JP6977696B2 - 結晶成長部材 - Google Patents
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Description
同文献には、
(a)黒鉛基材表面にTaCスラリーを塗布、乾燥、焼結させる方法(焼結成膜法)を用いて黒鉛基材表面にTaC被膜を形成する場合において、黒鉛基材に鋭角状または直角状の隅部や角部がある時には、成膜時や使用中にTaC被膜に局部的な割れ、浮き、剥離等が生じる点、及び、
(b)黒鉛基材の隅部または角部に面取部を設けると、TaC被膜の割れ、浮き、剥離等を抑制することができる点、
が記載されている。
同文献には、焼結前の成形膜の表面を研磨すると、表面粗さ又は表面うねりの小さい平滑な焼結膜が得られる点が記載されている。
同文献には、黒鉛基材として、熱膨張係数及び嵩密度が特定範囲内にある等方性黒鉛を用いると、TaC被膜の剥離やクラックを抑制できる点が記載されている。
(a)黒鉛基材の表面に、第1の炭化ケイ素層、第2の炭化ケイ素層、及び、炭化タンタル層がこの順で形成されており、
(b)第2の炭化ケイ素層は、X線光電子分光法によって測定されるC/Si組成比が1.2以上である
炭化ケイ素−炭化タンタル複合材が開示されている。
同文献には、
(A)黒鉛基材の表面に炭化ケイ素層を設け、その上に薄く炭化タンタル層を形成すると、部材を低コスト化することはできるが、炭化ケイ素と炭化タンタルの熱膨張係数が大きく異なるために耐久性が低い点、及び、
(B)第1の炭化ケイ素層と炭化タンタル層との間に炭素が過剰である第2の炭化ケイ素層を形成すると、炭素によって炭化ケイ素層と炭化タンタル層とが強く結合するために、炭化タンタル層の密着性が向上する点
が記載されている。
同文献には、
(a)炭化タングステンからなる基材の表面にチタンサブレイヤと共にイリジウムコーティングを施した部材は、熱化学耐性に優れている点、及び、
(b)このようなコーティングは、高温の溶融ガラスに対して化学的に耐性がある点
が記載されている。
同文献には、イリジウム薄膜の応力及び抵抗値は、Ar圧力により劇的に変化する点が記載されている。
(1)前記結晶成長部材は、
炭素系材料からなる基材と、
前記基材の表面に形成された保護層と、
前記保護層の表面に形成された寄生反応防止層と
を備えている。
(2)前記保護層は、TaC又はSiCからなる。
(3)前記寄生反応防止層は、
(a)W、Mo、Ru、及びIrからなる群から選ばれるいずれか1種以上の金属、
(b)前記金属の炭化物、並びに、
(c)前記金属の窒化物
からなる群から選ばれるいずれか1種以上の材料からなる。
本発明に係る結晶成長部材は、前記保護層と前記寄生反応防止層との間に形成された密着層をさらに備えていても良い。
これに対し、W、Mo、Ru若しくはIr、これらの炭化物、又はこれらの窒化物は、寄生反応を抑制する機能を持つ。そのため、基材の表面に保護層及び寄生反応防止層を形成すると、保護機能と寄生反応抑制機能とを兼ね備えた結晶成長部材が得られる。
[1. 結晶成長部材]
図1に、本発明に係る結晶成長部材の断面模式図を示す。
図1において、結晶成長部材10は、
炭素系材料からなる基材12と、
基材12の表面に形成された保護層14と、
保護層14の表面に形成された寄生反応防止層16と
を備えている。
結晶成長部材10は、保護層14と寄生反応防止層16との間に形成された密着層18をさらに備えていても良い。
[1.1.1. 材料]
基材12は、炭素系材料からなる。「炭素系材料」とは、炭素を主成分とする材料をいう。炭素系材料としては、例えば、等方性黒鉛、押出成形黒鉛、C/Cコンポジットなどがある。炭素系材料は、その種類に応じて熱膨張係数(CTE)が異なるので、保護層14の材料に応じて、最適な炭素系材料を基材12として用いるのが好ましい。例えば、保護層14がSiCの場合、基材12には、CTEが3.5〜5.0×10-6K-1程度の炭素系材料を用いるのが好ましい。また、保護層14がTaCの場合、基材12には、CTEが5.5〜7.5×10-6K-1程度の炭素系材料を用いるのが好ましい。
