JPH1095668A - ガラス状炭素被覆炭素材及びその製造方法 - Google Patents

ガラス状炭素被覆炭素材及びその製造方法

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JPH1095668A
JPH1095668A JP8246277A JP24627796A JPH1095668A JP H1095668 A JPH1095668 A JP H1095668A JP 8246277 A JP8246277 A JP 8246277A JP 24627796 A JP24627796 A JP 24627796A JP H1095668 A JPH1095668 A JP H1095668A
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carbon
layer
carbon material
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vitreous
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Akihiro Miura
章博 三浦
Hidehiko Nozaki
秀彦 野崎
Naoto Ota
直人 太田
Tama Doi
賜 土居
Tetsuro Tojo
哲朗 東城
Masayuki Ito
正之 伊藤
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Toyo Tanso Co Ltd
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Toyo Tanso Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性、対基体付着性に優れたガラス状炭
素被覆炭素材の提供。 【解決手段】 炭素材から成る基体の表面層にガラス状
炭素層を有し、このガラス状炭素層の表面が、X線光電
子分光法により測定したO1S及びC1Sピークの面積比O
1S/C1Sを0.1〜0.2とする表面性状であることを
特徴とするガラス状炭素被覆炭素材。平均気孔半径が
0.1〜5.0μmの炭素材の表面層に、合成樹脂を有
機溶媒に溶解した溶液又は液状樹脂を1〜50cpの粘
度に調整した前駆体溶液を含浸又は/及び塗布し、乾燥
後、不活性雰囲気中又は真空雰囲気中で加熱硬化、更に
焼成して、炭素材から成る基体の表面層に1〜200μ
mの厚みのガラス状炭素層を有するガラス状炭素被覆炭
素材を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭素材を基体と
し、その表面層にガラス状炭素層を有するガラス状炭素
被覆炭素材に係り、さらに詳しくは、半導体、光ファイ
バ等の製造の際に使用されるサセプタ、るつぼ、ボー
ト、ヒータ、熱処理用治具等の各種部材、金属蒸着用る
つぼ、ガラス封着用治具、セラミック焼結用治具などに
好適に使用できるガラス状炭素被覆炭素材及びその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】各種の炭素材を基体として、その表面層
にガラス状炭素層を有するガラス状炭素被覆炭素材は、
炭素材のガス不浸透性、耐摩耗性、化学安定性、表面硬
度などを向上させたり、粉塵の発生を防止したりする部
材として、各種の用途に広範に使用されており、特開平
5−319939号公報、特開平 5−262510号公報、特開平 6
−93453 号公報などに先行技術が開示されている。例え
ば、ガラス状炭素層に要求される特性の一つである耐摩
耗性は、炭素材の場合では機械的摩耗によりその表面か
ら微粉が簡単に発生して被処理製品を汚染するため、そ
の表面層にガラス状炭素層を形成することによって耐摩
耗性を向上させ微粉の発生を防ぐものである。
【0003】この種のガラス状炭素被覆炭素材は、層形
成時の熱処理温度によってその特性が大きく変化するた
め、熱処理温度値の決定は重要であるが、熱処理温度を
決定しても昇温速度が異なると、得られるガラス状炭素
層の物性が異なってしまうことになる。すなわち、熱処
理温度と昇温速度は一体不可分の関係であり、これらの
条件はガラス状炭素層の特性を支配する大きな要因とな
るものである。それ故、品質の安定したガラス状炭素被
覆炭素材を製造するためには、熱処理温度と昇温速度と
