JP5382208B2 - 蓄電素子の劣化推定装置および劣化推定方法 - Google Patents
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Description
本発明は、蓄電素子の劣化状態を推定する装置および方法に関するものである。
特許文献1には、蓄電池の温度が25℃以下の場合と、蓄電池の温度が25℃を超える場合とに分けて、蓄電池の劣化量をそれぞれ算出している。具体的には、各温度域における劣化容量に対して、実測温度が各温度域に存在する時間を乗じることにより、劣化容量を算出している。そして、2つの劣化容量を加算することにより、蓄電池の使用を始めてから、所定時間が経過するまでの劣化容量を算出している。
特許文献1では、2つの温度域における劣化容量をそれぞれ求め、これらの劣化容量を単に加算しているだけである。このように、複数の劣化量を単純に加算するだけでは、電池の劣化状態を推定するうえで、不十分となることがある。
課題を解決するための手段
課題を解決するための手段
本願第1の発明は、劣化状態を示す劣化値と経過時間のn乗根(nは1よりも大きな値)とが比例関係にあり、劣化条件に応じて比例関係が変化する蓄電素子を用いたときに、蓄電素子の劣化状態を推定する劣化推定装置であって、複数の劣化条件における劣化値の変化量を累積して、所定時間が経過するときの蓄電素子の劣化値を算出する演算器を有する。演算器は、所定時間が経過するまでの間に、各劣化条件が発生する期間を予測する。また、演算器は、劣化値および経過時間の関係を示す劣化特性と、各劣化条件の発生期間とに基づいて、各劣化条件における劣化値の変化量を算出し、算出された変化量を順に加算するときに、加算前に得られた劣化値を基準として、加算される劣化値の変化量を算出する。
ここで、下記式(Ex1)に基づいて、劣化値の変化量の総和を算出することができる。
各劣化条件における劣化特性は、メモリに記憶することができる。これにより、メモリから劣化特性を読み出して、各劣化条件における劣化値の変化量を算出することができる。
また、劣化条件を検出するための検出センサと、時間を計測するタイマと、を設けることができる。そして、演算器は、検出センサおよびタイマを用いて、所定時間よりも短い時間が経過するまでの各劣化条件の発生期間を取得し、取得した発生期間に基づいて、所定時間が経過するまでの各劣化条件の発生期間を予測することができる。これにより、実測値に基づいて、劣化条件の発生期間を予測することができ、劣化率の変化量を算出する際の精度を向上させることができる。
劣化値を取得するための取得センサと、時間を計測するタイマと、を設けることができる。そして、演算器は、取得センサを用いて取得した劣化値が、タイマを用いて取得した経過時間のn乗根に比例するか否かを判別し、劣化値が経過時間のn乗根に比例するときに、所定時間が経過するときの蓄電素子の劣化値を算出することができる。これにより、本発明における劣化状態の推定に適用される蓄電素子であるか否かを判別することができる。
劣化値としては、蓄電素子が初期状態にあるときの内部抵抗と、蓄電素子が劣化状態にあるときの内部抵抗との比を用いることができる。なお、劣化値として、蓄電素子の内部抵抗を用いることもできる。また、劣化条件としては、蓄電素子における温度、充電状態を示す値(SOC)および電流値が挙げられる。さらに、上記「n」を「2」とすることができる。
本願第2の発明は、劣化状態を示す劣化値と経過時間のn乗根(nは1よりも大きな値)とが比例関係にあり、劣化条件に応じて比例関係が変化する蓄電素子を用いたときに、蓄電素子の劣化状態を推定する劣化推定方法である。ここで、所定時間が経過するまでの間に各劣化条件が発生する期間を予測する第1ステップと、劣化値および経過時間の関係を示す劣化特性と、各劣化条件の発生期間とに基づいて、各劣化条件における劣化値の変化量を算出し、算出された変化量を順に加算して、所定時間が経過するときの蓄電素子の劣化値を算出する第2ステップと、を有する。第2ステップでは、加算前に得られた劣化値を基準として、加算される劣化値の変化量を算出する。