基材12の形状は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な形状を選択することができる。基材12の形状としては、例えば、板状、棒状、筒状、ルツボ状(有底の筒状)などがある。
[1.2.1. 材料]
保護層14は、基材12を高温・腐食環境から保護するためのものである。保護層14は、基材12の全表面に形成されていても良く、あるいは、一部の表面に形成されていても良い。本発明において、保護層14には、TaC又はSiCが用いられる。TaC及びSiCは、いずれも耐熱性及び耐食性が高く、炭素系材料との密着性も高いので、保護層14の材料として好適である。
保護層14の厚さは、結晶成長部材10の耐久性に影響を与える。基材12には、サイズが10〜20μm程度の空隙が含まれている場合がある。このような場合において、保護層14の厚さが薄くなりすぎると、基材12中の空隙の影響により保護層14中にピンホールが形成され、保護機能が低下する場合がある。高い保護機能を得るためには、保護層14の厚さは、20μm以上が好ましい。保護層14の厚さは、好ましくは、50μm以上、さらに好ましくは、80μm以上である。
一方、保護層14の厚さが厚くなりすぎると、熱応力により保護層14中にクラックや剥がれが発生しやすくなる。従って、保護層14の厚さは、200μm以下が好ましい。保護層14の厚さは、好ましくは、150μm以下、さらに好ましくは、120μm以下である。
保護層14の空隙率は、結晶成長部材10の耐久性に影響を与える。一般に、保護層14の空隙率が大きくなるほど、腐食性ガスが保護層14を透過して基材12表面に到達しやすくなる。高い耐久性を得るためには、保護層14の空隙率は、3%以下が好ましい。保護層14の空隙率は、好ましくは、2%以下、さらに好ましくは、1%以下である。
[1.3.1. 材料]
保護層14の表面には、さらに寄生反応防止層16が形成される。寄生反応防止層16は、保護層14の全表面に形成されていても良く、あるいは、一部の表面に形成されていても良い。「寄生反応防止層」とは、意図する反応とは異なる反応(寄生反応)を抑制するための層をいう。寄生反応防止層16に用いられる材料は、単に寄生反応を抑制する機能だけでなく、結晶成長時に曝される高温・腐食環境に耐える耐熱性及び耐食性を有している必要がある。
(a)W、Mo、Ru、及びIrからなる群から選ばれるいずれか1種以上の金属、
(b)前記金属の炭化物、又は、
(c)前記金属の窒化物
からなる。
寄生反応防止層16は、これらのいずれか1種の材料からなるものでも良く、あるいは、2種以上の材料からなるもの(例えば、混合物、固溶体、積層体など)でも良い。これらの材料は、いずれもある種の寄生反応を抑制する効果があり、しかも、耐熱性及び耐食性に優れているので、寄生反応防止層16の材料として好適である。
寄生反応防止層16の厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。一般に、寄生反応防止層16の厚さが薄くなりすぎると、寄生反応防止効果の持続性が乏しくなる。従って、寄生反応防止層16の厚さは、0.1μm以上が好ましい。寄生反応防止層16の厚さは、好ましくは、1μm以上、さらに好ましくは、10μm以上である。
一方、寄生反応防止層16の厚さが厚くなりすぎると、寄生反応防止層16にクラックや剥がれが発生しやすくなる。従って、寄生反応防止層16の厚さは、200μm以下が好ましい。寄生反応防止層16の厚さは、好ましくは、100μm以下、さらに好ましくは、50μm以下である。
