JP5263980B2 - 強化用繊維材料とこれを用いた繊維強化セラミックス複合材料およびこれらの製造方法。 - Google Patents

強化用繊維材料とこれを用いた繊維強化セラミックス複合材料およびこれらの製造方法。 Download PDF

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Description

本発明は、セラミックスまたは金属材料からなる強化用繊維材料とこれを用いた繊維強化セラミックス複合材料およびこれらの製造方法に関する。
セラミックス材料は、一般的に金属材料に比べて軽量、高剛性、高耐熱性という優れた特性を有する一方で、脆性材料であるという弱点を有する。この弱点を克服するため、例えば、セラミックスの繊維とセラミックスのマトリックス部からなる機械的強度が強化された繊維強化セラミックス複合材料が広く知られている。
例えば特許文献1には、複数のセラミックス繊維を緻密に束ねて形成した繊維束をセラミックスマトリックス中に分散させ、繊維束の表面と断面はTiを含有するコーティング層またはCとBNを含む層を形成することで、マクロな破壊進展抵抗の大きい高靭性の複合材料が得られるという技術が開示されている。
また特許文献2には、耐環境性に優れたセラミックス基繊維複合材料を提供する目的でプリカーサ含浸・焼成法により形成された炭化ケイ素を主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に含有される繊維と、この繊維の外周に、マトリックス中に進展してきたクラックの進展する方向を変換させるすべり機能を有する層、及び耐環境性機能層を設けた複合化された繊維から構成することで、複合材料に過大な応力が作用した場合でも、上記すべり機能層におけるすべりや剥離が両者の歪差を吸収するため、クラックの進展を偏向させることができ、また繊維の引抜き抵抗が寄与して破壊抵抗を増大させるため靭性値が高い複合材料が得られるという技術が開示されている。
さらに特許文献3には、繊維プリフォームにSiC又はCコーティング層を直接形成することにより、SiC繊維又はC繊維とSiCマトリックスからなる複合体(以下、「SiC繊維又はC繊維/SiCマトリックス」と示す。)の界面に層間剥離のないSiC又はC繊維/SiC複合材料を得るために、反応器に収容されたSiC又はC繊維プリフォームの反応ガス供給側と排気側とを同じ一定圧力に維持し、メタン,エタン,プロパン等の炭化水素ガスを供給しながら、減圧高温下で炭化水素ガスを熱分解し、熱分解生成物であるCをSiC又はC繊維の周りに析出させるという技術が開示されている。
特開平8−143376号公報 特開2001−48665号公報 特開2002−211985公報
特許文献1に開示されている技術には、繊維単体に直接コーティングすることと、さらにコーティングを行うに際してスパッタ法を用いることが記載されているが、この場合マクロな破壊進展抵抗を有するのは繊維表面の1層のみしかないので、この点で十分な効果が得られているとは言い難い。
また、特許文献2に開示されている技術は、繊維表面にCVD法で膜を形成することとさらに複数の膜を形成することで多機能性を持たせるとあるが、この場合、繊維単体に対してすべり機能を有する層を形成するので、例えば繊維が多数集まってできている繊維集合体に対してこのような処理を行うと、繊維単体に均一かつ確実に膜を形成することが困難で、実用上も問題があると考えられる。
さらに、特許文献3に開示されている技術は、セラミックスの破壊エネルギーを向上させるため、炭素繊維で3次元的なプリフォームを形成した後にCVI法で、この破壊エネルギーを消費させるすべり機能を有するすべり層を形成し、これにより、直接炭素繊維に対してすべり層を形成したのち、形状を作製するよりも簡易に行え、すべり層と繊維表面の界面に繊維を成形する際に生じる剥離がなく、より生産性の向上やコスト低減の効果が見込めるとしている。しかし、この場合も、繊維表面に多くすべり効果を持たせるためには複数回のCVI法によるコーティングが必要となり、そのすべり層の層数を多くすることが難しいという問題があった。
なお、ここでいう破壊エネルギーというのは、破壊するまでに物体に加えることができるエネルギーのことで、セラミックスのような脆性材料はその値は低く、金属のような塑性を示す材料は高い。一般的には、日本セラミックス協会規格JCRS−201「シェブロンノッチ試験片の準静的3点曲げ破壊によるセラミック系複合材料の破壊エネルギー試験方法」で測定され、本発明もこれに準拠している。
そして、繊維単体の表面にコーティングしてすべり層を形成することで得られるすべり機能をさらに展開させ、より破壊エネルギーを向上させたいという要求に対しては、これらの技術に共通した課題として、実用上でも十分な対応ができているとはいえない。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、繊維のすべり機能をより簡便な手法で、かつ従来と比べてさらに破壊エネルギーが向上された強化用繊維材料と、強化用繊維材料を用いた繊維強化セラミックス複合材料、およびこれらの製造方法を提供するものである。
