JP6265802B2 - 被膜密着性を強化した酸化物被覆炭素材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
1 . 炭素材料の表面に酸化物膜からなる被覆層を有する酸化物被覆炭素材料において、前記炭素材料の表面にガラス状カーボン含浸層を有し、ガラス状カーボンの被覆層を有さないことを特徴とする酸化物被覆炭素材料。
2 . 前記酸化物膜が、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、マグネシウム、イットリウム、チタン及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物である、1記載の酸化物被覆炭素材料。
3 . 前記ガラス状カーボンが、フェノール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂およびフラン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を炭化焼成したものである、1または2記載の酸化物被覆炭素材料。
4 . 炭素材料の表面に酸化物膜を被覆する酸化物被覆炭素材料を製造するための炭素材料の前処理方法において、前記炭素材料の表面にガラス状カーボン含浸層を形成することを特徴とする1から3記載の酸化物被覆炭素材料を製造するため炭素材料の前処理方法。
5 . 炭素材料の表面を粗面化する工程、前記炭素材料の表層に熱硬化性樹脂の溶液を浸潤し前記炭素材料に含浸する工程、前記熱硬化性樹脂の溶液を浸潤させた炭素材料を加熱して前記熱硬化性樹脂を硬化させる工程、前記炭素材料に高温熱処理を施して前記熱硬化性樹脂をガラス状カーボンとしガラス状カーボン含浸層を形成する工程、および前記ガラス状カーボン含浸層の上に酸化物膜からなる被覆層を形成する工程を有し、ガラス状カーボンの被覆層を有さないことを特徴とする酸化物被覆炭素材料の製造方法。
6 . 前記被覆層が、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、マグネシウム、イットリウム、チタン及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物膜である、5記載の酸化物被覆炭素材料の製造方法。
7 . 前記酸化物膜からなる被覆層を形成する手段が溶射である、6記載の酸化物被覆炭素材料の製造方法。
8 . 前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂およびフラン樹脂から選ばれる少なくとも1種である、5〜7記載の酸化物被覆炭素材料の製造方法。
を提供する。
本発明の被覆する炭素材料に前処理として形成するガラス状カーボンの含浸層は、熱硬化性樹脂の溶液を含浸、硬化、炭化した物である。
黒鉛を含む炭素材料は、従来公知の方法により作製することができる、例えばコークス粉末などの主原料(骨材)を、それ自体が加熱処理により炭化、黒鉛化するコールタールピッチなどの結合剤を用いて成形したのち、これを700〜1200℃程度の温度で炭化し、さらに2000〜3000℃程度の温度で黒鉛化することにより、黒鉛質炭素材料が得られる。
C/Cコンポジットは、炭素繊維によって強化された黒鉛基複合材料を指し、例えば炭素繊維と、コールタールピッチやフェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂などの樹脂類とを混合したプリプレグを積層し、プレスなどによって成形し、これを700〜1200℃程度の温度で炭化、次いで2000〜3000℃程度の温度で黒鉛化することにより、C/Cコンポジットからなる炭素材料が得られる。
本発明に使用される熱硬化性樹脂としては、炭化収率が高い樹脂、特に芳香族系の熱硬化性樹脂が好ましい。このような芳香族系の熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、ポリイミド樹脂、フラン樹脂、アセトフェノン−ホルムアルデヒド樹脂(ケトン樹脂)などが挙げられるが、これらの中でも特に炭化収率が高い、フェノール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂及びフラン樹脂が好適である。これらの熱硬化性樹脂は、一種を単独で用いてもよく二種以上を組み合わせて用いてもよい。
R−N=C=N− (I)
(式中、Rは有機ジイソシアネート残基を示す。)
で表される繰り返し単位を少なくとも一種有する単独重合体又は共重合体を用いることができる。
前記一般式(I)において、Rで示される有機ジイソシアネート残基としては、芳香族ジイソシアネート残基が好適である。
ポリカルボジイミド樹脂は、従来公知の方法、例えば有機ジイソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応により、容易に製造することができる。
本発明の含浸工程における熱硬化性樹脂と溶媒との溶液の粘度を、前記範囲に調整するためには、必要に応じ、適当な溶媒、例えばN−メチルピロリドン、メタノール、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレンなどを用いることができる。
本発明の溶液の調製方法については特に制限はなく、例えば熱硬化性樹脂と溶媒を、所定の割合で用い、遊星運動式混練機、プロペラ式撹拌機、エバポレーターなどにより均質に溶解させることにより、所望の溶液に調製することができる。
また、前記炭素材料においては、気孔率は30%以下が好ましい。この気孔率が30%以下であれば、その表面に含浸される樹脂の量を均一にすることができる。なお、気孔率は水中置換法による一般的な気孔率測定法で求めることができる。また、材料のかさ比重と真比重が予め分かっている場合は、計算により気孔率を求めることもできる。
手順としては、炭素材料を前記のようにして調製された熱硬化性樹脂の溶液に浸潤させ、1時間から24時間程度その状態を保持する。
