JP2006143587A - ガラス状炭素被覆炭素材及びその製造方法 - Google Patents

ガラス状炭素被覆炭素材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐摩耗性、対基体付着性に優れたガラス状炭素被覆炭素材の提供。
【解決手段】炭素材から成る基体の表面層にガラス状炭素層を有し、このガラス状炭素層の表面が、ポリカルボジイミド樹脂を含む溶液を用いて形成され、X線光電子分光法により測定したO1S及びC1Sピークの面積比O1S/C1Sを0.1〜0.2とする表面性状であることを特徴とするガラス状炭素被覆炭素材。平均気孔半径が0.1〜5.0μmの炭素材の表面層に、ポリカルボジイミド樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を1〜50cpの粘度に調整した前駆体溶液を含浸又は/及び塗布し、乾燥後、不活性雰囲気中又は真空雰囲気中で加熱硬化、更に焼成して、炭素材から成る基体の表面層に1〜200μmの厚みのガラス状炭素層を有するガラス状炭素被覆炭素材を製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、炭素材を基体とし、その表面層にガラス状炭素層を有するガラス状炭素被覆炭素材に係り、さらに詳しくは、半導体、光ファイバ等の製造の際に使用されるサセプタ、るつぼ、ボート、ヒータ、熱処理用治具等の各種部材、金属蒸着用るつぼ、ガラス封着用治具、セラミック焼結用治具などに好適に使用できるガラス状炭素被覆炭素材及びその製造方法に関する。
各種の炭素材を基体として、その表面層にガラス状炭素層を有するガラス状炭素被覆炭素材は、炭素材のガス不浸透性、耐摩耗性、化学安定性、表面硬度などを向上させたり、粉塵の発生を防止したりする部材として、各種の用途に広範に使用されており、下記特許文献1〜3などに先行技術が開示されている。例えば、ガラス状炭素層に要求される特性の一つである耐摩耗性は、炭素材の場合では機械的摩耗によりその表面から微粉が簡単に発生して被処理製品を汚染するため、その表面層にガラス状炭素層を形成することによって微粉の発生を防ぎ耐摩耗性を向上させるものである。
この種のガラス状炭素被覆炭素材は、層形成時の熱処理温度によってその特性が大きく変化するため、熱処理温度値の決定は重要であるが、熱処理温度を決定しても昇温速度が異なると、得られるガラス状炭素層の物性が異なってしまうことになる。すなわち、熱処理温度と昇温速度は一体不可分の関係であり、これらの条件はガラス状炭素層の特性を支配する大きな要因となるものである。それ故、品質の安定したガラス状炭素被覆炭素材を製造するためには、熱処理温度と昇温速度とを綿密に決定する必要がある。
特開平5−319939号公報 特開平5−262510号公報 特開平6−93453号公報
ところで、ガラス状炭素層の形成方法には各種の方法があり、例えば各種の合成樹脂を該樹脂が可溶な有機溶媒に溶解して前駆体溶液を調整し、次いでこの溶液を炭素材の表面層に含浸又は/及び塗布し、乾燥後、不活性雰囲気又は真空雰囲気で硬化、更に焼成することによって形成できるが、このような熱処理時において処理炉内位置に起因する温度分布により、熱処理温度や昇温速度を決定しても、得られるガラス状炭素層は耐摩耗性や基体に対する付着性が低かったり、半導体ウエハ等の被処理製品と固着したりするなど品質欠陥を招く場合がしばしばある。従って、たとえ熱処理温度や昇温速度を規定してガラス状炭素層を形成したとしても、高耐摩耗性、高固着性を備えた被覆層であるかどうかの保証は得られ難く、品質保持の点で問題が多いのが実状である。
本発明は、このような問題点の解消を図るために成されたものであり、本発明の目的は、高耐摩耗性、高固着性を備えた所謂、健全性に富んだガラス状炭素被覆炭素材を提供することにある。
本発明は、上記の目的を達成するため以下に述べる構成としたものである。即ち、本発明は、炭素材から成る基体の表面層にガラス状炭素層を有するガラス状炭素被覆炭素材であって、前記ガラス状炭素層の表面が、1〜50cpの粘度に調整したポリカルボジイミド樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を用いて形成され、X線光電子分光法により測定したO1S及びC1Sピークの面積比O1S/C1Sを0.1〜0.2とする表面性状を備えることを特徴とする。なお、前記有機溶媒がテトラクロロエチレンであることが好ましい。また、前記有機溶媒の粘度が1〜30cpであることが好ましい。