を綿密に決定する必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ガラス状炭
素層の形成方法には各種の方法があり、例えば各種の合
成樹脂を該樹脂が可溶な有機溶媒に溶解して前駆体溶液
を調整し、次いでこの溶液を炭素材の表面層に含浸又は
/及び塗布し、乾燥後、不活性雰囲気又は真空雰囲気で
硬化、更に焼成することによって形成できるが、このよ
うな熱処理時において処理炉内位置に起因する温度分布
により、熱処理温度や昇温速度を決定しても、得られる
ガラス状炭素層は耐摩耗性や基体に対する付着性が低か
ったり、半導体ウエハ等の被処理製品と固着したりする
など品質欠陥を招く場合がしばしばある。従って、たと
え熱処理温度や昇温速度を規定してガラス状炭素層を形
成したとしても、高耐摩耗性、高固着性を備えた被覆層
であるかどうかの保証は得られ難く、品質保持の点で問
題が多いのが実状である。
【0005】本発明は、このような問題点の解消を図る
ために成されたものであり、本発明の目的は、高耐摩耗
性、高固着性を備えた所謂、健全性に富んだガラス状炭
素被覆炭素材を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を
達成するため以下に述べる構成としたものである。即
ち、本発明は、炭素材から成る基体の表面層にガラス状
炭素層を有するガラス状炭素被覆炭素材であって、前記
ガラス状炭素層の表面が、X線光電子分光法(以下、単
に「XPS」と記す)により測定したO1S及びC1Sピー
クの面積比O1S/C1Sを0.1〜0.2とする表面性状
を備えることを特徴とする。
【0007】本発明はまた、平均気孔半径が0.1〜
5.0μmの炭素材の表面に、合成樹脂を有機溶媒に溶
解した溶液又は液状樹脂を1〜50cpの粘度に調整し
た前駆体溶液を含浸又は/及び塗布し、乾燥後、不活性
雰囲気中又は真空雰囲気中で加熱硬化し、更に焼成する
ことによって、炭素材から成る基体の表面層に、1〜2
00μmの厚みで、XPSにより測定したO1S及びC1S
ピークの面積比O1S/C 1Sを0.1〜0.2とする表面
性状のガラス状炭素層を有するガラス状炭素被覆炭素材
を製造することを特徴とするガラス状炭素被覆炭素材の
製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施の形
態に関して説明する。本発明者等は、熱処理を施した後
のガラス状炭素層の物的特性と、その表面をXPSで観
測した際の炭素(C)、酸素(O)及び窒素(N)の元
素の挙動(特にディジタル的割合で示した比)とを詳細
に調査・検討した結果、ガラス状炭素層の表面が、XP
Sで測定したO1S及びC1Sピークの面積比O1S/C1S
0.1〜0.2の値であれば、耐摩耗性や基体との固着
性が良好で、被処理製品と固着することがない等の健全
性を有することを知見するに至ったものである。
【0009】基体となる炭素材としては特に制約されな
いが、通常は2500〜3200℃の範囲内で熱処理さ
れた等方性や異方性の炭素材を使用することができる。
炭素材の熱処理が2500℃未満では、黒鉛化が十分に
進行していないために、ガラス状炭素層を形成する際の
熱処理(炭素化)時に基体が収縮してしまって、ガラス
状炭素層に微細な亀裂や剥離が生じ易く、その結果、微
粉が発生し易くなるからである。また、熱処理温度が3
200℃を超える炭素材を使用すると、黒鉛化が進み過
ぎており、基体表面は微粉が頗る発生し易い状態である
ため、熱処理すればガラス状炭素となる前駆体溶液を含
浸・塗布する際に微粉が混入してしまい、ガラス状炭素
層を形成しても微粉の発生を防ぐことが困難になる。さ
らに、このような層の場合、表面硬度が低くなるため、
機械的摩耗によって微粉が発生し易くなるからに他なら
ない。
【0010】ガラス状炭素層の形成は公知の各方法で行
えば良く、例えば、各種合成樹脂を有機溶媒に溶解して
前駆体溶液を製造する。次いで、この溶液を炭素材の表
面層に含浸又は/及び塗布し、乾燥後、不活性雰囲気又
は真空雰囲気で加熱硬化し、更に焼成して形成すること
ができる。また、液状樹脂をそのまま基体に含浸又は/
及び塗布して加熱硬化、更に焼成しても形成できる。い
ずれにしても本発明においては、ガラス状炭素層の形成
方法に格別の制約を受けない。以下にガラス状炭素層の
前駆体溶液を用いて被覆層を形成する方法に基づき、ガ
ラス状炭素被覆炭素材を製造する方法を説明する。
【0011】ガラス状炭素被覆炭素材を製造するために
は、炭素材の表面層に、前駆体溶液を含浸又は/及び塗