本発明に係る強化用繊維材料は、複数本のセラミックス、金属、もしくはセラミックスと金属の混合体からなる繊維集合体の繊維間が層状構造材料で満たされており、かつ、前記繊維集合体の表面全体もしくは表面の一部が、前記層状構造材料で覆われていることを特徴とする。このような構成をとることで、繊維間に充填された層状構造材料自体が高いすべり機能を有するので、結果としてすべり層の層数が多くなり、この強化用繊維材料を用いた複合材料は、破壊エネルギーを向上させることができる。
本発明に係る強化用繊維材料においては、強化用繊維材料の表面全体もしくは表面の一部に、さらに層状構造材料と層状構造と異なる組織構造の材料によって形成される界面が1面以上存在することが好ましい。このような構成をとることで、繊維集合体に形成された界面でも高いすべり機能を有するので、この強化用繊維材料を用いた複合材料の破壊エネルギーを一層向上させることが可能となる。
本発明に係る強化用繊維材料において、層状構造材料は、黒鉛質の炭素であることが好ましい。このような構成をとることで、容易かつ均質に層状構造を繊維間に形成することが可能となる。
また、本発明に係る強化用繊維材料において、層状構造と異なる組織構造の材料は、等方性の炭素であることが好ましい。このような構成をとることで、容易かつ均質に層状構造との間に界面を形成することが可能となる。
また、本発明に係る繊維強化セラミックス複合材料は、本発明に係る強化用繊維材料をセラミックスのマトリックス中に配したことを特徴とする。このような構成をとることでマクロな破壊進展抵抗の大きい、すなわち破壊エネルギーをより向上させた繊維強化セラミックス複合材料とすることができる。
また、本発明に係る強化用繊維材料の一態様にかかる製造方法は、繊維集合体と、樹脂と、前記樹脂を溶解する溶媒と、ピッチ又はメソフェーズの少なくともいずれか一つからなる炭素材と、をそれぞれ準備する工程と、前記樹脂と前記炭素材を前記炭素材の重量分率が50%以上になる比率で前記溶媒中に溶解して混合させることにより浸漬用材料を作製する工程と、前記繊維集合体に前記浸漬用材料を重量比で1:0.2から1:9の範囲で接触させ吸収させて前記繊維集合体の繊維間の空間部に前記浸漬用材料を充填させる工程と、前記繊維集合体の繊維間の空間部に充填された前記浸漬用材料を乾燥および層状構造化させるための加熱処理を行う工程と、からなることを特徴とする。このような構成をとることで、層状構造材料として炭素材料を用いた場合に、効果的に強化用繊維材料を製造することができる。
また、本発明に係る強化用繊維材料の一態様にかかる製造方法は、繊維間に層状構造材料が満たされた強化用繊維材料と、樹脂と、前記樹脂を溶解する溶媒と、ピッチ又はメソフェーズの少なくともいずれか一つからなる炭素材と、をそれぞれ準備する工程と、前記強化用繊維材料中の炭素繊維と前記樹脂および前記炭素材を合計した材料とが重量比で1:0.2から1:7の範囲になるように前記溶媒を用いて混合することにより前記強化用繊維材料表面へ層状構造の炭素の元になる膜を形成する第一の被膜形成工程と、前記樹脂と前記炭素材を前記炭素材の重量分率が40%以下になる比率で前記溶媒中に溶解して混合させることにより被膜用材料を作製する工程と、前記強化用繊維材料中の炭素繊維と前記被膜用材料とが重量比で1:0.2から1:7の範囲となるように前記溶媒を用いて混合することにより前記強化用繊維材料の表面に等方性の炭素の元になる膜を形成する第二の被膜形成工程と、引き続き前記強化用繊維材料を乾燥させる工程と、さらに前記第一の被膜を層状構造化させ前記第二の被膜を等方性化させる加熱処理を行う工程と、を行うことが好ましい。このような構成をとることで、炭素材料を用いて効果的に強化用繊維材料を製造する場合に、より破壊エネルギーを向上させることができる。
また、本発明に係る強化用繊維材料の一態様にかかる製造方法においては、樹脂は、フェノール、シリコーン、フッ素、エポキシ、フラン、フルフリル、メラミン、尿素、ポリエステル、ポリイミドのうち1ないし2以上の混合物からなることが好ましい。このような構成をとることで、容易に強化用繊維材料を製造することができる。
さらに、本発明に係る強化用繊維材料の一態様にかかる製造方法においては、溶媒は、水、有機溶剤、またはこれらの混合物からなることが好ましい。このような構成をとることで、容易に強化用繊維材料を製造することができる。
さらに、本発明に係る繊維強化セラミックス複合材料の一態様にかかる製造方法においては、これらの強化用繊維材料を用いて、強化用繊維材料中の炭素繊維の体積含有率が10%以上50%以下になるようにセラミックス材料中へ混合し、その後、成型、乾燥、焼成することを特徴とする。このような構成をとることで、破壊エネルギーをより向上させた繊維強化セラミックス複合材料を製造することができる。
本発明に係る強化用繊維材料とこれを用いた繊維強化セラミックス複合材料は、強化材料として含有されている繊維集合体に対して、よりすべり機能の優れた構成を具備すること、そしてこの強化された繊維集合体を用いることで、繊維強化セラミックス複合材料全体のより一層の破壊エネルギーを向上させることができる。