本発明はまた、平均気孔半径が0.1〜5.0μmの炭素材の表面に、ポリカルボジイミド樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を1〜50cpの粘度に調整して得た前駆体溶液を含浸又は/及び塗布し、乾燥後、不活性雰囲気中又は真空雰囲気中で加熱硬化し、更に焼成することによって、炭素材から成る基体の表面層に、1〜200μmの厚みで、X線光電子分光法により測定したO1S及びC1Sピークの面積比O1S/C1Sを0.1〜0.2とする表面性状のガラス状炭素層を有するガラス状炭素被覆炭素材を製造することを特徴とするガラス状炭素被覆炭素材の製造方法である。
本発明に係るガラス状炭素被覆炭素材は、ガラス状炭素層に要求される特性、即ち、ガス不浸透性、耐摩耗性、化学安定性、表面高硬度、防発塵性等の諸特性を具備する上に、被処理製品との固着や汚染、被覆層の変質、ガス発生が起こらず、被覆層と基体との密着性が良好であり、損傷し難いなど、優れた特性を有するものになる。従って、本発明に係るガラス状炭素被覆炭素材は、半導体、光ファイバ等の製造の際に使用されるサセプタ、るつぼ、ボート、ヒータ、熱処理用治具等の各種部材、金属蒸着用るつぼ、ガラス封着用治具、セラミック焼結用治具などに好適に使用することが可能である。
以下、本発明の好ましい実施の形態に関して説明する。本発明者等は、熱処理を施した後のガラス状炭素層の物的特性と、その表面をXPSで観測した際の炭素(C)、酸素(O)及び窒素(N)の元素の挙動(特にディジタル的割合で示した比)とを詳細に調査・検討した結果、ガラス状炭素層の表面が、XPSで測定したO1S及びC1Sピークの面積比O1S/C1Sが0.1〜0.2の値であれば、耐摩耗性や基体との固着性が良好で、被処理製品と固着することがない等の健全性を有することを知見するに至ったものである。
基体となる炭素材としては特に制約されないが、通常は2500〜3200℃の範囲内で熱処理された等方性や異方性の炭素材を使用することができる。炭素材の熱処理が2500℃未満では、黒鉛化が十分に進行していないために、ガラス状炭素層を形成する際の熱処理(炭素化)時に基体が収縮してしまって、ガラス状炭素層に微細な亀裂や剥離が生じ易く、その結果、微粉が発生し易くなるからである。また、熱処理温度が3200℃を超える炭素材を使用すると、黒鉛化が進み過ぎており、基体表面は微粉が頗る発生し易い状態であるため、熱処理すればガラス状炭素となる前駆体溶液を含浸・塗布する際に微粉が混入してしまい、ガラス状炭素層を形成しても微粉の発生を防ぐことが困難になる。さらに、このような層の場合、表面硬度が低くなるため、機械的摩耗によって微粉が発生し易くなるからに他ならない。
ガラス状炭素層の形成は公知の各方法で行えば良く、例えば、各種合成樹脂を有機溶媒に溶解して前駆体溶液を製造する。次いで、この溶液を炭素材の表面層に含浸又は/及び塗布し、乾燥後、不活性雰囲気又は真空雰囲気で加熱硬化し、更に焼成して形成することができる。また、液状樹脂をそのまま基体に含浸又は/及び塗布して加熱硬化、更に焼成しても形成できる。いずれにしても本発明においては、ガラス状炭素層の形成方法に格別の制約を受けない。以下にガラス状炭素層の前駆体溶液を用いて被覆層を形成する方法に基づき、ガラス状炭素被覆炭素材を製造する方法を説明する。
ガラス状炭素被覆炭素材を製造するためには、炭素材の表面層に、前駆体溶液を含浸又は/及び塗布すれば良いが、炭素基体の平均気孔半径が0.1μm未満では、基体へのアンカー効果が低く、摩擦や急激な加熱、急冷等により容易に亀裂、剥離等が生じ易い。また、5.0μmより大きいと適当な厚みの前駆体溶液を含浸又は/及び塗布しても、基体表面層の気孔を十分に塞ぐことができず、緻密な層を形成するのが難しい。それ故、平均気孔半径が0.1〜5.0μmの炭素材の表面層に前駆体溶液を含浸又は/及び塗布することによって、健全性を有するガラス状炭素被覆炭素材を製造し得るものである。なお、基体に対する固着強度が高く、かつ緻密な膜を形成する為には、平均気孔半径が0.2〜2.0μmの炭素材を基体に用いるのがさらに好ましい。この場合、炭素基体の平均気孔半径は、水銀圧入法で最大圧力1100kg/cm2、試料と水銀との接触角141.3°で測定した累積気孔容積の1/2とした。