布すれば良いが、炭素基体の平均気孔半径が0.1μm
未満では、基体へのアンカー効果が低く、摩擦や急激な
加熱、急冷等により容易に亀裂、剥離等が生じ易い。ま
た、5.0μmより大きいと適当な厚みの前駆体溶液を
含浸又は/及び塗布しても、基体表面層の気孔を十分に
塞ぐことができず、緻密な層を形成するのが難しい。そ
れ故、平均気孔半径が0.1〜5.0μmの炭素材の表
面層に前駆体溶液を含浸又は/及び塗布することによっ
て、健全性を有するガラス状炭素被覆炭素材を製造し得
るものである。なお、基体に対する固着強度が高く、か
つ緻密な膜を形成する為には、平均気孔半径が0.2〜
2.0μmの炭素材を基体に用いるのがさらに好まし
い。この場合、炭素基体の平均気孔半径は、水銀圧入法
で最大圧力1100kg/cm2、試料と水銀との接触角14
1.3°で測定した累積気孔容積の1/2 とした。
【0012】ここで、合成樹脂は焼成後ガラス状炭素質
を与えるものであれば特に問われない。このガラス状炭
素質を与える合成樹脂としてはフェノール樹脂、フラン
樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイ
ミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、エポキシ樹脂、ユ
リア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、キ
シレン樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂などを例
示できる。また、使用する有機溶媒は合成樹脂を溶解す
るものであれば特に問われないが、例えばテトラクロロ
エチレン、トリクロロエチレン、ジメチルアセトアミ
ド、N−メチルピロリドン、ケトン類(アセトン、メチ
ルエチルケトン等)、アルコール類(メタノール、エタ
ノール等)などがある。これらの溶媒は単独で用いても
よく、又、溶解性を損なわない範囲で二種類以上を混合
して用いてもよい。このうち、樹脂の溶解性や被覆層形
成の容易性の観点から、ポリカルボジイミド樹脂はテト
ラクロロエチレン、フェノール樹脂はメタノール、ポリ
アミドイミド樹脂はN−メチルピロリドン等の組合せが
好ましい。
【0013】基体に含浸する場合は、樹脂の重合度と溶
媒希釈率により若干異なるが、これらを1〜50cp
(centipoise)の粘度になるように混合して前駆体溶液
を製造するのが良い。粘度が、50cpを超えるとガラ
ス封着用治具等の小さい穴を有する製品では穴詰まりを
生じるおそれがあり、1cp未満では含浸後に基体表面
層に残存する量が少なくなる。特に最適な粘度は5〜3
0cpである。一方、基体に塗布する場合は、0.1〜
30cpが適している。これは30cpを超えると、平
滑で、かつ剥離や亀裂に強い層を得ることが難しくな
り、0.1cp未満では、塗布回数を多くしなければな
らず、手間が掛かるため、工業的ではないからである。
【0014】このようにして得られた前駆体溶液を、基
体に含浸したり、ハケ、スプレー等により塗布したりす
る。このような含浸物や塗布物を通常は60〜100℃
で乾燥した後、150〜300℃で加熱して硬化、次い
で600〜3000℃で焼成してガラス状炭素被覆層を
形成することができるが、本発明ではガラス状炭素層の
表面がXPSで測定したO1S及びC1Sピークの面積比O
1S/C1Sを0.1〜0.2の値になるように焼成等の熱
処理を行う必要がある。ここで、形成するガラス状炭素
層の厚みは使用目的によって異なるが、通常、1〜20
0μmである。厚みが1μmよりも少ないとガス不浸透
性、耐摩耗性、化学安定性を発揮しにくくなり、又、2
00μmよりも厚くすると塗布したガラス状炭素層が黒
鉛基体より剥離したり、ガラス状炭素層に亀裂が生じた
りするので好ましくない。
【0015】ガラス状炭素層の表面に関してXPSで測
定したO1S及びC1Sピークの面積比O1S/C1Sが0.2
を超えると、基体表面層に含浸又は/及び塗布した物質
の炭素化が進んでいないため、層の熱収縮が大きく、急
熱により亀裂や剥離が生じる。更には、ヘテロ原子を残
存しているため、熱処理製品との固着や汚染、層の変
質、ガス発生の原因になる。一方、O1S及びC1Sピーク
の面積比O1S/C1Sが0.1未満では炭素化が進み過ぎ
ているため、被覆層は損傷し易く、耐摩耗性も低下し、
微粉が発生する。本発明に係るガラス状炭素層の表面は
1S及びC1Sピークの面積比O1S/C1Sを0.1〜0.