本発明の実施形態に係る、強化用繊維材料とこの強化用繊維材料を含んだ繊維強化セラミックス複合材料の概念を示す断面図。 本発明の実施形態に係る、繊維と繊維間に充填された層状構造の一形態を示す電子顕微鏡写真(a)と、本発明の実施形態に係る繊維間に充填された層状構造を拡大した形態を示す電子顕微鏡写真(b)である。 本発明の実施形態に係る、強化用繊維材料とこの強化用繊維材料を用いた繊維強化セラミックス複合材料の製造工程フローの一例を示す図。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る繊維強化セラミックス複合材料の概念を示す断面図である。
本発明に係る強化用繊維材料は、複数本のセラミックス、金属、もしくはセラミックスと金属の混合体からなる繊維集合体の繊維間が層状構造材料で満たされており、かつ、繊維集合体の表面全体もしくは表面の一部が、層状構造材料で覆われていることを特徴とする。
繊維の材質は、任意のセラミックスまたは金属材料から選択される。好適には、炭素、炭化ケイ素、ホウ素、タングステンがあり、炭素がより好ましい。炭素繊維は、製造が容易、強度などの諸特性が優れているからである。
なお、その他の繊維の材質としては、炭素繊維などセラミックス繊維を生成できる有機物繊維、例えばセルロース繊維、アクリル繊維、ピッチ繊維なども適用出来る。この場合、強化用繊維を形成した後、加熱処理によってセラミックス繊維となれば、繊維強化複合セラミックス材料として問題なく使えるからである。
本発明において、繊維集合体とは繊維が複数本集合し、かつ繊維同士によって空間が形成された状態であるものを指す。ただし、繊維集合体の形状は特に限定されるものではなく、例えばフェルト状、不織布状でも良いが、好ましい例として、2mmから50mmの長さ、3μmから500μmの径の繊維が数本から数千本束ねられ、全体として針状,棒状,小片状,板状,塊状の形態を成している、いわゆる短繊維束が挙げられる。また、長繊維束と称される長手方向に一体化され連続した構造の繊維束も、この繊維を断面方向から見た場合は短繊維束と同じ形態を有しており、本発明における繊維集合体として用いることができる。
そして、繊維同士によって形成される空間部には、層状構造材料が充填されている。ここで層状構造とは、結晶構造として例えば黒鉛のようにある結晶軸がファンデルワールス力で弱く結合した層状のもの、および層状の結晶構造を持つ組織が重量分率で材料全体に対して50%以上含まれており、かつ、これらの組織が小薄片、膜、層に堆積して、マクロの形態として流れ形状を成しているものとする。
図2(a)は、本発明の一実施形態における炭素繊維と炭素繊維間に充填された炭素材料による層状構造の形態を、図2(b)にその層状構造の拡大図を示す。ここでは、層状構造はうろこ状の小片がほぼ一定方向に配向して、マクロの形態として流れ形状を成している状態が観察できる。
層状構造において、層間は堆積方向に対して相対的に弱い結合力または非結合の構造をもち、亀裂が進展してくると容易に堆積方向と垂直な平面方向に多数の亀裂の進展を促しエネルギーを消費させるという、いわゆるすべり機能を有する。本発明においては、強化用繊維材料を形成する繊維集合体の内部の繊維同士間において、このすべり機能を多数もたせることにより、強化用繊維材料自体が効率よくエネルギーを消費することを可能とする。
本発明に係る強化用繊維材料は、繊維集合体の表面全体もしくは表面の一部が、層状構造材料で覆われている。ここで、強化用繊維材料の表面とは、層状構造材料によって繊維間の空間が充填された繊維集合体をひとつの塊とみなし、繊維集合体の表面の一部または全体が層状構造材料の露出により被覆された面を指すものとする。
本発明では、繊維集合体の繊維間だけでなく、繊維集合体表面に露出した最外部の繊維にも層状構造のすべり機能を有すれば好ましいが、繊維集合体の表面全体が層状構造材料で覆われていなくてもよく、繊維集合体の表面の一部に存在してもよい。そしてその表面を被覆する割合も特別限定されるものではなく、繊維集合体の表面の10%以上がより好ましい。
次に、本発明に係る強化用繊維材料では、強化用繊維材料の表面全体もしくは表面の一部に、さらに層状構造材料と層状構造と異なる組織構造の材料によって形成される界面が1面以上存在することが好ましい。
層状構造の材料は、すべり面を多く有しておりエネルギーの消費効果が高い反面、層間の結合力は弱いので層状構造の材料自身は剥離しやすくもろい。よって、層状構造の材料の表面に対して相対的に機械的強度が優れた膜、ここでは等方性材料で耐衝撃性を保持することで、双方の長所を併せ持つ繊維集合体とすることが可能となる。なお、等方性材料であれば、形状は、緻密体、多孔質体、層状構造、網目構造、モザイク状組織構造でもよい。
界面を構成する材料は、繊維、層状構造材料の材質の組み合わせに応じて、製造条件や特性も考慮して適時選択される。材料の組み合わせの例としては、繊維が炭素材料の場合、層状構造材料には非酸化性物質、例えば炭素材料または窒化ホウ素、TiSiCが適用でき、層状構造材料と異なる組織構造の材料には、非酸化性物質、例えば炭素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化アルミニウム、ZrBが適用できる。なお、単一の材料でなく2種類以上の材料から構成されていてもよい。