ここで、合成樹脂は焼成後ガラス状炭素質を与えるものであれば特に問われない。このガラス状炭素質を与える合成樹脂としてはフェノール樹脂、フラン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、キシレン樹脂、アルキド樹脂、塩化ビニル樹脂などを例示できる。また、使用する有機溶媒は合成樹脂を溶解するものであれば特に問われないが、例えばテトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アルコール類(メタノール、エタノール等)などがある。これらの溶媒は単独で用いてもよく、又、溶解性を損なわない範囲で二種類以上を混合して用いてもよい。このうち、樹脂の溶解性や被覆層形成の容易性の観点から、ポリカルボジイミド樹脂はテトラクロロエチレン、フェノール樹脂はメタノール、ポリアミドイミド樹脂はN−メチルピロリドン等の組合せが好ましい。
基体に含浸する場合は、樹脂の重合度と溶媒希釈率により若干異なるが、これらを1〜50cp(centipoise)の粘度になるように混合して前駆体溶液を製造するのが良い。粘度が、50cpを超えるとガラス封着用治具等の小さい穴を有する製品では穴詰まりを生じるおそれがあり、1cp未満では含浸後に基体表面層に残存する量が少なくなる。特に最適な粘度は5〜30cpである。一方、基体に塗布する場合は、前記基体に含浸する場合と同様に1〜50cpの粘度でよいが、0.1〜30cpが適している。これは30cpを超えると、平滑で、かつ剥離や亀裂に強い層を得ることが難しくなり、1cp未満では、塗布回数を多くしなければならず、手間が掛かるため、工業的ではないからである。
このようにして得られた前駆体溶液を、基体に含浸したり、ハケ、スプレー等により塗布したりする。このような含浸物や塗布物を通常は60〜100℃で乾燥した後、150〜300℃で加熱して硬化、次いで600〜3000℃で焼成してガラス状炭素被覆層を形成することができるが、本発明ではガラス状炭素層の表面がXPSで測定したO1S及びC1Sピークの面積比O1S/C1Sを0.1〜0.2の値になるように焼成等の熱処理を行う必要がある。ここで、形成するガラス状炭素層の厚みは使用目的によって異なるが、通常、1〜200μmである。厚みが1μmよりも少ないとガス不浸透性、耐摩耗性、化学安定性を発揮しにくくなり、又、200μmよりも厚くすると塗布したガラス状炭素層が黒鉛基体より剥離したり、ガラス状炭素層に亀裂が生じたりするので好ましくない。
ガラス状炭素層の表面に関してXPSで測定したO1S及びC1Sピークの面積比O1S/C1Sが0.2を超えると、基体表面層に含浸又は/及び塗布した物質の炭素化が進んでいないため、層の熱収縮が大きく、急熱により亀裂や剥離が生じる。更には、ヘテロ原子を残存しているため、熱処理製品との固着や汚染、層の変質、ガス発生の原因になる。一方、O1S及びC1Sピークの面積比O1S/C1Sが0.1未満では炭素化が進み過ぎているため、被覆層は損傷し易く、耐摩耗性も低下し、微粉が発生する。本発明に係るガラス状炭素層の表面はO1S及びC1Sピークの面積比O1S/C1Sを0.1〜0.2の値としているため、亀裂や剥離、層の変質、被処理製品への固着や汚染、ガス発生等が生じない、取扱い時に被覆層に傷が付かない等の著しく優れた特性を発揮し得るものとなる。
以下、本発明の実施例について説明する。本発明者等は、各種の合成樹脂を使用して熱処理を施した後のガラス状炭素層の物的特性と、その表面をXPSで観測した際の炭素(C)、酸素(O)及び窒素(N)の元素の挙動(特にディジタル的割合で示した比)とを詳細に調査・検討した結果に基づいて、本発明を完成するに至ったものである。なお本発明において、XPSの測定としては、各種の技術分野で広く用いられており、かつ、その測定手法についても良く知られているC1S、O1S及びN1Sを対象として測定した。その主な結果を以下に(1)〜(7)の各項に分けて記述する。
(1) 窒素を含む合成樹脂を使用した場合において、窒素のN1Sピークは観測することができず、ガラス状炭素層の特性にはおよそ無関係であった。但し、乾燥工程後の被覆層には小さなN1Sピークを観測することができたが、この層はガラス状炭素の形態をとっておらず、本発明に係る被覆層ではない。換言すれば、焼成するとN1Sピークは存在しなくなり、基体に塗布した物質はガラス状炭素に変化すると考えられる。
