JP2015174814A - 被膜密着性を強化した酸化物被覆炭素材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】超鋼等の製造に用いられる粉末冶金焼結工程における熱処理装置の棚板、及びその他半導体製造装置部材などで使用される、表面を酸化物で被覆された炭素材料において、剥離しにくく、被膜密着性を強化した酸化物被覆炭素材料を提供する。
【解決手段】炭素材料の表層に熱硬化性樹脂の溶液を浸潤し、前記炭素材料を加熱して熱硬化性樹脂を硬化させる。更に、前記炭素材料に高温熱処理を施すことにより、前記熱硬化性樹脂の含浸層はガラス状カーボン含浸層となり、ガラス状カーボン含浸層の上に酸化物を溶射して酸化物膜が形成される。炭素材料の表面強度がガラス状カーボンの含浸層により強化され、炭素材料の表層粒子や遊離凝集体の脱離を抑制し、酸化物膜の剥離が起こり難い。
【選択図】 なし

Description

本発明は、超鋼等の製造に用いられる粉末冶金焼結工程における熱処理装置の棚板、及び半導体製造装置部材などで使用される、表面を酸化物で被覆された炭素材料において、剥離しにくく、被膜密着性を強化した酸化物被覆炭素材料に関する。
超鋼等の製造に用いられる粉末冶金焼結工程における熱処理装置の棚板、及びその他半導体製造装置部材などで使用される炭素材料は、被処理物との反応や装置内の汚染を防止するため、炭素材料の表面には被処理物の特性や処理方法に応じて酸化物膜が被覆されている。前記酸化物膜を被覆する手段として、主に溶射法が用いられている。
しかしながら、溶射法では、炭素材料の表面に単に酸化物を被覆すると、被処理物やその他の部材との接触等の外力、並びに被覆物と炭素材料との熱膨張率の違いによる熱応力により、使用中に酸化物膜に割れが生じたり、炭素材料から酸化物膜が剥離してしまうことがある。
そこで、炭素材料の表面をブラスト処理等することにより一定の表面粗さとする前処理を行った後に前記溶射法により被覆することで、アンカー効果によって酸化物膜の剥離を抑制する方法が行われている。
しかしながら、アンカー効果向上のため炭素材料の表面粗さを粗くするほど、炭素材料表面の炭素粒子あるいは炭素凝集体が脱離しやすく、また熱処理工程等で加熱と冷却が繰り返される環境下では、外力や熱応力により炭素材料から酸化物膜が剥離することがあった。
したがって、酸化物膜を被覆した炭素材料の耐久性をさらに向上させるには、炭素材料と酸化物膜に生じる熱応力を抑制することやアンカー効果の更なる向上などにより、炭素材料から酸化物膜が剥離することを抑える必要がある。
そこで、たとえば溶射により炭素材料の表面に炭素材料に対して濡れ性の良いホウ素含有層を形成し、最表面に酸化物の層を形成する、積層体を被覆して炭素材料との接着強度を高めた耐酸化性炭素材料が提案されている。(特許文献1)
しかしながら、このホウ素含有層は被覆層であり、最外層の酸化物及び炭素材料とはアンカー効果のみで接合しているため、炭素材料表面の炭素粒子あるいは炭素凝集体が脱離しやすい状態は変わらず、炭素材料が黒鉛やC/Cコンポジットのように、ホウ素含有層と硬度に差異がある場合は、応力による剥離を助長する特性がある。
また、ホウ素含有層の厚さは10μm〜500μmであり、塗布や溶射で形成されるため、ホウ素含有層の表面は炭素材料の粗面化した表面より滑らかになる。これにより最外層の酸化物の層とホウ素含有層の界面ではアンカー効果が起きにくく剥離しやすい。したがって、酸化物と基材である炭素材料の密着性を十分に向上させるには至っていない。
特開2002−87895号公報
そこで、本発明は、炭素材料の表面強度がガラス状カーボンの含浸層により強化され、炭素材料の表面粒子や凝集体の脱離を伴なった酸化物膜の剥離を抑え、被膜密着性を強化した酸化物被覆炭素材料を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、
1. 炭素材料の表面に酸化物膜からなる被覆層を有する酸化物被覆炭素材料において、前記炭素材料の表面にガラス状カーボン含浸層を有することを特徴とする酸化物被覆炭素材料。
2. 前記酸化物膜が、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、マグネシウム、イットリウム、チタン及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物である、1記載の酸化物被覆炭素材料。