なお、繊維が耐酸化性を有する炭化珪素繊維や酸化アルミニウムの場合は、層状構造材料と異なる組織構造の材料に酸化性物質も使用でき、一例として、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、HfOが挙げられる。
また、繊維集合体内の繊維間に形成された空間を充填しかつ繊維集合体表面全体もしくは表面の一部を被覆する層状構造材料上に、直接層状構造材料と異なる組織構造の材料の膜を形成してもよく、新たに層状構造の膜を形成しその上に層状構造材料と異なる組織構造の材料で構成されている膜を形成してもよい。
界面は、1面以上40面以下がより好ましく、2面以上20面以下がさらに好ましい。これは、界面が多くなることで、すべり機能をさらにもたせることができるが、40面を越えるとすべり効果がほとんど変わらない一方で、界面を形成する膜自体の体積が大きくなり、セラミックス材料のもつ全体の機械的強度が低下してしまい、好ましくないからである。
なお、層状構造の膜と、等方性構造の膜を複数回交互に形成して、繊維集合体の最外の被膜層が等方性の組織構造を取る構成は、耐衝撃性を高めるうえでさらに好ましい形態といえる。
しかしながら、本発明に係る界面を有する膜で繊維集合体の表面が完全に被覆されていることは、必ずしも要求されるものでなく、例えば繊維集合体の表面のごく一部が露出している、あるいは被覆の膜厚が部分的に不均一であってもよい。
界面を構成する層状構造の膜厚は0.5μm以上1000μm以下、および等方性構造の膜厚は0.5μm以上1000μm以下であることがより好ましい。これらの範囲を下限で下回ると、被膜のもつすべり機能、耐衝撃性保持効果が十分に得られず、上限を超えると被膜自体の容積が過大になることで、被膜自身の剥離,破損のおそれがあり、これが繊維強化セラミックス複合材料全体の強度に影響を及ぼすことが懸念され好ましくない。
本発明に係る強化用繊維材料において、層状構造材料は黒鉛質の炭素であることが好ましい。層状構造材料としては、層状の構造が形成される各種材料が適用できるが、好適には炭素や窒化ホウ素が挙げられ、特に繊維が炭素の場合は、充填性、繊維間への浸透性、製法の容易さを考慮すると、黒鉛質の炭素がより好適に用いられる。
また、本発明に係る強化用繊維材料の一態様における、強化用繊維材料の表面全体もしくは表面の一部に、さらに層状構造材料と層状構造と異なる組織構造の材料から構成される界面が1面以上存在する場合の層状構造と異なる組織構造の材料は、炭素からなる等方性材料であることが好ましい。炭素の持つ層状構造と等方性構造を、同一の工程で製造条件のみを変更することで、より簡易かつ精密に制御して製造できるためである。
また、本発明に係る繊維強化セラミックス複合材料は、本発明に係る強化用繊維材料をセラミックスのマトリックス中に配したことを特徴とする。セラミックスのマトリックスには、広く既存のセラミックス材料を用いることができ、炭素質の層状構造を充填する場合、好適には、非酸化性物質、例えば、炭素、珪素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ZrBが挙げられ、また、これらを2つ以上組み合わせた構造でもよい。
強化用繊維材料として用いられる繊維集合体の内部空間を、層状構造材料で充填することで、繊維集合体自体の内部に多数のすべり層を含有し、結果として高いすべり機能をもち、さらに繊維集合体の表面にすべり効果をもつ層状構造と、層状構造の脆弱性を補う組織構造の異なる材料、例えば等方性構造材料との組み合わせの層を有することで、これらの構成をもたない従来技術と比べて、より効果的に破壊エネルギーを向上させることが可能となる。
本発明に係る強化用繊維材料の一態様にかかる製造方法は、繊維集合体と、樹脂と、樹脂を溶解する溶媒と、ピッチ又はメソフェーズの少なくともいずれか一つからなる炭素材と、をそれぞれ準備する工程と、炭素材の重量分率が全体の50%以上になる比率で樹脂と炭素材とを溶媒中に溶解、混合して浸漬用材料を作製する工程と、繊維集合体中の炭素繊維とに浸漬用材料を重量比で1:0.2から1:9の範囲で接触させ吸収させた後乾燥して繊維集合体の空間部に黒鉛質の層状炭素原料を充填させる工程と、黒鉛質の層状炭素原料を充填させた繊維集合体に対して乾燥処理を含む熱処理を行う工程と、からなることを特徴とする。
繊維集合体を構成する繊維は、炭素繊維が好ましい。この場合、炭素の品質、純度は通常のセラミックス材料に用いられるものでよく、特に限定されない。また、設計する繊維強化セラミックス複合材料に応じて、繊維の長さと径は適時選択できるが、径については0.5μm以上50μm以下が好ましい。0.5μm未満では、繊維間の空間が狭くなりすぎて、層状構造の炭素材料が形成されにくくなり、50μmを超えると、繊維間の空間が相対的に広くなるので、単位断面積当たりの炭素繊維と層状構造の炭素材料の面積比において層状構造の炭素材料の割合が増加し、繊維集合体自体のすべり機能が低減してしまい、こちらも好ましくない。
樹脂は、層状構造の材料となる炭素の供給源として、また加熱分解にて炭素を生成させる目的で用いられる。樹脂の種類は、熱硬化性または熱可塑性であることが好ましく、例えば、フェノール、シリコーン、フッ素、エポキシ、フラン、フルフリル、メラミン、尿素、ポリエステル、ポリイミドのうちから1ないし複数の混合体として選択でき、より好適には、フェノールレジンが用いられる。