本発明によれば、蓄電素子の劣化特性に応じて劣化値の変化量を累積でき、劣化状態の推定精度を向上させることができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1
実施例1
本発明の実施例1である劣化推定装置は、単電池(蓄電素子)の劣化状態を推定するものであり、この構成について、図1を用いて説明する。
単電池10は、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池であり、負荷に接続されている。なお、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタを用いることもできる。電流センサ21は、単電池10に流れる電流値(充電電流や放電電流)を検出して、検出結果を電池ECU(Electric Control Unit、演算器に相当する)30に出力する。電圧センサ22は、単電池10の電圧値を検出して、検出結果を電池ECU30に出力する。
温度センサ23は、単電池10の温度を検出して、検出結果を電池ECU30に出力する。温度センサ23は、単電池10の温度を直接的又は間接的に検出することができればよい。ここで、温度センサ23を単電池10の外面に接触させれば、単電池10の温度を直接的に検出することができる。また、温度センサ23を単電池10の近傍であって、単電池10から離れた位置に配置すれば、単電池10の温度を間接的に検出することができる。電池ECU30は、メモリ31およびタイマ32を備えている。なお、メモリ31およびタイマ32は、電池ECU30の外部に設けることもできる。
本実施例である劣化推定装置は、車両に搭載することができる。劣化推定装置を車両に搭載したときの構成について、図2を用いて説明する。この車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。なお、図2において、図1で説明した要素と同一の要素については、同一符号を用いている。
単電池10を車両に搭載する場合には、組電池11が用いられる。複数の単電池10を電気的に直列に接続することにより、組電池11を構成することができる。なお、組電池11には、電気的に並列に接続された単電池10が含まれていてもよい。組電池11を構成する単電池10の数は、組電池11の要求出力に基づいて適宜設定することができる。
組電池11は、システムメインリレー41a,41bを介して、昇圧回路(DC/DCコンバータ)42に接続されている。システムメインリレー41a,41bのオン/オフの切り替えは、電池ECU30によって制御される。昇圧回路42は、組電池11の出力電圧を上昇させて、インバータ43に供給する。インバータ43は、昇圧回路42から供給された直流電力を交流電力に変換して、モータ・ジェネレータ(例えば、三相交流モータ)44に供給する。モータ・ジェネレータ44は、車輪(不図示)と接続されており、インバータ43からの交流電力を受けて、車両を走行させるための運動エネルギを発生させる。
車両の制動時には、モータ・ジェネレータ44が運動エネルギを電気エネルギに変換して、インバータ43に供給する。インバータ43は、モータ・ジェネレータ44からの交流電力を直流電力に変換して、昇圧回路42に供給する。昇圧回路42は、インバータ43からの電圧を下降させて、組電池11に供給し、組電池11は、昇圧回路42からの電力を蓄えることができる。
次に、組電池11の劣化状態を推定する処理について説明する。本実施例では、組電池11の温度に基づいて、組電池11の劣化状態を推定するようにしている。ここで、劣化状態とは、組電池11が初期状態にあるときの内部抵抗と、組電池11が劣化状態にあるときの内部抵抗との比率であり、下記式(1)によって表される。
なお、本実施例では、劣化状態として、内部抵抗R1,R2の比率を用いているが、これに限るものではなく、劣化状態を特定できるパラメータを用いればよい。
まず、図3のフローチャートに示すように、劣化状態の推定を行うためのデータを取得する。図3に示すフローチャートは、電池ECU30によって実行される。