2の値としているため、亀裂や剥離、層の変質、被処理
製品への固着や汚染、ガス発生等が生じない、取扱い時
に被覆層に傷が付かない等の著しく優れた特性を発揮し
得るものとなる。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。本
発明者等は、各種の合成樹脂を使用して熱処理を施した
後のガラス状炭素層の物的特性と、その表面をXPSで
観測した際の炭素(C)、酸素(O)及び窒素(N)の
元素の挙動(特にディジタル的割合で示した比)とを詳
細に調査・検討した結果に基づいて、本発明を完成する
に至ったものである。なお本発明において、XPSの測
定としては、各種の技術分野で広く用いられており、か
つ、その測定手法についても良く知られているC1S、O
1S及びN1Sを対象として測定した。その主な結果を以下
に(1) 〜(7)の各項に分けて記述する。
【0017】(1) 窒素を含む合成樹脂を使用した場合に
おいて、窒素のN1Sピークは観測することができず、ガ
ラス状炭素層の特性にはおよそ無関係であった。但し、
乾燥工程後の被覆層には小さなN1Sピークを観測するこ
とができたが、この層はガラス状炭素の形態をとってお
らず、本発明に係る被覆層ではない。換言すれば、焼成
するとN1Sピークは存在しなくなり、基体に塗布した物
質はガラス状炭素に変化すると考えられる。 (2) 酸素のO1Sピークはどの試料も左右対称であり、ピ
ーク位置が532〜534eVのものが観測された。 (3) 炭素のC1Sピークは左右対称のものから高エネルギ
ー側に裾が広がった形状のものまであり、ピーク位置が
284〜287eVのものが観測された。
【0018】なお参考までに、結合エネルギーの変化
(化学シフト)は、存在する化学種の化学結合状態の変
化を示しており、より低いエネルギー側へシフトしたピ
ークを示している試料は、次のように考察できる。即
ち、炭素化があまり進んでいないときには、局在化した
分子軌道を持つ「−C=O」、「−N=C−」などの結
合は、熱処理により切断されて脱離したり、分子内での
組替えが生じたりする。それと共に炭素化され、より安
定な六角網目構造を形成するようになる。従って、この
ような結合状態、即ち結合エネルギーの変化が、O1S
びC1Sのピーク位置の低エネルギー側へのシフトとなっ
たものであり、このように低エネルギー側へのシフトが
大きいもの程、炭素化が進んでいると考えられる。
【0019】(4) O1Sピークの高さは、一番低いピーク
を1とした場合、1〜3.5倍程度の範囲内で全試料の
ピークが観測された。 (5) C1Sピークの高さは、一番低いピークを1とした場
合、1〜1.5倍程度の範囲内で全試料のピークが観測
された。 (6) O1Sピークの面積は、一番小さいピークを1とした
場合、1〜2.7倍程度の範囲内で全試料のO1Sピーク
の面積が観測された。 (7) C1Sピークの面積は、一番小さいピークを1とした
場合、1〜1.5倍程度の範囲内で全試料のC1Sピーク
の面積が観測された。
【0020】以上の結果に基づき、O1S及びC1Sのピー
クの位置、高さ、面積の項目中から、ガラス状炭素層の
特性と密接な関係にあるものを各種実験によって定めた
結果、ガラス状炭素層の前記健全性を評価するために
は、O1S及びC1Sのピークの面積比O1S/C1Sが適当で
あることが判った。以下に実験例及び比較例によって、
本発明を更に具体的に説明する。
【0021】実施例1,(A) 〜実施例4,(D) 、比較例
1,(E) 〜比較例5,(I) 及び参照例1,(J) 〜参照例
3,(L) :平均気孔半径1.5μm、熱処理温度300
0℃の等方性炭素材を基体とし、ポリカルボジイミド樹
脂をテトラクロロエチレンで溶解したガラス状炭素前駆
体溶液を基体表面層に含浸及びスプレー塗布し、焼成速
度及び焼成温度を変えて、XPSにより測定したO1S