フェノールレジンは、固体と液体の両方の状態で存在して、水または有機溶剤中に溶解していることがより好ましい。フェノールレジンは、黒鉛質の層状構造の炭素材料及び等方性の炭素材料を形成する供給源となるので、固体のフェノールレジンを使用する場合、完全に融解した状態ではなく、固体のフェノールレジンが残存した状態がより高い炭化収率を得ることができるので好ましい。しかしながら、固形分が多すぎると、繊維間、繊維束間の狭い空間への浸透の妨げになるので、設計する繊維強化セラミックス複合材料に応じて適時変更してよい。好適には、固形分は5%以下の範囲で用いられるが、5%を上回る場合、固形分が溶液中に多くなり、繊維束内部への樹脂の浸透性が低下するので好ましくない。
ピッチ又はメソフェーズの少なくともいずれか一つからなる炭素材は、樹脂との重量比を適正化することで、炭素の層状または等方性の構造を決定できる。すなわち、加熱処理を行った場合に昜黒鉛性を示す材料であるピッチ又はメソフェーズと、難黒鉛性を示すフェノールなどの樹脂を混合することによる組織制御である。なお、炭素材として用いるピッチとメソフェーズは、それぞれ単体でもよいし、両方を混合してもよい。
溶媒には、水または有機溶媒が用いられるが、樹脂を溶解できればこれらに限定されるものではなく、さらにはこれら複数の液体を混合して用いても良い。好適には、有機溶媒エタノール、2−ブタノール、アセトンを用いることができ、より好適には、エタノールが用いられる。
次に、浸漬用材料を作製するにあたり、炭素材の重量分率が50%以上になるように樹脂溶液を混合して浸漬用材料を作製する。ここで、浸漬用材料とは、繊維間および繊維集合体の表面に層状構造材料を形成するための役割をするもので、液体状で層状構造を形成するのに適切な炭素材料を含有しているものである。
炭素材の重量分率は、重量分率が50%を下回ると、浸漬用材料による層状構造形成がされにくい。また、炭素材が50%以下、とくに40%以下では炭素は等方的な構造を示す。なお、樹脂が0の場合、すなわち炭素材のみでも、層状構造を形成させることは可能であるが、粉状である炭素材を液体状の樹脂に溶かした状態のほうが、より繊維間に浸漬しやすいので好ましい。
繊維集合体中の炭素繊維と浸漬用材料は、重量比で1:0.5から1:9の範囲で混合することが好ましい。この範囲を外れると、破壊エネルギー向上の効果が顕著には得られなくなり好ましくない。
次に、繊維集合体と浸漬用材料を均一になるよう混合する工程を実施するが、混合方法と混合時間については、既存の製造方法を適切に適用する範囲で任意に決めてよい。なお混合時に溶媒の揮発を目的に、乾燥工程、加熱工程、またはその両方を含めてもよい。
混合後は、すぐに乾燥を実施してもよく、適切な時間放置してから乾燥してもよい。放置する時間は、連続して繊維集合体の空間部に黒鉛質の層状炭素原料が十分浸透して、層状構造の充填が完了するまで行うが、例えば1時間以上、あるいは溶媒が完全に気化してなくなるまで実施してよい。ただし1分未満では、浸漬用材料の繊維間への浸透が十分でなく好ましくない。また、溶媒が完全に気化してなくなった以降も放置することは、工程上作業ロスとなるので、これも好ましくない。なお、溶媒が完全に気化してなくなるまでというのは、厳密な判断を必要とせず、作業者の目視による浸漬用材料の乾燥状態で判断してもよい。
また繊維集合体と浸漬用材料の混合は、一回だけ浸漬用材料と混合してもよいし、一度浸漬用材料と混合後繊維集合体を取り出して、再度浸漬用材料と混合する作業を繰り返してもよい。その際の工程移行の間は、そのまま放置してもよく、その放置時間も特に限定されない。
乾燥は、大気中に40℃から200℃の範囲で数時間保持することでなされるが、不活性雰囲気で実施してもよい。また、加熱処理については、保持温度は600℃から3000℃、好適には1000℃から2000℃の範囲にて、保持時間は5分から3時間、好適には1時間から2時間の範囲で、不活性雰囲気下でなされることが好ましい。この加熱処理で樹脂とピッチまたはメソフェーズが炭化され、黒鉛質の層状炭素が生成して、繊維間の空間に充填される。また、炭化のための加熱処理は、マトリックスとなるセラミック材料と成形した後行ってもよい。
加熱処理の温度は、600℃未満では炭化が不十分であり好ましくないが、3000℃を超える温度ではほぼ炭素の黒鉛化が収束するため、加熱処理としての作用がなく、これも好ましくない。また、加熱処理の保持時間は、5分未満では温度の安定化が不十分のため好ましくないが、3時間を越えて保持しても、こちらもほぼ炭素の黒鉛化が収束するため好ましくない。
このような工程を経て作製された黒鉛質の炭素の構造を図2(a)に示す。これは繊維集合体の断面方向から電子顕微鏡にて観察したものである。ここでは、繊維間の層状構造材料がうろこ状の黒鉛質の炭素で充填された状態となっていることがわかる。