(2) 酸素のO1Sピークはどの試料も左右対称であり、ピーク位置が532〜534eVのものが観測された。
(3) 炭素のC1Sピークは左右対称のものから高エネルギー側に裾が広がった形状のものまであり、ピーク位置が284〜287eVのものが観測された。
なお参考までに、結合エネルギーの変化(化学シフト)は、存在する化学種の化学結合状態の変化を示しており、より低いエネルギー側へシフトしたピークを示している試料は、次のように考察できる。即ち、炭素化があまり進んでいないときには、局在化した分子軌道を持つ「−C=O」、「−N=C−」などの結合は、熱処理により切断されて脱離したり、分子内での組替えが生じたりする。それと共に炭素化され、より安定な六角網目構造を形成するようになる。従って、このような結合状態、即ち結合エネルギーの変化が、O1S及びC1Sのピーク位置の低エネルギー側へのシフトとなったものであり、このように低エネルギー側へのシフトが大きいもの程、炭素化が進んでいると考えられる。
(4) O1Sピークの高さは、一番低いピークを1とした場合、1〜3.5倍程度の範囲内で全試料のピークが観測された。
(5) C1Sピークの高さは、一番低いピークを1とした場合、1〜1.5倍程度の範囲内で全試料のピークが観測された。
(6) O1Sピークの面積は、一番小さいピークを1とした場合、1〜2.7倍程度の範囲内で全試料のO1Sピークの面積が観測された。
(7) C1Sピークの面積は、一番小さいピークを1とした場合、1〜1.5倍程度の範囲内で全試料のC1Sピークの面積が観測された。
以上の結果に基づき、O1S及びC1Sのピークの位置、高さ、面積の項目中から、ガラス状炭素層の特性と密接な関係にあるものを各種実験によって定めた結果、ガラス状炭素層の前記健全性を評価するためには、O1S及びC1Sのピークの面積比O1S/C1Sが適当であることが判った。以下に実験例及び比較例によって、本発明を更に具体的に説明する。
実施例1,(A)〜実施例4,(D)、比較例1,(E)〜比較例5,(I)及び参照例1,(J)〜参照例3,(L):平均気孔半径1.5μm、熱処理温度3000℃の等方性炭素材を基体とし、ポリカルボジイミド樹脂をテトラクロロエチレンで溶解したガラス状炭素前駆体溶液を基体表面層に含浸及びスプレー塗布し、焼成速度及び焼成温度を変えて、XPSにより測定したO1S及びC1Sのピークの面積比O1S/C1Sが下記の表1に示すような値のガラス状炭素層(厚み:50μm)を形成した(実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5)。なお、表1における参照例1〜3は黒鉛基体のみのものである。
Figure 2006143587
実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例5及び参照例1〜参照例3についてそれらの試料の引掻試験、固着試験及び急熱試験を行い、ガラス状炭素層の健全性を比較評価した。
〈試験1:連続荷重方式による引掻試験〉引掻針を実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例5及び参照例1〜参照例3の各試料表面に垂直に降ろし、垂直方向の荷重を0から500gまで増やしながら表面を引っ掻く。このとき、引掻針の先端が受けた力を引掻強度として記録し、被覆層が破損したときの垂直荷重(臨界荷重)を比較した。この結果は、主に被覆層の付着力、剪断力を評価したものである。なお、参照例1〜参照例3は、基体表面が削られ始めた際の荷重を臨界荷重とした。
〈試験2:一定荷重方式による往復引掻試験〉試験1と同様に、引掻針を各試料表面に垂直に降ろし、垂直方向荷重50g一定として引掻針で直線方向に往復運動させ、被覆層が破損するまでの往復回数を比較した。この結果は、主に被覆層の耐摩耗性を評価したものである。なお、参照例1〜参照例3は、基体表面が削られ始めた際の荷重を臨界荷重とした。
ここで、引掻試験は次の条件で行った。
・機 種: トライボギア TYPE22・記録計: フラットベット型ペンレコーダ・引掻針: ダイヤモンド製(先端0.1mm,R90°)