びC1Sのピークの面積比O1S/C1Sが下記の表1に示す
ような値のガラス状炭素層(厚み:50μm)を形成し
た(実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5)。な
お、表1における参照例1〜3は黒鉛基体のみのもので
ある。
【0022】
【表1】
【0023】実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例5
及び参照例1〜参照例3についてそれらの試料の引掻試
験、固着試験及び急熱試験を行い、ガラス状炭素層の健
全性を比較評価した。 〈試験1:連続荷重方式による引掻試験〉引掻針を実施
例1〜実施例4、比較例1〜比較例5及び参照例1〜参
照例3の各試料表面に垂直に降ろし、垂直方向の荷重を
0から500gまで増やしながら表面を引っ掻く。この
とき、引掻針の先端が受けた力を引掻強度として記録
し、被覆層が破損したときの垂直荷重(臨界荷重)を比
較した。この結果は、主に被覆層の付着力、剪断力を評
価したものである。なお、参照例1〜参照例3は、基体
表面が削られ始めた際の荷重を臨界荷重とした。
【0024】〈試験2:一定荷重方式による往復引掻試
験〉試験1と同様に、引掻針を各試料表面に垂直に降ろ
し、垂直方向荷重50g一定として引掻針で直線方向に
往復運動させ、被覆層が破損するまでの往復回数を比較
した。この結果は、主に被覆層の耐摩耗性を評価したも
のである。なお、参照例1〜参照例3は、基体表面が削
られ始めた際の荷重を臨界荷重とした。
【0025】ここで、引掻試験は次の条件で行った。 ・機 種: トライボギア TYPE22 ・記録計: フラットベット型ペンレコーダ ・引掻針: ダイヤモンド製(先端0.1mm,R90°) ・荷 重: 連続荷重測定:0〜500g 一定荷重測定:50g ・荷重速度: 連続荷重測定:10g/秒 ・引掻速度: 連続荷重測定:0.5mm/秒 一定荷重測定:5mm/秒
【0026】これらの引掻試験の結果を表1及び図1,
2に示す。この結果より、ガラス状炭素層表面がO1S
1S(面積比)が0.1未満になると、臨界荷重及び破
損までの往復回数が顕著に低下することが判る。又、基
体のみを用いた参照例1〜参照例3においても耐摩耗性
は実施例1〜実施例4に劣り、粉塵を発生した。なお、
図1には、各試料における被覆層が破損したときの垂直
荷重(臨界荷重)とO 1S/C1S(面積比)の関係が、ま
た図2には、同じく破損したときの往復回数とO1S/C
1S(面積比)の関係がそれぞれ示されている。
【0027】〈試験3:固着試験〉各試料の表面上にシ
リコンウエハを置き、300℃/時間の昇温速度に設定
した炉に入れ、炉内温度がガラス状炭素被覆炭素材が通
常使用される代表的な温度である1200℃に到達後、
この温度で1時間保持した。これにより、シリコンウエ
ハが各試料に固着するか否かを調べた。
【0028】この固着試験結果を表1に示す。この結果
から明らかなように、ガラス状炭素層表面のO1S/C1S
(面積比)が0.2を超えると、シリコンウエハに固着
することが判る。
【0029】〈試験4:急熱試験〉各試料(室温状態)
を1000℃に設定した炉に素早く入れて急熱した。こ
の急熱により、ガラス状炭素層に亀裂や剥離が生じるか
否かを調べた。
【0030】この急熱試験結果を表1に示す。この結果
より、ガラス状炭素層表面がO1S/C1S(面積比)が
0.2を超えると、亀裂が生じることが判る。
【0031】以上の各試験結果からみて、表面のO1S
1S(面積比)が0.1〜0.2のガラス状炭素層に関
して健全性を確保していることが証されることが判る。
【0032】また、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂を
用いて形成したガラス状炭素層でも同様にこれらの試験