また、本発明に係る強化用繊維材料の一態様にかかる製造方法は、繊維間に層状構造材料を充填した強化用繊維材料と、樹脂と、前記樹脂を溶解する溶媒と、ピッチ又はメソフェーズの少なくともいずれか一つからなる炭素材と、をそれぞれ準備する工程と、前記強化用繊維材料中の炭素繊維と前記樹脂および前記炭素材を合計した材料とが重量比で1:0.2から1:7の範囲になるように前記溶媒を用いて混合することにより前記強化用繊維材料表面へ層状構造の炭素の元になる膜を形成する第一の被膜形成工程と、前記樹脂と前記炭素材を前記炭素材の重量分率が40%以下になる比率で前記溶媒中に溶解して混合させることにより被膜用材料を作製する工程と、前記強化用繊維材料中の炭素繊維と前記被膜用材料とが重量比で1:0.2から1:7の範囲となるように前記溶媒を用いて混合することにより前記強化用繊維材料の表面に等方性の炭素の元になる膜を形成する第二の被膜形成工程と、引き続き前記強化用繊維材料を乾燥させる工程と、さらに前記第一の被膜を層状構造化させ前記第二の被膜を等方性化させる加熱処理を行う工程と、からなる。図3にその製造フローの一例を示す。
黒鉛質の層状炭素原料を充填させた繊維集合体表面へ、黒鉛質の層状炭素被膜の元となる第一の被膜形成工程では、黒鉛質の層状炭素原料を充填させた繊維集合体中の炭素繊維と樹脂および炭素材を合計した材料を、1:0.2から1:7の範囲の重量比となるように混ぜ合わせることが好ましい。
この重量比において、溶剤および炭素材を合計した材料の比が0.2を下回ると、繊維集合体の表面に膜の形成がほとんど行われず、また7を上回ると膜ではなく塊状になって繊維集合体表面に付着する現象が発生するため、いずれも好ましくない。1:1から1:5の範囲がより好適である。
第一の被膜の表面上に等方性構造の炭素被膜を形成する元となる被膜用材料を作製する工程では、樹脂と炭素材が、炭素材40%以下の範囲、より好ましくは20%以上40%以下の範囲の重量比で混合される。重量比で40%以下の範囲を外れると、耐衝撃性の高い等方性構造になりにくいので好ましくない。なお、繊維集合体中の繊維と、樹脂および炭素材を合計した材料の比は、黒鉛質の被膜を形成する場合と同様である。
等方性の炭素の元になる膜を形成する第二の被膜形成工程では、強化用繊維材料中の炭素繊維と前記被膜用材料とが重量比で1:0.2から1:7の範囲となるように前記溶媒を用いて混合することが好ましい。この重量比において、被膜用材料の比が0.2を下回ると、繊維集合体の第一の皮膜表面上に膜の形成がほとんど行われず、また7を上回ると膜ではなく塊状になって繊維集合体表面に付着する現象が発生するため、いずれも好ましくない。1:1から1:5の範囲がより好適である。
そして、このようにして製造した第一の被膜と第二の被膜を形成した繊維集合体を任意のマトリックス材と混合したのち、成型、加熱することで、層状または等方性の組織構造を生成させる。この繊維集合体を作製した後の、繊維強化セラミックス複合材料を作製する工程は、公知の技術を適用できるが、好適には、マトリックスとして炭化ケイ素、より好適には炭化ケイ素にシリコンを含浸したものを用いることが出来る。
なお、マトリックスとして炭化ケイ素粒子の間に残存する空間をシリコンで含浸する炭化ケイ素−ケイ素マトリックスを適用すると、繊維集合体を被覆している黒鉛質の層状構造炭素が、含浸シリコンによる炭素繊維のケイ化を阻害することで、炭素繊維のケイ化による繊維の強度劣化を抑えることができるので、より好適である。
本発明に係る繊維強化セラミックス複合材料の一態様にかかる製造方法においては、本発明に係る強化用繊維材料を、繊維強化セラミックス複合材料中に炭素繊維の体積含有率が10%以上50%以下になるように混合し、その後成型、乾燥、焼成することを特徴とする。
このときの強化用繊維材料中の炭素繊維の含有率は、10%未満では繊維集合体での亀裂進展が起こる確率が低くなってしまい、また50%を超えるとセラミックスのマトリックスがもつ耐熱性、耐酸化性、強度などの優れた特性を損なう恐れがあり、いずれも好ましくない。より好ましくは、セラミックス複合材中の繊維の体積含有率が25%以上45%以下である。
本発明に係る強化用繊維材料の、好ましい製造方法の一態様においては、CVD法やスパッタ法のような、繊維1本単位の成膜を目指し、すべり面の少ない、製造コストも高くつく方法に比べて、液体材料の浸漬と混合による繊維集合体全体に層状構造の材料を含有するように材料の比率の最適化などを行うことによって、繊維表面と繊維間にすべり効果を付与し、破壊エネルギーの高い繊維強化セラミックス複合材料を、比較的簡単な装置で容易にかつ効率よく提供することが可能となる。
また、既存の繊維強化セラミックス複合材料に対しても、本発明の一態様に係る強化用繊維材料を適用することで、マトリックス材の種類にかかわらず、本発明を適用しなかった場合に比べて、簡易に破壊エネルギーを向上させることが可能となる。
以下、本発明の好ましい実施形態を実施例に基づき説明するが、本発明はこの実施例により限定されるものではない。
(実験1)から(実験4)に示す内容で、カーボンファイバーと炭化ケイ素マトリックスからなる複合材(以下、CF/SiCコンポジット)を作製し、破壊エネルギーを測定した。得られたCF/SiCコンポジットから3×4×40(mm)の試験片を切り出し、これを評価サンプルとして、日本セラミックス協会規格JCRS−201「シェブロンノッチ試験片の準静的3点曲げ破壊によるセラミック系複合材料の破壊エネルギー試験方法」に準拠した破壊エネルギーの測定を行った。