寄生反応防止層16の空隙率は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。本発明において、基材12は保護層14により保護されるので、寄生反応防止層16は必ずしも緻密である必要はない。寄生反応防止層16の空隙率は、寄生反応防止層16の厚さ、製造方法などに応じて最適な値を選択するのが好ましい。
寄生反応防止層16は、厚さが5μm以上200μm以下の厚膜であっても良い。このような厚膜は、例えば、焼結法又は反応焼結法により作製することができる。この場合において、寄生反応防止層16が緻密であるときには、熱応力により寄生反応防止層16にクラックや剥がれが発生しやすくなる。従って、寄生反応防止層16が厚膜である場合、寄生反応防止層16の空隙率は、3%以上が好ましい。寄生反応防止層16の空隙率は、好ましくは、10%以上、さらに好ましくは、30%以上である。
一方、寄生反応防止層16の空隙率が大きくなりすぎると、寄生反応防止層16の密着性や耐スクラッチ性が乏しくなる。従って、寄生反応防止層16の空隙率は、50%以下が好ましい。寄生反応防止層16の空隙率は、好ましくは、40%以下である。
寄生反応防止層16は、厚さが0.1μm以上5μm未満の薄膜であっても良い。このような薄膜は、例えば、スパッタ法により作製することができる。この場合、寄生反応防止層16が緻密であっても、寄生反応防止層16にクラックや剥がれが発生しにくい。むしろ、寄生反応防止層16の空隙率が小さくなるほど、基材12の保護機能が向上する。このような効果を得るためには、寄生反応防止層16の空隙率は、0.1%未満が好ましい。
[1.4.1. 材料]
結晶成長部材10は、保護層14と寄生反応防止層16の間に形成された密着層18をさらに備えていても良い。密着層18は、必ずしも必要ではないが、保護層14と寄生反応防止層16との間に密着層18を介在させると、寄生反応防止層16の密着性がさらに向上し、クラックや剥がれが発生しにくくなる。特に、寄生反応防止層16が厚さ1μm以下の薄膜である場合、密着層18を介在させると、膜剥がれがさらに抑制される。
密着層18には、Tiを用いるのが好ましい。Tiは、活性が高いので、保護層14及び寄生反応防止層16の材料によらず、高い密着性が得られる。
密着層18の厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。一般に、密着層18の厚さが薄くなりすぎると、十分な効果が得られない。従って、密着層18の厚さは、0.1μm以上が好ましい。
一方、密着層18の厚さが厚くなりすぎると、熱応力によって密着層18にクラックや剥がれが発生しやすくなる。従って、密着層18の厚さは、1μm以下が好ましい。
密着層18の空隙率は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。
本発明に係る結晶成長部材10は、窒化物や炭化物などの化合物からなる結晶を成長させるための成長空間内に配置される各種の部材に用いることができる。
このような部材としては、例えば、
(a)種結晶を保持するためのサセプタ、
(b)結晶の原料となる溶融金属を保持するためのルツボ、
(c)ヒーター、
などがある。
本発明に係る結晶成長部材10は、
(a)基材12の表面に保護層14を形成し、
(b)必要に応じて、保護層14の表面に密着層18を形成し、
(c)保護層14又は密着層18の表面に寄生反応防止層16を形成する
ことにより製造することができる。
まず、基材12の表面に保護層14を形成する(保護層形成工程)。保護層14の形成方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。保護層14の形成方法としては、例えば、