3. 前記ガラス状カーボンが、フェノール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂およびフラン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を炭化焼成したものである、1または2記載の酸化物被覆炭素材料。
4. 炭素材料の表面に酸化物膜を被覆する酸化物被覆炭素材料の前処理方法において、前記炭素材料の表面にガラス状カーボン含浸層を形成することを特徴とする酸化物被覆炭素材料の前処理方法。
5. 炭素材料の表面を粗面化する工程、前記炭素材料の表層に熱硬化性樹脂の溶液を浸潤し前記炭素材料に含浸する工程、前記熱硬化性樹脂の溶液を浸潤させた炭素材料を加熱して前記熱硬化性樹脂を硬化させる工程、前記炭素材料に高温熱処理を施して前記熱硬化性樹脂をガラス状カーボンとしガラス状カーボン含浸層を形成する工程、および前記ガラス状カーボン含浸層の上に酸化物膜からなる被覆層を形成する工程を有することを特徴とする酸化物被覆炭素材料の製造方法。
6. 前記被覆層が、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、マグネシウム、イットリウム、チタン及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物膜である、5記載の酸化物被覆炭素材料の製造方法。
7. 前記酸化物膜からなる被覆層を形成する手段が溶射である、6記載の酸化物被覆炭素材料の製造方法。
8. 前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂およびフラン樹脂から選ばれる少なくとも1種である、5〜7記載の酸化物被覆炭素材料の製造方法。
を提供する。
本発明の炭素材料に酸化物膜を形成する前処理としては、ガラス状カーボンの含浸層を形成する処理である。ガラス状カーボンの含浸層は、炭素材料の表層、つまり表面から内部方向に数μm〜数mm部分にガラス状カーボンと炭素材料の混合層を形成し、ブラスト処理等で発生した結合力の弱い炭素粒子や炭素材料内部の凝集体をガラス状カーボンで結合することにより、炭素材料の表面の強度を上げることができる。これにより炭素材料の表面の炭素粒子あるいは炭素凝集体の脱離を抑制することにより、その上に形成する酸化物膜の剥離を抑えた酸化物被覆炭素材料を提供することができる。
またガラス状カーボンの含浸層は、炭素材料の表面にある細孔やブラスト処理等により形成した凹凸を残すことができ、酸化物膜とのアンカー効果の妨げにならない。これにより炭素材料の表面の強度が高い状態でアンカー効果を発揮させられるため、密着性を向上させることができる。
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明の被覆する炭素材料に前処理として形成するガラス状カーボンの含浸層は、熱硬化性樹脂の溶液を含浸、硬化、炭化した物である。
本発明で使用される炭素材料については特に制限はないが、黒鉛又はC/Cコンポジットを含むものが好ましく用いられる。
黒鉛を含む炭素材料は、従来公知の方法により作製することができる、例えばコークス粉末などの主原料(骨材)を、それ自体が加熱処理により炭化、黒鉛化するコールタールピッチなどの結合剤を用いて成形したのち、これを700〜1200℃程度の温度で炭化し、さらに2000〜3000℃程度の温度で黒鉛化することにより、黒鉛質炭素材料が得られる。
一方、C/Cコンポジットを含む炭素材料は、従来公知の方法により作製することができる。
C/Cコンポジットは、炭素繊維によって強化された黒鉛基複合材料を指し、例えば炭素繊維と、コールタールピッチやフェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂などの樹脂類とを混合したプリプレグを積層し、プレスなどによって成形し、これを700〜1200℃程度の温度で炭化、次いで2000〜3000℃程度の温度で黒鉛化することにより、C/Cコンポジットからなる炭素材料が得られる。
ガラス状カーボンは、一般にフェノール樹脂やフラン樹脂などの熱硬化性樹脂、あるいはセルロースなどを熱処理することにより得られる。