この含浸層の厚さは数十μm〜数mmである。含浸層の厚さは、含浸される樹脂の量によって決まるため、炭素材料の密度や表面状態、樹脂溶液の濃度、浸潤時間によって調整することができる。また、熱硬化性樹脂の溶液に浸漬させる場合、炭素材料を室温ではなく粘度が下がる温度に温めた樹脂溶液に浸漬させる、あるいは炭素材料を静水状態ではなく樹脂溶液に浸漬させた状態で溶液を撹拌することで含浸を促進させることもできる。含浸される樹脂の量をさらに増やすためには、超音波発振下や減圧、真空環境下で浸潤させることもできる。一方、短時間で浸潤させる場合、炭素材料を容器の中や受け皿の上に立てかけた状態で熱硬化性樹脂の溶液を掛け流しすることもできる。
炭素材料1:東海カーボン(株)製、型番:G330〔等方性黒鉛〕
寸法:50mm×50mm×10mm
かさ比重:1.79 気孔率:21.8%(計算値)
炭素材料2:東洋炭素(株)製、型番:ISO−68〔等方性黒鉛〕
寸法:50mm×50mm×10mm
かさ比重:1.82 気孔率:19.5%(計算値)
※気孔率は、(1−かさ比重/真比重)×100%、真比重:2.26で計算した値。
合成例1
300mLの三つ口フラスコに、トリレンジイソシアネート100g、フェニルイソシアネート2.5gを入れ、触媒として3−メチル−1−フェニル−2−ホスフォレン−1−オキシド0.2gを添加し、窒素バブリング下、180℃で10時間攪拌したあと、テトラクロロエチレンを加え固形分30%に調整し、ポリカルボジイミド樹脂溶液を得た。
実施例1
炭素材料1の表面をブラスト処理により表面粗さRa8μmとした後、合成例1により得られたポリカルボジイミド樹脂溶液をテトラクロロエチレンで10%に希釈した溶液に1時間浸漬させた。その後、溶液を排出しテトラクロロエチレンに入れ替えて10分間放置した後、液中から取出し、120℃の恒温で1時間、25℃/hの昇温速度で250℃まで加熱し、250℃で10分保持して硬化を行った。硬化させた後に、不活性雰囲気で室温から1500℃まで6時間で昇温して炭化、その後、自然冷却して、ガラス状カーボン含浸層が形成された炭素材料の片面にアルミナを溶射して実施例1の酸化物被覆炭素材料を得た。
使用する炭素材料を炭素材料2に換えた以外は、実施例1と同様にしてガラス状カーボン含浸層を形成した炭素材料の片面にアルミナを溶射した酸化物被覆炭素材料を実施例2とした。
実施例1と同様にしてガラス状カーボン含浸層を形成した炭素材料1の片面にジルコニアとイットリアの混合物を溶射した酸化物被覆炭素材料を実施例3とした。
炭素材料1、2の表面をブラスト処理により表面粗さRa8μmとしたのみで、含浸層を形成しない炭素材料の片面にアルミナを溶射した酸化物被覆炭素材料を比較例1、2とした。
比較例3
炭素材料1の表面をブラスト処理により表面粗さRa8μmとした後、合成例1により得られたポリカルボジイミド樹脂を3μm程度の厚さに塗布し、実施例1と同条件で硬化及び炭化した、ガラス状カーボン被覆層を形成した上にアルミナを溶射した酸化物被覆炭素材料を比較例3とした。
比較例4
比較例1と同様にして含浸層を形成しない炭素材料1の片面にジルコニアとイットリアの混合物を溶射した酸化物被覆炭素材料を比較例4とした。
〔剥離時の強度〕
酸化物被覆炭素材料を直径16mmに切り出し、溶射膜とその反対面の炭素材料を引張り試験用治具に接着し、その密着性を島津製作所社製精密万能試験機AG−100kNGによるT型剥離法を用い、クロスヘッドスピード1mm/分における剥離時の強度を試験した。
熱処理炉で室温から1200℃までの昇温及び降温を5回繰り返した後、前記剥離時の強度を試験した。尚、試験は、耐熱性の高いジルコニア-イットリア被膜を溶射した実施例3と比較例4でのみ行った。
Claims (8)
- 炭素材料の表面に酸化物膜からなる被覆層を有する酸化物被覆炭素材料において、前記炭素材料の表面にガラス状カーボン含浸層を有し、ガラス状カーボンの被覆層を有さないことを特徴とする酸化物被覆炭素材料。
- 前記酸化物膜が、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、マグネシウム、イットリウム、チタン及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物である、請求項1記載の酸化物被覆炭素材料。
- 前記ガラス状カーボンが、フェノール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂およびフラン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を炭化焼成したものである、請求項1または2記載の酸化物被覆炭素材料。
- 炭素材料の表面に酸化物膜を被覆する酸化物被覆炭素材料を製造するための炭素材料の前処理方法において、前記炭素材料の表面にガラス状カーボン含浸層を形成することを特徴とする請求項1から3記載の酸化物被覆炭素材料を製造するための炭素材料の前処理方法。
- 炭素材料の表面を粗面化する工程、前記炭素材料の表層に熱硬化性樹脂の溶液を浸潤し前記炭素材料に含浸する工程、前記熱硬化性樹脂の溶液を浸潤させた炭素材料を加熱して前記熱硬化性樹脂を硬化させる工程、前記炭素材料に高温熱処理を施して前記熱硬化性樹脂をガラス状カーボンとしガラス状カーボン含浸層を形成する工程、および前記ガラス状カーボン含浸層の上に酸化物膜からなる被覆層を形成する工程を有することを特徴とするガラス状カーボンの被覆層を有さない酸化物被覆炭素材料の製造方法。
- 前記被覆層が、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、マグネシウム、イットリウム、チタン及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物膜である、請求項5記載の酸化物被覆炭素材料の製造方法。
- 前記酸化物膜からなる被覆層を形成する手段が溶射である、請求項6記載の酸化物被覆炭素材料の製造方法。
- 前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂およびフラン樹脂から選ばれる少なくとも1種である、請求項5〜7記載の酸化物被覆炭素材料の製造方法。
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