ステップS101において、電池ECU30は、タイマ32のカウント動作を開始させる。タイマ32は、組電池11の温度が任意の温度に維持されているときの時間を計測するために用いられる。ステップS102において、電池ECU30は、温度センサ23の出力に基づいて、現時点における組電池11の温度を検出する。なお、ステップS101,102の処理は、逆の順序で行うこともできるし、同時に行うこともできる。
ステップS103において、電池ECU30は、ステップS102で得られた検出温度が変化したか否かを判別する。具体的には、複数に区分された温度範囲のうち、いずれか1つの温度範囲内に検出温度が収まっているか否かを判別する。本実施例では、検出温度が小数点以上で変化したときには、検出温度が変化したと判別し、検出温度が小数点以下で変化したときには、検出温度が変化していないと判別する。
例えば、組電池11の温度が16℃から17℃に変化したときには、ステップS103の処理において、検出温度が変化したと判別される。一方、組電池11の温度が16.2℃から16.8℃に変化したときには、ステップS103の処理において、検出温度が変化していないと判別される。なお、小数点以下の数値を検出できない場合には、数値が変化すれば、検出温度が変化したと判別することができる。
ステップ103において、検出温度が変化したと判別したときには、ステップS104に進む。また、検出温度が変化していないと判別したときには、ステップS102に戻り、組電池11の温度検出を続ける。なお、本実施例では、小数点以上における数値の変化を、検出温度の変化としているが、これに限るものではない。検出温度が変化したか否かを判別するための条件は、適宜設定することができる。
ステップS104において、電池ECU30は、タイマ32のカウント動作を停止させ、タイマ32のカウント時間をメモリ31に格納する。このカウント時間は、組電池11が特定の温度状態に維持されているときの時間となる。
図3に示す処理を、所定期間だけ行うと、図4に示すデータ(一例)が得られる。図4において、横軸は、組電池11の温度を示し、縦軸は、各温度の発生頻度を示している。発生頻度は、特定の温度が発生しているときの頻度であり、下記式(2)で表される。
次に、組電池11の劣化状態を推定する処理について、図5を用いて説明する。図5に示す処理は、電池ECU30によって実行される。
ステップS201において、電池ECU30は、タイマ32のカウント動作を開始させる。ステップ202において、電池ECU30は、電流センサ21の出力に基づいて、組電池11の電流値を検出するとともに、電圧センサ22の出力に基づいて、組電池11の電圧値を検出する。
ステップS203において、電池ECU30は、ステップS202で検出した電流値および電圧値に基づいて、現時点における組電池11の抵抗を算出し、組電池11の劣化率を算出する。劣化率は、上記式(1)に基づいて算出される。劣化率の算出を繰り返し行うことにより、経過時間および劣化率の対応関係を示すデータが得られる。
ステップS204において、電池ECU30は、経過時間および劣化率の対応関係を示すデータを用いて、劣化率が経過時間の平方根に比例しているか否かを判別する。すなわち、本実施例における劣化状態の推定処理を適用できるか否かを判別する。ステップ204において、劣化率が経過時間の平方根に比例しているときには、ステップ205に進み、そうでないときには、本処理を終了する。
ステップS205において、電池ECU30は、各温度における組電池11の劣化特性と、各温度の発生頻度とを用いて、所定時間が経過したときの将来の劣化率を算出する。ステップ205の具体的な処理については、後述する。
図5に示す処理では、劣化率が経過時間の平方根に比例しているか否かを判別することにより、本実施例における劣化状態の推定処理が組電池11に適用できるか否かを判別しているが、この判別を省略することができる。すなわち、劣化率が経過時間の平方根に比例していることが予め分かっていれば、この判別を省略することができる。例えば、リチウムイオン二次電池では、劣化率が経過時間の平方根に比例する傾向が高いため、単電池10としてリチウムイオン二次電池を用いたときには、図5で説明した判別処理を省略することができる。