本発明に使用される熱硬化性樹脂としては、炭化収率が高い樹脂、特に芳香族系の熱硬化性樹脂が好ましい。このような芳香族系の熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、ポリイミド樹脂、フラン樹脂、アセトフェノン−ホルムアルデヒド樹脂(ケトン樹脂)などが挙げられるが、これらの中でも特に炭化収率が高い、フェノール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂及びフラン樹脂が好適である。これらの熱硬化性樹脂は、一種を単独で用いてもよく二種以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノール樹脂としては、ノボラック型及びレゾール型のいずれも用いることができるが、粉末状で用いる場合はノボラック型が好ましく、液状で用いる場合はレゾール型が好ましい。
ポリカルボジイミド樹脂としては、一般式(I)
R−N=C=N− (I)
(式中、Rは有機ジイソシアネート残基を示す。)
で表される繰り返し単位を少なくとも一種有する単独重合体又は共重合体を用いることができる。
前記一般式(I)において、Rで示される有機ジイソシアネート残基としては、芳香族ジイソシアネート残基が好適である。
ポリカルボジイミド樹脂は、従来公知の方法、例えば有機ジイソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応により、容易に製造することができる。
一方、フラン樹脂は、フラン環をもつ合成樹脂の総称であり、例えばフルフリルアルコール−フルフラール共縮合樹脂、フルフリルアルコール樹脂、フルフラール−フェノール共縮合樹脂、フルフラール−ケトン共縮合樹脂、フルフリルアルコール―尿素共縮合樹脂、フルフリルアルコール−ジメチロールユリア樹脂、フルフリルアルコール−アンモニウムチオシアネート−アルデヒド樹脂などがあり、本発明においては、いずれも用いることができる。
本発明の熱硬化性樹脂の溶液を使用して炭素材料にガラス状カーボン含浸層を形成するには、以下に示す工程を順次用いることができる。
まず、本発明の炭素材料の表面を粗面化する工程においては、炭素材料の算術平均表面粗さRaは、その表面に設けられる酸化物膜との密着性などの面から、5μm以上が好ましく、5〜15μmの範囲がより好ましい。このように粗面化された表面を形成するには、必要に応じ、酸化処理、薬品処理(アルカリ、酸、水蒸気などによる処理)、ヤスリやサンドブラストによる処理などの表面改質処理を施すことができる。
次に、本発明の含浸工程においては、作業性などの面から、熱硬化性樹脂と溶媒との溶液の室温における粘度は、200dPa・s以下が好ましい。
本発明の含浸工程における熱硬化性樹脂と溶媒との溶液の粘度を、前記範囲に調整するためには、必要に応じ、適当な溶媒、例えばN−メチルピロリドン、メタノール、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレンなどを用いることができる。
本発明の溶液の調製方法については特に制限はなく、例えば熱硬化性樹脂と溶媒を、所定の割合で用い、遊星運動式混練機、プロペラ式撹拌機、エバポレーターなどにより均質に溶解させることにより、所望の溶液に調製することができる。
また、前記炭素材料においては、気孔率は30%以下が好ましい。この気孔率が30%以下であれば、その表面に含浸される樹脂の量を均一にすることができる。なお、気孔率は水中置換法による一般的な気孔率測定法で求めることができる。また、材料のかさ比重と真比重が予め分かっている場合は、計算により気孔率を求めることもできる。
手順としては、炭素材料を前記のようにして調製された熱硬化性樹脂の溶液に浸潤させ、1時間から24時間程度その状態を保持する。
この含浸層の厚さは数十μm〜数mmである。含浸層の厚さは、含浸される樹脂の量によって決まるため、炭素材料の密度や表面状態、樹脂溶液の濃度、浸潤時間によって調整することができる。また、熱硬化性樹脂の溶液に浸漬させる場合、炭素材料を室温ではなく粘度が下がる温度に温めた樹脂溶液に浸漬させる、あるいは炭素材料を静水状態ではなく樹脂溶液に浸漬させた状態で溶液を撹拌することで含浸を促進させることもできる。含浸される樹脂の量をさらに増やすためには、超音波発振下や減圧、真空環境下で浸潤させることもできる。一方、短時間で浸潤させる場合、炭素材料を容器の中や受け皿の上に立てかけた状態で熱硬化性樹脂の溶液を掛け流しすることもできる。
次いで、本発明の浸潤させた樹脂を硬化させる工程においては、前工程で所定の時間、溶液を浸潤させた後取り出し、溶媒で表面の余分な樹脂を除去した後、10〜50℃/h程度の昇温速度で150〜250℃程度まで加熱し、その温度で10分〜4時間程度保持して該含浸層を硬化させる。