(a)化学気相堆積(CVD)法、スパッタ法などの気相成長法、
(b)原料粉末、並びに、必要に応じてバインダー及び/又は焼結助剤を含むスラリーを基材12表面に塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥させて成形体膜とし、成形体膜を焼結させる方法(焼結法)、
などがある。
焼結法は、単位面積当たりのスラリーの塗布量を調節することで、保護層14の膜厚を容易に制御することができ、厚膜の形成も可能である。また、スラリー中に添加する焼結助剤の量や焼結条件により、保護層14の空隙率(0.5〜35%)も容易に制御することができる。しかし、焼結法は、厚さが極めて薄く、かつ、緻密な薄膜の形成が難しい。
そのため、保護層14に要求される特性に応じて、最適な形成方法を選択するのが好ましい。
次に、必要に応じて、保護層14の表面に密着層18を形成する(密着層形成工程)。密着層18の形成方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。密着層18の形成方法としては、気相成長法などがある。気相成長法の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
次に、保護層14の表面(又は、密着層18が形成されている時には密着層18の表面)に寄生反応防止層16を形成する(寄生反応防止層形成工程)。これにより、本発明に係る結晶成長部材10が得られる。寄生反応防止層16の形成方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。
(a)気相成長法、
(b)焼結法、
(c)保護層14が形成された基材12表面に金属粉末を含むスラリーを塗布し、基材12を黒鉛ルツボに充填した状態で減圧雰囲気において2000℃以上に加熱し、金属粉末と黒鉛ルツボ由来のC原子とを反応させることにより、保護層14の表面に金属炭化物からなる被膜を形成する方法(反応焼結法)、
などがある。
焼結法又は反応焼結法を用いて寄生反応防止層16を形成する場合において、スラリー中に焼結助剤をさらに添加すると、緻密な寄生反応防止層16を得ることができる。一方、スラリー中に造孔材(例えば、アクリルビーズ)を添加すると、寄生反応防止層16の空隙率を広範囲(0.5〜65%)に制御することができる。
一方、W及び/又はMoを含むスラリーを基材12表面に塗布した場合において、非炭素雰囲気(例えば、W炉中)で塗膜を加熱すると、金属被膜を形成することができる。
Ir及び/又はRuを含むスラリーを基材12表面に塗布した場合、雰囲気中の炭素の有無にかかわらず、金属皮膜を形成することができる。従って、Ir及び/又はRuの炭化物又は窒化物からなる被膜を形成するためには、焼結法を用いる必要がある。
炭素系材料からなる基材の表面に形成されたTaC又はSiCからなる被膜は、基材を高温・腐食雰囲気から保護する機能を持つ。しかし、このような部材を結晶成長部材として用いて窒化物や炭化物の単結晶の成長を行うと、種結晶表面に単結晶が成長すると同時に、結晶成長部材の表面で寄生反応(多結晶の析出反応)が生じやすい。
これに対し、W、Mo、Ru若しくはIr、これらの炭化物、又はこれらの窒化物は、寄生反応を抑制する機能を持つ。そのため、基材12の表面に保護層14及び寄生反応防止層16を形成すると、保護機能と寄生反応抑制機能とを兼ね備えた結晶成長部材10が得られる。
また、保護層14の表面にさらに寄生反応防止層16を形成すると、多結晶の付着が抑制される。また、寄生反応防止層16が保護層14に強く密着するために、寄生反応防止層16にクラックや剥がれが発生しにくくなる。
さらに、被膜の多層化により結晶成長部材10が長寿命となるため、大型結晶の育成、パーティクルの生成防止、プロセススループットの向上などに寄与する。
[1. 試料の作製]