次に、図5のステップS205の処理について、図6を用いて具体的に説明する。ここでは、組電池11を使用し始めてから時間t2_totalが経過したときの組電池11の劣化率を予測するようにしている。期間t2_totalは、上述した期間t1_totalよりも長い期間である。
メモリ31には、図6の点線で示す5つの劣化曲線(データ)が格納されており、各劣化曲線(劣化特性に相当する)は、各温度T1〜T5における劣化率の変化を示している。図6の縦軸は、組電池11の劣化率を示し、横軸は、経過時間を示している。図6に示す各劣化曲線は、予め実験等によって求めておくことができる。T1,T2,T3,T4,T5の順に温度が高くなっており、温度が高くなるほど、劣化率が高くなる。
まず、期間t2_totalのうち、各温度T1〜T5の状態が占める期間を決定する。ここで、期間t2_totalの間に、各温度T1〜T5の状態が発生しているものとする。期間t2_totalは、図4に示す各温度T1〜T5の発生頻度に応じて分割される。具体的には、下記式(3)に基づいて、各温度T1〜T5の状態が占める期間を決定する。温度T1〜T5の状態が占める期間の総和は、期間t2_totalとなる。
上記式(2)におけるt1(Tk)は、温度Tkの状態が発生しているときの実測時間であり、上記式(3)におけるt2(Tk)は、温度Tkの状態が発生しているときの予測時間である。なお、本実施例では、発生頻度F(Tk)に基づいて、期間t2(Tk)を算出しているが、これに限るものではない。例えば、発生頻度F(Tk)を用いずに、期間t2(Tk)を適宜設定することもできる。
期間t2(Tk)が得られれば、図6に示す劣化曲線を用いて、温度Tkにおける劣化率の変化量を算出することができる。そして、複数の温度Tkにおける劣化率の変化量を累積した値を、時間t2_totalが経過したときの組電池11の劣化率としている。
図6に示す例では、温度T1〜T5における期間t2(T1)〜t2(T5)を、t(1)〜t(5)としている。そして、各温度T1〜T5における劣化率の変化量を算出し、これらの劣化率の変化量を累積することにより、時間t2_totalが経過したときの組電池11の劣化率を特定することができる。期間t2_totalは、期間t(1)〜t(5)の総和である。
ここで、劣化率の変化量を累積する方法(一例)について説明する。図6において、温度T1の状態が期間t(1)だけ発生しているとき、劣化率はΔd1だけ上昇する。具体的には、組電池11が初期状態にあるときの劣化率に対して、変化量Δd1だけ上昇することになる。組電池11が初期状態にあるとき、劣化率(上記式(1)参照)は「1」と略等しい値となる。
次に、温度T2における劣化率の変化量を算出するが、劣化率がΔd1だけ上昇した後の劣化率を基準として、温度T2における劣化率の変化量を算出する。具体的には、温度T2の劣化曲線において、変化量Δd1だけ上昇した後の劣化率に対応した時間から、時間t(2)が経過するまでの間における劣化率の変化量を算出する。すなわち、温度T2の状態が期間t(2)だけ発生しているとき、劣化率はΔd2だけ上昇する。
温度T3における劣化率の変化量を算出するときには、劣化率が「Δd1+Δd2」だけ上昇した後の劣化率を基準とする。温度T2における劣化率の変化量Δd2を算出した場合と同様の算出を行えば、温度T3の状態が期間t(3)だけ発生しているとき、劣化率はΔd3だけ上昇する。
温度T4における劣化率の変化量を算出するときには、劣化率が「Δd1+Δd2+Δd3」だけ上昇した後の劣化率を基準とする。温度T2における劣化率の変化量Δd2を算出した場合と同様の算出を行えば、温度T4の状態が期間t(4)だけ発生しているとき、劣化率はΔd4だけ上昇する。
温度T5における劣化率の変化量を算出するときには、劣化率が「Δd1+Δd2+Δd3+Δd4」だけ上昇した後の劣化率を基準とする。温度T2における劣化率の変化量Δd2を算出した場合と同様の算出を行えば、温度T5の状態が期間t(5)だけ発生しているとき、劣化率はΔd5だけ上昇する。