・荷 重: 連続荷重測定:0〜500g 一定荷重測定:50g・荷重速度: 連続荷重測定:10g/秒・引掻速度: 連続荷重測定:0.5mm/秒 一定荷重測定:5mm/秒
これらの引掻試験の結果を表1及び図1,2に示す。この結果より、ガラス状炭素層表面がO1S/C1S(面積比)が0.1未満になると、臨界荷重及び破損までの往復回数が顕著に低下することが判る。又、基体のみを用いた参照例1〜参照例3においても耐摩耗性は実施例1〜実施例4に劣り、粉塵を発生した。なお、図1には、各試料における被覆層が破損したときの垂直荷重(臨界荷重)とO1S/C1S(面積比)の関係が、また図2には、同じく破損したときの往復回数とO1S/C1S(面積比)の関係がそれぞれ示されている。
〈試験3:固着試験〉各試料の表面上にシリコンウエハを置き、300℃/時間の昇温速度に設定した炉に入れ、炉内温度がガラス状炭素被覆炭素材が通常使用される代表的な温度である1200℃に到達後、この温度で1時間保持した。これにより、シリコンウエハが各試料に固着するか否かを調べた。
この固着試験結果を表1に示す。この結果から明らかなように、ガラス状炭素層表面のO1S/C1S(面積比)が0.2を超えると、シリコンウエハに固着することが判る。
〈試験4:急熱試験〉各試料(室温状態)を1000℃に設定した炉に素早く入れて急熱した。この急熱により、ガラス状炭素層に亀裂や剥離が生じるか否かを調べた。
この急熱試験結果を表1に示す。この結果より、ガラス状炭素層表面がO1S/C1S(面積比)が0.2を超えると、亀裂が生じることが判る。
以上の各試験結果からみて、表面のO1S/C1S(面積比)が0.1〜0.2のガラス状炭素層に関して健全性を確保していることが証されることが判る。
〈XPS測定条件〉
ここで、XPSの測定は全て以下の条件で行った。
・測定装置: ESCA−750(島津製作所(株)製)
・X線源: MgKα線
・加速電圧: 8kV
・測定時の真空度: 10−6Pa以下
・C1S測定範囲: 280〜294eV(0.1eVステップ)
・O1S測定範囲: 526〜540eV(0.1eVステップ)
・N1S測定範囲: 395〜410eV(0.1eVステップ)
また、O1S/C1S(面積比)の値は、ピークの両裾を結ぶ線をバックグランド線とし、この線より上に存在するピーク面積の全カウント数(cps)をそのピークの面積とし、O1Sピークの面積をC1Sピークの面積で除した値である。
各試料における被覆層が破損したときの垂直荷重(臨界荷重)とO1S/C1S(面積比)の関係を示す分布図である。 各試料における被覆層が破損したときの往復回数とO1S/C1S(面積比)の関係を示す分布図である。

Claims (4)

  1. 炭素材から成る基体の表面層にガラス状炭素層を有するガラス状炭素被覆炭素材であって、前記ガラス状炭素層の表面が、1〜50cpの粘度に調整したポリカルボジイミド樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を用いて形成され、X線光電子分光法により測定したO1S及びC1Sピークの面積比O1S/C1Sを0.1〜0.2とする表面性状を備えることを特徴とするガラス状炭素被覆炭素材。
  2. 前記有機溶媒がテトラクロロエチレンであることを特徴とする請求項1記載のガラス状炭素被覆炭素材。
  3. 前記有機溶媒の粘度が1〜30cpであることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス状炭素被覆炭素材。
  4. 平均気孔半径が0.1〜5.0μmの炭素材の表面に、ポリカルボジイミド樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を1〜50cpの粘度に調整して得た前駆体溶液を含浸又は/及び塗布し、乾燥後、不活性雰囲気中又は真空雰囲気中で加熱硬化し、更に焼成することによって、炭素材から成る基体の表面層に、1〜200μmの厚みで、X線光電子分光法により測定したO1S及びC1Sピークの面積比O1S/C1Sを0.1〜0.2とする表面性状のガラス状炭素層を有するガラス状炭素被覆炭素材を製造することを特徴とするガラス状炭素被覆炭素材の製造方法。
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