炭化チタン、炭化バナジウム、炭化クロム、炭化ジルコニウム、炭化ニオブ、炭化モリブデン、炭化ハフニウム、及び、炭化タングステンからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む請求項3に記載の耐熱部材。
  5. 前記多孔質層は、炭化タンタル、炭化チタン、炭化バナジウム、炭化クロム、炭化ジルコニウム、炭化ニオブ、炭化モリブデン、炭化ハフニウム、及び、炭化タングステンからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む請求項3又は4に記載の耐熱部材。
  6. 化合物半導体単結晶を成長する際の成長雰囲気に曝される部材に用いられる請求項1から5までのいずれか1項に記載の耐熱部材。
  7. 前記部材は、
    (a)原料を保持するための坩堝、
    (b)種結晶を保持するための台座、又は、
    (c)前記坩堝と、前記台座との間に配置された遮熱板
    である請求項6に記載の耐熱部材。
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