これにより、時間t2_totalが経過したときの組電池11の劣化率は、初期状態の劣化率に対して、「Δd1+Δd2+Δd3+Δd4+Δd5」だけ上昇した値と推定することができる。なお、上述した説明では、温度T1〜T5の状態が発生した場合について説明したが、これに限るものではなく、温度状態の数に応じて、上述した処理を行えばよい。
上述した説明では、温度T1〜T5の順に、劣化率の変化量を加算しているが、劣化率の変化量を加算する順序を変えたとしても、最終的に得られる劣化率は略等しくなる。
一方、図6では、劣化率および経過時間の座標系で表される劣化曲線に基づいて、時間t2_totalが経過したときの組電池11の劣化率を特定する方法について説明したが、これに限るものではない。劣化率が経過時間のn乗根に比例するときには、経過時間のn乗根および劣化率の座標系を用いれば、図7に示すように、各温度の劣化データを直線で表すことができる。図7において、縦軸は、劣化率を示し、横軸は、経過時間の平方根を示している。
図7に示す座標系において、温度T1の劣化データを用いることにより、期間t(1)の平方根に対応した劣化率の変化量Δd1が得られる。期間t(1)は、上述したように、温度T1の状態が占める期間である。また、変化量Δd1は、図6で説明した変化量Δd1に相当する。
同様に、温度T2の劣化データを用いることにより、期間t(2)の平方根に対応した劣化率の変化量Δd2が得られる。期間t(2)は、温度T2の状態が占める期間であり、変化量Δd2は、図6で説明した変化量Δd2に相当する。一方、温度T3の劣化データを用いることにより、期間t(3)の平方根に対応した劣化率の変化量Δd3が得られる。期間t(3)は、温度T3の状態が占める期間であり、変化量Δd3は、図6で説明した変化量Δd3に相当する。
図7に示す劣化率の変化量Δd1〜Δd3を加算すれば、図6で説明した場合と同様に、将来の組電池11における劣化率を特定することができる。図7に示す座標系では、劣化率が経過時間の平方根に比例しているため、各温度で得られた劣化率の変化量を加算するだけで、図6で説明した場合と同様の結果を得ることができる。
図6を用いて説明した劣化率の算出(推定)は、下記式(4)に基づいて行うことができる。
上記式(4)は、上記式(3)を考慮すると、下記式(5)で表すことができる。
本実施例によれば、時間t2_totalが経過したときの劣化率の変化量を推定したり、時間t2_totalが経過したときの組電池11の劣化率を推定したりすることができる。組電池11の劣化率を推定できれば、例えば、組電池11を交換する時期を特定することができる。具体的には、組電池11の劣化率が予め設定した閾値に到達するときの時間t2_totalを予測することができ、予測した時間t2_totalを、ユーザ等に対して、音声や表示等を用いて知らせることができる。
また、本実施例では、劣化率および経過時間の座標系で規定される劣化曲線を用いて、各温度において劣化率の変化量を算出し、これらの変化量を単に加算する場合に比べて、劣化率の推定精度を向上させることができる。以下、図8を用いて、具体的に説明する。
図8の右側は、本実施例で説明した劣化率の算出方法を示し、図8の左側は、比較例である劣化率の算出方法を示している。図8の左側に示す算出方法では、各温度T1,T2において、同じ時点から劣化率の変化量を算出している
図8に示すように、左側の算出方法および右側の算出方法では、累積値としての劣化率に差ΔDが生じてしまう。図8の左側に示す算出方法では、初期状態の劣化率を基準として、各温度T1,T2における劣化率の変化量を算出するようにしているが、組電池11における実際の劣化状態を考慮していない。組電池11における実際の使用状態では、特定温度における劣化が発生した後に、他の温度における劣化が発生することになる。したがって、2つの温度において、同一の劣化率を基準として劣化が進行することはない。
本実施例によれば、各温度における劣化率の変化量を算出するときに、基準となる劣化率が変更されるため、組電池11の使用状態を考慮した上で、劣化率を精度良く推定することができる。