等方性黒鉛からなる基材12の表面に、保護層14及び寄生反応防止層16を形成した。また、一部の試料については、保護層14と寄生反応防止層16の間に密着層18を形成した。保護層14には、TaC、SiC、又はpBNを用いた。寄生反応防止層16には、SiC、WC、W、Mo2C、Mo、Ru、又はIrを用いた。密着層18には、Tiを用いた。各層の形成方法は、以下の通りである。
[1.1.1. 焼結法によるTaC膜]
ガラスバイアルに、バインダー(アクリル樹脂)粉末:0.4g、並びに、溶媒としてα−テルピネオール:2.0g、シクロペンタノン:4.0g、炭酸ジメチル:4.4g、及び、1,3−ジオキソラン:12gを投入した。ガラスバイアルをキャップで封止し、攪拌・混合することでバインダー溶液を得た。このバインダー溶液にTaC粉末(平均粒径:1μm):50g、及び焼結助剤として金属Co粉末(平均粒径:1μm):1gを投入し、超音波分散処理することによりTaCスラリーを得た。
得られたTaCスラリーを基材12表面に塗布し、乾燥させた。次いで、基材12を黒鉛ルツボに入れ、温度:2000℃以上、雰囲気:0.01〜80kPaのAr雰囲気の減圧雰囲気下において焼結した。得られたTaC膜は緻密であり、厚さは100μmであった。
等方性黒鉛からなる基材12の表面に、CVD法によるSiC膜(厚さ:100μm)が形成された部材(市販品)を試験に供した。
[1.1.3. CVD法によるpBN膜]
等方性黒鉛からなる基材12の表面に、CVD法によるpBN膜(厚さ:100μm)が形成された部材(市販品)を試験に供した。
一部の試料については、スパッタ法を用いて、保護層14の表面にTi膜を形成した。Ti膜の厚さは、0.1μmであった。
[1.3.1. 反応焼結法によるWC膜]
上述したバインダー溶液にW粉末(平均粒径:1μm):67.3gを投入し、超音波分散処理することによりWスラリーを得た。
得られたWスラリーを保護層14(及び密着層18)が形成された基材12表面に塗布し、乾燥させた。次いで、基材12を黒鉛ルツボに入れ、温度:2000℃以上、雰囲気:0.01〜80kPaのAr雰囲気の減圧雰囲気下において反応焼結した。得られたWC膜は緻密であり、厚さは10μmであった。
RFマグネトロンスパッタ法により、金属Wをターゲットとして、保護層14の表面に緻密なW膜を形成した。スパッタ雰囲気は、5×10-1PaのAr雰囲気とした。RFパワーは、200W程度とした。ターゲット−サンプル距離は、70mmとした。得られたW膜の厚さは、0.1μmであった。
原料粉末としてMo粉末を用いた以外は[1.3.1.]と同様にして、反応焼結法により保護層の上にMo2C膜を形成した。Mo2C膜の厚さは、10μmであった。
ターゲットとして、金属Mo、金属Ru、又は金属Irを用いた以外は[1.3.2.]と同様にして、Mo膜、Ru膜、及びIr膜を形成した。各膜の厚さは、それぞれ、0.1μmであった。
原料粉末としてRu粉末又はIr粉末を用いた以外は、[1.3.1.]と同様にして、焼結法により保護層の上にRu膜又はIr膜を形成した。Ru膜及びIr膜の厚さは、それぞれ10μmであった。
各種組み合わせの多層膜を備えた結晶成長部材から、サイズ:φ50×2mmのテストピースを作製した。このテストピースを各種の結晶成長プロセスの成長雰囲気に所定時間曝露し、多結晶付着の有無、膜剥がれの有無、及び膜消失の有無を確認した。評価に用いた成長雰囲気は、以下の通りである。
(b)ハイドライド気相成長(HVPE)法を用いてGaN結晶を成長させる時の雰囲気(HVPE−GaN)。
(c)ハロゲンフリー気相成長(HF−VPE)法を用いてGaN結晶を成長させる時の雰囲気(HF−VPE−GaN)。
(d)化学気相成長(CVD)法を用いてSiC結晶を成長させる時の雰囲気(CVD−SiC)。