を行ったところ、表面のO1S/C1S(面積比)が0.1
〜0.2のガラス状炭素層であれば健全性にすぐれてい
ることが判明した。
【0033】〈XPS測定条件〉ここで、XPSの測定
は全て以下の条件で行った。 ・測定装置: ESCA−750(島津製作所(株)製) ・X線源: Mg Kα線 ・加速電圧: 8kV ・測定時の真空度: 10-6Pa以下 ・C1S測定範囲: 280〜294eV(0.1eVステップ) ・O1S測定範囲: 526〜540eV(0.1eVステップ) ・C1S測定範囲: 395〜410eV(0.1eVステップ)
【0034】また、O1S/C1S(面積比)の値は、ピー
クの両裾を結ぶ線をバックグランド線とし、この線より
上に存在するピーク面積の全カウント数(cps)をそ
のピークの面積とし、O1Sピークの面積をC1Sピークの
面積で除した値である。
【0035】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明に係るガラス
状炭素被覆炭素材は、ガラス状炭素層に要求される特
性、即ち、ガス不浸透性、耐摩耗性、化学安定性、表面
高硬度、防発塵性等の諸特性を具備する上に、被処理製
品との固着や汚染、被覆層の変質、ガス発生が起こら
ず、被覆層と基体との密着性が良好であり、損傷し難い
など、優れた特性を有するものになる。従って、本発明
に係るガラス状炭素被覆炭素材は、半導体、光ファイバ
等の製造の際に使用されるサセプタ、るつぼ、ボート、
ヒータ、熱処理用治具等の各種部材、金属蒸着用るつ
ぼ、ガラス封着用治具、セラミック焼結用治具などに好
適に使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】各試料における被覆層が破損したときの垂直荷
重(臨界荷重)とO1S/C1S(面積比)の関係を示す分
布図である。
【図2】各試料における被覆層が破損したときの往復回
数とO1S/C1S(面積比)の関係を示す分布図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 土居 賜 香川県三豊郡大野原町大字萩原850 東洋 炭素株式会社内 (72)発明者 東城 哲朗 香川県三豊郡大野原町大字中姫2181−2 東洋炭素株式会社内 (72)発明者 伊藤 正之 香川県三豊郡大野原町大字中姫2181−2 東洋炭素株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素材から成る基体の表面層にガラス状
    炭素層を有するガラス状炭素被覆炭素材であって、前記
    ガラス状炭素層の表面が、X線光電子分光法により測定
    したO1S及びC1Sピークの面積比O1S/C1Sを0.1〜
    0.2とする表面性状を備えることを特徴とするガラス
    状炭素被覆炭素材。
  2. 【請求項2】 平均気孔半径が0.1〜5.0μmの炭
    素材の表面に、合成樹脂を有機溶媒に溶解した溶液又は
    液状樹脂を1〜50cpの粘度に調整した前駆体溶液を
    含浸又は/及び塗布し、乾燥後、不活性雰囲気中又は真
    空雰囲気中で加熱硬化し、更に焼成することによって、
    炭素材から成る基体の表面層に、1〜200μmの厚み
    で、X線光電子分光法により測定したO1S及びC1Sピー
    クの面積比O1S/C1Sを0.1〜0.2とする表面性状
    のガラス状炭素層を有するガラス状炭素被覆炭素材を製
    造することを特徴とするガラス状炭素被覆炭素材の製造
    方法。
JP8246277A 1996-09-18 1996-09-18 ガラス状炭素被覆炭素材及びその製造方法 Pending JPH1095668A (ja)

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