そして、本発明のガラス状カーボン含浸層を形成する工程においては、樹脂を含浸させた炭素材料を不活性雰囲気下、例えば窒素雰囲気下に、700〜2000℃程度の温度で1〜20時間程度保持して炭化することにより、ガラス状カーボンの含浸層を形成することができる。
本発明に用いられる被覆層である酸化物膜としては、第IIa族、第IIIa族,第IIIb族,第IVa族、第IVb族、第Va族、第VIa族元素の酸化物を挙げることができる。中でも、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、マグネシウム、イットリウム、チタン及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を主成分とするものが好ましい。
本発明の酸化物膜は、炭素材料の表面に溶射により形成する。また、炭素材料の表面にプラズマ溶射することにより形成してもよい。
以下、製造例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
炭素材料としては以下の物を用いた。
炭素材料1:東海カーボン(株)製、型番:G330〔等方性黒鉛〕
寸法:50mm×50mm×10mm
かさ比重:1.79 気孔率:21.8%(計算値)
炭素材料2:東洋炭素(株)製、型番:ISO−68〔等方性黒鉛〕
寸法:50mm×50mm×10mm
かさ比重:1.82 気孔率:19.5%(計算値)
※気孔率は、(1−かさ比重/真比重)×100%、真比重:2.26で計算した値。
熱硬化性樹脂としては以下の合成により作製した樹脂を用いた。
合成例1
300mLの三つ口フラスコに、トリレンジイソシアネート100g、フェニルイソシアネート2.5gを入れ、触媒として3−メチル−1−フェニル−2−ホスフォレン−1−オキシド0.2gを添加し、窒素バブリング下、180℃で10時間攪拌したあと、テトラクロロエチレンを加え固形分30%に調整し、ポリカルボジイミド樹脂溶液を得た。
〔ガラス状カーボン含浸層及び酸化物膜の形成〕
実施例1
炭素材料1の表面をブラスト処理により表面粗さRa8μmとした後、合成例1により得られたポリカルボジイミド樹脂溶液をテトラクロロエチレンで10%に希釈した溶液に1時間浸漬させた。その後、溶液を排出しテトラクロロエチレンに入れ替えて10分間放置した後、液中から取出し、120℃の恒温で1時間、25℃/hの昇温速度で250℃まで加熱し、250℃で10分保持して硬化を行った。硬化させた後に、不活性雰囲気で室温から1500℃まで6時間で昇温して炭化、その後、自然冷却して、ガラス状カーボン含浸層が形成された炭素材料の片面にアルミナを溶射して実施例1の酸化物被覆炭素材料を得た。
実施例2
使用する炭素材料を炭素材料2に換えた以外は、実施例1と同様にしてガラス状カーボン含浸層を形成した炭素材料の片面にアルミナを溶射した酸化物被覆炭素材料を実施例2とした。
実施例3
実施例1と同様にしてガラス状カーボン含浸層を形成した炭素材料1の片面にジルコニアとイットリアの混合物を溶射した酸化物被覆炭素材料を実施例3とした。
比較例1、2
炭素材料1、2の表面をブラスト処理により表面粗さRa8μmとしたのみで、含浸層を形成しない炭素材料の片面にアルミナを溶射した酸化物被覆炭素材料を比較例1、2とした。
比較例3
炭素材料1の表面をブラスト処理により表面粗さRa8μmとした後、合成例1により得られたポリカルボジイミド樹脂を3μm程度の厚さに塗布し、実施例1と同条件で硬化及び炭化した、ガラス状カーボン被覆層を形成した上にアルミナを溶射した酸化物被覆炭素材料を比較例3とした。
比較例4
比較例1と同様にして含浸層を形成しない炭素材料1の片面にジルコニアとイットリアの混合物を溶射した酸化物被覆炭素材料を比較例4とした。
以下の測定を行い、酸化物被覆炭素材料の評価を行った。
〔剥離時の強度〕
酸化物被覆炭素材料を直径16mmに切り出し、溶射膜とその反対面の炭素材料を引張り試験用治具に接着し、その密着性を島津製作所社製精密万能試験機AG−100kNGによるT型剥離法を用い、クロスヘッドスピード1mm/分における剥離時の強度を試験した。
〔ヒートサイクル特性〕
熱処理炉で室温から1200℃までの昇温及び降温を5回繰り返した後、前記剥離時の強度を試験した。尚、試験は、耐熱性の高いジルコニア-イットリア被膜を溶射した実施例3と比較例4でのみ行った。
剥離時の強度を評価した結果、表1に示したように、実施例1〜3で得られた被覆体は、いずれも比較例1〜4で得られた被覆体と比べて、約2倍の強度になっていることが分かる。また、溶射で被覆した酸化物の材料に関わらず、前処理によって剥がれにくくなっていることが分かる。