(e)昇華法を用いてAlN結晶を成長させる時の雰囲気(昇華法AlN)。
(f)昇華法を用いてSiC結晶を成長させる時の雰囲気(昇華法SiC)。
表1に、結果を示す。なお、表1の下部には、各種結晶の詳細な成長条件を示す。表1より、以下のことが分かる。
(1)比較例1〜6は、いずれの結晶成長プロセスにおいても、多結晶付着、膜剥がれ、又は膜消失のいずれかが発生しており、寄生反応防止効果がなく、長時間のプロセス安定性もないことが分かった。
(3)実施例1、6、11、16は、保護層14として焼結法TaC(100μm)を用い、寄生反応防止層16として厚さ10μmの厚膜を用いたものからなる。これらは、すべての結晶成長プロセスにおいて良好な結果を示した。
(4)実施例2、7、12、17は、保護層14としてCVD−SiC(100μm)を用い、寄生反応防止層16として厚さ10μmの厚膜を用いたものからなる。これらは、昇華法AlN及び昇華法SiC以外の結晶成長プロセスにおいて良好な結果を示した。
(6)実施例5、10、15、20は、保護層14として焼結法TaC(100μm)を用い、寄生反応防止層16として厚さ0.1μmの薄膜を用い、Ti密着層を形成しなかったものからなる。これらは、昇華法AlN、昇華法SiC、及びCVD−SiC以外の結晶成長プロセスにおいて良好な結果を示した。
[1. 試料の作製]
等方性黒鉛からなる基材12の表面に、焼結法を用いてTaCからなる保護層14を形成した。焼結法を用いてTaC膜を形成する際、スラリーの塗布量及び焼結助剤の配合量を変えることで、保護層14の厚さ及び空隙率を調整した。保護層14の厚さは100〜150μmとし、空隙率は0.5〜35%とした。焼結法によるTaC膜の形成に関するその他の点は、実施例1と同一とした。
次に、保護層14の表面に、反応焼結法を用いてWCからなる寄生反応防止層16を形成した。寄生反応防止層16の厚さは10μmとし、空隙率は35〜45%とした。反応焼結法によるWC膜の形成に関するその他の点については、実施例1と同一とした。
多層膜を備えた結晶成長部材10から、サイズ:φ50×2mmのテストピースを作製した。このテストピースをアンモニアアニール試験に供した。試験条件は、以下の通りである。試験前後の重量変化から、サンプルの重量減量速度を算出した。
雰囲気(圧力):NH3+H2(60kPa)
NH3流量:5slm
H2流量:20slm
サンプル温度:1200℃
アニール時間:3時間
[3.1. 空隙率の影響]
図2に、保護層の空隙率とサンプルの重量減量速度との関係を示す。図2より、保護層14の空隙率が3%を超えたあたりから、急激に劣化速度が大きくなることが分かる。これは、空隙率が3%を超えたところから、保護層14中の気孔が連続孔(ピンホール)となる確率が上昇し、このピンホールから侵入したNH3により基材12が腐食されたためと考えられる。すなわち、保護層14の好適な空隙率は3%以下であると言える。
図3に、保護層の厚さとサンプルの重量減量速度との関係を示す。図3より、保護層14の厚さが20μm未満である場合、及び、保護層14の厚さが200μmを超える場合のいずれも、劣化速度が大きくなることが分かる。これは、保護層14の厚さが薄い時には基材12のポアに由来するピンホールが保護層14中に形成され、保護層14の厚さが厚い時には熱応力により保護層14にクラックが発生し、これらの隙間から侵入したNH3により基材12が腐食されたためと考えられる。すなわち、保護層14の好適な厚さは、20〜200μmの範囲であると言える。
[1. 試料の作製]
等方性黒鉛からなる基材12の表面に、焼結法を用いてTaCからなる保護層14を形成した。保護層14の厚さは100μmとし、空隙率は1〜2%とした。焼結法によるTaC膜の形成に関するその他の点は、実施例1と同一とした。