繊維集合体に用いる繊維は、平均長6mm、平均径10μmの炭素繊維Aと、平均長6mm、平均径10.5μmの炭素繊維Bと、平均長6mm、平均径11μmの炭素繊維Cを準備した。そして、樹脂としてDIC製フェノールレジン、炭素材料としてJFE製のピッチとJFE製メソフェーズカーボンを等量混合した混合粉末を用意した。溶媒には、純度99.95%のエタノールを用いて、濃度50%のフェノールレジン溶液を作製した。なお、炭素繊維A、B、Cについては、その物性の違いを表1に示す。
(実験1)
これらの炭素繊維A、B、Cとフェノール溶液と混合粉末を、表2、表3に記載の通りに配合し、混練機にて混合して混合体を得た。なお、各材料の重量は、φ50×40(mm)の円盤材の大きさのCF/SiCコンポジットになるように適時調整した。
この混合体を、乾燥オーブンにて50℃×300分乾燥させ、続いて熱処理炉にてAr雰囲気中1000℃まで昇温し2時間保持する加熱処理を施した。前記処理を行った炭素繊維を、HSスタルク製SiC粉末と混合し、φ50×40(mm)の円盤材の形状に加圧成形した。その後、Ar雰囲気下2000℃で2時間焼成してCF/SiCコンポジットを形成し、さらにこのCF/SiCコンポジットに対して、真空雰囲気下1450℃で2時間保持して、シリコン含浸処理を行ったCF/SiCコンポジット円盤材を得た。
破壊エネルギーの評価内容を、表4に示す。なお、特徴的な特性劣化の傾向として破壊エネルギー上昇抑制が見られた評価サンプルについては、表に*印を付した。
(実験2)
炭素繊維Cを用いて炭素繊維10gと、フェノール樹脂2.5g、純度99.95%のエタノール2.5g、混合粉末47.5gを混合し、50℃乾燥の条件で作製した混合体に表5、表6の内容に従って被膜を形成した繊維集合体を用いて、(実験1)と同様の方法でCF/SiCコンポジットを作製した。
破壊エネルギーの評価は、表7に示す内容で実施した。なお、特徴的な特性劣化の傾向として、破壊エネルギー上昇抑制が見られた評価サンプルについては、(実験1)に準ずるものとする。
(実験3)
炭素繊維Cを用いて炭素繊維10gと、フェノール樹脂2.5g、純度99.95%のエタノール2.5g、混合粉末47.5gを混合し、50℃乾燥の条件で作製した繊維集合体を用いて、表8に示す配合により、Ar雰囲気中1000℃加熱処理を挟み、層状構造の被膜と等方性構造の被膜を交互に20回被膜した繊維集合体を用いて、(実験1)と同様の方法で、CF/SiCコンポジットを作製し、破壊エネルギーを測定した。
(実験4)
炭素繊維Cを用いて炭素繊維10gと、フェノール樹脂2.5g、純度99.95%のエタノール2.5g、混合粉末47.5gを混合し、50℃乾燥の条件で作製した繊維集合体をもとにして、表9に示す条件で、SiCまたはBCのフィラーを一部混合した条件で作製した新しい繊維集合体を作製し、(実験1)と同様の方法で、CF/SiCコンポジットを作製し、破壊エネルギーを測定した。
(比較例1)
コバレントマテリアル(株)製の炭化ケイ素セラミックスを用いて、(実験1)と同型の円盤材を用意した。
(比較例2)
東レ(株)製の炭素繊維と前記炭化ケイ素粉末を混合して、(実験1)と同様の製造方法で同型の円盤材を作製した。
(比較例3)
比較例2の円盤材に対して、さらに真空雰囲気下1450℃でシリコンを含浸させた。
以上のとおり作製した評価サンプルに対して、それぞれ破壊エネルギーを計測した。そして、(実験1)の製造条件と測定結果の一覧表を表2と表3、その判定基準を表4、(実験2)の製造条件と測定結果の一覧表を表5と表6、その判定基準を表4、(実験3)の製造条件と測定結果の一覧表を表8、および(実験4)の製造条件と測定結果の一覧表を表9に、それぞれ示す。
判定基準は、表4においては、本発明の効果が見られたものを◎または○と記し、これより劣るものを△、または×と記した。表7では、本発明の効果が見られたものを○または△とし、これより劣るものを×とした。さらに、若干の破壊エネルギー劣化傾向がみられたものについては、*を付した。
表2、表3の結果では、本発明の一態様に係る実施範囲と実施範囲外の試験条件を比較すると、破壊エネルギーが3倍程度向上しており、本発明の効果が確認された。なお、炭素繊維の物性により破壊エネルギーの値に違いが生じており、本発明では、炭素繊維自体の特性も、繊維強化セラミックス複合材料全体の特性に反映される可能性が伺える。
表5、表6の結果では、使用した炭素繊維集合体の破壊エネルギー値が2180(J/m)であったのに対して、本発明の別の一態様に係る実施範囲に係るものは、70(J/m)以上の破壊エネルギー上昇がみられた。一方、本発明の実施範囲外では破壊エネルギー60(J/m)程度の上昇にとどまるか、同等以下であり、かつ、添加量増大による破壊エネルギーの上昇抑制が確認されており、特性としては劣化傾向が見られた。
表8では、使用した炭素繊維集合体の破壊エネルギー値が2180(J/m)であり、表3で示した本発明の実施範囲の中で、破壊エネルギー値の最高値が2430(J/m)であったのに対して、本発明のさらに別の一態様に係る実施範囲に係るものは、これを大きく上回る2950(J/m)という値を示した。