なお、本実施例では、組電池11の劣化状態を推定しているが、これに限るものではない。具体的には、組電池11を構成する単電池10の劣化状態について、本実施例と同様の推定を行うことができる。また、組電池11を構成する複数の単電池10を複数のブロックに分けたときには、各ブロックの劣化状態について、本実施例と同様の推定を行うことができる。ここで、1つのブロックは、少なくとも2つの単電池10で構成されている。
また、本実施例では、劣化率が経過時間の平方根に比例する場合について説明したが、これに限るものではない。すなわち、劣化率が経過時間のn乗根に比例するときにも、本発明を適用することができる。
具体的には、下記式(6)に基づいて、劣化率の変化量を算出することができる。
上記式(6)は、上記式(3)を考慮すると、下記式(7)で表すこともできる。
nを特定できれば、上記式(6)を用いて、劣化率の変化量Δd_totalを算出することができる。nを特定する方法としては、まず、対象となる組電池11の劣化率と、経過時間との関係を求める。次に、劣化率および経過時間の関係を、縦軸を劣化率とし、横軸を経過時間のn乗根とした座標系にプロットする。ここで、nを1よりも大きい範囲で変化させて、複数の座標系を用意する。nの値が互いに異なる複数の座標系において、プロットされた劣化率を最も直線近似できる座標系を特定すれば、nを特定することができる。
一方、本実施例では、各温度における劣化曲線を用いて劣化率の変化量を算出しているが、これに限るものではない。すなわち、組電池11の劣化率は、温度だけでなく、充電状態を示すSOC(State Of Charge)、電圧、電流によっても変化する。ここで、SOC等が変化しても、図6に示す特性(劣化曲線)と同様の特性が得られる。そして、SOCが高くなるほど、劣化率は高くなる。
このため、上記式(6)は、下記の一般式(8)で表すことができる。
ここで、v(f)は、上述した温度やSOCといった各劣化条件における劣化速度を示し、劣化速度は、経過時間に対する劣化率の変化として表される。Fは、劣化条件の発生頻度を示しており、t_totalは、劣化状態を予測するときの時間を示している。
また、上記式(8)は、下記式(9)で表すことができる。
上記式(8)および(9)における劣化速度v(f)は、温度だけの関数ではなく、SOC、電圧および電流の少なくとも1つを含む関数として表すことができる。SOCおよび電圧は、一般的に対応関係にあるため、いずれかの値を用いればよい。劣化速度v(f)は、例えば、下記式(10)によって表すことができる。
上記式(10)は、下記式(11)として表すこともできる。
一方、組電池11の劣化に最も影響を与える要因としては、温度が挙げられる。したがって、上記式(8)における発生頻度Fとして、上記式(6)に示すように、温度Tkの発生頻度F(Tk)を用いることができる。また、上記式(9)における劣化条件の発生期間t(f)として、上記式(7)に示すように、温度Tkの状態が占める期間t2(Tk)を用いることができる。
また、組電池11(又は単電池10)の実際の劣化状態(劣化率)に基づいて、上述した劣化速度v(f)を補正することができる。具体的には、組電池11の実際の劣化状態(劣化率)を検出するとともに、組電池11の使用環境を検出する。組電池11の使用環境は、本実施例で説明した推定方法を用いて、組電池11の劣化状態を推定するために用いられる。
また、検出した組電池11の使用環境と、本実施例で説明した推定方法とを用いて、組電池11の劣化状態を推定する。そして、推定した劣化状態と、検出した劣化状態とを比較し、略一致していない場合には、劣化速度v(f)を補正することができる。すなわち、推定した劣化状態が、検出した劣化状態となるように、劣化速度v(f)を補正することができる。劣化速度v(f)を補正しておけば、補正後における劣化状態の推定精度を向上させることができる。
符号の説明
符号の説明
10:単電池
11:組電池
21:電流センサ
22:電圧センサ
23:温度センサ
30:電池ECU
31:メモリ