次に、保護層14の表面に、反応焼結法を用いてWCからなる寄生反応防止層16を形成した。反応焼結法を用いてWC膜を形成する際、スラリーの塗布量及び造孔材の配合量を変えることで、寄生反応防止層16の厚さ及び空隙率を調整した。寄生反応防止層16の厚さは1〜300μmとし、空隙率は0.6〜63%とした。
多層膜を備えた結晶成長部材10から、サイズ:φ50×2mmのテストピースを作製した。成膜直後の寄生反応防止層16について、クラックの発生及び剥がれの有無を目視で評価した。
成膜温度:1050℃
圧力:60kPa
トリメチルガリウム(TMG)流量:0.05slm
NH3流量:5slm
H2流量:20slm
曝露(成長)時間: 2時間
[3.1. 厚さの影響]
表2に、寄生反応防止層16の厚さと、クラック・膜剥がれの有無及びMOVPE−GaN雰囲気下における多結晶付着の有無の関係を示す。この場合、寄生反応防止層16の空隙率は、35〜45%とした。表2より、以下のことが分かる。
(1)寄生反応防止層16の厚さを1〜200μmとすると、成膜直後にクラックや膜剥がれが生じないことが分かった。
(2)寄生反応防止層16の厚さが5〜300μmである時に、寄生反応防止効果が認められた。
(3)以上の点を考慮すると、寄生反応防止層16の好適な厚さは、5〜200μm、さらに好ましくは、10〜200μmの範囲である。
表3に、寄生反応防止層16の空隙率と、クラック・膜剥がれの有無及び密着性・スクラッチ耐性との関係を示す。この場合、寄生反応防止層16の厚さは、10μmとした。表3より、以下のことが分かる。
(1)寄生反応防止層16の空隙率が3%以上になると、クラック及び剥がれが生じないことが分かった。これは、ある程度の空隙が存在することにより、黒鉛からなる基材12(及び保護層14)と寄生反応防止層16との間のCTE差に起因する熱応力が緩和されたためと考えられる。
(2)寄生反応防止層16の空隙率が3〜50%である時に、十分な密着性とスクラッチ耐性が認められた。
(3)以上の点を考慮すると、寄生反応防止層16の好適な空隙率は、3〜50%の範囲である。
Claims (8)
- 以下の構成を備えた結晶成長部材。
(1)前記結晶成長部材は、
気相成長法を用いて単結晶を成長させる場合において、結晶成長空間内に配置される部材であって、
炭素系材料からなる基材と、
前記基材の表面に形成された保護層と、
前記保護層の表面に形成された寄生反応防止層と
を備えている。
(2)前記保護層は、TaC又はSiCからなる。
(3)前記寄生反応防止層は、
意図する反応とは異なる反応(寄生反応)を抑制するための層であって、
(a)W、Mo、Ru、及びIrからなる群から選ばれるいずれか1種以上の金属、並びに、
(b)前記金属の炭化物、
からなる群から選ばれるいずれか1種以上の材料からなる。 - 前記保護層の厚さが20μm以上200μm以下である請求項1に記載の結晶成長部材。
- 前記保護層の空隙率が3%以下である請求項1又は2に記載の結晶成長部材。
- 前記寄生反応防止層の厚さが0.1μm以上200μm以下である請求項1から3までのいずれか1項に記載の結晶成長部材。
- 前記寄生反応防止層は、
厚さが5μm以上200μm以下であり、かつ、
空隙率が3%以上50%未満である
請求項1から4までのいずれか1項に記載の結晶成長部材。 - 前記寄生反応防止層は、
厚さが0.1μm以上5μm未満であり、かつ、
空隙率が0.1%未満である
請求項1から4までのいずれか1項に記載の結晶成長部材。 - 前記保護層と前記寄生反応防止層との間に形成された密着層をさらに備えている請求項1から6までのいずれか1項に記載の結晶成長部材。
- 前記密着層は、Tiからなり、かつ、厚さが0.1μm以上1μm以下である請求項7に記載の結晶成長部材。
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