また、強度試験後の剥離界面は、比較例3以外、炭素材料の溶射側表面で、凝集破壊が起きている。この凝集破壊により溶射膜に転写した脱落粒子の量が実施例1,2のほうが、比較例1,2よりも量が少ないことが分かる。同じ凝集破壊でも、上述の通り脱落粒子の量が少なくなるのは、炭素材料にガラス状カーボン含浸層と含浸されていない素地の界面に負荷がかかるためである。つまり、均一に含浸されているほど、垂直方向に剥離しにくくなると推測される。一方、比較例1、2のように結合の弱い粒子が内在したままではその部分から凝集破壊が無作為に起こるため、強度も低下し、脱離量も多いと推測される。
一方、従来技術と同様、炭素材料の表面に被覆層を形成し、最表面に酸化物の層を形成して積層させた比較例3の剥離界面を見るとアルミナの溶射膜とガラス状カーボンの被覆層の界面で剥がれている。この時の剥離時の強度は、表1で示した通り、被覆層を形成していない実施例1よりも低いことから、酸化物膜の剥離が起きやすくなっていることが分かる。
また、表1に示された結果から、実施例3に示された被覆体は、昇温降温が繰り返される条件下においても酸化物膜の剥離が起きにくくなっていることがわかる。
以上述べたように、本発明の方法により作製された被覆体は、炭素材料の表層にガラス状カーボン含浸層を形成したことにより、炭素材料の表面粒子や凝集体の脱離を抑制し、酸化物膜の剥離を抑え、被膜密着性を強化したことで、熱処理工程等で長期にわたって使用した際の熱応力による酸化物膜の剥離を防ぐことができる。
剥離時強度試験後の本発明の実施例1の破断面を示す写真である。 剥離時強度試験後の本発明の実施例2の破断面を示す写真である。 剥離時強度試験後の本発明の比較例1の破断面を示す写真である。 剥離時強度試験後の本発明の比較例2の破断面を示す写真である。 剥離時強度試験後の本発明の比較例3の破断面を示す写真である。

Claims (8)

  1. 炭素材料の表面に酸化物膜からなる被覆層を有する酸化物被覆炭素材料において、前記炭素材料の表面にガラス状カーボン含浸層を有することを特徴とする酸化物被覆炭素材料。
  2. 前記酸化物膜が、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、マグネシウム、イットリウム、チタン及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物である、請求項1記載の酸化物被覆炭素材料。
  3. 前記ガラス状カーボンが、フェノール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂およびフラン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を炭化焼成したものである、請求項1または2記載の酸化物被覆炭素材料。
  4. 炭素材料の表面に酸化物膜を被覆する酸化物被覆炭素材料の前処理方法において、前記炭素材料の表面にガラス状カーボン含浸層を形成することを特徴とする酸化物被覆炭素材料の前処理方法。
  5. 炭素材料の表面を粗面化する工程、前記炭素材料の表層に熱硬化性樹脂の溶液を浸潤し前記炭素材料に含浸する工程、前記熱硬化性樹脂の溶液を浸潤させた炭素材料を加熱して前記熱硬化性樹脂を硬化させる工程、前記炭素材料に高温熱処理を施して前記熱硬化性樹脂をガラス状カーボンとしガラス状カーボン含浸層を形成する工程、および前記ガラス状カーボン含浸層の上に酸化物膜からなる被覆層を形成する工程を有することを特徴とする酸化物被覆炭素材料の製造方法。
  6. 前記被覆層が、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、マグネシウム、イットリウム、チタン及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物膜である、請求項5記載の酸化物被覆炭素材料の製造方法。
  7. 前記酸化物膜からなる被覆層を形成する手段が溶射である、請求項6記載の酸化物被覆炭素材料の製造方法。
  8. 前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂およびフラン樹脂から選ばれる少なくとも1種である、請求項5〜7記載の酸化物被覆炭素材料の製造方法。

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