表9の結果から、浸漬用材料にその他材料としてSiCまたはBCフィラーを追加することで、破壊エネルギーをさらに向上させることができた。炭素材料と炭素材料以外とを適切に選択することで、破壊エネルギーのさらなる向上も見込める。
なお、(比較例1)の破壊エネルギーは5(J/m)、(比較例2)の破壊エネルギーは17(J/m)、(比較例3)の破壊エネルギーは15(J/m)であった。
以上の結果から、本発明の一態様に係る実施例において、破壊エネルギーの向上が確認された。
本発明は、金属に比べて軽いため、例えば自動車や鉄道車両のディスクブレーキのディスク材などの摺動磨耗材、また回転体の軸受けも半導体製造装置、研磨機などの制動装置の台座や移動体のボディーの構造材、航空宇宙用途のロケットノズル、シールドなど衝撃からの保護材、等の用途に対する繊維強化セラミックス複合材料として特に好適である。
1…繊維強化セラミックス複合材料、11…マトリックス、21…繊維、22…繊維集合体
23…繊維間空間部、24…繊維集合体表面、25…層状構造材料、26…層状材料と異なる組織構造材料(等方性構造材料)、27…層状構造材料と層状材料と異なる組織構造材料(等方性構造材料により形成される界面、28…層状構造材料と層状材料と異なる組織構造材料(等方性構造材料により形成される界面を有する繊維集合体

Claims (10)

  1. 複数本のセラミックス、金属、もしくは、セラミックスと金属の混合体からなる繊維集合体の繊維間が層状構造材料で満たされており、かつ、前記繊維集合体の表面全体もしくは表面の一部が、前記層状構造材料で覆われている強化用繊維材料であって、前記強化用繊維材料の表面全体もしくは表面の一部に、さらに層状構造材料と層状構造と異なる組織構造の材料によって形成される界面が1面以上存在することを特徴とする強化用繊維材料。
  2. 層状構造材料は、黒鉛質の炭素であることを特徴とする請求項記載の強化用繊維材料。
  3. 層状構造と異なる組織構造の材料は、等方性の炭素であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の強化用繊維材料。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の強化用繊維材料を、セラミックスのマトリックス中に配したことを特徴とする繊維強化セラミックス複合材料。
  5. 繊維集合体と、樹脂と、前記樹脂を溶解する溶媒と、ピッチ又はメソフェーズの少なくともいずれか一つからなる炭素材と、をそれぞれ準備する工程と、前記樹脂と前記炭素材を前記炭素材の重量分率が50%以上になる比率で前記溶媒中に溶解して混合させることにより浸漬用材料を作製する工程と、前記繊維集合体に前記浸漬用材料を重量比で1:0.2から1:9の範囲で接触させ吸収させて前記繊維集合体の繊維間の空間部に前記浸漬用材料を充填させる工程と、前記繊維集合体の繊維間の空間部に充填された前記浸漬用材料を乾燥および層状構造化させるための加熱処理を行う工程と、からなることを特徴とする強化用繊維材料の製造方法。
  6. 請求項5に記載の製造方法により得られた強化用繊維材料と、樹脂と、前記樹脂を溶解する溶媒と、ピッチ又はメソフェーズの少なくともいずれか一つからなる炭素材と、をそれぞれ準備する工程と、前記強化用繊維材料中の炭素繊維と前記樹脂および前記炭素材を合計した材料とが重量比で1:0.2から1:7の範囲になるように前記溶媒を用いて混合することにより前記強化用繊維材料表面へ層状構造の炭素の元になる膜を形成する第一の被膜形成工程と、前記樹脂と前記炭素材を前記炭素材の重量分率が40%以下になる比率で前記溶媒中に溶解して混合させることにより被膜用材料を作製する工程と、前記強化用繊維材料中の炭素繊維と前記被膜用材料とが重量比で1:0.2から1:7の範囲となるように前記溶媒を用いて混合することにより前記強化用繊維材料の表面に等方性の炭素の元になる膜を形成する第二の被膜形成工程と、引き続き前記強化用繊維材料を乾燥させる工程と、さらに前記第一の被膜を層状構造化させ前記第二の被膜を等方性化させる加熱処理を行う工程と、からなることを特徴とする強化用繊維材料の製造方法。
  7. 前記第一の被膜形成工程と前記第二の被膜形成工程とをこの順で2回以上40回以下繰り返し、その後、前記強化用繊維材料を乾燥させる工程と、前記第一の被膜を層状構造化させ前記第二の被膜を等方性化させる加熱処理を行う工程と、を行うことを特徴とする請求項に記載の強化用繊維材料の製造方法。
  8. 樹脂は、フェノール、シリコーン、フッ素、エポキシ、フラン、フルフリル、メラミン、尿素、ポリエステル、ポリイミドのうち1ないし2以上の混合物からなることを特徴とする請求項からのいずれかに記載の強化用繊維材料の製造方法。
  9. 溶媒は、水、有機溶剤、またはこれらの混合物からなることを特徴とする請求項から8のいずれかに記載の強化用繊維材料の製造方法。
  10. 請求項からのいずれかに記載の製造方法により得られた強化用繊維材料を、前記強化用繊維材料中の炭素繊維の体積含有率が10%以上50%以下になるようにセラミックス材料中へ混合し、その後、成型、乾燥、焼成することを特徴とする繊維強化セラミックス複合材料の製造方法。
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