41a,41b:システムメインリレー
42:昇圧回路
43:インバータ
44:モータ・ジェネレータ
11:組電池
21:電流センサ
22:電圧センサ
23:温度センサ
30:電池ECU
31:メモリ
41a,41b:システムメインリレー
42:昇圧回路
43:インバータ
44:モータ・ジェネレータ
Claims (10)
- 劣化状態を示す劣化値と経過時間のn乗根(nは1よりも大きな値)とが比例関係にあり、劣化条件に応じて前記比例関係が変化する蓄電素子を用いたときに、前記蓄電素子の劣化状態を推定する劣化推定装置であって、
複数の前記劣化条件における前記劣化値の変化量を累積して、所定時間が経過するときの前記蓄電素子の劣化値を算出する演算器を有し、
前記演算器は、
前記所定時間が経過するまでの間に、前記各劣化条件が発生する期間を予測し、
前記劣化値および前記経過時間の関係を示す劣化特性と、前記各劣化条件の発生期間とに基づいて、前記各劣化条件における前記劣化値の変化量を算出し、算出された前記変化量を順に加算するときに、加算前に得られた前記劣化値を基準として、加算される前記劣化値の変化量を算出することを特徴とする劣化推定装置。 - 前記演算器は、下記式(Ex1)に基づいて、前記劣化値の変化量の総和を算出する、
- 前記各劣化条件における前記劣化特性を記憶するメモリを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の劣化推定装置。
- 前記劣化条件を検出するための検出センサと、
時間を計測するタイマと、を有しており、
前記演算器は、前記検出センサおよび前記タイマを用いて、前記所定時間よりも短い時間が経過するまでの前記各劣化条件の発生期間を取得し、取得した発生期間に基づいて、前記所定時間が経過するまでの前記各劣化条件の前記発生期間を予測することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の劣化推定装置。 - 前記劣化値を取得するための取得センサと、
時間を計測するタイマと、を有しており、
前記演算器は、前記取得センサを用いて取得した前記劣化値が、前記タイマを用いて取得した経過時間のn乗根に比例するか否かを判別し、前記劣化値が前記経過時間のn乗根に比例するときに、前記所定時間が経過するときの前記蓄電素子の劣化値を算出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の劣化推定装置。 - 前記劣化値は、前記蓄電素子が初期状態にあるときの内部抵抗と、前記蓄電素子が劣化状態にあるときの内部抵抗との比率であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の劣化推定装置。
- 前記劣化条件は、前記蓄電素子における温度、充電状態を示す値および電流値のうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の劣化推定装置。
- 前記nが2であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の劣化推定装置。
- 劣化状態を示す劣化値と経過時間のn乗根(nは1よりも大きな値)とが比例関係にあり、劣化条件に応じて前記比例関係が変化する蓄電素子を用いたときに、前記蓄電素子の劣化状態を推定する劣化推定方法であって、
所定時間が経過するまでの間に、前記各劣化条件が発生する期間を予測する第1ステップと、
前記劣化値および前記経過時間の関係を示す劣化特性と、前記各劣化条件の発生期間とに基づいて、前記各劣化条件における前記劣化値の変化量を算出し、算出された前記変化量を順に加算して、所定時間が経過するときの前記蓄電素子の劣化値を算出する第2ステップと、を有し、
前記第2ステップにおいて、加算前に得られた前記劣化値を基準として、加算される前記劣化値の変化量を算出することを特徴とする劣化推定方法。 - 下記式(Ex2)に基づいて、前記劣化値の変化量の総和を算出する、
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